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Yukiko Matsuoka

Yukiko Matsuoka

1973年生まれ。米国MBA(経営学修士号)取得。起業支援や経営戦略の立案など、約10年にわたる実務経験を経て物書きに転身。スタートアップや技術イノベーションの動向をグローバルな視点から追う。

執筆記事

世界の旅人とローカルビジネスをつなぐ、観光に特化したクラウドファンディングサービス「TravelStarter」

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アート・カルチャー・デザイン・テクノロジーなど、幅広いジャンルを網羅するキックスターター(Kickstarter)のようなプラットフォームが、クラウドファンディングの普及に大いに貢献する一方で、地域や市場に特化するクラウドファンディングサービスも多種多様に増えてきました。 「Local Lift」や「Community Funded」といったローカルビジネスに特化したクラウドファンディングサービス…

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アート・カルチャー・デザイン・テクノロジーなど、幅広いジャンルを網羅するキックスターター(Kickstarter)のようなプラットフォームが、クラウドファンディングの普及に大いに貢献する一方で、地域や市場に特化するクラウドファンディングサービスも多種多様に増えてきました。

Local Lift」や「Community Funded」といったローカルビジネスに特化したクラウドファンディングサービスが誕生し、中小規模の地域密着型ビジネスを地元の消費者が支える事例も多くみられます。

このような仕組みをさらに発展させ、ローカルビジネスと観光を融合させたクラウドファンディングサービスが、「TravelStarter(トラベルスターター)」です。観光・旅行業界で10年以上の実務経験を持つスロベニア出身の起業家Anushka Cerovsek Beltram氏らによって創設されました。

2014年12月3日にベータ版としてオンラインプラットフォームを公開して以降、英国・フランス・スロベニアなど7カ国、13のプロジェクトが、資金調達を実施。今後は、年間100プロジェクトを取り扱うことを目標に、サービスを拡大していく方針です。


このクラウドファンディングサービスを利用できるのは、宿泊施設、娯楽施設、カフェ、レストランなど、地元に根ざしたサービスを観光客や旅行者に提供する事業者。

資金調達の目的とその目標額などを公開し、これをサポートしたい一般ユーザーが出資します。なお、資金調達を行う事業者は、手数料として、目標額を達成した場合は調達額の5%、未達成の場合は8%をTravelStarterに支払うルールとなっています。

TravelStarterの特徴は、出資への報酬として、ホテルの宿泊クーポン券や、カフェ・レストランの飲食クーポン券、特別観光ツアーなど、出資者がローカルな体験を楽しめる権利を設定させている点です。この仕掛けによって、事業者は、必要な資金を調達できるのみならず、近い将来その地を訪れようとしている世界中の観光客と、いち早くつながることができるのです。

世界観光機関(UNWTO)によると、2014年の海外旅行者数は全世界で11億3800万人と、前年より4.7%増加。その規模は、2030年までに18億人に達するとみられています。

今後、地域や国を超えた人々の移動がますます盛んになる中、地域密着型の中小ビジネスを、地元のみならず、世界中の消費者・利用者が支えるプラットフォームとして、TravelStarterが担うべき役割は、より大きくなっていきそうです。

北京駐在の500 Startupsベンチャーパートナーが、中国のスタートアップ事情について語る

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その勢いは鈍化しつつあるものの、いまだ経済成長の著しい中国。2014年の経済成長率は7.4%を記録し(中国国家統計局による)、2015年以降も、年率6%を超える成長が見込まれています(国際通貨基金の予測)。また、2000年前後に創設された、中国のITベンチャー企業の先駆けともいえる、Alibaba(阿里巴巴)やBaidu(百度)は、いまや、中国のみならず、世界に知られる大企業へと成長しました。 こ…

500 Startupsのベンチャーパートナーとして、中国を担当するRui Ma(馬睿)氏 (撮影:松岡由希子)
500 Startupsのベンチャーパートナーとして、中国を担当するRui Ma(馬睿)氏 (撮影:松岡由希子)

その勢いは鈍化しつつあるものの、いまだ経済成長の著しい中国。2014年の経済成長率は7.4%を記録し(中国国家統計局による)、2015年以降も、年率6%を超える成長が見込まれています(国際通貨基金の予測)。また、2000年前後に創設された、中国のITベンチャー企業の先駆けともいえる、Alibaba(阿里巴巴)Baidu(百度)は、いまや、中国のみならず、世界に知られる大企業へと成長しました。

