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スタートアップ・コンパスは、同種のスタートアップとの比較やベンチマークなどを用いて、スタートアップにより成功しやすい手法を広めるべく活動している。シリコンバレーに本拠を置き、世界にあるスタートアップ関連コミュニティと関係を締結し、知見の共有やコミュニティ間の交流に力を注いでいる。

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スタートアップ・ベンチマークのCompassによる、香港のスタートアップ・エコシステムに関するレポート(3/3)

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この新たな Compass のレポートは、香港のエコシステムに関する深い分析を行ったグローバルレポート2015のために集められた豊富なデータを用いている。また、中小規模のエコシステムがいかに成長を加速しトップクラスのエコシステムと競合できるかに関しても提言している。 著者:JF Gauthier 氏(Compass)。 香港のスタートアップエコシステムに関するレポートをダウンロードする場合はこちら…

この新たな Compass のレポートは、香港のエコシステムに関する深い分析を行ったグローバルレポート2015のために集められた豊富なデータを用いている。また、中小規模のエコシステムがいかに成長を加速しトップクラスのエコシステムと競合できるかに関しても提言している。

著者:JF Gauthier 氏(Compass)。

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Hong Kong Annual Reports via Flickr by Dennis Wong
Hong Kong Annual Reports via Flickr by Dennis Wong

関連事項

アクティベーション段階のエコシステムは、地元と世界的ステークホルダーたちの交流を促進することにより、世界レベルのノウハウを引き込み、「追いつくための成長」活動へ投資しなければならない。

したがって、香港の最優先事項は、起業家が世界レベルのノウハウに追いつくよう支援することである。(前に論じた通り、投資家は追いつく必要はない。)その時まで、スタートアップは不利な立場に置かれることになるだろう。つまり、大きなグローバル市場機会へと取り組むトップエコシステムにあるスタートアップの、急速に進化するビジネスモデルとテクノロジーにいつも後れを取るということだ。ゆえに、香港のスタートアップはより小規模な地元の機会を任されることになり、後期ステージの大型資本にそぐわない、より遅い成長収益と、より数少ない少額のイグジットを産出できるのみである。

他の優先事項は具体的には、様々な要因のギャップを埋めることが含まれる。スタートアップがハイクオリティな技術系人材と接触できるよう改善する。シード出資のギャップを減らす。サブセクターの戦略(例:フィンテックとIoT)を練り、実践する。そして起業家活動を増やすために思考態度の変化を促進する。

目標

目標は香港経済を多面化し、技術系スタートアップエコシステムの成長に積極的に投資することで長期的な繁栄を確実にすることだ。これは、Hong Kong Startup Ecosystem Report で推奨されているいくつかのプログラムを統合した戦略的なプランを発展させ、ステークホルダーたちによる協調された行動のコンセンサスを構築することで達成できる。

地元のステークホルダーたちの間で実行される戦略と戦術について一度コンセンサスが成立すれば、それ以外のステークホルダーたちはリードするか、共に参加することができる。政府の役割は、各所でなされる取り組みをまとめ、民間企業によって行なわれる活動を促進し、投資するかさもなければ特定の要因のギャップに関する活動を促していくことである。

民間セクターが直接扱えない、多々の課題への取り組みとなる後者は非常に重要だ。しかしいったんエコシステムが成熟して、多額のイグジット案件が定期的に成立すると、若者が技術系の学位を取得してテック系起業家になる動機となり、同時に活発なテック系エンジェル投資家となる高額の自己資本を持つ個人を生み出すであろう。それまでは、政府の努力は不可欠である。

提案

勧められている戦略およびプログラムは、発展初期段階にあるすべての中小規模のエコシステムにとって適切なものである。

Cyberport via Flickr by Jo Schmaltz
Cyberport via Flickr by Jo Schmaltz

短期的な優先事項

A)起業家たちの間で世界レベルのノウハウを強化する
この問題は複雑で、一晩で解決できるようなものではない。レポートの中に詳述される多くの戦略目標である。短期的解決策の一連案は、世界的なアクセラレータを香港へ引き寄せ、トップクラスのエコシステム(例:シリコンバレー、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、北京、深圳)で、香港スタートアップが海外アクセラレータプログラムへ参加できるよう特別に計らう、というものだ。

世界的なアクセラレータは証明されている一つの解決策だ。最新のノウハウと、世界的に最良の実践法を起業家に教えることができるからである。それこそまさに香港が必要としているものだ。さらに、アクセラレータはエコシステム(あるいは産業クラスター)の中で、特別な役割を演じることができる。「Porter氏によると、経済活動は社会活動のなかに埋め込まれている。その『社会的つながりはクラスターを結び付けることになる。』」アクセラレータは専門的そして社会的なつながりとして機能し、スタートアップと地元の投資家、企業団体との関係を強めれば、例えばデモデイなどを通してリーダーたちが彼らのプログラムに興味を持つことになる。多くの地元ステークホルダーが世界レベルのノウハウを持っているため、アクセラレータの活動は起業家がそれに追いつくよう支援することである。

B)トップクラスの技術系人材を利用できるよう改善する
他のいくつかのプログラムはこの課題に取り組んでおり、短期的解決策は、様々な国からのハイクオリティの技術的人材である若い卒業生たちによって移民を増加させることから始まる。格好の対象となるのは、ロシア、旧ソ連圏諸国、東ヨーロッパ諸国、中国本土などである。香港にはそれらのどの国からの技術系人材にも提供できるものがたくさんある。コスモポリタン文化、経済的自由、興味深い社会的活動など、すべての国からの若者にとって魅力的である。IoT関連のスタートアップ(対中国本土を除く)とフィンテック関連のスタートアップを設立するための大きな資産、そしてより強いスタートアップエコシステム(対モスクワ、そして中国本土を除く)などもだ。

海外の技術系人材は香港の起業家活動にも良い影響を与えられる。第一に、この技術系人材の一部はスタートアップを設立したいという望みのもとに来る。そして第二に、一般的な移民は起業家になる傾向が高い。

C)エンジェル投資家のコミュニティを発達させる
シード出資のギャップを埋める最善の方法の一つは、マッチングファンド・プログラムを実行することである。というのも、シードラウンドに利用される資本を直接増やせば、資金調達に成功するスタートアップが順に増えていくからだ。マッチングファンドは公的および私的な資金源、大企業、投資家グループや協会などから資本を得るとよいだろう。

香港政府の最近の施政方針演説によれば、マッチングによる共同投資のための基金を設立するため、20億米ドルを確保するという。香港のエコシステムはシリーズAやBラウンドでもそれ以降のラウンドにおいても資金調達ギャップは存在していないため、これらのファンドは「スーパーエンジェル」企業による資金調達を含め、シードラウンドのために割り当てられたものから利益を得ることになるだろう。

マッチングファンドの管理を、それぞれ経験あるファンドマネージャーのガイダンスの下で、正式に組織化されたグループや個人的なエンジェルに引き渡すことは大きな利益につながる。例えば、コミュニティの中でエンジェル投資の専門知識が確立される。加えて、ファンド間で競争を引き起こすことで、いくらかの投資決定権を認め、資本が最も有望なスタートアップへ流れるよう導く助けにもなる。

D)サブセクターの戦略を発展させ実践する
どのステージにあるスタートアップのエコシステムであっても、技術系サブセクターの急成長の波に乗ることで、成長速度を高めることができる。シリコンバレーはそうやってソーシャルネットワークのとてつもない成長を利用し、アプリケーション、テクノロジー、サービスなどのサブエコシステムを専門化した。

サブセクターに最も重要なユニコーン企業が現れるとエコシステムには予測できないが、今後5年から10年の間に劇的な成長が見込まれているサブセクターで戦略的に取り組んでおけば、ある程度のリーダシップを確保し、強大な影響力を持つことができるだろう。

香港の強みは、長期にわたって戦略的に取り組むサブセクターとしてIoTとフィンテックを選択できることだ。確かにどちらも今後5年から10年の間の急成長が見込まれているとして、一般的に受け入れられている。

そのような戦略的取り組みはリーダーシップを手に入れるために短期的になされるものだ。HKSTPのCEOであるAllen Ma氏がこう述べている。「香港がIoTのハブへと発展するためにはこれからの2、3年がカギとなります。」他のエコシステムもすでにそういったリーダーシップのために位置付けていることを考えると、同様のことがフィンテックにも言える。これは香港の様々な革新プログラムに割り当てられた予算と努力の一部を、IoTとフィンテックに捧げることを意味するだろう。

長期的な優先事項

E)起業家活動を増やし続ける
15年前のシンガポールのように、エコシステムは起業家精神レベルのギャップを埋めることなく成功することはあり得ない。これは難しいことではあるが、献身的な努力によって10年のうちに起業家活動に重大なインパクトを与えることができる。効果的なプログラムを作成することは一般的で、それらの情報は広く利用できる。先述した通り、移民によって人材の不足を埋めることは起業家活動への積極的な影響をもたらしてくれる。

結論

香港は、パフォーマンスといくつかのインプット要素において、トップ20のエコシステムより後れを取っているものの、さらなる資産と最も資本化すべきところの戦略的強みから利益を得ている。香港の可能性は認識され始めており、最近の成長に見られる通り、トップ20のエコシステムのうち5番目の成長速度と同等である。ステークホルダーたちの努力によってカギとなる課題に対処し、世界的にリードするスタートアップとユニコーンを生み出すとともに、技術系スタートアップエコシステムの成長をさらに速めることができるのは疑いの余地がない。

【via Compass】 @startupcompass

【原文】

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スタートアップ・ベンチマークのCompassによる、香港のスタートアップ・エコシステムに関するレポート(2/3)

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この新たな Compass のレポートは、香港のエコシステムに関する深い分析を行ったグローバルレポート2015のために集められた豊富なデータを用いている。また、中小規模のエコシステムがいかに成長を加速しトップクラスのエコシステムと競合できるかに関しても提言している。 著者:JF Gauthier 氏(Compass)。 香港のスタートアップエコシステムに関するレポートをダウンロードする場合はこちら…

この新たな Compass のレポートは、香港のエコシステムに関する深い分析を行ったグローバルレポート2015のために集められた豊富なデータを用いている。また、中小規模のエコシステムがいかに成長を加速しトップクラスのエコシステムと競合できるかに関しても提言している。

著者:JF Gauthier 氏(Compass)。

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Hong Kong Annual Reports via Flickr by Dennis Wong
Hong Kong Annual Reports via Flickr by Dennis Wong

エコシステム・アセスメント

Compass のエコシステム・ライフサイクル・モデルによる分析は、香港のスタートアップエコシステムが、アクティベーションと呼ばれる発展の初期段階にあるという事実を示している。同Compass のインプット要素のギャップ分析と合わせて、それは香港のエコシステムにおける課題とフレームソリューションを理解するために用いられた中心的ストラクチャーである。

