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Taishi Masubuchi

Taishi Masubuchi

1996年東京生まれ。シンガポールでの高校生活、米シアトルでの大学生活を通し、いつの間にかテクノロジーが好きに。現在はブロックチェーンリサーチャーとして活動。個人で、イーサリアム関連のプロジェクトに多く関わる。ブロックチェーン以外でも、東南アジア、北米(シアトル中心)のスタートアップの動きに着目。ジャーナリズムを通した小さなムーブメントを乱発し続けるために記事執筆。旅行をもっとしたくなるような、"位置"に価値を付けていく事業考案中。旅が好きです! Twitter - @taiseaocean

執筆記事

スタートアップが本当に重視すべき「粗利」の捉え方

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ピックアップ:Moats Before (Gross) Margins スタートアップが本当に重視すべき「粗利」の捉え方について、Andreessen Horowitzがレポート「Moats Before(Gross)Margins」を公開している。同レポートでは、スタートアップが高い粗利率を継続しなくても安定した経営を可能とする4つの「Moats(堀)」を例に挙げ分析している。 Economie…

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ピックアップ:Moats Before (Gross) Margins

スタートアップが本当に重視すべき「粗利」の捉え方について、Andreessen Horowitzがレポート「Moats Before(Gross)Margins」を公開している。同レポートでは、スタートアップが高い粗利率を継続しなくても安定した経営を可能とする4つの「Moats(堀)」を例に挙げ分析している。

  • Economies of Scale(規模の経済・スケールメリット)
  • Meaningful Differentiated Technologies(意味のあるテクノロジー優位性)
  • Network Effect(ネットワークエフェクト)
  • Direct Brand Power(ブランド力)

もちろん、スタートアップが利益を重要視しなくていいという主張ではない。利益が立たなければ、そもそも企業経営は続かないし、R&Dやマーケティング費用等へのキャッシュフローが回らず、悪循環に陥る。

むしろ、上記にあげたような「Moats」が前提にあるからこそ、高い利益率は自然とついてくる性質にある。つまり、粗利の高さが「Moats」となり安全な企業経営を出来るのではなく、注目すべきなのは「Moats」を如何に構築していくかであって、ゴールのないR&D・マーケティングではないということだ。その一例にAppleを取り上げ、同社の粗利率は38%のみであることを指摘している。

以下で、それぞれのMoatsに関する詳細をまとめた。

Economies of Scale

Economies of Scaleの顕著な例として、Amazonの流通ネットワークが挙げられている。絶対的な経済規模を構築し、コスト面で優位性を獲得することでユーザー視点で見れば「そのプロダクトを利用する意味」を自動的に生み出すことが可能となる。これが、生産可能量の絶対数増加に伴うコスト優位性を意味するEconomies of Scaleだ。

では、Economies of Scaleを自社が得ているかの判断基準はどういったものになるのか。レポートでは以下のようにまとめられている。

  • 単価コストが競合より「確実かつ明確に」低くなっているか?
  • ユニットエコノミクス(最小単位あたりの収益性)を下げず、単価コストが成長しているか?
  • サプライヤー・バイヤーに対する「明確な交渉材料」を持っているか?

「交渉材料」を市場から獲得した例には「Spotify」が挙げられる。確かに同社はテイラースウィフトなどのアーティストと、音楽に対する捉え方の違いから問題を抱えていた過去があった。しかし、Spotifyは今や5000万曲以上のコンテンツまでスケールさせ、アーティストとの明確な交渉材料を手にしはじめている。

Meaningfully differentiated technology

経営者として「明確な」テクノロジーの違いを導くためには、プロダクト機能や性質のどの1点にフォーカスした差別化に取り組んでいくかがキーとなる。多くの企業は自社の技術が「飛びぬけて素晴らしい」と信じているため、それを別の角度から表現していくことが重要となる。

  • その技術・プロダクトはIP(Intellectural Property: 知的財産、特許など)を取得しているか?
  • 競合より価格設定が多少高くても、その技術に投資するユーザーから選択してもらえるか?

Network effects

粗利が低くとも、なぜ成長を遂げることができるのかに対する答えが「ネットワーク・エフェクト」です。UberやLyftなどのデジタルマーケットプレイスのスタートアップの成長過程をその代表例に挙げる。ネットワーク・エフェクトが自社プロダクトに生じているかは、「ユーザーエンゲージメント」・「マネタイズ」の2点から判断できるとしている。

  • ユーザー数が伸びるのと並行して、ユーザーエンゲージメント(DAU/MAUなど)に成長はみられるか?
  • プラットフォームにおける需要と供給にオーガニックグロース(自律的成長)がみられるか?

Direct brand power

「強い」ブランド力の構築には「カルト的信者」をどのように長期的目線で集めていくかが重要となってくる。もちろん、そうしたブランドの構築には資金投入が求められるが、必要資金と捉えるより投資と捉えリターンを求めるべきであるとしている。

  • 売り上げのトラフィックが常に「Organic > Paid」となっているか?
  • 初期のCAC率(Customer Acquisition Cost: 顧客獲得費用)は継続的に下落傾向にあるか?

