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イタリアから新進気鋭のスタートアップが来日する「Italian Innovation Day」、来週9日にピッチ登壇する14チームの顔ぶれをご紹介

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今年で4回目となる「Italian Innovation Day」。筆者は昨年と一昨年に引き続き、このイベントの MC とチーム選抜プロセスの一部を担当させていただく。イタリア大使館の主催、JETRO(日本貿易振興機構)の協力を得て、10月9日(水)の14:00から、東京・赤坂アークヒルズの JETRO 展示場で開催される。 このイベントには、イタリアのスタートアップ・ニュースメディア「Start…

Image credit: 在日イタリア大使館 / Ambasciata d’Italia – Tokyo

今年で4回目となる「Italian Innovation Day」。筆者は昨年一昨年に引き続き、このイベントの MC とチーム選抜プロセスの一部を担当させていただく。イタリア大使館の主催、JETRO(日本貿易振興機構)の協力を得て、10月9日(水)の14:00から、東京・赤坂アークヒルズの JETRO 展示場で開催される。

このイベントには、イタリアのスタートアップ・ニュースメディア「Startup Business」の運営者で著名ジャーナリストの Emil Abirascid 氏が協力しており、イベント当日には、筆者と氏で、イタリアと日本のスタートアップシーンの違いについて、対談をさせていただく予定だ。

このイベントに参加するのは、いずれもイタリアやヨーロッパで高く評価されているスタートアップばかりで、イタリアから日本の市場ニーズに親和性が高いと考えられるスタートアップ、日本企業との協業を希望するスタートアップ、日本の投資家から資金調達したいスタートアップなど14社を厳選した。イベントのプレビューとして、本稿では登壇予定14チームの顔ぶれを紹介をしたい。

(各社のピッチ資料や紹介ビデオは、ここから見ることができる)

Bettery

次世代型、高出力バッテリーへの飛躍に貢献する、環境に優しく長持ちの高速充電式液体電池を提供します。

Hi-Interiors

スマート家具の先駆者として、「家具のインターネット」を加速し、人生の1/3を過ごすベッドの革新を目指しています。

Is CLEAN AIR

空気汚染低減の技術「APA」など空気清浄ソリューションを世界規模で提供するスケールアップです。

IUV

継続可能な自然素材由来のパッケージングを研究、開発、生産、販売する若いスタートアップです。

Loan Xchain

ブロックチェーンで作動する、ローンの多国間マーケットプレイスを提供します。流動性、透明性、スピード、使い勝手を高めることで市場ニーズに答えます。

Metaliquid

人工知能やディープラーニングにより動画及び音声コンテンツを解析し、タイムコードの入った記述メタデータを配信する、B2Bコンテンツ分析ソリューションです。

Mr. Doc

人間的な想像力を模倣し、現実的で高精度の診断を行える、 半教師あり学習をする人工知能です。

Net City Led

現代的で空気力学的なデザインを持ち、Wi-Fi、センサー、5G マイクロセル、アンテナなどが備えられる、高い適応性のあるハイテックな街灯です。

Nextome

人工知能を通じて人間と資産の屋内測位、誘導、追跡を容易にする、設置しやすく、すぐに使える、低コストなソリューションです。

OaCP

既存の技術よりも97%素早く、50%低コストで全種類の癌診断を行える化学試薬を開発しています。

Omnidermal Biomedics

皮膚潰瘍の画像を撮影並びに処理できる人工知能アルゴリズムを備えた医療機器を提供します。

PLUMESTARS

既存の薬剤を再利用し、新しい希少疾病用医薬品の開発及びデリバリーに特化したノウハウを提供します。

POLEECY

人工知能、ブロックチェーン、新たな顧客体験を通じて、スマートフォンのユーザーにマイクロ保険証券を売却するエコシステムです。

TBoxChain

特定の地理的位置に連携した暗号チケットを作成・配信できる、観光、ゲーム、スマート・シティに最適な、ブロックチェーンを使ったデジタルシステムです。

このイベントでは、ゲームチェンジャースタジオ EDGEof の小田嶋 Alex. 太輔氏、Invitalia(イタリア投資誘致・事業開発公社)の Bruno Ferlito 氏らを交え、日本企業にとってイタリアのスタートアップと協業することのメリットなどについてのパネルディスカッションを行う。JETRO 会場でのネットワーキング後は、会場を渋谷の EDGEof に移しパーティーも開催される予定

翌日の10日には Venture Café Tokyo のフラッグシッププログラム「Thursday Gathering」で、Emil Abirascid 氏とBruno Ferlito 氏に加え、「日本市場を知る外国人の眼」を代表して、THE BRIDGE にも頻繁に寄稿いただいている Truffle Capital のパートナー Mark Bivens 氏とポッドキャスト番組「Disrupting Japan」を主催する Tim Romero 氏を招き、イタリアを含む海外のスタートアップが日本で成功する秘訣を議論する。

エストニアへの讃歌【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿) The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture c…

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿

The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist.


