京都に1万人集結目指すーーIVS KYOTOが狙う新たなスタートアップ・カンファレンス像 #IVS2023

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Headline Japan代表取締役の島川敏明氏

6月28日から開催予定のカンファレンス「IVS KYOTO・IVS Crypto」は筆者が過去に参加してきたIVSとは一味違うものになりそうだ。これまで本誌BRIDGEはスタートアップや投資家たちが集うこのカンファレンスを取材してきた。しかし前回の那覇からその形が大きく様変わりし、数百人が招待されるクローズドな「勉強会」は国際色豊かなカンファレンスへと様変わりした。

本誌もグループ会社のPR TIMESと協力して、このカンファレンスとも連携したスタートアップの合同製品発表会となるStartup!PR Weekを開催予定だ。同様のサイドイベントは100件ほどの開催見込みになるという。

岸田内閣になり、2022年11月には「スタートアップ育成5か年計画」が策定されるなど、本格的に国内でも次の産業を生み出さなければならないという危機感や機運が高まりつつある。企業育成の手法としてのスタートアップに改めて注目が注がれる中、ステークホルダーたちが集まるカンファレンスのあり方にも変化が求められる。

本稿では京都府や京都市、一般社団法人京都知恵産業創造の森と共にIVS KYOTO実行委員会を立ち上げたHeadline Japan代表取締役の島川敏明氏に話を聞いた(太字の質問は全て筆者。回答は島川氏)。

コロナ後に対面式のイベントが戻りつつある中、リスボンではWebSummitに世界中から7万人が集まったそうです。国内でも国際的なカンファレンスが求められる中、IVSは昨年の那覇で大きくモデルチェンジしました。どのようなカンファレンス像をイメージしているのかそこから教えてください

島川:まず今回は規模感で言ったら8000人から1万人以上を目指すことになるかなと思うんですけれども、非常に大きなイベントになります。そういった中で僕たちが提供したいものとしては二つの軸があると思ってます。

ひとつは既に事業を起こしてる人たちの成功確率を上げること。今までのIVSでも成し遂げられてたことだと思うんですが、それをさらにブラッシュアップし、彼らのためになるようなこと、僕たちは「実利」って呼んでますけれども、そういった起業家の方が実利を持って帰ってもらえるような、例えば資金調達が決まるとか、M&Aが決まるとか事業提携が決まるとか、商談が決まるとかそういったものですね。

これを丁寧に作り上げていきたいなと思っています。二つ目が、今回、まさにチャレンジしてるところではあるんですけれども、スタートアップ起業家を増やすっていうことであったりとか、スタートアップの関係人口を増やすというところです。

今の日本ではなかなか起業っていうようなものが、身近ではないし、これからどんどんさらに増やしていかないといけないとは思うんです。でもそれを難しくしているのってシンプルに起業家との接点がなかったりだとか、その機会がないからですよね。

特に僕も元々関西圏にいましたけれども、関西って本当に機会がないので、京都で開催してるIVSがそういった方々向けに、この日本のスタートアップ、日本ましてやアジアのスタートアップの中心になっていきたいと思ってるんです。

彼らが飛び込んでいけるようなエントリーポイントを作るのは非常に重要な意義もあるんじゃないかなと思っているところです。

従来のクローズドなIVSは選ばれた起業家や投資家、事業会社の方々でした。今回の参加見込みはどのような方々ですか

従来の参加者を対象にしたPRO BASEと次世代の起業家に向けたNEXT PASSが用意された

島川:注目すべき新たな参加者属性としては、起業家の予備軍と呼ばれる人々が大きな存在だと思います。たとえば、学生や起業を目指す社会人など、このような方々が大勢参加しますので、彼らのためのコンテンツをしっかりと用意しています。

また、大企業や地方の方々の中にも、スタートアップを積極的に起こしたいと考えている方々も多く存在しています。地方の行政機関やコミュニティハブ、地方銀行などを通じて、今回のパートナーとなっていただいている方々もいらっしゃいます。そのような方々を通じて、京都や関西圏以外の地域でもスタートアップを促進し、盛り上げていこうと考えています。

彼らのためのコンテンツをもう少し具体的に教えてください

島川:例えば起業家予備軍の方々に対して、VCやアクセラレータによるアクセラレーションの体験版のようなコンテンツを用意しています。通常のアクセラレーションプログラムは通常、6カ月ほどかかるため、アイデアピッチのようなものになりますが、そのようなアイデアを提示したり、起業家予備軍の学生や社会人の参加者がチームを組んでディスカッションし、どのアイデアを追求するかを検討したり、VCと一緒にディスカッションするようなコンテンツも用意しています。

またVCに出会うためのリバースピッチのようなものも用意しました。数多くのVCの中から、自分たちにとって最適なパートナーを見つけるためのコンテンツです。さらに、大企業や行政の方々も同様に、自分たちが持つリソースや、スタートアップとの協力について、どのような取り組みを考えているかなどを伝える場も提供します。

