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米国の配車サービス業界は、どんな新種のスタートアップを後押ししているのか?(前編)

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配車サービス業界が低賃金という懸念を抱える中で、ベンチャーキャピタル(VC)が支援するスタートアップが多数生まれ、商品を販売したり、広告を表示したり、ビッグデータを処理してルートを最適化させたりすることで、ドライバーの収入を増やす手助けをしている。 だが配車サービス業界の中にある不満は、ドライバーの収入を増やすための企業という新しいカテゴリー誕生の一因ではあるかもしれないが、それはほんの一部分に過…

Octopus の車内広告
Image credit: Octopus

配車サービス業界が低賃金という懸念を抱える中で、ベンチャーキャピタル(VC)が支援するスタートアップが多数生まれ、商品を販売したり、広告を表示したり、ビッグデータを処理してルートを最適化させたりすることで、ドライバーの収入を増やす手助けをしている。

だが配車サービス業界の中にある不満は、ドライバーの収入を増やすための企業という新しいカテゴリー誕生の一因ではあるかもしれないが、それはほんの一部分に過ぎない。

成長産業

Uber や Lyft、その他無数の配車サービス企業は2018年に340億米ドルの市場を形成していると報じられており、この数字は5年以内に1,200億米ドルにまで達するとも言われている。この急成長を後押ししているのは、これらの大手プレイヤーに登録している数百万人の個人である。Uber だけでも、アメリカに90万人、全世界で300万人のドライバーがいるとしている。

だが配車サービス業界は深刻な問題に直面している。多くのドライバーは、手数料や経費、税金を考慮すると、あまり稼いではいないのだ。JPMorgan Chase Institute の昨年の報告書は、Uber と Lyft のドライバーの収入が4年前の53%に減少したと指摘している。特に業界の代表格である Uber はドライバーの手取り賃金に関して、そしてサージプライシングの割り増し分を配車サービス企業がドライバーに渡していないと示唆している多くの報告書に関して、厳しい批判にさらされている。

ちょうど今週(11月第2週)、ニューヨーク市のドライバーのグループが、受け取るべき税の返還を受けていないとして Uber を訴える計画であるというニュースが流れた。そして全米のドライバーは今年、手取りが減少していることに関して、ストライキを行った。状況はさらに悪くなることもあり得る。

Uber はコスト削減と、(まだずっと先のことかもしれない)黒字化の達成のために奮闘しており、そのためにはドライバーの収入をさらに減らす必要があるかもしれないとも以前から示唆している。しかし今年アメリカ証券取引委員会への IPO 前の申請で、同社はドライバーの不満が高まっていることを認めた。同社はこう述べている。

弊社は小売や卸売、レストランやその他の似た業種と同等の収入の機会を提供したいと考えていますが、相当数のドライバーが弊社のプラットフォームに不満を抱えていることを感じています。弊社の財務状況改善のためにドライバーのインセンティブを減らそうとしているため、ドライバーの不満は全体的に増大していくものと予測しています。

この状況は、ドライバーの利益を向上させると約束するサードパーティにとっての、肥沃な土壌を作り出している。そのうちの1つがメリーランド州ベセスダのスタートアップ Octopus Interactive であり、インタラクティブで位置情報を基にした広告テクノロジーを車両の乗客席側に設置することで、配車サービスのドライバーが副収入を得られるようにしている。

働いているのが Uber でも Lyft でも Via でも Gett でも、あらゆるドライバーは Octopus に無料のタブレットと取付器具、そして LTE データを申し込むことができる。タブレットには後方に向けた画面があり、乗客はゲームをプレイしたり賞金を勝ち取ったりすることもでき、そこに差し込まれる短い広告で、ドライバーは最大で月に100米ドルを稼ぐことができる。

動作中の Octopus Interactive
Image credit: Octopus

すべてのクイズやゲームは Octopus 社内で設計および製造されており、広告に関しては、Octopus は Disney、Red Bull、Sprint、National Geographic、Bloomberg を含む多数の有名なクライアントと提携している。

Octopus の共同設立者兼 CEO の Cherian Thomas 氏は VentureBeat にこう語った。

Uber や Lyft の相場やインセンティブが下落したため、ドライバーの収入は過去数年間で50%近く下がり、ドライバー間の競争は激しくなっています。彼らは自分たちの車で実質的に小さなビジネスを営んでおり、補完的なマネタイズのチャネルを賢く活用しているのです。

先週、Octopus は新たな1,030万米ドルの資金調達ラウンドをクローズしたと発表したが、このニュースは元々、証券取引委員会への申請を通じて9月にリークされていたものである。アメリカで最大のテレビ局運営業者である Sinclair の関連会社、Sinclair Digital Group がこのラウンドをリードし、マーケティングとメディアに注力する VC 企業である MathCapital もこのラウンドに参加した。

2つめのスクリーン

Thomas 氏と COO の Bradford Sayler 氏が2018年に設立した Octopus は、以前は VC の支援を受けていた Spotluck であり、ゲーミフィケーションを用いて人々が食事をする地元の店を見つけられるようにしていた。Spotluckでは、アプリのダウンロード数を獲得するための追加的なマーケティングのチャネルとして、彼らは Octopus の初期バージョンを作っていた。Octopus の人気が出ると、彼らは Spotluck を閉じて Octopus に注力し直すことに決めた。

Octopus がドライバーや広告コミュニティの間で好評を博した後は、私たちはチームの時間をすべてそれに使うことに決めました。Spotluck は消費者やレストランにとって楽しいアプリでしたが、Octopus にはより優れたビジネスモデルとユニットレベルのエコノミクスがありました。チームとして私たちはピボットし1つのことを上手くやることが最善であると考え、幸いなことに取締役会もビジネスの転換に賛成しました。(Thomas 氏)