このような市場環境のもと、シリコンバレーのベンチャーキャピタル「500 Startups」は、2013年、中国の起業家やスタートアップ企業への投資を推し進めるべく、大手投資銀行で豊富な実務経験を持つRui Ma(馬睿)氏をベンチャーパートナーとして招聘し、北京にオフィスを開設。本格的に中国市場へ進出しました。

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Ma氏は、中国の優位性のひとつとして、世界一のインターネット市場である点を挙げています。中国のインターネットユーザー数は、2014年時点で約6.4億。また、スマートフォンの利用者は2013年末までに7億人を超えており(umeng=友盟調べ)、PCに比べてモバイルデバイスからより多くインターネットに接続されているのも特徴です(CNNICレポート)。

また、Ma氏いわく、世界に羽ばたき、成功を収めている〝Local Heroes(地元のヒーロー)〟の活躍も、中国のスタートアップ業界にとって、大きな刺激となってきました。Alibaba、Baidu、インスタントメッセンジャー・ソーシャルメディアネットワーキングサービスなどを展開するTencent(騰訊)といったベンチャー企業の〝先駆者〟に続き、2010年代に入って以降も、通信機器メーカーXiaomi(小米科技)、Wi-Fiソリューションを提供するWiTOWN(树熊)、タクシーアプリを開発するDidi Dache(嘀嘀打車)など、中国発のスタートアップ企業が次々と誕生しています。

数多くの投資家やアクセラレーターらの資金力や知見、ノウハウも、スタートアップ企業を後押ししています。500 Startupsのほか、テクノロジー系スタートアップに投資する「China Growth Capital(華創資本)」、アップル社やグーグルの役員を歴任したKai-Fu Lee(李開復)氏によって創設された「Innovation Works(創新工場)」、投資先をモバイルインターネットに特化する「PreAngel」といったエンジェル投資家や、ビジネスインキュベーターの「InnoSpring」らが、その例です。

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Z-innoway/中関村創業大街 (2014年9月、池田将 撮影)

さらに、中国政府も、スタートアップ企業の支援に、積極的に取り組んでいます。500 Startupsの中国部門が拠点を置く北京では、2014年、中央政府および地方自治体からの一部支援によって、アクセラレーターのオフィスやコワーキング・スペースなどを兼ねた大型複合施設「Z-innoway(中関村創業大街)」が創設されました。

現在、ビジネスアクセラレーターの「3W Coffee(3W咖啡)」や「Binggo Café(Binggo咖啡)」、オンラインニュースメディアを運営する「36Kr」、ビジネス雑誌を出版する「The Founder(創業邦)」らが入居しています。また、中国の最高国家行政機関である国務院は、2015年1月14日、スタートアップ企業への支援に、400億元(約7,600億円)規模の投資を行う方針を明らかにしました。

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華やかな話題でにぎわう中国のスタートアップ業界の現状を、さらなる成長の兆しとみるか、一過性の〝バブル〟のようなものとみるべきかどうかは、予断を許しませんが、中国内外から急速に集まりつつある〝ヒト・カネ・モノ〟が、今後、中国のスタートアップ企業のためのエコシステム(生態系)をどのように形成していくのか、興味深いところです。

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BingoCafe (2014年9月、池田将 撮影)

お店でプリンティングできる!カスタマイズ型のシンプルケータイ「OwnFone」

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登録した連絡先にのみ発信できる、ユーザーカスタマイズ型のシンプルな携帯電話「OwnFone(オウン・フォン)」は、2014年8月に英国で発売されて以来、子どもから高齢者まで、幅広い層で利用されてきました。 2015年2月には、ユーザーそれぞれのニーズや嗜好にきめ細かく対応すべく、カスタマイズ性をさらに拡充。カラーバリエーションやデザインテンプレートを充実させるとともに、新機種として、ユーザーが描い…

Copyright (c) 2015 OwnFone Limited. All Rights Reserved.
Copyright (c) 2015 OwnFone Limited. All Rights Reserved.

