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鍵は「屋外広告」一気に拡大したBrexの #スタートアップPR 戦略を紐解く

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ピックアップ: AdQuick raises $6M to conquer an advertising market Google and Facebook won’t ニュースサマリー: OOH(Out-Of-Home)広告のマーケットプレイス「AdQuick」は2月14日、Initialized Capitalがリードを務めたシリーズAラウンド600万ドルの資金調達を行なったと発表した。Wn…

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ピックアップ: AdQuick raises $6M to conquer an advertising market Google and Facebook won’t

ニュースサマリー: OOH(Out-Of-Home)広告のマーケットプレイス「AdQuick」は2月14日、Initialized Capitalがリードを務めたシリーズAラウンド600万ドルの資金調達を行なったと発表した。WndrCo、Shrug Capital、Work Life Ventures、The Todd&Rahul Angel Fundらも参加した。累計調達額は940万ドルを達成した。

AdQuickは、自社が所有する屋外広告スペースをレンタルするビジネスではない。広告スペースの所有者と購入者を結び付け、購入の手数料を受け取るマーケットプレイスモデルを採用。また、従来のオンライン広告同様に、広告効果を測定できるツールを導入。AdQuickが活用しているターゲットは、昨年米国内で未使用になったと推定される全OOH広告スペースの30〜35%に当たる箇所だ。

昨今では不動産スタートアップ「ZeroDown」や、クレジットカードスタートアップ「Brex」が屋外広告キャンペーンを大々的に展開。大半の企業がGoogleやFacebook広告を展開する中、広告チャネルの差別化が一切図れなくなった。そこで再注目されている屋外広告に着目したのがAdQuickである。

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話題のポイント: 屋外広告の価値の再評価が始まっています。

最たる例がAppleによる「Shot on an iPhone」キャンペーンでしょう。みなさんも駅構内の至る所で見かけたことがあるはずです。同社は多額のキャンペーン費用を支払っており、世界中の都市で展開。伝統的な屋外広告枠に独自のアプローチを採用しています。

2017年のAdWeekの調査によると、OOH広告市場における上位100利用企業の約25%はハイテク企業とのこと。Google、Facebook、Apple、Snapchat、Twitterが代表的です。自社プラットフォームでデジタル広告を展開できる企業らが、オフライン広告に多額の費用を支払っている点は皮肉なことかもしれませんね。

さて、OOH広告への投資は、スタートアップも積極的に行なっています。Venmo、Jet.com、Oscar、Casper、Percolateなどのハイテクスタートアップはすべて、ニューヨークを中心に広告展開をしています。

それではなぜ、テック企業らは屋外広告に注目するのでしょうか。

Peter Thielも投資したクレカスタートアップ「Brex」の事例

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Image Credit: Brex

スタートアップ事例ではBrexが昨今の代表ユースケース。同社は著名投資家Peter Thiel氏も投資するスタートアップ向けクレジットカードを提供する企業です。ここからはHow Brex Is Building the Startup Marketing Playbook (Beyond The Billboards)の記事を参考に、同社の広告戦略を紹介します。

Brexは当時22歳と23歳であったHenrique Dubugras氏とPedro Franceschi氏によって創業されます。Brexは非常にユニークかつ積極的なPR戦略でステークホルダー獲得に乗り出します。ローンチ前には潜在顧客獲得のために1,000人以上の外国人起業家にLinkedInにコンタクト、立ち上げ初期から投資家デックをプレスに提供、イベント登壇で情報発信、そして30万ドルの屋外広告展開をしかけています。

元々、Brexは初期顧客100名を獲得するまで1年間ステルスで活動。アイデア検証に時間コストをそれなりに費やしていたため、ローンチ直後に爆発的な獲得成長数を望んでいました。そのため、あらゆるインパクトあるマーケティング・プロモーション施策を打つ必要性があったのです。

Brexのマーケティング戦略は、リターゲティング軸で展開されます。

Brexはオンライン広告を認知拡大と顧客獲得の場と位置付けています。まず、YouTube広告などでブランド広告を展開します。何度かテストを繰り返したのちにデモグラフィックデータを収集。その後、自社サイトでコンテンツを展開し、潜在顧客の自然流入を待ちます。最終的には訪問ユーザーをトラッキングして、有料広告でリターゲティングを展開します。顧客がサインアップしたら口コミに持っていくことで、低コストな顧客獲得を目指します。

「顧客データのサーチ」「コンテンツ展開」「有料広告」「顧客獲得」「口コミ」の5ステップの順で展開されたのがBrexのマーケティング戦略です。これをループのようにぐるぐる回して顧客獲得を目指しました。広告費用のペイバックピリオドは6カ月分以内(粗利益で回収する)と定めていたようです。

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興味深いのが「コンテンツ展開」のステップ。スタートアップに資金はありません。そこで投資家デック公開からイベント出演に至るまで、オンラインのみならず、オフラインコンテンツの積極発信に至るのです。こうした接点から「Brex」「スタートアップ」「クレジットカード」など、どれか1つでもオンラインキーワード検索をして、引っかかった顧客を半年以内に引き抜いたのです。

調達額が増えてきた段階で、サンフランシスコ地域を中心に30万ドル規模の屋外広告キャンペーンを打ちます。起業家があふれる街であるため、屋外広告に載せるキーワードも自ずと限られてきます。オンライン広告で収集したデモグラフィックデータと組み合わせて最適な広告板をデザイン。先ほどと同じく特定キーワード検索を1つでもした潜在顧客獲得に走ります。

もちろん、屋外広告はブランド認知の側面も高いのですが、Brexの場合はROI(費用対効果)は非常にポジティブなもののようです。一貫したリターゲティング戦略で上手くオフライン展開が働いている証左でしょう。

全方位からコンテンツ展開を行い、スタートアップが持ち得る全ての「コンテンツ資産」を棚卸し、オンラインでのサインアップに持っていく流れがBrexの戦略。その一貫として屋外広告が活用され、ブランド認知から顧客獲得まで効率的に展開しています。

スタートアップPRの本質、「雰囲気作り」を最大化

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Brexのプロダクト自体がスタートアップに特化しているもののため、シリコンバレーのような起業家の集まる地域にターゲットを絞れます。そのため、地域性と相性の良い屋外広告には打ってつけです。ただ、最も見習うべき重要な点は、BRIDGEのスタートアップPRでも述べてきた、「雰囲気作り」だと感じます。

<参考記事>

筆者は昨年1月にサンフランシスコを訪れていた際、現地の起業家さん何人かと会いましたが、特に若手起業家であれば(特に昔から使っているカードがなければ)Brex一択という雰囲気を強く感じました。「起業家のクレカ = Brex」の流れができていたのです。

まさにバイラルができていたのがBrex。ここに至るまでに初期投資を戦略的かつ、ある程度のコストは惜しまずに展開したのが同社の実績です。

巧みな雰囲気醸成を行えた理由は3つ挙げられると考えます。1つはオンライン広告最適化。自社プロダクトがどこに一番刺さるのかをデータドリブンに探り、マーケティングの基軸となる層に向けて徹底的にアプローチします。世界中でスタートアップ × クレジットカードの文脈に興味のある地域を絞り込みます。

2つ目はナラティブ(語りかけ)です。イベントや投資デックから徹底的に直接ストーリーを投げかけます。顧客に近い場所へ趣き、プロダクトの有用性を解くことで、Brexカードを好きになり・積極的にレビューを発信してくれるインフルエンサー・コミュニティを着実に積み上げていきます。

この点は以前ご紹介したSuperhumanの戦略と似ています。インフルエンサーは自らの体験の語り部となる、スタートアップPRにおいては重要な媒体となりえます。ちなみに1つ目のオンラインデータから、イベント都市先の選定もしていたのかも知れません。

<参考記事>

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ここまでで顧客獲得導線と口コミバイラルが完成しているように思えますが、最終的に主要都市に丸ごと「Brexを利用しよう!」という雰囲気作りに動きました。それが3つ目の屋外広告なのです。

無意識のうちに、いつでも目に飛び込んでくるプロダクトメッセージ。日常の中に溶け込むように、各都市の風土に最適化されたキーワードを訴求することで、オンライン広告や口コミの社会的信用性を向上させるのが屋外広告です。口コミ紹介をされた際、「これ見たことあるよね」のような話の流れに持っていくことができるのは屋外広告の最大の強みでしょう。

また、広告の内容もいわゆる宣伝っぽいものではなく、「配車サービスを使えばリワードが7倍」のような利用体験であったり、「3カ月でスタートアップへのキャッシュバック総額1億ドル」といったコミュニティ感を訴求しています。なるべくターゲット顧客の日常行動に変化をもたらしたり、同じ起業家層が使っているから見逃せないといった良い意味での焦りを生み出しています。

スタートアップPRでは単純なプロダクト内容を宣伝しても効果は薄い印象です。顧客に行動変化を起こしたり、自分が所属するコミュニティで使われている雰囲気作りが大切になります。Brexはこうした点で優れたPR思考を持ち合わせ、オンラインとオフラインの両軸を上手く回すオムニチャネル的な戦略展開に秀でていたと感じます。

今では配車サービスに屋外広告を出稿できるプラットフォーム「Firefly」なども登場。街中で屋外広告を多く見受けられる機会が増えました。事実、OOH市場は堅調に伸びており、Statistaのデータによると2020年の世界市場規模は約400億ドル。よりマクロ視点からターゲット顧客にサインアップを促す大きな力を持っており、プロダクト購買に迷っている人の背中を押す屋外広告の重要性は徐々に上がってきそうです。

次の起業トレンド「Superhuman for X」を知っているか?ーー領域特化の“フェラーリ”を作れ

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ピックアップ記事: The “Superhuman of X” “メール版フェラーリ”とも界隈で称される「Superhuman」をご存知でしょうか。2014年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は3,300万ドルに上ります。現在シリーズBラウンド。 Superhumanのコンセプトは「あらゆるアクションを0.1秒以内に達成させる」。圧倒的なスピード感とサクサク感を持たせる…