ゲームを楽しむ Octopus の乗客
Image credit: Octopus

ドライバーにしてみると、月に100米ドルを追加で稼ぐことができるという約束は魅力的だが、それだけ稼ぐことができる可能性はどの程度だろうか。Thomas 氏によれば、「ひっきりなしに働く」ドライバーの多くは100米ドルに達するが、週に約40時間働くフルタイムのドライバーは、正確な額は乗客の数や利用状況によるであろうが、平均して75米ドルが期待されるとしている。しかしながら、仲間のドライバー1人に Octopus を勧めるたびにもらえる25米ドルを含む、追加収入をドライバーは得ることができ、また同社は一般的に良好な乗車体験がより多くのチップにつながるだろうとも述べている。

最大のペイアウトはより多くのチップという形でもたらされます。チップの平均上昇率は30%であると弊社のドライバーは報告しており、これは上手くいけば月に100米ドルを超えます。これまで弊社はドライバーに200万米ドル以上を振り込んでおり、Octopus のタブレットは700万米ドル以上のチップに貢献してきたと見積もっています。(Thomas 氏)

表面上は、このシステムは悪用されやすいように見える。例えば、どのようにして後部座席に乗客が乗っていると分かるのだろうか。また、ドライバーやその友人が後部座席でゲームをプレイするのを止める手立てはあるのだろうか。実はこれを防ぐメカニズムが組み込まれており、それぞれのデバイスが GPS の位置情報や車両の速度、加速度計、エンゲージメントレベルといった75個のデータポイントを2分毎に発しているのだ。そして Octopus は定期的にそのデータとドライバーの乗客ログを突き合わせている。

広告主を満足させるために、Octopus は乗客検知を通じて Google Tensorflow の機械学習プラットフォームを用い検証済みのインプレッションを届けることで、後部座席に乗客が乗っていることを確認することもできる。これによって、広告主は広告が表示されている間に画面の前に座っている乗客についてのみ支払うことができるようにしている。

Octopus では、TensorFlow を使って乗客の感情を読み取っている。
Image credit: Octopus

一般的に消費者がスマートフォンにかじりついている時代において、Octopus はより高いエンゲージメントを約束しており、これは特に複数の乗客が一緒に移動する際には魅力的と言える。しかし Octopus はこの体験により個人の乗客でもスマートフォンでのいつものブラウジングから別の世界へと移行させることができるとしている。

弊社のタブレットは時に1日100万回近くタッチされています。弊社が提供するゲーム体験は(ゲームセンターやバーなどの)他の場所ではお金を払って遊ぶような引き込まれるもので、乗客は無料で触れることができてわくわくしています。また毎日、その場で当落が分かる賞金を提供しています。これまで弊社は乗客をその気にさせるために5万米ドル以上を支払ってきました。弊社は乗客の半数近く、特にグループで乗車する乗客は、乗車中にタブレットにタッチしていると見積もっています。(Thomas 氏)

ドライバーがお金を稼ぐことができるよう広告ベースのアプローチを採用した企業としては、Octopus は決して最初というわけではない。ミネソタ州を拠点とする Vugo は似たサービスを提供している。またサンフランシスコとニューヨークを拠点とする Firefly は、車の屋根に電子的なジオターゲティング広告を乗せることでドライバーに毎月最大300米ドルの副収入を約束する。最近、Alphabet の VC 部門である GV は同社への3,000万米ドルの投資をリードした

Firefly の屋根上広告
Image credit: Firefly

ニューヨークを拠点とする Halo は Firefly と似たサービスを提供しており、一方で Wrapify はあらゆるドライバーに対して、通学に使われるものであっても、車に広告を乗せることで道のりをマネタイズできるようにしている。

シカゴを拠点とする Ivee は、ブランドと提携して「経験価値マーケティング」を届けるという少し変わったアプローチを採用しており、これには車の装飾や雰囲気を変えることや、乗客用のカラオケ体験を用意するということまで含まれている。Ivee によれば、Ivee のキットを使用しているドライバーではチップを払う乗客が2倍になり、チップの平均額が15%アップした。

カラオケができる Ivee の車内
Image credit: Ivee

後編に続く

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

インドインキュベーターのC-CAMPと業務提携、インドでの本格投資を開始

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Beyond Next Ventures株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:伊藤毅、以下「当社」)は、この度、Centre for Cellular and Molecular Platforms(本社: インド、ベンガルール、CEO: Taslimarif Saiyed、以下「C-CAMP」)と業務提携契約を締結いたしました。今回の業務提携を通じて、インド及び日本のアントレプレナーの育…

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ティアフォー、The Autoware Foundationを設立 自動運転OSの業界標準へ

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株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:武田一哉、以下ティアフォー)は、米Apex.AIおよび英Linaroと共同で自動運転OSの業界標準を目指す世界初の国際業界団体「The Autoware Foundation」(所在地:東京都文京区、代表理事:加藤真平、以下AWF)を設立します。誰でも無償で使える自動運転OSとして国際的に導入が広がる国産の「Autoware(オートウェア…

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日本初Dapp特化の国際カンファレンス「DappSummit」を12月18日(火)マンダリンオリエンタル東京にて開催

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ブロックチェーン技術/分散型アプリケーションDappが拓く未来 Aniwo (本社:イスラエル、日本本社: 東京都港区 代表取締役 CEO:寺田 彼日)主催、株式会社アドライト(本社:東京都千代田区 代表取締役:木村 忠昭)共催、日本初のDappに特化した国際カンファレンス「DappSummit」を、マンダリンオリエンタル東京で開催致します。 ■カンファレンス概要 【名称】 DappSummit …

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<カンボジア3都市で総勢600名以上を動員> 世界の若者たちを応援するアプリ「COW」(カウ)、第2回イベント実施のご報告