登録した連絡先にのみ発信できる、ユーザーカスタマイズ型のシンプルな携帯電話「OwnFone(オウン・フォン)」は、2014年8月に英国で発売されて以来、子どもから高齢者まで、幅広い層で利用されてきました。

2015年2月には、ユーザーそれぞれのニーズや嗜好にきめ細かく対応すべく、カスタマイズ性をさらに拡充。カラーバリエーションやデザインテンプレートを充実させるとともに、新機種として、ユーザーが描いたデザインをそのままディスプレイにできる「DrawFone」や、木材や石といった自然素材をボディの材質に使用する「BioFone」などもリリースされています。



OwnFoneは、ユーザーが、ウェブサイトを通じて、発信先の電話番号を最大12件まで登録し、ディスプレイのレイアウトやボディの色・デザインなどをカスタマイズすることによって、“世界にひとつだけのケータイ”をつくることができるのが、最大の特徴です。

携帯電話のボディに付いているのは、発信先の名前が明示された発信用ボタンと受信・切断ボタン、音量調節のみ。発信したい人の名前のボタンを押すと電話がかけられ、受信ボタンを押すと応答できるというシンプルな操作性で、誰でも簡単に使えるのが利点です。



OwnFoneでは、2015年2月、新機種のリリースに合わせて、世界初となる携帯電話専用プリンティングショップをロンドンにオープンしました。備え付けのタブレット端末を使ってOwnFoneをカスタマイズすると、店内の2Dプリンターもしくは3Dプリンターからただちに“出力”され、その場で商品を受け取ることができます。



インターネット回線の高速化やデザインソフト・ツールの進化などに伴って、「お仕着せの既製品ではなく、自分だけのプロダクトが欲しい」というユーザーのニーズが実現されやすくなってきました。

自分の画像をスニーカーにレイアウトできるアディダスジャパンのカスタマイズサービス「mi ZX Flux Photo Print」や、バッグブランド・キタムラのカラーオーダーサービス、好きな画像でオリジナルのスマートフォン用カバーが製作できる「マイケースカバーズ(MYCASECOVERS)」など、カスタマイズサービスは、様々な分野に広がっています。

とりわけ、OwnFoneは、万人に使いやすいよう最低限必要な通話機能のみを備えたベーシックさと、ユーザーそれぞれのオリジナリティやクリエイティビティを思う存分発揮できるCIY(クリエイト・イット・ユアセルフ)を組み合わせている点が、秀逸といえるでしょう。

美味しくヘルシーなスナックを届ける、香港の定期購入サービス「MunchBox(マンチボックス)」

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毎月一定額を支払うことで、商品が定期的に届く、定期購入サービスは、長年、新聞・雑誌をはじめ、様々なジャンルで活用されてきた販売方法のひとつですが、2000年代以降、Eコマースと融合させたサービスとしてさらに進化し、より多様に広がっています。 香港のスタートアップ企業「MunchBox(マンチボックス)」は、2015年1月、ヘルシースナック専門定期購入サービスをスタートさせました。2015年1月24…

香港のヘルシースナック定期購入サービス「MunchBox」のサンプル Copyright (c) MunchBox All Rights Reserved.
香港のヘルシースナック定期購入サービス「MunchBox」のサンプル Copyright (c) MunchBox All Rights Reserved.

毎月一定額を支払うことで、商品が定期的に届く、定期購入サービスは、長年、新聞・雑誌をはじめ、様々なジャンルで活用されてきた販売方法のひとつですが、2000年代以降、Eコマースと融合させたサービスとしてさらに進化し、より多様に広がっています。

香港のスタートアップ企業「MunchBox(マンチボックス)」は、2015年1月、ヘルシースナック専門定期購入サービスをスタートさせました。2015年1月24日には、香港のイベントスペース「LOT 5」で、一般消費者向けの試食会を兼ねた記念パーティを開催。関係者のほか、ヘルシーフードに興味津々といった面持ちの女性グループや若いカップルらが、ひっきりなしに会場を訪れていました。

MunchBoxオープン記念パーティの様子
MunchBoxオープン記念パーティの様子

“Unjunk your junk food(ジャンクでない、ジャンクフードを)”をキャッチフレーズとするMunchBoxの定期購入サービスは、「原材料はオーガニック」、「遺伝子組み換え食品でない」といった5つの独自基準をもとに、美味しく健康によいスナックフードを厳選しているのが特徴です。

