デライトVのベンチャービルダーから輩出、元情シス担当者が作ったSaaS管理「zooba」が正式ローンチ

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左から:エンジニアの石橋滉氏、CEO の名和彩音氏、CTO の Arash Bahrami 氏
Image credit: zooba

デライト・ベンチャーズはかねてより、ディー・エヌ・エー(東証:2432)のグループ内外の人々と共に新規事業を立ち上げる「Venture Builder」というプログラムを運営していて、このプログラムの募集枠は2021年秋以降、一般にも開放された。マイクロソフトでサポートエンジニアを務めた後、ディー・エヌ・エーの情報システム(情シス)部門のマネジメントを担当していた名和彩音氏が、このベンチャビルダーを通じて生み出したのが SaaS 管理サービスの「zooba」だ。25日、正式ローンチした。

ディー・エヌ・エーは、コロナ禍に渋谷ヒカリエにあった本社スペースの賃貸契約を解約し、渋谷スクランブルスクエアの WeWork に移転した。いわば、「本社オフィスのクラウド化」とも表現できるだろうが、それより前から、システムについてもオンプレミス環境からの「クラウド化」を進めていて、名和氏はそうした作業に関わる立場にあった。クラウドや SaaS の活用が増えたことで新たに出てくる情シス部門にとっての課題が、コストとセキュリティ両面からのアカウント管理だ。zooba の誕生はそんな必要に端を発する。

zooba では、SaaS のアカウントが利用されているかどうかをモニタし、アクティブではないと判断された場合、現場の人々(そのアカウントの社員の同僚)に問い合わせを入れる。該当者がすでに在籍していない、外部委託者でプロジェクトを離れた、すでにサービスを利用していない、などの確認が取れれば、情シス担当者が zooba 経由で当該アカウントを削除する。zooba では現在、約30の SaaS と API 連携していて、一元管理しながら必要に応じて SaaS アカウントの削除を実施できる。

アカウント管理の理想論から言えば、SaaS のアカウント管理も全社のディレクトリサーバ上で、社員毎の関与プロジェクト、職位、担当ロールなどに応じて、一元的に管理されるべきだろう。ただ、現場でアドホック的に出てくる SaaS ニーズにこれでは対応しきれないし、zooba が当初ターゲットにしようとしている中小企業(社員数300〜1,000人規模)では、ディレクトリサーバによる一元管理が徹底できているかどうかもわからない。なかにはディレクトリサーバが無い企業もあるだろう。

Image credit: zooba

zooba は、アカウントの棚卸しに非常に強みを持っています。もちろん、あるアカウントが使われているか使われていないか、システム上で定量的な判断もできますが、それに加え、現場の人に聞くという定性的な自動アクションを入れるようにしました。どちらの運用にウェイトを置くかについては、企業によって、柔軟に対応できます。(名和氏)

また、元情シス担当者だからこそ備えられた zooba の機能の一つが、シャドー IT(情報システム部門などが関知せず、現場=ユーザー部門が独自に導入した IT 機器やクラウドサービスなど)の検出機能だ。これらはコストの問題以前に、企業にとって社全体のセキュリティリスクになる可能性がある。検出に使われる方法について詳しいことは言えないとのことだったが、複数の方法を組み合わせることで、情シス担当者がシャドー IT を排除するのを支援してくれるようだ。

zooba のチームは名和氏のほか、CTO の Arash Bahrami 氏、CBO の清川哲也氏、エンジニアの石橋滉氏らで構成される。同社は今回のサービス正式ローンチとあわせ、昨年8月に、デライト・ベンチャーズとゼロイチキャピタルから1億円をシード調達していたことを明らかにした。今後は、SaaS 管理のための SaaS 開発に加え、企業の情シス部門の業務を請け負うシステムインテグレータ(SI-er)などとも連携しサービスのスケールを狙う。

この分野には、マネーフォワード i が運営する「Admina(旧称はマネフォーワード IT 管理クラウド)」、ユーザベース(東証:3966)出身の竹内秀行氏らが2018年9月に立ち上げた「YESOD(イエソド)」、ラクスル(東証:4384)が提供する「ジョーシス」などが競合として存在する。

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