実際、スタートアップを経営するうえで上記にあげたような「Moats」は知らないうちにマーケティング施策に取り組まれていることが多いと感じる。だからこそスタートアップ経営としてトップがこういったオーダーを重視すると、自然にこれ自体が一つのMoatsとなり、スタートアップのDefensibilityへと繋がるのだと思う。

個人ECをノーコードでアプリ化する「Appify」、100万店舗のBASEと提携

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ニュースサマリー:ノーコードで簡単にアプリを開発できる「Appify(アッピファイ)」を開発・運営するD Technogiesは6月16日、ネットショップ作成サービス「BASE」との提携を発表した。BASEは既にショップ開設数100万店を突破している。 同パートナーシップにより、BASE上のショップオーナーはシームレスにオリジナルアプリを作成可能となる。利用料金は月額4,980円で、BASEの拡張…

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ニュースサマリー:ノーコードで簡単にアプリを開発できる「Appify(アッピファイ)」を開発・運営するD Technogiesは6月16日、ネットショップ作成サービス「BASE」との提携を発表した。BASEは既にショップ開設数100万店を突破している。

同パートナーシップにより、BASE上のショップオーナーはシームレスにオリジナルアプリを作成可能となる。利用料金は月額4,980円で、BASEの拡張機能「BASE Apps」からAppifyをインストールすれば利用可能だ。

話題のポイント:COVID-19以降、私たちの生活は着実に、かつダイナミックに変化を遂げつつあります。企業の在り方にも大きな影響を与え、例えば米国ではTwitter社が半永久的なWFH(Work From Home)体制へシフトしたり、スターバックスがサードプレイス提供型からピックアップ型へカルチャー変化を進めるなど、目に見える形でニューノーマルへの適応を始めています。

中でも消費行動は大きく変わりました。Bank of America・米国商務省のデータに基づく投資ファンドShawSpringの調べによれば、米国におけるEコマース普及率は2019年末まで16%程度だったのに対し、パンデミック以降ECの相対的な需要・供給は増加し、2020年4月末には約11%増の普及率27%へと急上昇を遂げたことを明らかにしています。

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Bank of America, U.S. Department of Commerce, ShawSpring Research

D Technologies代表の福田涼介氏は、EC向けノーコードツールサービス立ち上げの背景を「これまでインターネットでの販路を必要としてこなかった業界でもネットショップ開設が急増しており、今後さらにオンラインシフトの需要は拡大していくと予想している」と、今回BASEとの提携に至った経緯を明らかにしています。

確かに、海外に目を向けてもFacebookがShopifyなどと提携し、個人が簡単にECサービスをFacebookページに構築できる「Facebook Shops」の提供を先月より始めるなど、販売経路のデジタルトランスフォーメーションの動きは加速度を増したと言える状況です。

「新型コロナウイルスにより、BASEのようなウェブ型ネットショップを通したデジタル販売経路の重要性が再認識され始めています。それに伴い、アプリという媒体を使い顧客のリピート率を上昇させる施策への需要は、パンデミック以前の想定より早く訪れることになると感じていいます」(福田氏)。

Adobeのレポート「The ROI from Marketing to Existing Online Customers」によれば、平均的なオンライン店舗におけるリピートユーザーは全体の8%のみにもかかわらず、売り上げ配分の41%を占めていると明らかにしています。つまり、eコマース市場におけるショップオーナーの「リピート率上昇施策」は新規顧客に対するマーケティングに比べ、店舗売り上げ向上のクリティカルな手法であることが分かります。

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The ROI from Marketing to Existing Online Customers

さて、現段階でBASEの開設店舗数は100万店舗を越えている状況です。

ショップオーナーが自身のオンライン店舗をアプリ化できれば、例えば「プッシュ通知」などを通し、積極的かつ人間味高く(メールのような一方通行なコミュニケーションではなく)ダイレクトなユーザーとのコミュニケーションが可能になります。

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特にオーナー側にとっては開発等の前提知識や、まとまった資金なしにノーコードでアプリの制作依頼まで完了できるのはメリットです。

新しいテクノロジーが生まれたときに、今までは解決が難しかった課題が突如として解決可能になる(or しやすくなる)変化が起きます。ノーコードツールが気を付けるべきポイントの一つに、利用者がそのツールのユースケースを持っているか?があると思いますが、AppifyはBASEと提携することで、インターネットで商品を販売するという既存のユースケースが持つ明確な課題に対してプロダクトを提供していきます」(福田氏)。

ポッドキャストの97%は収益ゼロ、それでも「Podhero」が挑戦する新しいサブスクモデルとは

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ピックアップ:Meet Podhero — The Easiest Way to Support Podcast Creators ニュースサマリー:ビジネスチャットサービス「HipChat」を創業し、Atlassianに売却したことで知られるPete Curley氏は5日、新サービス「Podhero」のリリースを発表した。同サービスはポッドキャストのクリエイターサポートに特化したサブスクリプショ…

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Image Credit : Podhero

ピックアップ:Meet Podhero — The Easiest Way to Support Podcast Creators

ニュースサマリー:ビジネスチャットサービス「HipChat」を創業し、Atlassianに売却したことで知られるPete Curley氏は5日、新サービス「Podhero」のリリースを発表した。同サービスはポッドキャストのクリエイターサポートに特化したサブスクリプションサービス。料金は月額5.99ドルとされているが、内訳は4.99ドルが配信者へ還元され、1ドルは運営側の費用と明示している。同社は100万を超えるポッドキャスト配信者と提携しており、ユーザーは制限なく利用することが可能だ。