香港のエコシステム発展が初期段階にあることは、Compass の調査(図1)により明らかになった。創業者の平均年齢が低めであること、そしてより年齢層の高いテック・シリアルアントレプレナーの割合が低いことによって、ある程度は説明がつく。興味深いことに、香港の女性創業者の数は他のエコシステムに比べるとかなり少ない(図2)。

図1 設立者の平均年齢
図1:各国別のスタートアップ創業者の平均年齢
図2 女性設立者の割合
図2:各国別の女性創業者の割合

A)エコシステム・ライフサイクル・モデル(図3と図4)

スタートアップエコシステムのアクティベーション段階における典型的な特徴と課題すべてを、香港も持ち合わせている。この段階で健全なエコシステムは、「追いつくための成長」と呼ばれるプロセスを経る。特に香港では、起業家らは世界のトップエコシステムにいる国際的なステークホルダーとの交流を通して、世界レベルのノウハウに追いつき始めている。

このプロセスを通し、地元のステークホルダーは地元の資源の生産性を向上させる。最新のビジネスモデル、最新のグローバルなチャンスがどういうものか、あるいは Steve Blank 氏の顧客開発モデルといったような、技術系スタートアップ特有にしてグローバルかつ最良の方法を学べるからだ。

アクティベーションの段階は、スタートアップ、人材、資本、トップエコシステムからの投資家といった資源の吸引力が弱いことによっても特徴づけられる。経済の他の産業から引き継がれた資源を除いて、この段階のエコシステムは、地元のステークホルダーたちが一致した努力によって補うべき資源が不足していることを意味している。

同時に、資源と世界レベルのノウハウの不足は、エコシステムの発展、世界をリードするスタートアップの産出、ユニコーン、エコシステムをインテグレーション段階まで進歩させるきっかけとなる多額のイグジット案件などを押しとどめてしまう。その段階のエコシステムは、不足要素を補う助けになり成長を加速させる外的資源を引き付け始める。

図3 エコシステム・ライフサイクル・モデル
図3:エコシステム・ライフサイクル・モデル
図4 各エコシステムのライフサイクル段階
図4:各エコシステムのライフサイクル段階

要約すると、テックスタートアップは基本的に最近の現象であり、地元の若者がキャリアを築く道としてスタートアップを選ぶ動機となるような多額のイグジット案件が欠如しているため、香港は技術人材と起業家活動との差異に苦戦しているということだ。イグジット案件が少ないのは言い換えれば、活発なテック系エンジェル投資家が不足しているということでもある。

起業家達の世界レベルのノウハウが不足していることと合わせて——発展初期段階にあるエコシステムには典型的なことではあるが——様々な要素が不足していることはエコシステムのパフォーマンスが低い理由を物語っている。

B)インプット要素のギャップ分析

エコシステムのパフォーマンス
香港のエコシステム価値は28億米ドルから35億米ドル(図5)で、人口が非常に少ないにもかかわらず同等数のスタートアップ(2,000社台前半)を有するモントリオールやバンクーバー(それぞれ20位と18位にランクイン)よりも、はるか下につけている。シンガポールに比べると香港のエコシステムバリューは約4分の1と低い。

パフォーマンスの問題は他の指標からも明らかである。香港の低いイグジット評価額(合計14億米ドルから17億米ドルのイグジット評価額)、ユニコーン、そして10億米ドル以上のイグジット案件の絶対的不足、すべてのテックスタートアップのプレイグジット合計評価額は15億米ドルから18億米ドル―シンガポールの6分の1以下である。一方で、香港のスタートアップのパフォーマンス、言い換えれば長期にわたるスタートアップ評価額総和の成長推移は、ニューヨークの3分の1となっている(図6)。

図5 エコシステム・バリュー
図5:各エコシステムにおけるスタートアップの評価額総和(単位:10億ドル)
図6 スタートアップ評価額の推移
図6:スタートアップ評価額の推移

アクティベーション段階の常として、香港も小規模ながら急速に成長している。成長指数は3.0であり、トップ20のうち成長速度が5番目に速いアムステルダムのエコシステムと肩を並べるほどだ。これはVC投資が21%減少したにもかかわらず、香港のスタートアップの数とイグジットバリューが成長したことによる。

インプット要素

資金調達

香港にはシード出資のギャップがある。とりわけ活発なエンジェル投資家が不足しているためだ。「通常のシード」ラウンドに達しているスタートアップの割合に注目すればそれは明らかだ。シンガポールとニューヨークで見られる割合の半分以下である(図7)。

図7 シリコンバレーと比較した資金提供を受けるスタートアップの比率
図7:資金調達できるスタートアップの割合(シリコンバレーを100%としている)

アクティベーション段階にある他のエコシステムと異なり、香港の組織化されているベンチャー投資家はすでに世界レベルのノウハウに追いついている。これは彼らが香港をアジアの本部として用い、トップのエコシステムにあるスタートアップに活発に投資するためである。

こうした理由で、そして長い間国際的金融センターをリードしてきた立場ゆえに、香港はシリーズAとBラウンドに関して資金調達のギャップがない。この結論は、資金調達総額とシリーズBへのアトリションファネル(図8、9、10)から導き出される。同じように、レイターステージでの資金調達イベントがほとんどないため、出資のギャップによるのではなく、レイターステージにあるスタートアップへの投資に対する高いポテンシャルが欠如していることに起因する。

図8 シリーズA資金調達額(100万米ドル)
図8:シリーズAラウンド資金調達額(100万米ドル)
図9 シリーズBラウンド資金調達額(100万米ドル)
図9:シリーズBラウンド資金調達額(100万米ドル)
図10 アトリションファネル
図10:資金調達ラウンドでみる、アトリションファネル

市場リーチ

香港のアーリーステージにあるスタートアップは海外の顧客に働きかける点で、テルアビブ(74%)を除くトップ20のエコシステムすべてよりも高い割合を示し(図11)、素晴らしい結果を出している。それぞれの小さな市場と長期間保持してきた世界的な商業中心地としての地位を含む要因がグローバルな売上の発展やマーケティング専門知識、他の建設的な特質を生み出した。

図11 海外顧客の割合
図11:海外顧客の割合

しかしながら、ここ2、3年のシリーズCとDの資金調達ラウンドがほとんど行われていない事実で示される通り、香港スタートアップの起業家とチームは、グローバル市場のチャンスをつかみ発展させるために必要とされるテックスタートアップ特有のスキルとノウハウを確立しなければならない。

人材

香港は人材不足にも悩んでいる。特にスタートアップにとっては良質の技術系人材を見つけるのは困難だ。香港には良質の人材がいるが、優秀な卒業生はスタートアップに伴うハイリスクで負担の大きい仕事よりも、大企業での高収入で安定した仕事を好む傾向にある。

香港のスタートアップも、中国本土や他の場所から海外の技術系人材を呼び寄せることで、移民によって地元の人材不足を埋め合わせようと苦心している。

スタートアップの経験

香港はエコシステムの初期段階、アクティべーション段階にあるため、スタートアップの経験値が低く、シンガポールと比べるとかなり低いのも不思議ではない。例えば、香港の技術系人材にはスタートアップでの過去の経験が不足していて(図12)、創業者にはハイパーグロース・スタートアップの経験がない(図13)。スタートアップの経験は、エコシステムを成熟させ、成功するイグジット案件を蓄えさせるよう、徐々に改善していく要因である。

(※訳者注:文脈から、下の図12と図13を入れ替えました。)

図12 スタートアップの経験がある被雇用者
図12:スタートアップの経験がある被雇用者
図13 ハイパーグロース・スタートアップの経験がある設立者
図13:ハイパーグロース・スタートアップの経験がある創業者

政策

CITIE (City initiative for technology, inovation and entrepreneurship) のリサーチをもとに行われた分析で、香港は4分割のうちの第3集団―ビルダーグループに振り分けられた。ビルダーグループの都市は、活発にイノベーションとアントレプレナー湿布を自都市のポリシー発展に取り込み始めている。同グループの中で、香港は戦略政策の点でリードしているが、他の役割のほとんどは世界の他の都市やシンガポールに後れを取っている(図14)。

図14 香港CITIE vs. シンガポールCITIE
図14:香港 CITIE(濃色) vs. シンガポール CITIE(淡色)

技術系人材不足ゆえ、香港の移民政策は最優先事項となっている。ほとんどの専門家はスタートアップエコシステムの成長の妨げとなっている最たるものの一つが移民政策であると述べている。

【via Compass】 @startupcompass

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スタートアップ・ベンチマークのCompassによる、香港のスタートアップ・エコシステムに関するレポート(1/3)

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この新たな Compass のレポートは、香港のエコシステムに関する深い分析を行ったグローバルレポート2015のために集められた豊富なデータを用いている。また、中小規模のエコシステムがいかに成長を加速しトップクラスのエコシステムと競合できるかに関しても提言している。

著者:JF Gauthier 氏(Compass)。

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Hong Kong Annual Reports via Flickr by Dennis Wong
Hong Kong Annual Reports via Flickr by Dennis Wong

香港は、技術系スタートアップエコシステムが急成長しているというだけではなく、その独特の強みによって加速する膨大な可能性を秘めてもいる。世界有数の金融産業および珠江デルタのハードウェア製造集積地と隣合わせという最高のロケーションが、香港にタイムリーな戦略的機会をもたらしている。フィンテックや IoT がその技術セクターの地域成長のカギとなったのと同様である。

しかしながら、それらのチャンスをものにするために、香港はテック起業家が世界レベルのノウハウに追いつき、人材とエンジェル投資のギャップを埋める支援をするプログラムに投資する必要がある。

大企業が労働力を削減し続ける一方、スタートアップが経済成長と雇用創出における一番の推進力となっている世界で、香港は過去の業績とレガシー産業に頼ってばかりではいられない。さらにまた、ソフトウェアがバイオテクノロジー、ナノテクノロジー、生命科学、クリーンテクノロジーなどすべての革新セクターの基礎的な構成要素となっているため、テックスタートアップはただ成長セクターとして重要なだけではなく、戦略的にも欠かせないものとなっている。

Cyberport via Flickr by Jo Schmaltz
Cyberport via Flickr by Jo Schmaltz

エコシステムの相対的強さを評価し成長させることの重要性は、Michael Porter 氏の著書「国の競争優位(原題:Competitive Advantage of Nations)」の中で初めて記述された、ビジネスクラスター論により知られるようになった。特定のセクターや産業の「相互連結する企業、供給元、関連施設が地理的に集積すること」で、それぞれの企業の平均的生産性を向上させ、イノベーションを促し、新たなビジネス(スタートアップ)の創出につながる。このように大型かつバランスの良い産業クラスターは、他の場所に比べ持続可能で競争的な利点を生かし、あるいは支配的位置を獲得するかもしれない(例:シリコンバレーやハリウッド)。

