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10年目を迎える「Life in Art」、生活雑貨とアートの出会いが目指すもの——良品計画・宮尾弘子さん Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 良品計画本社で商品の企画デザインのチームを統括、東京・銀座を中心に開催中の企画展 「Life in Art Exhibition」の企画や運営にも深く関わっておられる宮尾弘子氏に話を聞きます。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

良品計画本社で商品の企画デザインのチームを統括、東京・銀座を中心に開催中の企画展 「Life in Art Exhibition」の企画や運営にも深く関わっておられる宮尾弘子氏に話を聞きます。

前半では無印良品がアートプロジェクトに関わる理由などについて伺いました。後半では、起業家やビジネスパーソンにとっても気になる、無印良品が海外事業で躍進している秘密などについて伺います。(文中太字の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は 宮尾氏、文中敬称略)

海外展開、成功の秘訣

無印良品、MUJI というブランドは海外にかなり浸透している印象があります。お客様に認知してもらい、使い続けてもらい、さらにブランドとして愛してもらう上で、何か大切にされているものはありますか

宮尾:無印良品は現在31の国や地域に展開しており、グローバルに商品をお届けするために、商品仕様を設計から工夫しています。無印良品のアイコンとなるような商品はできる限りグローバルに伝播させたい、一方、Found MUJI のような、それぞれの地域の文化に適用する商品については、現地 MD(マーチャンダイズ)が必要だと思っています。

世界中で全く同じ品揃えにしても、生活や文化の違いから、地域によってお客様には受け入れられないものがあるでしょうから、各地域にいる社員やお客様とコミュニケーションを取りながら、現地主導で商品開発することもしていますが、その場合、デザインのリソースについては現地化が難しい地域もあるので、私たちのチームで商品デザインのサポートをする体制になっています。

企画やアートでは、今回のエキシビジョンは日本でしたが、海外は店舗の多い国や地域からになると思いますが、それぞれの国や地域の特性に響くようなテーマで、クラフトや民芸の大きな展示を拡大していく、ということは考えています。実際に販売会社の数が多い国や地域とは話も始めておりますので、このような文化発信の活動は、そういった国から拡大・巡回していくことになると思います。

シンガポールの旗艦店にある「FoundMUJI」のコーナー(無印良品のホームページから)

企画やアートの海外展開は、日本のアーティストを海外に紹介することが中心となるのでしょうか

宮尾:現地のアーティストのご紹介もしていきたいですし、日本のアーティストのご紹介もしていきたいです。ハイブリッド的なことになると思います。国によっても違ったものになるでしょう。例えば今、中国では〝コト〟的(編注:物質的ではなく体験的)市場が熱を帯びてきていて、日本の著名な焼き物アーティストの方の展覧会がある際には、中国の方々が作品を購入しに詰め掛けられます。

やはり、その国のトレンド——今、何が求められているのか?——を押さえながら、今回やったエキシビジョンとは全く毛色の違うようなものに着地していけたら面白いんじゃないか、と事務局のメンバーとは話をしています。同じ Life in Art ですけれども、扱う題材は全然違うみたいなことの方が面白いんじゃないか、と。また、ビジネス的な話で言えば、ニュース性も大事ですね。

日本から海外、アジアに進出しようとするスタートアップも多数います。無印良品はアジアでよく浸透しているブランドと理解していますが、市場で受け入れられる上での秘訣(シークレットソース)は何かあるでしょうか

宮尾:無印良品の商品開発は、一般的なマーケティングとは少し違い、自分自身の生活を自分でマーケティングし、そこから生み出すという少し変わった手法です。「我が社の市場はこうで、我が社がこれぐらいのポジショニングで、こんなペルソナがいるから、こんな商品を出したい」みたいなアプローチとは違い、自分の部屋をくまなくウォッチしてみたら、部屋の角にものすごくモノが集まってごちゃごちゃしているので、この角に収まる形の収納用品作れないかしら、みたいなそういう開発の仕方なんです。

商品開発の手法の一つであるオブザベーションがかなり徹底的に行なわれているのは珍しいと思うので、その辺りかなと思いました。もちろん、オブザベーションが共通化されている要素だとすると、グローバルに出していっても、「これは今まで無かった痒いところに手が届く商品」だと他国の方にも気付いていただき爆発的に売れるものもあると思います。

しかし、暮らしの中の気づきみたいなものって、おそらく国によっても住宅事情が違ったり生活文化が違ったりして、本当にここが課題なんだっていう商品の生み出し方は現地でしか見つけられないものもあると思うんですね。現地にどれだけ入り込んで、オブザベーションして、自分たちの生活の中からの気づきを商品にできるか。これは他社の商品開発の考え方にはあまり無い流れだと思います。

さらに、ビジネスライクな話で言えば、海外では商品が模倣されるというのもあります。海外では開発のスピードが速いため、弊社としても、またさらに先を行かなきゃいけないっていうことを常に考えさせられます。一番手をキープできているのか? やっぱり危機感をすごく感じるようにはなってきてますけどね。

モノによってはお客様自身もこだわらなくなってきていて、同じような目的の商品で安い方があれば、そちらを買ってしまうという時代になったんだということを、私たちがすごく肝に命じて認識すべきだと思うんですよね。うちが元祖だからうちのを買ってくれるだろうみたいな期待は一旦捨て、生活を徹底的に研究する中で、まだ提案できていない領域の商品をこれからもどう出していくか。

戦い合うとか食い合うとかではなく、そういう商品もゼロじゃないです。価格で負けてるのだとすると、展開国も増えているので、数量で価格をくぐるための努力ももちろんやっているんですけど、私たちデザインチームに多分課せられているのはそこではない。今まで気付けなかったものとか、最近意識が色濃くなっているサステナブルや環境配慮をどれだけ徹底できて、価格的には他社の方が優位だったとしても、お客様がこれを選びたいと思って選んでいただけるような商品を作ることの方が必要な価値だと思っています。

サステナブル、ESG への注力

サステナブルや環境配慮については、良品計画では商品開発や企画を通して、重要視されていることはありますか

宮尾:まず中期経営計画の中では、「ESG のトップランナーを目指す」という内容も入っていますが、そこに関しては会社の中では全力で今取り組んでおりまして、商品に関わることで言うと、製品開発とパッケージの2つの軸で、徹底的にサーキュラーデザインを実現していこうと考えています。

まず製品開発の軸で言うと、私たちの扱っている商品には、樹脂やプラスチックの製品がかなりの量あります。すでに大型店でプラスチック製品の回収を始めており、その回収から得られた材料を混在させた製品を作るという形で具現化しています。サーキュラーデザインですね。さらに、今後作っていく新商品に関しては、その循環(サーキュラー)という考え方をテーマにした開発をデザインチームでやっています。

