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yabetatsuya

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1996年埼玉県出身。東京大学に在学中にHR領域のスタートアップ複数に参画、発達障がいをテーマに人の天性や才能を活かすすべく起業。その後現在は働く人のメンタルヘルスや障がいをテーマに2社目の起業に挑戦中。欧米を中心にメンタルヘルステックの最先端や医療xITの動向を中心に記事執筆。疾患を治すところから、よりポジティブに能力発揮や才能開花までメンタルヘルスの概念を拡張するべく情報発信していきます! Twitter-@tatsu_birth

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小売業に革命を起こすAI SaaS「Daisy Intelligence」が750万ドル調達ーー小売にAIを活用する3つの視点

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ピックアップ:Canadian AI startup Daisy Intelligence secures $7.5 million in funding to scale its AI platform ニュースサマリ:9月20日、カナダのAIスタートアップ「Daisy Intelligence」はシリーズAにて750万ドルの資金調達を実施した。トロントに拠点を置くFramework Ventu…

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ピックアップ:Canadian AI startup Daisy Intelligence secures $7.5 million in funding to scale its AI platform

ニュースサマリ:9月20日、カナダのAIスタートアップ「Daisy Intelligence」はシリーズAにて750万ドルの資金調達を実施した。トロントに拠点を置くFramework Venture Partnersがリード投資家を務めた。

Daisy Intelligenceは2003年に創業し、小売取引データをプロモーション、価格設定、在庫予測に活用する小売業特化型のAIソフトウェアを開発している。同社によればクラアント企業の売上が前年比で2.9%増加したとのこと。

クライアント地域は米国、カナダ、ラテンアメリカ、ヨーロッパへと広がっており、収益や従業員数も急速に増加させている。

話題のポイント:小売業におけるAI活用の期待は高まっています。2017年に発表された米国MarketsandMarketsの調査では、小売業向けAIの市場規模は2017年の9.93億ドルから、2022年には50.34億ドルの規模にまで成長すると予測されています。

小売店が保有する膨大な顧客データは購買情報の分析から商品のパーソナライズ提案まで応用可能。加えて出店戦略にも関わる商圏分析や天候、マクロの経済指標など、購買活動へ影響を及ぶデータは多岐に渡り、様々なデータを理解する必要があります。

また、Amazon Goに代表される無人店舗やニューリテール領域のように、店内カメラ映像とECサイトの購買履歴の両方を分析する必要性が増している一方、エンジニアの絶対数が足りていない課題感があります。こうした市場需要と人材供給のミスマッチが小売業向けAI市場を急成長させている要因と考えられます。

そこでDaisy Intelligenceは大きく3つの提供価値を持っています。

1つはプロモーション製品の選択です。小売業の世界ではプロダクトミックスという概念があります。企業の利益最大化と効率化の観点から製品の幅(製品系列)、深さ(バリエーション)、長さ(製品品目)、一貫性(前日やチャネルの関連性)を決定していきます。この決定をデータドリブンに行う支援を行っています。

2つ目に価格の決定。値下げする製品やプロモーション用の製品も合わせて製品全体から見て最適な価格設定をして利益の最大化を目指します。

最後に需要予測が挙げられます。在庫切れと過剰在庫を避けるため、適切な在庫量を適切な店舗に配置する提案を行います。

元来、利益率が低く、大規模な設備投資や人材採用が難しい小売業界であるだけに、上記のような売上や利益に直結する部分からSaaS型のソリューションを導入していくことが求められるでしょう。そこに目をつけたのがDaisy Intelligenceなのです。(執筆:矢部立也

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従業員のメンタルを24時間365日ケアする方法ーーMIT発「Ginger」が3,500万ドルを調達

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ピックアップ:Ginger, an MIT spin-out providing app-based mental health coaching to workers, raises $35M ニュースサマリ:9月4日、メンタルヘルスケアアプリ「Ginger」がシリーズCラウンドにて3,500万ドルを調達した。従業員に対してアプリを通じたカウンセラーやセラピストとのコーチング提供する。 同社はM…

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ピックアップ:Ginger, an MIT spin-out providing app-based mental health coaching to workers, raises $35M

ニュースサマリ:9月4日、メンタルヘルスケアアプリ「Ginger」がシリーズCラウンドにて3,500万ドルを調達した。従業員に対してアプリを通じたカウンセラーやセラピストとのコーチング提供する。

同社はMIT Media Labより10年前にスピンアウトしており、元々はスマートフォンの使用状況を監視し、潜在的なメンタルヘルス課題を分析・解決するサービスであった。累計6,300万ドルを調達しており、20万人以上がサービスを使っている。

顧客にはCBS、Netflix、Yelp、Buzzfeedなどの企業がおり、英国や日本、インドを含む米国外の25カ国で展開する。

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話題のポイント:今回取り上げたGingerは遠隔かつオンデマンド精神医療を行うサービスです。今回、本サービスの事例を基にメンタルヘルス分野における遠隔医療やオンデマンドのケアについて考察したいと思います。