たとえば、海藻を使った「Ocean’s Halo(オーシャンズ・ハロ)」は、このサービスを通じて届けられるスナックフードのひとつ。サクサクとした軽い食感のあと、ほんのりと磯の香りが広がり、幅広い層に受け入れられそうな美味しさです。

MunchBoxの定期購買サービスで届けられるヘルシースナックの一部。中央は海藻スナック「Ocean’s Holo」の海塩フレーバー
MunchBoxの定期購買サービスで届けられるヘルシースナックの一部。中央は海藻スナック「Ocean’s Holo」の海塩フレーバー

MunchBoxでは、月額210香港ドル(約3,150円)で10〜12品のヘルシースナックが届く家庭向けサービス「Personal Munches(パーソナル・マンチーズ)」と、月額630香港ドル(約9,450円)で40〜48品を提供するオフィス向けサービス「Sharing Munches(シェアリング・マンチーズ)」という2種類の定期購入サービスを展開。現時点では、対象エリアを香港に限っていますが、今後、台湾など、他のアジア地域にも拡大していく方針です。

消費者のヘルシー志向の高まりとともに、欧米でも、近年、ヘルシースナックへのニーズが増えてきました。MunchBoxと同様、ヘルシースナックに特化した定期購入サービスとして、米国の「NatureBox」や「LoveWithFood」、英国の「graze.com UK」といったスタートアップ企業が生まれています。また、「HUMAN Healthy Vending」のように、ヘルシースナック専用の自動販売機をフランチャイズ方式で展開する例もあります。

定期購入サービスは、消費者にとっては、その都度、商品を選び、発注するという手間なく、欲しい商品を定期的に届けてもらえるという利便性が魅力である一方、販路に乏しい独立系メーカーにとっては、商品のプロモーションや販売チャネルとしてのメリットがあります。このような特性を鑑みると、とりわけ、まだニッチな分野にすぎないヘルシースナックと定期購入サービスとの親和性は、比較的高いといえるでしょう。

グーグル、アイデアからプロトタイプの検証までたった5日で完了する課題解決メソッド「デザインスプリント」を公開

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グーグルのベンチャー投資ファンド部門「Google Ventures(グーグル・ベンチャーズ)」は、2015年1月30日、専用ウェブサイトを開設し、デザインにまつわる独自の課題解決メソッド「デザインスプリント(The Design Sprint)」を公開しました。 デザインスプリントは、ホームオートメーションの開発に取り組むNest Labsやロボット開発企業Savioke、サンフランシスコ発の人…

Google Venturesが開設したDesign Sprint専用ウェブサイト
Google Venturesが開設したDesign Sprint専用ウェブサイト

グーグルのベンチャー投資ファンド部門「Google Ventures(グーグル・ベンチャーズ)」は、2015年1月30日、専用ウェブサイトを開設し、デザインにまつわる独自の課題解決メソッド「デザインスプリント(The Design Sprint)」を公開しました。

デザインスプリントは、ホームオートメーションの開発に取り組むNest Labsやロボット開発企業Savioke、サンフランシスコ発の人気コーヒーショップBlue Bottle Coffeeなど、様々な業種で実践された成果をもとに、スタートアップ企業に向けた“DIYツール”としてまとめられました。

プロトタイプを短期間でつくりあげてユーザーに示し、フィードバックから学んで、プロトタイプのさらなる改善につなげるというアプローチのもと、着想からプロトタイピングまでをわずか5日間で完了させるためのプロセスが定められています。

具体的には、1日目に、関係者を集め、これまでの経緯、現時点で認識している課題、メンバーの知識・スキルなどをすべて“棚卸し”し、これらをもとに、各メンバーが解決策を出し合う、2日目の“発散”フェーズへと移ります。3日目には提案された解決策の中からプロトタイプに採用する案を決定し、4日目のプロトタイピングを経て、最終日にあたる5日目にプロトタイプのテストを実施。

ユーザーのフィードバックから、プロトタイプにおける成果と課題を整理したり、パターン分析などを行います。なお、このメソッドは、一連の流れを40時間で完了させることを想定しており、一定の時間の制約のもとで、効率的に成果をあげるよう促しています。



デザインスプリントの特徴は、デザインコンサルティングファームIDEO(アイデオ)が提唱する「デザイン思考(Design Thinking)」と、“速く動いて、改良を重ねる”というフェイスブックの企業文化としても知られる「ハッカー・ウェイ(Hacker Way)」とを融合させたようなメソッドであること。