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Image Credit: Superhuman

ピックアップ記事: The “Superhuman of X”

“メール版フェラーリ”とも界隈で称される「Superhuman」をご存知でしょうか。2014年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は3,300万ドルに上ります。現在シリーズBラウンド。

Superhumanのコンセプトは「あらゆるアクションを0.1秒以内に達成させる」。圧倒的なスピード感とサクサク感を持たせることから“メール版フェラーリ”の愛称が付いています。

誰もが使うGmailの体験を超えることは至難といえます。しかしSuperhumanは強気の価格設定・ターゲティング・圧倒的に優れたサービス設計で、新たなメール体験を実現させています。同社は月額30ドルで次世代メールプラットフォームを提供。ターゲットユーザーは3時間/日以上メールを利用しているヘビーユーザーのみ。サービス利用は招待制。

豊富なショートカットが用意されており、ユーザーはほぼ全てを駆使するように教育されます。具体的には3つのサービス学習手法が用意されます。1つはオンボーディングプロセス(詳細は後述)。2つ目は「Super human Command」と呼ばれるポップアップ画面を呼び出せば、すぐさま該当ショートカットを検索できる導線を用意。

最後は、各アクションをクリックベースで起こす際、毎回ショートカットコマンドを表示して教える。たとえば、メールを捨てるためにゴミ箱ボタンをクリックしようとすると、「Cmd + Shift + ,」ショートカットがポップアップ表示されます。

“プロシューマー”を狙え

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Image Credit: Superhuman

著名VCであるAndreessen Horowitzが参加している点や、10万人以上がウェイトリスト入りしている市場需要から、確実にGmailの体験を超える突破ポイントを掴んでいるといえるでしょう。サービス体験は価格を裏切らないものと呼べそうです。

ただ、ショートカットを全て覚えるにはユーザー側に多大な学習コストを必要とします。しかしコストを受け入れて積極的に使うユーザー層が確実に存在しています。そこでキーワードになるのが“Prosumerization of the enterprise”です。

Prosumerizationを意訳すると「プロ消費者化」。Gmailに代表されるコンシューマ向けのツールを使い倒し、仕事をものすごい早いスピードでこなせるプロの仕事人になることを指します。また、“Producer”と“Consumer”を組み合わせた用語でもあります。「生産消費者」と訳され、生産と消費を同時にこなす新たな消費者を意味します。今回の場合、先方から送られてくるメールコンテンツを消費(読み)しながら、生産的に対応(返信)する人を指します。

Superhumanでは一見ユーザーコストが高いように思えますが、そもそもプロ消費者を当初からターゲットにしているため、学習コストに嫌気を感じる一般ユーザーは対象外。そのため、30ドルの高価格設定と招待制度は、プロ消費者だけに利用してもらいたいユーザー獲得戦略に紐づいています。具体的には下記4つを戦略的に実現させています。

  • 本当に価値を感じてくれるビジネスインフルエンサーに特化することでサービスの高級感を演出
  • 強気の価格設定で収益性を当初から実現
  • ターゲットユーザーであるプロ消費者だけを囲うことでサービス体験を高品質に常に保つ
  • プロ消費者は利用頻度が著しく高いため、フィードバックループを完成させてサービス改善フローを構築

プロ消費者向けのサービスを作り上げるだけで、一石二鳥では終わらず、上記のように一石四鳥の戦略を打ち出せます。

今後、Gmail以外にも“Prosumerization of the enterprise”のトレンドは到来するはずです。ExcelやWordで発生するタスクを、圧倒的なスピードとサクサク感でこなせるサービスはまさにそれらのターゲットとなりえます。

実際、すでにファイナンシャル業界で「OpenFin」と呼ばれる金融市場特化の新たなOSが誕生しているように、単体サービスではなく、ハードウェアの体験を丸ごと変えてしまうサービスも登場するかもしれません。

このように、プロ消費者意識がエンタープライズ領域で起きているトレンドが発生しているのです。従来、2C向けに広く展開されていたサービスを、企業向けに再発明するトレンドとも言えます。Superhumanは圧倒的なスピード感をメールサービスに持たせることで、“Prosumerization of the enterprise”を実現しました。

ちなみに“Prosumerization of the enterprise”は、本メディアでも最近頻繁に触れてきたパッションエコノミー文脈で登場した用語「マイクロ起業家」を英語で表す“Enterprization of cousumers”と並列して語られることも多いフレーズです。次の数年は、この2つのフレーズに注目が集まることは必至でしょう。

2つのフレーズを詳細な説明で比較したいと思われる方は、筆者も好んで聴いているスタートアップ情報を発信するポッドキャスト「Off Topic」のエピソード21を聴くと理解が非常に深まります。

Superhumanの作り方

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Image Credit: Superhuman

ここからは「So you’re building a “Superhuman of X”?」の記事一部の抄訳を織り交ぜながら、Superhumanのプロダクト開発戦略を時系列に紹介していきたいと思います。大きく6つの段階に分かれます。

第一フェーズ: Superhumanの始まりはユーザー候補300名へのヒアリング。解決策を聞くのではなく、どんなことに問題意識を持っているのかを傾聴して理解する「ママテスト」と呼ばれる手法でヒアリングを進めていったそうです。

第二フェーズ: 次にユーザー課題を小さなタスクへと分解をして取り組みます。複数タスクの解決に向けて一斉に取り掛かり、大きなプロダクトを作ろうとすると、往往にしてスタートアップは負けてしまうため、小さくスタート。また、取り組む課題を選定するためには、製品の優先順位付けが大切になります。Superhumanの場合、改めてユーザーヒアリングを実施することで解決したようです。ここで大切にしたのが下記の3点。

  • 本質を付いた正しい質問をすること
  • 得られた「ファクト」をセグメント分けして「インサイト」へと昇華
  • インサイトを基に、ユーザーがすでにヘビー利用しているサービスの理解と、同サービスに対して課題に感じている点の解決に自分の時間を50:50で使う

Superhumanは300名のユーザー候補が日常的に使うGmailに目をつけ、3時間以上使っているヘビーユーザーの課題を選出。毎回のメール処理における時間コスト解決に注力することを決めたことがわかります。

第三フェーズ: 次の段階では、具体的に数値に落とし込めるサービスゴールを設定します。大好きなゲームでラスボス設定をするのと同じ感覚です。Superhumanでは次のようにゲーム設定をしています。

  • ラスボス討伐: 受信ボックスの未読メール数を0にする
  • プレイヤー: ユーザー
  • ゲームルール: 必ずオンボーディングを受ける
  • コントローラー: キーボードとショートカット

興味深いのはどんなゲームでも操作方法をチュートリアルで教わるように、オンボーディングセッションを設定している点です。

ユーザーはサービスの利用価値を見出せなければ、すぐに解約してしまいます。30ドルも支払っていればなおさらです。そこで、登録ユーザーは1on1でのオンボーディングプロセスが課せられます。

一見、スケールのしない手法に見えます。ただ、通常のカスタマーサクセス部隊を編成し、長期的にサポートするより短時間にユーザーにサービス理解を促せるため、最終的に低コストで収まり、顧客満足度を最大化できるのだそうです。Superhumanの高い継続率と低い解約率の裏側には、オンボーディングで初見ユーザーをプロコンシュマーへと変えてしまう魔法のステップが用意されているわけです。

おそらく、オンボーディングの有無で大きく解約率が変化する「マジックナンバー」をSuperhuman側は掴んでいるはず。ゆえに時間を惜しんでまで、ユーザーに仕事を早く終わらせる方法を最初の時点で押していると思われます。

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第四フェーズ: さて、ラスボスを討伐させるまでのベースはできました。次に行うのは理想的な利用フローです。受信ボックスを0にするための諸条件や選択肢を洗い出していきます。

たとえば、未読ボタンを押さない(返信を後回しにしない)、リマインダーを使いこなす、スケジュール送信を積極的に使うなどが挙げられます。Gmailで本来行われるべきベストプラクティスを日常的に実行できるツールであろうとし続けたのがSuperhumanです。この点は、上述した「ユーザーがすでにヘビー利用しているサービスの理解」に由来するでしょう。

第五フェーズ: 最低限機能する製品「MVP」は第四フェーズまででなんとか完成。次に考えるべきはバイラル性です。Superhumanは非常に巧みなバイラル戦略を敷いています。具体的には3つ。

  • 「受信ボックス 未読メール数0」を押すとTwitterシェアする感想共有導線を確保
  • メール署名欄にSuperhumanへ飛ぶリンクを用意して招待を拡散
  • ウェイティングリストに友人が載っていた場合、ユーザーが直接優先的にサービス利用を促せるアプリ内リファラル戦略採用

ユーザーの最終目的である未読0に、感想をシェアする導線を置いたは巧みな考えであると言えます。ユーザーのモチベーションが最高潮に達する際、シェアが増えるのには納得がいきます。事実、SuperhumanのTwitterアカウントには2万人以上のフォロワーがついています。比較的地味なサービス領域である点を考慮すれば、非常にアクティブな場を形成しています。他の点に関しても、過去の大手メールサービスのバイラル戦略や、日本のMixiが採用していた招待戦略に見られる考えを忠実に踏襲しているように思えます。

第六フェーズ: 製品開発の最後は収益化です。Superhumanではヒアリング直後の、ざっくりとした製品像が浮かび上がってきた時点からユーザー候補にサービスへの支払い意思があるのかを勇気を持って何度も聞いていたそうです。

加えて、従来のサブスクリプションサービスが提供するような段階的な価格設定はしていません。フリーサイズ的に誰もに使われる有料サービスではなく、あくまでも特定ユーザーのニーズを満たせるのか否かだけに集中するための収益戦略を採用しています。

記事では「最強の商品開発」をSuperhumanの創業者は必ずや読んでいるに違いないとしており、詳しい内容を理解するために一読することをお勧めします。また、FirstRoundCapitalの「It’s Price Before Product」の動画もお勧めしていました。

Superhuman for Xとは?

