THE BRIDGE

Chris O'Brien

Chris O'Brien

フランスのトゥルースを拠点に活動するヨーロッパ特派員。政府の支援を受け、3年間にわたり人がカスレ、バター、ワインをどれほど消費しているかを研究している。以前は15年間にわたり、San Jose Mercury News や Los Angeles Times でシリコンバレーを取材。それを証明するかのように、今もシリコンバレー時代の能力を発揮している。南仏の生活コストの安さをシリコンバレーの人が知ったら、どうなることかと毎日思っている。

執筆記事

ロンドン拠点TasterのAIとオートメーションを見れば納得、フードデリバリ時代を制するのはバーチャルキッチンかもしれない理由

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Deliveroo や Uber Eats といった会社が派遣するライダーやドライバーが街中を勢いよく走り回り、あらゆる種類のテイクアウト料理を運ぶ中、フードデリバリサービスは目に見えて急増している。しかし、新しいプラットフォームが登場するとよく起こることだが、二次的でそれほど目立たない革命がレストラン業界に押し寄せている。バーチャルキッチンが出現した結果だ。 ロンドンを拠点とする Taster …

Taster の共同創業者ら
Image credit: Taster

Deliveroo や Uber Eats といった会社が派遣するライダーやドライバーが街中を勢いよく走り回り、あらゆる種類のテイクアウト料理を運ぶ中、フードデリバリサービスは目に見えて急増している。しかし、新しいプラットフォームが登場するとよく起こることだが、二次的でそれほど目立たない革命がレストラン業界に押し寄せている。バーチャルキッチンが出現した結果だ。

ロンドンを拠点とする Taster は、フードデリバリサービス、人工知能(AI)、そしてデータの交わるところが新たな機会を生み出している事例の1つだ。こういった機会はさらなるディスラプションを招き、レストラン業界を脅かしている。フードデリバリーサービスは当初、地元レストランのブームになっていたかに見えたが、最終的にフード業界の戦いに勝つのは、最適化と自動化が可能なバーチャルキッチンかもしれない。

Taster は2年前に Anton Soulier 氏によって設立された。同氏は Deliveroo の初期の従業員で、フード業界の変容をさらに一歩進めたいと考えた。

同氏は言う。

こういったプラットフォーム上に食べ物を扱う会社を築く、大きなチャンスだと思いました。それらはロジスティクス面で非常に優れています。そして私の仕事は食べ物を提供することです。

人々が食べ物を買ったり食べたりする形が抜本的に変化する中、それを後押ししているのがデリバリサービスだ。人々が家で料理する機会は徐々に減り、調理済みの食品がオンデマンドで届けられる方が好まれるようになっている。2018年の UBS のレポート「Is the Kitchen Dead?(台所は廃れてしまったのか?)」は、350億米ドルのフードデリバリ経済は、2030年までに3,650億米ドルに成長するだろうと予測している。

同レポートによると、「2030年までには現在家で調理されている食べ物のほとんどがオンラインで注文され、レストランやセントラルキッチンから届けられるようになるというシナリオもありえる。食品小売業、食品メーカー、レストラン業界、さらには不動産市場、家電、ロボット工学への影響は重大なものになる可能性がある」という。

このシナリオの効果の1つは、フードデリバリサービスの継続的な成長だ。しかしこの変化をもたらすのは主に、既存のデリバリサービスの能力を活用しようというサードパーティー企業だ。

その一部が CloudKitchens のような新参者だ。Uber の元 CEO、Travis Kalanick 氏が築いた同社は、デリバリ専門ブランドをローンチしたいシェフにスペースを提供している。カリフォルニアを拠点とする Kitchen United は昨年、自社倉庫の拡大にあてるため1,000万米ドルを調達した。同社はデリバリ専門スタートアップに調理スペースを提供している。また今年3月にベルリンを拠点とする Keatz が、ベルリン、アムステルダム、マドリード、バルセロナ、ミュンヘンといった場所のバーチャルキッチンネットワーク向けに、新たな資金調達で1,350万米ドルを獲得した

一方、デリバリプラットフォーム自体も、調理分野に参加するようになった。2年前に Deliveroo が、データやキッチンスペースをデリバリ専門レストランに提供する Deliveroo Editions をローンチした。Uber もこの分野に参入し、バーチャルブランドにキッチンスペースを貸し出すサービスを試みていると報じられている。また同社は、既存のリテールレストランと協力し、Uber Eats からのみ利用可能なバーチャルブランドにキッチンスペースを提供するという。

これはつまり、Taster が激しい競争環境に直面しているということだ。様々な取り組みがあるがおそらく統合が必要になるだろう。しかし Taster が今日どう機能しているかを見れば、バーチャルキッチンというトレンドが加速している理由を垣間見ることができる。

キッチンで作業する Taster CEO の Anton Soulier 氏
Image credit: Taster

Taster は115人の従業員(内シェフ100人)と11か所のキッチンを抱える。先月末のベンチャーキャピタルで、Battery Ventures、Heartcore Capital、LocalGlobe、そして Founders Future の Marc Ménasé 氏から800万米ドルを調達した。

同スタートアップは、ロンドン、パリ、マドリードで、デリバリ専用に調理を行うキッチンをいくつも運営している。調理された食べ物は、こういったサービスの様々なアプリ専用のブランド、Out Fry(韓国風フライドチキン)、O Ke Kai(ハワイ料理)、Mission Saigon(ベトナム料理)などで販売される。消費者から見ると、Taster というブランドはバーチャルキッチンのマーケティングに一切登場しない。

このアプローチはただちに、既存のレストランに対する利点を複数もたらしている。食事をする部屋や食品をピックアップするカウンターが不要なため、不動産面で節約できる。全従業員が調理だけに専念し、接客にかかる費用を省くことができる。また新たなチャンスが到来した際には、追加的なバーチャルブランドをローンチするためにキッチンを活用できる。

Soulier 氏は次のように述べる。

人々が Deliveroo を利用する様を、毎日目にしていました。とにかく目を見張るような成長でした。ですが、訪れる客のために料理を作る従来のレストランは、デリバリモデルにはあまり適していませんでした。

Taster のようなサービスはデリバリのために考え出されたため、容器は食べ物を新鮮かつ熱いまま届けるためにデザインされるし、メニューはすぐには消費されないことを念頭に選ばれると Soulier 氏は言う。

このアプローチは、Taster がデリバリプラットフォームから受け取るデータと組み合わさればさらに強力さを増し、人気に応じてメニュー品目を迅速に調整することができると同氏は語る。

また Taster のバックエンドは、多数の自社サプライヤーと直接つながっている。そのためメニュー品目の変更に伴い、システムがサプライヤーへの注文内容を更新できる。

この大きな課題には早期に取り組みたいと考えていました。サプライヤーに直接発注できるため、プロセスが大幅に自動化され無駄が減ります。

同社は次にそのデータを利用して、休日や天候といった要素によって需要と供給がどのように変化するかを予測するため、独自のアルゴリズムの開発を始めた。システムはこういった変動を追跡し、自動的に発注を調整する。

ビジネスのこの部分はまだ新しい。しかしキッチン数が拡大しデータ量が増加するに従い、同社は人工知能をさらに活用し、自動化を拡張したり、より一層予測的でデータドリブンの工程を生み出したりすることができると Soulier 氏は確信している。

自動化の規模と水準がこれほどになると、今後数年のうちに、単独営業のスタンドアロン型レストランは継続がさらに難しくなるだろう。消費者は食事をする際、プラットフォームが収集するデータに基づくニッチな選択肢をもっと目にするようになり、このような食事形態はますます受け入れられていくだろう。またこのようなバーチャルキッチンの動向により、新たな飲食店のローンチに伴うリスクが大幅に減少し、事業はますます合理化されていくと思われる。

この変化は、寿司をバイク便で届けてもらうという範囲をはるかに超えて波及していくだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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ドイツで進化型バスサービス提供のFlixBus、評価額20億米ドル超で5億3,100万米ドルを調達——AIモビリティ基盤に相乗りオプションを追加