話題のポイント:コメディアンのジョー・ローガン氏がSpotifyと1億ドルの専属配信契約したことは、ポッドキャストの可能性を探る上でも大きな出来事でした。日本においても、ポッドキャストスタートアップは増えつつあり、最近では「Standfm」など配信者とリスナーの繋がりを重視したプロダクトが人気を集めつつあります。

しかし、ポッドキャスト配信者の収益構造はまだ未成熟な点が多く残されています。PodheroのMediumによれば、全ポッドキャスト番組の内97.2%は未だに収益ゼロな状況下にあるそうです。つまり、ポッドキャストのみで上手く収益化できている配信者は全体の2.8%で、これらも課金というよりは主に広告・スポンサーが主体となっているようです。

そもそも、「お金を支払ってポッドキャストを聞く」という概念はまだ根付いていないように感じます。Netflixなど、映像コンテンツとサブスクに違和感は感じませんが、ポッドキャストでは既に無課金でリッチコンテンツが充実している状況もあります。また、コンテンツ販売を目的に運営をするより、メイン事業との相乗効果を狙ったものが現状でメインを占めていると感じています。

podhero
著名VCのa16zが提供するポッドキャストには良質コンテンツが多い

もちろん、Patreonなどを利用して個別のコンテンツに対し課金制を導入している配信者もいます。しかし、ユーザー視点で考えれば、各コンテンツごとに課金するのは望ましい体験とはいえないでしょう。

Podheroでは1ドルを運営費として徴収し(Mediumには「これがなければクリエイターを支援できない」と書いています)、ユーザーの課金額4.99ドルが登録している全クリエイターへ配分される形を取っています。配分の方法については、ユーザーはアプリ内で「サポート」したいクリエイターを登録でき、その人数に応じて4.99ドルが分配される、という仕組みです。

リスナーにとってみれば、既に月額の課金額は決めていて、また気軽にクリエイターのサポートをすることが可能なため、ポッドキャストを購入するかどうかの迷いを取り払うことが可能です。一方で、一人のユーザーがサポートするクリエイターの数を多くしすぎると、分配金は減ってしまう、というデメリットもありそうです。

Image Credit : Podhero

また、仮にSpotify等で無料配信をしていたとしてもPodheroへ登録することで無料コンテンツを継続して配信しつつ、ユーザーからのサポートを受け取れるようになります。ここで興味深い点は、配信者がPodhero限定のコンテンツ作成を強制されていない点です。

つまり、今まで通り自身の好きなプラットフォームで配信を続けつつ、新たな収益源としてPodheroを利用できるということです。これは、Podheroが「あるコンテンツを聞くためのサブスク」という立ち位置ではなく、「ピュアに配信者を応援したい」ユーザーの需要を叶えるいわば寄付のような形式をとっていることが理解できます。

同社の調べによれば、92%のポッドキャストリスナーが資金的サポートにリターン(限定配信など)を求めていないとしています。もちろん、各コンテンツごとの課金となれば別でしょうが、月額5.99ドルで自分の好みの配信者を応援できるのであれば、そこまで壁は高くないといえます。

今回Podheroが提唱した、新しいポッドキャスターとリスナーのあり方は非常に理にかなっていると思います。また、Podhero上にまだ載っていないチャンネルがあったとしてもリスナーが直接Podheroへ申請することで、サポート対象へと切り替わるそうです(要審査)。そのため、配信者はファンさえいれば、気が付かないうちに収益源が生まれているという状況も生まれるかもしれません。

トラベル業界の回復はいつ?ーーホテル事業は苦境続き、2023年まで復活見込めず【Cowen調査】

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ピックアップ:TRAVEL UPDATE: MORE RECOVERY DATA POINTS; VACATION RENTAL SURGE CONTINUES ニュースサマリー:投資銀行のCowenは8日、COVID-19パンデミック以降におけるトラベル市場推移に関するレポートを公開した。同資料によれば、Expedia傘下のバケーションレンタル「Vrbo」の検索ボリュームはYoYで昨年を上回る数…

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ピックアップTRAVEL UPDATE: MORE RECOVERY DATA POINTS; VACATION RENTAL SURGE CONTINUES

ニュースサマリー:投資銀行のCowenは8日、COVID-19パンデミック以降におけるトラベル市場推移に関するレポートを公開した。同資料によれば、Expedia傘下のバケーションレンタル「Vrbo」の検索ボリュームはYoYで昨年を上回る数値を記録したことを報告し、市場が好調な兆しをみせているとしている。

話題のポイント:夏の訪れが、バケーションレンタルを救うのでしょうか。Cowenが発表した資料では、バケーションレンタルプラットフォーマーの回復傾向が示されており、AirbnbもYoY検索ボリュームでみれば10%減ほどに抑えられているとしています。