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最後に本題の「Superhuman for X」について紹介します。Superhumanのサービス形態を様々な領域で応用・再現する考えを指します。ピックアップ記事ではSuperhuma系サービスの要素を次のようにまとめています。

  • スピード重視の設計
  • 特定ユースケース・ユーザーの課題解決に注力したサービス
  • ユーザー意見を十分に反映させたエクスペリエンス製品
  • 美しく、考え抜かれたデザイン
  • 従来の大手サービスを現代風に再発明
  • 高品質な有料サービス vs 一般の無料サービスの構図を作る
  • 秀逸なオンボーディングやバイラル戦略で差をつける

続けて、もしSuperhuman for Xの起業アイデアを探している場合に検討すべき評価項目を一覧化しています。

  • 現在広く利用されているサービス・ワークフローにおいて、効率的でない部分や、特定ユースケースに偏りすぎている点はどこか?
  • このワークフローにとってスピードはどれほど重要か?
  • このワークフローはどのくらいの頻度で実行されるのか?
  • このワークフローに対して、ユーザーは1日あたり何時間費やすのか?
  • 新製品を通じてどのような新しいワークフローを作成できるのか?
  • ユーザーが無料の類似サービスに慣れていた場合、支払意思額はどの程度か?そもそも意思は存在するのか?
  • あなたのアイデアが跳ねるきっかけをニッチ市場のなかでどのように作るのか?

Superhumanはスピード改善を最重視したプロダクトです。ただ、1on1オンボーディングを設定しているため、ユーザーの学習コストが多く関わる製品でもあります。直感的にサービス利用方法を理解できる方が良いとする2C向けサービスとは対峙するサービス導入手法でしょう。

それでも利用しようとする人が多く列をなしているのはなぜでしょうか。答えは「ツール時間 > タスク時間」の式で表せます。サービスの使い方を理解する時間を取るほど、タスク完了時間は圧倒的に短くなるのです。

Superhumanの場合、最初に独特のショートカットの使い方や機能を全て頭に叩き込むことで、生産性が圧倒的に上がります。後々に獲得できるメリットが圧倒的に大きいのです。こうした体験を数字で表現した頂点が「未読メール0」なのです。

一方、たとえば2C向けアプリでいくら直感的にアプリの使い方がわかったとしても、生産性が上がることはありません。この点、「直感的にサービス利用方法を理解できる方が良い」といった批判が2Cサービスから出てきたとしても、比較対象違いであることが指摘できます。

もちろん、サービス理解の時間は短ければ良いのかもしれません。ただ、最終的に生産性向上に繋がらなければサービスとしての提供価値軸が変わってくるため、そもそもエンタメやSNSアプリなどに代表される2Cサービスと、サービス導入時間に関する比較はお門違いとなります。生産性を追求するビジネスでのユースケースを狙う“Prosumerization of the enterprise”の所以はここから来ていると言えます。

このように、Superhuman for Xを開発するには生産性をハックする独特のマインドが必要となります。エンタメ系2Cサービスとは全く違った哲学が必要です。

2020年、普段利用する生産性ツールは、本来備わっている機能をほぼ100%駆使し、体験性を最大化できているのでしょうか。もしできていないのであれば、そこには大きなビジネスチャンスが眠っているはずです。今後数年、あらゆるビジネスシーンでこうしたチャンスに着目できたスタートアップに急成長の機会が巡ってくるでしょう。

次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(4:シンギュラリティ)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 各業界でこまやかにデジタル化が進んだ社会では、人とAIが役割の分担を明確にする。より個性や多様性を尊重する時代になり、人種や性別・障がい、地方といったギャップを超えるためのテクノロジーの必要性が高まる。伴って資本の考え方も変化し、一見すると経済合理性に乏しい社会的な貢献事業にも新たな道が開かれる。 最終回となる本稿では「人の次」について言及したキャピタリス…

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

各業界でこまやかにデジタル化が進んだ社会では、人とAIが役割の分担を明確にする。より個性や多様性を尊重する時代になり、人種や性別・障がい、地方といったギャップを超えるためのテクノロジーの必要性が高まる。伴って資本の考え方も変化し、一見すると経済合理性に乏しい社会的な貢献事業にも新たな道が開かれる。

最終回となる本稿では「人の次」について言及したキャピタリストたちの声に耳を傾け、探る旅の締めくくりとしたい。

シンギュラリティがやってくる

2005年に記されたレイ・カーツワイル氏の著書「THE SINGULARITY IS NEAR: When Humans Transcend Biology(邦題:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生/NHK出版)」はテクノロジー信奉者にとってある意味「預言書」と言うべき一冊だ。著書の中でカーツワイル氏は2030年をこう表現している。

VRの世界では、われわれはひとつの人格に縛られなくなる。外見を変えて事実上他の人間になれるからだ。肉体(現実世界の)を変えることなく、三次元のヴァーチャル環境に投影される体を簡単に変えられる。複数の相手向けに、同時に複数の異なる体を選ぶこともできる。だから、両親から見るあなたと、ガールフレンドがにが複接するあなたが別人ということもありうる。(中略)恋愛中の二人はなりたい姿になれるし、相手になることもで きる。こうした決定はすべて簡単に変えられるのだ(引用:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生)

YJキャピタルの堀新一郎氏もこの世界観の到来を心待ちにしている一人のようだ。

2014年に上映された映画「トランセンデンス」で注目を浴びるようになったシンギュラリティ。シンギュラリティ(Singularity)とは、未来学上の概念であり、人工知能自身の「自己フィードバックで改良、高度化した技術や知能」が、「人類に代わって文明の進歩の主役」になる時点(Wikipedia抜粋)のことです。

モバイル、IoTがデータのタッチポイントを増やし、クラウドコンピューティングがデータの格納に革命を起こしました。溜まったデータを解析・学習し、最適解を出すAI Techが2019年はメジャーになりました。これからの10年はAIの先に求められるサービスが主役になると思います。

シンギュラリティ時代に求められるのは仕事と遊びの再定義でしょうか。 仕事はオフィスに行かなくてもどこでも出来るようになります。小売店舗の店員はほとんどがロボット化され、デリバリーもドローンやロボットがやってくれるようになります。

オフィスは物理的空間からバーチャル空間に移行し、リモートワークはもっと加速していきます。チャットボットに代表される自動応答は2019年現在は無機質ですが、ユーモアを言ったりしてもっと人間味が出てくるようになるでしょう。ANRIが出資する「株式会社わたしは」は、そういった時代を見据えた言語処理を先んじて開発しています。

エンターテイメントも2018年に上映された「レディ・プレイヤー・ワン」のように、仮想空間で人々が交流する流れが一気に加速します。弊社の出資先でもあるミラティブのように、スマホの中でゲームやカラオケといったリッチコンテンツを楽しむ世界がより加速しします。gumiの出資先の「よむネコ」はVR空間の対戦ゲームを開発しており、ゲーム内アイテムをブロックチェーンで取引する世界観を目指していると聞いています。

グローバルの視点では、オンラインにおける米中戦争が加速化していくと予想しています。つまり、これからの戦いはFacebookやWeChat・Tiktokといったアプリケーションレイヤーにとどまらず、LibraやFusion Bankといった仮想銀行・仮想通貨の覇権争いが本格化するわけです。こういった戦いに対して、日本の政府や企業がどういった姿勢で対抗・調和を図っていくのかとても注目しています。そういった背景から、ゴールドラッシュ時代のツルハシ屋・ジーンズ屋に大きなビジネスチャンスがあると思います。

2000年に登場した3Gから約20年、2020年に5G元年を迎えます。ハイレゾのコンテンツがリアルタイムで飛び交い、仮想空間はVR・ARといった技術でさらなる進化を遂げる。スマホの次のデバイス、オンライン上で資産を管理するためにブロックチェーンが重要な役割を果たしていく。全てが自動化していく中で、人間らしさやアート、ユーモア、幸せといったものの価値が重要となってくるのでしょうか。思いっきり夢想しながら、全ての領域を見逃さずウォッチしていきます(笑)。

これからの10年も忙しくなりそうです【シンギュラリティ時代の到来に向けて】

(動画:Mirrativはアバターを纏って第三空間に居場所を作ることができる)

カーツワイル氏の著書で語られるポスト・ヒューマン論の興味深い点は、端末的なデバイス、コンピューティングの進化だけでなく、これらを極めて高い次元で人体と融合させようと試みていることだろう。

あなたが本物の現実世界を体験したいと思うときには、ナノボットは今いる場所(毛細血管の中)を動かずなにもしない。VRの世界に入りたいと思えば、ナノボットは五感をとおして入ってくる現実世界の情報をすべて抑制し、ヴァーチャル環境に適した信号に置き換える。脳はこれらの信号をその肉体が体験したものであるかのように捉える。(中略)そのようなヴァーチャルな場所を訪れ、 シミュレートされた人間ばかりでなく、本物の人間(もちろん、突きつめれば、両者に明確な違いはない)を相手に、ビジネスの交渉から官能的な出会いまで、さまざまな関わりをもつことができる(引用:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生)。

STRIVEの堤達生氏は、2020年代がこの「トランスヒューマン時代」に向けた準備の10年になると考えている。

10年前の2010年から今日まで、新しいものは実はそれほど多くは出ていないのではないかと思います。2000年代の10年間の方がスマホとソーシャルとクラウドが生まれ、変化という意味でのインパクトは大きかったです。2010年代は2000年代に生まれたものが進化と深化をし、そして拡張した10年でした。

では、2020年代の10年間はどんな時代になるのか。一言で表現すると「トランスヒューマンの時代に向けた10年間になる」。

AIやブロックチェーン、MR等の進化に加えて生命科学の発展に伴い、テクノロジー的には、従来の人間を大幅にアップデートする、すなわち「トランスヒューマン」の誕生の時代になるのではないか思っています。