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ドイツの FlixMobility がベンチャーキャピタルラウンドで5億3,100万米ドルを調達し、これによって同社の評価額が20億米ドルを超えたと報じられた。 同社は18日のプレスリリースで大規模な資金調達ラウンドを行ったと発表したが、額は明らかにしなかった。しかしながら情報筋がロイターに述べたところでは、その額は5億3,100万米ドルであり、これは今年のドイツ企業の中では群を抜いて最大のもので…

左から:FlixBus 共同創業者 Daniel Krauss 氏、André Schwämmlein 氏、CEO Jochen Engert 氏
Image credit: FlixMobility

ドイツの FlixMobility がベンチャーキャピタルラウンドで5億3,100万米ドルを調達し、これによって同社の評価額が20億米ドルを超えたと報じられた。

同社は18日のプレスリリースで大規模な資金調達ラウンドを行ったと発表したが、額は明らかにしなかった。しかしながら情報筋がロイターに述べたところでは、その額は5億3,100万米ドルであり、これは今年のドイツ企業の中では群を抜いて最大のものである。

同社はヨーロッパでは至るところで目にする FlixBus ネットワークでよく知られており、そのライムグリーンの車両はデータドリブンなプラットフォームと人工知能を使用してスケジューリングされた低価格な路線を提供している。最近では、同社は列車にも進出し、またバスサービスをアメリカにも拡大させている。FlixBus は今回の資金を使い FlixCars.mm というカープール(自動車の相乗り)サービスを導入し、ビジネスの領域を拡大させる計画。

声明の中で FlixMobility の CEO 兼設立者 Jochen Engert 氏はこう述べている。

2013年にドイツのスタートアップとして始まった弊社は、ヨーロッパとアメリカで数百万人の移動方法を変え続けている力強いプラットフォームになりました。

FlixMobility は交通業界のスタートアップがデータや人工知能、自動化を使い、古臭い旧式の交通サービスにディスラプションを起こしている好例である。路面電車やバスといったサービスの自由化のルールを活用し、FlixMobility は現代的な競争力を発揮している。

Image credit: FlixMobility

しかし FlixMobility だけではない。同社は運営中の国営事業者といったライバルや、国営の低価格バスサービスを買収したフランスのカープール企業 BlaBlaCar のような、スタートアップ界隈の競合と対峙している。

両社ともに拡大中のユーザベースからもたらされるデータや AI にますます頼るようになってきており、それらを路線計画、運転手と乗客のマッチング、様々な交通手段を使った旅行計画の最適化といったことに使用している。

列車やバスの路線を補完するために、FlixCar は都市間およびバスや列車の路線間で乗客を運ぶカープールという選択肢を提供すると FlixMobility は述べている。これは BlaBlaCar が提供しているカープールサービスと似たコンセプトだ。

さらに、FlixMobility は南アメリカとアジアで2020年にローンチする予定。また一方では、加盟国が競争を認めるよう求める EU の新たな規則の実施を受けて、同社は FlixTrain のサービスも拡大させている。

競争が激化している中で、資金調達のメガラウンドは間違いなく役立つだろう。このラウンドはグロースエクイティ企業の TCV と Permira が共同でリードし、長期的投資家の HV Holtzbrinck Ventures ならびに European Investment Bank からの資金も含まれていると同社は述べている。

同社は29ヶ国でサービス展開しており、2018年には4,500万人が FlixBus と FlixTrain を利用したという。従業員は1,300人である。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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スマートシティやモビリティのニーズに応じて、AIやクラウドソーシングで加速するマッピング技術のイノベーション

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Google と Apple が、デジタルマッピング(マップ制作)の分野にいかに大きな影を投げかけているかを考えれば、両社がこの市場の首尾を象徴しているかのように見えても仕方がないだろう。しかし、自動運転車やスマートシティといった広範囲に及ぶサービスに対する需要により、マッピング分野に技術革新の限界を押し広げる新世代の競合企業が生み出されている。 最大手の Google と Apple が利用する…

An image from Mapillary Vistas Dataset, a pixel-accurate annotated street-level imagery dataset for autonomous mobility and transport.
Image Credit: Mapillary

Google と Apple が、デジタルマッピング(マップ制作)の分野にいかに大きな影を投げかけているかを考えれば、両社がこの市場の首尾を象徴しているかのように見えても仕方がないだろう。しかし、自動運転車やスマートシティといった広範囲に及ぶサービスに対する需要により、マッピング分野に技術革新の限界を押し広げる新世代の競合企業が生み出されている。

最大手の Google と Apple が利用する、衛星画像と路上を走り回る車両を組み合わせるという基本的なマッピング手法は、e コマース、ドローン、その他様々な形のモビリティ分野における移り変わりの激しいビジネスニーズに対応するには、時代遅れでスピードに欠けつつある。こういったサービスには多くの場合、リアルタイムでのアップデートやはるかに豊富なデータを必要とするような、非常に特殊なニーズがある。

こういった課題に対応するため、新しいマッピング会社は、様々な技術の中でもとりわけ人工知能やクラウドソーシングを活用し、はるかに複雑なジオデータを提供しようとしている。グローバルなマッピング市場の触媒となっているのが、このような増加しつつある多様性や競争だ。Grand View Research によると、このような背景を持つ同市場の成長率は年間11%を超え、2025年までに87億6,000万米ドル規模にまで拡大すると予想されている。

サンフランシスコに拠点を置く Mapbox でオート部門を率いる Alex Barth 氏は言う。

今はマッピング企業にとって、世界がつながりつつある非常にエキサイティングな時代です。ロケーションに関する新しい考え方がいろいろと生まれています。

2005年にローンチされた Google Maps は当時革命を引き起こした。埋め込み可能な順応性のあるマッピングサービスは、当時の最大手 Mapquest にあっという間に取って代わった。Mapquest は、道順を提供するスタティックマップで早期から他社に先行していた。2012年に Apple が Google との関係を解消して独自にマップ制作に乗り出した。同社のマップは当初大失敗と見なされたが、その後次第に性能が良くなっていった。

両社いずれのモデルにしても、問題は両社を取り巻く世界のスピードが、この両大手企業の進化よりも早いということだ。現に Wall Street Journal は6月第5週、Google Maps の虚偽のビジネスリスティングが推定1,100万件にのぼると報告しており、同マップの信頼性に大きな打撃を与えた。これに対し Google は、昨年、虚偽リスティングを300万件削除し今後も努力を重ねていくとしながら、偽のリスティングはビジネス要覧の出版が始まったほぼ当初から存在していたと主張している。

その一方で、マップのユースケースは爆発的に増え続けている。都市はスマートパーキングに注目するようになり、プランナーはインフラ上の決定を下すのにマッピングデータに頼るようになり、デリバリーサービスはより詳細な最新情報を必要としている。他にも様々なビジネスが、ジオターゲティングをマーケティングや e コマースで活用している。そしてもちろん、自動運転車やコネクテッド車は高性能のマッピング情報を必要としている。

新たな方向性

Mapbox は、こういったニーズに応えるべく出現した、新しいタイプのマッピング会社の好例である。

2010年に設立された同社は、ベンチャーキャピタル投資で約2億2,700万米ドルを調達した。同社は当初、選挙監視といった活動を支援するためのウェブツールやモバイルツールを、政府機関や非営利組織向けに構築するチームだった。Barth 氏によると、より多くのマッピング機能を追加しようとするにつれて、既存のジオスペーシャル(地理空間)データの希薄さを実感したという。独自のマッピングソリューションを構築する道を歩み始め、やがて Mapbox の設立へとつながっていった。

Mapbox’s Aerial View Vision SDK
Image Credit: Mapbox

Mapbox が提供するプラットフォームとソフトウェア開発キットは、人工知能と拡張現実(AR)を利用しマップに情報を重ね合わせる。Mapbox はその後、主として開発者が独自サービスでマップを活用できるようにするツールを、メディア、ロジスティックス、農業、行政、不動産、ドローンなど、幅広い業界を対象とし構築する。使用例として、Snapchat の Snap MapsWeather Channel AppWashington Post の選挙結果Tableau によるデータの視覚化などがある。