先月Vrboを子会社に持つExpediaは、Q1決算報告書にてバケーションレンタルの大幅な失速が減損損失に大きく影響したと指摘していました。しかし、上述したようにVrboは収益とは直接関係ない検索ボリュームとはいえ、YoYで成長増を示しておりCOVID-19以降においてもバケーションレンタルの需要は変わらず安定成長の兆しがみえはじめています。

また、Bloombergによれば5月17日から6月3日の期間において、Airbnbの宿泊予約件数がYoY比較で上回ったことを明らかにしています。同社CEOのBrian Chesky氏も「StayHomeが長かった分、その反動がはっきり見え始めている」と述べており、夏の休暇も重なることで「近場」かつ、家族など少数のプライベートで時間を過ごせるバケーションレンタルに焦点が集まった形のようです。

しかし、ブランドホテルやExpediaなどのOTAはYoY検索ボリューム比が依然と60%減となっており、需要の回復はまだまだ先のようです。

同資料では、2020年におけるホテル売上高がYoY比でマイナス56%に落ち着くだろうと予想しており、徐々に回復傾向へ向かうものの2019年度のホテル売上高(部屋代のみ)への回帰には3年ほどかかると予想しています。

ホスピタリティー業界のデータ解析を行うSTRによれば、米国におけるホテル部屋稼働率はメモリアルデーが重なった5月下旬には35.4%を記録し、4月度の平均稼働率21%と比較すれば徐々に回復していることが分かります。とはいえ、彼らの中心顧客であったビジネストラベラーや団体旅行客が見込めない現状では、先行きは不透明と言わざるを得ません。

またポストCOVID-19の世界において、移動を最小限にしてローカルの魅力を探る「マイクロツアリズム」に注目が集まりつつあります。日本でいえば、個人経営の旅館などストーリー性の伴う宿泊施設はこの文脈に最適です。そうした意味でもやはり、上述したようなランダムな大衆を顧客としてきたチェーンベースのホテルは利用する意味が見いだせず、苦境に立たされる可能性は大です。

Expedia等のOTAはいくらでも市場に合わせ、その事業エコシステムを変化させられるのでしょう。しかし、不動産を抱えるホテルにとっては、ポストCOVID-19での新しい専属顧客を探る必要が出てきます。そのため、Cowenの予想に反して最速で回復の出口へ向かうには、「マイクロツアリズム」のような新しいアイデアが求められそうです。

真のシリコンバレー・アウトサイダーが率いるa16z新ファンド「The Talent x Opportunity Fund」

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ピックアップ:Introducing the Talent x Opportunity Fund ニュースサマリー:Andreessen Horowitz(a16z)は3日、新ファンド「The Talent x Opportunity Fund(TxO)」の設立を発表した。同ファンドはa16zパートナーであるNait Jones氏によって運営される。また、初期の規模は220万ドルからで、Donor…

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ピックアップ:Introducing the Talent x Opportunity Fund

ニュースサマリー:Andreessen Horowitz(a16z)は3日、新ファンド「The Talent x Opportunity Fund(TxO)」の設立を発表した。同ファンドはa16zパートナーであるNait Jones氏によって運営される。また、初期の規模は220万ドルからで、Donor Advised Fund(DAF:財産を寄付する形式のファンド)の形となる。そのため、ファンドへの寄付者は税制上のメリットを受けることができる。

話題のポイント:a16zの新ファンド「The Talent x Opportunity Fund(TxO)」には”不当”な扱いや環境に置かれているスタートアップを対象とするという、個性的なポジションを与えています。新ファンド担当者となるJones氏は、”シリコンバレー”的なファウンダーではなく「Hidden Founder」、つまり不平等を受け機会を失っている層に焦点を当てるそうです。

Jones氏は元々、a16zから出資を受けたスタートアップのファウンダーでした。

彼が運営していたスタートアップ「AgLocal」が上手くいかず、シャットダウンする決断を下した時、Ben Horowitz氏からa16zへジョインしないか?といった連絡を受け取ります。この時、Jones氏は、Benを含むa16zのメンバーが自分を「黒人で大卒でもないアウトサイダー」ではなく「Nait Jonesそのもの」として評価してくれたことを痛感した、と語っています。

Jones氏は2017年に執筆したブログ「“Inclusion” is not for outsiders」にて、本当の「Silicon Valley outsider」とは何かについて言及しています。組織にもダイバーシティ-が求められ、スタートアップは人種・性別を問わず採用活動をしているものの、彼らが着目しているのは本質的なバックグラウンドではないことを指摘しています。

People tend to think “Hey I’m competent and I worked at Google and came out of Stanford CS so this candidate must be at least marginally competent as well”.