つまり2020年代の10年間は、人間の記憶、判断、予測というものをテクノロジーがサポートしていくのはこれまで通りの流れだが、身体的にも古いパーツは取り換えて、よりバージョンアップしていくようになります。従来なら病気やケガで諦めていたものを新しいパーツに取り換えて、コンプレックスに感じていたものを自分の理想に近づけるようにこれまた取り換えていく。

こういうことが、時間をかけながら抵抗感なく受け入れられる、そういう時代に向けての10年間になるのではないでしょうか。

この時代感をベースに、投資家としてはこれまで以上に生命科学の領域におけるコアになるテクノロジーやそれに基づく、健康・美容系のサービスに加え、逆に人間の精神性は急には変らないため、それらをサポートするようなコーチングやマインドフルなサービスにも着目しています【2020年代の幕開け】

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C2C領域はさらにバーティカルが進む(月次流通は50%成長に拡大、スニーカー売買のモノカブがXTech Venturesなどから2.2億円を調達

W venturesの東明宏氏もまた人体の拡張について注目するとしていた。

人生の多様化を支援/促進するサービスについては、そもそも人間の寿命を長くする(永続化させる)技術、人間の身体を拡張する技術/世界観等、根元の部分(技術)から、余暇を楽しくするサービスまで、幅広く注目していきたいと思っています。XR領域の離陸による新たなコミュニケーション/エンターテイメントのイノベーションにはW venturesとしても積極的に投資し、一緒に未来を作っていきたいです。

人々の多様な価値観に対応したサービスとしては、趣味性の高い領域でスニーカーのC2C「モノカブ」、ヘルスケア領域で美容医療の口コミサイトの「トリビュー」、食領域でおやつのサブスクリプション「snaq.me」、スポーツ領域でランニングのバーティカルコミュニティ「Runtrip」等の投資先が伸びています。また、人々の価値観の変容に、既存の巨大コミュニケーションサービスが応えきれなくなってきているなとも感じており、でっかいコミュニケーションサービスの新たな出現にも期待しています【リアル世界の分散とバーチャル世界の融合、マルチアイデンティティ時代の本格到来】

この世界観は決してSci-Fiの中だけではない、ということはみなさんもご存知のはずだ。Googleが「量子超越性」の実証に成功した、という話題はムーアの法則には続きがあることを示唆しているし、イーロン・マスク氏は脳とマシンを実際につなげるプロジェクト「Neuralink」を公表している。

やや広い範囲で発生する「人類の拡張」が最初のステップになるとしたのは、伊藤忠テクノロジーベンチャーズの小川剛氏。

2020年から2030年にかけてロボットやAIがビジネスの実装の段階に入り、人間の仕事を奪うのではなくアシストし、人間の能力と仕事が広い意味で様々に拡張していることが「実感」できるサービスを提供出来る会社が注目されるでしょう。単にARで視覚が拡張しているという単純な世界観ではなく、実際に仕事が劇的に効率化したり早くなる「あー俺って拡張してる(笑」って凄さを提供できる感じですね。ロボットもAIも各ビジネスに実装して使えてナンボの世界になるかと思います。

R2-D2的にサポートしてくれるものから、広義で考えてソフトウェアで超効率化的なSuperhuman, PathAIなどもAugmentationの範疇に入る現時点の注目企業かと思います。2030年までに量子コンピュータが実装されると化学計算など特定用途は異次元で早くなり超効率化するのではないでしょうか【「Augmentation 」が継続して起こる】

ポスト・ヒューマン論は尽きることないが、その一方で距離感が掴みづらいのも確かだろう。そこで最後にもう少し距離の近い視点を2つほど紹介したい。まずはセキュリティだ。今回、実は意外にもあまりこのテーマを挙げた投資家が多くなかった。しかし、社会の多くがデータ化される時代、プライバシーの問題は更に注目を集めることになる。

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隠れた黒船・ピーターティール氏のPalantir社

これについて指摘したのがANRIの鮫島昌弘氏だ。

日本の大企業は従来オンプレミスな環境で閉じた環境下でしたが、今後はDX化やSaaSの活用に伴いサイバー攻撃によるセキュリティインシデントが急増し、セキュリティーへのニーズが高まると予想します。実際に、現在の日本でのサイバーセキュリテイーのインシデント一位は電子メール、FAX等の誤送信・誤発送等のヒューマンエラーが1位ですが、米国ではDos/DDoS攻撃やwebアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃が上位に挙がっています(NRIセキュアテクノロジーズ社の調査結果等)

具体的には、クライアント企業のインターネットに接続している全ての機器やクラウドベンダーを一元的に管理するExpanse社(FoundersFund、ピーター・ティール氏も出資)、IoT機器の増加に伴うネットワーク拡大に対応する形でのボットネット対策を行うPerimeterX社やクラウド型WAFを提供するSignal Sciences社等をベンチマークとして、日本でサイバーセキュリティーのスタートアップに1000社投資したいと考えてます。

また、日本進出を発表した、ピーター・ティール氏率いるPalantir社の動向には引き続き注目しています【日本の大企業のDX化に伴うサイバーセキュリティベンチャーの勃興】

もう一つが「クラウドの次」になる。計算と容量というシンプルなネットワークは徐々に性格を帯び始め、人類にとって役立つサービスを提供する労働力となる。IDATEN Venturesの足立健太氏はその世界がさらに重層化すると予想した。

人類はこれまで多種多様な自動化を実現してきました。

古くは、牛や馬といった「動物の力による自動化」(農作業や運搬など)、水や風といった「天然に存在する自然の力による自動化」(何人がかりでやるような重労働など)、さらに「蒸気・電気・磁気といった自然の力を増幅・制御することによる自動化」(産業革命)です。家庭レベル(家電など)から国家レベル(発電所など)に至るまで、実に様々です。

そして人類は、自動化されて浮いた時間を持て余すことなく、その時間を使って研究開発を続け、新たな技術を生み出し続けています。その最たる例が、20世紀末から一気に台頭してきたIT技術でしょう。IT技術により、人類はこれまでの肉体労働中心の自動化から、知識労働の自動化へも足を踏み出しました。

IT技術が登場した当初は、主に情報のやり取りを自動化する領域(ウェブブラウザや電子メールなど)が中心でしたが、IT技術の恩恵を顕在化させる情報処理端末がメインフレームからデスクトップPC、ラップトップPC、そしてスマートフォンへと、どんどんエンドユーザー(情報発信源)に近づき、両者の接触が常態化することで自動的に情報のやり取りが可能な範囲が拡がり、日常生活の多くがIT技術によって自動化・ディスラプトされてきました。

ただ、もちろん、まだまだ自動化され切っていない領域は残されています。2020年代は、そういった「残された自動化の金脈探し」をする人類の旅が続くと予想しています。

自動運転からRPAまで、実に様々な自動化の概念が顕在化した2010年代後半ですが、例えばIoTや脳チップといった概念を筆頭に、まだまだ情報の処理端末と発信源の接触拡大が続いており、そこから発生する自動化の可能性にいち早く気づき、事業化した企業が今後数年は、そのポジションをリードすることになるでしょう。

正直、現時点でどの企業がどの分野でリードするか分かりませんが、こういう時にあって注目している企業群の一つが、大量のデータ処理を容易に行えるようにする技術を展開している企業です。例えるなら、ゴールドラッシュの時代のツルハシ屋さんやジーンズ屋さんです。

IDATEN Venturesの出資先でいいますと、ニュージーランドのNyriadや、日本の情報システム総研、シマントがこれにあたります。

さて2020年代後半ともなると、リアル世界・サイバー世界を問わず、上記の流れを受けて、多くの自動化を実現するツール、いわばロボットが誕生していることでしょう。すると、そういったロボットを自由に使いこなすロボマス(ロボットマスター)による起業が本格化してくると予想します。

AWSのようなクラウドサービスがIT技術による起業ハードルを著しく下げたアナロジーで、上記のロボットは事業推進ハードルを著しく下げます。なぜなら、そうしたロボットを複数組み合わせ、駆使することで、24時間休むことなく非常に早いスピードでPDCAを回し続けることができるようになるからです。結果、超速で成長するスタートアップがいくつも誕生してくるでしょう。これが「ロボマス起業家によるスタートアップの超速化」です。

ロボマス起業家に求められるのは、多種多様なロボットを駆使する能力はもちろん、人々が思いもよらないようなアイデアを描く想像力、そしてそれを真っ先に実行に移す行動力になると思います。起業コスト・事業推進コストが低下し、そこで差別化がはかられにくくなってくるため、勝負の大きなポイントは、起業前のアイデア段階に移ってくるでしょう。

もしかしたら、人間の社員が0人で、いわゆるユニコーン企業を創り出す起業家も現れるかもしれません。VCとしても、特にシードVCにおいては、投資タイミングがどんどん前倒しされてくると思います。

2000年代、2010年代はIT技術を駆使できるITマスターが世界をリードしてきた側面がありますが、2020年代は、自動化を実現する各種ロボットを生み出す起業家と、それらロボットを駆使して事業を推進するロボマス起業家に着目です【『残された自動化の金脈探し」と「ロボマス起業家によるスタートアップの超速化」】

探る旅の終わりに

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Photo by Martin Damboldt on Pexels.com

4回に渡ってお届けした次のパラダイムシフトを探る旅、いかがだっただろうか。もちろん年末の企画ということも加味してリップサービス的なコメントや、ポジショントークもあったと思う。けど、ここで挙げた25名の投資家たちは数え切れないほどの起業家と対面し、自身も研鑽を積んだ人物ばかりだ。その言葉に嘘はない。

全体を通じて感じるのは「ポストiPhone」のようなエポックメイキングを求める声が少なくなったことだ。分かりやすいデバイス、スティーブ・ジョブズ氏のようなカリスマはメディアとしても言語化が容易だ。しかし今の時代、事はそこまでシンプルでなくなっている。