循環という言葉にはいろんな考え方があると思います。先ほど申し上げたリサイクル素材を使うということもあれば、ムダが無いように設計するみたいなこともありますし、使わなくなった時には他の方にお譲りしやすい仕組み・設計にするようなことも、循環の一つだと思います。また、エネルギーをどれだけ使わないようにするかも ESG の観点から来る商品開発の一つだと思いますし、そういうサーキュラーデザインを、それぞれのチームがアイデアを出しながら、次の商品開発にアウトプットできるように準備しています。

もう一つのパッケージ軸については、プラスチックパッケージを無くし、再生可能なものに変えていくと発表しており、パッケージのデザインと素材の変更をどんどんスピードを上げてやっています。店頭を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、パッケージをプラスチックから紙素材にしたり、そもそもパッケージがいらないと考えられるものはパッケージレス化したりということを掲げて進めています。

飲料製品のパッケージをペットボトルからアルミ缶に変更することを発表(無印良品のホームページから)

お客様はそういった働きかけを重視し、買うものを選ばれ時に参考にされている印象はあるでしょうか

宮尾:そうですね、ありますね。最近、水や飲料に関するリリースを出させていただきました。ペットボトル飲料をすべて缶にします、というものと、水については飲料として買うのではなく、無印良品の店内に給水機を設置するので、そこでお客様がそれぞれお持ちのマイボトルを使って水を入れて飲んでいただいて結構です、というものです。私たちが水場を提供することで、循環型社会への動きを加速していきたいというメッセージです。

このリリースで、お客様からは好意的な反応を頂戴しており、最近は給水所の利用も増えていますし、一方で飲料の売上のベースは変わっていないので、受け入れられているように思っています。

コロナ禍でも楽しめるイベントを目指して

Life in Art Exhibition は、無印良品の銀座店以外でも楽しめるんでしょうか

宮尾:はい。銀座店以外にも会場がたくさんあります。東京駅近くにギャラリーを併設した「IDÉE TOKYO」という店舗がありますが、そのギャラリーでは50名以上の著名なアーティストに参画いただいてオークションをやっています。これはちょっと面白い試みで、「自分が次の方に受け継ぎたい、あなたの考える Life in Art は?」というテーマでオークションを行なっていて、第1期はすでに終了し、第2期が始まっています。

また、先ほど申し上げた社会への貢献という形でも事業展開しています。東京ビエンナーレで協力いただいている東京都心北東エリア(千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがるエリア)で、コーヒーショップ、サテライトオフィス、美容室、ギャラリーなど31ヶ所に Life in Art Exhibition のサテライトギャラリーとして参加していただいており、会場オーナーの方々が紹介したいアーティストや IDÉE でお付き合いのあるアーティストの方々の作品を展示していただいています。

コロナ禍でなかなか飲食店を訪問するには一息必要だし、お店もすごく苦しい状況になってしまっている中で、今回サテライトギャラリーを一緒にやらせていただくことで、お客様がお店に来ていただけるきっかけ作りとなって社会に貢献できているじゃないかと思っています。Life in Art Exhibition の情報を配信はインスタグラムの公式アカウントでも行っています。訪問できない方も様子を見ていただくことができますし、オークションはオンラインでも参加できるので、是非楽しんでいただければと思います。

「IDÉE TOKYO」のギャラリーでは、50名以上のアーティストの作品オークションを開催

ありがとうございました。

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介護まるごとSaaSに商機を見た「Cariloop」のアイデア/GB Tech Trend

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。 今週の注目テックトレンド 米国シニア向けのケア市場は2016年時点で1,000億ドル(10兆円超)で、2024年には2,250億ドル(23兆円超)にまで成長するという予測が…

1,500万ドルの調達を果たしたCariloop。Image Credit: Cariloop。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。
今週の注目テックトレンド

米国シニア向けのケア市場は2016年時点で1,000億ドル(10兆円超)で、2024年には2,250億ドル(23兆円超)にまで成長するという予測があります。

一方、日本の介護市場はDeloiteeの調査によると、2014年時点で8.6兆円。2025年には18.7兆円程度まで拡大するそうです。日本との人口比では3倍ほどある米国市場ですが、この領域については30%ほどの差に留まるようです。

米国のシニア市場は大きく「マーケットプレイス」「介護士派遣」「支援ツール」という3つの分野に分かれます。

マーケットプレイスモデルの大手としては「Care.com」が挙げられます。介護士と介護者(家族)をマッチングするサービスで、バックグラウンドチェックを徹底的に行い、一定クオリティ以上の人材をマーケットプレイス上に載せることで質の高い人材のマッチングを行っています。

介護士派遣まで手がけるスタートアップで有名なのは、Andreessen Horowitzが出資する「Honor」があります。単なる派遣事業だけではマーケットプレイスに勝てないため、Honorが得意とするのがパーソナライズ体験です。たとえば利用者が中国系であれば、中国語を話せる介護士を自社契約人材の中から高速でマッチングするなど、サービス精度の高さを維持しています。

加えて、家の中でどんなサービスが提供されているかというモニタリングまで実施する、まさに川上(プロバイダー選定)から川下(サービス提供)までを押さえるサービスモデルです。全米600の訪問介護サービスのエージェントが全くIT化されていない、という問題のブレークスルーを狙っているようです。

Care.comは個人で活躍する介護士をエンパワーする提供価値を持っています。一方のHonorは自社で介護事業を完結し、既存プレイヤー市場をディスラプトする姿勢を持っています。

ただ、彼らはあくまでも「介護」にのみ徹しています。先日1,500万ドルの調達を発表した「Cariloop」は、介護に止まらず関連タスクも請け負う総合ケアサービスを提供しています。同社は遠隔シニアケアコーチとクラウドプラットフォームを使い、介護利用者のタスク管理を支援しています。

介護利用者の悩みは、一時の介護サービスで解決できるものではありません。日々、健康・資産管理などのタスクが発生します。しかし介護士は財務系のタスクを助けてくれるわけではありません。こうしたタスクを、家族全員で確認しながら、優先順位をつけて取り組む場が必要でした。

Cariloopは遠隔のオペレーターが映像もしくは音声電話で相談に乗ってくれながら、シニアケアに関するあらゆるタスク管理をしてくれます。介護プロバイダーの選択から相談に乗ってくれる支援ツールとしての市場ポジションを確立しているのです。

また、既存の介護サービス提供者がCariloopを一緒に使うことでさらに幅広く顧客ニーズに応えられます。いわゆるシニアケア市場における“Add-on”や“Extension”サービスとして、バックエンドタスクの管理・支援も果たしています。

料金は6カ月で599ドルほど。すでに市場で活躍するプロバイダーと利用家族の両方に導入してもらえる可能性があるため、スケールは比較的しやすい印象です。こうした支援型SaaSは日本でも続々と導入される市場機会があるかもしれません。