Image credit: berean / 123RF

8月、毎年夏の恒例になりつつあるバルト3国への旅のため、私はヨーロッパに戻っていた。今回は、旅の大部分をエストニアのタリンで過ごした。私はタリンの街が好きで、将来の投資先になりそうな所もいくつか訪問した。

自分のエストニアの会社の事務作業もいくつかこなした。でも、エストニアの「e-residency」のプログラムのおかげで、これらの事務はオンラインでもこなせるため、率直に言って、ほどんど作業は必要なかった。エストニアに出向く必要さえない。

ご存知ない方のために申し上げるなら、EU 域内で何かしらビジネスをする関心があるなら、エストニアの e-residency を検討することを強くお勧めする。ヨーロッパ以外の市民にとって、その恩恵は非常に大きい。私のような EU 市民でさえ、e-residency を取得し、その後、エストニアに会社を設立する理由を多く見つけた。私は当面の必要性より知的好奇心からこの冒険を始めたが、昨年、エストニアのスタートアップに初めて出資した時、e-residency を持つことで、全ての事務処理が劇的に促進されることがわかった。

バルトの虎

ヨーロッパが持つ問題解決の力やイノベーションについて考えるとき、エストニアのような小さな国を賞賛せずにはいられない。人口わずか130万人しかいないこのバルトの国には、ハイテクユニコーンが4社もある。人口が100倍以上の日本よりも多い。

エストニア生まれの Skype は最初の eBay の頃にスタートアップブームを起こし、のちに Microsoft が85億米ドルで買収。創業者らはそうして得た利益を母国に再投資した。それ以来、さらに3つのエストニア企業がユニコーンの基準とされる企業価値10億米ドルを上回った。Playtech(ギャンブルソフトウェア)、Taxify(配車)、TransferWise(送金)だ。

「Skype マフィア」ロールモデルの集積、エストニアの起業家 DNA、エストニアのデジタル政府インフラが、スタートアップに適した環境作りを促した。人口に占めるスタートアップ数で見れば、エストニアのそれはヨーロッパ平均の6倍、人口10万人に対しスタートアップの数は31社を超えている。

e-residency 登録者では日本人が最多だけれど……

Image credit: Government of Estonia

昨年、エストニア領事館との面談で、e-residency には世界中から5万人が登録していて、信じるかどうかはさておき、日本からの登録が最多を占めていることを知った。

これは名誉なことなのだが、日本の e-residency 登録者は一度 e-residency のステイタスを手に入れてしまうと、その後何もしないという評価をエストニア政府内で買うに至っている。言い換えれば、エストニアへの投資、公共部門の活動へのオンライン参加、あるいは、個人用にエストニアで簡単な会社を作るなど、e-residency の精神を尊重する日本の e-residency 登録者はほとんどいない、ということだ。

この話を聞いたとき、急ぐ必要はなかったものの、私は自らエストニアに会社を設立することをその場で決め、日本のイメージを払拭しようと決意した。

エストニアで新会社を登録するのは極めて簡単だ。e-residency を入手したら、その後は新会社を作るまで1時間かからなかった。まさかではあるが、そのうちの45分間はスマートカードリーダーを認識するよう Windows OS をアップグレードに費やしたので、エストニアの事業作成手続には実質的に15分間しかかかっていない。この手続は遠隔でも実行できるが、エストニア現地の登録連絡先が必要になる(政府が運営するサービスプロバイダのマーケットプレイスを参照するか、紹介が必要なら私にメールしてもらってもいい)。

この投稿を書きつつ、私はエストニア政府から金をもらっている広告セールスマンが話しているように聞こえてしまう危険を禁じ得ないが、誓って、私は彼らから金をもらっていない。私の伝道は純粋に利他的だ。古い格言に例えるなら、「改心した人こそ最も熱心」ということだと思う。

まだためらっている? エストニアは、未分配利益に法人取得税を課さないことを知るべし。

Elagu Eesti!(エストニア語でエストニア万歳!)

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すべての不動産テックスタートアップよ、日本に来たれ!【ゲスト寄稿】

本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿) The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capi…

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東京で過ごしていると、建設機械の雑音を聞かずに過ごすことは難しい。常に変化を続けるこの街では、一年中新しい建物の建設が行われているようだ。この現象は、大阪、神戸、福岡といった日本の他の主要都市の多くでは繰り返されているが、東京においては、その傾向がより顕著だ。幸いにも、近隣住民や通行人を邪魔しないよう、日本の建設技術は熱心に雑音レベルを制限している。さらに言えば、プロジェクトは開始から終了まで時間内に効率的に進むようだ。これがパリなら、同じ時間で、まだ工事のための計画会議が行われている段階である。

東京のオフィスやコワーキングスペースの建設は今年特にアクティブになると考えられ、私の意見では2つの波がその要因になると思う。一つは2020年のオリンピックに向けた準備、もう一つは、日本中を席巻する魅力的なイノベーションを渇望する波だ。

言うまでもなく、日本の不動産デベロッパ各社は、この2つの波が重なったところにいる。三菱地所、三井不動産、森トラスト、東急不動産はもとより、外国人には馴染みの薄い日鉄興和不動産や APAMAN グループといった大企業までが、イノベーションという捉えどころないものの追求に力を注いでいる。これらの企業は、日本での規模拡大に関心のある日本内外のスタートアップからの急増する需要に応えて、スタートアップハブやコワーキングスペースを建設している。