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カンボジアへのアプリ事業参入後、最大の規模にてイベントを実施。スポンサー様協賛型(BtoCモデル)の新機能「コンテスト」を使った学生参加型イベントを行いました。 カウ株式会社(本社 東京都中野区、代表取締役社長 大木大地)は、世界の若者たちを応援するアプリ「COW」(カウ)につきまして、展開国であるカンボジア王国(以下「カンボジア」といいます)のプノンペン、コンポンチャム、シアヌークビルの3都市に…

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世界のブロックチェーン・エコシステムの今:出遅れたアメリカ、リードするヨーロッパと中国

Blockchain News を発行している Richard Kastelein 氏は現在、ブロックチェーン人道支援スタートアップ Humaniq で暫定 CMO(チーフマーケティングオフィサー)を務めている。彼は ICO による資金調達型の設計・建築企業 Cryptoalchemy の設立者であり、教育関連企業 Blockchain Partners の共同設立者でもある。 Kastelein…

Blockchain News を発行している Richard Kastelein 氏は現在、ブロックチェーン人道支援スタートアップ Humaniq で暫定 CMO(チーフマーケティングオフィサー)を務めている。彼は ICO による資金調達型の設計・建築企業 Cryptoalchemy の設立者であり、教育関連企業 Blockchain Partners の共同設立者でもある。

Kastelein 氏は ICO による資金調達型のブロックチェーンスタートアップ DECENTExscudo で相談役を務め、Blockchain Ecosystem Network の運営委員会に参加し、さらに、ロンドンで開催されるヨーロッパのICOイベント「CryptoFinancing」にも携わっている。


Image credit: charnsitr / 123RF

90年代前半にインターネットの未来を予測できなかったように、ブロックチェーンの未来を予測することは誰にもできない。しかし、この技術が大きな影響を及ぼすことは明らかだ。

企業からスタートアップ、政府からその他の組織に至るまで、人々は、信用の分散化および非中央集権化という概念を取り入れ始めている。それにより、摩擦を減らし、より公正で透明かつ効率的なビジネスおよび政治のフレームワークを構築しようとしている。

アメリカにおけるブロックチェーンスタートアップの最前線はあまり活発とは言えない状態で、それはイノベーティブな企業が不足していることよりも規制上の問題に関係しており、その結果、シリコンバレーではブロックチェーンに対する熱が上がらないのだ。 ベイエリアには Kraken と Coinbase という企業が存在するが、どちらも暗号通貨に特化した企業である。他の国々で研究されているような健康、エネルギー、保険、サプライチェーンなどの分野に取り組むアメリカのブロックチェーンスタートアップが不足しているのが現状だ。

Outlier Ventures の優良ブロックチェーン企業調査によると、グローバルブロックチェーン企業の4分の1はアメリカ出身だそうだが、そのほとんどが暗号通貨またはビットコインを専門にしている。ブロックチェーンが持つ大きな可能性を通貨以外の分野に活かしている企業はごくわずかだ。

ニューヨークはアメリカのブロックチェーンコミュニティの中心地になっている。その一番の理由は、金融業界が直面している真の脅威を分散型台帳技術によって解決する方法を躍起になって探していることにある。しかし、ニューヨークには金融以外の分野でビッグプレーヤーが2つ存在する。

Consensysは イーサリアムをグローバルに扱う主要プレーヤーであり、金融業の枠を越えてブロックチェーンを推進している。 Digital Asset Holdings は規制された業界における決済の高速化、コスト削減、セキュリティ強化、透明性の向上を目的とした安全な分散型の処理ツールを構築するために、世界最大手のテクノロジー企業および金融機関15社から7,000万米ドル以上を調達した。経済学者であり JPMorgan Chase の元幹部でもある CEO の Blythe Masters 氏は、Digital Asset Holdings の設立のために、Barclay の投資部門を経営するという大役を辞退している

【アメリカ】エコシステム発展に歯止めをかける SEC

しかし、全体として見れば、アメリカにおけるブロックチェーンエコシステムの動きは遅い。SEC(アメリカ証券取引委員会)は、ICO(イニシャルコインオファリング)という新たな現象に対処し、規制の枠組みを設けることができていない。それがアメリカのブロックチェーンの発展を停滞させており、イノベーションの大きな妨げになっている。

シンガポールとスイスはトークンを証券ではなく資産として扱う世界で2つだけの地域として、ブロックチェーンの扉を開け放とうとしている。その一方で、SEC の腰は重い。それが、ユニークな金融商品を活用して資金調達を行いたいアメリカのイノベーターや、アメリカの投資家と取引を行いたいヨーロッパやアジアの企業にとっては好ましくない状況をもたらしている。

法的な問題が発生する可能性があるため、ヨーロッパで実施される ICO にはアメリカ人の参加を禁止するものもある。これはアメリカの投資家にとってはあまり良くない。しかし、アメリカ人の Brock Pierce 氏と彼が率いる Blockchain Capital の VC チームは、世界初の KYC・AML(金融機関の顧客確認とアンチマネーロンダリング)に準拠したクラウドセール(独自通貨をビットコインで販売し開発費を捻出)となる ICO を独自に行うという、業界に革命をもたらす一か八かの賭けに出ることを決定した。Pierce氏は先週投資家にデジタルトークンを売り出し、6時間で1,000万米ドルを集めて同社の次の目標調達額の20%を調達した。

しかし、それは容易なことではなかった。シンガポールで ICO を行う企業を設立し、さらに、国内投資家だけでなく海外投資家からの資金調達を行うために、SEC に対してはレギュレーション S およびレギュレーション D の免除規定を利用しなければならなかった。アメリカからの参加は許可を得たわずか99人のアメリカ人投資家に限られたが、他の国々からは自由に投資に参加することができた。