今週(8月23日〜8月29日)の主要ニュース

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10年目を迎える「Life in Art」、生活雑貨とアートの出会いが目指すものーー良品計画・宮尾弘子さん Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ。今回は、良品計画 生活雑貨部の宮尾弘子氏に登場いただきます。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 宮尾氏は、無印良品の店…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ。今回は、良品計画 生活雑貨部の宮尾弘子氏に登場いただきます。

宮尾氏は、無印良品の店舗スタッフからキャリアをスタートさせ、現在は本社で商品の企画デザインのチームを統括しておられます。

7月9日から9月5日まで、東京駅前にあるコンセプトストア「IDÉE TOKYO」と無印良品 銀座を中心に、企画展 「Life in Art Exhibition」が開催されていますが、この企画や運営にも深く関わっておられます。

本稿では前後半に渡り、生活雑貨を販売する無印良品がアートプロジェクトに関わる理由、それを通じて目指す将来、また、起業家やビジネスパーソンにとっても気になる、無印良品が海外事業で躍進している秘密などについて、話を伺いました。(文中太字の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は 宮尾氏、文中敬称略)

「無印良品」と「Life in Art」

現在、生活雑貨部企画デザイン担当部長(本年9月より企画デザイン室長)として、宮尾さんが担われているミッション・役割を教えてください

宮尾:プロダクトのデザインのとりまとめ、このあとご紹介する企画展示「Life in Art」の実装管理など、商品をデザインすることだけでなくディレクションの仕事をしています。また、「Found MUJI」という、世界中から見つけてきた日用品を扱うセレクトショップがあるのですが、そのセレクションも担当しており、そういった部門のデザイナーやディレクターを束ねる組織をマネージメントしています。

会社の中では、特に良品計画の思想を世の中に伝えるチームだと思っていまして、そういった思想を具現化するのがプロダクトデザイン、企画展示などで表現するのが「Life in Art」のような分野です。社会のいろんな課題を無印良品という思想のフィルターを通じて、どのように世の中のお客様に表現をしていくかということが、私たちのチームに与えられているミッションだと思います。

「感じ良いくらし」の提案と実現というのが良品計画が掲げている思想ですが、それを無印良品という世界で表現することと、無印良品の世界 =(ムダなものが)そぎ落とされたシンプルな世界の周辺に彩りを与える存在として、Life in Art や Found MUJI を掛け合わせることで、お客様に「感じ良いくらし」を提供していくのが私たちのチームのやっていることです。

プロジェクト発足から10年を迎えられたアートプロジェクト「Life in Art」は、どんな背景のもとで始まったのでしょうか?また、今年6月から始まった「Life in Art Exhibition」についても背景をお聞かせください

宮尾:良品計画のグループの中に「IDÉE(イデー)」という事業部があり、 Life in Art は IDÉE 事業部のメンバーが2011年にスタートさせました。今も少し状況は似ているかもしれませんが、2011年には東日本大震災があり、周囲を取り巻く環境がすごく過酷な状況にあり、人々の心のざわつきや不安に平穏を与える一助として、アートという存在が強く心に刺さる存在に変わってきた時期ですね。

Life in Art はそんな震災からの復興を後押しする思いから始まりました。発足から10年を迎えた今年、IDÉE が始めた活動を良品計画が支えることで、より広く深くお客様のもとに届くのではないかと考え、私たち企画デザイン担当も加わって、今年は無印良品 銀座をふんだんに使って、展示会「Life in Art Exhibition」として盛り上げようと共同展開することにしました。

無印良品 銀座 外観

Life in Art Exhibition を、無印良品 銀座や MUJI HOTEL GINZA で展開される中で、特に注力されたポイントなどはあるでしょうか?

宮尾:コロナ禍で美術館の展示などが多く中止になり情報発信の機会が失われる中、作家の皆さんが多くの人に共感してもらったり、情報発信したりできる機会をコロナ禍でも用意したい思いがありました。無印良品の世界旗艦店である無印良品 銀座は ATELIER MUJI GINZA というギャラリー併設店舗で、東京のど真ん中にある文化の発信源としてふさわしいことから、ここで開催することにしました。

IDÉE は家具やインテリア雑貨を取り扱うブランドなので、 Life in Art は少なからずアートへの興味を元々持たれている方が見に来てくださるという土壌の中でやってきました。しかし、今回は裾野を広げた分、初めてアートに触れる方もおられるので、「私でも買えそうだな」とか「部屋のコーディネートに手に入れたいな」とか思ってもらえる種類のアートや価格設定に調整しました。

Life in Art の運営メンバーが10年以上にわたって培ってきた作家の皆さんとの信頼関係を元に、こういう場所で展示するのであれば、「これくらいのサイズ感だろうか」とか「このようなテーマの作品がいいんじゃないか」といった話を繰り返し、双方で合意して作品を出品していただきました。

Life in Art Exhibition 開催中は、MUJI HOTEL GINZA の客室でもアート作品が展示
作品が日常の中に溶け込むよう工夫されている

企画展を通して、良品計画は今後アートにどのように関わっていこうと思われていますか

宮尾:アートには、社会に対してメッセージを強く打ち出していくような公共物も含めたようなものと、愛玩の対象となる所有物にするものの二種類があると思います。無印商品や IDÉE を通じて紹介したいアートは後者です。Life in Art を日本語で表現すると「日常芸術」となりますが、そういった日常の身近なもの、インテリアと同様の役割としてアートを取り入れていただく提案をしています。

アートという言葉が結構強いからハードルが高いと思う方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、インテリアや雑貨を買うような気持ちで購入いただけるような提案をしていきたいと考えています。アートが少し違う色を放つとすれば、心に訴えかけてくる要素が強い部分だと思っていて、それを提供することで暮らしの中に取り入れられるアイテムのジャンルが一つ増えることを期待しています。

無印良品や IDÉE がお客様に提供するのはインテリア雑貨だけではなく、暮らしを楽しむ中で心も穏やかになれるような要素を一緒に提供することを目指しています。Exhibition が始まり、このテーマの設定はズレていなかったと実感しています。初めてアート作品を見ているお客様の中から購入に繋がっている事例も多く、提案の仕方次第でビジネス的に可能性がある領域だと思っています。

わざわざ見に行くというよりも、自然と目に入ってくるように展示を構成しているので、文房具を買いに行ったついでに、ノートの集積にペイントの施された作品を構成するノートが一個単位で買えるような、ただアート作品を売るのとは違う工夫もしています。売り場との関連性も作っていて、日用品を買うついでに親和性の高いアートが同じレベル感で提案してあるのは新鮮に感じていただけるのではないでしょうか。

Life in Art Exhiibition に出展されている YOHEI OGAWA さんの作品
日常で使う実用的な商品とアート作品が同じ場所で展示・販売されているのは興味深い

