死後のデジタル資産、どう守る?/Webacy 五十川CEO × ACV唐澤・村上(1)

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

今回のゲストはWebacy CEO、五十川舞香さんです。

さて、みなさんが暗号通貨(資産)を扱う際、必ず付き纏ってくるのが「Gox」「自己責任」「DYOR(Do Your Own Research)」といった言葉の数々ではないでしょうか?ビットコインをはじめとするデジタル資産は高い透明性・追跡可能な仕組みを持つ一方、ひとつ送付するアドレスを間違えるだけで二度と戻ることがない「人間的な仕組みを許さない」特徴を持っています。

こうした課題に取り組むのか2021年設立のWebacyです。デジタル資産管理を手がけるWeb3企業で、特に「死後のデジタル資産」に着目したアイデアなどで注目を集めています。幼少期に渡米し、スタンフォード大学でエンジニアリングを学び、Microsoftでサイバーセキュリティ業務に携わる一方、シルク・ドゥ・ソレイユにも参加するなど異色のキャリアを辿った五十川舞香さんに、サービスのことからWeb3における女性活躍の話題まで幅広くお聞きしました。6回連続でポッドキャストから一部をテキストにしてお送りします。

ポッドキャストで語られたこと

唐澤: 本日はWebacyのFounderである五十川舞香さんをゲストにお招きしております。舞香さんよろしくお願いします

五十川: よろしくお願いします

唐澤: Webacyのことをご存知ないリスナーの方もいらっしゃると思いますので、まず簡単な自己紹介と、Webacyの概要について教えていただいてもいいですか

五十川: 私は東京の武蔵小金井で生まれて、5歳か6歳ぐらいにアメリカのミネソタ州に引っ越しました。そこから10歳ぐらいまでは日本とアメリカの間で育ち、大学はスタンフォード大学でエンジニアニアリングを専門に学びました。Webacyは2021年に立てた会社で、今はセキュリティなど、デジタル資産のマネジメントをするテクノロジーを作っています。

唐澤: Web3はかなりいろんな領域が出てきていて、セキュリティもかなり成長が早い領域だと思うんですけれども、Webacyとしてどういうお客さんをターゲットにしていて、どのような人の課題を解決されてるんでしょうか?

五十川:Web3のセキュリティが目指すところは、みんなが何も考えなくても大丈夫なセキュリティシステムを作ることです。今のWeb3はユーザーにとって危険なものがたくさん存在します。そのような問題を解決することで、BtoBもしくは他の会社と一緒にコラボレーションできるようにしたいと考えています。

Webacy website

唐澤: もちろんWeb3は盛り上がってきてはいるけど、一部スキャンダルだとか良くないイメージがまだ強いので、そこに取り組むのはすごく意義があることだと思います。五十川さんは何がきっかけでWebacyを立ち上げて、どのように機能してるのか教えていただいてもいいですか。

五十川: 起業する前は、いろいろなスタートアップでインターンとして仕事をし、大学卒業後はMicrosoftでサイバーセキュリティのエンジニアとして入社しました。しかし、スタートアップのカルチャーや働き方が私には大企業より向いていると思っていました。

WebacyはWeb3のセキュリティツールとして安全性を高めるためのインフラなどを作っています。というのも、クリプトの世界では大きい問題が存在します。それは自分が亡くなった時、デジタルの資産をどのように他の人に渡すのかというものです。

この問題を解決するテクノロジーはいろんなユースケースに応用できると考えて、Webacyはこれに取り組んでいます。セキュリティやデジタル資産を守るアプリケーションに使われているテクノロジーは「pre-approved conditional transfer」です。これは何かの条件が満たされたら何かを移動するという意味です。

唐澤: 私もWebacyのユーザーになりましたが、面白いと感じたのがユーザー向けにすごくわかりやすいということ。一言でいうとwill platformみたいなプロモーションや見せ方をされています。自分が亡くなった後にデジタル資産をどうするんだというのを調整してくれるようなプラットフォームではありますが、それは柱でしかなくて、本当のコアはpre-approved conditional transfer。これを活用できるユースケースや領域を今後たくさん増やしていくという考え方ですか。

五十川: そうです。crypto will(※)は便利なツールですが、会社を作るにはそれ以上が必要なので、pre-approved conditional transferをコアとして進めています。

唐澤: crypt wellはユースケースとしては顕在化してるじゃないですか。五十川さんの中で、他にどういう領域に今のコアテクノロジーを今後転用できると考えているのか。要はWebacyとしてどういう領域がさらに有望だと考えられてるんですか。

五十川: 今はcrypto will以外に2つ目のアプリケーションを出しています。バックアップウォレットというアプリケーションで、例えば自分のウォレットへのアクセスを失ったとします。seed phraseをなくした時とか、パスワードを忘れたときとかです。Web2でも結構ありますが、Web3でもそういうことがたくさんあって、バックアップウォレットをWebacyにセットアップしていたらバックアップへのアクセスができるようになっています。もう一つはPanic Buttonというアプリケーションで、これはハッキングの危険性やスパムの危険性があったとき、自分の資産を全部ワンクリックで移動できるというものです。ハックとスパムの防御ですね。

唐澤: 本人が亡くなったり、スパムあるいはハックだったり、パスワード忘れるという事象だったりをトリガーとして、デジタルアセットがpre defineされたルールに従ってtransferされていくということですよね。

五十川: そうです。このように考えるといろいろなアプリケーションを考えられますよね。例えばcrypto transferとか大学のためのお金とか、結婚のためのお金とか。

唐澤: すごく可能性が広い。それがスマートコントラクトの良いところで、ある程度条件を決めておけば何かしら起きたときに、スマートコントラクト側が勝手に元々決められた通りに挙動してくれる。恣意的に後で改ざんしたりとか、干渉はできないというところが一つの特徴と僕も理解してます。

それをデジタルアセットに適用したときにどういうユースケースがあるのかという発想なんですね。いろいろな創業者の方とお話ししてますが、そのような発想する方はなかなかいらっしゃらなかった。汎用性が非常に高いなと思いながら話を聞いてました。

次につづく:「死」にフォーカスした理由 /Webacy 五十川 × ACV唐澤・村上(2)


※webacyのcrypto willとは、webacyが提供するツールの一つで、自分の暗号資産を安全に保管するためのもの。crypto willは、自分のウォレットにアクセスできなくなった場合に、予め設定した信頼できる人に資産を移動させることができる。例えば、自分のスマホやパソコンが壊れたり、紛失したり、盗まれたりした場合に、crypto willを使って、友人や家族に資産を送ることができる。crypto willは、webacyの他のツールと同様に、シードフレーズやキーを必要とせず、自分のウォレットをそのまま使えるという利点がある。

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