Pierce 氏は American Banker に対して、次のように語っている

今後10年、20年で、世界中のスタートアップがトークンで資金調達するようになると私は考えています。

幸いなことに、アメリカでは少なくとも8つの州がビットコインおよびブロックチェーンテクノロジーの利用を促進するブロックチェーンに関する法整備に取り組んでおり、これは上手くいく可能性が高い。だが、連邦レベルでの法案は提出されていない。

【カナダ】ブロックチェーン推進派が大勢を占める

カナダには活発なビットコインスタートアップコミュニティが存在する。その主な要因は、トロントのビットコインコミュニティからイーサリアムが生まれたことや、イーサリアムを考案したVitalik Buterin 氏をはじめとした多くの才能豊かな人材が同国最大の都市トロントに集まっていることにある。

言うまでもなく、ブロックチェーン分野で最も有名な作家の2人である William Mougayar 氏Don Tapscott 氏もカナダ出身だ。様子見をしているアメリカのSECとは異なり、CSA(カナダ証券管理局)は、ブロックチェーンスタートアップや金融テクノロジーを扱う企業を対象とした「フィンテック・サンドボックス・プログラム」を新たに立ち上げるなど、積極的な姿勢を見せている

【中国】ブロックチェーン採用を積極的に推進

中国国内で何が起こっているのか、外からではそれを理解するのは難しい。上海に本社を置く Skyledger(快貝)の Jane Zhang 氏(張紅)によると、政府は寛大なアプローチを取っているという。中国のブロックチェーンコミュニティの有力プレーヤーである Zhang 氏は、政府側は次にどんなブームが来るのか把握していると語る。

最近のインタビューで彼女は、ビットコイン取引所の中には銀行免許なしで貸付を行っているものも存在し、これこそが、中国政府が何よりもイノベーションを大事にしていることを示していると語る。

中央政府は国内の貧しい地域に大規模な投資を行い、ブロックチェーンパークを構築することで、豊富な資金力を背景に世界中からブロックチェーン企業を誘致する計画を行っています。今年のブロックチェーンスタートアップの数は昨年よりもかなり増加しています。

Skyledger で彼女が率いるチームはグローバルなブロックチェーンデベロッパーのエリート集団で形成されている。彼らの多くは東欧出身で、ドバイ政府の入国管理に採用されたばかりの民間ブロックチェーンプラットフォームで働くために上海に移ってきた者たちだ。

中国では現在 ICO の規制がない状態で、200万人以上が ICO に参加しており、イノベーションと成長のための資金を調達するためにトークンの販売を選択するブロックチェーンスタートアップがますます増えている。

中国政府は ICO を脅威とみなしていません。政府は、単に彼らが ICO を禁止していないという事実を提示することで、ICO の促進を図っているのです。(Zhang 氏)

中国市場はここ一年、コンソーシアムを形成することで継続的に発展している。コンソーシアムの例を以下に示そう。

  • China Ledger Alliance(中国分布式総賬基礎協議連盟):複数の地方取引所によって構成されるコンソーシアム。中国に到来しようとしている「IoE(Internet of Everything)」をサポートするオープンソースブロックチェーンプロトコルの構築を行っている。
  • Financial Blockchain Shenzhen Consortium(金融区塊鏈合作連盟):Ping An Insurance(平安保険、ブロックチェーンの活用に関する研究・開発に携わる50社以上の金融機関から成るグローバルコンソーシアムR3の参加企業)と Tencent(騰訊)の子会社を含むメンバーによって構成されるコンソーシアム。資本市場テクノロジー、証券取引所、取引プラットフォーム、銀行業務、生命保険に焦点を当て、研究およびグループ規模でのブロックチェーンプロジェクトを共同で行っている。証券取引プラットフォームのプロトタイプの構築や、クレジット、デジタル資産台帳、および請求書の管理サービスの開発を目標としている。
  • Qianhai International Blockchain Ecosphere Alliance(前海国際区塊鏈生態圈連盟):中国国内外の人材、技術、資本を組み合わせることで、ブロックチェーンテクノロジーとその応用テクノロジーを開発するための効率的なエコシステムの確立を目指している。Microsoft、IBM、香港の Applied Science and Technology Research Institute(ASTRI)などによって構成される同コンソーシアムは、ブロックチェーンの研究・開発の商業化を加速させ、中国の社会的および経済的な発展を支援するためにブロックチェーンの応用を促進していきたいと考えている。

【オーストラリア/ニュージーランド】まだ調査段階

オーストラリア中央銀行(オーストラリア準備銀行)は、オーストラリアおよびニュージーランドが取り残されてしまわないようにブロックチェーンについて行内調査を実施している

巨大中国企業 Alibaba(阿里巴巴)はブロックチェーンを活用して中国の食品偽装問題に取り組んでおり、ニュージーランドとオーストラリアでサプライチェーンプロジェクトをテスト運用している。

【ヨーロッパ】ブロックチェーンで世界の先頭を走る

ヨーロッパは多くの点でブロックチェーンラッシュをリードしている。大陸に浸透している優れたオープンソースの文化はブロックチェーンの新たな原動力を支えており、官民両方が積極的にブロックチェーンプロジェクトに関与している。

実際、ICO の大部分はヨーロッパ、特に東欧のブロックチェーンスタートアップによって実施されている。

ブロックチェーンハブに関して言えば、主にロンドン、アムステルダム、バルセロナ、ベルリン、スイスのクリプトバレーにスタートアップが集中している。

エストニアの Guardtime は政府と協力して健康記録にブロックチェーンを利用しているほか、NATO などの組織とも契約している。さらに、アメリカの Nasdaq はアプリケーション開発のためにバルトの小国エストニアに手を伸ばし、 Skype の共同設立者 Jaan Tallinn 氏もエストニアを拠点とする Funderbeam というブロックチェーンスタートアップマーケットプレイスをキックオフした

