
Image credit: New Innovations
<12日午前10時更新> 訂正線部を削除、赤字部を追記。
AI カフェロボット「root C」を展開する New Innovations は12日、シリーズ A ラウンドで54億円を資金調達したと明らかにした。このラウンドに参加したのは、SBIインベストメント、グローバル・ブレイン、KDDI Open Innovation Fund(KDDI とグローバル・ブレインによる運営)、31 VENTTURES(三井不動産とグローバル・ブレインによる運営)、HERO Impact Capital、SMBC ベンチャーキャピタル、静岡キャピタル、DEEPCORE、THE SEED、笠原健治氏(MIXI 創業者)と名前非開示の1社。
公表されている限りにおいて、これは New Innovations にとって、2019年7月の調達(7,000万円)、2020年6月の調達(1.7億円)に続くものだ。THE SEED と DEEPCORE は過去ラウンドに続くフォローオン。なお、今回のラウンドには、三井住友銀行、みずほ銀行、三菱 UFJ 銀行、静岡銀行、東日本銀行、三菱 HC キャピタルと名前非開示の1社からのデットおよびリース枠設定(27.8億円)が含まれる。創業からの累積調達額は56.5億円に達した。
New Innovations 代表取締役の中尾渓人氏は、14歳で自律型ロボットによる国際的な研究競技大会「ロボカップジュニア」に日本代表として出場し入賞。智辯和歌山高校在学中にシステム開発事業を開始し、大阪大学入学と同時高校在学中に起業した(2018年)。New Innovations のチームは、ロボコン出場チーム出身者など約60名ほどで構成され、東京・深川にある本社に併設された拠点で、日夜ロボットの開発に心血を注いでいる。
ロボットを使ったサービスプロバイダとしての印象が強い New Innovations だが、root C はロボットを使って提供できるユースケースと社会実装の事例を提示している過ぎず、実のところ、ロボティクススタートアップだ。root C を見た飲食事業者などから、かねてより OMO(Online Merges with Offline)を展開するための仕組みを作ってもらえないか、との相談を受けていたが、New Innovations では今回の資金調達を受けて、その OMO 事業を本格化する。
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OMO 事業については、世界的フードチェーンとの協業を含め7つほどのプロジェクトが動いており、年内には関東地域で店舗での実証実験の開始が計画されているそうだ。今回、累積調達額の約半分をデットおよびリース枠設定で調達するという比較的珍しいスキームで資金調達したのは、ファブレスでどこかの企業に開発を委託するのではなく、自らソリューションを開発することでこそ優位性を担保できると考え、自前で開発・製造環境を持つために、エクイティ調達のスキームでは難しいと判断したから、ということだ。
当面は、飲食物を中心に扱う調理ロボットのハードウェア・ソフトウェア開発に注力するが、中尾氏は New Innovations を決して、フードテックカンパニーにするつもりはないという、
うちは、人的付加価値の無人化・省人化はやらない。むしろ、工程付加価値の無人化・省人化を支援して、そこで浮いたコストを、企業には人的付加価値の方に使ってもらいたいんです。(中尾氏)
つまり、レストランなどで言えば、料理を提供するホール係は人間にやり続けてもらって、調理場で料理したりする部分をテクノロジーで解決したいということだ。レシピが確立されていて、チェーンのように、どの店でも画一的な味を提供することを保証する業態であれば、調理工程は人がやるよりもロボットがやった方が効率的かもしれない。
メニューが無い方が便利、という考え方もあるかもしれません。メニューはある意味、取り扱う SKU を最小化し、効率的に調理・提供するための方法。でも、ロボットが調理するならば、人なら手が回らない個別最適化を極限まで追求できる。(中尾氏)
言われてみれば、メニューというのは便利なようでいて、我々も慣れてしまっているが、これは大量生産・大量消費を前提とした産業構造の一端なのかもしれない。ドラマ「深夜食堂」で小林薫が扮するめしやの親父のように、「できるものなら、なんでも作るよ」を、New Innovations のロボットを使えば、業界のコスト構造を変えずにスケーラブルに展開できる日が来るかもしれないわけだ。
New Innovations では向こう3年から5年の間に、国内外で約10万店舗へのロボットの実装を見込んでいる。
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