スタートアップ企業はもちろん、完璧なものを追求しすぎたり、物事の決断に慎重になるあまり、遅れをとりがちな大企業にとっても、学び、取り入れるべきポイントがありそうです。

ツイッターの元CEOが、志あるスタートアップ企業の支援に着手

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エヴァン・ウィリアムズ(Evan Williams)氏は、ブログ作成ツールの先駆けであるBloggerの開発者であり、2008年から2010年までの間、ツイッター(Twitter)の最高経営責任者を務め、2012年には出版プラットフォームMediumを創設した、いわば“21世紀型メディア”の生みの親ともいえる人物ですが、現在、その卓越した経験・知識と豊かな資力を活かし、メディア業界の枠組みを超え、…

Obvious Venturesの創設者Evan Williams氏  Creative Commons: Some rights reserved. Photo by Christopher Michel
Obvious Venturesの創設者Evan Williams氏
Creative Commons: Some rights reserved. Photo by Christopher Michel

エヴァン・ウィリアムズ(Evan Williams)氏は、ブログ作成ツールの先駆けであるBloggerの開発者であり、2008年から2010年までの間、ツイッター(Twitter)の最高経営責任者を務め、2012年には出版プラットフォームMediumを創設した、いわば“21世紀型メディア”の生みの親ともいえる人物ですが、現在、その卓越した経験・知識と豊かな資力を活かし、メディア業界の枠組みを超え、志ある起業家たちの支援に取り組みはじめています。

ウィリアムズ氏は、利益を追求しながら目的や理念に向かって邁進するスタートアップ企業を支援すべく、ベンチャーキャピタリストのジェームズ・ホアキン(James Joaquin)氏らとともに、2014年12月、ベンチャーキャピタル「Obvious Ventures(オビアス・ベンチャーズ)」を創設しました。

投資分野として、環境負荷に配慮した価値の高いソリューションを創出する「Sustainable Systems」、個人や小規模事業者を支え、雇用状況や教育環境の改善に取り組む「People Power」、健康増進につながる商品・サービスを開発する「Healthy Living」という3つのジャンルを柱に掲げているのが特徴です。

Obvious Venturesは、これまでに、スタートアップ企業10社に投資。Sustainable Systemsのジャンルでは、代用肉の専門メーカー「Beyond Meat」(動画参照)や建築家・エンジニア向けのデザインツールを提供する「Flux」が投資先として名を連ね、People Powerのジャンルからは、小規模事業者向けの業務管理アプリ「Breezeworks」やオンライン署名プラットフォーム「Change.org」などが出資を受けました。

また、Healthy Livingの投資先として、植物性チーズの専門ブランド「Miyoko’s Kitchen」や栄養食品を開発する「OLLY」も、Obvious Venturesからサポートを得ています。

Obvious Venturesは、自らのミッションとして、“目的達成と利益追求の融合”を掲げています。資金のみならず、起業・経営・ファイナンスなどの専門知識やノウハウを惜しみなく提供し、投資先のスタートアップ企業を成功へと導くことで、“世の中によいことをするためには、収益面で多少の妥協をせざるをえない”という従来の投資家たちの固定概念をも覆そうとしているのです。

ウィリアムズ氏が中心となって展開しているObvious Venturesは、食料危機という課題の解決に向けて、グーグルの会長エリック・シュミット氏らが創設した「FARM 2050」などと同様、かつての起業家が、自らの経験と資力を活用し、次世代の起業家を育て、世界的な課題の解決にもつなげる、ポジティブな取り組みとしても、今後の展開が注目されます。

世界で広がるモノ版Uberの波、オンデマンド型配送サービスを運営する「lalamove(ララムーブ)」

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近年、「Uber」や「Lyft」などのオンデマンド配車サービスによって、欧米を中心に、人々のモビリティスタイルが変化しつつあります。 そして、このようなトレンドが、ヒトの移動だけでなく、モノの移動にも波及してきました。その一例が、オンデマンド型の配送サービスを運営する「lalamove(ララムーブ)」です。 2013年10月に香港で創設された「EasyVan(イージンバン)」を前身とするlalam…

lalamoveの公式ウェブサイト(スクリーンショット)
lalamoveの公式ウェブサイト(スクリーンショット)