香港はシリコンバレーには決してなり得ず、なろうとするべきでもない。そしてこれは他のすべてのスタートアップエコシステムにとっても同様の事実である。トップ20のエコシステムそれぞれは異なる道をたどっている。各々特有の資産を活用し、最終的に異なる強みが組み合わされ、スタートアップが混ざり合って成功を収めているのだ。

香港には、強いテックスタートアップ・エコシステムの発展を成功させる能力が完全に備わっている。香港にはエコシステムトップ10のうちのいくつかと並ぶほどの、基盤となる強みと戦略上の資産がある。事実、エコシステムトップ20の他の場所よりはるかに多くの資源を所有している。さらに、香港の成長速度はすさまじく、トップレベルのスタートアップエコシステムのうち、そのスピードと同等か勝っているのはわずか5つのみである。明らかに香港は正しい道をたどっており、鼓舞される結果となっている。

しかしながら、その強みにもかかわらず、香港のテックスタートアップエコシステムのランクはトップ20のはるか下位にあって未だ発展の初期段階であり、自立を持続できているとは言い難い。技術セクターは資源のための激しい国際競争の対象となる事実と考え合わせると、香港は他に追いつくために積極的な投資を行う必要がある。

香港にとって当面の目標は、スタートアップエコシステムのトップ10に入ることではなく、経済を多様化して長期繁栄を確実なものとし、革新を取り入れテックスタートアップのエコシステムを成長させることによって、世界をリードする都市の一つとなることである。

エコシステム概説

香港特別自治区は人口730万人で、1平方キロメートルあたり6,600人と世界で最も人口密度の高いエリアの一つである。国際ビジネスの世界では、香港はしっかりした法律環境、地理的優位性などから仕事がしやすい場所として広く知られている。ヘリテージ財団によれば、香港は21年連続(1995年から2015年)で、経済的自由において世界で1位に格付けされている

香港はいくつか重要な強みをもっているが、そのうちの2つは、フィンテックと IoT という急成長中の二大技術系サブセクターに関して、地元のスタートアップに競争的利点をもたらすものである。第一に、香港はニューヨーク、ロンドン、シンガポールと並び、世界で最も重要な国際的金融センターの一つだ。このためフィンテックスタートアップは、世界的な B2B 事業の顧客ニーズを代表する最高決定者との接触が可能になる。そして、世界的 B2B および B2C 事業の顧客ニーズを扱う新たなビジネスモデルの展開を知らせる深い産業専門知識を得ることができる。

第二に、中国の深圳市を含む珠江デルタとの地理的近さがある。グローバルに競合する(もしリードしていないなら)ハードウェアの試作・製造能力は、香港の IoT とウェアラブル関連のスタートアップに対し戦略的に成長する機会を与えてくれる。

他のスタートアップエコシステムと同じように、香港にも課題がある。世界経済フォーラムのグローバル競争力レポートの定義によれば、香港の主要な課題とは、「世界最先端の金融ハブの一つから革新的なパワーハウスへと進化する必要がある。イノベーションは経済的パフォーマンスの最も弱い側面である。

さらに、Global Entrepreneurship Development Institute(GEDI)は、2016年の世界起業家精神指数(GEI)で香港を世界第40位に格付けした。過去5年間に起業家精神を促進しサポートする努力が払われてきたにもかかわらず、2012年の第30位よりさらに下がっている。

(次回に続く)

【via Compass】 @startupcompass

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スタートアップにベンチーマーク分析を提供するCompassが、2016年のEコマース向け目標値を提言

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世界のeコマース業界は急速な成長をみせている。2015年には1,000万を超えるeコマースストアが1.8兆米ドルも売り上げた。2016年、この業界は15%ほどさらに成長すると見込まれている。 多くの人の期待に反して、このような成長をもたらしているのは世界中で誕生しているニッチなオンラインストアだ。その多くは、デジタル世界への進出を目指して事業機会を掴もうとしているオフラインの小売店である。ただ市場…

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世界のeコマース業界は急速な成長をみせている。2015年には1,000万を超えるeコマースストアが1.8兆米ドルも売り上げた。2016年、この業界は15%ほどさらに成長すると見込まれている。

多くの人の期待に反して、このような成長をもたらしているのは世界中で誕生しているニッチなオンラインストアだ。その多くは、デジタル世界への進出を目指して事業機会を掴もうとしているオフラインの小売店である。ただ市場全体は成長しているとはいえ競争は激しいため、中小プレーヤーは世界的なマーケットプレイスでの競争に向けてオンライン販売とマーケティングにおいて肝となる要素を素早く学ばなければならない。

Compass は2015年6月、最新の「Analyst as a Service」アプリケーションを試していただけるよう複数のeコマース企業向けのゲートウェイを開設した。Compass を利用している企業は1,400社を超えており、これらの企業の2015年における売上合計は25億米ドルだった。

以下、これらの企業がいかにして最も重要な計数実績を残したかについて概観する。 平均的な企業との比較を示すことにより、貴社のビジネスにとって重要な洞察を提供し、2016年が素晴らしい年になるよう計画立案に役立てていただければ幸いである。

※ 貴社のビジネスにカスタマイズされたベンチマークは、Compass.coのダッシュボードで利用できる。全てのベンチマークは販売商品、顧客セグメント、価格等に基づいて決められる。

1. Google Adwords は、コンバージョン率の最も高い顧客獲得チャネルだった

2015年、Google Adwords と Facebook Ads が最もよく利用された顧客獲得チャネルだった。これらの費用は高くつくものの、Google Adwordsと Facebook Adsのコンバージョン率は最も高かった。Google Adwords の方が高く、平均コンバージョン率は1.75%、続くFacebookは1.42%だった。

オンライン事業をスケールさせるのに有料チャネルは最も簡単で信頼できる手段である。ここでの課題はコンバージョン率を高く保つ一方で、獲得一人あたりの費用を低くすることである。そのため、チャネルの専門家を採用することのほか、ヘッドラインや広告イメージからランディングページ、購買フローに至るまであらゆるテストを行うことの重要性を過小評価してはいけない。

新しい手段でしかも実績をあげられるため、最近の獲得チャネルで実験してみたいと思われるかもしれない。その良い例は Instagram や Twitter Ads だ。

2. 平均コンバージョン率は1.4%、最上位企業は3%

2015年におけるウェブサイト訪問から購入取引までの全体的なコンバージョン率は1.4%であったが、最上位の企業は3%であった。購買行動は年間での時期が重要な要素となる(下のグラフを参照)。当然ながらクリスマスのある12月はeコマースにとって最もコンバージョン率が高い時期である。3月と7月は低いが、このような季節変動は業界によって異なることに留意してほしい。

利益を増やすことに関しては、コンバージョン率とは低い場所に実っている果実のようなものだ。収益に対してダイレクトな影響を及ぼすほか、他のマーケティング活動と比較して最適化のための費用が低い。多くのオンライン企業はコンバージョン率最適化の機会を生かしていない。なぜならコンバージョン率の30~100%の改善は達成が容易な場合が多いからだ。この重要な計数の改善方法については、「eコマース企業向けコンバージョン率最適化のROI」についての Compass 記事を参照してほしい。

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3. 平均直帰率は57%、最上位企業は35%

直帰率とは、あるページを訪問したのにそのウェブサイト上で何の行動も起こさず去ってしまったユーザの割合のことである。2015年におけるeコマース企業の平均的な直帰率は57%であった。一方、優良企業は35%だった。

一般的に、高い直帰率はユーザの望むものがなかったことを意味している。ユーザが見つけようとしているものとは違うものを店が提供していたか、そのサイトで好ましくない体験をしたときに起こり得る。直帰率はコンバージョン率にダイレクトに反映するので、ひいては売上にも直接的な影響をもたらす。

当社は、御社で最も直帰率が高いページはどこにあるかを特定し、ユーザが逃げてしまう理由を理解するための品質テストとして Google Analytics などの分析ツールを使用するよう推奨している。様々なデザインやテキスト要素を使って問題のあるページにA/Bテストを試行したらどうだろうか。ユーザが期待しているものに対してどのように対処すればよいかがわかるだろう。

4. 平均的な月間再購買率は9%、最上位企業は16%

間違いなく、顧客がどれほど満足しているかを評価するための最も重要な計数である月間再購買率は2015年におけるオンライン小売店について言えば相対的に高い9%ほどであった。上位企業の再購買率は16%であった。

再購買率とは、どれほどの購入取引が既存顧客からなされたかを示している。新規顧客を獲得するためにはかなりの費用を必要とするケースがあるため、一人一人の顧客からどれほどの売上をあげられるかで収益性は大きく左右される。

オンライン小売店は最初の購買がなされた後、その顧客に再度購入してもらうためにあらゆる働きかけをするのが重要である。その例として加入者向けのオプション提供などが挙げられる。再購買率を高める方法についてもっと知りたい場合は、「いかにして収益性の高いビジネスを構築するか—顧客の生涯価値(LTV)に関する詳しい説明」という Compass 記事を参照してほしい。

2015年、御社の事業はこれまでに述べた計数で平均を上回っていただろうか?どの分野の業績が低調だっただろうか?最高の機会が期待できる分野で改善を行い2016年をスタートさせよう。貴社の目標はベンチマークとなるべきものであり、前月よりも優れた実績を常にあげられるような取り組みをすべきである。

【via Compass】 @startupcompass

【原文】

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ウォータールー~カナダの小都市が世界的なスタートアップハブになりえた理由(3/3)

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本レポートはCompass(元 Startup Genome)の最新レポートであり、エコシステム・ライフサイクルモデルを最初に紹介し、世界中のスタートアップとエコシステムのリーダーが活用できる 教訓を提供している。2015年グローバルレポートのために編纂された膨大なデータを用いてエコシステムを深く解析した本レポートは、中小のエコシステム がトップクラスのそれらと対等に戦うための指針を提供している。…

本レポートはCompass(元 Startup Genome)の最新レポートであり、エコシステム・ライフサイクルモデルを最初に紹介し、世界中のスタートアップとエコシステムのリーダーが活用できる 教訓を提供している。2015年グローバルレポートのために編纂された膨大なデータを用いてエコシステムを深く解析した本レポートは、中小のエコシステム がトップクラスのそれらと対等に戦うための指針を提供している。

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中心部の King Street を南側へ臨む。(Image Credit: Wikipedia

資金調達

カナダ、および一般的に他のパフォーマンスの低いエコシステムが大きなイグジットを生み出せない第二の要因は、地元のファンディングの差である。

最も重要なこととして、プライベート投資家からシードファンディングを調達できているのは、きわめて少数のスタートアップに過ぎない。図7では、シリコンバレーを100%としたときの、各エコシステムがシードファンディングを調達できている割合である。アメリカの上位のエコシステムはシリコンバレーに近い数値である。しかしウォータールー、トロント、そしてバンクーバーははるかに低い。全体的に見てどのラウンドでも、資金調達できているスタートアップは、シリコンバレーと比較すると、最高でも1/3となっている。