良品計画はアートに深く取り組んでおられますが、スタートアップや他の企業も、経営や事業の中にアートを取り入れた方がいいと思われますか

宮尾:良品計画は9月1日付けで就任する新社長のもと、新しい中期経営計画を発表しており、この中に記された企業理念の中で「第二創業」をうたっています。今後、私たちが強化していきたい事業の一つが文化とアートです。

すべての企業が文化的なことやアートに足を踏み入れる必要はないでしょうが、良品計画はそういった事業への相性はいいと思います。私たちがやりたいアートや文化の事業にはいくつかパターンがあります。

一つは、今回紹介させていただいているような作家さんの生活も支えながら、暮らしに取り入れるアートをプロダクトに近い形で提供していく活動。もう一つは、公共と関わるもの——私の部署も企画協力しているのですが、良品計画にはソーシャルグッド事業部という部署があり、事業が各地域と重なり合いながら地域連携を行い、その地域の芸術祭に良品計画が協力して参画するというものです。

後者は、地域の活性化に一緒に貢献するという目的なので、CSR に近いかもしれません。企業全般では、後者の方が多いのではないかと思います。私のチームは今、東京ビエンナーレという芸術祭に関わっていて、企画を一緒にやらせていただいており、主催は民間組織ですが、このプログラムは街に溶け込んでその街自体を活性化することを目指されています。

企業がアートに関わる道は二つあり、良品計画としてはどっちもやっていこうとしています。私はどちらにも勝算はあると思いますが、利益的な勝算で言うと、どう販売していくかを事業として突き詰めていくべきですし、社会的な勝算で言えば、先程申し上げたような、地域の活性化に企業として関わるという発信になると思います。

後者(地域活性化に関わるもの)の方は、正直かなりお金はかかると思います。そのお金を地域から出していただいたり、自社で多少なりとも身銭を切りながら地域に貢献していくやり方になるので、その会社の成長をどう捉えるかでやっぱりアートを扱うべきか変わってくると思います。

(後半につづく)

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フェムテックブランド「Rinē」、吸水ショーツに続く第2弾「授乳用吸水ブラレット」の予約受付を開始

フェムテックブランド「Rinē(リネ)」を展開するNeithは31日、生理期間中に使用する吸水ショーツに続く第二弾のプロダクトとして、授乳期間中に使える吸水ブラレットの予約販売を開始した。同社は6月に総額約5,000万円の資金調達を発表している。 従来産後の女性が使用する授乳ブラには吸水性がなく、母乳漏れを防ぐためには母乳パッドが活用されることが多い。しかし「2〜3時間ごとに取替が必要」「擦れると…

Image credit: Rinē

フェムテックブランド「Rinē(リネ)」を展開するNeithは31日、生理期間中に使用する吸水ショーツに続く第二弾のプロダクトとして、授乳期間中に使える吸水ブラレットの予約販売を開始した。同社は6月に総額約5,000万円の資金調達を発表している。

従来産後の女性が使用する授乳ブラには吸水性がなく、母乳漏れを防ぐためには母乳パッドが活用されることが多い。しかし「2〜3時間ごとに取替が必要」「擦れると痛い」といった課題があり、そうした母親たちの声を形に今回の吸水ブラレットが誕生した。

Image credit: Rinē

同社の吸水ブラレットや吸水ショーツのメイン素材として採用してされている「テンセル™」は、持続可能な方法で調達した天然の木材を原料とした環境に配慮した繊維。生分解性を有するため、自然環境に還ることができるという。またサステナブルの観点のみならず、締め付け感を抑える柔らかさと吸水速乾性・抗菌防臭機能も備え、機能性にも優れている。

吸水ブラレットは吸水ショーツの構造が活かされつつも、カップの形状に影響が出ないよう半分の薄さを実現している。本販売は9月6日を予定しており、価格は5,900円(税込)。

生理期間中に使える吸水ショーツについては2021年3月にジーユーが発売を開始したほか、8月23日にはユニクロも9月からの発売開始を発表しており、国内での市場拡大の機運が高まっている。

執筆:平理沙子(Risako Taira)/編集:池田 将

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ハイブランド品価格比較サイト「Catch Fashion」が約20億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(8月23日~8月27日)

本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。 Copyright 2021 © Media Recipe. All Rights Reserved. 8月23日~8月27日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示されたものは16件で総額は1…

本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

Copyright 2021 © Media Recipe. All Rights Reserved.


8月23日~8月27日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示されたものは16件で総額は1,212億5,000万ウォン(約114億円)に達した。

(クリックして拡大)

主なスタートアップ投資

  • オンライン名品専門プラットフォーム「Catch Fashion(캐치패션)」を運営する Smile Ventures(스마일벤처스)が210億ウォン(約19.8億円)を調達。ハイブランドの公式海外オンライン販売チャネルを30以上提供、商品価格をリアルタイムで確認できるアグリゲータの役割を持つ。350万種に及ぶ世界中の公式ブランド品を多様に比較・検索できるメタサーチサービスと、決済まで簡単に解決できる技術力を保有。投資最適化により、オーダーメード型サービス、カテゴリ拡張を実施の予定。
  • 液化水素の専門企業 Hylium Industries(하이리움산업)が136億ウォン(約12.8億円)を調達。韓国政府が出資する科学技術研究院(KIST)で生み出された技術をもとに、韓国国内で初めて液化水素の生産、貯蔵、輸送技術を独自に開発した企業だ。UAM(都心型航空モビリティ)、ドローン、無人船に必要な液化水素パワーパックを開発し、国内外の主要企業に供給している。
  • 培養肉企業 Space F(스페이스에프)が70億ウォン(約6.6億円)を調達。韓国産学研出身の専門家集団が設立した企業で、培養肉の生産に不可欠な筋肉幹細胞の分離、培養・無血清培養液の開発などの特許と源泉技術を保有。豚の幹細胞を活用し、培養豚肉プロトタイプ開発に成功している。
  • SodaGift(소다기프트)」を運営する SodaCrew(소다크루)が57億ウォン(約5.3億円)を調達。海外から韓国向けにプレゼントするサービス「Gifticon(기프티콘)」、モバイル商品はリアルタイム、花、健康製品などの配送サービスを提供。調達した資金を使い、北米、オーストラリアなどに海外ギフトを送るインフラ構築を計画。
  • AI 音声合成企業 Lovo(로보)が53億ウォン(約5億円)を調達。最近、誰もが自分の AI 音声で収益を得られる「Lovo Marketplace(로보마켓플레이스)」をローンチした。調達した資金で、感情を表現することができる100以上の音声生成技術を開発する予定。
  • 生徒と保護者が使うアプリ「今日学校(오늘학교)」を運営する Athenas Lab(아테나스랩)が35億ウォン(約3.3億円)を調達。昨年、今日学校のローンチから2ヶ月でアプリストアの教育カテゴリで1位にランクイン。会員60万人を集め、レッスンや課外マッチングの「Prompie(프람피)」も運営。調達した資金を使って技術を高度化し、新たに人材を迎え入れる計画だ。