もちろん彼もダイバーシティを実現するため「ハーバードでCSを学んだ”女性”」や「MITでエンジニアリングを学んだ”アフリカ系アメリカ人”」をシリコンバレーの経済圏に迎え入れることを100%否定しているわけではありません。

ただ、ダイバーシティーを追い求めるすぎるとすでに機会を与えられ、誰にでも分かりやすい才能を持った者だけが輪の中に入れる「空虚な理想郷」となってしまう恐れがあります。こうした視点は彼の経験が基になっており、そうした事実を振りかざし人種や性別に差別がない「Inclusion」をアピールするのは間違いであるというのが彼の考え方です。

今回のリリース冒頭には、現在世界的な問題に発展しているGeroge  Floyd 氏の死について触れられています。法の前では「平等」にもかかわらず、法の執行者の前では「不平等」が蔓延している事実を指摘し、そういった環境や思い込みは多くの社会的弊害を生み出し、スタートアップエコシステムにもある種の距離や幅の狭さを生み出す要因になっていると語っています。一方で、こうした社会的問題に影響された突発性のものではなく、6カ月ほど前から計画的に取り組んでいたプロジェクトであることも明らかにしています。

本質的なシリコンバレーにおけるアウトサイダー(本人はTHIS is the profile of a Silicon Valleyと表現)のNait Jones氏が率いる新ファンド「The Talent x Opportunity Fund」が、ただの表面的なアピールではなく、本気でアクションを起こそうとしていることが強く伝わる動きなのではないでしょうか。

大逆風のExpediaに襲いかかるGoogleーー決算に書かれたGoogle Travelの追随

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ピックアップ:Expedia CEO Details Anti-Google Game Plan ニュースサマリー:Expediaは20日、2020年Q1における決算報告書を公開した。COVID-19のパンデミックにより旅客が大幅に減少したことが起因し13億ドルの純損失、売上高は15%減の22億ドルを計上している。減損費用は7億6500万ドルを計上し、主に同社子会社であるTrivago・Vrboの…

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ピックアップ:Expedia CEO Details Anti-Google Game Plan

ニュースサマリー:Expediaは20日、2020年Q1における決算報告書を公開した。COVID-19のパンデミックにより旅客が大幅に減少したことが起因し13億ドルの純損失、売上高は15%減の22億ドルを計上している。減損費用は7億6500万ドルを計上し、主に同社子会社であるTrivago・Vrboの不振に起因しているという。

同社はまた、39億5000万ドルの資金調達をApollo Global Management・Silver Lakeより実施したと発表している。

話題のポイント:COVID-19下において、OTA企業はそもそもフライトが欠航するケースや、ホテル運営の自粛などによりネガティブな局面に立たされていることは紛れもない事実です。その渦中で、OTAの代表格ともいえるExpediaが2020 Q1の決算資料を公開しています。

まず、Expediaは同社プラットフォームを経由した予約であれば、できるだけ迅速なキャンセル手続きを対応を実施ており、返金不可の記載のある予約であっても期間内であれば宿泊施設・航空キャリアと協議の上最善を尽くす姿勢を見せていました。

また、殺到するキャンセル手続きへの対応一環としてシームレスな自動キャンセル手続き機能を追加しています。決算資料によれば2月時点での同機能利用率は65%だったのに対し、4月は95%を記録し、ほぼ全てのキャンセルが自動対応化されていることが分かります。また、3月度におけるキャンセル量は新規予約量を上回ったことも明らかにしています。

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Expedia Q1 2020

逆に、Q1におけるマーケティング費用は大幅に削減されYoYで20%減、約12億ドルに抑えられています。これはもちろん、COVID-19によりトラベル需要が減少したことに起因していますが、同社決算資料では既存の外部広告依存から脱却するターニングポイントであると触れられています。

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Expedia SEC Q1 2020

特に流入減として主要な役割を果たしていたGoogleを名指しで取り上げており、「Googleが自社プロダクト「Google Travel」などに検索のプライオリティーを置き始めている」と指摘しています。

もちろんこれは競合としてのGoogleが「トラベル需要」に食い込んできていることを警戒したものである一方、検索流入の動向が重要な鍵となる老舗OTAのExpediaにとっては、長期的に見ればポジティブな要素と言える話題です。

同資料によれば、2019年には欧州・北米におけるレジャートリップ並びにビジネストリップの総支出の内45%はオンラインを通した決済を記録したとしており、2020年には50%を超えるだろと試算を出しています。つまり、COVID-19による一時的な落ち込みはあれど中長期的にはOTAの役割は着々と増えていくことを意味しています。

またそうしたオンライントラベルの一般化に伴い、同資料では「シェアリングエコノミー」のキーワードを用いて「レガシーなOTA」を圧迫しつつあることを認めています。AirbnbやBooking.comの例を取り上げ、バケーションレンタルの可能性についても大きな期待を寄せていることが読み取れます。

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ExpediaはAirbnb同様のバケーションレンタル・プラットフォーム「Vrbo(HomeAway)」を運営しており、上述の文脈ではこちらの運営にも力を入れていることが分かります。ただここで面白い点は、同様事業を営むAirbnbも、今回Expediaの資金調達をリードしたプライベートエクイティーファンドSilver Lakeが先日のラウンドにおける出資者となっていることです。

トラベルテックメディアSkiftは、彼らの関係性を「frenemies(友好的な競合)」と称しており、COVID-19が生み出す旅のニュー・ノーマル次第ではその関係性がより親密なものに近づく可能性はあります。例えばGoogleがGoogle Travelにプライオリティーを置き始めれば、彼らが対抗策をコラボレーションしてくることもあり得るかもしれません。

