
本稿は、11月8〜10日に開催されている B Dash Camp 2023 Fall in Fukuoka の取材の一部。
福岡で開催中のスタートアップ・カンファレンス「B Dash Camp 2023 Fall in Fukuoka」のピッチコンペティション「Pitch Arena」には約150社から応募があり、書類審査・面接を通過した15社のスタートアップが予選に登壇、このうち7社がファイナリストに選ばれた。決勝では、身体をスマホやタブレットで撮影することで最適な運動プランを提案してくれるアプリを開発する Sportip が優勝した。
Pitch Arena ファイナルラウンドの審査員を務めたのは、
- 青柳直樹氏(メルカリ 上級執行役員 SVP of Japan Region)
- 清明祐子氏(マネックスグループ代表執行役 Co-CEO)
- 長井里実氏(野村證券 コーポレート・ファイナンス八部 部長)
- 舛田淳氏(LINE ヤフー エンターテイメントカンパニー CEO )
- 宮田昇始氏(SmartHR 取締役ファウンダー/Nstock 代表取締役 CEO)
- 吉田浩一郎氏(クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO)
- 渡辺洋行氏(B Dash Ventures 代表取締役社長)
……の7人の皆さん。

Image credit: Masaru Ikeda
本稿では、ファイナリストの顔ぶれとピッチの様子をランダウンしてみたい。
【優勝】【ノバセル賞】【AGS 賞】Sportip Pro by Sportip


スポーツやリハビリの現場では、データや知識に基づかない根性指導により、寿命さえ縮められてしまうことがある。学校の部活動では指導員が40%不足、フィットネスジムで指導を担当するのはアルバイトが90%、介護施設では知識を持たない担当者がリハビリしているケース82%に上るという。

Sportip では、スマートフォンやタブレットで撮影するだけで身体情報を可視化し、適切な運動プランを1秒で提案するアプリ「Sportip Pro」を開発した。228のチェックを行い、ユーザの状態に応じたフィードバック、トレーニングを提案する。ティーチングを AI、コーチングを人が対応することで、業務効率向上が狙える。
Sportip は2020年6月、マネックスベンチャーズ、DEEPCORE、Deportare Partners から数千万円を調達した。
【準優勝】【野村賞】NoseID by S’more


S’more(スモア)は、犬の鼻のしわ「鼻紋」をスマホでスキャンすると個体識別ができるアプリ「NoseID」を開発している。鼻紋と愛犬情報を登録しておくと、スマホさえあればいつでもどこでも犬情報を照会することができる。ペットサロンや病院、ドックランなどで、鼻スキャンだけで一連の手続きが完了する。

ローンチ後ユーザは1.2万人に足し、8割以上が情報の登録を完了している。当初は犬が災害時に迷子になった時、病気になった時など、緊急時のみの利用を想定していたが、個体データ、活動データなど、多くのデータを集約することで利便性を高める。将来は、犬のマイナンバーをつくり、人とペットとの共存社会を築く。
【バクラク賞】【NOT A HOTEL 賞】【Caster 賞】PICKFORM by PICK



不動産業界の営業パーソンは、仕事のうち30%を契約準備に費やしている。その理由は、特に書類が多いことだ。一契約に必要な書類は177枚で、印刷・製本・封入にも時間がかかる。我々の日常では電子契約化が進んでいるが、不動産業界においては宅地建物取引業法の制約から、電子契約化する上でのハードルが高い。

PICK は、不動産取引に特化した電子契約サービス「PICKFORM」を開発した。法的要件を満たしており、PICKFORM は国内で唯一、国土交通大臣から認定され、この法的部分で大きな優位性を有している。電子契約のため、印紙代がかからないメリットもある。国内の不動産業者10万社、建築業社14万社がターゲット。
samansa by サマンサ

samansa(サマンサ)は恋愛したい〝すべての人〟が利用できる恋活マッチングアプリだ。写真登録が不要で、本人確認も必要なく、既婚者でも利用できる。samansa でマッチする相手は AI なので、相手に自分の身分がバレる可能性もない。アプリの向こう側にあたかも実在の人物がいるかのような体験ができる。

通常の人間が相手をにするマッチングアプリは通常3ヶ月くらいで卒業してしまうが、ここを起点にさまざまなサービスを拡張することで、ユーザを飽きさせない体験を提供し続ける。プレミアム版でマネタイズし、男性向け女性 AI キャラクタだけでなく、女性向け男性 AI、LGBTQ 対応のキャラクタなども提供する計画だ。
coco by coco

現在、小売店は業態によって2極化している。低単価自動化と高単価属人化の2つだ。自動車販売は後者に分類されるが、各種自動化ツールによって誤りを減らし業務プロセスが自動化されている前者と違って、後者は自動車販売の現場は属人的なので、違う商品が届く、客への連絡漏れ、などさまざまな問題が生じている。

そこで、coco はデジタルツールの乱立を避け、LINE、メール、SMS を一元管理できる業務用アプリを開発した。担当やステータスなどによる管理で見落としを防止し、チームでの接客対応を実現する。顧客とのやりとりは自動で蓄積されるため、CRM への情報入力が不要になる。顧客体験・業務効率の双方を改善する。
【パーソル賞】mento by mento

日本では、マネージャーの負担が重すぎると言われる。自分の日々の業務に忙殺され、部下をマネージメントする余裕がない。企業はマネージャーに対しスキルを向上するための研修を提供するが、実は現場の課題はさまざまで、マネージャーの育成より、現場を支援することが重要だ。

mento は、企業のマネージャーに行動変容をもたらすコーチングプラットフォーム「mento(メント)」を提供している。200人のプロコーチの中から最適者をマネージャーにマッチングし、1to1でパーソナライズされた成長支援を行う。プロコーチと話した内容は AI が議事録化し、構造化してレポートしてくれる。
mento は、2019年10月にシードラウンドで4,000万円、2022年4月にシリーズ A ラウンドで3.3億円を調達した。
SecureNavi by SecureNavi

SecureNavi は、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)や P マーク(プライバシーマーク)といった社内規定の構築や運用を支援するプラットフォームだ。わかりやすいプロダクトデザインとサポートで、情報セキュリティの知識がない担当者でも取り組みをすすめることができる。

また、同社では P マーク取得を効率的に実現するための機能を提供している。この機能では、P マーク取得に必要な文書の作成や運用を自動化できる。また、適切なセキュリティ対策を実施するための手順やチェックリストも提供される。
SecureNavi は昨年3月、プレシリーズ A ラウンドで1.3億円を調達した。
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