トレンド分析

アーリースタートアップ投資で ESG を考慮すべき理由

ESG(環境‧社会‧ガバナンス)経営が話題だ。今、大企業だけでなく、スタートアップもサステナビリティ(持続可能性)を達成するために ESG 経営を追求しなければならないという声が出てきている。投資家もまた、スタートアップ投資の基準に ESG 項目を検討し始めたが、この仕組みをアーリースタートアップにまで適用する様相を呈している。業績測定が困難なアーリーなスタートアップにおいては、非財務的指標を評価する ESG が投資基準とするのは、むしろ適しているかもしれない。

過去にも ESG の概念はあった。しかし、投資収益率とは関連がないと考えられていた。企業が頑張っても、収益を出すのが難しい環境や、社会的責任などの費用を伴うその他の条件まで考慮すれば、投資収益率の面では不利であると考えられたからだ。しかし、投資収益率と ESG の間の相関関係がある調査が出されたことで、ESG を追求しなければならない正当性は徐々に大きくなっている。オックスフォード大学やハーバード大学などでも、ESG を追求する企業と業績の間の量関係があるという研究結果を出しており、これを裏付けている。

このような事実に基づいて、VC もアーリースタートアップに投資する際に ESG を念頭に置き始めた。シリコンバレーアクセラレータ 500 Startups は、投資先を対象に調査した ESG レポートを発表、すべての投資ステージに ESG フレームを適用し始めた。 ESG フレームは、スクリーニング(労働権、性の平等、環境など ESG 関連の事前アンケートを実施)、投資(ESG 専門家とのつながり、政策支援ツールを提供)、監視(ESG 専門家が企業 ESG 経営を監視)などで構成される。投資の過程で、これらを適用して ESG を追求する企業に投資、ESG 目標を達成できるよう投資先をサポートする。

一部では、あえてアーリーな段階から ESG を問う必要があるかという話もあるが、もしかしたら発生する可能性のある企業経営のリスクを管理するという次元で必要であると考えられる。男女平等が崩れている企業は、今後大きなコストの支払を迫られる可能性があることを、Google 集団訴訟事件で確認されたセクハラ、性差別事件で Uber CEO が辞任したことからも思い出すことができる。

スタートアップの立場でも ESG を導入しなければなら多くの理由がある。資金調達にももちろん有利だが、人材確保にも ESG が重要になった。価値を重視する MZ 世代(ミレニアル+Z世代)は、自分が働いている会社が、環境とサステナビリティ、性の平等文化への貢献をしているのかも評価する。このような価値観を持つ MZ 世代が増加し、ESG は人材募集の過程でも必要な要素になった。また、製品の購入基準に「環境にやさしい」が含まれるなど、価値消費がトレンドになると ESG は無視できない重要基準となった。

その結果、アーリーな段階から ESG に基づい経営方式を追求することで、スタートアップは、認知度向上、人材確保などの企業競争力を強化して継続成長できる踏み台を用意することができる。投資家の立場からも、今後のスタートアップの成長に応じた回収が期待できるという点で、ESG はアーリースタートアップと投資会社の両方に重要な達成目標となっている。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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逆転の発想「朝ディナー」は何を変えたーーsio・鳥羽周作さん Vol.1

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はsioのオーナーシェフであり、食のワンストップ・クリエイティブカンパニー「シズる」代表取締役でもある鳥羽周作氏に登場いただきます。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催の…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はsioのオーナーシェフであり、食のワンストップ・クリエイティブカンパニー「シズる」代表取締役でもある鳥羽周作氏に登場いただきます。

鳥羽氏はサッカー選手、小学校教員を経て32歳の時に料理の世界に飛び込んだ、異色の経歴を持つ料理人です。2018年に自らがオーナーを務める「sio」をオープンし、2年連続でミシュランガイド東京の星を2年連続獲得されています。また、今年4月には博報堂ケトルと共同で、食に関するクリエイティブカンパニー「シズる」を設立しました。

YouTubeやソーシャルメディアを積極的に活用した新たな「美味しい」のあり方を伝えながら、レストランビジネスを次の段階へアップデートできないか、そんな模索を続けておられます。

本稿では前後半に渡り、鳥羽氏が繰り出すアイデアの源泉、それを支えるチーム、そしてsio・シズるが目指す食の新たなビジョンについてお届けいたします。(文中太字の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は鳥羽氏、文中敬称略)

朝ディナーの「なぜ」と結果

朝ディナーの一皿(撮影/編集部)

朝ディナーが話題になりました。私も体験しましたが、これをやろうと思った発想のきっかけをお話しいただいてもよろしいですか?

鳥羽:最初の緊急事態宣言が出た時は営業時間を守るか守らないか探りながらでしたが、2回目(の緊急事態宣言で)はみんな守りますっていう話になりました。12時くらいまでやってるレストランが8時までになると、4時間分ないじゃないですか。その空白の4時間どうしようか?みたいな話をしてたんです。

1回目のリモートワークの時って割と9時から仕事して5時に定時で上がるパターンだったのが、リモートワークにみんなが慣れて、例えばお昼に起きて5時までじゃなくて12時ぐらいまで根を詰めて仕事して朝寝てるって人もいれば、朝6時から仕事して終わらせて、12時ぐらいにはもうフリーの時間にするとか。

割とリモートワークの時間の使い方がフレキシブルになったっていう感じがあって、ツイッターで「朝ごはんとかやったらけっこう需要があるんじゃないの?」みたいな話をしたら反応が良かったんです。

なるほど

鳥羽:僕はそういうのは思い立ったら「すぐにやらないと逃す」っていうのは何となく肌感にいつも感じてることなので、するしないじゃなくて、とりあえずやるっていう。機会を逃すとどのみち成功しないので、やろう!って言って速攻で会社に連絡して、先に会社じゃなくてツイッターで「朝からディナーやります」って言っちゃったんです。

で、次の日にはもう予約サイトを開けて、1週間後には朝ディナー始めてました。

新しいことをやるにあたって人を雇ったりとかいろいろ体制を変えなきゃいけない。チームのメンバーは朝ディナーやるぞって言われた時にどんな反応だったんですか?

