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Tokuriki

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NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「カンバセーショナルマーケティング」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月には代表取締役社長に就任。 ブログ以外にも日経ビジネスオンラインや日経MJのコラム連載等、複数の執筆・講演活動を行っており、2011年の登壇回数は100回を越える。また個人でも、WOMマーケティング協議会の事例共有委員会委員長や、政府広報アドバイザーなど幅広い活動を行っており、著書に「デジタル・ワークスタイル」、「アルファブロガー」等がある。

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執筆記事

ツイッターは非常識なサービスのままでいるべきか、普通のサービスを目指すべきかを考えてみる

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ここ最近、ツイッターのAPI騒動の影響で、ツイッターの未来に関する議論が久しぶりに盛り上がっている印象があります。 象徴的なのはこちらの記事でしょう。 ・Twitter関連サービスの終了相次ぐ API利用制限など「Twitterの変化」影響 実際にサービスが停止されたと紹介されているサービスは3件ですから、実際のTwitter関連サービスの数を考えると、終了相次ぐ、と言うほど相次いではいないと思う…

ここ最近、ツイッターのAPI騒動の影響で、ツイッターの未来に関する議論が久しぶりに盛り上がっている印象があります。

象徴的なのはこちらの記事でしょう。
Twitter関連サービスの終了相次ぐ API利用制限など「Twitterの変化」影響
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実際にサービスが停止されたと紹介されているサービスは3件ですから、実際のTwitter関連サービスの数を考えると、終了相次ぐ、と言うほど相次いではいないと思うのですが、そういうタイトルをつけたくなる気持ちも分かるぐらい、API変更によるTwitter関連サービスの開発者の反応はネガティブです。

このあたりの事情については、日本を代表するツイッタークライアントであるモバツイの開発者のえふしんさんがコラムを書かれているのでこちらを読んで頂ければと思いますが。

Twitter API ver1.1利用規約変更から学ぶプラットフォーム時代の生き方【連載:えふしん⑥】 |エンジニアtype

この辺の事情をご存じない方に簡単に説明すると要はこういうことです。

■無名だった頃のツイッターは、APIを大きく開発者に開放してきた。

■それにより、ツイッター社1社では不可能だったと思われるような急速な成長やエコシステムの拡大を実現してきた。

■最近のツイッターは、有名になって会社も大きくなったせいか、急に一部のAPIを制限し、これまで仲間だった開発者を閉め出し始めた。

■閉め出された開発者は当然ショックだし怒る。

まぁ、冷静に第三者の視点から見ると、無名だったアイドルが有名になった途端に無名だった頃に相手をしていたファンの相手をしなくなり、昔からのファンが怒っているという構図にも見えてしまったりするわけで、良くある話ではあるのでしょうが、個人的に気になるのはやはりツイッター社の本質的な変質が起こっているのかどうかです。

様々なウェブサービスやSNSをブログでレビューしてきた私の視点から言うと、ツイッターの最大の特徴というか、その特異性は、インフラ志向の独特なビジョンにあったと感じています。

2009年にツイッター社の社内文書が流出し、「Twitterは「2013年に10億人のユーザーを獲得して、地球という惑星の『Pulse(脈拍・鼓動)』となる。それは、『Alert system(警告システム)』ではなく、『Nervous system(神経系統)』という役割を持つ」という一文が非常に話題になりました。

120905twittrpulse.png

このパルスやナーバスシステム、という表現が実に独特で特徴的です。通常のウェブサービスは、PCやスマホで表示されるウェブの画面こそがサービスです。普通のユーザーはウェブのページからそのサービスを使うわけですから当然と言えば当然でしょう。ただ、このウェブの画面はあくまで「皮膚」の部分。ツイッターは「神経」や「鼓動」というのが味噌です。

私が2007年にツイッターを使い始めた当時、ツイッターに本格的に興味をもったのはえふしんさんが開発してくれたモバツイ、当時はmovaTwitterという名称のガラケー向けツイッタークライアントでした。

movaTwitter (モバトゥイッター)
(当時のレビューで自分が「ツイッター」と書かずに「トゥイッター」と書いてるところに時代を感じますね・・・)