各ラウンドでの解約(契約解除)率は、カナダのトップのエコシステムのほうがシリコンバレーより高いこともあり、シードファンディングの差が、シリーズAおよびシリーズBのファンディングを調達できるカナダのスタートアップが極めて少ないことに結びついている。1/5から1/9という数値の低さである。

ニューヨーク、ロサンゼルスおよびボストンの平均と比較すると、カナダやウォータールーのスタートアップで、各ラウンドで資金調達できているのは、1/3から1/5となっている。オースチンのパフォーマンスはニューヨーク、ロサンゼルスおよびボストンの平均に近く、それが意味するのは、シードファンディングが行われる率が低いのは、小さいエコシステムの宿命というわけではないということだ。

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図7 資金調達できるスタートアップの割合(シリコンバレー比)

グラフ左から、シードラウンド、シリーズAラウンド、シリーズBラウンド。
グラフのバーは、左から順にトロント、バンクーバ、ウォータールー、オースティン、ニューヨーク市・ロサンゼルス・ボストンの平均。

これらの調査結果は、専門家の発言(およびデータ)であるところの、

  • A)ウォータールー発のアイデアは他のエコシステムより質が高い、
  • B)ウォータールーの技術人材の質は北米一である、

……とはまったく異なっている。ウォータールーは優れたビジネスアイデアと優秀な技術人材を生み出しながら、シードやシリーズAファンディングを受けられるスタートアップは少ないのである。

これらすべてが、重要なファンディングの差に行き当たる。それをさらに補強する調査結果として、ファンディング額の中間値および平均値を分析したものを図8および図9に示す。ウォータールーやカナダのスタートアッがシードおよびシリーズAラウンドで調達できている額は、アメリカのスタートアップより小さい。シードラウンドにおいて、ウォータールーはアメリカトップ4のエコシステムと比較して、平均で25%、中間値で76%も低い額しか調達できていない。

ここからわかるのは、シードラウンドでの国内でのファンディングにおける深刻なギャップである。シリーズAラウンドでの差分はそれほど重要ではなく、ウォータールーで見ると平均で33%低く、中間値は同じになっている。しかし、回帰分析からわかることは、ウォータールーでのスタートアップは、シリーズAラウンドで国内投資家だけに頼る場合、ひとつでも海外投資家を含めている場合と比較して250万米ドル少ない額しか調達できていないということである。これがシリーズAにおける国内ファンディングの差である。

しかしここで注意しておきたいのは、カナダのエコシステムにおけるソフトウェアエンジニアの給料が低く、アメリカの半分以下ということである。これはシリーズAの調達額の低さを補うことが可能で、シードラウンドでの額の差も、いくらかは生めることができる。これはアメリカ以外のエコシステムでしばしば当てはまることである。

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図8 シードラウンド 資金調達額(米ドル)

 

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図9 シリーズAラウンド 資金調達額(米ドル)

ウォータールーのような中小規模のエコシステムにとっての鍵は、海外顧客とグローバル市場のニーズを見据えた顧客獲得活動であり、それは成長のためのチームを、選択した海外市場で立ち上げることで可能になる。アメリカ市場をターゲットにするのであれば、経験豊かなアメリカ人セールス、マーケティング人員を活用し、彼らの知り合いリスト、持っている交流関係や、身に着けている仕事のプロセス、カルチャーを持ち込んでもらうのだ。これらの行動は、スタートアップ企業自らが行えるものである。

その他のアクションは、エコシステムリーダー、政策立案者その他のステークホルダーの同意や、調整済みの活動が必要になる。彼らが一体になり、国際的なコミュニティを活用し、スタートアップの成長にフォーカスした、アメリカベースの経験豊かなハブやプログラムにファンディングして、スタートアップが「世界を目指す」のをサポートするのである。

他のエコシステムで成功した政策に倣い、政策立案者はシードおよびシリーズAファンディングにおける差分の解決をサポートできるはずである。たとえばマッチングファンド(一定割合での資金援助)や、特定のラウンドに特化した税額控除プログラム、また、リミテッドパートナーシップとして、エコシステム内にオフィスを構えようとしている国内ファンドおよび海外ファンドに投資をするようなことが考えられる。

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ウォータールー大学(Image credit: University of Waterloo)

別の面からの解決策として、近傍の都市と融合し、より大きく世界的に競争力のあるスタートアップ・エコシステムを形成することである。たとえばサンフランシスコとサンノゼ、ロンドンとケンブリッジがあげられ、いずれも似たような地理的距離があるが、電車やバスといった共通の公共交通機関を用いて、そのハンデを緩和するのに成功している。

同様に重要なこととして、ステークホルダーは2都市に対する活動を完全に統合しなければならず、さらにその後は、コミュニケーションも同様である。これにより、世界のスタートアップコミュニティは、2都市を真に統合されたエコシステムと認識することになる。例えば、トロントとウォータールーが統合されたエコシステムとなれば、国内外の起業家や投資家にはより魅力的に映り、規模やファンディングのハンデを解決する助けとなるだろう。

ウォータールーについて具体的に言えば、エコシステムとスタートアップの成長を加速させるために、ステークホルダーが注力すべきことは以下である。

  1. アメリカ市場およびグローバル展開にあわせてゆき、問題を解決する
  2. ファンディングのギャップを、特にシード段階において、そしてシリーズAにおいても縮めていく
  3. トロントとウォータールーを統合し、より大きく、世界的にも魅力あるスタートアップ・エコシステムにする

ウォータールーのトップクラスの技術人材および、革新的技術やスタートアップを生み出す飛びぬけた生産性を加えていけば、これらの問題を解決することで、高額のイグジットやユニコーンが生まれる可能性があり、結果として世界中の起業家、資金、その他のリソースをひきつけ、エコシステムをより速く、ノンオーガニックの成長率で伸ばすことが可能になる。より重要なことに、その結果として、同地域を、経済成長と雇用創出のより強力な動力源とすることができるのである。

【via Compass】 @startupcompass

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ウォータールー~カナダの小都市が世界的なスタートアップハブになりえた理由(2/3)

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本レポートはCompass(元 Startup Genome)の最新レポートであり、エコシステム・ライフサイクルモデルを最初に紹介し、世界中のスタートアップとエコシステムのリーダーが活用できる 教訓を提供している。2015年グローバルレポートのために編纂された膨大なデータを用いてエコシステムを深く解析した本レポートは、中小のエコシステム がトップクラスのそれらと対等に戦うための指針を提供している。…

本レポートはCompass(元 Startup Genome)の最新レポートであり、エコシステム・ライフサイクルモデルを最初に紹介し、世界中のスタートアップとエコシステムのリーダーが活用できる 教訓を提供している。2015年グローバルレポートのために編纂された膨大なデータを用いてエコシステムを深く解析した本レポートは、中小のエコシステム がトップクラスのそれらと対等に戦うための指針を提供している。

前回からの続き>

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中心部の King Street を南側へ臨む。(Image Credit: Wikipedia

スタートアップパフォーマンス

ウォータールーおよびその他のカナダのエコシステムは、エコシステムの問題と、結果として得られる指針を検証するための良い事例である。

図2と3において、評価額の成長率でみたカナダのスタートアップのパフォーマンスが、トップクラスのエコシステムと比較して、はるかに~63%も低いことを明らかにしている。この評価額成長率の低さが、大きなイグジットやユニコーンの少なさ、または存在しないことの一因となっている。この問題は、パフォーマンスの低いエコシステムにおしなべて共通のものである。例えばオースチンは2015年のグローバルランキングで14位であるが、スタートアップ評価額成長率ではシリコンバレーより62%低くなっている。

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図2 ファンディング評価額の推移(シリーズA以降)
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図3 イグジット評価額の推移(シリーズA以降)

ウォータールーやその他のカナダのエコシステムで多額のイグジットやユニコーンが現れないことの原因となっている2つの重要な要素があり、それはパフォーマンスの上がらないエコシステムに共通の問題でもある。

グローバルマーケットへのリーチ

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ウォータールー大学(Image credit: University of Waterloo)

第一に、売り上げの成長率がより低いために、スタートアップ評価額の成長率は低くなる。その根本原因はグローバルマーケットへのリーチの差であり、(Steve Blank 氏が定義するところの)顧客開拓と増加に付随してくるものである。

スタートアップの最終目標は、急速に成長して市場で支配的ポジションを追及することであるというのは、多くが認めるところであり、投資家は特にそれを強調する。市場を独占していない場合、または製品やサービスが強いネットワーク外部性を有し、したがって「独り勝ち」となりやすい性質である場合はなおさらである。この目標を達成するためには、スタートアップは世界中から注目されるきっかけを作らねばならず、実際には、アメリカ市場を最重要視することでそれを達成できることが最も多い。Reid Hoffman氏が(Wiredに)記しているように、シリコンバレーでの成功の秘訣は、スタートアップでなく、スケールアップなのである。

アメリカ市場は100マイル以下の距離にあるのだから、ウォータールーのスタートアップはそのチャンスを最大限活用し、アメリカ市場に集中し、地理的に離れているその他のエコシステムより早く参入することを予想する人もいるだろう。しかし、ウォータールーのスタートアップの顧客は、平均すると海外顧客が半分しかいない。それに対して、アメリカ以外のエコシステムでありながらより高いパフォーマンスを発揮しているテルアビブは、74%である。テルアビブのスタートアップは、当初からグローバルを目指すのである。

図4はこの問題をより明確にあらわしており、グローバル展開に注力するスタートアップ(半数以上の顧客が海外顧客であることが定義である)の割合は、テルアビブがウォータールーを14%上回っており、カナダのトップ3エコシステム(モントリオール、トロント、バンクーバー)よりも10%高い数値である。

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図4 グローバル展開に注力するスタートアップ


グローバル展開への注力度合いは、スタートアップの売上の成長に大きな影響を及ぼす。図5は、グローバルに注力する全世界のB2Bスタートアップが、他より2.1倍の速さで成長していることを示している。

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図5 B2Bスタートアップ(アメリカ、カナダを除く)の、海外顧客割合で分類したときの売上成長

図6は、海外顧客比率と売上の関係が、カナダのスタートアップでも同様であることを示している。具体的に言えば、北米で最も経済的に反映している都市のひとつであるトロントを優先していると、スタートアップのパフォーマンスは低くなるということだ。

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図6 カナダのB2Bスタートアップの、海外顧客割合で分類したときの売上成長

しかし、興味深いことに、グローバル展開に注力する(アメリカとカナダを除く)世界中のスタートアップが、非グローバル展開のそれらより110%速く成長しているのに対して、カナダではその差が60%でしかない。言い換えれば、カナダのスタートアップは、地元よりグローバル顧客に注力することを選んだ見返りで得られる収穫が、他国のスタートアップより少ないわけだ。

なぜこのようなことが起きるのか?