<関連記事>

イギリスの主任研究員 Mark Walpor t氏はブロックチェーンが持つ可能性の概要をまとめ、ブロックチェーンがどのように公共サービスの提供を変化させ、政府の生産性を向上させることができるかを示す、ブロックチェーンに関する88ページに及ぶ大規模なレポートを1月に公開した。その後すぐに、ロンドンに本社を置く金融テクノロジー企業 GovCoin Systems は、社会福祉給付の分配を合理化する政府の目標を支援するブロックチェーンのテスト運用を発表した。

マン島政府は、マン島内のどの企業が分散型オンライン台帳システムを活用しているのかを記録するために、ブロックチェーン台帳の使用を開始した。

今年初め、BOE(イングランド銀行)の Mark Carney 総裁は、中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)がもたらす政策上および技術上の問題を検討し、ブロックチェーンの概念実証を進めていく予定があることを述べた

オランダの ING Bank は2月までに27件ものブロックチェーンの概念実証(PoC)を完了させ、同じくオランダの巨大銀行 Rabobank も非常に活発に活動している。世界的な巨大医療機器メーカーの Philips はブロックチェーン分野の先頭を走っており、2016年初めには健康維持サービスへの応用を模索している。そして、オランダの中央銀行は DNBcoin というビットコインクローンの本格的な実験を行った。

デンマークの中央銀行はかなり積極的で、将来的にはブロックチェーンベースのE-kroneを準備通貨として発行する予定。フランスの中央銀行もブロックチェーンのテスト運用を行っている

スウェーデンでは官民の協力の下で3月に開始されたブロックチェーン上に土地所有権を記録するなど、土地所有権の管理に応用する準備を整えた。

EUの執行部は規制に焦点を当てたブロックチェーンの概念実証の実施を望んでおり、ブリュッセルは最近、規制上の問題を検討するためにブロックチェーンのパイロットテストを提案している

EUレベルでは法整備されていない状態だが、スイスがそこに至るまでの道を整えようとしている。スイスの規制機関 FINMA は4月、いくつかの銀行業務を行うが貸出業務を行わず、顧客資産の預かりに上限を設けた金融イノベーター向けに新たな免許のカテゴリーを設置することに関して、支持する姿勢を示した。リスクが低くて事業範囲も限られているため、フルバンクと比較すると免許要件はあまり広範囲にはならない。

これがICOのゲームチェンジャーとなる。

したがって、ツークとチューリッヒの間の30kmの谷がクリプトバレーを生み出し、世界的なブロックチェーンスタートアップエコシステムの中心とみなされているのも不思議ではない。

最も素早く行動できるのは誰だ?

今後数年の間は、ブロックチェーンは勢いを増し続け、既存のビジネスモデルに脅威と機会の両方をもたらすという興味深い動きが見られそうだ。問題は、このテクノロジーを利用 してイノベーションを最初にもたらすのは誰か?という点である。

それは現時点ではわからないが、ICO が短・中期的にエコシステムに影響を与えることは明らかだ。もう一つの問題は、ICO によって生み出される新たな流動性を凍結したり解放したりする権限を持つ規制当局の動向に大きく左右されてしまうという点だ。なぜなら、次世代のブロックチェーンイノベーションにエネルギーを提供するのは ICO だからである。

【原文】

【via VentureBeat】 @VentureBeat

Y Combinatorの支援を受けたスタートアップServX、インドの自動車修理市場の席巻を画策中

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インドには2,800万台以上の車がある。道路状態は劣悪で、交通も滅茶苦茶、運転も危なっかしいため、毎年何度も車を修理工場に持って行かなければならない。2015年だけでも、11万8,438回の交通事故が記録されている。 ここが ServX の戦うフィールドである。同社はモバイルアプリを出しており、昨年9万人近くのユーザがこのアプリを使って15万回車を修理した。 設立から1年経った ServX は20…

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Photo credit: Pexels

インドには2,800万台以上の車がある。道路状態は劣悪で、交通も滅茶苦茶、運転も危なっかしいため、毎年何度も車を修理工場に持って行かなければならない。2015年だけでも、11万8,438回の交通事故が記録されている。

ここが ServX の戦うフィールドである。同社はモバイルアプリを出しており、昨年9万人近くのユーザがこのアプリを使って15万回車を修理した。

設立から1年経った ServX は2017年冬の Y Combinator のバッチに参加しており、3月20日に改めてローンチする予定だ。同社は今年3倍に成長する計画を立てている。

ServX の共同設立者で CEO の Akansh Sinha 氏は、同社が取り組んでいる問題について次のように説明している。

インドでは車が故障した場合、2つの選択肢があります。公認の修理工場に行って大金を支払うか、あるいは地場の修理工場に行って割安で粗末な修理を受けるかです。修理に使ったスペアパーツが純正かどうかなんて知る由もありません。ServX は当社の整備士が入念に検査した公認修理工場とユーザとを結びつけます。

自動車部品を販売し、ドライバーと修理工場を繋ぐ中国のアプリ Tuhu は2015年8月に約1億米ドルを集めた。このスタートアップは当時3億~4億米ドルの企業価値がつけられていた。

ServX は同様のモデルだが、インドでの事業である。インドではアフターサービスも修理ビジネスも市場規模は大きいものの、組織化されていない。零細自動車修理工場はインドの道路脇にパラパラと存在している。こういった地場の整備士がかなりの常連を確保しており、そのビジネスの実態はよくわかっていない。こういった事情から、自動車修理市場の規模について信頼性のある数字を提示するのは難しい。Akansh 氏によると、概算で100億~550億米ドルと、かなり幅がある。

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ServX 設立者の Akansh Sinha 氏とAnubhav Deep 氏
Photo credit: ServX

複数のプレイヤーが既にこのフィールドにおり、潤沢な資金を持っている企業もある。バンガロールに本拠を置く BumperCartisanGetcarexpertCarworkz by Mahindra などである。