一人、今回の企画にあたってこんな声を寄せてくれた投資家がいた。

10年後の2030年、正直ここでまとめられることの7割は当たらないと思っています。たとえば今から約10年前の日本iPhone上陸の際、おそらく業界でも多くの人たちがここまでの普及を予想してなかったのではないでしょうか。なので、起業家(とそれを支援する私達投資家)は自分が信じる未来を作っていくことを意識し、こういう質問には10年後に絶対くる(ではなく来させる、が正解かもしれない)とポジショントークを続けていただければな、と思います。

弊社も僕も投資先が多いのでたくさん語りたい、語るべき未来がありますが、多すぎてスペースに入らないので省略します。個人的にはスタートアップ的には「人工知能搭載型人型ロボ『ヒューマギア』が様々な仕事をサポートする新時代 AIテクノロジー企業の若き社長が、人々の夢を守るため…今飛び立つ!」みたいなストーリーがあったらいいなと思っています。震える手抑え書きなぐる未来予想図でした!(TLMの木暮圭佑氏)

奇しくもスマホシフトが起こした情報化の波は、ステレオタイプな「右向け右」をダサいこととしてしまった。だからこそ彼が言うように、次に起こるパラダイムの波はとても曖昧で、でもいつの間にか世界を支配している、そういうものになるような気がしている。

この連載が次のスタートアップのヒントになれば幸いだ。

スーパーフードにクラウドキッチン、注目あつまる「世界の250社」まとめ(1/4)

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節目である「2020年」以降の動きを考える時がやってきました。日本では東京オリンピックがあるため、なおさら経済や文化活動が大きく動く年でもあり、誰もが注目しているトピックでしょう。 そこで本記事では、2019年に筆者が日々ウォッチしてきた約5,000社の調達スタートアップの中から、30のキーワードにまとめた250社を見ていくことにします。みなさんの2020年にとって、1社でも参考になる企業を紹介で…

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Photo by Daniel Gorostieta on Pexels.com

節目である「2020年」以降の動きを考える時がやってきました。日本では東京オリンピックがあるため、なおさら経済や文化活動が大きく動く年でもあり、誰もが注目しているトピックでしょう。

そこで本記事では、2019年に筆者が日々ウォッチしてきた約5,000社の調達スタートアップの中から、30のキーワードにまとめた250社を見ていくことにします。みなさんの2020年にとって、1社でも参考になる企業を紹介できればと思います。

なお、今回取り上げているスタートアップの大半が欧米拠点の企業であり、資金調達の大きさは選出基準になっていません。あくまでも筆者の定性的な判断により選んでいます。また、創業年やラウンドなどの細かなデータはCrunchbaseの情報を引用しています。

さて、総評を先に述べると、全てのスタートアップに共通するコンセプトは「Accessibility(アクセシビリティ)」です。

「技術ブレークスルー」、「お金持ちしか得られなかった特権サービスの民主化」、「扱いづらかった旧来型の仕組みやサービスUX改善」に取り組んだスタートアップにユーザーが集まっている印象です。こうしたスピード感を持ったアクセシビリティが日本市場でも起きています。

昔のようにタイムマシン経営を楽にできるほど日本市場は未成熟のままではなくなりました。今では欧米、もしくは中国市場で見かけたスタートアップ事例をすぐに日本で再現する企業が現れています。欧米スタートアップのコンセプトは、矢継ぎ早に日本にやってくるでしょう。アクセシビリティの波が来て、あらゆる業界・業種でエンドユーザーの私たちが新しい体験を得る機会が増えるはずです。

それではここから、下記30のキーワード別にスタートアップの説明をしていきます。各スタートアップがどんなモノに対してアクセシビリティを与えているのかを考えると、何か良いアイデアが閃くかもしれません。まずはエンタープライズから紹介を始め、4編に渡り説明をしていきます。

  • エンタープライズ(本編)
  • フード(本編)
  • フィンテック(2編)
  • 教育(2編)
  • ギグ経済(2編)
  • ヘルスケア(3編)
  • メディア(3編)
  • トラベル(3編)
  • 不動産(4編)
  • 小売(4編)
  • モビリティ(4編)

まだ先がある、ワークツール新星登場

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Image Credit: Tandem
  • Gtmhub」はOKR管理に特化したワークツールを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、2019年12月に900万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。CRVがリード投資を務めた。
  • Mattermost」はSlackに代わるチームメッセージプラットフォームを提供。2011年にパロアルトで創業し、7月に5,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Y Combinator’s Continuity Fundがリードを務め、Battery Ventures、Redpoint Ventures、S28 Capitalらがラウンドに参加。
  • Monday.com」はチームワークフロー管理ツールを提供。2012年にイスラエルで創業し、7月に1.5億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Sapphire Venturesがリードを務め、Hamilton Lane、HarbourVest Partnersらがラウンドに参加。
  • Notion」はEvernoteに代わるチームワークステーションを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、7月に1,000万ドルの資金調達をエンジェルラウンドで実施。
  • OpenFin」はファイナンス業界関係者向けのOSを提供。2010年にニューヨークで創業し、12月に2,200万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。HSBCがリードを務め、 Bain Capital Ventures、Barclays、CME Ventures、DRW Venture Capital、J.P. Morgan、NYCA Partners、Pivot Investment Partners、Wells Fargoがラウンドに参加。
  • Parabol」はチーム運営手法の1つであるレトロスペクティブに特化したワークツールを提供。2015年にロサンゼルスで創業し、11月に400万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。CRVがリードを務め、HaystackやSlack Fundらがラウンドに参加。
  • Quill」はエンタープライズ向けメッセージサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、10月に1,250万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリード投資を務めた。
  • Swit」は多機能ワークコラボレーションツールを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、11月に600万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Korea Investment Partnersがリードを務め、Hyundai Venture Investment Corporation、Mirae Asset Venture Investmentがラウンドに参加した。
  • Tandem」は遠隔地に住む従業員同士を繋ぐ仮想オフィス環境を提供。2019年にサンフランシスコで創業し、8月に750万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリード投資を務めた。
  • Taskade」はスタートアップチーム向けコラボレーションツールを提供。2017年にニューヨークで創業し、10月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Grishin RoboticsとY Combinatorらがラウンドに参加。
  • Threads」は期限なし・緊急タスクリクエストなしをモットーに、ゆっくりと特定トピックを議論できるワークプレイスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、2月に1,050万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Sequoia Capitalがリード投資を務めた。
  • Workona」はクラウドワークアプリの管理プラットフォームを提供。2017年にサンマテオで創業し、12月に600万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。K9 VenturesとAugust Capitalらがラウンドに参加。
  • Glue Collaboration」はVR向けコラボレーションプラットフォームを提供。2018年にフィンランドで創業し、11月に350万ユーロ(380万ドル)の資金調達をシードラウンドで実施。Maki.vcがリードを務め、Reaktor Innovations、Bragiel Brothers、Foobar Technologiesらがラウンドに参加。
  • Emerge」はMR向けコラボレーションツールを開発。2015年にロサンゼルスで創業し11月に1,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。M13がリードを務め、Vulcan CapitalやLionTree Partnersらがラウンドに参加。

2019年はプロジェクト管理やメッセージツール領域が大きく動いた年でした。

大きな流れとしては2つ挙げられます。1つはリプレイス。主要ワークツール「Slack」「Evernote」を代替するサービスが急成長を見せています。「Mattermost」や「Notion」の事例を見ていると、こうした動きが顕著であることが見て取れるでしょう。

代替対象となるサービス規模が大きければ大きいほど、それほどユーザー獲得数も急速に獲得できる機会を得ています。5年・10年以上経っているようなサービス体験を変えることで、短期間にグロースできるポテンシャルを示しています。

2つ目は特化型/アドオン。「Taskade」は利用シーンをスタートアップに特化させています。また、「Gtmhub」はアジャイル開発で用いるOKR手法に、「Parabol」はレトロスペクティブの手法に特化。なかでもParbolに関しては非常にニッチな領域を抑えているといいながらも、すでに買収先を考えながら着実にユーザー数を伸ばしている印象です。

500超の企業が利用していることなので、爆発的な成長を見せてはいないものの、Slack Fundが投資していることから、いずれはSlackによる買収などが想定できるでしょう。特化型ツールは、ある程度までユーザー数を伸ばせばExitを狙えるため投資が集まっていると考えられます。

加えて、「Workona」に代表される各ワークステーションを束ねる、拡張型ツールの高い利便性に人気が集っています。同じようなツールにYコンビネータ卒業の「Station」が挙げられます。このような利便性の高いアドオン型ツールも見逃せません。

Gmailの次

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Image Credit: Superhuman
  • Consider」はスタートアップ向けのメールサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、8月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Kleiner PerkinsやBedrock Capitalがラウンドに参加。
  • Superhuman」は既存メールサービスのヘビーユーザー向けに使い勝手の良い有料メールサービスを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、5月に3,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリード投資を務めた。
  • Loom」は企業向け動画メッセージツールを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、11月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Sequoia Capitalがリードを務め、Kleiner Perkins、Figma、Kevin Systrom、Mike Krieger、Mathilde Collinらが参加。

誰もが使うGmailを超えることは至難といえます。しかし「Superhuman」は強気の価格設定とターゲティング、圧倒的な体験提供でこれを実現させています。同社は月額30ドルで次世代メールプラットフォームを提供。ターゲットユーザーは3時間/日以上メールを利用しているヘビーユーザーのみ。豊富なショートカットが用意されており、慣れると使い勝手が良いそうですが、サービス利用時に1on1動画セッションがあるほど心構えが求められます。

ただ、著名VCであるAndreessen Horowitzが参加している点や、10万人以上がウェイトリスト入りしている市場需要から、確実にGmailの体験を超える突破ポイントを掴んでいるといえるでしょう。サービス体験は価格を裏切らないものと呼べそうです。強気な価格設定で私たちが日常的に使うサービスを一新するモデルは他業種に見られます。たとえば「Andrena」は月額25ドルから高速インターネット回線を提供しています。