世界中のスタートアップおよび専門家へのインタビューからわかったことは、カナダのスタートアップがアメリカ市場に攻め入るときに、他と異なる、効率の低い方法をとっているということである。アメリカと同じ言語で、アメリカの大都市に近いこともあり、また、かかるコストの低さも影響して、カナダのスタートアップはたいてい、カナダからアメリカ市場に参入しようとする。彼らはセールス、マーケティング、ビジネスの基盤をカナダの本社におき、アメリカ人やアメリカ在住のカナダ人を雇うことはあっても、チームはカナダ人のエグゼクティブによりマネージされている。

カナダのスタートアップは、テルアビブや他のパフォーマンスが高いエコシステムから、セールス、マーケティングチームを直接アメリカに設け、経験豊富なアメリカ人エグゼクティブとアメリカ人従業員を中心に据え、ビジネスカルチャーやプロセス知識、顧客やパートナーとの価値ある関係性を持ち込んでもらうやり方を学ぶべきだろう。アメリカでのビジネスのコストは高くなるが、得られる純利益は結果として、カナダのスタートアップが成しえなかった、より大きく迅速なイグジットを可能にし、エコシステムの成長を加速することができる。

(続編はこちら

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ウォータールー~カナダの小都市が世界的なスタートアップハブになりえた理由(1/3)

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本レポートはCompass(元 Startup Genome)の最新レポートであり、エコシステム・ライフサイクルモデルを最初に紹介し、世界中のスタートアップとエコシステムのリーダーが活用できる教訓を提供している。2015年グローバルレポートのために編纂された膨大なデータを用いてエコシステムを深く解析した本レポートは、中小のエコシステムがトップクラスのそれらと対等に戦うための指針を提供している。 C…

本レポートはCompass(元 Startup Genome)の最新レポートであり、エコシステム・ライフサイクルモデルを最初に紹介し、世界中のスタートアップとエコシステムのリーダーが活用できる教訓を提供している。2015年グローバルレポートのために編纂された膨大なデータを用いてエコシステムを深く解析した本レポートは、中小のエコシステムがトップクラスのそれらと対等に戦うための指針を提供している。

Compass.coサイトで貴社の成長性の指標を即座に知ることが可能である。こちらのリンクを参照されたい。

レポート全文はこちらのリンクからダウンロード可能である。

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中心部の King Street を南側へ臨む。(Image Credit: Wikipedia

スタートアップ革命は世界的に起きている現象である。スタートアップが世界中で雇用創出と経済成長を加速させる主役となっているのに対して、大企業は資産に対する利益の低下を補うために、雇用を減らし続けている。

しかし、多くの都市はスタートアップ・エコシステムの成功の仲間入りをすることに難儀しており、世界から起業家や投資家を呼び込む競争で多くの困難を強いられている。彼らはシリコンバレーのような、トップクラスのスタートアップ・エコシステムの成功談の多さに惹かれて集まるものである。

幸いなことに、いくつかの中規模の都市は、「殻を打ち破る」ことができ、先頭に踊り出ている。人口200~300万規模であるテルアビブのスタートアップ・エコシステムは、世界5位にランクインしており、オースチンおよびバンクーバーも、トップ20の一員である。どれも目覚しい功績といえる。

<関連記事>

現実世界のダビデとゴリアテといえるのがカナダのウォータールー地域であり、人口50万人に過ぎないのに、2015年のグローバルスタートアップ・エコシステムランキングで25位にランキングされている。ウォータールーのスタートアップ密度はシリコンバレーに次ぐ2位であり、3位以下を優に50%上回っている。このような小規模の都市が、リオ、アトランタ、ローマといった10~30倍の規模の都市と争えるのだろうか? 革新的な技術およびスタートアップを生み出せる生産性や効率はどこから来るのだろうか?

ここでウォータールーから得られる教訓は、スタートアップ・エコシステムと経済の成長を目指す世界中のステークホルダー、つまり投資家、ビジネスリーダーから、政策立案者、経済学者の誰にも意義のあるものである。

ウォータールーのトップクラスのタレント、コミュニティの深い理解、比肩しがたいステークホルダー間の協業やコーディネーションが、成功の要因となっている。ウォータールーが、以下に説明するような、スタートアップが「グローバルを目指し」成長していくため、そしてファンディングの差を埋めるための(パフォーマンスが低いエコシステムに共通の)課題を解決することができるなら、世界に通用するサクセスストーリーとなるだろう。

技術人材

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ウォータールー大学(Image credit: University of Waterloo)

ウォータールー地域は、トップクラスの才能の技術者を輩出することで世界中で評価されてきた。世界一だという人も多い。それにより、都市の規模に不釣合いなほどに多数の革新的な技術やスタートアップが生まれ、世界でも最大規模の企業、名前を挙げるならGoogleなどの研究開発センターが設立されていった。このような実績のもとになっているのは、同地域が高レベルの教育、特にウォータールー大学などを設立してきたことである。

シリコンバレーの有名なスタートアップアクセラレーター、Y Combinator の共同創業者である Paul Graham 氏は、2013年に次のように述べている。

ウォータールーでは何かが起きています。応募してくる学生の中で、他のどの大学よりも、ウォータールー大学の学生は優秀なのです。

同大学の協業プログラムはそのひとつの要因であり、学生は最長2年間の就業経験をつんだ後に卒業していく。強い起業家精神を持つ同大学の卒業生は、シリコンバレーで雇用される数が、スタンフォード大学に次ぐ2位である。

同地区のエコシステムの高いパフォーマンスはまた、エコシステムのコーディネーターとしてのイノベーションセンター、コミュニテック(Communitech)によるところも大きい。これはアクセラレータープログラムや、スタートアップその他の組織がインキュベーターを見つけるためのスペースを提供したり、非公式、公式のメンタープログラムの提供も行っている。

エコシステムのパフォーマンス

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ウォータールー市役所(Image Credit: Wikipedia

ウォータールー地域は、誇るべき多くの偉業を成し遂げてきたが、パフォーマンス指標は、エコシステム価値、アウトプット(スタートアップの数)の両者において世界トップ20から転落している。また、成長指標2.4というのも、世界平均の2.35よりわずかに高いだけである(世界最速で成長するエコシステム、ベルリンを10としたスケール)。

これらの数値が重要なのはなぜか? グローバル・スタートアップ・エコシステムランキングのための調査でわかったことは、スタートアップ・エコシステムについていえば、大きいことは良いことだ、ということである。より多くのスタートアップ、リソース、そして経験が、スタートアップ・パフォーマンスを高め、イグジットをより大きくしている。結果として投資家、起業家、そしてタレントがエコシステムにひきつけられてゆき、成長を加速するという、成功の好循環を引き起こすのである。

当然、中小規模のエコシステムのリーダーや政策立案者は「エコシステムが好循環を生み出す最初のきっかけはどうすればできるでしょう? 我々はどうしたら成長を加速できるでしょう?」と聞いてくる。

その答は、エコシステムの各段階においてすべて異なっており、Compass の 3年にわたる調査により、エコシステム・ライフサイクルモデルを構築し、課題と解決策を説明することが可能になった。

エコシステム・ライフサイクル

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図1: エコシステム・ライフサイクル

スタートアップ・エコシステムは当初、アクティベーションの段階において、「追いつくための成長」により形成されていく。オーガニック(自社内の)リソースの生産性は、世界最良のエコシステムのステークホルダーとの交流により、ノウハウを持つタレントをひきつけることで成長していく。この段階においては、地元のステークホルダーは、世界的な成功例から加速度的に学んでいく。テクノロジー・スタートアップで具体的に言えば、シリコンバレーのスタイルのベンチャー投資や、Steve Blank 氏のカスタマー開拓手法である。

エコシステムが、最良の成功例を通してオーガニックリソースを最大限活用するようになると、マイケル・ポーターの言うところの生産性のフロンティアに到達したことになる。世界でもここまで到達できるスタートアップ・エコシステムは多くない。それができたエコシステムは、その州、地域、国の他のエコシステムより多くの、高額のイグジットを生み出すようになる。

このようなイグジットは、エコシステムがインテグレーションの段階に移行するきっかけとなる。ここからは、エコシステムの成長はノンオーガニックの成長率まで加速し、外部リソース(起業家、タレント、投資家)がその地域中、国中から流入し始める。もし国際的にも魅力的なイグジットを生み出したり、ユニコーンが生まれれば、流入は世界中からとなる。スタートアップリソースにとっての、訪れるべき名所となるのである。

時とともに、エコシステムはそのオーガニックリソースだけで可能なサイズより大きく成長していく。エコシステムはマチュリティ(成熟)段階に入り、その成長率は、分母が大きくなり続けるために、低下していくことが避けられない。

このモデルは、エコシステムのリーダーや政策担当者が、モデル各段階においてその成長をさらに伸ばすための行動のためのガイドとなる。アクティベーション段階のエコシステムに対しては、近日発行されるCompassの香港スタートアップ・エコシステムレポートにおいて、エコシステムの発展と成長のための指針を提供する予定である。

エコシステム・ライフサイクルモデルによれば、ウォータールーの成長&魅力指標は、同地域がマチュリティ段階に入ったことを示唆している。より具体的に言えば、成長率と「域内&国内」魅力の分野において、マチュリティの領域の上端部分に位置している。

インテグレーション、マチュリティの両段階では、域内&国内の魅力の分野におけるエコシステムの主要な目標は、非常に大きい、国際的にも魅力的なイグジットを生み出し、スタートアップリソースにとって国際的な名所となるきっかけを作ることでなければならない。この目的を達成するために解決すべき重要な点は、スタートアップパフォーマンスである。

(続編はこちら

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2015年の世界スタートアップ・エコシステム・ランキングが発表

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本レポートのフルバージョンは、こちらからダウンロード。 世界スタートアップ・エコシステム・ランキングへようこそ。前回のスタートアップ・エコシステム・レポート発表となった2012年11月から約3年の月日が流れたが、それ以降もスタートアップ・セクターは良いペースで成長を続けている。 2015年のランキングのポイントは、内容を刷新したコンポーネント・インデックスで、世界中の20のスタートアップ・エコシス…

本レポートのフルバージョンは、こちらからダウンロード。

世界スタートアップ・エコシステム・ランキングへようこそ。前回のスタートアップ・エコシステム・レポート発表となった2012年11月から約3年の月日が流れたが、それ以降もスタートアップ・セクターは良いペースで成長を続けている。