しかし問題はまだ解決からは程遠く、ServX にはとっておきの切り札がいくつかあると Akansh 氏は信じている。一つは、認可カーディーラーのネットワークを介した素早く安価なサービスである。

Akansh 氏は、ラーンチー県メスラにある Birla Institute of Technology での学友である Anubhav Deep 氏と、2015年11月にこのスタートアップを立ち上げた。

ネットワーク効果

Akansh 氏と5人のチームは、弁慶の泣き所に目をつけた。つまり、インドの公認自動車販売業者のほとんどはキャパシティ以下の仕事しかしていないという点だ。どんな自動車ブランドでも販売特約店の公認を受けるには何百万米ドルもかかってしまう。Akansh 氏によると、例えばマルチ・スズキの販売特約店契約を得るには、最低でも1,150万米ドルかかる。

そのお金はマルチ・スズキの懐に入ります。そのためにおよそ250台売らなければなりません。(Akansh 氏)

加えて、不動産や、ブランドの仕様に基づいたショールームのデザイン、熟練したスタッフに多額の投資を行う必要があるだろう。

しかし、15日間1台も売れないかもしれない。そこで、公認の販売店に附属したサービスセンターから販売店に収入をまわすことができる。販売店は毎日25~30台の車を修理できる。というのも、業務能力の半分以下しか仕事をしていないからだ。これこそが、Akansh 氏と彼のチームが利用したギャップである。

ServX は顧客をまわすことを提示して公認サービスセンターと提携した。見返りとして、割引価格で高品質のサービスを提供することで顧客にとって好条件の取引ができるようにした。ServX はデリーおよび首都圏で500のサービスセンターとのネットワークを構築した。洗車のような外装サービスには20~25%、通常のメンテナンスや修理には10~15%の手数料を取る。

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Photo credit: Pexels

同社がデリー首都圏でサービスを開始したのは、そこに莫大な数の車があるからだ。

インドの他のどの都市と比べても、この地域には5倍以上の車があります。(Akansh 氏)

昨年9月、ServX は一日あたりおよそ800件の注文をさばいた。Akansh 氏は「この時がピーク」だったと言う。インド政府が11月に高額紙幣を廃止して現金取引を取り締まるようになってこの数字は打撃を受けた。

インドの人たちはみんな現金取引の方が好きだったからです。うちの業者も半数以上は現金払いで受け取る方を好ましく思っていました。(Akansh 氏)

現在、ServX は1日平均650件の注文をさばいている。

ServX はスペアパーツのサプライチェーンを作り上げ、現在自動車修理工場のネットワークでテストを行っている。また、バイクの修理ビジネスにも乗り出す予定だ。

Akansh 氏によると、Y Combinator ファミリーに参加することは「注目を集めることができただけでなく、他のビジネスモデルや収益化チャネルに心を開かせてくれた」という。これを武器にして、ServX はインド中の信頼できる修理工場ネットワークの構築を目指している。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

「信頼できるジャーナリズムは民主主義の免疫システム」ーーCraigslist創設者がジャーナリズムの非営利団体ProPublicaに100万ドルを寄付

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Craigslistの創設者Craig Newmark氏は、Craig Newmark Foundationを通して調査報道ジャーナリズムの非営利団体であるProPublicaに100万米ドルの助成金を贈った。 Craigslistは偶然ではなく新聞の広告収入が急落するとともに成長したのであるが、Newmark氏は今月のプレスリリースで「信頼できる」ジャーナリズムは「民主主義の免疫システム」だと呼…

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Craigslistの創設者Craig Newmark氏は、Craig Newmark Foundationを通して調査報道ジャーナリズムの非営利団体であるProPublicaに100万米ドルの助成金を贈った。

Craigslistは偶然ではなく新聞の広告収入が急落するとともに成長したのであるが、Newmark氏は今月のプレスリリースで「信頼できる」ジャーナリズムは「民主主義の免疫システム」だと呼んでいる。

「市民として、私たちは、信頼できるニュースがあるときにのみ、情報に基づく意思決定を行うことができる。独立した調査報告は、虚偽の主張を撃墜し、悪者を暴露するために不可欠である」(Craig Newmark氏)。

大統領選後、ProPublicaはトランプ陣営を調査するための重要な情報ソースを提供した。なお、Newmark氏は以前にPoynter Instituteにも寄付をしている。

【原文】

【via VentureBeat】 @VentureBeat

「セカイラボ」を展開するモンスター・ラボ、フィリピンのIdeyatechを買収——13拠点目、Java言語によるエンタープライズ案件の開発体制を強化

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アジア各国を中心にアプリ開発のクラウドソーシングを展開するセカイラボの親会社であるモンスター・ラボは16日、マニラを拠点とするシステムインテグレータ Ideyatech を買収・子会社化し、Monster Lab Manila として機能させることを発表した。モンスター・ラボにとっては、このマニラ拠点が日本内外の開発拠点の13ヶ所目となる。 モンスター・ラボの設立は2006年。2014年には、シス…

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Ideyatech のオフィス
Image credit: Ideyatech

アジア各国を中心にアプリ開発のクラウドソーシングを展開するセカイラボの親会社であるモンスター・ラボは16日、マニラを拠点とするシステムインテグレータ Ideyatech を買収・子会社化し、Monster Lab Manila として機能させることを発表した。モンスター・ラボにとっては、このマニラ拠点が日本内外の開発拠点の13ヶ所目となる。

モンスター・ラボの設立は2006年。2014年には、システム開発のオフショア開発や海外拠点でのクラウドソーシングを展開するサービス「セカイラボ」をリリースし、以来、6カ国10拠点で海外法人の設立や買収を通じて(独自の開発拠点はないものの、提携先などがある国を含めれば世界18カ国に展開)、開発拠点の世界展開に注力している。最近では、大規模業務系システムの開発依頼が増えていることから、この領域に強いベトナムの Life Time Technologies などを買収しており(2016年9月)、今回の Ideyatech の買収はその流れに続くものだ。