一方、WeWork のような外国企業はすでに東京で重要な拠点を築き上げており、数カ所については予定よりも早く満室稼働に達している。

この幸福感から得られる2つの学び

この幸福感から得られるものとして、私は2つの結論を導き出した一つは、もし東京や他の日本の主要都市でオフィススペースを探すスタートアップなら、特に来年の夏のオリンピックが終わった後には、すぐにそれが膠着状態になるかもしれないということ。もう一つは、不動産業界のイノベーティブテックに取り組むスタートアップにとっては、説得力のある市場がここ日本に出現しつつあるということ。それが不動産管理ツールであれ、工事のテクノロジーであれ、ブロックチェーンベースの不動産ソリューションであれ、商業地や住居のマーケットプレイスであれ、東京には需要がある。

数年前、フランスのポップアップ店舗プラットフォーム「PopUp Immo」の創業者が、日本市場参入の可能性を探るべく、当地を訪れた時のことを覚えている。その時は、彼は日本がまだその段階にないと判断し、アメリカ市場に視点を向けた。以降 PopUp Immo はアメリカの同業である StoreFront を買収、現在ではポップアップ小売業で誰もが認める世界的リーダーとなった(Mohamed には敬意を込めてそう言いたい)。

今から振り返ると、Mohamed が日本よりアメリカの市場を優先された決断は、当時は正しいものだった。しかし、彼が今日、同じような選択を迫られたしたら、その判断は少し違ったものになるのではないかと思う。

日本は壮大なマクロ経済の課題に直面している。イノベーティブなスタートアップに対する需要は、私が日本に訪問してきた中で、国内にも海外にも(国内は十分ではないけれども)、今までになく強いものとなっている。

すべての不動産テックスタートアップよ、日本に来たれ!

日本では不動産テックのスタートアップが不足しているため、私は海外のイノベーティブなプロジェクトを精査してきた。中でも、そういったスタートアップが豊富にいるヨーロッパに注力している。私は現在、ヨーロッパの不動産業界で活動する、100を超えるスタートアップのディールフローをトラッキングしている。さらに言えば、PitchBook にいる友人たちのおかげで、不動産またはそれに近接する分野には、350を超えるテックスタートアップがヨーロッパにいることがわかった。PitchBook から引用したデータの一部を以下に紹介したい。

Source: PitchBook

不動産分野のイノベーションに取り組むテックスタートアップで、もし日本市場への進出にあたって資金調達に興味があるなら、私はぜひ話を聞いてみたい。

Have a Good Cashless.【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。フランスのスタートアップ・ブログ Rude Baguette への寄稿を、同ブログおよび著者 Mark Bivens からの許諾を得て、翻訳転載した。(過去の寄稿) The Bridge has reproduced this from its origina…

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。フランスのスタートアップ・ブログ Rude Baguette への寄稿を、同ブログおよび著者 Mark Bivens からの許諾を得て、翻訳転載した。(過去の寄稿

The Bridge has reproduced this from its original post on Rude Baguette under the approval from the blog and the story’s author Mark Bivens.


Image credit: Masaharu Nozawa / 123RF

Have a good cashless. —— 私が使う銀行の一つ(訳注:正確には、三井住友カード)が、顧客のキャッシュレス採用を高めようとする魅力的なスローガンだ。言葉遣いが少しぎこちないとはいえ、我々がアメリカでよく耳にする「現金廃止論」よりも、優れたスローガンだと申し上げたい。

事実、日本におけるキャッシュレス推進は国をあげたものとなっており、2020年のオリンピックに向けた、実体のある政府奨励策を伴ったものとなっている。しかし、キャッシュレスが実現するまでの道のりは長い(以下のグラフィックを参照)。

日本ほど技術が進歩した社会でさえ、現金は依然として優勢な取引媒体だ。多くの事業者は、現金以外のものは受け付けない。非常に多くの現金を必要とした、ある巨額に及んだ取引のときのことを私は忘れないだろう。案件のクローズのために弁護士事務所の会議室に私は座っていると、アシスタントたちがお札を数える機械を持ってきた。映画の中で、違法薬物や武器の取引が行われる時のような気がした。

以下に示したのは、キャッシュレス採用について、日本の位置付けを他国と比較して示した Rude VC のインフォグラフィックだ。このクリエイティブを用意してくれた Clarisse に謝意を表したい。今後の寄稿では、投資家の目と消費者の目の両方から、私の注意を引いたキャッシュレス製品について取り上げたい。

それまでどうぞ、Have a good cashless.