こういったサードパーティーのサービスを強化するだけでなく、マップはデータを収集および匿名化し、Mapbox のメインプラットフォームにフィードバックする。同社では4億点以上のエンドポイントを使用し、次々と送られてくるデータを収集してマップを充実させる。

Barth 氏はこのように語る。

私たちは、使用方法次第でマップがどんどんスマートになっていく、自己学習マップに期待を寄せています。最近ではますます、センサーを介したマップの自動構築が増えてきています。そしてそれらを使用するのは人間ではなく機械です。精度だけでなく、データの最新性の面でも大きな飛躍が見られます。

スウェーデンの Mapillary は、多少異なるアプローチでこういった課題に挑む。

Mapillary の CEO 兼共同設立者の Jan Erik Solem 氏は次のように述べた。

マップ利用者が期待するものは、10年前と比べて大きく変わりました。ますます多くの企業が、競争力の高いマップを求めています。

同社はスウェーデンのマッピングスタートアップで、ベンチャーキャピタル投資で約2,450万米ドルを調達している。

Solem 氏は、顔認識技術の開発を手がけた同氏の以前のスタートアップを Apple が買収した後、2013年に Mapillary を設立した。同社は、人々が所有する膨大な数のモバイルデバイスを活用する。こういったデバイスが提供する画像やジオデータは、ますます精度を上げている。ユーザが Mapillary アプリ経由でアップロードする情報で、豊富な情報を含む巨大なデータベースが作成される。

次に Mapillary はコンピュータビジョンを利用してデータを分析し、マップのアップデートや改善に利用するデータを特定する。マップは、BMW、Lyft、トヨタといった企業で活用されている。トヨタはこのマップを利用し、自社の自動運転車のアルゴリズムの微調整を行っている。Mapillary はまた、画像内のテキストを読む Amazon Rekognition の使用を可能にするパートナーシップを結んでいる。コンピュータビジョンの性能を強化し、市内の駐車スペースを特定するサービスにつないでいる。

同社が最近ローンチしたマッピングマーケットプレイスは、特定のマッピングニーズを有し、特定のプロジェクトに対して費用を惜しまないビジネス側と、その情報の収集が可能なアプリユーザのコミュニティをつないでいる。そういったビジネスの目的が果たされるだけでなく、このデータは Mapillary の通常プラットフォームにも追加される。

Solem 氏はこう語る。

ライドシェアリング用のマップ、デリバリー用のマップ、スクーター用のマップ、それぞれが異なります。画像やセンサー情報がこれほどたくさんのデバイスで収集されていることを考えると、企業の将来の一端をマップも担うことになるでしょう。

Tactile Mobility はこの手法に新たなひねりを加え、車両に組み込まれたセンサーやソフトウェア経由で道路状態のデータを収集する。カメラで物体を確認できるほか、自動運転車はそのような微妙な差異を、道路の凸凹、くぼみ、路上の水、道路のカーブといった微妙な差異を「感じる」ことができなくてはならない。同社は、このような情報をマップ層として追加する SurfaceDNA というシステムを開発した。

よりスマートなシティ

このようなマップは、その多くが様々なジオロケーションサービスやモビリティサービスを強化するために利用されている一方で、変化しつつある都市においてもますます重要な役割を担いつつある。

イスラエルに拠点を置く Moovit は、2012年にローンチされて以来、都市輸送システムのマップをクラウドソースによって構築してきた。データの大半は、200万人近くにのぼる「Mooviters」が生成する。彼らは地元の公共交通機関サービスの情報を提供する。

2017年に Moovit はデータを公開し、都市が同社のツールを使って公共交通を改善できるようにした。地方自治体は、Smart Transit Suite と呼ばれる同サービスを認可した後、このデータにアクセスし、政策立案者が交通網をよりうまく管理し、建設プロジェクトを計画して都市内の人や車両の流れをより正確に分析できるよう役立てる。そして都市は、このデータを市民や地元企業に様々な形で提供する。

Moovit はこれまでに、Intel Capital がリードした昨年の5,000万米ドル規模のラウンドを含め、ベンチャーキャピタル投資で合わせて1億3,300万米ドルを調達した。

商品・マーケティング部門のバイスプレジデントを務める Yovav Meydad 氏はこう語った。

公共交通機関の信頼性を高めたいのです。このデータは地元の政策決定者にとって極めて大きな価値があると考えています。

Google の Waze も公共輸送業者との連携を強めており、公共計画立案のためにデータを共有している。同社は最近ロンドン市と共に Smart Routing プログラムを拡大しており、排出量削減に伴いより厳しくなった新規制をドライバーが守りやすくすることで、汚染の低減を後押しする。

一方で、サンフランシスコに拠点を置く Streetlight Data は、膨大な数の位置情報サービス(LBS)、GPS、携帯データポイントからデータを集め、都市計画事業者を支援する。データは様々な官民情報源から集められている。携帯電話データ、カーナビゲーションデータ、商用トラックナビゲーションシステム、および様々なモビリティ企業とのパートナーシップなどだ。その結果できたのが車、自転車、歩行者の移動パターンに関する有用情報を提供するプラットフォームだ。

Streetlight でマーケティング・商品管理部門のバイスプレジデントを務める Martin Morzynski 氏は次のように述べた。

要するに、任意の都市を選んで、過去1年間あるいは2年間の車や自転車の交通増加量、週末と平日の差、フットボールの試合日と通常の仕事日との違いを言うことができます。かなり細かいことまでわかります。

データは、例えば歩行からスクーターシェアリングの利用、電車の利用、Uber への乗車へと移行する、様々な移動段階にある通勤者群を区別できる。クライアントによってはこれを活用し、駐車場の利用を最適化したり、新たな自転車ネットワークを考案したりすることができる。

しかしより大きな規模では、このデータを利用し、輸送機関立案者は新たなプロジェクトに関してより詳細な情報に基づいた決定を下すことができる。これには、新しいインフラの構築や新しいモビリティ形態の導入などがある。輸送機関に関する従来の調査は何か月もかかることがある上、道路を使用する車両の種類や出発地・最終目的地といった面で微妙な差異を数多く見逃してしまう。

Morzynski 氏は言う。

どこに配置しどう設計するかという点で、インフラに対する大規模な投資と言えます。こういったデータは、その方法を見つけ出す上で非常に役に立つのです。

進むモバイル化

一部のマッピング会社は、自社のマップを活用し、他のモビリティサービスを提供し始めている。

市内交通機関アプリ Citymapper が、2017年7月に自社の商用バスサービスをローンチしている。ロンドンを拠点とする Citymapper は同年5月、独自のスマートバスと交通機関サービスを試験的に取り入れ始めた。バス停の場所が決められ、従来のバスサービスとほとんど同じように運用されるが、同社のバスは USB 充電ポートやコンタクトレス決済といったアメニティを提供する。また、マッピングデータを利用し、サービスが十分に行き届いていないルートも割り出している。

オープンなマッピングプラットフォーム Here を開発した Here Technologies は、2018年1月に新子会社 Here Mobility の設立を発表した。

提供されるサービスの1つである Open Mobility Marketplace は、地域で運営される全てのモビリティサービスのハブを作るために設計されたソフトウェアだ。全モビリティサービスの運営を一元化し統一することで、同プラットフォームを利用する全ての企業により広範な市場を提供できると Here Mobility は確信している。その一方で、各都市はよりうまくサービスをモニターおよび管理できるため、混乱を巻き起こさず効率性を高めることができる。

さらに、Here Mobility が提供するディスパッチサービスは、同社のデータや分析を活用してトラックやバスといったフリート車両の管理を支援し、効率性の向上につないでいる。

同社によると現時点では、多くの都市でモビリティ革命の利益を十分に享受できていないことが判明しているという。これは様々なサービスが縦割体制で、互いにつながることなく、独立して運営されているためであり、場合によってはより多くの無駄と混乱を招いているという。Here Mobility は、こういった統一されていないやり方を調和させ、都市が前進するのを後押しできると確信しているという。

同社のシニアバイスプレジデントを務める Liad Itzhak 氏は次のように述べた。

私たちは、モビリティの未来を築いているのです。世界は今、車両所有からサービスとしてのモビリティへと移行しているのです。これは誰にとっても魅力的な発想です。ですがこの未来にたどり着くには、全てのリソースを効率よく活用する必要があります。