Ideyatech は創業10年目を迎えるフィリピンのシステムインテグレータで、Java 言語による業務系システムの開発を得意としており、特にフィリピンでは、裁判所における判例の透明化と高速化を図るシステム「e-Court(現在の名前は Attaché)」を開発したことで知られる。Ideyatech 創業者で CEO の Allan Tan 氏は、グローバル・スタートアップ・アクセラレータの「The Founder Institute」のフィリピン・チャプターのローンチに関わるなど、フィリピンのスタートアップ・シーンに造詣が深い人物だ。

モンスター・ラボは過去2年間で、2015年11月にパソナテックと DG インキュベーションから4億円(シリーズAラウンド)、2016年11月に山陰合同銀行の投資子会社・ごうぎんキャピタル、りそなキャピタル、および既存株主から2.5億円(シリーズBラウンド)を調達している。

メンズドレスウェアの「Ministry of Supply」ーー特徴はNASAのスペーススーツ開発技術を応用した機能性

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スーツを着て走った世界最速のハーフマラソンのギネス記録は、2015年12月にボストンで生まれた1時間24分41秒。この記録に挑戦したのは、Gihan Amarasiriwardena氏だ。「何のためにスーツで?」と思ってしまうが、彼はボストンを拠点とするメンズウェアブランド「Ministry of Supply」の共同創業者だ。 彼が身にまとって走った「Aviator Suit」というスーツは、柔…

Gihan Half Marathonスーツを着て走った世界最速のハーフマラソンのギネス記録は、2015年12月にボストンで生まれた1時間24分41秒。この記録に挑戦したのは、Gihan Amarasiriwardena氏だ。「何のためにスーツで?」と思ってしまうが、彼はボストンを拠点とするメンズウェアブランド「Ministry of Supply」の共同創業者だ。

彼が身にまとって走った「Aviator Suit」というスーツは、柔軟性と通気性を特徴とする自身のブランドのもの。「ギネス記録を更新できるスーツなら、仕事をして過ごす1日を乗り越えられないはずがない」ことを証明するためにマラソンに参加した。

Tシャツなど通常のマラソンウェアを着ている時に比べて、Gihan氏の記録はわずか2分しか違わず、スーツの高い性能が伺える。

NASAがスペーススーツに使う技術を採用

Ministry of Supply 共同ファウンダーでCDOのGihan Amarasiriwardena氏
Ministry of Supply 共同ファウンダーでCDOのGihan Amarasiriwardena氏

ここ数年間で、アスレチックな洋服を運動時だけでなく日常的に身につける「Atheleisure」のトレンドが見られている。激しい運動にも耐え、長時間にわたって高いパフォーマンスを発揮できるスポーツウェア。週末2時間だけのランニングに最適化された洋服があるのに、平日朝から晩まで着て過ごすスーツやシャツが窮屈なのはおかしい。

そんな考えのもと、Ministry of Supplyは、見た目はシャープながら、同時に着心地や機能性に優れたプロフェッショナルウェアを提供している。

その代表的商品が、「Apollo Dress Shirt」というドレスシャツだ。ストレッチ素材のシャツには、NASAが開発し、そのスペーススーツにも使っている「Phase Change Material」の技術を採用している。環境に応じて体温を調整する働きがあるため、例えば、汗が流れ落ちる駅のプラットフォームと、冷房で冷えた電車内とで自然に体温調整をしてくれる。

Apollo Dress Shirt
「Apollo Dress Shirt」 (ライトグレー)

チームの結成が2011年にさかのぼるMinistry of Supplyは、現在、ドレスシャツ、ジャケット、ニットセーター、靴下など約20種類ほどの商品を展開している。ブランドのファンに多いのは、都心部に住むアクティブで「思考が若い」ビジネスマンたち。最も厚い層は20代後半から30代半ばだが、ファンの年齢層は幅広い。日本では、代官山にあるセレクトショップ「Connected Tokyo」で取り扱いがある。

「仕事を9時〜17時だと区切って捉えない、思考の若い人たちが利用してくれています。その1日は、例えば、早朝に自転車にオフィスで通うことで始まります。彼らは、仕事と、家族や友達などと過ごすそれ以外の時間をONとOFFで切り分けません。そんなアクティブな人たちが、1日中心地よく着て過ごすことができます」

MITのエンジニアリングの才能が集結

Ministry of Supply 創業チーム
Ministry of Supply 創業チーム

Gihan氏は、ボストンがあるニューイングランド地方で生まれ育った。子供の頃、ボーイスカウトで毎月キャンプに通う中で、様々なスポーツギアの機能性に関心を持ち始める。高校生になると、お店に出向いて素材やデザインを調べ、自分でギアを作るように。湿気を外に出す性能を持つ素材「タイベック」を使ったレインジャケットや、保温効果がある素材を使った寝袋などを実際に作っては活用していた。

大学は、マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学。ケミカルバイオロジー工学で、物質・材料科学を専攻した。在学中、アディダスやニューバランスなどがその先行研究を行うMITの調査機関「Sports Technology Institute」で仕事をする機会に恵まれる。ここで、スポーツアパレルのデザインにエンジニアリング的思考を応用することについて学んだ。

大学4年生の頃、地元ボストンのIDEOでインターンに。プロダクトを改良する機会を特定すること、またテストを繰り返すことで“実世界で機能する”プロトタイプの開発について学ぶこととなる。スポーツアパレルのデザイン、エンジニアリング的思考、人間中心設計。こうして培ったプロダクト作りの思想やアプローチは、今のMinistry of Supplyで大いに活きている。