キャッシュレス採用率。左から:韓国、スウェーデン、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、日本、南ヨーロッパ(クリックして拡大) 
Image credit: Rude VC

資金調達ケーススタディ: 「SAFE(将来株式取得略式契約書)」の使い方をシミュレーションしてみる【ゲスト寄稿】

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Image credit: RudeVC

先日は資金を調達する起業家に見過ごされがちだと思われる、SAFE(将来株式取得略式契約書)のいくつかの欠点を説明した。今回の記事は前回の記事を読んでいないと意味が分からないので、まずはざっと目を通しておいてほしい。

また、前回も言ったことだが今一度念を押しておきたいのは、私は SAFE を批判しているわけではないということである。むしろ逆で、アーリーステージの企業が資金調達を行うのを容易にする、試す価値のある新しいやり方だと信じている。前回と今回の記事で私が言いたいことは、見過ごされるリスクを起業家に説明し、彼らが将来的に転換の罠に嵌らないようにしたいということである。

SAFE について最も強く警告したいことの1つは、起業家が値付けされたエクイティラウンドを行わずに連続で SAFE を重ねることで発生する複雑さだ。この複雑さは手形の転換の希薄化効果や、投資後の企業価値の乗数効果、評価や価格決定における市場のフィードバックの遅れといったものの中に姿を現す。

例を挙げて考えてみよう。

例えば、あなたがプロジェクトのために SAFE を発行して、友人や家族や言いくるめやすい相手から50万米ドル程度の創業資金を調達するとしよう。スタート地点にいる最近のテック企業としてはかなり標準的な運営の仕方だ。SAFE では20%のディスカウントと500万米ドルのキャップという、TechCrunch や Quora によればかなり標準的な水準の変数を設定する。そしてあなたは企業を立ち上げ、おそらく幾人かを雇い、製品を作り始める。

それから12ヶ月間、あなたは大きく前に進んできた。有名なテック開発者を雇用することができ、製品のビジョンは広がりを見せてきた。80万米ドルを調達する2回目のバッチに多くの投資家を誘い、参加してもらうことが簡単にできた。単純化のため、そして率直に言って時間もないため、あなたは最初の SAFE を再利用することにした。書類の中で修正する部分は調達額(今度は80万米ドル)、あとはバリュエーションキャップを500万米ドルから800万米ドルにするだけだ。なにしろここまでの素晴らしい成果を考えたら、あなたのスタートアップはもっと価値が上がるに決まっているのだから。

さらに1年後、すごいぞ、エキサイティングだ! あなたのプロジェクトはいくつかの賞を受賞し、あなた自身もカンファレンスのパネル参加者の常連となっている。リーンスタートアップの実践のおかげで、将来有望な顧客と交流し、いくつかの PoC も販売してきた。彼らからのフィードバックによって、あなたのソリューションの市場可能性は想像していたよりも大きいということも分かった。もう少し機能を強化して、チームに有能な人材を加えるだけでいい。さらに、あなたはピッチの達人になっていて、120万米ドルの新たな資金の口約束を取り付けている。お馴染みの SAFE を再び取り出して、バリュエーションキャップを今の勢いから考えれば大安売りとも思える1,000万米ドルまで引き上げる。

ここまでの時点で、あなたの会社の資金調達履歴は以下のようになる。

1年か1年半が過ぎ、残っている資金の底が見えてきたところで、あなたはついにプロの世界へ行くことを決める。ティア1やティア2の VC といった機関から資金を得るためにピッチする準備はできている。

以下は私が楽観的なケース、ほどほどのケースと呼ぶ2つのシナリオである。

楽観的なケース

楽観的なケースでは、あなたは幸運にもいきなり製品を市場にフィットさせ売上を上げることができた。クライアントが持つ大量の支払い済みパイロット版は、実際の長期的または定期的な契約へと変換されている。マネタイゼーションモデルの柱の少なくとも1つが有効であると証明されており、会社は今年少なくとも200万米ドルの利益を生み出すだろう。VC も喜んであなたに会おうとする。数週間の話し合いの後で、トップティアのVCから値付けされたエクイティラウンドで500万米ドルの投資の申し出をもらい、これは会社の持ち分の25%になるだろう。これによって投資後の企業価値は2,000万米ドル、もしくは現在の年間利益の10倍となる。

この取引があなたの資本政策にどういう影響を与えるかを見てみよう。

この VC ラウンドの前は、あなた(と共同設立者のチーム)は会社の100%分を持っていた。外部からの資金調達はすべてエクイティではなく SAFE だったためだ。

多くのベンチマークであなたの会社のサイズにしては立派とされる2,000万米ドルの価値がつけられた500万米ドルの VC ラウンドによって、あなたと設立者チームの持ち分は100%から約53.5%へとダウンする。格言に言われるように、(小さなパイの大きな欠片より)大きなパイの小さな欠片を持つ方が良い。しかしながら、こんなに素晴らしい結果を残していながらのこの突然の希薄化にショックを受ける起業家を、私は目にしてきた。

ほどほどのケース

では、程々のケースを見てみよう。上手くいっているスタートアップの多くが辿る、より一般的な道だ。このシナリオではあなたのチームはフル回転している。健全な企業文化を作り上げ、大体のことは上手くいっている。ある程度のプロダクトマーケットフィットに届いているが、一貫して支払い済みパイロットを長期的または定期的な契約に変換し続けていることは、少々不安定な証拠でもある。

クライアントサイドへの臨時の支援によって、セールスやプリセールス、アカウントの運営機能に人員を増やすことが要求されている。今年の収益は50万米ドル以上、もしかしたら100万米ドルに届くかもしれないが、その多くはプロジェクトやパイロットの寄せ集めによるものであるため、楽観的なケースの200万米ドルに比べればその質は(そしてもちろん重要度も)及ばない。