モバツイは、日本のガラケーからは使うのが難しかったツイッターを、完璧にガラケーから使うことができるようにする、どころか本家よりも高機能な使い方ができるサービスで、私はこれによりツイッターの魅力に目覚めていくことになります。で、これさらっと書くと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、一般的なウェブサービスではこんなことは普通ありえません。

通常海外で何らかのサービスが流行ったときに日本で生まれるのは、そのサービスのクローンであり、そのサービスを便利に使えるようにするためのクライアントではありません。

米国でPinterestが流行ってピンタレストクローンが日本でも大量発生したように。
海外でFacebookやOrkutが流行って日本でもOrkutクローンのSNSが大量発生したように。
韓国でカカオトークが流行って日本でもLINEのようなクローンサービスが生まれたように。

通常は、アイデアをコピーしてタイムマシン経営でクローンにチャレンジするもので、ツイッターのようにサービスそのもののクライアントを作ることはしません。というか普通はできないんです。

Facebookの独自クライアントを作ろうにもそんなAPIはありませんし。
Pinterestの独自クライアントを作ろうにもそんなAPIはありませんし。
カカオトークやLINEとやり取りできる独自アプリを作ろうにもそんなAPIはありません。

ところが、ツイッターにおいては、モバツイのような完璧なツイッターの独自クライアントを開発者が作ることができました。ツイッターが出てきた当初、日本でも多数のツイッタークローンが雨後の竹の子のように生まれましたが、それらのサービスは次々に消えていったのに対し、ツイッター独自クライアントであるモバツイの方が100万を超えるユーザーを獲得することになったという事実が実に象徴的です。

自らのサービスを完全に動作させる独自クライアントを作れるようなAPIを公開するという行為は、実は一般的なウェブサービスの世界で考えると完全に非常識な行為であると言えると思います。

何しろ普通に考えたらウェブサービスの収益モデルの中心は、ユーザーが利用するウェブページに表示する広告の収入。その一番美味しい広告表示のウェブページやクライアント部分をみすみす競合やサードパーティーにあけわたし、インフラ部分だけに特化するなんて正直普通のウェブサービスのビジネスモデルの概念から考えたら狂気の沙汰な訳です。ウェブメールでいうと、広告が得られるユーザー向けのウェブページの部分は第三者に明け渡し、自分達はPOPやIMAPの裏のメールサーバーの部分を無料で受け取ってるみたいなもんですから。

ただ、何と言っても米国は、ビジネスモデルの存在しなかったYouTubeがGoogleに16億5000万ドルで買収されたり、ビジネスモデルの存在しないInstagramがFacebookに10億ドルで買収されたりする国。

Twitterの創業者は過去にも自ら立ち上げたブログサービスであるBloggerをGoogleに売却した経験のあるエバン・ウィリアムズですから、Twitterも当然そういうシナリオが念頭にあったはずです。個人的にも、伊藤穣一さんが「ビジネスモデルがあってユーザーがいないサービスはほぼ間違いなく失敗するけど、、ユーザーが100万人いてビジネスモデルがないサービスの方が成功する確率は間違いなく高いよ」と発言されていたのが非常に印象に残っていますが、まさにツイッターはそんな議論の中心にあるサービスでした。

実際、GoogleやFacebookによるTwitterの買収話は2009年頃から何度も浮かんでは消え浮かんでは消えと繰り返されます。

ただ、最終的にFacebookは自らニュースフィードをツイッターに近い形に変更してしまっていますし、Googleも自らツイッタークローンともいえるGoogle+をリリースしていますから、現時点ではツイッターの買収によるエグジットというシナリオは、かなり薄くなっているということが言えるでしょう。

そうなると、当然ツイッター社としても霞を食べて生きていくわけには生きませんから収益モデルが気になってくるわけです。

ちなみに、既にツイッターのユーザー数は5億人を超えているとも言われ、順調に伸びていると言われていますが。

TwitterコストロCEOが来日「人々のライフラインに」、バルスにも言及 -INTERNET Watch
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実は世界のインターネットユーザーは20億人程度です。
当然、この数字は今後大きくなるわけですが、逆にそうは言っても実は既に5億ユーザーいるツイッターの伸びしろは最大で現在の4倍程度「しかない」、という見方もできます。