空高く

マッピングの大半は当然ながらまだ陸地が中心だが、商用ドローン市場が急成長する中、マッピング機能を空にまで広げて作るあるいは拡大する必要性が急速に高まっている。

DroneDeploy は、ドローンが持つ可能性をより多くの人が享受できるよう、関連作業の大半を自動化するプラットフォームを開発した。時間やフライト行程のスケジューリング、データ収集、マッピング、分析などに対応する。同社はドローンメーカーと提携し、開発者にプラットフォーム用アプリの作成を認めている。

プラットフォームは、DroneDeploy が開発したドローンマッピングプログラムで動作する。同社のソフトウェアはほとんどの商用ドローンに対応しており、自動飛行を計画したり、クラウドサービス経由でデータを処理し3D マップを作成したり、迅速にデータを分析したりすることができる。同プラットフォームでは、ドローンの飛行中にリアルタイムでマップを構築することも可能だ。

DroneDeploy は、これまでにベンチャーキャピタル投資で約5,600万米ドルを調達しており、特にソーラーパネルオペレーター、鉱山業、建築業といった業界を中心に180か国に顧客を持つ。

DroneDeploy の CEO を務める Mike Winn 氏によると、フライトプラン作成やデータ分析にかかる時間を考えると、今のところドローンサービスでもっとも高くつくのは人件費であることが多いという。しかし、AI や徐々に増えるマッピングデータにより、人間への依存は減っていくだろうと同氏は語る。

ドローンの未来は、自動化です。

Winn 氏はそう語った。

しかし課題は、単一のドローンの自動化を超え、いつの日か無人の飛行体であふれるだろう空が生み出す数々の問題へと広がる。

ドローンに関わる進化をより秩序立てるため、カリフォルニア州サンタモニカを拠点とする AirMap が無人航空機管制(UTM)プラットフォームを作成した。ドローンが、飛行時に遭遇する複雑な規制や地理的な課題に対処できるようにしている。

AirMap は部分的に、マッピング技術と、ドローン使用にまつわる公的規制に関して作成した非常に高度なデータベースを融合させることで機能する。同社 CEO を務める David Hose 氏によると、こういった規制は非常に複雑かつ特殊な場合があるという。例えば、ドローンと学校との距離制限がある場合、ドローンのオペレーターは、ドローンが飛行する地域の全ての学校の位置を把握しなくてはならない。

こういった規制があるため、ドローンの採用が大幅に減る恐れがあると Hose 氏は語る。

航空業界では、ドローンは航空機と捉えられています。そのためこのような様々なルールを公布するのです。歴史的には、航空業界はそれで非常にうまくいっていました。訓練を受けたパイロットが、全ての規制を勉強し全てのルールを学びました。ですがドローンは、ずっと速く変化する家電業界から来ています。ルールに対するこのようなアプローチは、家電の分野にはあまり合っていません。

マップや地理によって定義されたルールのデータベースがあれば、ドローンは自分の位置を把握し、何らかの違反を犯すことになるエリアへと入ることを避けられる。ドローンを同サービスに登録できるため、フライトプランの共有が可能だ。それによりドローンは、他にどういったドローンが周辺を飛行しているかを知ることができ、航空管制官側も空の交通を把握しやすくなる。

配送、セキュリティ管理、救急サービスの支援などを行う可能性のあるドローンの予測台数を考えると、将来の安全性を確保する唯一の方法は、ルールやロケーションに関する正確なデータをドローンが持つことだと Hose 氏は語る。

AirMap はドローンを積極的に活用することの良さを証明するよう世界に推し進めています。私たちの信念体系は、ドローンが飛び回る世界で暮らすというものです。ですがそのためには、明確なルールや全ドローンの規制が整っていなくてはなりません。それは唯一、規制やマップの自動化によってのみ実現できるのです。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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AIを使った写真プラットフォームMeero、シリーズCラウンドで2億3,000万米ドルを調達——フランスの新たなユニコーンに

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人工知能(AI)を利用した写真プラットフォームを開発するパリ拠点の Meero が6月18日、ベンチャーキャピタルで2億3,000万米ドルの資金を調達し、同社の評価額が10億米ドルを超えたと発表した。 2016年に設立された Meero は AI を駆使し、e コマースや旅行などビジネス向けに使われる大量の画像を一斉処理することで、プロカメラマンの写真市場を一新したいと考えている。同社が手掛けるプ…

Image credit: Meero

人工知能(AI)を利用した写真プラットフォームを開発するパリ拠点の Meero が6月18日、ベンチャーキャピタルで2億3,000万米ドルの資金を調達し、同社の評価額が10億米ドルを超えたと発表した。

2016年に設立された Meero は AI を駆使し、e コマースや旅行などビジネス向けに使われる大量の画像を一斉処理することで、プロカメラマンの写真市場を一新したいと考えている。同社が手掛けるプラットフォームはプロの写真家とクライアントをつなぎ、写真の編集作業の大部分を AI が担う。

世界中にサービスや製品を宣伝する上でますます写真・画像に依存しているビジネスの世界において、Meero は急成長を後押しするニーズに上手くはまったようだ。今年のヨーロッパ最大級であるこの大規模な投資ラウンドで、フランスの数少ないユニコーン企業の仲間入りを果たした。同国では今後数年のうちにユニコーン企業数が急成長することが期待されている

CEO 兼設立者の Thomas Rebaud 氏は、この投資ラウンドの規模は自社の成長だけでなく、同社が抱くグローバルな野心の証でもあると語った。

早く実現させたいのなら、弊社は同時に多くの異なる分野に投資する必要があります。

同ラウンドは Eurazeo、Prime Ventures、Avenir Growth の3社がリードし、以前出資した Global Founders Capital、Aglaé Ventures、Alven、White Star Capital、Idinvest などが参加した。昨年も4,500万米ドルを調達しており、資金調達の合計額はこれで3億米ドルとなった。

現在、約100か国に3万1,000名のクライアントを抱える Meero。顧客には Just Eat、Expedia、Trivago、Uber が含まれている。

Rebaud 氏によると、これまで大手ブランドが世界中で撮影された大量の写真を必要としていた時、地元写真家を探すほか、編集プロセスにおいて外観とスタイルの一貫性も確保しなければならないという膨大な作業を必要としていたという。例えば、一人の写真家が Photoshop で何百枚もの写真をレタッチすると非常に時間がかかってしまうばかりか、写真に一貫性を持たせるのは難しくなる。

Meero のプラットフォームは AI による編集プロセスを通じて、編集作業のほとんどを自動化している。その中に、写真内のオブジェクトのメタデータ識別・作成も含まれる。

また同社は、写真家向け顧客関係管理(CRM)サービスの運営を通じ、写真家がより多くのクライアントを集められるようサポートをしていくという。このプラットフォームは仕事を管理するのに役立つだけでなく、写真家のスキル向上や専門家の人脈作りをサポートするワークショップやミートアップも提供する。

Rebaud 氏によると、この直近ラウンドで Meero は製品とサービスのすべてを拡大させることができ、米国市場への進出をより一層進めることが可能だという。現在、約600人の従業員を抱えており、そのうちの400人はここ半年の間に雇用されたばかりだ。今年末までに1,200人まで増やすことを目標としている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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ヨーロッパで最もデジタル化が進んでいる国はフィンランド〜EU発表「デジタル社会に関する年次報告書」から

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EU が発表したデジタル社会に関する年次報告書によると、フィンランドが EU 加盟国の中でトップとなった。モバイルブロードバンド接続率、デジタル技能、e ガバメントの取り組みが高得点だった。 6月11日に発表された EU の「デジタル経済社会指数(DESI)」をみると、概ね北欧諸国が上位を占めている。スウェーデン、オランダ、デンマーク、イギリスがフィンランドに続いている。 この指数では、ブロードバ…

Image credit: Henner Damke / 123RF

EU が発表したデジタル社会に関する年次報告書によると、フィンランドが EU 加盟国の中でトップとなった。モバイルブロードバンド接続率、デジタル技能、e ガバメントの取り組みが高得点だった。