各国の労務に対応、国境を超えたリモートチームをひとつにする「Deel」a16zが出資

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ピックアップ:Investing in Deel ニュースサマリー:リモートチーム向け給与支払いシステム「Deel」は21日、シリーズAにて1400万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はAndreessen Horowitz(a16z)が務めた。 Deelはリモートで働くチームに特化した給与支払い・管理システムを提供するスタートアップ。各国ごとに異なる税制・コンプライアンスなどをビル…

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ピックアップ:Investing in Deel

ニュースサマリー:リモートチーム向け給与支払いシステム「Deel」は21日、シリーズAにて1400万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はAndreessen Horowitz(a16z)が務めた。

Deelはリモートで働くチームに特化した給与支払い・管理システムを提供するスタートアップ。各国ごとに異なる税制・コンプライアンスなどをビルトインで対応する。価格は月額ごとの課金制で、チーム1人当たり35ドルとなる。また、現段階で110カ国に対応している。

話題のポイント:Y Combinatorのアクセラレータープログラムを昨年卒業したDeelは、既に400社のクライアントを獲得しているとされています。国境を越えた「リモートチーム」向けのプロダクトということもあり、既存ユーザーは主にスタートアップで占められているそうです。

今までインターナショナルなチームを作ろうとすると、各国のレギュレーションに沿った契約~支払いフローを整える必要がありました。特に複数の国ごとに対応しようと思うと、それだけコストが積み重なるため、リモートチームの国際化が難しい状況にあったといえます。

Deelでは、そうした各国ごとに異なる労働法に沿った仕組みをSaaSとして提供しています。契約に渡るKYCに必要な公的資料も一般化されているものでなく、各国ごとに分類されており、採用する企業のバックオフィス側としてもマネジメントの簡潔化につながっています。

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また、同社プラットフォームでは各国に散らばるメンバーに対する支払いもシームレスに実施することが可能です。契約と同時に支払日の設定が可能で、クレジットカード、PayPal、ACHやワイヤートランスファーの送金オプションを選択することが出来ます。受け取り側はPayPalまたは銀行送金を利用して、自国の通貨で受け取りが可能です。

Deelはビジョンに「Give your global team a local experience」を掲げており、国境を越えた「会社」の一般化を目指しています。つまり、現段階では、まさにチーム作りの核と言える契約・支払いにフォーカスしていますが、今後は保険や福利厚生など今までは「その場・その環境」にいなければ得られなかった体験もボーダレスにしていくということだと考えます。

実際に同社では、企業側がグローバルなチームへ福利厚生を導入しやすいような仕組みづくりを既に始めていることに加え、COVID-19によりオフィスの必要性が再度問われている社会のトレンドは追い風となるでしょう。

CB Insights: The State of FinTech 

さて、CB Insightsによれば、2020年Q1におけるフィンテックスタートアップの資金調達額はYoYで37%減の61億ドルへと下落しているというデータを公開しています。これは、2017年以降のQ1では最も低い調達総額となっており、COVID-19によるフィンテック業界へのインパクトはそれなりにあったことが分かります。

しかし、DeelはまさにこのタイミングでシリーズA・1400万ドルを調達しました。フィンテックスタートアップの中でも社会性に大きく沿った事業内容とVC側から理解されているのでしょう。確かに社会では「ニュー・ノーマル」が問われ続けており、それが定義されるにあたり「労働環境」は一つのファクターとして大きな役割を持つことになります。

そのため、新しい働き方をトライアルしていくためにも、コンプライアンスに沿った労働契約のインフラは必要不可欠であり、まさにDeelは短期的にも長期的にも中心的なプラットフォームとして機能する可能性が高いと言えるのではないでしょうか。

Facebookの金融戦略:CalibraからNoviへブランド刷新、狙いにはLibraの独立性

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ピックアップ:Welcome to Novi ニュースサマリー:Facebookは27日、同社のブロックチェーン事業Libraのウォレット開発子会社「Calibra」のリブランドを発表した。新名称は「Novi」とし、ラテン語「”novus”(new)”via”(way)」を由来とする。また、企業ロゴも刷新されている。 Noviの具体的なリリース日は明…

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ピックアップ:Welcome to Novi

ニュースサマリー:Facebookは27日、同社のブロックチェーン事業Libraのウォレット開発子会社「Calibra」のリブランドを発表した。新名称は「Novi」とし、ラテン語「”novus”(new)”via”(way)」を由来とする。また、企業ロゴも刷新されている。

Noviの具体的なリリース日は明記されておらず、Libraネットワークのリリースに準ずると示されている。

話題のポイント:Calibraは昨年6月に、グローバル通貨・金融インフラの創造を目指すブロックチェーンプラットフォーム「Libra」におけるデジタルウォレットの役割を目指しプロジェクトが始動していました。

Libra自体は非営利組織の企業連合「Libra Association」として、FacebookやCalibra(現Novi)を含むa16z、TEMASEK、Uberなどが共同運営をしています。反してNoviは、Facebook直属でブロックチェーン事業リードのDavid Marcus氏によってプロジェクトが遂行されています。

 

Noviへのリブランディング背景について同氏は、「confusion」を解消させる目的にあるとしています。まず、上述のようにLibraとCalibraは極端に近似する名前となっていたため、どちらもFacebookによる運営だという誤解が広まっていました。また、CalibraのロゴがモバイルバンクCurrent社の色違いであることなどが指摘されていました。こうした「誤解」を取り除くことき、Libraの独立性を強調していきたい狙いがあるのだと思います。