近年、「Uber」や「Lyft」などのオンデマンド配車サービスによって、欧米を中心に、人々のモビリティスタイルが変化しつつあります。

そして、このようなトレンドが、ヒトの移動だけでなく、モノの移動にも波及してきました。その一例が、オンデマンド型の配送サービスを運営する「lalamove(ララムーブ)」です。

2013年10月に香港で創設された「EasyVan(イージンバン)」を前身とするlalamoveは、現在、香港・シンガポール・タイなどでサービスを展開。オンラインショッピング市場の拡大などにより物流量が増加しているアジア地域をターゲットに、配送先までの“ラストワンマイル”に特化したサービスは、成長性の見込める有望な事業として評価され、2015年1月には、中国のベンチャーキャピタル「Crystal Stream Capital」らから、合わせて1000万ドルの資金を調達しています。

lalamove

lalamoveの配送サービスは、Uberなどと同様、スマートフォンアプリを介して利用します。アプリ上で、荷主の所在地・配送先・荷物のサイズなどを入力し、予約手続を完了させると、lalamove独自のマッチングシステムによって、登録ドライバーの中から最適な担当者が瞬時に指定される仕組みとなっています。



lalamoveは、モバイル端末やGPSなどのテクノロジーを活用し、移動主体とドライバーをマッチングさせるという点ではUberをはじめとするオンデマンド配車サービスと共通していますが、モノとヒトとでは、いくつもの違いがあります。

まず、乗客を乗車地点から降車地点までダイレクトに移動させる配車サービスに対して、複数の配送物をそれぞれの配送先に届けてまわる配送サービスは、スケジューリングやルートの調整など、より複雑なオペレーションが求められます。また、配送物の重さ・大きさ・形は書類から家具まで多様であり、配送用車両もまた、トラック・バン・バイクなど、様々です。

香港を拠点とするオンデマンド配車サービス「EasyTaxi」の創設にたずさわった経験を持ち、現在、lalamoveで役員を務めるBlake Larson(ブレイク・ラーソン)氏は、この点について、次のように語っています。

lalamoveの役員Blake Larson氏
lalamoveの役員Blake Larson氏

「ヒトの移動を前提とした配車サービスに比べて、複数の配送先に、様々な車両で、多種多様なモノを届ける、配送サービスは複雑です。だからこそ、荷主が、必要なときにいつでも、配送業者を手配でき、ドライバーは、より効率的に、より多くのモノを運んで収入を得られるよう、テクノロジーを駆使し、配送のキャパシティを最適化する仕組みが必要だと考えています」

アジア地域でのオンデマンド型の配送サービスとしては、lalamoveと競合し、香港・台湾・シンガポール・韓国などで展開する「GoGoVan」のほか、すでにオンデマンド配車サービスとしての地位を確立しているUberも、2015年1月、配送サービス「UberCARGO」を香港でスタートさせています。

アジアでは、物流量が増加の一途をたどる一方で、物流のための仕組みが十分に整備されていない地域も少なくありません。それゆえ、このようなニーズに応える手段のひとつとして、オンデマンド型の配送サービスが、今後、ますます注目されそうです。

グローバルな楽曲製作をサポートするオンラインコラボレーションプラットフォーム「MixLuv」

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一般に、楽曲は、コンセプトやテーマの設定にはじまり、作曲・編曲、歌唱や演奏のレコーディング、音色や音量、定位を調整して楽曲のバランスを決めていくトラックダウン(ミックスダウン)、原盤製作を担うマスタリングといったプロセスを経て、ようやく完成に至ります。 これら一連の楽曲製作プロセスをオンライン上に実装したコラボレーションプラットフォームが「MixLuv」です。2014年10月から11月にかけて、キ…

楽曲製作のためのコラボレーションプラットフォーム「MixLuv」
楽曲製作のためのコラボレーションプラットフォーム「MixLuv」

一般に、楽曲は、コンセプトやテーマの設定にはじまり、作曲・編曲、歌唱や演奏のレコーディング、音色や音量、定位を調整して楽曲のバランスを決めていくトラックダウン(ミックスダウン)、原盤製作を担うマスタリングといったプロセスを経て、ようやく完成に至ります。

これら一連の楽曲製作プロセスをオンライン上に実装したコラボレーションプラットフォームが「MixLuv」です。2014年10月から11月にかけて、キックスターター(Kickstarter)でクラウドファンディングを実施し、357名のサポーターから51,950ドル(約607万円)の調達に成功しました。