2015年のランキングのポイントは、内容を刷新したコンポーネント・インデックスで、世界中の20のスタートアップ・エコシステムの情報をランキングしている。このインデックスは、パフォーマンス、ファンディング (資金調達)、タレント(人材)、マーケットリーチ、スタートアップ・エクスペリエンスの5つの主要なコン ポーネントでランキングしたものだ。

1. スタートアップ・エコシステムにおける、社会経済影響度の上昇

20年前、ほとんどのテック・スタートアップはシリコンバレーやボストンのようなスタートアップ・エコシステムで設立された。今日、テクノロジー起業は世界的な現象であり、シリコンバレーのようなスタートアップ・エ コシステムも世界中で急速に成長を見せている。互いにつながりあった、世界的なスタートアップ・コミュニ ティが形成されつつあり、この新しい経済の世界をナビゲートしてくれる術を誰も提供してくれない中で、我々は頼りになるようなデータや数字を集めた。

2011年9月、起業が活発化し、それが生じる背景についてブログを書いた。現在はその真っ只中にあって、起業家がスタートアップをスケールさせ、これまでにないスピードでユニコーンへと成長させるための、さまざまなツール、リソース、市場条件が整い、またとないタイミングと言ってよいだろう。

世界中のスタートアップ・エコシステムの隆盛は、現在起きている社会経済構造の変換の一つとして見られるべきだ。情報時代のビジネスは経済成長を支配する源となり、これまでの時代の多くの工業やサービスビジネスを自動化したり、別のものに取って代わったりしている。この構造変化の部分々々を別の表現で説明する人も少な くない。Marc Andreessen は Wall Street Journal のエッセイの中で「ソフトウェアが世界を飲み込む理由」と書き、Deloitte の Center for the Edge が半年に一度発表するレポート「Shift Index」、Richard Florida の Creative Class Group は「クリエイティブ・クラスの隆盛」など、このテーマに関して多くの書籍を出版している。

テクノロジー・スタートアップが情報経済で重要な役割を占めることを考えれば、健全なスタートアップ・エコシステムこそが、将来において重要性を増してくる。このレポートでは、起業家、投資家、立案者に対しては、我々が収集分析したデータ無しには回答が難しい重要な問題に答え、一般の人々に対しては、スタートアップ・エコシステムにおける社会経済の重要性が増していることを気づいてもらい、世界中のスタートアップ・エコシステムの発展を加速させたいと考えている。

このレポートの主な目標の一つは、さまざまな業界関係者が、以下のような質問に答えやすくすることだ。

a) 起業家に対して

「新しい会社を始めるとしたら、どこがよいか?」
「準備はできているが、私のスタートアップの2つ目のオフィスはどこに開設すればよいか?」

b) 投資家に対して

「ただ身近にあるというだけで、自分の地元のスタートアップ・エコシステムにのみ投資するのではなく、世界中に投資機会を見出すにはどうすればよいか?」

「新興のスタートアップ・エコシステムに関する情報が無いため、新しい投資機会を見出す上で、どの市場にフォーカスすべきかをどう判断すべきか。」

c) 立案者に対して

「自分の地域のスタートアップ・エコシステムの成長を最大化する上で、どのイニシアティブを優先すべきか?」
「このようなイニシアティブの進展をどのように計測すべきか?」

d) 他のすべての業界関係者に対して

「私のいるエコシステムで、全般的な活気や起業家精神を高めるための最良の方法は何か?」

2. 世界スタートアップ・エコシステム・ランキング2015

難しい話は抜きにして、ランキングと分析をご紹介しよう。

重要な事項として、このインデックスには中国、台湾、日本、韓国のスタートアップ・エコシステムは含まれていない。言語障壁の問題から、我々の力ではランキングに必要な情報を十分には集められなかったからだ。今年後半のランキングには、これらの国々のエコシステムの情報も含めたいと考えている。

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3. 5つの重要な発見

1. エコシステムは互いにつながりあい、スタートアップ・チームはより国際的になっている。

a) スタートアップに対する投資において、地元からではなく世界から出資がなされる割合

トップ20のエコシステムのすべての資金調達のうち37%は、少なくとも一つ以上の他のエコシステムからの投資家を受け入れている。北米においては41%。

すべての投資ラウンドのうち27%は、少なくとも一つ以上の投資家を海外から受け入れている。(北米20%、ヨーロッパ38%、アジア太平洋地域29%)

b) 世界に散らばるスタートアップ・チーム

トップ20のエコシステムのうち、スタートアップの拠点を置くエコシステム以外に設置されたセカンド・オフィスの数(別の場所で設立され、移転してきたスタートアップ)は、2012〜2014年で8.4倍に増加している。

c) 国際チーム

スタートアップにおける外国人雇用者の数は、トップ20のエコシステムで平均29%(シリコンバレーでは45%)。

2. グジット・バリュー

トップ20のエコシステムでのイグジット・グロースの合計数は、2012〜2014年で年間78%増加している(40% は IPO、60% は買収)。

イグジット・バリューの成長率を見てみると、シリコンバレーではこの2年間で47%上昇しており、他のエコシステムではこの値はさらに著しいスピードで上昇している。

ロンドンは同じ期間で成長率が4倍、ベルリンは20倍に成長している(これは主に、Rocket Internet と Zalando による2つのIPOの影響を受けたもの)。

<イグジット・グロース一覧表>

平均より2倍以上の成長を見せたエコシステム
Berlin 20倍
Bangalore 5倍
Amsterdam 4倍
London 3倍
Tel Aviv 2倍
平均より1.5倍以上の成長を見せたエコシステム
Seattle 1.5倍
Austin 1.5倍
Boston 1.5倍
平均的な成長を見せたエコシステム
Singapore 1倍
Vancouver 1倍
比較的穏やかな成長を見せたエコシステム
Los Angeles 0.5倍
Silicon Valley 0.5倍
New York City 0.5倍
停滞気味のエコシステム
Paris 0倍
Moscow 0倍
Chicago 0倍
Sydney 0倍
Toronto 0倍

ヨーロッパ 対 アメリカ

アメリカの上位エコシステムよりも、ヨーロッパの上位エコシステムの方がイグジット・バリューの成長スピードは著しく速い。2012〜2014年で比べてみると、アメリカの1.5倍に対して、ヨーロッパの4.1倍だ。2014年で見てみると、イグジットの規模では、ヨーロッパよりもアメリカは平均34%大きい値となっている。

分析

他のエコシステムが短期的には速いペースで成長しながらも、従来からある8対2の力関係の均衡に向けた収束への期待から、今後数年間にわたり、シリコンバレーは現在の位置に君臨を続けると考えられる。つまり、シリコンバレーは全体のイグジットの30〜50%をつかみ、次なる3つのスタートアップ・エコシステムが全体の30〜50%をつかみ、さらに、次なる16のスタートアップ・エコシステムが残りの20%を分け合う、という図式だ。

3. スタートアップ・エコシステムにおける、VC投資のトレンド

トップ20のエコシステムにおけるVC投資は、2013〜2014年にかけて、全体で95%上昇している。

a) VC の成長

VC 投資の際立ったエコシステムは、ベルリンの12倍、インド・バンガロールの4倍、アメリカ・ボストンの3.7倍、オランダ・アムステルダムの2倍、アメリカ・シアトルの2倍だった。一方、シリコンバレーは2013〜2014年にかけて93%成長と概ね倍の成長を遂げており、CrunchBase によれば、シリコンバレーにおける VC の増加の多くは、アーリーステージよりも、レイトステージのシリーズ B からシリーズ C+ にかけてのものである。この傾向は比較的鈍化している。

b) シードラウンドの増加

この2年間で、シードラウンドの数において、最も年間成長の速かったスタートアップ・エコシステムは、インド・バンガロールの53%、オーストラリア・シドニーの33%、アメリカ・オースティンの30%だった。アメリカ・ボストンのほか、カナダのバンクーバーやモントリオールも、わずかながら値を伸ばしている。

4. 2012年からのランキング変化:勝者と敗者

大きな跳躍を見せたスタートアップ・エコシステムは、ニューヨーク、オースティン、バンガロール、シンガポール、シカゴだった。ニューヨーク市は、常連組の中でも著しい成長を見せ、5位から2位の座へと上昇。テキサスのオースティンは、3年前のランク外の状態から14位の座へと駆け上がった。バンガロールは19位から15位、シンガポールは17位から10位、ベルリンは15位から9位、シカゴは10位から7位へランクアップした。

大きなランク下降を見せたエコシステムは、バンクーバー、トロント、シドニー、シアトルだ。バンクーバーはトップ10位から脱落し、9位から18位へ。トロントは8位から17位へ、シドニーは12位から16位、シアトルは4位から8位にランクダウンした。これらのエコシステムは過去3年間成長はしているが、他のエコシステムほどスピードが速くないため、取り残されてしまう危険をはらんでいる。

2012年以降、完全にランク外に落ちてしまったエコシステムは、チリのサンチアゴ、オーストラリアのメルボルン、カナダのウォータールーだ。サンチアゴは当初は著しい成長を見せたが、すぐにそのピークを見せ始め、メルボルンやウォータールーの成長はそれぞれ、シドニーやトロントといった近接する大きなスタートアップ・エコシステムの影響を被った。性格の似通った小規模なエコシステムはしばしば、近接する大きなエコシステムに人材や資本が飲み込まれる傾向にあるため、成長を続ける上で難しいことがある。

5. スタートアップ創業者における、男女の共同参画

すべてのスタートアップ・エコシステムにおいて、男女の共同参画は不足傾向にある。心理学者や社会学者が 50/50 こそ求めるべきもの、として議論を続ける一方で、男性と女性の創業者割合が同じになりつつあるエコシステムは存在しない(フロリダ州立大学の心理学教授 Roy Baumeister 氏による、この記事を参照のこと)。

概して言えば、女性起業家のトレンドは上昇傾向にある。世界のスタートアップ・エコシステムにおける女性起業家の数は、この3年間で80%増加した。トップ20のエコシステムのスタートアップを見てみると、2012年にはスタートアップの10%に女性起業家がいたが、現在では世界平均で18%に伸びている。女性創業者が30%を占めるシカゴでは、トップ20のエコシステムの中でも女性起業家の割合が最大数を占めている。

4. 2012年から何が変わったか? その背景は?