6月11日に発表された EU の「デジタル経済社会指数(DESI)」をみると、概ね北欧諸国が上位を占めている。スウェーデン、オランダ、デンマーク、イギリスがフィンランドに続いている。

この指数では、ブロードバンド接続、人的資源、インターネット利用、公的サービスのデジタル化、リサーチなどの要因を測定して順位付けしている。報告書によると、ヨーロッパ大陸では概ね、デジタル変革の目標達成に向けて順調に進捗していることが示された。

だが報告書の執筆者は、野心的な目標があるにも関わらず、「EU の経済大国がデジタルの先駆者ではない」と話している。

実際、GDP の規模ではドイツ、フランス、イタリアがそれぞれ第1位、3位、4位であるが、DESI のランキングでドイツとフランスは中位にある。フランスは28か国中15位。ドイツは11位だった。イタリアに至っては、下から5か国目だった。

デジタル経済・社会担当ヨーロッパ委員の Mariya Gabriel 氏は声明で次のように述べた。

今年のデジタル経済社会指数をみると、EU が世界規模で競争力を維持するにはデジタル変革を加速させなくてはならないことが分かります。成功を収めるには、デジタル経済の取込みに向け引き続き協力していくほか、本当の意味で繁栄し、よりデジタルなヨーロッパを構築するために、全ての EU 市民がデジタル技能にスムーズにアクセスできるようにしなくてはなりません。

全ランキング
昨年との比較

粋なジャズ風にまとめた動画もある:

では、フィンランドは実際、何をしているのか。報告書によると、フィンランドは固定ブロードバンドの利用は低位だが、モバイルブロードバンドの利用が EU 平均のほぼ倍であるなど、際立って高かった。

また、人的資本で見ても、人口の76%が基本的もしくはそれ以上のデジタル技能を有しており、EU 平均の57%を大きく上回っている。

また、オープンデータやデジタルヘルスケアサービスの利用が進んでいるため、公共サービスのデジタル化でも加盟国中第1位だった。

その他、テック系スタートアップエコシステムが堅固であることもあって、フィンランドはこの種のランキングで初めてトップとなった。数年前の Nokia 崩壊から回復してきたことを思えば、今回のランキングは印象に残る偉業だといえる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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躍進するフランスのテック業界、さらに速くさらに遠くを目指す

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AI 写真のスタートアップ Meero は、フランスのテックエコシステムが近年成し遂げたことの好例と言えるかもしれない。 2016年に設立された同社はすでにベンチャーキャピタルから6,340万米ドルを調達しており、その中には昨年夏の4,500万米ドルのラウンドも含まれている。直近のたった6か月間で400人を雇用し、同社の従業員は600人近くとなっているが、今年末までに1,200人にする目標を持って…

VivaTech に登壇した Meero CEO の Thomas Rebaud 氏
Image credit: Viva Technology

AI 写真のスタートアップ Meero は、フランスのテックエコシステムが近年成し遂げたことの好例と言えるかもしれない。

2016年に設立された同社はすでにベンチャーキャピタルから6,340万米ドルを調達しており、その中には昨年夏の4,500万米ドルのラウンドも含まれている。直近のたった6か月間で400人を雇用し、同社の従業員は600人近くとなっているが、今年末までに1,200人にする目標を持っている。そして Meero は最近パリで開催された Viva Technology カンファレンスで際立った数少ない企業のうちの1つだ。このイベントは主にフランス大手企業のデジタルトランスフォーメーションに対する取り組みを中心として組織されたものである。

Meero の速度と軌道はフランスのテックを勢いづかせるエンジンの回転数を、少し上昇させるものだ。VivaTech のステージ上で共同設立者兼 CEO の Thomas Rebaud 氏は、Meero を国際的な企業にするという夢を常に抱いており、また従業員も大志を抱くよう強く促していると述べた。

同氏はこう述べた。

速く進みたいならば、まずやるべきことは「think big/大きく考える」というマインドセットをチームに持たせることです。目標が10では小さい、だから100を目指そうということを、人々に理解してもらう必要があります。

将来有望な起業家がより良い場所を求めて拠点を引き払っていた5年前のこの国にあっては、Meero の物語は希少だっただろう。しかし今や Meero は数多くあるサクセスストーリーの1つとなった。フランスにおける資金調達は増加しており、その中には今年の大規模な最終ステージのラウンドも含まれているが、これは長い間なかったものだ。人工知能における力量を同国は強く促進させているが、同時にブロックチェーンのような新しい技術も歓迎している。投資家たちはフランスに注目しており、ベンチャーキャピタルの資金調達ではイギリスに次いでヨーロッパ第2位となっている。

しかしこの転換を誇ることができている一方で、同国は中国のエコシステムの盛り上がりを受けて国際舞台でさらに緊迫した競争に直面している。また一方ではシリコンバレーのスタートアップらが莫大なラウンドで資金を調達し続け、さらに素早くスケールしている。そしてフランスは起業や国際的な人材を惹きつけることがやりやすくなるよう多くの改正を行ってきたが、他の多くの地域に比べると行政面ではまだ悪夢だと思われている。

しかし、それでも勢いは削がれていない。それどころか、同国は眼前の困難に立ち向かう自信が育ちつつあるようだ。VivaTech において、同国のスタートアップ応援団長も務める大統領 Emmanuel Macron 氏は、フランスの起業家層のポテンシャルを熱く語った。

VivaTech 初日に現れた Macron 氏はこう宣言した。

4年前、我が国はスタートアップ設立においてすでに西ヨーロッパでナンバーワンでしたが、スケールすることについて問題を抱えていました。今や、資金額はどんどん大きくなっています。エコシステムを加速させるものがあるのです。

VC ファンディングの高まり

過去5年間、フランスはスタートアップのエコシステムを促進すべく働いてきた。フランス人はどの程度が政府の手柄だと言えるのか議論することを好むが、結果として現れた投資額は明らかだ。CB Insights によれば、2014年からフランスのスタートアップは2,734件の取引で128億4,000万米ドルを調達してきた。

この中には2019年第1四半期の調達額11億6,000万米ドルも含まれており、このペースで行けば昨年の総額34億米ドルを10億米ドル上回る目覚ましいものになるだろう。資金調達においてヨーロッパの国々の中では、イギリスにはまだ遠く及ばないものの、ドイツを僅差で上回り2位につけている。

しかしこれらの数字には重要な注意点がある。国有銀行である Bpifrance が今でも同国におけるスタートアップの最大の資金調達源のままだ。そして実際の取引件数はほんの少し減少している。

全般的に、これらの資金調達ラウンドは、フランスが幅広い分野の最初期段階のスタートアップに数多くの小規模ラウンドをばら撒いているということを反映している。資金のほぼ62%はシードあるいはシリーズ A ラウンドの企業へ回され、24%は「その他」に分類されるもの(ビジネスプランのコンペティション、企業のマイノリティ施策、奨励金など)に注ぎ込まれている。

スタートアップの資金調達の残り約14%はシリーズ B ラウンド以降へと向かっており、この割合はここしばらく変わっていない。これに対処するため、昨年フランス政府は「スケールアップ」を加速させるための一連のプログラムを発表し、ポテンシャルを秘めていると思われる100社以上の企業を特定して、それらの企業が資金調達の途を見つけることができるよう手助けを推し進めている。

フランス政府の目標は、現在4社のユニコーン企業を2025年までに20社にすることだ。他国の状況は、イギリスが16社、中国が90社、そしてアメリカは165社となっている。しかし、今年のこれまでの驚くべき大きな一連の資金調達ラウンドで、フランスがついにそこへ割って入ることができそうな兆候がある。

ほんの数年前まで、フランスではこういった大きなラウンドは極めて珍しいものだった。そして VivaTech で囁かれていた噂では、別のスタートアップが間もなく大きな資金調達を発表するのではないかということだ。

一方で、政府は PACTE(Plan d’Action pour la Croissance et la Transformation des Entreprises/ビジネスの成長と変革のための行動計画)と呼ばれる広範囲な改革を採択した。これには、オンラインでのビジネス設立の簡素化、税制改革、雇用プロセスの緩和、ICO などの新しい方法を通じて資金を調達できるようにすることが含まれている。