さて、Libraは4月末にホワイトペーパーをアップデート(Whitepaper v 2.0)し、金融当局からの懸念を回避する方向性を示していました。アップデートされたWhitepaperでは、単一ローカル法廷通貨を担保としたステーブルコインLibra○○(○○ = 各国の法定通貨)の形の採用修正を加えています。これは金融当局に指摘された、複数通貨が入り混じった≋LBRのトランザクション量がスケールした際に、各国金融政策や金融自主権に大きな影響を及ぼすことを考慮した形と言えます(当初の≋LBRも一つの通貨として残り続けます)。

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Libra Whitepaper 2.0

Libraは上述した各国ごとの通貨とペッグしたステーブルコインの例に、米ドル・イギリスポンド・ユーロ( ≋USD, ≋GBP and ≋EUR)を現段階で挙げています。そのため、Noviでは少なくともこれら3通貨は初期リリース時に採用されることになるでしょう。しかし、Noviサイトのアプリインビテーションには、3通貨のみでなく日本円を含む数多くの通貨選択画面があるため、リリース時にはさらに多くの通貨に対応することが見込まれます。

先日リリースした「Facebook Shops」のように、同社はプラットフォーム内におけるペイメントの流動性が活性化される仕組みを着々と作り上げています。Noviは独立アプリとしてリリースされるものの、WhatsAppやMessengerでの利用を想定したインテグレーションが実装される予定です。

加えてNoviは、政府発行IDによるKYC(Know Your Customer)の義務化を徹底することで、AML/CFT対策(アンチマネーロンダリング/テロ資金供与対策)を講ずることを明示化しています。

Libraが目指すのはセンシティブな金融領域なことに加え、親会社Facebookが社会的に問われるプライバシー問題など、解決しなければならない課題は山積みです。また、KYCフローを導入することによるプライバシー情報の一極集中化など、対策への対策が必要な状況が続いています。ただ着実に、法の整備に沿いつつLibra構想が前進していることは間違いありません。

マイナンバーカードの未来?米国「SSN」の課題解決を狙うStilt、シード資金獲得

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ピックアップ:Stilt, which provides financial services for immigrants, raises $7.5 million seed round ニュースサマリー:FinTechスタートアップ「Stilt」は9日、シードラウンドにて750万ドルの資金調達を実施したと発表した。投資家にはSteamlined Ventures、Bragiel Brother…

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ピックアップ:Stilt, which provides financial services for immigrants, raises $7.5 million seed round

ニュースサマリー:FinTechスタートアップ「Stilt」は9日、シードラウンドにて750万ドルの資金調達を実施したと発表した。投資家にはSteamlined Ventures、Bragiel Brothers、並びに個人投資家としてFundbox CEOのEyal Shinar氏やY CombinatorよりDalton Caldwell氏、Kevin Hale氏などが同ラウンドに参加している。

同社は米国におけるSSN(Social Security Number)を保有しない移民、留学生やワーキングホリデーなどのVISA保有者向けに低金利ファイナンスサービスを提供している。2015年に創業した同社は、翌年にY Combinatorのインキュベーションプログラムを卒業している。

また、海外からでも開設可能なデビットカード付きデジタルバンクサービスも開始している。

話題のポイント:「SSNがないとサービスを受けられない」、こうした問題をテクノロジーを介して解決しようとするスタートアップは近年増えつつある印象です。日本におけるSSNはマイナンバーカードですが、その普及率の低さもあってか、個人認証において重要視されるケースは少ない状況です。

しかし米国では、SSNこそ全ての個人に対する信頼度が詰まっているものとして、あらゆるサービスのバックグラウンドチェック的役割として機能しています。

例えばSSNがない限り、クレジットカードの発行や高額な商品のローン購入といったことは全くできません。また、賃貸の契約ですらSSNを持っていることが前提となるため、たとえ外国において安定した収入があろうとも規約上受け付けてくれないケースも数多くあります。

そのため、外国人(移民・留学生)の信頼度を図るうえでSSNのみが唯一無二と契約規約上定められているケースでは、どれだけ銀行の残高証明書を見せようが信頼度はゼロと等しいとされます。

StiltはこうしたSSNを保有していなくても、信頼度の高い外国人は存在することを前提とした事業デザインとなっています。そもそも、わざわざ米国にやってきてくる留学生やワーキングホリデーといった層はそもそもVISA取得時点でそれなりの残高を保有していなければなりません。

つまり、各国である程度の信用がある方は、SSNのクレジットがなくても政府が発行するVISAという「信頼証明書」は少なくとも持ち合わせているわけです。それらと、例えば留学生であれば学校の成績などと組み合わせ、独自のクレジットスコアを算出する仕組みとなっています。

全く同じ仕組みでSSNを持ち合わせない層へクレジットカードの発行を実現させているのが「Deserve」です。必要な情報は学校名や基本的な情報のみで、逆になぜSSNが一般的な決済企業で絶対必要とされているのか不思議になるほどスムーズに応募することができます。