現在のツイッターの収益がどれぐらいなのか分かりませんが、その値を4倍程度にしかできないとなると、ツイッターの収益面での伸びしろは実は大きくないのでは、と投資家に見えてしまってもおかしくありません。そういう意味で、「神経」に特化するのではなく、これまでパートナーに開放していた収益を得やすいであろう「皮膚」の方を自社で全部取りたくなってくる、というのはビジネス的な思考回路であればある意味当たり前ということができるでしょう。

でも、やっぱりツイッターのツイッターならではの非常識なアプローチに感動した人間からすると、ツイッターが普通のウェブサービスの当たり前の戦略を選択するというのは、やはり寂しい限りです。やみくもにツイッター独自クライアントを制限するよりは、逆に「神経系」としてツイート広告のAPIもツイッター独自クライアントに解放して、レベニューシェアでエコシステムを広げるとか、APIを有料化することで、選択の余地を残すとかしてもいいんじゃないかなと思ったりします。

今回のITmediaの記事の発端となったP3:PeraPeraPrvの開発者であるlynmockさんも、最近日本語化されたChange.orgに掲載されている海外のTwitterエコシステムのオープン維持請願署名への協力依頼を推奨されており、現時点でのツイッター開発者の間では、ツイッターへの期待が終了していると言うよりは、ツイッター社の現在の姿勢に対する批判が盛り上がっているという方が正しいかもしれません。

サービス開始当初は利用者の意見を取り入れ、利用者とともにサービスの仕様を拡大してきたツイッターですから、今回のAPI制限宣言が神経系を目指すビジョンの断念宣言とするのではなく、この機会に改めてツイッター関連サービス開発者と共存するツイッターならではの非常識な回答を見つけて欲しいなと思ったりするのは、私だけでしょうか・・・?

※この記事はブログtokuriki.comの記事を転載したものです。

スタートアップのタイムマシン経営は、インドネシアのような東南アジアではまだまだ機能するかもしれない

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もう2週間前の話になりますが、ジャカルタで開催されたStartup Asia Jakartaに参加してきました。ファーストインプレッションは「海外市場での成功には、ネットの世界でもきめ細かいローカライズが重要」という記事に書きましたが、2日間を追えての感想をまとめておきたいと思います。 まず率直な印象は「すごい盛り上がってるなぁ」の一言につきます。もちろん、日本も最近は様々なインキュベーターや、ス…

もう2週間前の話になりますが、ジャカルタで開催されたStartup Asia Jakartaに参加してきました。ファーストインプレッションは「海外市場での成功には、ネットの世界でもきめ細かいローカライズが重要」という記事に書きましたが、2日間を追えての感想をまとめておきたいと思います。

まず率直な印象は「すごい盛り上がってるなぁ」の一言につきます。もちろん、日本も最近は様々なインキュベーターや、スタートアップ支援の仕組みができてスタートアップバブルの様相を呈している印象もあり、「なぜスゴそうな人も大ゴケするのか? テーマで間違うスタートアップ」なんて記事も話題になっていましたが、ジャカルタで感じた印象はそれよりももっと根源的な盛り上がり。

何しろインドネシアは現在インターネット利用者の伸び率が世界トップ3に入るほどの勢いらしく、その成長ぶりは東南アジアでも群を抜いています。おまけに何しろ人口も非常に多い国ですから、今後経済が発展すればネット人口やネット産業が発展するのは自明の理。シンプルにいわゆる「タイムマシン経営」の手法で、米国や日本では流行ってるけど、まだインドネシアで流行っていないサービスを今のうちに始めておけば、十分それが今後ブレイクする可能性があるわけです。まさに日本のビットバレー頃の雰囲気とかって、こんな感じだったのかなぁと思わせるイベントでした。

ただ、初期の米国のネットバブルは、まだ一部では盛り上がりつつも本当にインターネットが社会を変えるのか多くの人は半信半疑、という状況だったと思いますが、インドネシアにおけるそれは確実に来る未来は分かっているので、誰がそれをつかむのか、という少し趣の違う競争のように感じます。

STARTUP ASIA JAKARTA

当然、まだまだインターネットの利用率は20%以下と低かったり、ネットの回線速度が十分でなかったり、ペイメントの仕組みや配達の仕組みが確立していなかったりという環境としての遅れはありますから、それを前提に年表をまき直すというのも大事なんですが。