現在、ベータ版として限定公開するかたわら、2015年初めの正式リリースに向けて、準備を進めています。

MixLuvの特徴は、作曲家、編曲家、歌手、ギタリストやドラマーなどの楽器奏者、トラックダウンやマスタリングを担当するレコーディング・エンジニアをグローバルにつなぐソーシャルメディアネットワーク機能と、複数のメンバーが共同で楽曲製作できるオンラインコラボレーションツールとの“ハイブリッド”となっている点です。

具体的な流れとしては、まず、各ユーザーが、自身のスキルや音楽のスタイル、居住エリアなどを登録。互いの登録データから、自分と相性のよさそうな音楽仲間を探すことができます。また、デモ音源をアップロードし、実際の楽曲製作にたずさわってくれるメンバーを募ることも可能です。



楽曲製作がスタートすると、メンバーだけが閲覧・投稿できるバーチャルな“レコーディングスタジオ”が割り当てられます。ここでは、各メンバーが歌唱音源や演奏音源をアップロードしたり、感想や意見、提案をコメントし合うことができ、すべての履歴が一元管理されます。

また、製作途上では、複数のオーディオトラックが作成されるため、バージョン管理が煩雑になりがち。そこで、MixLuvでは、バージョン管理を自動化する独自のシステムを導入しています。

クラウド技術を活用した、楽曲製作のためのコラボレーションプラットフォームとしては、MixLuvのほか、「Splice」や「Kompoz」、「WholeWorldBand」なども開設されています。このようにコラボレーションプラットフォームが多様化することで、国境や言語を超えたダイナミックな音楽の創作活動が、広がっていくかもしれません。

Text = 松岡由希子

ローカルビジネスのためのクラウドファンディングプラットフォーム「Local Lift」

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起業や事業拡大には相応の資金を要しますが、小規模事業者にとって、資金調達は至難の業。非営利団体ILSR(地域の自立を目指す協会)が米国内2602社を対象に調査したところ、過去2年間に融資を必要とした事業者の42%が「金融機関から融資を受けられなかった」と回答しています。 このような資金調達における厳しい環境をふまえ、カフェやレストラン、ショップ、フィットネスクラブなどを経営する実店舗型小規模事業者…

Local Lift

起業や事業拡大には相応の資金を要しますが、小規模事業者にとって、資金調達は至難の業。非営利団体ILSR(地域の自立を目指す協会)が米国内2602社を対象に調査したところ、過去2年間に融資を必要とした事業者の42%が「金融機関から融資を受けられなかった」と回答しています。

このような資金調達における厳しい環境をふまえ、カフェやレストラン、ショップ、フィットネスクラブなどを経営する実店舗型小規模事業者のためのクラウドファンディングサービスとして創設されたのが、「Local Lift(ローカル・リフト)」です。現在、ルイジアナ州ニューオーリズ、テキサス州オースティン、カリフォルニア州サンフランシスコの三都市で運営されています。

Local Liftの基本的な仕組みは、キックスターター(Kickstarter)に代表される一般的なクラウドファンディングサービスと同様。事業者が、資金調達の目的とその目標額、出資に対する報酬などを公開し、これをサポートしたい一般ユーザーが、オンライン決済により資金を提供する流れとなっています。

また、Local Liftでは、目標額の達成・未達成にかかわらず、調達した資金を事業者が受け取るよう定めており、これまでに、500米ドル(約6万円)から25,000米ドル(約300万円)規模の資金が、それぞれの事業者に渡っています。

Local Liftは、国もしくは世界規模で幅広く資金を調達する他のクラウドファンディングサービスと異なり、小規模事業者の地域レベルでのクラウドファンディングに特化しているのが特徴です。特定の地域を商圏として事業を展開する小規模事業者に、融資に代わる資金調達手段を提供するのみならず、その潜在顧客の開拓にも貢献しようというのが狙いです。

Roll On Sushi Diner

たとえば、オースティンの寿司レストラン「Roll On Sushi Diner」は、50米ドルの出資に対する報酬として75米ドル分のお食事券を提供し、Local Liftを通じて10,245米ドル(約123万円)を調達しました。