鳥羽:うちの会社は判断基準が「幸せの分母が増えるかどうか」みたいなところがあるんです。今回コロナ禍という部分もあって、初動に関してはめちゃくちゃみんなアグリーで、そこに関してはみんなバーンって信じてくれてるんで、全然ストレスなくいきましたね。

その中で難しかった点は

鳥羽:ただディナーやるっていうだけじゃお客さんが入らなくて、朝にディナーっていう体験価値はきっちり作り込まなきゃ難しかったです。そこで「朝」を連想させるいくつかのスペシャリテみたいなお皿、例えばサラダとかオムレツだとかを作って朝にチューニングし直しました。

朝の食事の中でレストラン体験を作るっていうのに、ただ単に夜のコースを短くして出すんじゃなくて、スピード感はありつつもそこにチューニングし直したっていうのは勝因として大きいかなと思います。

1週間で最適化はきちんとできた感じだったんですか?それともやりながら試行錯誤ですか?

鳥羽:すぐですね。そこに関してはいろんなジャンルに会社としてずっと取り組んできたので、手持ちの札は割と豊富なんです。すき焼きやったり居酒屋やったりとかもあるので、そういうところにはいつも困らない。

なるほど

鳥羽:世の中的に飲食店の中で一番重要なのって、お客さんがお金を払うことじゃないですか。売上を回収して原価とか人件費を引いたら利益になるんですけど、お客さんが今、何を求めて何を食べたいのかにどれだけ応えられるかっていうところが、実際のところ飲食店におけるマネタイズのポイントだと思っています。

基本的にはクライアントワークだと思ってるんですよね。お客さまの答えに対して予想の斜め上を行くことで感動が生まれて、そこにお金が落ちてまた行きたいっていう風になるのはすごくシンプルなしくみだと思います。

コロナ禍でジャンルレスにしていくことで、よりお客様のニーズにきちっと応えられる。例えば、「朝だからごはん食べたいんですけど」って言われたとき、「いや、うちはフレンチなんでパンしかないです」というのではなく、「もちろんごはんもありますよ」って、よりホテルビジネス化していく。

朝ディナーをやったことで、お客様のニーズに応えられる料理とその施策・やり方が受けて、ありがたいことにおかげさまでずっとほぼ満席をいただいたんで、ニーズに対しては応えられたのかなと思っています。

ただ、みんながみんなこれをやったら成功するかと言えばまたちょっと違う話なのかなと思います。より本質的な、みんなが食べたいと思っている朝の時間をどういう風にしていくかは今後の課題です。どういう風に持続させていくかを念頭に、毎日めちゃくちゃ悩んでます。

既存のアイデアに流れなかった理由

コロナ禍でレストランに行けないという問題に直面したとき、多くの方々がデリバリーというものを選択されたと思うんです。既存のアイデアに流れなかった理由は?

鳥羽:もちろんデリバリーをやってなかった訳ではないですし重要視してはいますが、レストランの価値はあくまでも体験価値だと思っています。体験価値を一番感じやすい場所はやっぱりレストランという場所だと思ってて、その中で提供できるものを最大化したのが朝ディナーだったと思います。テイクアウトなら8時間後に食べてもレストランの味が食べれるような商品開発するとか。

すべて「美味しい」という絶対的な存在に対してもっと俯瞰的なアプローチで、編集とプロデュース能力を掛け合わせて一つのコンテンツを作っていく。「美味しい」をプラットフォームにして、どうコンテンツを作っていくかってことに重きを置いています。そのベクトルをお客様に向けた上でのコンテンツ作りが一番大事なんじゃないかなと思っています。

ブログで情報発信された時、朝なのにディナーなんてなんじゃそりゃ?みたいなフィードバックをスルーせず、丁寧に向き合っておられましたね

鳥羽:これは生き方の問題というかスタンスの問題で、自分たちがやってることに対して当然批判もあるし理解されないこともある。そこはできる範囲できちっと向き合っていきたいというのが僕のスタンスです。

ディナーはもともと一日の主となる食事だから、朝ディナーっていう概念は間違ってないって説明すれば分かってもらえることなので。その知識がない中でそういう風に言われるのも違うと思うし、知れば理解してもらえると思っています。しかも朝ディナーってめちゃくちゃ体験価値が高いから、そういう人にこそ来て欲しいなっていう思いもありました。

フィードバックに向き合うことで得られるものはなんでしょうか?

鳥羽:これからの「普通」を作っていく「基準」を作る上で、やっぱりマイノリティーだと文化にならないし「普通」になっていかない。そういう批判的な部分もきちっと巻き込んでいく努力は、何か作っていくときにしていかなきゃいけない。

気持ちの問題だと思うんですけど、要は理解されなくてもいいってなっちゃうと、頑固親父のラーメン屋さんみたいになって、一部ではお客さんが来て行列かもしれないけど、それが文化になるかって言ったらやっぱり文化にはなりづらい。

僕らがやりたいのは文化だし、本質的なものを作っていくという意味ではそういう人たちに対してもきちんと理解をしてもらって、分かってもらうっていうスタンスは絶対になくしちゃいけないことだと常日頃思っています。

常にいろんなお客様の声と向き合っていくのがサービススタッフだと思うし、ホスピタリティーだと思ってる。決してマイナスの意見から何も得れないんじゃなくて、やり取りは自分が改めて成長する場でもあると思う。そこは真摯に。クレームこそ最大のチャンスだと僕は思ってるんで。

(後半につづく)

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妊産婦死亡率ゼロを目指すBabyscripts、医療支援プラットフォーム提供のPrivia Healthと提携

ピックアップ:New partnership gives Privia Health access to Babyscripts’ remote monitoring tools and educational content 重要なポイント:妊婦の死亡ゼロを目指すヘルスケアスタートアップ Babyscripts は2021年8月17日、医療支援のためのプラットフォームを展開する Pr…

Image credit: Babyscripts

ピックアップ:New partnership gives Privia Health access to Babyscripts’ remote monitoring tools and educational content

重要なポイント:妊婦の死亡ゼロを目指すヘルスケアスタートアップ Babyscripts は2021年8月17日、医療支援のためのプラットフォームを展開する Privia Health との提携を発表した。

  • 両社によると今回の提携の目的は、妊産婦の健康状態における格差を是正し、あらゆる人種の妊産婦死亡率を低下させることであるという。

詳細:Babyscripts は2014年、アメリカ・ワシントンを拠点に Anish Sebastian 氏が共同設立。2030年までに人種や文化的背景に関わらず妊産婦の死亡率をゼロにすることを目標とし、産婦人科に妊婦の健康をモニタリングするための IoT 対応のデバイスやアプリなどを提供する。同社は2020年12月に400万ドルの資金調達を行っている。