一方で、携帯のメッセージングツールとして異様なほどFacebookの利用率が高くなっていたり、iPhoneやAndroidではなくブラックベリーがスマホの主流だったりという、現在のインドネシアならではの環境はありますから、日本と同じ順番で各種サービスが流行るかと言ったらそんなことはないというのが面白いところではあります。

ただ、長い目で見れば、いつか米国や日本と同様に、各種のサービスが普及し十分に利益を上げるだろうというのは容易に想像できます。初期のAmazonが指摘されていたような「ネットでものを買う人なんかいない」なんて指摘は今更誰もしないわけで、ECサイトのセッションやペイメントシステムのセッションまで、壇上にいる競合の数社の中から確実に成功者が必ず出るんだろうな、という印象のスタートアップイベントでした。

イベントで登壇された、インドネシアで成功しているTOKOBAGUSというサイトに至っては、起業家の方はオランダかどこかの人らしいのですが、なんと7年前にバリに来てサービスを始めたと言うから凄いですし。その横で、インドネシアでNo1のECサイトを目指すと高らかに宣言したのは楽天インドネシア担当のテソンさん。

STARTUP ASIA JAKARTA

楽天さんは、インドネシアの環境に合わせて着払いのバイクデリバリー部隊を自ら組織したり、コンビニ受け取りを開始してみたりと、タイムマシン経営の時間を早回しするための取り組みに注力されているようでした。

以前TechCrunchに「もはや、日本でタイムマシン経営を成立させるのは無理か」なんて記事を投稿したことがありますが、実はインドネシアのようなネット後進国においては、まだまだ可能性のある手法だなと感じるわけです。

さらにStartup Asia Jakartaで興味深かったのは、日本企業の存在感。前述の楽天はもとより、イベントのスポンサーに多くの日本企業が名を連ねていましたし、当日の海外投資家が考えるインドネシア市場をテーマにしたセッションでは、海外投資家として登壇した4人のうち3人が日本人という、まるでここは日本か状態。

STARTUP ASIA JAKARTA

何でも米国の投資家はほとんどアジアというと中国とインドしか見ていないらしく、インドネシアは結構日本の投資家にとっては良い市場なんだそうです。日本のネット企業のインドネシア進出も多く始まっているそうですし、インドネシア人の対日感情はおおむね好意的。おまけにインドネシア人は温厚な人が多く日本人とも相性が良いため、実はインドネシアは日本のネット企業の進出先としてはかなり良い条件が揃っているんだそうです。

当然、世界を変えるような新しいサービスを生み出したいのであれば、まずは何も言わずにシリコンバレーを目指すというのは論理的な選択肢ではあるのですが。急成長する市場で自らのサービスを成功させたい、というモチベーションの起業家なのであれば、実は競争が超激しいシリコンバレーを目指すより、ジャカルタのような東南アジアをタイムマシン経営で目指してみるのも面白い選択肢なんじゃなかろうか、そんなことを強く感じてしまう2日間でした。

Startup Asia Jakartaの詳細については、Tech in Asiaのこちらの記事をどうぞ。

[Startup Asia Jakarta 2012] 海外市場での成功には、ネットの世界でもきめ細かいローカライズが重要

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現在、インドネシアのジャカルタで STARTUP ASIA JAKARTA というイベントに参加中です。イベントの詳細については池田さんの記事を見て頂ければと思いますが、セッションを聞いていて感じたことをメモしておきたいと思います。 インドネシア市場に対する、Google と Tencent のアプローチの違い 初日のオープニングを飾ったのは、Google Indonesiaの代表者とのディスカッ…

現在、インドネシアのジャカルタで STARTUP ASIA JAKARTA というイベントに参加中です。イベントの詳細については池田さんの記事を見て頂ければと思いますが、セッションを聞いていて感じたことをメモしておきたいと思います。

インドネシア市場に対する、Google と Tencent のアプローチの違い

Ruby Ramawy of Google Indonesia interviewed by Willis Wee

初日のオープニングを飾ったのは、Google Indonesiaの代表者とのディスカッションと、Tencentのアジア市場の責任者のディスカッション。 Googleは言わずと知れたインターネットのトップ企業ですが、Tencentも中国がメインとはいえ実は世界で5本の指に入る巨大ネット企業。

