太陽光と水だけで進むエンジン、小惑星やデブリから鉱物資源収集など——宇宙開発を革新するTransAstraの技術

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話題のポイント:2016年に Joel Sercel 氏によって設立された TransAstra は、宇宙産業の多面的な進化をリードするスタートアップです。宇宙物流、小惑星の鉱物資源開発、宇宙デブリの管理など、多様なプロジェクトを手がけています。

TransAstra が開発した「Omnivore」と呼ばれる推進システムは、水やほぼ任意の液体を推進剤として使用できる技術です。集光した太陽光をエネルギー源とし、電気推進よりも高速で安価、かつ運用が柔軟である点が革新的と言えます。宇宙における資源探査や物流の効率化に貢献する可能性があります。

同社が開発した宇宙望遠鏡「Sutter」を用いて、資源が豊富な小惑星や宇宙デブリを特定し、位置を特定することができます。このシステムは、地上の観測所で既に使用されており、来月から商用販売が開始される予定です。これにより、資源探査が劇的に効率化されます。

TransAstra は宇宙デブリを回収するための膨張式捕捉バッグ開発に向けて、NASA(アメリカ航空宇宙局)から85万米ドルの Small Business Innovation Research(SBIR)Program Phase II 契約を獲得しました。この膨張式捕捉バッグは、目標となるデブリを包み込むように設計されています。

膨張式のストラットを使用してバッグを閉じ、小型の宇宙船がデブリを別の軌道に移動させるか、地球の大気圏に再突入させることができます。複数のデブリを一度に捕獲する能力を持ち、推進剤の消費を大幅に削減する可能性があります。この技術は、宇宙デブリ問題の解決に向けた新しいステップとなるでしょう。

また、TransAstra は米軍からの SBIR Phase II 契約 を受けて、Sutter Turn Key Observatory(Sutter TKO)という観測所のプロトタイプを開発中です。この観測所は、最大18台の統合望遠鏡を搭載し、電力供給がある任意の遠隔地で稼働するように設計されています。つまり、月や火星などに設置して、これまで地球から一方方向からの観測に留まっていた宇宙観測が一段と進化する可能性があるのです。

TransAstra は、多角的な視点から宇宙産業に革新をもたらしています。推進システムの Omnivore、宇宙望遠鏡の Sutter、膨張式捕捉バッグ、観測所の Sutter TKO など、そのイノベーションは多岐にわたります。これらのプロジェクトとテクノロジーが成功すれば、宇宙産業だけでなく、多くの業界に影響を与える可能性があります。

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