大阪を拠点とするスタートアップ Sales Navi は15日、セールスイネイブルメントプラットフォーム「Sales Navi」を正式ローンチした。また、同社は昨年11月、シードラウンドで1.7億円を調達していたことも明らかにした。このラウンドに参加したのは、ジェネシア・ベンチャーズのみ。Sales Navi は2021年、キーエンスやプルデンシャル生命で高い営業成績を収めてきた田中大貴氏（現 代表取締役）により創業したスタートアップだ。

数ある職業の中でも営業職の離職率は高く、特に日本の営業職は生産性が低いことがデータからわかっている。営業職の離職率が高い理由としては、成果不振、上司や会社のプレッシャー、モチベーションを維持できない、などが上位を占める。他の職業なら、事細かく手順を記したマニュアルを用意したり、先輩が後輩に技を伝承したりすることもできるだろう。しかし、営業トークには個性もあるし、誰かのやり方がそのまま自分に当てはまるとも限らない。田中氏に言わせれば、営業には「教科書が無い、型がない」ということなのだ。

国内でも、営業支援ツールはスタートアップが開発したものを中心に近年かなり増えた。BRIDGE が取り上げたものだけででも、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DNX Ventures、ANRI、X Tech Ventures が支援する「ナレッジワーク」、ジャフコグループや東京大学協創プラットフォーム開発らが支援する「Bring Out」、Full Commit Partners らが支援する「GRiX」、DCM Ventures と DNX Ventures らが支援する「Magic Moment Playbook」などだ。

細かい機能の違いは、精緻な分析を SaaS 比較サイトなどに委ねるとして、とりわけ Sales Navi が力を入れているのが、ペンギンのマスコットがアドバイスしてくれる AI コーチ機能だ。業界横断でトップセールス100人にヒアリングを敢行、営業活動に求められる普遍的な要件、業界業種や会社毎のナレッジを収集・解析し、そのインサイトをアドバイスの基盤に盛り込んだ。AI コーチは人間のマネージャーに近い感覚で質問や回答が返せるよう、対話アルゴリズムも独自開発したという。

これまでのセールスイネイブルメントのツールの多くは、既存の SFA や CRM と連携することを前提にしているが、企業の中には、SFA や CRM を導入していないところもある。そこで、弊社では SFA や CRM の機能も作った。その結果、Sales Navi 全体を開発するのに3年を要した。（中略）

SFA や CRM が無くても導入できるし、UI／UX の良さから、すでに SFA や CRM を導入済の会社でも、全体を Sales Navi に載せ替えるユーザも出てきている。（田中氏）

田中氏によれば、Sales Navi の導入効果が出やすいと考えられる業種は、不動産、人材、証券、商社などだ。これらの業種では、技術やサービスの差別化よりも、営業活動の良し悪しに売上動向が大きく依存しているからだ。特に10名規模以上の企業になってくると、営業成果が出ている人と出ていない人の差が顕在化するため、より Sales Navi を導入しようというモチベーションにつながることが期待される。AI コーチが営業の進捗をまとめて上司にれポーティングするため、上司の管理工数も軽減できる。

Sales Navi は、業務委託を含め25名で運営。昨年8月に機能を限定したスタータープランをローンチしていたが、今回、スタンダードプランを用意し正式ローンチを迎えた。Sales Navi はこれまでに、阪急阪神不動産や大広など、関西を中心とした企業を中心に導入されているが、正式ローンチを経て、今後、全国の大企業、中小企業、スタートアップに提供体制を本格化する。Sales Navi は調達した資金を使って、営業体制強化、開発体制強化を図るとしている。