政府はブロックチェーン使用の促進といったイニシアチブも、引き続き推し進めている。また自国産のスタートアップを後押しする別の方法も探そうとしている。例えば、フランスのデジタル大臣 Cedric O 氏は、政府はパリに拠点を置きプライバシーに注力した Qwant 検索エンジンを使い始めるだろうと明らかにした。

昨年正式にローンチした France is AI は地元のエコシステムを促進させようとする別の取り組みであり、また技術の設計や使用に関して、より倫理的なアプローチを奨励するものでもある。フランスの AI の人材は長い間シリコンバレーに奪われてきたため、このプログラムはフランスに大きな気づきをもたらし、AI 業界で働く人にフランスで会社を始めるよう促すものとして設計されている。

フランスの AI コミュニティ出身者としてはおそらく最も有名な Facebook のチーフサイエンティスト Yann LeCun 氏は、VivaTech のステージでフランスが果たすことができる役割について楽観的であると述べた。

ヨーロッパ全般、中でも特にフランスには非常に良い教育システムがあり、そのため非常に良い人材がいます。そしてそれこそが、持っていない状況から作り上げることが最も難しいものなのです。

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スタートアップ大統領

2017年、Macron 氏が大統領に選出された年の VivaTech で、同氏はフランスをスタートアップの国にすると誓い、今も起業の味方であり続けている。全国的な「イエローベスト運動」で大統領の地位はおびやかされ、その在任期間はぐらついているが、テック業界においてはMacron 氏はまだ広く人気を集めている。

過去2年間、同氏は世界中のテック CEO の有力者や為政者を引き付けてきた Tech For Good Summit を通じ、VivaTech を活用してフランスに注目を集め、テック政策の発表ならびにフランスへの投資を盛り上げてきた。今年、同イベントは企業や政府がオンラインのテロリズムと戦うことを手助けする枠組み、「クライストチャーチ・コール」の創設で国際的にニュースの見出しを飾った。

ニュージーランド首相 Jacinda Ardern 氏は計画を発表するプレスカンファレンスにMacron 氏と共に参加した。この計画は51人の命を奪った銃乱射事件が起きたニュージーランドの都市にちなんで名づけられている。銃撃犯は襲撃の様子をライブ配信し、人々は動画のコピーを繰り返しアップロードし続け、Facebook、Google、Twitter は動画の世界的な拡散を止めることに対してほぼ無力であった。

クライストチャーチで起きたことは、ただのテロ襲撃ではありません。インターネットの力を使い、それを狂気的なプロパガンダ拡散のための機械へと変えたのです。(Macron 氏)

同イベントはフランスが技術開発と政策において中心的なプレイヤーでありたいと望んでいる証拠でもある。ここでは Macron 氏は微妙なラインを歩んでいる。なぜなら、彼は法人税や労働法といった多様性の問題に関して、その意見を曲げようとはしないからだ。一例として、フランスは「GAFA」とも呼ばれている Google、Apple、Facebook、Amazon のようなアメリカのテック大手に打撃となるような、高い税率を提唱し続けている。

VivaTech に姿を見せた同氏は、フランスは誰かを罰しようとしているのではなく、公平な税制を求めているのだと再び説明した。そして同氏はこの機会を使い、フランスはスタートアップにとっても、彼が税を課そうとしている大手テック企業にとっても、適切な場であるとピッチした。

彼はこう述べた。

成功した起業家や将来有望なエンジニアなら、自分の才能を存分に発揮できる場所で働きたいと思うものです。挑戦を受けて立ちたいと思うものです。

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La French Tech

フランスのテックシーン、もしくはフランスそのものが示す現在進行中の発展の兆候としては、昨年 La French Tech のディレクターに選出された Kat Borlongan 氏も挙げることができる。5年前にフランスの前政権がローンチしたこのプログラムは、フランスのテック復活への取り組みの中心となることを意図したものだった。

Borlongan 氏は Techstars や Google で働いた経歴、彼女自身のコンサルティング企業 Five by Five によって、パリのテックコミュニティではよく知られている人物だ。だがよそ者に対してあまりオープンではない国においては、フィリピン生まれで15年前にフランスに移って来たばかりの人が選ばれたのはかなり注目に値することであり、よりオープンであろうとする取り組みの象徴である。

French Tech Mission はパリのスタートアップキャンパス Station F にオフィスを持っており、その役割の大部分は同国の悪名高いお役所仕事を起業家が切り抜ける手伝いをすることだ。Borlongan 氏はテック関連の問題に対する補助を調整し応答性の速度を上げるために、フランスの様々な省庁とネットワークを構築している。

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La French Tech のディレクター Kat Borlongan 氏

この任を受けるにあたって、Borlongan 氏にはやるべきことが山のようにある。

早急にやるべきことは、スタートアップがより多くの成長資金を引き付ける手助けをすること、政府の応答時間をより能率的にし続けること、そしてフランスのテック業界がさらに多様性を持ちアクセスしやすいよう促進することだ。後者の取り組みには最近の「French Tech Tremplin」と呼ばれるプログラムのローンチが含まれている。このプログラムは1,500万ユーロ(約18.3億円)の予算を持ち、多様な経歴をもつ起業家をターゲットとしている。

また最近フランス政府はディープテックのスタートアップの発展を加速させるプランを明らかにした。ここにはラボ段階の研究に対する5億5,000万ユーロ(約671億円)の投資、スタートアップ段階を加速させる5年間に対する8億ユーロ(約976億円)、そして最終的に成長を後押しする13億ユーロ(約1,586億円)のファンド・オブ・ファンズが含まれている。

しかし、おそらく最も切迫した目標は、より多くの人材をフランスに引き付けることだ。人々にフランスに来ることについて話していると、分かりづらい、お金がかかる、馴染みづらいということを恐れている人が非常に多いと、彼女はインタビューの中で述べている。それに応えて、彼女は同国のフレンチテックビザプログラムの全面的な見直しを進めている。

Pass French Tech と呼ばれるプログラムの下で、同国は240社の急成長中のスタートアップを特定し、追加の補助を受ける資格があるとしている。現在これらの企業は国外出身の従業員に新たなフレンチテックビザを提供することができる。このビザには必須条件がほとんどなく、例えば企業はフランスで仕事を探している人を見つけようとしていると証明する必要がない。そしてたった48時間で承認が下りるのだ。

Borlongan 氏によると、資金やアイデアの欠如以上に、将来有望なフランスのスタートアップの多くが直面する障害は、職場の空きを埋めることができないということである。

彼女はこう言う。

大事なものは人材です。人材が揃っていれば、その他のすべてを引き付けることができます。人材がいれば、投資はそれに続くのです。

先へ続く長い道

フランスがスタートアップの大望を実現させるには、やるべきことがまだ非常に多く残っているが、そのうちの1つは同国の大手企業に関係のあることだ。

VivaTech のカンファレンスは外国人にとっては奇妙な獣のように見えるかもしれない。この巨大なテックカンファレンスホールに足を踏み入れれば、L’Oreal、LVHM、La Poste、フランスの公益事業や公共交通機関、およびその他のテック以外の企業でフロアは埋め尽くされている。しかしフランス政府はこれらの大手既存プレイヤーが時代に取り残されないよう、将来有望なスタートアップに対して投資したり買収したりすることを切望している。

カンファレンスには VivaTech の Open Innovation Lab プログラムを通じて選ばれたスタートアップを取り上げたブースがあり、これらの取り組みの成果を示すチャンスだ。だがそれらのスタートアップの一部は明らかに大手ブランドのニーズに対応するものであり、それ以外は無作為に選ばれたように見える。どちらにせよ、これらの大手を動かそうとする政府の後押しは、伝統的企業の多くがデジタルの不活発さを振りほどこうとしていたこともあり、企業が後援するハッカソンやピッチコンテストおよびインキュベータの奔流となった。

それでも、CB Insights によれば、フランス企業によるベンチャー投資は2019年第1四半期に前年同時期に比べて8%下落している。また VivaTech で Facebook の LeCun 氏は、フランスの大手企業はアメリカや中国の競合と比べて長期的な R&D が十分ではないと警告している。同氏はこのように述べた。

