ChatGPTなどジェネレーティブ(生成)AI・Web3に熱視線ーーSXSW2023参加レポートVol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。

今回は、3/10~19にアメリカテキサス州オースティンにて開催された大型テックイベントSXSW 2023(South by Southwest / サウス・バイ・サウスウエスト、以下SXSW)のレポート記事を三部作でお届けしたいと思います。

昨年以上に盛り上がりを見せたSXSW

昨年に引き続き、今年もSXSWに参加することができました。SXSWとは1987年に初めて開催され、テクノロジーや映画、音楽、教育、文化などを融合したカンファレンスおよび祭典が集結したイベントとして知られています。昨年はCOVID-19の影響で、オンラインとオフライン両方でのハイブリット開催となりましたが、今年は2019年から3年ぶりにオフラインメインでの開催となりました。

ちょうどSXSW開催直前にシリコンバレーバンク(SVB)騒動があったため、スタートアップやVC界隈の参加者は少し減るかと不安視もされたようですが、現地メディアによると今年の参加者は推計延べ30万人を超えたとみられています。昨年と比較して2倍以上に増え、CESなど他のイベントと同様、ようやく例年規模に戻ってきた印象を受けました。

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今年はアメリカ国外からの参加者が30%を占めるそうで、昨年はほとんどお会いしなかった日本からの出張者や出展者も、今年はメディアやメーカーなどの大企業、スタートアップなどたくさんの方にお会いすることができました。そのため、人気のセッションやイベントなどはどれも行列が絶えず、部屋に入れない人も続出していたように思います。

昨年はこのような事態がほぼ起きなかったので、高を括って昨年と同じような感覚でセッションの10分前に会場付近に行くと人がごった返しており、私もいくつかのセッションを泣く泣く諦めざるを得ませんでした。優先的に入場かつ席を確保できるエクスプレスパスも用意されているのですが、人気セッションについてはアクセスが集中し、争奪戦となっていました。

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来年は今年同様の規模を見越して戦略的に動く必要がありそうです。

2023年のラインナップ

SXSWでは、時代の潮流を汲んだトラックが毎年ラインナップされます。スケジュールからトラックを見ると、その年にSXSWイベントで注目される領域が概ね把握できます。昨年のカンファレンストラックは例年より少なく15のトピックとなりましたが、2023年は25まで増加し、参加者数のみでなく扱われるトピックもCOVID-19前と同等に戻りました。

中でもCannabisやPsychedelicsのような日本ではあまり馴染みがなく、こうしたカンファレンスの場で扱われるトピックからは程遠く感じられる領域が25のトピックのうち上方に位置していました。少し衝撃的にも思えますが、過去を遡るとCannabusiness(大麻ビジネス)は2019年からカンファレンストラックにエントリーされており、アメリカでの合法化が進んだ頃からSXSWとして注目してきた領域です。

SXSW2023のスケジュール
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メディア、スタートアップ、広告、ヘルスケア、テック、映画、ゲーム、クライメット、カルチャーなどの毎年恒例のトピックの他、2023年はカンナビス、フード、エネルギー、トラベル&レジャーなどが新たにトラックに入りました。

SXSWでの注目テーマ

Generative AI:セッションテーマを見てみると、今年は日本でも話題のGenerative AI(生成AI)をテーマに冠したものが非常に多く用意されており、初日の基調講演ではOpenAIのCo-founderであるGreg Brockmanが登壇し多くの注目を集めました。

この講演の中では、OpenAIの設立経緯や、将来的にコーディングやエンタメ、ヘルスケアなど、様々な業界での活用可能性について触れました。またアメリカンフューチャリストとして知られるAmy Webbのテックトレンドに関する基調講演の中でも、発表された16のトレンドの中にAIが入っており、AIの未来について語られました。

Web3 / Blockchain:昨年のSXSWではセッション、展示、ミートアップイベントすべてを通してNFT一色と言っていいほど非常に注目されていたように思いますが、その後の暗号通貨の冬の時代を経て、今年はNFTをテーマに掲げるセッションや展示はほぼ見られませんでした。

一方で、Web3やBlockchainについては依然として約30のイベントが用意されており、メディアや音楽、メタバースなどの業界との融合による将来的な可能性などについて語られました。昨年のバブル期からは少し落ち着いたものの、継続して注目されている領域であると言えると思います。

サステナビリティ:サステナビリティについてもSXSWでは過去を遡って継続的に注目されてきたテーマですが、今年は例年に輪をかけてサステナビリティを意識したブースや展示が多かったように思います。

SXSWと言えば、スタートアップのみならずコンシューマブランドの出展が街中の至るところに現れることでも有名ですが、自動車メーカーのポルシェやコスメ&ボディケアブランドのLUSHなど、各社各様のサステナビリティの取り組みがブース内でアピールされていました。

また、SXSW内で最大級の展示であるCreative Expoでも領域を問わずサステナビリティを意識したプロダクトが多く取り扱われていたり、Future of Foodというエキシビジョンにおいては植物ベースやオーガニックのお菓子が振る舞われたりしました。

Future of Foodで振る舞われたお菓子やドリンク
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クライメットフレンドリーなクラッカーや雨水を利用した飲料水などが配られていました。

環境に配慮した高品質な商品を扱うことで世界的に高い評価を受けるパタゴニアからはCEOのRyan Gellertが基調講演に登壇し、気候変動に対する自社の考えや取り組みについて語り、こちらのセッションも多くの人が押しかけ超満員となりました。

毎年大人気のポルシェブースで振る舞われたミニハンバーガーとチキンフライ
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どちらも100%プラントベースのインポッシブルミートを使っています。

最後に

今回はSXSWについての概要と個人的に感じたトレンドなどをお届けしました。SXSW PitchやCreative Expo、出展ブースなどについては、順次レポートを出す予定ですので、そちらも是非ご覧ください。

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