Google Indonesiaの人が、モデレーターのWillis Weeに何度もこれからGoogleはインドネシアで何に注力するのかと聞かれて答えをはぐらかすのに比べて、Tencentの人がやたらと7月から開始する自社サービスをアピールしまくるという姿勢が対照的だったのですが。

なるほどなぁ、と思ったのはインドネシア市場に対峙する姿勢。

Googleは、どちらかというと淡々とインドネシアでも世界でやっていることと同じ事をやっていく、という実務的なコメントに終始した印象があります。単純にこういう場なので言葉を濁していたのかもしれませんが、再三インドネシアにおける戦略を聞かれても、やるべきことをやると繰り返すのみで、インドネシア市場向けの独自の戦略を考えているようには受け取れませんでした。

一方でTencentは、逆に既存のインドネシアの貧富の差によるコミュニケーションプラットフォームの違いを例に上げ、Tencent自体はその壁を壊して誰でも使える無料のコミュニケーションプラットフォームを確立し、そこからコンテンツでビジネスにするという持論を展開。 中国における成功体験を元にしつつも、インドネシア市場に対してやり方を変えようとしているというメッセージを明確に打ち出していました。

インドネシアの市場というのは、iPhoneやAndroidのシェアはそれほど高くないそうで、ブラックベリーが人気という独特な市場。Facebookの利用率が高いのも実はブラックベリー経由のメッセージのやり取りが無料になるからという背景があるそうです。一方で所得水準の高くない人はまだまだいわゆるフィーチャーフォンを使っているケースも多いんだとか。

Suyang Zhang of Tencent Mobile Global interviewed by Willis Wee

当然そんな市場で、通常のスマートフォンアプリに頼った展開だけで成功する確立は低くなります。そこでTencentの人は、使っている端末によりコミュニケーションプラットフォームが異なるのは問題だという指摘から、自分たちは全ての人が無料で使えるプラットフォームを作るんだというビジョンを提示。それに合わせて中国のアプリをそのままインドネシアに持ってくるのではなく、インドネシア向けにサービスをアレンジしているようでした。 特に印象的だったのは、Tencentはインドネシアではスタートアップなので、スタートアップのように行動していると強調していて、インドネシアで自分でスタートアップをやろうとしている人は是非Tencentで一緒にやらないかと会場でアピールしていたことです。

現段階の二人の話の印象だけで言うと、インドネシアで成功するのはGoogleではなくTencentではないかという印象を持ちます。当然Googleはグローバルの認知度が高いですから、このアプローチで良いのかもしれませんが、日本企業がどちらを参考にするべきかといえば間違い無くTencentのアプローチでしょう。

日本のスタートアップに求められる、国別のアプローチ

iTunes Storeのおかげで、日本のスタートアップが開発したアプリが東南アジアの国々で流行るという現象は珍しくなくなりましたが、その流行が定着するかどうかには、また地道な国ごとのアプローチが必要になるのだと思います。

実際、米国で圧倒的な存在であるオークションサイトのeBayは日本で散々な結果になりましたし、米国ではもはやYahooをライバルとしてみなしていないGoogleも、日本ではヤフージャパンの圧倒的な地位を崩す存在にはなれていません。 世界で圧倒的な存在であるFacebookも、単純に日本語化だけを発表した2008年頃から数年は日本で鳴かず飛ばずでしたし、要は、日本で成功したからといって、そのままのサービスを多言語化すれば、そのまま他の国でも上手くいくだろうという考えは、大きな間違いということです。

日本で成功している海外勢を見れば、ローカライズの真髄が見える

日本における歴史を振り返ると、ヤフージャパンやAmazonのような米国の成功企業が日本においてもキングとして君臨しているのは、早期にそれぞれの日本担当者が日本人向けのローカライズやオペレーションの確立、日本におけるマーケティングやPRに注力したからですし、Facebookが日本で存在感を急速に増したのはFacebookの日本チームの確立が貢献していると感じています。

 

ネットのおかげで国境を超えてウェブサービスやアプリが伝播することは珍しくなくなりましたし、日本のサービスをちゃんと各国の言語に対応することで、利用者が気がついたら増えるというケースは今後も増えてくると思います。ただ、単純にアンテナの高いそういう海外のユーザーに使ってもらっていることを喜ぶだけでなく、その国で本当に重要なサービスに進化するためには、ひとつひとつの国に対して細かく戦略を変えていくことが、今後の日本のウェブサービスやアプリの海外展開において、非常に重要になってくるのではないかな。