法人から資金を調達するには、より長い時間がかかる。トップクラスの VC は好感触のサインを送ってくるが別件で忙しそうであり、必ずしもあなたが望むほど迅速に対応することはできない。結局、6ヶ月ほどの話し合いとピッチの後で、あなたは中堅クラスの VC ファンドから200万米ドルの投資と800万米ドルの投資後企業価値というタームシートを受け取ることになる。さらに、このファンドは他のケースに比べると大胆ではない。投資条件の1つは、既存の投資家がこのラウンドで少なくとも50万米ドルを決済することなのだ。

この取引があなたの資本政策にどういう影響を与えるかを見てみよう。

この程々のケースでは、値付けされたエクイティラウンドで設立者チームの持ち分が100%から一気に29.7%へと激減しており、場合によっては設立者が眩暈を起こすほどの急落である。設立者が2人の企業では、それぞれの持ち分が50%から15%以下に減少するということになる。

上記2つのシナリオはどちらもありそうなことであり、イノベーティブなスタートアップの発展においては後者の方がはるかに一般的である。もう1つの一般的なシナリオ、低調なケースと私が呼ぶものはあえて除外した。なぜなら、複数回 SAFE を重ねて資金を調達するスタートアップは、どちらかと言えば「特殊な状況」であり、解決不能ではないがもっと苦しいトレードオフであるからだ。

何度も言うようだが、この記事は SAFE を非難するものではなく、値付けされたエクイティラウンドなしにSAFEを繰り返す前に、起業家はよく考えるべきであると警告するものである。

起業家の間で人気の資金調達スキーム「SAFE」が、さほどセーフ(安全)ではない5つの理由【ゲスト寄稿】

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Image credit: RudeVC

90年代、私が自分のスタートアップの資金調達をした頃には、優先株で出資することが VC の間で主流で あった。convertible note(転換社債)や venture loan(事業ローン)は、特にインターネットバブルまでの期間、 デットファイナンスの面で見かけることがたまにあった。

それから10年以上経って紹介された「SAFE(Simple Agreement for Future Equity、将来株式取得略式契約書)」は、近年起業家の間で人気だ。

東京でも良く見かけるようになった中で、SAFE を発行した企業に追って投資をしているベンチャーキャピタリストとして、また、ときには SAFE に投資している者として、SAFE に対する自分の考えを紹介したいと思う。

SAFE は、convertible note から派生したものである。Y Combinator が2013年、convertible note の代替手段として、投資を受ける企業と投資家のどちらにも有益となる SAFE を開発した。Y Combinator の目標は、契約を標準化することによって確実性とスピードが促進され、結果的に取引コストを削減するという立派なものだった。

SAFE が出る以前から、convertible note の元々の根拠は次のようなものだった。

スタートアップを最もアーリーなステージで評価するのは難しい。定量的議論を実証できる測定基準はほぼ存在しないため、当事者たちが合意するのには困難を伴った。起業家(ほとんど男性だった)は自身の発想は最初から何億兆もの価値があると信じており、逆に投資家は、資金無しには日の目を見ないかもしれないベンチャーの株式に〝落ち着く〟理由を正当化できなかった。

そこで、convertible note はバリュエーションを次の資金調達まで先延ばし、この膠着状態を破った。最初の投資家は、将来のバリュエーションをもとに貸付をし、そのリスクに見合う形でディスカウント(例えば30%)ができるというものだ。

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後に、他の状況でも convertible note は有効であると考えられるようになった。連続した値付けされたラウンド(訳注:一般的にシリーズ A 以降)で資金調達するのには予想以上に時間がかかり、その時間を稼ぐために既存投資家につなぎ出資してもらうときだ。ここで双方の利益は似ていて、企業に対して公平な評価をできるのは内部の人ではなく市場であるから、convertible note がプロセスを混乱させることはなく、道のりを少し延長するだけとなる。

convertible note は、そのときの状況に応じて設計することができる。一方、SAFE はより標準的な設計となっており、適用の仕方においても厳格だ。私はシンプルさと便利さの両方の利点から、資金調達を必要とするあらゆるタイミングで、資金調達が SAFE に頼るようになるのを見てきた。

最も悪名高い危険の一つが生じるのは、創業者が2つ以上の連続したラウンドで SAFE を使うときだ。アーリーステージでの困難なバリュエーションの議論を先延ばしする利点は、(たどり着けたとして)値付けされたエクイティラウンドのときに有害なものとなる。SAFE を連続して使うのは、値付けれたラウンドを先延ばししているに過ぎない。