逆に今までIVSに参加してた方々は何を期待して参加すればよいでしょう

島川:今回は参加者を二つの階層に分けました。ひとつ目は経営者向けエリアです。これまでのIVSに参加いただいた多様な経営者や投資家向けのエリアが、地下1階の「PRO BASE」という場所に配置されています。そして、先ほど述べた次世代の起業家や今後のスタートアップに関わりたい方々向けのエリアが、3階の「NEXT CITY」というエリアになります。フロアが異なるため、チケットも異なるものになっています。

私たちは既に事業を経営している方々向けに、PRO BASEをご用意しています。そのエリアでは、これまでと同様に現場の経営ノウハウや最先端のスタートアップビジネスのトレンドについてのセッションやワークショップなど、生々しい情報や知識を共有するコンテンツを提供する予定です。

確かに学びの機会としては、ウェビナーや東京でのイベントでも良いと思いますが、私はIVSのようなオフサイト、地方で開催されるカンファレンスの醍醐味は、やはり濃密な出会いだと考えています。

これまでは600人から700人規模で、ホテルの宴会場などひとつの場所で参加者同士が交流する形式でしたが、今回はもちろんそのようなネットワーキングの場もありますが、より良い出会いを実現するために、参加者同士が出会えるようなマッチングの取り組みをさらに多く盛り込んでいます。

多数の方が参加するわけですが、マッチングはどうするのですか

島川:事前にスタートアップや投資家、そして事業会社の方々に対して異なる項目のアンケートを実施し、例えばスタートアップが1〜2億円程度のリード投資を探している場合、どの投資家の方に会うべきか、どの部署の担当者に会うべきかを一目でわかるようにします。また、事業会社の方々が抱える課題やニーズ、スタートアップとの面談希望などもアンケートから把握し、事前にどの人にアプローチすべきか、誰に会えば良いかが地下1階のPRO BASEの参加者同士のアンケート結果によって明確になるようにする予定です。

その結果を元に、資金調達や商談、事業提携などが円滑に進むような施策を取り入れています。当日も、ゲストコネクターを配置し、参加者が相談したい相手にしっかりと案内します。相談内容に基づいて、私たちが事前にアンケート結果のリストやプロフィール写真をまとめて用意し、参加者が希望する相手を検索し、地下1階に誰が参加しているかも集計します。なので、例えば、誰かが地下1階にいる場合、参加者がその情報を確認して相手を探しに行くことができます。

当日にマッチングができなかった場合には後日、メールを通じて繋げることも考えています。マッチングの施策は、おそらく一番力強いものだと思いますのでご期待ください。

スタートアップ経営者の方々の期待値は採用にあると思います。特に京都は学生が多いのでその辺りの企画はどうなっていますか

島川:HR(人事)に関しては、複数の取り組みがありますが、大きな企画としてHR横丁というエリアを用意しました。今回の会場であるみやこメッセは3階建てで、そのうちの1フロアがフードコートのような形になります。

その一角にはHR横丁というエリアがあり、各HR関連企業が参加し、採用に関する様々なマッチングイベントを行います。地元の学生の方々が、スタートアップの経営者と交流する機会や、エンジニアなどスタートアップが求める人材に対して、企画を練ったイベントを通じてサポートする予定です。

那覇のときにも、クリプト系のスタートアップ、特に海外からやってきた方々がすごい特徴的で大きく変わったなっていう印象がありました

島川:前回はコロナ禍も完全には終息しておらず、ビザの問題もあって海外からの参加者を呼ぶことがなかなか難しかったため、私たちが一人ひとり手作業で対応する状況でした。しかし、今回はビザの問題もなくなり、積極的に海外の方々を招待できる状況になりました。

登壇者も既に公開されていますが、非常に有名なL1チェーンの開発者やステーブルコインの創業者など、超有名な方々が多く参加される見込みで、その規模も1,000人以上になると思います。今回のIVS KYOTO、IVS Cryptoは従来よりも国際カンファレンスの雰囲気をより感じられる会になると思います。

最後にもう一点、サイドイベントには特色があると思っています。那覇のときも国際通りを埋め尽くしたわけですが、京都の街ではどのような取り組みがあるのでしょうか

島川:サイドイベントに関しては、現時点で60以上のイベントが予定されています。今後さらに増える可能性があるため、おそらく100近くになるのではないかと思っています。この3日間やその前後の土日や平日を含めて、京都や関西圏全体で多くのイベントが開催されることになるはずです。中でもピックアップするとすれば、二条城を貸し切るようなイベントもあります。演出も豪華で、これだけでも参加する価値があると思います。

他にも、もちろんWeb3系のミートアップやWeb2の投資家と起業家がピッチ会を行ったり、業界ごとのサイドイベントやサークルなどもあります。サウナに行こうというようなイベントもあって、バラエティ豊かですね。このサイドイベントは参加者やスポンサーのみなさんが主催者となるもので、いわば、ユーザージェネレーテッドコンテンツ的な盛り上がりを作ってくれるものだと思っています。

参加者のみなさんが毎日複数のイベントに参加し、様々な交流の機会を楽しんでいただければ非常に嬉しいです。

ありがとうございます

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