そんなことを考えながらインドネシアでの時間を過ごしています。

Startup Asia Jakartaの詳細については、Tech in Asiaのこちらの記事をどうぞ。

スタートアップのプレゼン大会で気をつけるべき5つのポイント

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最近のスタートアップ企業を巡る盛り上がりもあり、ウェブサービスやアプリのプレゼン大会というのは年々増える傾向にあります。 私自身もWISHというウェブサービスのプレゼン大会を2009年から主催し、多くの企業の方々のプレゼンを見てきましたが、日本ではプレゼンの教育を受ける機会が少ないせいか、せっかくの良いサービスなのにもったいないと感じるプレゼンを見ることも少なくありません。 Photo by ko…

最近のスタートアップ企業を巡る盛り上がりもあり、ウェブサービスやアプリのプレゼン大会というのは年々増える傾向にあります。

私自身もWISHというウェブサービスのプレゼン大会を2009年から主催し、多くの企業の方々のプレゼンを見てきましたが、日本ではプレゼンの教育を受ける機会が少ないせいか、せっかくの良いサービスなのにもったいないと感じるプレゼンを見ることも少なくありません。

DSC05236Photo by koyhoge

私自身がサービス側でのプレゼンの経験があるわけではありませんが、プレゼン大会の主催者側の視点から、ここは気をつけた方が良いんじゃないかなと思うところをあげてみたいと思います。
(ちなみに、このポイントはあくまで日本の「プレゼン大会」向けであって、「投資家」向けのポイントではありません。念のため。)

ポイント1:「自分」を知ってもらう

いきなりウェブサービスのプレゼンという趣旨から外れてしまうかもしれませんが、個人的にプレゼンの冒頭でもったいないなと感じるのは、意外なほど「自分が誰なのか」を話す人が少ないことです。

プレゼン大会形式の場合プレゼン時間が10分とか5分というケースは少なくないですから、いきなりサービスの特徴をアピールしたい気持ちは良くわかります。

ただ、プレゼンの場、というのはあくまで人と人のコミュニケーションの一つ。自分がどういう人間かというのを聴衆に知ってもらい、「この人応援したいな」と感じてもらうのはプレゼンの入り口としてとても大事です。

人となりや理念・ビジョンに共感してもらえれば、サービスのアピール自体は不発に終わっても、プレゼンが終わってから声をかけてもらえる可能性が実は高くなるのです。

長々とプロフィールを説明する必要はもちろんありませんが、自分の人となりを少しでも感じさせるような逸話や説明を最初に入れるのをお勧めします。

ポイント2:自分たちが解決する「問題」を話す

これは2009年に来日したシリコンバレーの投資家として有名な500startupのDave McClureさんがStartup Weekend Tokyoで強調していたポイントです。

私たちはついつい自分たちのサービスの特徴や機能から話し始めてしまいがちですが、10分程度のプレゼンでいきなりそこから話し始めるのは危険です。何しろ聴衆はその機能が特徴的か合意してくれるかどうか分かりませんし、全く知識がなく理解してくれないかもしれません。

まず強調すべきは、現在存在する「問題」や「課題」です。

問題が存在し、それを解決する必要がありそうだという点で聴衆の共感が得られると、その後のサービス紹介もすんなりと聴衆に理解してもらえるようになります。問題に対する姿勢が明確であれば、聴衆側から適切なアドバイスやフィードバックももらいやすくなります。

ポイント3:インパクトのあるデモをする

当たり前のようで意外にトラブルが多いのがやはり「デモ」です。

プレゼン時間が短いため、リスクの高いデモはせずにパワーポイントだけでプレゼンを済ませるという方が多いのも事実ですが、個人的な印象から言うとやはりサービスやアプリのプレゼンイベントで「デモ」は必須です。

ポイント1と逆説的になりますが、プレゼンをするのは人間でも、実際に聴衆にアピールし、実際に聴衆に使ってもらうのはサービスやアプリ自体であり、サービスのデモを見せずにプレゼンだけに終始してしまうのは、映画の画像素材を見せずに口頭で映画の内容や魅力を説明しようとするようなものです。