連続して SAFE で資金調達する際に、創業者が重要な複数の留意事項を見落とすのを、私は目の当たりにしてきた。

  1. 将来の希薄化の影響を把握できていない。SAFE は(株式に)転換されるまですぐには希薄化しないため、未転換の SAFE が全て転換されるまで、自分の資本政策に与える将来の希薄化を予想・計算できない創業者もいる。SAFE のレイヤー1については頭の中で計算が極めて簡単だが、バリュエーションキャップが違ったりディスカウントしたりする状況では、SAFE のレイヤー2や3は、瞬く間に複雑な計算になり得る。
  2. バリュエーションキャップを企業価値(バリュエーション)と間違える。SAFE のバリュエーションキャップは、企業の市場評価と混同されやすい。しかし、これは間違いだ。SAFE が実施される理論的根拠は、バリュエーションパラメータの定量化が難しいからというものだ。500万、1,000万、1,500万のそれぞれのバリュエーションキャップで SAFE の後続レイヤーを発行したスタートアップの起業家は、プレマネーバリュエーション(調達前企業価値)が1,500万だと思うかもしれない。しかしそうではなく、会社のプレマネーバリュエーションは、その定義上、外部のリード投資家が値付けしたときにしか決定されない。
  3. 将来のリード投資家を締め出してしまう。レイターステージで SAFE がもたらすもう一つの潜在的な欠点は、自社にとってのリード投資家を締め出してしまう可能性があること。連続した SAFE の転換は多くの株式を消費するため、VC ファンドは投資を見送る可能性がある。Fred Wilson 氏はこの現象を、私よりもはるかに説得力を持って説明しているので、彼のブログ投稿を読んでみることをお勧めする。
  4. ポストマネーバリューション(調達後企業価値)算出への影響を見落とす。SAFE はポストマネーバリュエーション算出に相乗効果をもたらす。この相乗効果は、バリュエーションキャップと、値付けされた調達ラウンドでの実際のバリュエーションとの間の開きが大きいほど悪化する。
  5. 市場の無視。最後に、SAFE を重ねに重ねる創業者は、市場からの暗黙のシグナルを見落としているかもしれない。それはつまり、自社の値付けされた調達ラウンドをリードしたいという洗練された機関投資家はいない、ということだ。

AI技術のフレームワークに見る、フランスの台頭【インフォグラフィック】

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高等教育機関「Collège de France」で、フランスの AI 戦略について講演するマクロン大統領
(2018年3月撮影、フランス大統領府公開の動画から)

誇らしいことに、私はすでに日本の有望な AI スタートアップに投資しているが、AI(人工知能)のイノベーションを伴った私のディールフローの多くは、今でもヨーロッパからのもので、その多くはフランスからだ。

AI におけるフランスの優位性は、今日の世界的なイノベーションにおける最高の秘密の一つかもしれない。

以前にも説明したように(ITMedia「日本企業が米国より欧州スタートアップと相性のいい理由」を参照)、フランスの教育システムでは、年齢の若い頃から高度なエンジニアリング分野を教えることに焦点を当てている。さらにフランス各地に点在する数多くの研究機関は、AI の専門知識と、AI の要素技術である機械学習や深層学習に対する〝肥沃な土壌〟を提供している。

この事実を証明する新たな見方がある。AI 技術のフレームワークの提供において、フランスは世界で最も多くの貢献をしている国の一つだ。千の言葉を並べるより一枚の画の方がわかりやすいので、この点に言及すべく以下のようなインフォラフィックを作成してもらった(グラフィックデザインについて、Truffle Capital の同僚 Lucile Nurit 氏に感謝する)。

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懇意にしているVCを頼って、他のVCを紹介してもらうメリットとは【ゲスト寄稿】

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Portrait of man, godfather-like character.
Image credit: Marcin Roszkowski / 123RF

事業に資金を調達しようとしている起業家にとって、ある VC の投資先や他の VC から紹介を受けることに比べれば、相手からもたらされた調達の勧誘に乗ったり、仲介者を通じて調達したりすることは効果的でないことが多い。

私の投資先のメンバーが会うことを勧める人物がいたら、ためらわずにその人とのミーティングを受け入れる可能性が高いと思う。私の投資先は、自分たちの活動する市場について私よりも詳しいし、彼らが仲間の起業家のスタートアップ提案を魅力的だと考えたなら、それは私にとって最適なディールフローを生み出す非常に貴重な洞察となる。

同様に、仲間である VC からの紹介は、ディールフローの最優先案件に飛び込むことになる。仲間の VC は私の投資の関心領域を知っているし、その VC と私の互いの尊重を考えれば、自分が可能性を確信しないプロジェクトを紹介してくることはないだろう。

それは時として、他の VC と投資機会を共有することへとつながる。これは3つのカテゴリに分解できる。1) 共同投資(コ・インベスト)したいと思える新しい投資機会、2) 自分の投資先の新たな資金調達、3) 私は投資できないが、投資判断が他者への参考になる機会。

1つめのカテゴリは、新しい案件に共同投資することを通じて仲間の VC の利益は私のそれと一致するので、話は非常にわかりやすく、比較的このカテゴリに当てはまるケースは多い。2つめのカテゴリは、新ラウンドの条件が私が参加した元々の投資条件とは異なることが多く、少し私の条件とはズレがあるケース。それでも、この種の紹介には大きな意味がある。私は他の VC の投資スタイルや投資能力を知っているし、他 VC が資金調達以外にも、私の投資先にもたらしてくれるかもしれない価値があるかもしれない。反対に、他 VC は私の投資スタイルやできないことを知っているし、私は投資先の将来展望について確信が無ければ、他 VC を数年に及ぶ冒険に巻き込むようなことはしないと、彼らもわかっている。

しかし、私は自分自身は投資に参加しないものの、個人的に他のファンドに自信を持って紹介できると感じるケースには、いくつかの理由がある。おそらく、投資機会が自分の投資のスイートスポット以外のところにあるか、投資資金が他のプロジェクトと関係を持ってしまっている(訳注:同業の他投資先がすでにいる)などの理由だ。