注目の動きは「Loom」にも見られます。コンシューマー市場で起きている流れがエンタープライズ市場に派生しています。今やInstagram、Snapchat、Facebookに代表されるSNSでは画像や動画などのビジュアルコンテンツが主流に。SHOWROOMのようなライブ動画配信ツールも人気です。

一方、仕事で使うツールは全てテキストがメイン。普段使うコミュニケーション媒体が変わっているにも関わらず、企業でのコミュニケーションスタイルはそのまま。このギャップに切り込んだのが、動画コミュニケーションツールを開発するLoomです。ユーザー体験としても非常に自然と受け入れられるでしょうし、おそらく今後、競合が多く出てくるでしょう。

ソフトウェアが飲み込む多領域

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Image Credit: InCountry
  • Clumio」はデータバックアップ版AWSを提供。2017年にサンノゼで創業し、1.35億ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Sutter Hill VenturesとAltimeter Capitalが共同でラウンドに参加。
  • Fictiv」はハードウェア製品の製造工場ネットワークを提供。2013年にサンフランシスコで創業し、3,300万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。G2VPがリード投資を務めた。
  • InCountry」は国際データコンプライアンスに対応するためのデータ保管プラットフォームを提供。2019年にサンフランシスコで創業し、7月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Arbor Ventures、Global Founders Capital、Mubadala、Caffeinated Capital、Felicis Ventures、CRV、Team Builder Venturesらがラウンドに参加。
  • Submittable」は各種書類申請およびレビュープラットフォームを提供。2010年にモンタナ州で創業し、7月に1,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Next Coast Venturesがリードを務め、True Ventures、Next Frontier Capital、Flywheel Venturesらがラウンドに参加。
  • Tulip」はメーカー向けにノーコード・開発/製造プラットフォームを提供。2014年にマサチューセッツ州で創業し、9月に2,110万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。DMG MORIがリード投資を務めた。
  • ZenBusiness」は創業関連資料の申請プラットフォームを提供。2015年にオースティンで創業し、9月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Greycroft、Lerer Hippeau、Revolution Rise of the Rest Fund、Rosecliff Venture Partners、Interlock Partners、Recruit Strategic Partnersらがラウンドに参加。

“Software is eating the world”のコンセプトが広がってから10年以上経ちました。SaaS系サービスは数多登場してきましたが、未だサービス展開先が残っています。たとえば「Clumio」のような特化型AWS業態をアジア圏で再現すれば大きく成長できるかもしれません。また、「Fictiv」のように工場への発注ラインをネットワーク化してしまう、業界特化型Airbnbのアイデアも日本市場で十分に躍進の機会が得られるはずと考えます。

時代によってSaaS進出範囲が増える点も見逃せません。「InCountry」は現在話題になっているデータ保護規則に対応するための“Data-Residency as a Service”を提供します。クラウド上にアップされているデータを規制に則った形で、物理的に世界中の任意の安全な場所に保存できるサービス。GAFAを筆頭とする大手IT企業のプライバシーデータ問題を解決できるSaaSとなっています。

データ管理の問題は10年前にはそこまで大きくはありませんでしたが、時代が進むにつれて課題意識が膨れ上がってきました。時代の境目を見定めてサービス化することで急成長が狙えることを、InCountryの事例から伺い知れます。同社の事業視点は市場の種類に関わらず、あらゆる起業家・事業家に対して良い示唆をもたらせてくれると感じます。

API化が続く世界

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Image Credit: Bud
  • Kong」はオープンソース・APIゲートウェイを開発。2010年にサンフランシスコで創業し、3月に4,300万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Index Venturesがリードを務め、Andreessen Horowitz、Charles Rivers Ventures、GGV Capital、World Innovation Labらがラウンドに参加。
  • Middesk」は企業間取引のバックグラウンドチェックに関するAPIを提供。2018年にサンフランシスコで創業し、9月に400万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Accelがリードを務め、Sequoia CapitalとY Combinatorがラウンドに参加。
  • RapidAPI」はAPIマーケットプレイスを運営。2014年にサンフランシスコで創業し、7月に2,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。M12がリードを務め、DNS Capitalや初期投資家Andreessen Horowitz、Green Bay Capitalがラウンドに参加。
  • Scale AI」はAPI経由で送られてきたコンテンツに対して、自動ソートおよびラベリング付けを行うサービスを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、8月に1億ドルをシリーズCラウンドで調達。Index Venturesをリードを務め、AccelとFounders Fundがラウンドに参加。
  • SendBird」はチャット・メッセージングAPIサービスを提供。2012年にサンマテオで創業し、5月に1.02億ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Tiger Global Managementがリードを務め、ICONIQ Capitalらがラウンドに参加。
  • StrongSalt」はAPIを用いた暗号プラットフォームを提供。2015年にサニーベールで創業し、9月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Valley Capital Partnersがラウンドに参加。
  • Bud」はオープンバンキングAPIを提供。2015年にロンドンで創業し、2月に2,000万ユーロの資金調達をシリーズAラウンドで実施。HSBC、Goldman Sachs、ANZ、InvestecのINVC Fund、InnoCellsらがラウンドに参加。
  • Even Financial」は金融機関向けに各種パートナーサービスと連携できるAPIを提供。2015年にニューヨークで創業し、9月に2,500万ドルの資金調達を実施。Citi VenturesとMassMutual Venturesがラウンドに参加。
  • Galileo」は決済カード発行APIを提供。2000年にソルトレークシティで創業し、10月に7,700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Accelがリードを務め、Qualtricsの共同創業者兼CEOのRyan Smithらがラウンドに参加。
  • Rapyd」はオンライン決済APIプラットフォームを提供。2016年にロンドンで創業し、10月に1億ドル、12月に2,000万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Oak HC / FTがリードを務め、Tiger Global Management、Coatue、General Catalyst、Target Global、Stripe、EntréeCapitalがラウンドに参加。
  • Synapse」は各種銀行サービスAPIを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、6月に3,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリードを務め、Trinity VenturesやCore Innovation Capitalらがラウンドに参加。
  • Tink」はオープンバンキングAPIを提供。2012年にストックホルムで創業し、2月に5,600万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Insight Venture Partnersがリードを務め、Sunstoneらがラウンドに参加。
  • Yapily」は企業向けに各金融機関サービスを利用できるAPIを提供。2017年にロンドンで創業し、540万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。HV Holtzbrinck VenturesとLocalGlobeが共同でラウンドに参加。

APIのユースケースとして覚えておきたい動きは2つ。1つはフィンテックAPI領域。スタートアップがオンライン銀行を0から作り上げる際、ユーザー体験にのみに注力し、必要な金融サービスや口座情報はAPIを通じて取得する流れが出来上がっているのが印象的です。

イギリスでは銀行にAPIを開示させるオープンバンキングが義務化され、「Bud」や「Tink」に代表されるサービスが台頭。単一サービスのみをAPIを介して引き出すのではなく、多数の金融サービスを引っ張り出し、自社サービスを作り出すAPIならではのコンセプトは、他市場でも応用できるでしょう。日本では法律の問題からオープンバンキングは実現することは難しいでしょうが、概念はさまざまな市場で使えるため注目です。

次はバックグラウンドチェックAPI。欧米ではUberやAirbnbの登場によりギグワーカーの身辺調査が必ず必要となってきたため、バックグラウンドチェック市場が大きく成長してきました。「Checkr」はこの分野で躍進しています。

日本でも「back check」が登場。そして近年ではバックグラウンドチェックがB2Bへ進出しつつあります。たとえば「Middesk」は法人単位のバックグラウンドチェックサービスを提供。従来のチェック対象は個人でしたが、同社は信頼に足り得る取引先となるかを分析します。B2B向けバックグラウンドチェックは日本市場でも大きく需要を得るはずでしょうし、信頼情報を流通させて社会インフラを作り上げるビジョンは共感性が高いと感じます。

音声ユースケースの模索

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Image Credit: Gong.io
  • Airbud」は自社アプリやWebサービスに音声インターフェースを追加できるサービスを提供。2018年にニューヨークで創業し、7月に4,00万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Hanaco Venturesがリード投資を実施。
  • Descript」はPodcastコンテンツ作成のための音声データ書き起こしおよび編集ツールを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、9月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen HorowitzとRedpointがリード投資を務めた。
  • Gong.io」は営業部門向けに音声会話データ特化CRMを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、2月に4,000万ドルの資金調達をシリーズBで、12月に6,500万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Sequoia Capitalがリードを務め、Battery Ventures、Norwest Venture Partners、Shlomo Kramer、Wing Venture Capital、NextWorld Capital、Cisco Investmentsがラウンドに参加。
  • Hugging Face」は自然言語処理アプリ用のオープンソースライブラリを提供。2016年にニューヨークで創業し、12月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Lux Capitalがリードを務め、A.Capital、Betaworks、Richard Socher、Greg Brockman、Kevin Durant氏がラウンドに参加。
  • Replica Studios」は自分の声を音声AI向けに実装できるサービスを提供。2018年にオーストラリアで創業し、12月に250万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。The Venture Reality Fundがリード投資を務め、Carthona Capital、Techstars、Mawson Venturesがラウンドに参加。
  • Robin Healthcare」は医療機関向け音声AIを提供。2017年にバークレーで創業し、9月に1,150万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Norwest Venture Partnersがリード投資を務めた。
  • Soundcheck」はスマートスピーカー向けにWebコンテンツを最適化できるパブリッシングツールを提供。2018年にミルバレーで創業し、11月に150万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。True Ventures、Resolute Ventures、Automattic、Biz Stone、Caterina Fakeらがラウンドに参加。
  • Speechly」は音声UIアプリを実装するためのAPIサービスを提供。2015年にフィンランドで創業し、12月に200万ユーロの資金調達をシードラウンドで実施。Cherry Venturesがリードを務め、 Seedcampらがラウンドに参加。