  • Privia Health はアメリカ・バージニア州で2007年に設立。医師及び患者の医療体験の質を向上させることを目的に、医療機関向けに診療管理システムや医療技術の支援ツールを提供する。2021年4月にナスダック上場を発表した。
  • 今回の提携により、Privia Health がサービスを提供する全米300以上の医療機関において、妊娠中および産後の母親が Babyscripts の遠隔モニタリングケアやアプリを利用できるようになる。具体的には、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった症状から、メンタルヘルスにおいてもモニタリングができるという。
  • Privia Health のゼネラルマネージャーである Melissa Montague 氏は今回の提携に際し、下記のようにコメントしている。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、妊産婦死亡の60%は予防可能です。この数字をゼロにするためには、すべての患者のリスクに対応し、すべての関係者を巻き込んだ一貫した戦略が必要です。

背景:アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、アメリカでは80年代後半から妊娠に関連する死亡者数が増加しており、1987年は出生10万人あたり7.2人だったところ、2017年には17.3人となっている。

  • さらに人種間の格差も顕在化しており、Commonwealth Fund のデータによると、黒人女性の妊産婦死亡率は37.1で、白人女性の2.5倍、ヒスパニック系女性の3倍となっている。

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執筆:平理沙子(Risako Taira)/編集:池田 将

via MobiHealthNews

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コロナ禍で現地観戦・応援ままならぬ今、注目集める「バーチャル高校野球」。学生スポーツ配信の意義とはー運動通信社とKDDIの協業

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業同士のケーススタディをお届けします。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 黒飛功二朗さんは、2015年5月にスポーツメディアスタート…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業同士のケーススタディをお届けします。

黒飛功二朗さんは、2015年5月にスポーツメディアスタートアップの運動通信社を設立しました。同社が2016年11月から KDDI との協業で運営するインターネットスポーツメディア 「スポーツブル」では、40種類以上の幅広い競技をさまざまなコンテンツで完全無料配信し、スポーツファンの幅広い層を獲得することに成功しました。2019年には、電通、博報堂 DY メディアパートナーズ、ミクシィ、講談社、本田圭佑氏の「KSK Angel Fund」から7.4億円を資金調達しています。

運動通信社では、2018年よりスポーツブルの中で 「バーチャル高校野球」というプロジェクトを朝日新聞、朝日放送と共に展開しています。かねてから協業関係にある KDDI の協力を得て、地方球場の通信ネットワークを整備し地方大会を全試合中継しようという試みで、これに加え、甲子園での全試合も余すことなく中継されることから、コロナ禍で現地観戦や応援がままならない今、高校野球ファンのみならず、球児の家族や友人、指導者や関係者らから高い評価を得ています。一つの試合をマルチ視点で楽しめるのも、通信環境の整備が可能にした醍醐味です。

運動通信社の代表である黒飛氏に、このプロジェクトを始めるに至った背景や実現までの経緯をお聞きしました。

みんなの長年の思いを形にした「バーチャル高校野球」

バーチャル高校野球は、黒飛さんが運動通信社を設立する前の2014年、高校野球の放送を担う朝日放送と共に立ち上げたプロジェクトです。当時、黒飛さんは電通から独立直後に立ち上げたコンサルティング会社で、プロジェクトをプロデュースする立場で関わっていましたが、2015年に運動通信社を設立したことを契機に、2018年からバーチャル高校野球とスポーツブルを連携。主催者である朝日新聞もメンバーに加わり、より具体的な事業となリました。バーチャル高校野球では現在、アプリケーションなどのプラットフォームの提供を運動通信社が、コンテンツの提供を朝日新聞、朝日放送が担っています。

2013年から高校野球のお仕事に関わらせて頂いていますが、その頃から「一試合でも多く、一人でも多く、高校野球を届けたい」という想いで取り組んできました。(高校野球は)プロスポーツと異なり、どのチームも一回負ければ終わり、毎年引退して行く球児たちがいます。その姿を映像化し生きた証として皆さんの記憶にストックして頂きたいと考えています。

朝日新聞さんと朝日放送さんの事業である「バーチャル高校野球」の継続的発展をサポートできるパートナーであり続けるために、運動通信社と KDDI とで最大限のソリューション提供を行っていくつもりです。歴史あるコンテンツにインターネットテクノロジーを組み合わせ、本来コンテンツが持つ感動ポテンシャルを引き出し、新しい体験価値を創造していきたいと考えています。(運動通信社 黒飛さん)

今年、全国津々浦々で開催される地方大会を含む全試合は全部で約3,800試合ですが、KDDI が協力し地方球場からバーチャル高校野球で中継できたものは約2,500試合に上ります。今後全ての試合を中継できるようにするには、さらなる地方の通信ネットワークの強化が必要で、運動通信社は KDDI とさらに映像伝送を含めた回線強化のための協業を進めています。バーチャル高校野球の記者発表の際、自身も高校球児だったという KDDI の繁田光平さんは、KDDI がこのプロジェクトに関わる意味を次のように強調していました。

バーチャル高校野球
バーチャル高校野球UI

KDDI は通信会社なので、地方球場でハイクオリティのコンテンツをアップロードしたり、通信速度が足りなかったりしたときに、KDDI のメンバーが調査に出向いてアンテナの出力を調整するなど、2500試合を届けるための努力をしています。KDDI グループをあげて JCOM や Jスポーツ といったグループ会社も協力し、コロナ禍でも皆さんに元気を届けたい。

この瞬間も、感動的シーンが生まれている可能性がある。各地でがんばっている姿が映像化されバズると、人々がスポーツを始めるきっかけになる。 5G を進める中で、今まで以上にストレスなくスポーツをみれる環境づくりは重要になってきます。コンテンツ化をお手伝いする中で、5G 時代の象徴的な「見る形」を提示していくことは、KDDI の使命だと考えています。(KDDI 繁田さん)

高校野球にとどまらない、学生スポーツやアマチュアスポーツに広がる可能性

コロナ禍で現地観戦や応援の機会が失われたことで、スポーツ界、とりわけ、黒飛さんが深く関わってきた高校野球界においても、その影響は少なくないものでした。バーチャル高校野球を展開する中で、SNS 上では多くの感謝の声とともに、もっと多くの試合配信を望む声があふれていると、黒飛さんは言います。

(SNS 上の)コメントを目にするたびに、私たちの取り組みが間違ってなかったんだと心が熱くなりました。コロナによりリアルが「分断される時代」こそ、通信の力で「選手とファンを繋ぐ」真価が問われると思います。

スマートフォン、インターネット、5Gの普及が進み、スマートフォンで動画を「消費」するのが当たり前の時代です。しかし、この動画の大量消費の中で私たちは「記憶にストックされる体験」を生み出していきたいという思いがあります。つまり、隙間時間をダラダラ埋める動画消費だけでなく、インターネットを通じて一生心に刻まれる貴重な体験を創出したい。

そのためには、歴史のある大切なコンテンツと最新テクノロジーの融合が重要だと考えています。開催すら危ぶまれたオリンピックも日本勢の活躍により明るいニュースが飛び交っていますが、スポーツには人を元気にする、勇気を奮い立たせる不思議な力があります。(運動通信社 黒飛さん)