CrunchBase や他のデータ供給元、60以上のローカル・パートナーの協力により、多くのデータをもとにして、2015年のレポートは利益をもたらした。このレポートは、それぞれのエコシステムに対して、より内容が濃く、より正確な評価を可能にするだろう。スタートアップ・エコシステムがどのように機能し、どのように発展しているか、専門家の視点を反映した、より適合性の高い数学的モデルの開発も実現できるだろう。この高品質なモデルは、より改善されたスコアリング・ランキング手法の礎となるものだ。

今回のレポートでは、(従来版に比べ)我々の計測・分析手法に以下のような変更を加えた。

a) エコシステム価値(イグジットや資金調達における、スタートアップ企業価値の合計金額)の追加

b) より改善された見積数の包含(エコシステムにおけるスタートアップの合計数)

c) パフォーマンス・インデックスから、「人口一人当たりに対するスタートアップの数(スタートアップ密度)」を削除

これらの変更は、テルアビブもそうであるし、カナダのウォータールー地域が55万人しかいないにもかかわらず、比較的高い成長率を保っているためだ。しかも、これらの地域は2012年版よりも2015年版において、ポジションを下げている。ニューヨーク市が高いポジションにつけていることにも説明がつく。

【via Compass】 @startupcompass

【原文】

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起業家精神のセレブ化は危険なものか?

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【原文】 テック起業そのものがセレブ化しつつあることは明らかである。以下は、アメリカ全体のレベルで見た実情を手早くまとめたものだ。 セレブによるスタートアップ投資が生み出したもの Facebook 創業への道のりが、長編ハリウッド映画「ソーシャル・ネットワーク」の中で描写されている。Ashton Kutcher、Justin Timberlake、MC Hammer、Lady Gaga、Justi…

【原文】

テック起業そのものがセレブ化しつつあることは明らかである。以下は、アメリカ全体のレベルで見た実情を手早くまとめたものだ。

セレブによるスタートアップ投資が生み出したもの

Facebook 創業への道のりが、長編ハリウッド映画「ソーシャル・ネットワーク」の中で描写されている。Ashton Kutcher、Justin Timberlake、MC Hammer、Lady Gaga、Justin Bieberなど、ハリウッドのセレブたちがテック・スタートアップに投資、シリコンバレーでその名を定着させつつある。主要なテック・スタートアップによる雇用機会増大で、ホワイトハウス承認Startup America Partnershipなどのプログラムが増加。Bloombergがニューヨーク・バージョンのTechStarsと称されるアメリカンアイドル風のテレビ番組を制作し、Bravoも「Silicon Valley」という本格的なリアリティショーを制作している。そして、FacebookからZynga、Groupon、Pandora、LinkedInまで、株式上場する新たなテック企業が増えている。

このような注目の結果、TechCrunchが「役に立たない、新時代のシリコンバレー(The New Silicon Valley Douchebag)」と呼ぶ現象まで起きた。今は誰も彼もがエンジェル投資家で、起業家のセレブ化が進むばかりだと言っても過言ではない。

起業家精神のセレブ化は、諸刃の剣

さて、この諸刃の剣をどう扱うのかという話から始める必要がある。そうすれば、シリコンバレーの精神が注目の熱で消えてなくならずにすむからだ。

セレブ化がどうして諸刃の剣なのか? ある面で、セレブ化は世界中から才能のある人を新たに数多くシリコンバレーに惹き付け、多くの多感な若者にウォール街の銀行マンやハリウッドスターになるよりも起業家になりたいと思わせる。これは間違いなくとても良いことだ。シリコンバレーの気質は、ほとんどの若者が世界中で聞かされる話よりもはるかに力を与えるものだ。数ヶ月前、私たちのオフィスにはデンマークの起業家団体が訪れていた。彼らによれば、デンマークの若者が世界を変えたいと話をすると、ほとんどの人がその若者たちに「世界を変えようとするあなたは誰ですか? 座って机に向かいなさい。学校へ行き、仕事に就きなさい。まずは自分を知りなさい。」と言うらしい。

そんなよく聞かされる話を、完全になくしたいと私は思う。だが、社会の流れを逆方向に動かしたりせず、起業は誰にでもできて、すぐにお金持ちで有名人になれるという幻想を広めるのはやめよう。Eric Ries氏は最近、「起業はクールじゃない、魅力的でもないし、本当に厄介だ。退屈で疲れる。こういうことは絶対に映画のシーンにはない。」と好んで言うようになった。私も、そういうことがBravoのリアリティ番組で取り上げられるとは思わない。

セレブ化の影響によって、あるタイプの人たちが突如として急増している。私たちはその人たちを「スターに憧れる起業家」と呼んでいるのだが、こういう人たちが急増していことは、健全なスタートアップのエコシステムにとっては実に危険だ。数ヶ月前、College Humorが「スターに憧れる起業家」についての面白い風刺ビデオを発表した。悲しくも、少し痛いところを突いている。

スターに憧れる起業家

「スターに憧れる起業家」には2つのタイプがあるようで、1つめはハリウッドから来た何もしない「アイデアマン」で、次世代のソーシャルメディア・アナリティクス・プラットフォームでびっくりさせようとする。あるいは、MBAを取得したばかりの自称「ビジネスモデルとマネタイズのエキスパート」なのかもしれない。このタイプは嫌らしいほどほら吹きだが、害は比較的少ない。

2つめのタイプはさらに危険だ。このタイプにはテックプロダクトの構築に豊富な才能を持つエンジニアやデザイナーが含まれるのだが、彼らはセレブ化の熱に影響され、「こんにちは。私はXXアプリの創設者でCEOです。」と言おうとする野心を抑えている。だから、大きな問題を実際に解決し、将来ビッグになるような企業に彼らの才能を活かす代わりに、誰も欲しがらない退屈なiPhoneアプリをまた作ってしまう。その結果、ビッグになりうるスタートアップの多くが、雇用する人も見つからず、機能しないチームに悩まされている。

この「スターに憧れる起業家」ウィルスを、伝染する羞恥の病、もしくはもっと悪い状況になる前に、駆除する必要がある。このウィルスがなぜそんなに致命的なのかという理由は、うわさや混乱の高まり、モチベーションの低下、才能の不適切な活用によって、 アーリーステージのスタートアップ・エコシステムが起業家の経済的可能性および社会的影響を容赦なく制限してしまうからだ。

幸い、2つの「スターに憧れる起業家」タイプには同じような治療方法がある。私は、社会学的で方法論的という2重の長期的アプローチを勧める。(「スターに憧れる起業家」は経済的影響においても長期的な社会への影響においても何も達成していない。)

 

「スターに憧れる起業家」を撲滅する方法

「スターに憧れる起業家」ウィルスの撲滅に効くアプローチの1つは、その感染者を無視することだ。スターに憧れるという自己愛性人格障害者から活力、すなわち、「注目されるということ」を奪う。

もっと深刻な場合には、もっと強硬なアプローチを用いる方がいいかもしれない。妄想的な陰謀者のまねをして、「確認」「中傷」「無効」「消滅」という4段階のアプローチを通じて戦おう。「スターに憧れる起業家」からアイデアを聞くとき、微笑んだり、うなづいたり、(たとえ冗談でも)「すばらしいアイディアだ」と言ったりしてはいけない。彼らのアイデアはつまらないと言おう。もしくは、少しはっきり言い過ぎだと思うなら、少なくとも、取り組みの中でそれが本当に一番重要なことなのか、一生砂糖水を売りたいのか、それとも世界を変えたいのかと聞いてみる。

ハリウッドの栄光を忘れ、現実世界に戻って考えてみる

秩序立てて言えば、投資家も起業家も企業がスタートアップのライフサイクルのどこに位置するのかをよりよく認識し、結果を見守る必要がある。(Startup Genomeはスタートアップライフサイクルの成長段階を「発見」「承認」「効率」「拡大」と呼んでいる。)「発見」と「承認」の段階を通過する必要性を標準化すれば、特に、何ということもない新たな「to-do リスト」アプリを誰も欲しがっていないことが数ヶ月で明らかになるだろう。そして投資家は適切な額の投資をすることができ、起業家らもロープを隠し持って自分の首をつることもない。このアプローチは実践的で、人は起業する権利を持つべきではないという非現実的な権威主義を回避する。これは、「スターに憧れる起業家」に空想を追い求めるなと言っているのではない。力で素早く、彼らと彼らのハリウッドの栄光を現実の世界に引き戻し、実際に重要である仕事をさせるようとするだけだ。これによって、明日の経済を動かすスタートアップ・エコシステムのガラクタは片付く。

テック起業界は、継続的な経済繁栄につながる、世界で最良の道筋の1つとして、当然、多くのメディア、注目、お金を引き寄せている。だが、真に世界を変えるような企業を作っている人たちだけに、称賛が与えられるということを学ばなければならない。さもないと、「スターに憧れる起業家」ウィルスが蔓延してしまう。

起業家のパワーが高まるにつれ、私たちがどうして起業するのかという理由を、社会が必死で思い出そうとするのを見たいものだ。名声、称賛、お金のためではない。それは、世界を変え、人類を前進させるプロダクトを構築するためなのだ。

【via Startup Compass】 @startupcompass


著者紹介:マックス・マーマー

マックスは、Startup Genome の創業者で、イノベーションや経済成長の論客であり、スタートアップの失敗率の高さについて言及している。Startup Compass は、世界1万6千社以上のスタートアップに採用されている。 Twitter アカウントは @maxmarmer.

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減りゆく「アイデアの変革」—スタートアップ創業メンバーに必要な〝ドメイン・エキスパート〟の存在とは?

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【原文】 これは、HBR(ハーバード・ビジネス・レビュー)の「起業精神の変革 (Tranformational Entrepreneurship)」シリーズの第2稿の再掲である。シリーズ第1稿では「起業精神の変革」の定義と、本稿で引用した「社会経済学の価値創造のマトリクス」について記述している。 投資に対するリターンは減少し、ファンドは干上がり、ビッグアイデアを推進する起業が減っていることを懸念す…

【原文】

これは、HBR(ハーバード・ビジネス・レビュー)の「起業精神の変革 (Tranformational Entrepreneurship)」シリーズの第2稿の再掲である。シリーズ第1稿では「起業精神の変革」の定義と、本稿で引用した「社会経済学の価値創造のマトリクス」について記述している。

投資に対するリターンは減少し、ファンドは干上がり、ビッグアイデアを推進する起業が減っていることを懸念するベンチャーキャピタリストは少なくない。ベンチャーキャピタリストである彼らは、「すべての起業家に対して、紙くずのような会社を設立することをけしかけ、Googleに2500万ドルで買ってもらえることを期待してきた」と、エンジェル投資家を非難するようになった。

ベンチャーキャピタリスト達は「このような物事を小さく考える姿勢が、次のGoogleやMicrosoftを作れる起業家に対し、つまらないものを作らせるようになった」と言う。スタートアップ・エコシステムに対しても、「全員負ける。IPOも無し。テック業界には、2万人の職は生まれない。未熟なスタートアップには新たな買い手もつかない」という暗示を送っている。

残念ながら、このベンチャーキャピタリスト達は、因果関係をはき違えている。エンジェル投資家が、起業家に物事を小さく考えさせているわけではない。物事を小さく考える起業家が多いだけのことだ。その理由は、起業コストが驚くほど低くなっていて、全く新しい層の起業家が会社を作るようになっているからである。

