Mojo Visionのこれまでとこれから——スマートコンタクトからピボットしても生き残れる圧倒的な技術力

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Image credit: Mojo Vision

ニュースサマリ:AR 向けスマートコンタクトレンズを開発する Mojo Vision は5日、2,240万米ドルを調達したことを明かした。このラウンド(新たなシリーズ A ラウンド)は Granite Hill Capital Partners がリードし、New Enterprise Associates (NEA)、KPCB Holdings、Struck Capital、Bold Capital Partners、Open Field Capital、Presidio Ventures、Advantage Ventures、LG Electronics、Sequoia Capital などの既存投資家も参加した。

Mojo Vision は、従来のARデバイスよりも小型で、ウェアラブルなARスマートコンタクトレンズ「Mojo Lens」の開発を進めていた。このスマートコンタクトレンズは、リアルタイム情報やナビゲーションの提供、労働者の生産性向上など様々な用途に利用されることが期待されていたが、今回の発表で開発の停止、マイクロLED事業にシフトすることが明かされた。

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話題のポイント:Mojo Visionがついにスタートコンタクトレンズから撤退しました。ヘッドマウント型のディスプレイを中心にVR・AR向けのデバイス開発が続いてる中、映像出力をコンタクトレンズに行う、理想的なデバイスへの挑戦ということで同社の動向には期待が寄せられていました。

2022年→2023年、動きを活発化

2022年のMojo Visionから発表は活発で、製品化へ向けて確実にマイルストーンを進めていることをアピールしていました。1月にはアディダスやその他のスポーツブランドと提携し、Mojo Lens を使用してリアルタイムでデータを視界に表示させて効果的なトレーニングや競技力向上を共に目指すというより、むしろ、アプリケーション層に近い部分の取り組みを開始しました。

おおかたの技術が揃ったとして、6月には CEO(当時)の Drew Perkins 氏自ら Mojo Lens を1時間ほど装着して実験する様子を公開しました。11月には Mojo Lensを Amazon Alexa の買い物リスト機能に組み込むことに成功したと明かし、買い物体験にインパクトを与える兆しを伺わせていました。

しかし、今年に入ると一転して、同社はレンズを除く開発を保留にし、スタッフの75%をレイオフすることを決めたと発表します。この理由として、Mojo Vision は資金調達における重大な課題として、景気の悪さや AR 製品の市場の立ち上がりタイミングがまだ見えないことを理由に挙げています。

今回の大きな方向転換の主な理由が技術的なものでなかっただけに、この開発保留やレイオフの発表は、2022年末から2023年初に発表された調達(シリーズ B1 ラウンドで4,500万米ドルを調達)のためのパフォーマンスの意味合いも強かったのかもしれません。

Image credit: Mojo Vision

製品を構成するコンポーネントでは、半導体大手より技術優位なものも

さて、Mojo Vision が今後進むマイクロ LED ディスプレイ市場で、彼らに勝ち目はあるのでしょうか。

マイクロ LED ディスプレイは、OLED(有機 EL ディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、量子ドットディスプレイの代替技術として注目されている市場です。名前の通り、従来のディスプレイよりも小型の LED チップが採用され、その大きさは約1/100程度です。

LED が小さくなることのメリットは色域の広さ、消費電力の低さ、寿命の長さ、視野角の広さ、ダイナミックレンジの広さなどがあるが、現状ではそもそもの基板がパッケージ化されていないことや、製造工程が確立されて汎用的になっていない分、高価になることがメリットを相殺してマイナスを与える要素となっています。

現在明らかになっている Mojo Lens のスペックは、1インチあたり14,000ピクセルで0.5ミリ未満の MicroLED ディスプレイ、AR コンテンツをストリーミングするための5GH超低遅延無線、カスタム構成の加速度計、ジャイロスコープ、磁力計による継続的なアイトラッキングです。世界最小クラスの小ささに加えて、半導体を介して制御できるコンポーネントも豊富と言えるでしょう。

バッテリー持続時間などを総合的に見ると、課題が明らかだった Mojo Vision でしたが、半導体レベルでは、新たにライバルとなるソニー、LG、Samsung などを上回っていた部分も多いのです。元々、半導体が強みの会社と言っても言い過ぎではないでしょう。性能面では十分に勝機があるように思われます。

今後の Mojo Vision は性能強化に加えて、製造工程面への投資を行っていくことが予想されます。仮に、コストを落とせるような進捗が見られた場合、競争力と同時に、時代が AR を求め始めたとき、大きなアドバンテージになるでしょう。VentureBeat の取材にある通り、Mojo Visionはまだ、スマートコンタクトレンズを諦めたわけではないのです。

<Mojo Vision のこれまでの軌跡>

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