NY〜ロンドン間90分飛行が目標、Destinusが超音速機開発に名乗り——水素燃料で環境影響も最小限に

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話題のポイント:2003年にコンコルドの運用が終わって以降、超音速航空機は登場していませんでした。しかし、環境に優しい超音速航空機を実現するべく、航空宇宙スタートアップがいくつか登場しています。その中でも最も有名なのはコロラド州を拠点とする Boom Supersonic ですが、今回紹介する Destinus のようなスタートアップも、Overture やコンコルドを超えるさらに高速な航空機の創造を目指して開発に励んでいるのです。

スイス本社を置く航空宇宙スタートアップの Destinus は、マッハ5(時速約6,000km)の超音速飛行を実現する航空機の開発に取り組んでいます。この技術が確立された場合、ニューヨークとロンドン間をわずか90分で結ぶという驚異的な飛行時間を実現するものとなります。

Destinus は液体水素を燃料として使用したターボジェットエンジンとラムジェットエンジンの組み合わせによって動作する水平に離着陸するための飛行機とロケットのハイブリッドを開発しています。一定の高度と速度に達した後、航空機は低温水素ロケットエンジンに切り替え、超音速に加速します。これによって、多くの国際線が巡航高度33,000〜40,000フィート(約10,000〜12,000メートル)を飛ぶのに対し、Destinus は108,000フィート(約33,000メートル)での巡航が可能となります。

Destinusの開発ラインナップは現在2種類で、「Destinus S」は25席のビジネスジェットとして、最大10,000キロメートルの飛行距離があります。一方、「Destinus L」は、最大22,000キロメートルの飛行距離を持つ、300〜400人乗りの大型旅客機として設計されています。

Destinus は今後、2030年までにフランクフルトから上海までの飛行を3時間未満で実現することを目標としており、これが実現されれば、従来の航空旅行の常識を覆すものであるだけでなく、水素を燃料とすることで環境への影響も最小限に抑えられるのです。

Destinus はシリアルアントレプレナー Mikhail Kokorich 氏によって設立されました。彼はアメリカの宇宙インフラグループ Momentus の CEO としても知られていますが、国防総省の懸念を受けて Momentus の株式を売却した後、彼はスイスに移住し、Destinus を設立しました。昨年、2,900万米ドルの資金調達を成功させ、スペイン政府との間で、水素推進技術の拡大に関する2,670万ユーロ(約42.3億円)の契約を締結しています。

スペイン政府は、水素推進の開発に注力しており、Destinus はその中心的な役割を果たしています。2022年12月には、スペインのエネルギー多様化研究所が、水素を使用した超音速飛行の可能性を探るための1,470万ユーロ(約23.3億円)のプロジェクトに Destinus を選定しました。

Destinus の技術とビジョンは、航空業界の未来を大きく変える可能性を秘めていると言えるでしょう。超音速飛行の実現で、国際的なビジネスや観光の新たな可能性を開く日は近いのかもしれません。

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