「紙くずのような会社」を作る創業者は、次世代を担う数十億ドル規模の会社を始める創業者とはタイプが異なる。前出の創業者は世界を変えたいわけではない。彼らは、自分の家族を養ったり、車を買ったり、自由を得たりするのに必要なお金を得たいだけなのだ。これらの人達は、情報経済の中でパパママの零細企業を経営しているに過ぎない。昔のレンガやモルタル職人より、テクノロジーのおかげで収入が多いだけのことだ。レストランや美容院を始める代わりに、彼らは何千とあるレストランや美容院に使ってもらうクーポンアプリを作るのだ。

このこと自体は、スタートアップのエコシステムや経済にとって悪いことではない。むしろ逆だ。ファットヘッド(訳注:ロングテールの対義語、ニッチをやらない)の企業しかいない社会と違って、何百万の「Yというニーズに対してXが欲しい」というニッチな要望を叶える、何千万という小企業がロングテール状に生み出されることになるからだ。

そして、時として、彼らはニッチな市場が、当初思っていたより大きいとわかる。リビングルームにエアマットレスを敷いて貸し出すサービス(訳注:AirBnBのこと)が、旅行レンタル市場やホテル業界を揺るがす程の数十億ドル規模の企業に成長することが想像できただろうか。見識のある多くの投資家でさえ知る由がなかったことを、私は知っている

ロングテールの台頭がベンチャーキャピタリストに与えた唯一の悪影響は、ノイズが増えた環境の中で、投資対象の選別能力を高めなければならないことだ。現在、スタートアップのエコシステムが、「パパママ零細起業家」と「次世代の数十億ドルビジネスを作る、成長力あふれた起業家」を選別することができず、多くの人の時間と労力を浪費せしめている。

ビッグアイデアの欠如は、誰のせいか?

ビッグアイデアが減少していることで、ベンチャーキャピタリストがエンジェル投資家を責めることは間違っているし、スタートアップの起業コストが低下したので、物事を小さくしか考えられなくても起業家になれた人は多いが、一方、ビッグアイデアを持つ起業家の絶対数が少なくなっているという、ベンチャーキャピタリストの指摘は的外れではないと思う。

しかし、原因は少し違うところにあると思う。私は、ソフトウェア企業のビッグアイデアが減っている原因は、シリコンバレーの創業者チームが画一的になってきているからだと考えている。創業者チームが市場に極めて合致した顔ぶれでないかぎり、数十億ドル規模の企業は実現しない。(現在では、「創業者の市場適正化(Founder Market Fit)」と呼ばれる)

これまで、成功を導く魔法の方程式は、一人か二人のエンジニアと一人のビジネスマンで成り立っていた。多くの大成功はこのパターンに従った。Hewlett氏とPackard氏(Hewlett Packard)、Jobs氏とWozniak氏(Apple)、Gates氏とAllen氏(Microsoft)、Ellison氏とMiner氏(Oracle)、Larry氏とSergey氏(Google)、Thiel氏とLevchin氏(PayPal)など、リストは延々と続く。

これらの企業を数十億ドル規模にした革新は、コンピュータ・ハードウェアやソフトウェア・インフラストラクチャの分野に限られた。彼らは、計算機、パソコン、データベース、検索エンジン、決済システムを作った。この方程式は上手くいった。テクノロジーの天才と雄弁で催眠術をかけられるセールスマンが手を組めば、数十億ドル規模のテクノロジー企業のDNAを持つことになる。

しかし時代は変わった。これらの斬新なアプリケーションは今日のインフラとなり、さらなる数十億ドル規模の会社をもたらす新しい波を作った。この7年で、テクノロジーの天才と催眠術をかけられるセールスマンだけでは、十分ではないことが明確になった。この世代の成功する創業者チームのDNAには、新たな能力が現れ始めた。

それはデザインだ。デザインはどこにでもある。デザイン思考デザインカンファレンスデザイナーファンドデザインセレブ。全て揃っている。もし、デザインを競合との差別化のカギとしている企業を挙げる必要があるなら、その企業を見つけるのはそう難しいことではない。一例を上げるなら、MintSquareQuoraAsanaPathなどがそうだ。

デザインとは、美しいインターフェイスだけを言っているのではない。デザインとは、エンドユーザのモチベーションと能力を深く理解し、複雑なテクノロジーを統一された直感的なプロダクト体験に取り入れることを意味する。

なぜ、今デザイナーの時代なのか?

インターネットとテクノロジーは、あまねく前向きに進化する。インフラの上にインフラが作られ、今まで不可能だったことに対して新しい可能性を開く。デザイナーの価値が上げるには、きれいな「AJAXの魔法のショー」を支えるために、ウェブに速さと強さが必要だった。

デザイナー達は、美しく直感的なユーザ・インターフェースに喜んでお金を払ってくれる、数十億人の消費者をインターネット上に迎える必要があった。史上最大のしくみ(=インターネット)から利益を得ていた白人のエグゼクティブ・マネージャーは給料が下がり、テクノロジー企業は、もはや長い付き合いの主要顧客ではなくなった。

しかし、私は、デザイナー主導のチームも、市場に不適応になりつつあると考えている。インターネットは必要なインフラを整え、世界中の産業を創造し直し変化させ、世界レベルのユビキタスを実現した。しかし、シリコンバレーの考えでは、閉塞感を打ち破るのに、数人の「ロックスターエンジニア」と「スーパースターデザイナー」が居れば十分だ。

このようなタイプのチームは部屋に閉じこもり、ビッグアイデアを考え、それを実行していくことができた。今では、エンジニア2人とデザイナーを一緒にして、新しいスタートアップのアイデアを考えさせたとしても、50%以上の確率でモバイル用の写真共有アプリを作り出すのが関の山だろう。このチームの能力は、デジタル業界の次なる進化が一般消費者向けに直感的なソフトウェアを作り出していたとき、医者が指示したことに他ならない。このチームは今、創造力の限界にぶち当たり続けている。

次はどうなる? 革新的なアイデアは使い果たしてしまったのか?

問題は、我々が既知のモノを新しいモノに変化させることで〝創造〟をする一方、エンジニアが理解しているのは、クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータのような新しいテクノロジートレンドでしかない、ということだ。これはチームが解決しようとしている問題が、根本的にテクノロジーの問題であるうちは問題が無かった。

しかし、現在、「純粋な情報テクノロジー」が可能にした領域では、変革が起きる可能性は限界に達している。ソフトウェアの新境地は、高度に進化した、そして導入しやすくなった技術スタックを、ビジネスの新しい領域に取り入れていくことだ。そういった領域では、テキストエディタを駆使したり、LAMP スタックを新しいものにするだけでは問題をを解決できない。

革新の行き詰まりから脱却するには、創業者チームの多様化しか道はない。私は、変革する企業の創業者チームのDNAに足りないのは、彼らが変化を起こそうとしている、産業分野の実情を良く知る〝ドメイン・エキスパート(特定分野の専門家)〟であると考えている。ドメイン・エキスパートなしでは、アイデアはイマジネーションのないものとなり、話が実現につながらない。

教育、ヘルスケア、ビジネス、アート、政府など、テクノロジースタートアップが変えることのできる産業は多く存在する。「ロックスター・エンジニア」や「スーパースター・デザイナー」とチームが組めるドメイン・エキスパートはどこにいるのだろうか。

彼らの多くは、本、講演会、大学の授業、コンサルティングセミナー等で自分のアイデアを広めようと放浪していて、彼らのアイデアをソフトウェアのアプリに落とし込める可能性にまだ気づいていない。アプリこそ、人々の生活を変え、社会に影響を与える可能性が驚異的に高いアプローチであるのにもかかわらず。

この考察に至ったのは、私がStartup Genome チームにおける、よい肩書きを付けるのに悩んでいる時だった。チームの中で、私の重要な役割は、革新のプロセスやビジネスの進化を説明できる、モデルやフレームワークを構築することだ。ならば、私の肩書きには何がふさわしいか? よい言葉が見つからなかった理由の一つは、私がやっていた昔ながらの仕事が、学術書や本に書かれていそうなものだからだと気づいた。

最近になって、この知識をソフトウェア・プロダクトに落とし込める要素が揃って来た。これが実現すれば、何百万という企業やビジネスの、日々の意思決定を向上させることができる。

今では、私はコラボレーションの機会を多く逸していたことがわかった。世界にはたくさんの素晴らしいドメイン・エキスパートと、たくさんの良いソフトウェアを作れる人がいるが、彼らが互いに話すことは稀だし、無論共に仕事をする機会も少ない。

  • 個人向けの金融ソフトウェアを作っている人が居るが、彼らはNew York Times でベストセラーとなった、Ramit Sethiの大変効果的な6週間の個人金融講座のことを知らない。

  • 個人の成長と精神的な豊かさをもたらすソフトウェアを開発しようとしている人が居るが、彼らは Integral Life Practice のことを知らない。
  • 生産性を上げるアプリを開発している人が居るが、彼らは GTD や さらに重要な Energy Managementについて知らない。

商品開発チームは、革新的な変化をもたらす上で、友達作り、フォロー、共有といった、〝本日のスープ〟のようなテクノロジーの機能だけで十分と考えている。初歩的で誰をインスパイアすることもないセオリーが、商品のデザインを侵蝕してしまっている。

この世界は素晴らしい研究やセオリーに満ちている。それらのアイデアを、日の目を見ない文書や日常的でない場所から引っ張り出し、電子化し、社会の力となるソフトウェア・ツールにする時が来ている。

シリコンバレーでは、変革のアイデアに取り組むチームは減少しており、これが画一的な創業者チームばかりが生まれる最大の理由だ。我々 Startup Genome は、ビジネスマンとエンジニアという、ダイナミックな二人で始まった。

最近になり、デザイナーも加わった。数十億ドル規模の企業に成長させられるような、創造的なプロダクトを作り出し、何千という雇用を作り出し、社会を変えるには、〝ドメイン・エキスパート〟をテクノロジー企業の創業者チームのDNAに組み入れる必要があるだろう。

この話題を取り上げたのは、「アイデアの変革」が欠如しているからだけではない。既存の科学常識との対立や、長期に及ぶ考察を嫌って、科学や技術においてもブレイクスルーが減ってきていることも議論に値する。これらのことは、The Innovation Starvation(仮訳:枯渇するイノベーション) や、In Search of Black Swans(仮訳:ブラックスワンを探せ)に記述されている。

【via Startup Compass】 @startupcompass


著者紹介:マックス・マーマー

マックスは、Startup Genome の創業者で、イノベーションや経済成長の論客であり、スタートアップの失敗率の高さについて言及している。Startup Compass は、世界1万6千社以上のスタートアップに採用されている。 Twitter アカウントは @maxmarmer.

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