音声市場は大きく6つの領域に分かれます:「営業向け音声解析サービス」「Webコンテンツとスマートスピーカーの連携」「分野特化型音声AI」「Podcast」「音声チャット」「自然言語処理ライブラリ」。この中で最低限知っておくべきなのが、1つ目に挙げた営業サービス領域の1社「Gong.io」です。同社は次のユニコーン級スタートアップになることが確実視されている企業と言われています。

長年、SalesforceがCRMサービスの王者として君臨していましたが、時代は音声へ。昔から営業マンはテレアポなどを行い契約を取ってきますが、なぜアポが失敗したのかなどのデータ解析が不十分でした。契約成立の有無やステージをSalesforceに入力して終わり。これでは営業チームの力が底上げされません。

そこでGong.ioは音声時代のSalesforceを開発。音声データから営業トークの解析を行い、単なるCRMではなく、改善プラットフォームして機能するソフトウェアを開発しました。時代が経つにつれて音声が重視されるようになります。こうした時代の変遷とともに従来の大手サービス体験を一新させたのがGong.ioです。アジア版Gong.ioの登場も期待されるでしょう。

著名投資家であるMark Cuba氏や、マーケータのGary Vaynerchuk氏も注目する音声市場。これから徐々に頭角を見せてくるAR/VR市場との相性も非常に良く、ゆくゆくは私たちが日常的に行なっているタイピング習慣をリプレイスするかもしれません。

現在はユースケースが非常に限定的ではありますが、どこかでティッピングポイントを迎え、爆発的に普及されることが予想される音声サービス。その兆しが今年リリースされたAirPods Pro。本記事執筆時点で1か月待ちの需要は、単なるイヤホンとしてではなく、音声時代へ本格的に足を踏み入れるとっかかりと捉えてもよいかもしれません。2C向けツールの普及に押されて、様々な市場で音声スタートアップが登場するはずです。

スーパーフード革命

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Image Credit: Meatable
  • Fermented Sciences」はオーガニック昆布茶ブランドを展開。2016年にカリフォルニア州で創業し、11月に2,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Ecosystem Integrity FundとPowerPlant Venturesが共同でリードを務め、Blueberry VenturesやMonogram Capital Partnersらがラウンドに参加。
  • Future Meat Technologies」は遺伝子組み換えなしの動物細胞を生産する企業。2018年にイスラエルで創業し、10月に1,400万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。S2G VenturesとEmerald Technology Venturesが共同でリード投資を務めた。
  • Impossible Foods」は植物由来の人工肉を生産する企業。2011年にレッドウッドシティで創業し、5月に3億ドルの資金調達をシリーズEラウンドで実施。TemasekとHorizons Venturesが共同でリード投資を務めた。
  • Meatable」はラボ開発された人工豚肉を生産する企業。2018年にオランダで創業し、12月に1,000万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Union SquareのAlbert Wenger氏やTransferWiseの共同創業者であるTaavet Hinrikusらがラウンドに参加。
  • New Culture」は非動物由来の人工チーズを生産する企業。2018年にサンフランシスコで創業し、9月に350万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Evolv Venturesがリード投資を務めた。
  • New Wave Foods」は植物由来のエビを生産する企業。2015年にサンフランシスコで創業。Tyson Venturesから非公開調達を実施。
  • NotCo」はマヨネーズを始めとする植物由来の代替食品を生産する企業。2015年にチリで創業し、3月に3,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。The Craftoryがリードを務め、Kaszek VenturesとIndieBioがラウンドに参加。
  • Redefine Meat」は工業用3Dプリンターを使用した人工肉を生産する企業。2018年にイスラエルで創業し、9月に600万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。CPT Capitalがリードを務め、Hanaco VenturesやThe PHW Groupらがラウンドに参加。
  • Wild Earth」は非動物由来のペットフードを生産する企業。2017年にバークレーで創業し、5月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAを実施。VegInvestがリードを務め、Radical Investments、Felicis Ventures、Founders Fund、Mars Petcareがラウンドに参加。

2019年は人工肉スタートアップが数多く誕生した年でした。上記一覧以外にも大型調達した企業が多数いることから、今後3〜5年の期間でファーストフード店が登場するほど供給量が増えて、人工肉しか取り扱わないレストランチェーンも登場することも想像できます。

スーパーフード領域で見逃せないのが日本食品の台頭です。たとえば英国では元バンドマンが立ち上げ、鹿児島や静岡から取り付けた抹茶をエナジードリンクとして販売する「MatchaBar」がミレニアル世代から人気を博しています。また、「Fermented Sciences」のように昆布茶をブランド商品として展開する事例も登場。

いずれも仕掛け人が日本人でないことが悔やまれます。海外では一切認知のない日本食を、若者向けにブランディングすることで一定層から人気を集められる市場性を、彼らが教えてくれています。

日本のスタートアップは地の利もありますし、いつでもこの分野で攻勢をかけられるはずです。フード領域で起業を考えられている方は、ジャパニーズフード + 越境領域は狙い所かもしれません。ちなみにスーパーフードではありませんが、日本の和牛農家から直接肉を仕入れられるサブスクサービス「Crowd Cow」は1,500万ドルもの調達をして順調に成長しています。

クラウドキッチンの台頭

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Image Credit: Virtual Kitchen Co
  • CloudKitchens」は元Uber創業者Travis Kalanickが立ち上げたクラウドキッチン事業。2016年にロサンゼルスで創業し、11月に4億ドルの資金調達を実施。Saudi Arabia’s Public Investment Fundがラウンドに参加。
  • Keatz」はドイツ拠点のクラウドキッチンを運営。2015年にベルリンで創業し、3月に1,200万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Project A Ventures、Atlantic Labs、UStart、K Fund、JME Venturesがラウンドに参加。
  • Muy」はラテンアメリカで展開するチポトレ特化のクラウドキッチンを運営。2018年にコロンビアで創業し、10月に1,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。ALLVPがリード投資を務めた。
  • Nosh」は香港拠点のクラウドキッチンを運営。2015年に香港で創業し、7月に170万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。
  • Panda Selected」は中国拠点のクラウドキッチンを運営。2016年に北京で創業し、2月に5,000万ユーロの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Tiger Globalがリードを務め、DCMとGlenridge Capitalがラウンドに参加。
  • Rebel Foods」はインド拠点のクラウドキッチンを運営。2010年にインドで創業し、7月に1.25億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Go Venturesがラウンドに参加。
  • Virtual Kitchen Co」はレストランブランド向けに最適なキッチンおよび配達拠点を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、6月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen HorowitzとBase10 Partnersが共同でリード投資を務めた。
  • Yummy Corp」はインドネシア拠点のクラウドキッチンを運営。10月に775万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Intudo Venturesがリード投資を務めた。
  • 2ndKitchen」は飲食施設と近隣レストラン事業者を繋げるマッチングプラットフォームを提供。2017年にシカゴで創業し、11月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Hyde Park Venturesがリードを務め、MATH Venture Partners、Great North Labs、Bragiel Brothers、M25がラウンドに参加。

UberEatsに代表されるフードデリバーサービスの登場以来、実店舗を持たず、アプリ上だけで店舗展開をする“バーチャルレストラン”(ゴーストレストランとも呼ばれる)の業態に注目が集まっています。

バーチャルレストラン事業を実現するには、客席の無い、調理場と配達拠点を兼ねる“クラウドキッチン”(ゴーストキッチンとも呼ばれる)が必要となります。こうしたキッチン拠点をネットワーク化して提供するサービスが世界各地で台頭してきました。

主にキッチンを外部飲食事業者に提供する、ネットワークサービスが多数登場してきていますが、なかには「Muy」のように自社運営をするスタートアップも登場しています。同社はUberEatsなどの外部プラットフォームにデータを取られない自社事業の強みを活かし、ビックデータを駆使してAIを使った事前注文予測サービスを実装し、需要と供給のマッチングを狙います。

店舗運営コストをクラウドキッチン化を通じて削り、データを見ながら料理を作り過ぎないようにして収益分岐点を狙う事業モデルです。ちなみに過去、「SpoonRocket」がデータを駆使した弁当配達事業を興して注目を集めながら倒産をしており、難易度は比較的高いと思われます。

世界的に見てもクラウドキッチンサービスは競合が多いため、次の事業モデルが模索されています。その答えの1つが、Andreessen Horowitzが投資をした「Virtual Kitchen Co」です。同社はキッチンを提供するだけでなく、地域でどの料理が人気を集めそうか、どの場所にキッチンを置くべきか、人員はどの程度配置すれば良いのかなど、AI事前予測を使った総合ソリューションを提供。

先述したMuyが持つAIノウハウを外部へオープンにしているような事業モデルです。おそらく今後、Virtual Kitchen CoのようなAIを絡めたネットワークビジネスが注目を集めそうです。

面白いスタートアップとして「2ndKitchen」も挙げられます。自社店舗では作りきれない料理を近隣のクラウドキッチン業者に作ってもらい、店舗にまで届けてもらうサービスです。まさに“メニューの拡張”を実現しているスタートアップと言えるでしょう。従来、ユーザーの自宅に届けることを前提にバーチャルレストラン事業は考えられてきましたが、店舗に届けるコンセプトを2nd Kitchenは提案しています。他店舗から届けられた食事を好んで食べられるのかどうか、UX上の懸念点はありますが、B2Bマッチングプラットフォームとしての視点は興味深いでしょう。

1編はここまでです。2編ではフィンテック領域を中心に事例を見ていきます。

期待の次世代協働プレゼンテーション基盤「Pitch」がプライベートベータ版をローンチ、シリーズBラウンドで3,000万米ドルの調達も明らかに

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現在は Microsoft の傘下にある Wunderlist の設立者らによって、昨年秘密裏に設立された共同プレゼンテーションソフトウェアのスタートアップ Pitch が、新たな資金調達で3,000万米ドルを獲得し自社製品のプライベートベータ版を正式にローンチした。 同シリーズ B ラウンドは Thrive Capital がリードし、Facebook が所有する Instagram の設立者で…