フランスでは IT において長期的な研究がありません。

最後に、スタートアップやイノベーションという点でフランスのイメージは劇的に改善してきたが、国際的な企業をローンチする良好な場所として見られるためには、まだやるべきことが数多くある。

一例として Ivalua を見てみよう。

およそ20年前に CEO の David Khuat-Duy 氏によってパリで設立され、企業の支出管理ツールを開発している同社は、5月21日、6,000万米ドルをベンチャーキャピタルから調達したと発表した。この資金調達により同社の評価額は10億米ドルを超えるものとなった。

しかしフランスのテック業界にとって潜在的に大きな意味を持つこの件は、いくぶん静かなものだった。なぜなら、同社がフランス発祥の企業であることを知るのは困難だったからである。2017年、同社が躍進を遂げて7,000万米ドルを調達したとき、「フランス史上最大級のグロースエクイティキャピタルラウンド」とプレスリリースは大きく報じた

しかし5月21日のプレスリリースでは同社とフランスの繋がりは言及されなかった。さらに Ivalua のウェブサイトはフランスにおける経歴にほぼ触れていない。外から見る限り、同社はカリフォルニア州レッドウッドシティに拠点を置く企業の1つにしか見えないのだ。

もちろん同社の成功と忍耐力は、フランスにエネルギッシュな国際的スタートアップを生み出す力があることの証左だ。だが同社が徐々に海外へと移りつつあり、自社のルーツを軽視していることは、フランスのスタートアップの評価が説得力を持つには、まだまだやるべきことが山積していることを思い起こさせるものである。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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新興市場向けスマートフィーチャーフォンOS開発のKaiOS、シリーズBラウンドで5,000万米ドルを調達——Cathay Innovation、Googleらから

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スマートフィーチャーフォン用のオペレーティングシステム(OS)を製作している KaiOS Technologies は、この種の電話をより強力かつ手が届きやすいものにするという目標の達成に向け5,000万米ドルを調達した。 このラウンドをリードしたのは Cathay Innovation だったが、他にも Google や TCL Holdings といった以前からの投資家も参加した。Google…

KaiOS が搭載されたスマートフィーチャーフォン
Image credit: KaiOS

スマートフィーチャーフォン用のオペレーティングシステム(OS)を製作している KaiOS Technologies は、この種の電話をより強力かつ手が届きやすいものにするという目標の達成に向け5,000万米ドルを調達した。

このラウンドをリードしたのは Cathay Innovation だったが、他にも Google や TCL Holdings といった以前からの投資家も参加した。Google は昨年、KaiOS による2,200万米ドルのラウンドをリードしている

香港を拠点とする同社の、Linux をベースとする KaiOS は、フィーチャーフォンでスマートフォンのサービスが利用できるよう設計されている。さらに大きな目標は、新興市場で多くのユーザがインターネットを利用できる強力な OS を制作することだという。

KaiOS の CEO、Sebastien Codeville 氏は声明の中で次のように述べた。

当社の使命は、新興市場でネットに接続していない何十億という人々のモバイル接続を実現すること、そして確立された市場でスマートフォンの代替品を提供することで、個人、企業、社会に新たな可能性を開くことです。今回のシリーズ B ラウンドにより、こうした取り組みを加速させられるほか、世界中にあるさまざまな社会で、着実にフィーチャーフォンへの影響を拡大させることができます。

同社によると KaiOS は現在、100か国にある1億台超の電話で動作している。この OS を使えば、インドのモバイルネットワークオペレーター Jio が制作した高品質な4G フィーチャーフォン JioPhone などの低コストデバイスで WhatsApp といったサービスが利用できる

KaiOS では、今回獲得した資金を新たな市場に投入するほか、製品の研究開発に投資する計画がある。さらに多くのデベロッパーを同社のエコシステムに引き寄せる取り組みも拡大する予定だ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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Google、欧州でプライバシーエンジニアリングハブとセーフティ研究ファンドを創設

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Google は5月14日、ドイツのミュンヘンに Google セーフティエンジニアリングセンターを設立する計画を発表した。同センターでは、増員されたエンジニアチームが同社のあらゆる製品に設けられたプライバシー機能を監視することになる。それと併せて、デジタルセーフティ問題に関わる組織に資金を提供するため Google.org Impact Challenge on Safety もローンチする。 …

ミュンヘンの Google エンジニアリングセンター
Image credit: Google

Google は5月14日、ドイツのミュンヘンに Google セーフティエンジニアリングセンターを設立する計画を発表した。同センターでは、増員されたエンジニアチームが同社のあらゆる製品に設けられたプライバシー機能を監視することになる。それと併せて、デジタルセーフティ問題に関わる組織に資金を提供するため Google.org Impact Challenge on Safety もローンチする。

同社 CEO の Sundar Pichai 氏が投稿したブログ記事によると、ミュンヘンでプライバシー問題に対処しているエンジニアチームの人数を倍増させるという。

Pichai 氏は次のように述べている。

このチームは、ヨーロッパその他の地域にある Google オフィスにいるプライバシー問題の専門家と協力し、また、センターで作られる製品は世界中で使用されることになるでしょう。

今回の発表は、ヨーロッパで一般データ保護規則(GDPR)の施行1周年を数週間後に控えた時期になされた。2018年5月25日の施行以来、GDPR は熱い議論がなされる規制動向となっており、厳格な消費者保護の基準と称賛されることもあれば、イノベーションの障害となると非難されることもある。

ここで明確なのは、企業は今以上にコンプライアンスに投資をしなくてはならず、世界中でプライバシーが大きな話題になるということだ。5月14日には、Facebook が20年に及ぶ監視と数十億ドルの罰金が科される可能性のあるプライバシー関連の紛争で米連邦取引委員会と話し合うという情報が入ってきた。

プライバシーが脚光を浴びている中、Google は5月第2週の I/O デベロッパーカンファレンスで複数のプライバシー関連の発表を行った

Pichai 氏はこう記している。

あらゆる人にとって、さらに役立つ Google になるための取り組みを共有しました。活動の大半は、人々をオンライン上で安全にし、個人情報をプライベートかつセキュアにすることです。プライバシーとセーフティは世界中の誰もが等しく享受できないといけません。また、個人データに関する明確で意味のある選択肢を提供して人々に力を与える製品を市場にもたらしたいと思っています。

さらに、プライバシー問題の規制と政策に積極的に取り組んでいる国の1つであるドイツに、今回のようなセンターを設けることには意味があるとしている。Pichai 氏によると、プライバシー設定を確認する中心的な製品である Google Account などは、従業員が現在750人いるミュンヘンで作られた。2019年末までに1,000人を超える人材を確保する見通しだ。

ただ、同社はプライバシー問題だけでなく、YouTube などの製品にみられるように、危険で誤解を招くコンテンツを拡散したとして注目を集めるようになっている。別のブログ記事において、オンラインかオフラインかを問わず、セーフティへの取り組みに資金を提供するために1,000万ユーロ(約12.3億円)規模のヨーロッパ助成金を創設する計画の詳細が示された。

この資金は、「セーフティ問題に取り組むヨーロッパの非営利団体、大学、学術研究機関、営利社会的企業、その他専門機関を支援するために」活用されると同記事は伝えている。誰であれ、「コミュニティ内での憎悪や過激主義への対処、オンライン上にいる若者の安全確保」に関連する取り組みに最大100万ユーロ(約1億2,300万円)の助成金を申請することができる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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極寒のバルト海に身を投じピッチするイベント「Polar Bear Pitching」の第6回が開催——古本マーケットプレイス制作のBookisが優勝

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年に一度、フィンランドのオウルで開催される「Polar Bear Pitching(北極熊ピッチ)」は世界で最もクールなスタートアップコンテストかどうかは分からないが、最も寒い場所でのコンテストであるのは間違いない。毎年、凍てつくバルト海の一角に主催者が穴を開ける。そして12人の起業家たちが、ほぼ氷水状態の海に入って競い合う。 ルールはいたってシンプル。起業家は水中に入っている間、ピッチできるとい…

