自分の記憶をチャットで聞ける「Rewind AI」ChatGPT連携で急成長中/GB Tech Trend

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

誰もが望む「記憶のライブラリー化」を実現するスタートアップに注目が集まっています。

Rewind AIは、ユーザーのPC検索情報と音声マイクから録音された情報を蓄積・分析をした上で、ユーザーが過去にどんなことを調べて、どんなことにインスピレーションを得たのかを後で検索できるサービスです。GPTと連携した「Ask Rewind」が特徴的で、チャット形式で尋ねることで自分が行ったことについて記憶を呼び起こしたり、正確なキーワードを覚えていなくても必要なものを見つけたりすることができます。いわゆるAIアシスタントですが、特定のサービスではなくMacの行動すべてをアシストしてくれるのがウケている印象です。

なお、本サービスはMacユーザー限定で提供されており、データはローカルに保存されるのでセキュリティの観点もクリアされており、さらにAppleのMシリーズチップに最適化することで、数十ギガバイトの記録データをわずか数メガバイトに圧縮するなど効率化も図っているため、記録してハードディスクの容量が圧迫される心配もありません。

同社は昨年11月にAndreessen Horowitzのリード出資を経て資金調達をしています。The Informationの記事によると、さらにそこからわずか半年を経て、NEAが1,200万ドルを出資し、その評価額は3億5,000万ドルになる見込みだそうです。前回ラウンドの4.5倍価値ということで投資サイドの注目度は高いと考えてよいでしょう。

さて、Rewindがここまで企業評価額を伸ばしている理由はやはり、冒頭にも記載したGPT連携にありそうです。Andrreessen Horowitzの投資記事ではRewindについて、「まるで時間を巻き戻すような、これまでSFの世界にしかなかった文脈を考慮した体験ができる」と述べられています。まさにほんのこの数カ月で映画の世界の話が実現しつつあるのです。

RewindのピッチはTwitter上で公開されており、2023年第一四半期でARRがほぼ0ドルから70万ドル以上まで急成長していることが言及されています。また、自社サービスの立ち位置として「拡張サービス」に言及しているのがユニークです。「耳の拡張は補聴器、眼の拡張はメガネ、そして記憶の拡張がRewind」と定義しています。さらに面白い点は、今夏にApple Glassesが市場投下されることをロードマップにすでに盛り込んでおり、かつAndroid端末への実装よりも優先度高くApple Glassesの実装を発表している点です。今年度、注目を集めるであろうAR市場におけるサービス躍進への開発投資へかなり前向きであることが伺えます。

過去、「記憶」をテーマにしたスタートアップはいくつか登場しました。写真をアップしてあとでログで辿れたり、気になる記事を登録してあとで見返せたりするようなサービスです。しかしながら、今思えばとてもユーザーのモチベーションを上げるのが難しい側面を持つサービスで、どこか突き抜けていないものが多くあったのかもしれません。この点、今回のRewindはAIとの対話という新たなインターフェース、そして記憶の回想ばかりでなく、どんなインスピレーションを得たのかまで紐づけて検索できるUXに至るまで、まさに誰もが求めたサービス体験となり、2C向けAIスタートアップとして一抜けしそうな可能性を見せてくれます。

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