「1日中着心地良く着続けられるプロフェッショナルウェアがないことに着目しました。幸運なことに、同じことを課題に感じていたのは僕だけではありませんでした。MITの起業家プログラムを通じて、似たコンセプトでプロダクト開発に取り組むAman AdvaniとKit Hickeyに出会いました。その後、2012年にKickstarterのプロジェクトを機にMinistry of Supplyが誕生しました」

インスピレーションはエンジニアの世界

LABS 3D Jacket
まるで2枚目の皮膚のように人間の身体にフィットするようにデザインされた「LABS 3D Jacket」

ファストファッションの人気が俄然と高く、デザインを商品化する期間が短縮化される中で、Ministry of Supplyはそのプロセスを決して急がない。実際、Apolloのドレスシャツは、商品が市場に出るまでに18ヶ月間という期間を要し、他の商品も同等の期間をかけて商品化されている。

Ministry of Supplyにとって、洋服のデザインは、デザイナーのクリエイティブを表現するためのキャンバスではない。同社が最優先するのは、その洋服を1日中身にまとう顧客のユーザー体験を高めることだ。ワンシーズンだけ来て別れを告げるのではなく、5〜10年と着てもらえるタイムレスな商品を生み出すことを目指している。

この商品作りのプロセスやマインドセットには、創業メンバーに共通するエンジニアリングのバックグラウンドが大きく影響している。

「僕たちにとってのインスピレーションは、エンジニアリングの世界にあります。例えば、車がどうデザインされているか。テクノロジー企業がどうWebサイトを開発しているか。デザインし、プロトタイプをつくり、ユーザーテストをして商品を完成させていく。最高の素材や技術を生み出すことで、各カテゴリーでずば抜けた商品を一つ作る方針です」

ユーザーテストを繰り返してプロトタイプを改良していく同社の物作りは、洋服というより、自動車やデバイスメーカーなどのそれに近いと言える。ユースケースに応じて、エンジンやタイヤは同じものを用いながら、ボディだけ変えて異なる車を製造する。Ministry of Supplyの洋服も、独自開発するパフォーマンス素材や技術をベースに用いながら、それが複数ラインに活かされている。

3Dプリンティングで編む靴下

Ministry of Supplyの立ち上げを振り返って、最も困難だったのは、ビジョンを共有し、同時に技術力に長けたパートナー探しだった。現在、製造はアジアにある複数のパートナー企業や工場で行われている。例えば、3DやAviator 2 のラインは、日本の東レ・テキスタイルの協力を得て製造されている。

「Ministry of Supplyでは、常に研究、洗練されたデザイン、パフォーマンスにある境界線を縮めることに取り組んでいます。東レが掲げる”Innovation by Chemistry”というミッションには、僕らの人間中心設計に基づいた洋服作りに共通するものがあります。非常に心強いパートナーです。」

商品は、目指す機能性やパフォーマンスを踏まえて素材から開発されていく。例えば、通気性に優れた「Atlas Dress Socks」という靴下は、人間の身体をボディ・マッピングすることから始まった。足が地面に触れる時、どこにどうプレッシャーがかかるのか。衝撃を抑えて心地よさを叶えるクッションパッドの位置、また足から発される熱をどう逃がすのかなど、まずは人間の身体の仕組みを理解することで最適な商品を作っていった。

Atlas Dress Socks
「Atlas Dress Socks」

そのプロセスには、顧客へのヒヤリングも含まれる。靴下に関しては、「飛行機の中など靴を脱いで楽になりたい時、臭いを気にしてしまう」という顧客の意見をもとに、消臭効果があるコーヒーのおりを素材に練り込んだ。また、肌に触れる部分にはポリエスターで出来たパフォーマンスファイバーを用い、外部にはコットンを採用することで湿気を肌から遠ざけ、ドライに保つ工夫を施した。

また、この靴下は「3D robotic knitting」という3Dプリンティングの技術を用いて製造されている。この技術の特徴は、厚み・テキスタイル・素材を変えてバリエーションを作ることができること。特定の部分だけ厚みを変えたり、通気性を良くしたりといったニーズに応えてくれる。同じ技術が、Mercury SweaterやAtmosの下着などにも使われている。

まずは、特定分野で一つずば抜けた商品を

Aviator 2 Suit着用
「Aviator 2 Suit」着用

洋服を作ることと、Webやアプリを開発すること。全く異なることが想像されるその製造プロセスの境界線がなくなってきているのかもしれない。これからは、一方的にデザインした洋服を届けるのではなく、顧客の声を聞きながら、プロトタイピングしながら作っていく時代。

「洋服を作ることに関して、それが芸術的な探求であるべきだという間違った風潮があります。その創造プロセスは誰にも共有できず、秘めたものでないといけないといった。でも、実際にはそんなことはありません。僕らは顧客とそれをシェアするのが大好きだし、そのプロセスこそ、僕らのデザインに欠かせない要素になっています。」

変化が激しい現代のファッション業界で生き残り、成功するためには、従来型の洋服作りのあり方を改める必要がある。Gihan氏は、最も重要なのはプロダクトラインを絞り込むことだと話す。実際、立ち上げから2年半の間、同社では初の商品であるApollo ドレスシャツだけを取り扱っていた。

「コレクションを作ることは、デザイナーにとって嬉しくて楽しいことです。そのため、僕たちも当初、初期段階で商品のラインナップを広げようとしました。でも上手くいかなかった。その分野で、まずは一つだけ、顧客の心を掴んで離さない商品を生み出すことが大切だと学びました」

私たちは、とある形に一度慣れ親しんでしまうと、そこに不便があろうとも「なぜ?」と問うことを忘れてしまう。でも、疑われない「当たり前」が存在するところにこそ、変化の余地がある。そして頻繁に、業界を揺るがすような革命的変化はアウトサイダーによって引き起こされる。 MITのエンジニアリング頭脳が集結したMinistry of Supplyが、それを証明してくれるはずだ。