国際リモートチームの運営を支援するバーチャルオフィス「SWise(スワイズ)」、ChatGPTで同時翻訳字幕機能を追加

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Image credit: SWise

大阪に拠点を置く SWise(スワイズ)は3日、同社が提供するバーチャルオフィスツール「SWise」の会話機能に、ChatGPT 3.5 を使ったリアルタイム翻訳機能をβ版として追加実装したことを明らかにした。これまでは、同様の機能実装に、Google 翻訳が使われていた。ChatGPT の実装により、より精緻な翻訳が可能になるとしている。この実装により、同社ではスタートアップや中小企業などがグローバルチームを運営していく上でコミュニケーションのハードルを下げ、テレワークでも生産性の高い事業運営の支援を狙う。

SWise は2018年5月、台湾出身の Bruce Qiu(邱世偉)氏により創業。彼は大学時代、台湾を来訪する日本人観光客向けのガイドとして日本語を覚え、その後来日し、大阪でエンジニアとして働き始めた。日台関の結びつきを強めたいの考えから受託開発で事業をスタート、昨年9月に SWise をローンチした。詳細は不明だが、これまでに複数の個人投資家からシード資金を調達していて、次のラウンドに向けた資金調達にも動いているという。

Bruce Qiu(邱世偉)氏
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SWise は一見すると、これまでに何度か紹介してきた「oVice」に似ているのだが、実現しようとしている世界観に違いがあるようだ。ここ数年のバーチャルオフィスツールは、コロナ禍における非対面でのチーム運営を支援する、という文言を謳ったものがほとんどだった。しかし、SWise がローンチしたのは2022年9月で、新型コロナウイルスの感染拡大はピークアウトした後のことだ。SWise が焦点を当てているのは、コロナ禍の如何にかかわらず、すでに存在し、今後深刻化する問題——IT 人材の不足だ。

経済産業省の試算によれば、2030年には約79万人の IT 人材が不足するとされる。わずか7年後にやってくる危機に対して、それに間に合う形で日本の生産者人口の母数が増えることは期待できないので、非 IT 人材の IT 業界への登用(いわゆるリスキリングや、先週紹介した「Pluski」もこの部類)と、日本国外からの IT 人材の採用(1月に紹介した「Tech Japan」はこの部類)が期待できる解決策だ。ただ、後者については、中小企業やスタートアップは、大企業ほど大規模な人材集めを海外で行うのは難しい。

スタートアップや中小企業にとっては、現地子会社を作ったり、現地オフィスを作ったりするのはハードルが高い。現地採用して日本に連れてくるにも、本人の生活環境の問題、日本側のビザ手配など労務環境の整備など課題は多い。しかし、リモート環境でチームを適切に運営できれば、こうした問題も乗り切ることができる。(Qiu 氏)

Image credit: SWise

実際、SWise にもベトナムやインドからリモート形態で勤務しているエンジニアがいるし、日本にいるメンバーも多数いるが、インタビューを実施した際には Qiu 氏は台湾にいた。毎日、定期的にあるいは必要なタイミングでコミュニケーションをとることができれば、リモード環境であっても生産性が落ちることはない、と Qiu 氏はいう。異人種・異言語間のコミュニケーションの必要性が恒常的にあった SWise だからこそ生まれたのが、リアルタイムの翻訳字幕機能だった。

AI を使った翻訳技術としては、これまで SWise が使ってきた Google 翻訳よりも、あるいは、ChatGPT のような大規模言語モデルを使った AI よりも、今のところ、DeepL の方が翻訳精度が高いのではないか、というのが筆者の感想だ。敢えて、ChatGPT を採用した理由について、Qiu 氏は ChatGPT の進化がものすごく速いこと(近い将来、精度は DeepL を追い抜くと見ている)、「書き言葉」でなく、一部が省略されたり方言やスラングが混じったりする「話し言葉」の翻訳に ChatGPT が強いこと、などを挙げた。

海外の人材を登用するにはいくつかのハードルが存在するが、SWise を活用すれば、その多くの部分が解消できることになる。もっとも対面で会ってコミュニケーションするのに優る体験は無いが、それには膨大な時間とコストが必要になるわけで、駆け出しのスタートアップや零細な中小企業がグローバルチームを組織する上で、SWise は有用なツールになるかもしれない。将来は、チームを運営する前のフェーズ——人材集めのための機能などについても期待したいところだ。

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