また、サンフランシスコのボクシングジム「Third Street Gym」では、Local Liftで900米ドルを出資した人だけが受講できる特別集中コースを開設するなど、通常よりも割安なトレーニングコースを出資額に応じて複数設定した結果、25,347米ドル(約304万円)の資金調達に成功しています。

とりわけ、実店舗型ビジネスでは、商圏内の潜在顧客にいかにリーチするかがポイント。これらの事例のように、報酬として、価格の割引や先行販売、限定サービスなどを提供すれば、実店舗のへの集客にもつながります。

Local Liftは、クラウドファンディングのためのプラットフォームにとどまらず、ローカルビジネスのお得な情報が集まるポータルサイトのような役割をも担うことで、地元の小規模事業者と地域住民をつなごうとしています。

Text = 松岡由希子

共同購入方式で小規模小売業者をサポートするB2Bオンラインプラットフォーム「OrderWithMe」

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小規模の小売業者や個人商店主は、大量発注により仕入価格の値下げを交渉しやすい大手業者に比べて、価格競争力の面で不利になりがち。 また、仕入れ先の新規開拓やメーカーからの直接購買を自社でまかなうには相応の手間と負荷がかかるため、卸売業者をはじめとする複数の中間業者を介して商品を調達するのが一般的となっています。 そこで、小規模事業者や商店の個々の発注をとりまとめ、共同購入することによって、メーカーと…

OrderWithMe

小規模の小売業者や個人商店主は、大量発注により仕入価格の値下げを交渉しやすい大手業者に比べて、価格競争力の面で不利になりがち。

また、仕入れ先の新規開拓やメーカーからの直接購買を自社でまかなうには相応の手間と負荷がかかるため、卸売業者をはじめとする複数の中間業者を介して商品を調達するのが一般的となっています。

そこで、小規模事業者や商店の個々の発注をとりまとめ、共同購入することによって、メーカーとの価格交渉力を担保しようというB2B型オンライン購買プラットフォームが「OrderWithMe(オーダー・ウイズ・ミー)」です。

発注からインボイス(送り状)の管理、支払処理、キャッシュフロー管理まで一元管理でき、いわば、クラウドベースの仕入管理システムのような機能も担っています。

OrderWithMe

このプラットフォームは、2011年3月、米国人起業家ジョナサン・ジェンキンス氏(Jonathan Jenkins)によって開設されました。ジェンキンス氏は、米国で中国製バッグの輸入販売業を営んでいた自身の経験から、仕入や在庫管理などの煩雑な業務を可能な限り効率化しつつ、仕入先に対する価格交渉力を担保するための仕組みとして、OrderWithMeを考案したそうです。

世界中から多数のサプライヤーが玉石混淆に集まるAlibaba.com(アリババドットコム)のような大規模B2Bオンラインマーケットプレイスと異なり、OrderWithMeは、中国のメーカーと米国の小規模事業者および商店との取引に特化し、かつ、取引対象となる業種を、自転車専門店、ベーカリー、写真プリントサービスなど8業種に絞り込んでいるのが特徴です。

開設当初は、中国に拠点を置き、米国人スタッフが直接、仕入れ先となる現地メーカーの開拓や価格の交渉、仕入商品の品質管理にたずさわってきました。2013年に米ラスベガスへ拠点を移して以降も、長期的な信頼関係のもと、中国から米国までのサプライチェーンの簡素化に取り組んでいます。

OrderWithMeは、一見、サプライヤーとバイヤーをオンラインでつなぐシンプルな仕組みに見えますが、その背景には、双方の事業の現場をつぶさに知り、分析する、徹底した“現場主義”があります。

たとえば、発注から支払、キャッシュフロー管理までのオンラインソリューションは、創業者自身の実業経験をもとに、小規模事業者や個人商店ならではの仕入れにかかわる課題やニーズを丁寧に汲み取り、実装されたものです。

また、専門スタッフが中国メーカーに直接足を運び、仕入れ先への“目利き”と“交渉人”の役割を担っているからこそ、中国メーカーとの取引に不慣れな米国の事業者でも、このプラットフォームでの仕入れに参加することができるのです。

OrderWithMeは、ビジネスの現場に立脚した地道な積み重ねをもとに、中国のメーカーと米国の小売業者をシームレスにつないでいる点が秀逸。対象となる業種がさらに広がれば、両国間のより多くのモノとカネの往来を支えることができるでしょう。

Text = 松岡由希子