Web3で変わるネットにおける「所有」/SUSHI TOP MARKETING 徳永 × ACV唐澤・村上(2)

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

今回のゲストはSUSHI TOP MARKETINGの代表取締役、徳永大輔さんです。

企業と個人がトークンでコミュニケーションする「トークングラフマーケティング」の手法で広告やメディア、商業施設・デベロッパー、小売業(特にアパレルブランド)などの領域でビジネスを展開されているのがSUSHI TOP MARKETINGです。物理的な場所でNFTを配布する場所づくりやQRコードを活用した価値追加など、さまざまな可能性を追求されている徳永さんにお話を伺いました。5回連続でポッドキャストから一部をテキストにしてお送りします。

ポッドキャストで語られたこと

  • 出版社からクリプトへ
  • Web3で変わるネットにおける「所有」
  • Web3マーケティングの新概念「トークングラフ」とは
  • トークングラフの応用例、音声でNFTを配る
  • 音声でNFTを配る、というアイデア
  • NFTハラスメントにどう対応する

唐澤:NFTを配るという話と、個人のデータが取れるみたいな話が頭の中で繋がらない方もいらっしゃると思うんですけど、そのあたりについてもう少し解説いただいてもいいですか。

徳永:個人がデータを持つ話からします。僕は今33歳ですけど、大体僕とインターネットは同い年ぐらいなんですよ。インターネットが出てきて、最初Windows 95があるときはいわゆるWeb1で大きなメディアが一方的に情報発信するというのが、最初のインターネットと個人のコミュニケーションでした。

2000年代後半頃にTwitterとかFacebookとかSNSが出てきて、誰でも発信できる、作家になれる、いわゆるWeb2.0が出てきてそれは今も続いてると思います。昨今話題になっているWeb3、これはインターネット+トークン。インターネットは普通にやるんですけれどもそこにトークンが付きます。トークンは因数分解するとNFTと仮想通貨がざっくりあるんですけれども、こういうのが介在するインターネットというのがWeb3と言われているものだと思ってます。

マーケティングにフォーカスしていくと、Web2のマーケティングは今大きく分けて二つの概念で駆動されています。インタレストグラフとソーシャルグラフです。ソーシャルグラフは今SNSで誰と誰が繋がってるかとか、僕が何をフォローしてるかによって、その人の属性に触れるという考え方。インタレストグラフは、何を検索するか。(中略)大体ソーシャルグラフ、インタレストグラフの二つで(中略)マーケティングされてるんですけれども(中略)いろいろ問題があります。

2016年ぐらいになるとトランプ氏が当選した大統領選挙であったりとか、イギリスのEU離脱ブレグジットですね。これは陰謀論とかじゃなく、実はケンブリッジ・アナリティカというイギリスの政治コンサル会社がかなり情報操作をしてたという事実があります。その人の住んでる州とか選挙の州によって、広告を出し分けて、例えば「ヒラリーはよくない」とか、「選挙に行くのは馬鹿な人」みたいなことを広告に出して、票を誘導したという事実があって、すごい事件があったんですね。

ヨーロッパとか非常に過敏に反応して、GDPRという規則で個人情報を取るのにかなり制限をかけていると。(中略)そういったときにトークンが介在するインターネットになってくると、個人が本当の意味でデジタルオーナーシップを手に入れられる。これによってもっと新しいマーケティングができるという話なんですけれども、このデジタルオーナーシップがピンとこないので繋がらないと思うんですよね。

もう少し言及して例え話をすると、ウマ娘というコンテンツがありますよね。ウマ娘に100万円課金したとして(中略)これは僕が本当にウマ娘を所有していると言えるでしょうか。(中略)倒産したら当然ウマ娘はなくなるし、事業を閉じたらなくなるしというので、100万かけて僕が買った分を全て僕が所有してるというよりはサイバーエージェントさんのデータベースとか、サーバーの中からレンタルさせてもらってるというのが正確です。

ウマ娘のキャラがNFTになったとしたら、ずっとP2Pで僕らのウォレットの中にあるので、(中略)なくならないわけなんですよね。そういうふうにすることが(中略)データに資産性を持たせるというNFTに繋がってきます。

(中略)まとめると大仰な話なんですけれども、Googleが検索という文化を作りました、FacebookやTwitterが繋がりという文化を作りました。Web3がデータの所有という文化を作りました。所有に対してのマーケティングとかそういうとこでアプローチしていきたいというのが弊社です。

唐澤:今のお話を伺って思ったのは所有の文化作りはすごく大事なキーワードだと。2つあって、1つは日本が欧米と比べて弱いじゃないですか。所有権を主張する文化がないのでそこを作っていかなきゃいけないと。もう1つは所有して何が嬉しいんだという内側をもっと語っていかなきゃいけない。

自分が所有してたから、人に付与できたりするような新しい体験として仕立てられるかどうかが鍵なんですかね。

徳永:僕文系なんです。文学部卒で文化人類学とか勉強しましたけど結構面白くて、マルセル・モースが『贈与論』という本を出してます。それによるとポリネシアの南の島の人たちは、ネットとかない時代にどうやって数十年にわたって関係性を部族同士で保ってたかというと、「クラ」(kula)と呼ばれる大きい貝の飾りを交換していました。物を介して、所有による絆とかはプリミティブに昔から人間の中にあって、それに対してどういうふうな価値をつけていくかというところに関しては何でもできると思うんですよね。

所有ということ自体にはプリミティブな価値は元からあるんですけど、実際ビジネスで僕らがそこにどういうふうにその価値を戻していくかというところがいろいろできるんですね。持ってる人だけが入れるオンラインサロンとか、(中略)推しを輝かせるために何個もそれを所有するであったりとか、投票券になっていたらとか、持ってる人だけが限定されたな体験ができるのでほしくなる。NFTを使って所有させることによって、付加価値は後付けでいかようにもできるのが今までと違うところです。

次につづく:Web3マーケティングの新概念「トークングラフ」とは/SUSHI TOP MARKETING 徳永 × ACV唐澤・村上(3)

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