KDDI もまた、学生スポーツへの応援に積極的です。2019年には「春の高校バレー」で「AR観戦」の体験を提供したほか、出資先でもあるアメリカのスタートアップ 4DREPLAY の技術を使った自由視点映像の会場内配信を実施。また、大学スポーツ協会 UNIVAS と提携し、動画配信や IoT を活用することで、選手の競技力向上、スマホでの試合観戦などファン拡大に向けた施策を共同で推進することを明らかにしています。また、運動通信社とは、バーチャル高校野球以外にも、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)のライブ配信で協業しています。

プロスポーツでは、頂点に上り詰めた一握りのスタープレイヤーにスポットライトが当たり、彼らの活躍への熱狂がバリューやビジネス価値を生み出してきました。対照的にアマチュアスポーツでは、自分の知っている誰かや、共感を持てる身近な存在の活躍を目にできる機会の創出が重要になります。かつて無かったロングテールなモノの販売が e コマースで実現したように、スポーツコンテンツの世界にもロングテールの波がやってきそうです。アスリートにとっても、コンテンツオーナーにとっても、プラットフォーマーにとっても魅力的な新境地となるかもしれません。

編集部では引き続き共創の取り組みをお伝えしていきます。

インターハイUI

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Robloxがチーム向けDiscordの「Guilded」を買収——ゲーム・コラボレーション市場の可能性/GB Tech Trend

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。 今週の注目テックトレンド 大手サービスの牙城が崩されつつあります。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関…

Robloxによる買収が報道されたGuilded。Image Credit: Guilded。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

大手サービスの牙城が崩されつつあります。

2億人以上のユーザーを抱える世界最大のゲーム用チャットプラットフォーム「Discord」。2018年の1.5億ドルの調達ラウンドでは、企業評価額が20億ドルを超えています。この巨大にプラットフォームに挑むのが、同じくゲーマー向けチャットプラットフォームを開発する「Guilded」です。8月17日に大手ゲームプラットフォーム「Roblox」によって買収されたという報道がありました。

同社は、プライベートエクイティの投資会社「Matrix Partners」がリードする700万ドルのシリーズAラウンドを昨年実施しています。このラウンドに参加した投資家には、Initialized Capital、Susa Ventures、Sterling.VCが含まれています。

Guildedは、ゲーマーチームメンバー間の円滑なコミュニケーション、しっかりとした組織運営が求められる競争ゲームやeSportsのために設計されたチャットプラットフォームを開発しています。

同サービスが狙うのは、Discordが取りこぼしつつあるチーム層でした。Discordが多人数コミュニケーションを想定している一方、Guildedはやや少数のチーム構成で、密なコミュニケーションを必要とするシチュエーションを狙っています。ゲーマーチームが必要とするスケジューリングおよびカレンダー機能が差別化ポイントだそうです。

他方、膨大なユーザーベースを確立しているDiscordは、オンラインストア「Nitro」を持っています。99ドル/年または9.99ドル/月を支払うことで、ストアから1,000ドル以上の価値のあるゲームに無制限にアクセスでき、追加のチャット機能が使えるようになるサービスです。「コミュニケーションプラットフォーム」と「コンテンツサービス」の2軸を結びつけ、サブスク収益化に成功しているのです。加えて、Discordには個人の開発者が発表するゲーム収益の90%を還元する仕組みがあります。

PC用デジタルゲームストアとしては最大手「Steam」や「Fortnite」の開発企業であるEpic Gamesが売上の30%を持っていってしまう点において価格優位性があるのです。

さて、DiscordとGuildedの関係性は、Skypeに挑んだZoomに似ています。ユーザーが求めているものを作れば、市場が巨大なため競合であっても成長が望めることを示しています。例えば今回のGuildedに関しては、「チーム性」に重きを置いて、市場シェアの獲得に取り組んでいました。Robloxはチーム・コラボレーションに強いGuildedを買収することによって「個人」ではなく「ゲーム・チーム需要」を丸ごと抱えようと考えているはずです。

前述したようなゲーマー向けエコシステムがDiscordの強みですが、仮にGuildedが同じようにチームゲーマーに特化した関連サービスをサブスクで提供したりすれば脅威になりそうです。

今週(8月16日〜8月22日)の主要ニュース

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米ライフサイエンス大手Labcorp、フェムテックスタートアップのOvia Healthを買収

ピックアップ:Labcorp scoops up femtech startup Ovia Health to deepen women’s health services 重要なポイント:アメリカのライフサイエンス分野大手 Labcorp は13日、女性の健康管理のためのプラットフォームを提供する Ovia Health を買収したことを発表した。 詳細:Ovia Health は2011年、ア…

Image credit: Ovia Health

ピックアップ:Labcorp scoops up femtech startup Ovia Health to deepen women’s health services

重要なポイント:アメリカのライフサイエンス分野大手 Labcorp は13日、女性の健康管理のためのプラットフォームを提供する Ovia Health を買収したことを発表した。

詳細:Ovia Health は2011年、アメリカ・ミネソタ州で Ovuline という名前で Paris Wallace 氏が設立。月経周期のトラッキングや、排卵日の予測、新生児の健康記録や LGBTQ+ の子育てに関する情報など女性およびその家族の健康管理・ケアを目的としたプラットフォームをデジタルで展開する。

  • 同社によると、設立以来1,500万以上の家族にサービスを提供し、年間収益は約2,000万米ドル。主要な大学や研究グループとの重要なパートナーシップも維持している。Crunchbase によると、これまでの累計調達額は約2,330万米ドル。
  • Labcorp は妊婦を含む女性に必要な検査や臨床試験・スクリーニング、教育支援を提供している。同社は今回の買収により、同社が持つ科学技術と Ovia Health のデータを活用し、妊婦や婦人科患者の体験を向上させることをねらいとしている。
  • Ovia Health の CEO 兼共同設立者 Paris Wallace 氏は、今回の買収発表に際し次のようにコメントしている。

私たちが Labcorp に参画することで、すべての女性が健康に妊娠・出産するために必要なケアやリソースを提供する機会が増えるでしょう。今後 Labcorp と共同で、女性の妊娠・出産に関するニーズを満たす新製品やサービスを開発することを楽しみにしています。

背景:2020年8月に発表された Pitchbook のデータによると、フェムテック市場はデジタルヘルスの中でも急成長している分野で2019年には8億2,060万米ドルを生み出し、2030年末には30億米ドルにまで成長すると試算されている。

  • しかしその成長にもかかわらず、Rock Health の2020年8月のデータによると、2011年以降にアメリカで行われたデジタルヘルス関連の資金調達のうちフェムテックに焦点が当たったものはわずか3%だった。

執筆:平理沙子(Risako Taira)/編集:池田 将

via MobiHealthNews

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