くだんの投資機会が他の投資家にとって適合する可能性があると思えば、私は起業家に個人的な紹介をするだろう。この方法は、起業家が他の投資家に会うために使いたい他の手段よりも効果的でないこともある。それでも構わない。私はその起業家の事業が、よく知る他の VC の関心にマッチすると思えば、紹介するだけのことだ(でも、紹介しなかったからと言って、私がそのプロジェクトの可能性を確信していない、とは思わないでほしい)。

起業家はいつも、自ら直接フォローアップしようと、私が適切だと思う VC のリストが欲しいと言ってくる。私はそういった要望は理解できるし、それを非難することも決してしない。しかし、起業家は他 VC にはまず個別に投資機会について相談した方が、はるかに効果的であるというのが私の個人的意見だ。そうすることで、他 VC は自分たちが持つ条件に則って投資機会をレビューでき、〝安全な対話〟が可能になる。彼らは、(驚くほど)しつこい起業家に悩まされるリスクがなくなるからだ。(起業家には)もし私が内々に共有してもよい情報があれば、それを示すようにしてほしい。

バルト3国のデジタルイノベーション【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿) The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture c…

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿

The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist.


Image credit: berean / 123RF

今年の夏、私は一時期をバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)に戻って過ごしていた。最後の訪問から十年以上過ぎているので、「戻って」と表現するには日が過ぎてしまっていた。また、3国のうち、ラトビアには行ったこともない。これら小さな3つの国がどれほどデジタルに接続されるようになったか、多くの領域でどれほど腕を上げつつあるかは信じられないほどだ。屋内の光ファイバーや屋外の 4G ネットワークが、あらゆる場所でも使える(例えば、リトアニアとラトビアの光ファイバー普及率、それぞれ71%と65%だ)。モバイルの通話データ契約は、3カ国すべてで1人あたり1.4件を超えている。

キャッシュレスエコノミーは、バルト3国で成長真っ只中にある。ヨーロッパにおける全 POS 取引のうち、キャッシュレス決済の半分以上をエストニアが占めている(これと比べ、スペインの全 POS 取引のうちキャッシュレス決済は13%、イタリアは14%に過ぎない)。実際に、私がリガ(ラトビアの首都)とビリニュス(リトアニアの首都)で目にした店舗での取引のほとんどは、キャッシュレスであるだけでなく非接触型だった。3カ国はユーロを採用しており、エストニアでは2011年に、最後となったリトアニアでは2015年に始まった。

エストニアと EU における、キャッシュレス決済とカード決済の取引量推移
Image credit: エストニア中央銀行

私が先進国で見てきた限りで言えば、現在タリンで会社を設立することは最も手間がかからない。これは2014年、エストニアが世界中の非エストニア人に対してもデジタルアイデンティティシステム「e-Estonia」を開放したこと(e-Residency)に大きく由来する。e-Residency によって、エストニア国外にいる市民も、同国政府のポータル e-Estonia を通じて提供される多くのデジタルサービスにアクセスできるほか、エストニア国内に場所にこだわらなくてよい事業を登記できるようになった。この努力により、エストニアは自国の影響力の仮想的な境界をデジタルコミュニティへと広げ、グローバル市民を惹きつけることができる。

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ブロックチェーン人材は、日本(人口1億2,700万人)よりもラトビア(人口200万人)で多く感じられた。Bitfury はおそらく、仮想通貨コミュニティにおいてラトビア発の最も成功したストーリーの一つで、現時点で世界中のビットコインマイニング量の10%以上を扱っている。しかしながら現在、ラトビアには Bitfury 以外にも、たいていの国際的な VC(ラトビアに拠点を置いている VC はほとんどいない)の目に留まらないようにしている、仮想通貨やブロックチェーンの興味深いプロジェクトは数多い。

Blockchain Centre Vilnius 全景
Image credit: Blockchain Centre Vilnius

ビリニュスでは、NSA(アメリカ国家安全保障局)でさえ再現できない、人工知能ベースの画像認識技術を開発した技術者に会えたのは光栄だった。リトアニアの首都には「Blockchain Centre Vilnius」があり、ヨーロッパ中のブロックチェーン人材を魅了する中心的ハブとなっている。

バルト3国の起業家たちは国内市場の規模に幻想を抱くことはないため、世界進出に対して野心を持っている。SkypeBitfuryRevolut は言うまでもなく、現在は世界的な成功を遂げたブランドとなっているが、彼らは今でもそれぞれ、エストニア、ラトビア、リトアニアにそのルーツと初期成長の牽引を有している。

最近のヨーロッパでのデジタルイノベーションを動きを目にしたければ、バルト3国は必見と言えるだろう。

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初のユニコーンを手にした日本、次に必要なのはユニコープス?【ゲスト寄稿】

本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿) This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The …

mark-bivens_portrait本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The original English article is available here on The Bridge English edition.


