OpenAIのSam Altman氏も支援、元iPhone開発者らが創業したHumaneのスマホから画面を無くす試みとは

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2023 TED カンファレンスで、Humane はウエアラブル AI レーザープロジェクター製品を公開し、コミュニティで白熱した議論を巻き起こした。この製品で、レーザー光により発信者 ID を手のひらに投影する機能をデモしたのだ。その状況が撮影された写真がツイッターに投稿されると、わずか数日で30万回以上閲覧された。

元 Apple ソフトウェア エンジニアリング ディレクターの Bethany Bongiorno 氏とクリエイティブディレクターの Imran Chaudhri 氏によって設立された Humane は、人々がスクリーンなしでテクノロジーを体験できる世界を作ることを計画している。Chaudhri 氏は「Inverse」のインタビューで、将来的には AI が身の周りをインターフェース化できると信じていると語った。

iPhone や iPad を開発した元 Apple 社員がなぜ起業?

Humane の2人の創業者 Bongiorno 氏と Chaudhri 氏は、Apple の元上級職だ。

Chaudhri 氏は、デザイナーであるだけでなく、数千の特許を取得した発明家でもあり、過去20年間にわたり、iPod、iPad、Apple Watch、iPhone など、世界で最も人気のある Apple 製品の多くを設計、発明してきた。iPhone の現在のユーザインターフェイスやインターフェイスインタラクションテクノロジーを考案した主要人物の一人だ。

Bongiorno 氏は、Apple で製品開発のソフトウェアエンジニアリングディレクターを務めていた。データ管理とソフトウェア開発の豊富な経験を持ち、Apple iOS や MacOS の実装と管理を主導し、初代 iPad のローンチを支えた重要人物の一人だった。

Humane の共同創業者の二人。左から、CEO の Bethany Bongiorno 氏とクリエイティブディレクターの Imran Chaudhri 氏。2人は元 Apple 従業員であり、Apple が iPhone と iPad を開発するのに貢献した重要人物だった。
Image credit: Humane

Apple が多くのマイルストーンを生み出すのに貢献した2人の上級幹部が、なぜ Apple を辞めて Humane を立ち上げる決断をしたのだろうか? 二人は声明の中で次のように述べている。

我々が開発したスマートフォンやタブレットは人々により便利な生活をもたらしたものの、スマートフォンは人々の注意力の大部分を奪うだけでなく、個人データを盗む危険性があるため、人々を不信感に陥らせている。(Chaudhri 氏)

我々はテクノロジーに対して楽観的な見方をしているが、心の中の疑問に向き合い、より良いものを構築する時期が来たと信じている。(Bongiorno 氏)

そこで彼らは、過去数十年間にわたり、スマートフォンの画面やコンピュータの画面を通じて行われてきた情報の伝達手段を変えたいと考え Humane を設立した。 Humane の目標は、より自然で人に優しいウエアラブル AI レーザープロジェクターを開発し、人々に「スマートフォン画面を見つめる必要のない生活体験」を生み出すことだ。

レーザー投影で、ToDo リストの確認、発信者 ID 表示、即時翻訳

Image credit: TED

Humane は、いくつかの特許を使って AI レーザー投影技術を開発した。あらゆるモノの表面をディスプレイに変えることができ、ユーザはデスクトップ、壁、手のひらに情報を投影できる。Chaudhri 氏もは TED のスピーチで、この AI レーザープロジェクターのさまざまな機能を自らデモンストレーションした。

スピーチ中、彼はデバイスをシャツのポケットに固定し、その直後、AI プロジェクターが音声で着信を知らせ、Chaudhri 氏はすぐに手のひらを上げ、AI プロジェクターに発信者 ID を投影させた。手のひらには ID が表示され、「あとはデバイスをタップするだけで電話に応答できる」と彼は言った。

AI プロジェクターには「catch me up」と呼ばれる機能もあり、ユーザが重要な情報のレビューリストを作成するのに役立つ。デバイスの電源を入れると、「メールがあります」「相手が写真を送ってきました」などの短いリマインダーを手に表示できる。

また、Chaudhri 氏が演壇上で言葉を発すると、デバイスは即座に彼の文章をフランス語に翻訳し、AI が生成した音声でそれをリピートできる即時翻訳機能のデモンストレーションも行った。

AI デバイスでパーソナルアシスタントを開発する Humane

Image credit: Michael Mofina, Humane

Humane の AI でデバイスは、さらに、Siri のような役割も果たせるそうだ。スピーチ中、Chaudhri 氏がキャンディーバーを取り出してデバイスの前に持っていき、「これを食べてもいいですか?」と尋ねると、「この乳白色のキャンディーバーにはカカオバターが含まれているので、あまりたくさん食べるべきではない」と答えた。

Chaudhri 氏は、AI デバイスは人々にとってどのような選択が最適かを知り、提案を与えることができると述べ、まさに健康を気遣うパーソナルアシスタントのように述べた。

Humane のデザイナー Michael Mofina 氏も、AI レーザープロジェクターの新機能をテストする自身の動画をツイッターに頻繁に投稿しており、例えば、個人的に予約した Airbnb の情報を受信したり、宿泊施設に到着した後の位置情報のナビゲーションやさまざまな案内を支援したりすることができる。また、現在地に基づいて公共交通機関の到着予定時刻を表示したり、交通機関用の料金支払 IC カードの残高を表示したりすることもできる。

Image credit: Michael Mofina, Humane

Humane は現在製品開発中だ。 同社デザイナーの Mofina 氏はツイッターで、将来的には AI レーザープロジェクターがスムーズな情報変換や音楽再生、その他の機能など、より多様なシステム作業を実行できるようにし、ユーザのニーズにより適したものにしていきたいと述べた

Microsoft や OpenAI と提携、シリーズ C ラウンドで1億米ドルを調達

Humane は最近、シリーズ C ラウンドを完了し、1億米ドルもの資金を調達した。このラウンドは Kindred Ventures がリードし、SK Networks、Microsoft、LG Technology Ventures、Volvo Cars Tech Fund などが参加した。既存投資家には Tiger Global、Qualcomm Ventures、OpenAI 創設者 の Sam Altman 氏らも居て、調達した資金は技術開発に加えて人材の採用にも投資される予定だ。

それだけでなく、Humane はテクノロジー大手の Microsoft や OpenAI を含む最近の協力パートナーも発表している。Humane は Microsoft と協業によりクラウドインフラストラクチャ機能を強化し、OpenAI と連携し大規模な Humane AI エクスペリエンスを提供できるようにする。また、韓国の LG との協業では、Humane の中核技術を家電製品への応用に拡大することが期待されている。Volvo Cars Tech Fund の出資を受け、自動車産業への応用も期待されている。

Sam Altman 氏は Humane について非常に楽観的で、次のように述べている。

Humane チームは非常に優れていると思う。新しいプラットフォームと将来のテクノロジーの世界に関する彼らのアイデアは、彼らのプロフェッショナリズムと相まって、彼らのビジョンを完全に実現している。私はそれを見ることができてとてもうれしい。だからこそ、私は彼らに投資したいと思ったのだ。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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