また、デモをする際にも時間が短い中、基本機能から順番にすべての機能を見せようとする人がいますが、見せるべきは最も自信がある部分。壇上でダラダラと地味な機能を見せていくと逆効果になることも良くあります。

あなたの自身の作品であるサービスの良さが、短い時間でも聴衆の印象に残るように、是非周到に準備をして本番のデモに望んで下さい。

回線状態やブラウザのタイムアウトなどによるトラブルも良く起こりますから、動画で事前に撮影しておき、口頭で説明をかぶせていくというやり方もありでしょう。

ポイント4:すべてを説明しようとしない

5分や10分など、短い時間制限のプレゼン大会で良く発生するトラブルが、時間オーバーによる尻切れトンボや、短時間にすべてを説明しようとすることで詰め込みすぎでポイントが不明になるプレゼンです。

プレゼン大会のようなイベントでは、次から次に様々なサービスがプレゼンをしますから、実は全員の聴衆が冒頭から最後まですべてを聞き逃さないようにしっかり聞いているなんていうことはありえません。

細かいポイントを次から次に説明したところで、聴衆には一つも印象に残っておらず、なんだか難しいプレゼンだったという印象になるのが関の山です。

伝えたいポイントを理想的には一つ、多くても三つぐらいにしぼりましょう。プレゼンを聞いた人がワンフレーズだけでも覚えてくれるように、徹底的にそのポイントについてのこだわりをアピールすることに集中しましょう。

プレゼン後の名刺交換であなたの顔を覚えてなかった人が、名刺を見て「あ、○○のサービスですよね。」とそのフレーズを口にしてくれれば大成功です。

ポイント5:聴衆を味方につける

プレゼン大会ということで、普段の投資家向けプレゼンや記者発表会と少し意識を変えた方が良いのではないかなと、個人的に感じているのがこのポイント。
通常の投資家向けプレゼンや記者発表会では、自分たちのサービスの強みや特徴をアピールするために必要以上に強気にプレゼンをする必要があると思います。話を聞く側もプロで、プレゼンを聞くこと自体が仕事ですから、特徴や強みを明確に伝えるのは非常に重要です。

ただ、プレゼン大会のようなユーザー向けのイベント、特に日本のイベントでは、あまりに自分たちの成功や強みばかりをアピールしすぎると意外に聴衆が引いてしまったり、厳しい目で論理的な抜け穴を指摘されることが散見されます。

プレゼン大会のような見込ユーザーが多く参加するイベントでは、自分たちの強みをアピールするだけでなく、弱みや悩みをさらけだした方が聴衆が応援してくれるようになるケースが多々あります。

当然、競合相手に塩を送るようなプレゼンはする必要はありませんが、あえて聴衆に悩みを相談したり、お願いをしてみたりして、聴衆を味方につけられるように努力してみることをお勧めします。

ということで、5つのポイントをご紹介してみました。もちろん実際のプレゼンは、人の性格や雰囲気、サービスの特徴によって相当あるべき姿というのは違うと思いますので、いろんな人のプレゼンを参考にしてみるのも大事です。

最近は動画でプレゼンの様子が公開されているイベントも多いですから、是非いろいろと参考にしてみましょう。昨年のWISH2011に登壇した人たちの動画も下記にアップされています。

【WISH2011+】第2部プレゼンテーション – YouTube

例えば、大賞を受賞されたZaimさんのプレゼンテーションもこんな感じでみることができます。

ちなみに、プレゼン大会でプレゼンターの方々が意識しすぎかなと思うのが、プレゼン大会での表彰。もちろん、表彰されないよりは表彰されるにこしたことはないのですが、スタートアップの世界というのはオリンピックのように同じ競技で競争しているわけでもなく、勝者が一人しか生まれないわけではありません。

賞が取れて、プレゼンの機会以上にアピールできるのに越したことはありませんが、実はプレゼン大会に興味をもっているようなアンテナの高い人たちに10分程度とはいえ、しっかり話を聞いてもらえるチャンスをもらえることこそが、プレゼン大会でプレゼンする価値ではないかと思っています。

受賞の有無で一喜一憂するのではなく、プレゼンを通じて、一人でもファンを増やすことができれば、そのプレゼンは十分成功。

そんな心意気で是非プレゼンの機会にどんどんチャレンジしてみて下さい。