Image credit: Bakhtiar Zein / 123RF

日本は今週、メルカリの IPO で同国初となる成功したユニコーンが羽ばたくのを目撃した。2013年にローンチしたメルカリは、日本を先導するオンラインフリーマーケットプラットフォームとなり、素晴らしい UX により人々がスマホアプリで中古アイテムを売買するのを可能にした。ローンチからわずか5年の間に、メルカリの時価総額は60億米ドルに達し、これはテック企業としては、2016年7月に公開した LINE 以来の大型 IPO となる。メルカリを支援した投資家、なかでも、シードラウンドの時点で同社のビジョンに出資した East Ventures に頭が下がる思いだ。そして、山田進太郎氏の不断のリーダーシップと、メルカリのチームの結集した努力に対して、深く敬意を評したい。

私の願いは、メルカリが日本におけるテックイノベーションの、流れを変えるモーメントの代表的な存在となることだ。私は今週、ここ東京でその予兆をいくつか目にした。メルカリをゲームチェンジャーだと見る人がいる一方で、メルカリのことを懐疑的に見ていて、同社は失敗を非難するする文化の例外的存在だと主張する人もいる。

しかし、その意見の両陣営にいる実に多くの人が私に対し、日本にユニコーンが少ないことは、世界第3位の経済大国であり、西側諸国から脅威の目で見られた元技術大国としては、恥ずかしい状況だと語った。

確かに、アメリカ、ヨーロッパ、中国はテックユニコーンを多く輩出している。今日でさえ、ヨーロッパはそのユニコーンの分布で、実力ではかなわないと言える。最近の ITmedia  へのインタビューで説明したように、ヨーロッパには約30社のテクノロジーユニコーンがいて、これはアメリカのそれの25%以上の数字であり、アメリカに比べ、ヨーロッパの VC 調達が10分の1で、実際の調達ラウンドも金額が低いことを考えると、これは実に驚かされる事実だ。ヨーロッパの技術セクターが盛り上がろうとする時期に生きる VC として、この魔法のような段階を目撃し投資できることは幸運だと感じている。

そう、それは魔法なのだ。ヨーロッパでのユニコーンの誕生は、国際的な投資家たちに旧大陸の可能性を気づかせた。アメリカや中国からの資本は、ヨーロッパへの道を切り開いた。今や日本にも、その可能性を発見した投資家が何人か存在する。おそらく、メルカリも同様の群衆を解き放つことができるだろう。

確かにユニコーンという言葉は過度に使われ、その定義は正確でなくなりつつある。しかし、インベストメントバンカー、リサーチアナリスト、投資家たちはその言葉を愛してやまない(言うまでもなく、テックジャーナリストたちもそうだ)。世界中の政府関係者は、ユニコーンマントラ(お経のように、ユニコーン、ユニコーンと言ってやまないこと)をほぼ普遍的に採用している。自国のテックエコシステムこそ最良だと自信を持って語るときに、小規模な競争の中で点数をつけるための基準として用いる国もある。ユニコーンの普及は、資本市場における非効率性の兆候であると主張する人もいる。

私は日本がテックユニコーンを短期間で生産することを期待しているが、実際のリトマス試験は、もっと恐るべきマイルストーンの形で来ると述べたい。それは、日本初のユニコープス(unicorpse:unicorn(ユニコーン)と corpse(死体)を合わせた造語で、死に体のユニコーンを指す)だ。

誤解しないでほしいのだが、私はすべてのユニコーンベンチャーに拍手を送っていて、彼らに加害しようとは考えていない。また、逃げ切るスピードに到達すべく、現在はスポットライトから逃れようとしている起業家など、今はまだ表だって評価されていないヒーローたちにも賛美を送りたい。皆さんの中にはユニコーンクラブに入ることを望む人もいるだろうが、一方で10億ドルの壁を超えないまでも永続的価値を持つ素晴らしい会社を築いている人も多くいる。私はシービスケット(1947年に死んだアメリカの競走馬)の終焉に涙したように、ユニコーンの死体の山を見たいとは思っていない。

しかしながら、(ユニコーンの名付け親である)Aileen Lee 氏の言葉は任意の評価基準を示しているが(10億ドルには他の意味がある)、10億ドルを超えることについては、成層圏に達したとさえ言えるような派手さや感慨深い印象さえある。今日の考え方では、10億ドルを超えることは、ビッグリーグを超える何かを築いたとか、もはや神話に近い生き物になったことを意味する。

同様に、10億ドルの失敗は大きなものになる。足元のぐらついたユニコーンの話題は依然としてタブーであり、「死に体のユニコーンのリスト」は公表されていない(最近、ローカルインサイダーたちの驚きで、日本の VC 調達を魅了している人物がいるようだ)。しかし、間違いなく、これまでにも多くの血を見てきただろうし、これからもより多くの血を見ることになるだろう。おそらく、世界中には多くのユニコープスがいる。これは、ベンチャー構築の本質であるから仕方がない。そして、いいことでもある。ゲームチェンジングなディスラプションをもたらすような、世界を巻き込むようなサクセスストーリーは、大きな失敗が無い環境には存在し得ないからだ。

いつになるかはともかく、日本に初めてユニコープスが生まれた時には、それが新しい曲がり角になるだろう。そして、そのときのコミュニティの反応が、日本のイノベーションエコシステムの真の可能性を明らかにすることになるだろう。