アメリカで生まれた場合、自動的にSSNが振り分けられます。そのため、アメリカでは「SSNを持っていない」という存在の実態すら気が付くことのできない環境にあるのが実情でしょう。

Stiltの創業者は、インド出身でコロンビア大学へ進学を果たした経歴を持っています。進学当初、多くの留学生と同じようにSSNを持っていなかったため銀行口座ですら開設するのに相当な時間を要し、「SSNがない」ということだけで何故信頼がゼロになるのかことに憤りを感じたと創業の経緯が述べられています

DeserveやStiltの登場で、アメリカ在住者にとって10年前と比較すればSSNを持ち合わせていないことによる不便を感じるケースは減少しています。これからも、Stilt創業者のように実際にこの「不便」を感じたアメリカ留学生やワーキングホリデーの方が課題解決のために創業に至るケースは増えるのかもしれません。

数千人から選抜「45名のクリプト起業家」が学んでいるもの

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ピックアップ:The Crypto Price-Innovation Cycle ニュースサマリー:Andreessen Horowitz(a16z)は同社が運営するクリプトスタートアップ向けブートキャンプ「a16z Crypto Startup School」の一部コースをテーマごとに公開している。同社によれば、数千の応募者の内参加資格を得たのは45名だったという。2月終わりから約2カ月にわたり…

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Credit: a16z 

ピックアップ:The Crypto Price-Innovation Cycle

ニュースサマリー:Andreessen Horowitz(a16z)は同社が運営するクリプトスタートアップ向けブートキャンプ「a16z Crypto Startup School」の一部コースをテーマごとに公開している。同社によれば、数千の応募者の内参加資格を得たのは45名だったという。2月終わりから約2カ月にわたり開催されたスクールは、COVID-19によりオフライン・オンラインのハイブリッド型で実施された。

話題のポイント:先月末にa16zはブロックチェーン事業特化型クリプトファンドの第二号「Crypto Fund 2」を5億1500万ドル規模で設立し、COVID-19による世界経済混沌の中「ブロックチェーン」にベットする姿勢を示していました。彼らの中長期的なブロックチェーン視野理解についてはMarc Andreessen氏執筆の「Why Bitcoin Matters」や、Chris Dixon氏の「Why I’m interested in Bitcoin」をお勧めします。

今回取り上げるのはa16zが取り組むクリプトスタートアップ向けのブートキャンプ「a16z Crypto Startup School」です。数千の応募があり、最終的には45名にまで選抜されていった過酷さを誇るキャンプですが、14のセッションが今後パブリック公開される予定となっています。

今回公開された最初のセッションはCrypto Fundを率いるChris Dixon氏による、クリプトにおける価格とイノベーションサイクルの関係性を説明したものです。タイトルは「Crypto Networks and Why They Matter」とされ、なぜ価格とブロックチェーンエコシステムの間に強い繋がりあるのかを紐解きながら進んでいきます。

プレゼンテーション冒頭で、Chris氏がブロックチェーン起業家に「いつブロックチェーンに関わり始めたか?」と聞くとおおよそ答えは2011・2013・2017年のいずれかだったと話をしています。これは、ちょうど暗号通貨の価格が大幅に上昇・下落したタイミングと重なっていることを示しており、今はどうであれ「価格」への興味がブロックチェーンへの入り口だった起業家は多いとの仮説を立てています。

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この点について、ブロックチェーンはスタートアップの中でも特別な存在であることを強調します。つまり、他のスタートアップは会社を立ち上げ資金調達をし、バリュエーションと共に上場へ向かうルートを取るため正確な企業価値には時間的「ラグ(Chris氏は「lagging indicator」と表現)」が生まれるはずです。

しかし、ブロックチェーンスタートアップでは、価格が初手にありそれを起因としてフィードバックが生じ変化を遂げていくフローを取ります。これを同氏は「Price-interest-activity feedback loop」と呼びブロックチェーンのイノベーションサイクルであると定義しています。

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「価格⇆興味⇆アイデア⇆スタートアップ誕生⇆(価格)」が相関関係にあることは下図のCAGR(年平均成長率)も証明しています。ブロックチェーンの「ループ」は価格の高低も新規参入の重要な要素となるため、長期的視点が求められることの裏付けでもありますね。

ブロックチェーンのそうしたループサイクルは上述通り新規参入が多かった2011・2013・2017年がそれぞれのターニングポイントとなっていました。また、2020年はa16zが2号ファンドを1号ファンドの約1.5倍規模でベットしてきたことからもわかる様に、今後数年のうちに新たなサイクルへ突入(≒価格に誘い込まれ新規参入するスタートアップが増える時期)する契機とみているのは明らかです。

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つまり今はまさに、2017年から続けてきたループの成果をフィードバックしている時期だといえます。実際にその”フィードバック”によって、例えばWeb3.0的概念やDeFi(分散型金融)が生まれていることは紛れもない事実です。

CAGRのような話をすると、価格(一般的なスタートアップではバリュエーションや市場価値)がブロックチェーンでも注目されているように感じてしまうかもしれません。しかしChris氏も述べているように「価格ではなく”interest and activity”」であり、この「フィードバックループ」を繰り返しながら成長していることが理解できると思います。