ゲーム会社 Rat Crew Studio をピッチに挑む、同社 CEO Akseli Jylhä-Ollila 氏
Image Credit: Polar Bear Pitching

年に一度、フィンランドのオウルで開催される「Polar Bear Pitching(北極熊ピッチ)」は世界で最もクールなスタートアップコンテストかどうかは分からないが、最も寒い場所でのコンテストであるのは間違いない。毎年、凍てつくバルト海の一角に主催者が穴を開ける。そして12人の起業家たちが、ほぼ氷水状態の海に入って競い合う。

ルールはいたってシンプル。起業家は水中に入っている間、ピッチできるというものだ。

オウルを本拠とするRat Crew Studios の創業者兼 CEO Akseli Jylhä-Ollila 氏は次のように話している。

私たちは参加資格がありますが、なんとも寒いです。

マイナス10度という極寒の中、寒冷地用のコートを身にまとった数百人の観衆を前に凍てつく海水に胸まで浸かって同氏は立っていた。

そこには何か考えがあると思われるだろうが、重要なのはその点だ。このピッチのアイデアを思いついたのは、6年前にオウル大学のスタートアップハブ Business Kitchen で働いていた Mia Kemppaala 氏である。オウル最大の雇用主であった Nokia は携帯電話事業を Microsoft に売却した後、大がかりなリストラを進めていた。そのあおりを受けて、フィンランド北方にあるこの都市の経済環境は悪化していた。

スカンジナビア北部の首都と宣伝しているこの都市の人口は約25万人である。当時、オウルの経済が逆風に耐えられるとは誰も思っていなかった。

実に悲観的な状況でした。

でもフィンランドでは、厳しい時こそ皆が団結するのです。(Kemppaala 氏)

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フィンランドには、困難に直面している時の忍耐を表す「シス」という言葉がある。Kemppaala 氏によると、ホッキョクグマ・ピッチが生まれた背景にはシスがある。面白おかしいユーモアで地元の人々の関心を引き、オウルのスタートアップの力になれることで、この地域にある別のテックの資産を宣伝できる方法はないかと考えていたという。

オウルの起業家たちは優れたアイデアを持っていたようだが、それを表現するのが得意ではなかったとKemppaala 氏は話している。寒中水泳という地元の風習を織り交ぜる考えが浮かんだ時、ピッチコンテストのイメージができていった。プレゼンに集中しながら、氷点下に近い海水につかる苦行に耐えられる姿を見せること以上にアピールできる方法はないだろう。

これがオウルの素晴らしいところです。これほどクレイジーな考えでも、皆が受け入れてくれるのです。

私が参加したのは、第6回イベントだった。この地域のスタートアップとテックのコミュニティを取材するメディアツアーの旅費を支払ってくれた地元団体「Business Oulu」のゲストメンバーとして、私は先週オウルにいた。

イベントが始まる前、私たちは市中心部から離れたバルト海の一角に開けられた氷の穴へと向かった。

水中には、プレゼンターが足をつく高台が置かれている。そのため、強い海流に身をすくわれてスウェーデンに流されてしまうことにならない。イベント開催中は、緊急時に備えて訓練を受けたダイバーが待機している。プレゼンターはスタートアップをピッチしようと氷のような海水の中で立っているのだから、その組み合わせが少し面白かった。

夕方戻る頃には太陽が沈みつつあり気温も低下、風が吹き始めていた。

多くの地元民がこのイベントに集まり、コンテストを一目見ようといくつかのコーナーでは人だかりができていた。

ピッチしたのは次の12社である。

  1. Bookis………古本のマーケットプレイスを制作
  2. Mealbox………健康食のデリバリー
  3. Doerz………都市や旅行代理店向けのクラウドベースのプラットフォーム、地元の案内人とともに体験を提供
  4. Kidday………子どもの写真と記念をより良く管理するアプリ
  5. Delektre………個人用の健康モニタリングデバイス
  6. Funky Jump
  7. Rat Crew Studios………オウルを本拠とするビデオゲーム企業
  8. Zenniz………テニススキル向上を目指す追跡システム
  9. Simlab IT………仮想現実の訓練
  10. AISpotter………スポーツ向けビデオアナリティクス
  11. VideoCV………ビデオベースの求職
  12. New Cable Corporation………新しい形の電子ケーブル
力士のコスチュームでピッチに臨む、日本の Funky Jump CEO 青木雄太氏

拷問のようなピッチを数分間こなした後は、その場をすぐに離れてメインステージに設けられている温かいバスタブに身を沈めた。

審査員による判定の結果、Bookis が優勝した。ピッチは下にある動画のような形で行われた。何というか、見せ場もあるので最後まで見る価値はある。

イベントが終了したのは午後9時頃で、寒さに耐えるのは皆もう十分だった。私も分厚いブーツを履き、寒冷地用のジャンプスーツを着ていたものの、手足の感覚がなくなりかけていた。スタートアップのピッチが進んでいくにつれ、この状況を克服するのは難しくなるだろう。今度は、温かい部屋でゆったり座って、起業家の人たちに次々とピッチしてもらうことにしよう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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IOTA財団がベルリンのスタートアップスタジオNovaと提携、ブロックチェーンスタートアップ向けシードファンドをローンチ

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ベルリンを拠点とする IOTA Foundation は、スタートアップスタジオ Nova とのパートナーシップにより、分散型台帳技術に取り組む起業家を対象としたシードファンドを設立すると発表した。 IOTA が独自に開発した分散型台帳プロトコル「Tangle」は、同財団によると標準的なブロックチェーン技術より安全でエネルギー効率にも優れている。設立者の1人はトランザクションの認証方法から Tan…

ベルリンを拠点とする IOTA Foundation は、スタートアップスタジオ Nova とのパートナーシップにより、分散型台帳技術に取り組む起業家を対象としたシードファンドを設立すると発表した。

IOTA が独自に開発した分散型台帳プロトコル「Tangle」は、同財団によると標準的なブロックチェーン技術より安全でエネルギー効率にも優れている。設立者の1人はトランザクションの認証方法から Tangle を「ブロックチェーンのブロック抜き、チェーンだけ」と呼んだ。

IOTA は過去に Robert Bosch から出資を受け、富士通や Samsung とともにデータマーケットプレイスをローンチしてきた。現在はスマートシティプログラムを試験中である。同財団の Tangle プロトコルは機器間マイクロトランザクションの自動化を可能にする魅力的なもので、医療や交通、サプライチェーン、エネルギー、通信などの業界で導入が進められている。

そんな IOTA は、Nova と共同で立ち上げた新プログラムにより、Tangle プロトコルの利用をスタートアップの間で促進しようと目論んでいる。

IOTA の共同設立者で取締役会長の1人である David Sønstebø 氏は声明の中でこう述べている。

Tangle ネットワークはブロックチェーン技術の限界や非効率性をかなりの程度まで克服しており、そのためIoTの核心である機器間トランザクションを一変させる巨大なポテンシャルがあります。Nova とのパートナーシップは、萌芽的なアイデアを支援して実現可能、拡大可能、持続可能なビジネスモデルとして花開かせていき、それによってイノベーションを実現させるのが狙いです。

イギリス・リヴァプールで2014年にローンチした Nova は、「cofoundary(共同設立工場 )」と自称する通り、起業家にサポートチームを派遣して製品開発や事業計画、マーケティング面での支援を行っている。これまでに設立を助けたテック系スタートアップは80社以上だ。Nova は支援開始から1年が経過した時点で50%の株式を得ることになる。

IOTA との新プログラムも同様のモデルに沿っており、IOTA の Tangle 技術を利用してビジネスモデルを構築しようとしている起業家に資金とメンターシップを提供していく。

Nova のパートナーシップ部門を統括する Andrew Dean 氏は声明で述べている。

スタートアップのローンチが成功するまでには多くの障害がありますが、よくあるありふれた失敗はたいがいごく初期に起きるものです。私たちは IOTA で起業しようとする人に最大限の成功チャンスを提供したいのです。IOTA 技術が火種となって、現代屈指の刺激的な技術開発が行われています。それらの新しいアイデアをマーケットに送り込む一助となるのが楽しみです。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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