6Wunderkinder および Pitch の共同創業者兼 CEO Christian Reber 氏

現在は Microsoft の傘下にある Wunderlist の設立者らによって、昨年秘密裏に設立された共同プレゼンテーションソフトウェアのスタートアップ Pitch が、新たな資金調達で3,000万米ドルを獲得し自社製品のプライベートベータ版を正式にローンチした。

同シリーズ B ラウンドは Thrive Capital がリードし、Facebook が所有する Instagram の設立者であり昨年同社を退社している Kevin Systrom 氏と Mike Krieger 氏や、Superhuman の共同設立者である Rahul Vohra 氏など、著名なエンジェル投資家も参加している。

簡単にまとめると、Pitch は2018年1月にベルリンで設立されたが、同社が正式にローンチされたのは、Index Ventures、BlueYard、Slack、そして Zoom の CEO を務める Eric Yuan 氏といった著名な支援者から1,900万米ドルを調達したことが発表された9月である。Pitch は活動の詳細を明らかにしないまま製品に磨きをかけてきたが、後に最大2億米ドルで Microsoft に売却された非常に高い人気を誇る生産性アプリ Wunderlist の共同設立者である、Christian Reber 氏、Jan Martin 氏、Charlette Prevot 氏などが設立者に名を連ねていることから、Pitch は典型的な駆け出しのスタートアップ以上に注目を集めてきた。

こういったすべてのことがあるからこそ、なぜ製品をローンチする前の企業が5,000万米ドル以上もの資金を調達できたかも説明がつく。

Pitch は、同社が言うところの「Slack 世代」を対象としており、プレゼンテーションソフトウェア市場に対し、Slack がチームコミュニケーションおよびチームコラボレーション向けに行ったのと同じことを行おうとしている。実際のところ Slack は、昨年 Pitch に投資(Slack Fund 経由)を行っただけでなく、Pitch の初期ベータ顧客でもある。

Pitch の見た目

Pitch は「オープン」で拡張可能だという印象を与え、Slack(当然ながら)、Twitter、YouTube、Excel など多種多様なサードパーティーアプリやデータストリームとの統合を果たしたいと考えている。Pitch は中核的なセールスポイントとして、「美しく品質の高い」プレゼンテーションをテンプレートを使って簡単に作成できることを売り込んでいる。

Reber 氏は VentureBeat に次のように語っている。

当社の統合プラットフォームには長期的なロードマップと大きなビジョンがあります。私たちの最終的なゴールは、できればプレゼン作成チームがすでに使用しているすべてのツールと統合し、あらゆる場所からデータを取り込むことです。主要な統合をいくつかローンチし、今後徐々に追加していきます。私たちは現代のプレゼン作成チームがもっとも使用するツールとの連携に重点を置いています。ベータ期間中に、ユーザにとってどのツールが大事なのかを詳しく知ることができればと考えています。

Pitch は、ブラウザ、デスクトップ、またネイティブモバイルアプリ経由で、すべてのオンラインおよびオフラインプラットフォームでシームレスに作業できることを約束している。これには、効果的に変更内容を管理するバージョンコントロールにも対応した、クラウド経由のリアルタイムシンク(同期)も含まれる。

すでに出回っているクラウドベースのプレゼンテーションソフトウェアはもちろん多数あるが、Pitch は自社の標準機能を洗練された機能豊富なエクスペリエンスで差別化したいと考えている。その一環で、Reber 氏が言うところの「まるでデザイナーの助けを借りているかのよう」なスマートなフォーマットおよびレイアウトツールも提供される。また特定のユースケース用にカスタマイズされたプレゼンテーションライブラリも内蔵されている。

実際私たちは、Pitch が提供できる最大の利点は、全体的なエクスペリエンスが既存のソフトウェアよりもはるかに優れているという点だと確信しています。(Reber 氏)

Image credit: Pitch

価格はというと、これについては、Pitch は今のところまだ明らかにしていない。プライベートベータ版の期間中 Pitch は完全に無料で全ユーザに提供されるが、2020年のパブリックローンチではプレミアム層を導入予定だ。

当社のゴールは、誰でも Pitch を利用できる一方で、本気で当社プラットフォームに投資しているチームはプレミアム機能からさらに得られるものがあるという、Slack や Zoom とよく似た形です。

ベータ期間中に、どういった機能や動作をユーザが評価するのかを見極め、無料機能とプレミアム機能の適切なバランスを探したいと考えています。(Reber 氏)

ちなみに Pitch は、昨年の始動直後に誰もがうらやむワンワードの.com ドメインを確保している。2018年7月に、カンザス州を拠点とするウェブ新聞の The Pitch が、20年近く保持していた Pitch.com というドメインを売却したと、詳細は明らかにしないまま発表している。やがて、Pitch(プレゼンソフトのスタートアップの方)のスタッフがカンザスのウェブ新聞にオファーを持ちかけたことが明らかになった。

文字通りただメールを送って、それで公正な取引をまとめました。

具体的な数字は明らかにしないまま Reber 氏は語った。

これによって数多くのオンラインニュース局が直面する危機的な財政難が浮き彫りになった一方で、現在ではトップレベルのドメイン名が無数にあるにも関わらず、いまだにドットコムアドレスの価値が高いことがわかる。

規模の大きな投資ですが、すぐに元が取れると思います。(Reber 氏)

PowerPoint の課題

PowerPoint はいささか、埃をかぶったレガシーテクノロジーの代名詞になりつつあるが、この領域に多数のスタートアップがこの領域に革命を起こそう入り込んできているにも関わらず、この Microsoft のソフトウェアはプレゼンテーションツールとして世界トップの座を守り続けており、レポートによってはその市場シェアは最大95%にもなるとしている。

もっとも重要なアイデアを伝える手段として何億もの人々がプレゼンテーションに依存していますが、思い通りに機能しないソフトウェアからいまだに逃れられずにいます。

本当に快適なユーザエクスペリエンスを築くことは、私たちが常に最優先してきたことです。(Reber 氏)

Image credit: Pitch

結局のところこれこそが、これほどまでに高名な投資家集団や早期ユーザを Pitch が確保できた理由だ。生産性ソフトの構築と拡張という分野で折り紙付きの実績を持つ同社の設立者らは、10億ドル規模ともいえる大きな課題に挑もうとしている。さらに、Pitch のもっとも最近の資金調達ラウンドのリードインベスターであった Thrive Capital は、後に Microsoft へのイグジットを果たす6Wunderkinder にも投資しているが、このことからも人が製品とまったく同じくらい(あるいはより一層)大事だということがわかる。

当社が投資を行うのは、市場ポテンシャルが高く成長の速い企業です。Pitch は、変化の時が訪れた市場で優れた製品を生み出すことのできる有利な立場にあります。

Pitch に対する需要があることは、何千社もの企業が仮リリース版に興味を示していることから、すでにはっきりとしています。当社は、製品ビジョンだけでなく、このチームだからこそ Pitch を信じています。私たちは Wunderlist の投資者としても、設立者と強い関係を結びました。(Thrive Capital の Joshua Kusher 氏)

招待制のベータ版へのアクセスを過去1年間に申請した企業のうち、選ばれた企業には今後数カ月以内に Pitch から連絡がある。

Pitch をチームに使ってもらうのが非常に楽しみです。今後も彼らのフィードバックから学び、彼らがあればいいと思うようなプレゼンテーションソフトウェアを構築していきます。(Reber 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Google が開発したAI「PlaNet」、ジオタグ無しの写真の撮影場所を特定

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<ピックアップ>Google Unveils Neural Network with “Superhuman” Ability to Determine the Location of Almost Any Image Googleが人工知能技術を用いた、写真の撮影場所を特定するシステム「PlaNet」を開発したことを MIT Technology Reviewが伝えている。 このプロジェクトを行…

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<ピックアップ>Google Unveils Neural Network with “Superhuman” Ability to Determine the Location of Almost Any Image

Googleが人工知能技術を用いた、写真の撮影場所を特定するシステム「PlaNet」を開発したことを MIT Technology Reviewが伝えている

このプロジェクトを行ったのは、Google に在籍するコンピュータビジョンの専門家Tobias Weyand氏と数名のチーム。ディープラーニングマシンに膨大な画像を読み込ませてトレーニングした結果、ジオタグなどの地理データを含まないピクセルだけの写真の撮影場所を高い確率で特定できるようになった。

チームはまず、写真撮影が頻繁に行われる世界のエリアを2万6000個のグリッド(格子)で分割。撮影写真数の多い大都市は、より細かく分割した。次に地理情報を含む写真のデータベースをウェブから作成して、各写真を撮影場所のグリッドにひも付けていった。使用したのは、Exifデータを含んだ1億2600万枚の画像という膨大なデータだ。

そして、次にチームはデータセットのない画像だけの状態で、9100万枚の画像をニューラルネットワークに読み込ませてトレーニングを実施。そのあとに残りの3400万枚をデータセットを含んだ状態で読み込ませて、地理情報の正確性を確認した。

これまでのトレーニングの結果によれば、PlaNet は撮影した通りを正確に当てることのできる確率3.6パーセント、都市を当てられる確率は10.1パーセン、国レベルは28.4パーセント、大陸は48パーセントとのこと。

MIT Technology Reviewは、この結果について「かなり良い」とコメントしている。www.geoguessr.com で写真から撮影した場所を推測するゲームをやってみたことがあれば、いかに写真を見てその場所を特定することがかなり難しいことか想像できるはずだ。

実験を行ったWeyand氏は「PlaNet は人間の力を凌いでいると思います。なぜなら、人間が訪れることができる数以上の場を目にしており、旅慣れた人でも気付きにくいような小さな景色の特徴を学んでいるからです」とコメントしている。

via MIT Technology Review