従来、医療機関を通じたメンタルヘルスケアの医療費は高い印象がありました。そこで低コストで済むGingerのようなアプリ需要が高まっています。

メンタルヘルスケアが求められる背景には、企業にとって精神科医によるサービス提供を福利厚生として含めるにはコストが高すぎる一方、5人に1人が抱えているメンタルヘルスの問題により離職する人が増えてきているジレンマが背景にあります。

Gingerの類似アプリは多数登場しています。しかし、対面でのケアがこれまでの常識であったにも関わらず、遠隔であったりテキストベースなど簡易なタッチポイントであったりすると、問題が見過ごされたり解決されないまま放置されたりするリスクが起きていました。

そこでGingerでは24時間365日いつでもテキストメッセージを通してカウンセラーやセラピストにアクセスするオペレーションを構築。精神病の重症化を防ぐために重要なスピード医療を提供することに成功しています。

事実、対面でカウンセリングやセラピーを受けるまでに最大で25日ほどかかる実情を考えると非常に有効な手段になっています。

テキストのやり取りの後のプロセスとして、ビデオセラピーなどより高度なケアが用意されていますが、Gingerによればこうしたプロセスに進むのは全体の8%ほどとのこと。残りはテキストベースのケアを通して問題解決が行われているとのことです。メンタルヘルスケアの分野ではより簡易なタッチポイントを作るだけで有効だということが証明されています。

こういった従業員に対する遠隔のメンタルヘルスケアの可能性への期待は大きく、Lyra HealthUnmindPacifica、など多くのスタートアップがサービスを提供しています。(執筆:矢部立也

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慢性疾患のケアを効率化するTimeDoc Healthが250万ドルを調達

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ピックアップ:B2B Healthcare Software Startup TimeDoc Health Raises $2.5M ニュースサマリ:医師向けに慢性疾患のケアの支援をするスタートアップTimeDoc Healthは8月7日、250万ドルの資金調達を公表した。同社にとって2回目の資金調達でGrand Venturesがリードインベスターを務めた。 同社は2015年設立。シカゴに拠点を…

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ピックアップ:B2B Healthcare Software Startup TimeDoc Health Raises $2.5M

ニュースサマリ:医師向けに慢性疾患のケアの支援をするスタートアップTimeDoc Healthは8月7日、250万ドルの資金調達を公表した。同社にとって2回目の資金調達でGrand Venturesがリードインベスターを務めた。

同社は2015年設立。シカゴに拠点を置くスタートアップで、医療機関向けに慢性疾患の患者を月単位で遠隔地ケアをすることを可能にするソリューションを開発している。医師は慢性疾患患者のケアに必要なタスクの管理や文書のやりとり、プランニングまであらゆる業務をオンライン・プラットフォーム上で実行できる。また希望に応じてケアマネージャーを設置し、患者のケアに活用することができる。既に30以上の州の医療機関で利用されており、2万人の患者のケアを手がけた実績を持つ。

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話題のポイント:医療情報の電子化はかなり進んでいて、EHR(電子健康記録)を用いて医療サービスをデータドリブンに、パーソナライズしていく流れがあります。米国ではEHRを消費者向けのアプリに接続するPHR(Personal Health Record)も、フィットネスやダイエットの分野で活用されています。

こうした流れの中、電子化の次のステップとして注目されているのが患者とのコミュニケーション活性化です。

患者のエンゲージメントを改善する考え方で、EHRとCRMを接続し、成果を出しているケースにPatientPingがあります。これは病院間連携のソフトウェアで、患者が受けているケアに関する情報を異なる病院や医師の間でリアルタイムで共有することができるというものです。

患者との接点は診察や入院時に限らず、在宅の時や他の病院にいる時も発生します。電子化の次のステップとして、こうした様々な接点全体のUXを改善し、患者とのエンゲージメントを高めるというのはサービス設計としてごく自然な流れなのでしょう。

今回挙げたTimeDoc Healthのように、慢性疾患に特化したような個別の診療を支援するソフトウェアも分野ごとに出てきていますから、患者情報を起点にした医療体験については今後、より細分化・個人最適が進んでいくものと予想されます。(執筆:矢部立也

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旅するように働く時代はすぐそこにーーデジタルノマドのための医療保険「SafetyWing」が350万ドルを調達

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ピックアップ:SafetyWing raises $3.5M seed to offer medical insurance to ‘digital nomads’ ニュースサマリ:デジタルノマドのための医療保険を提供するスタートアップSafetyWingは、8月1日、byFoundersやDG Incubationから350万ドルを調達した。同社はデジタルノマドのためのセーフティーネットを構築す…

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ピックアップ:SafetyWing raises $3.5M seed to offer medical insurance to ‘digital nomads’

ニュースサマリ:デジタルノマドのための医療保険を提供するスタートアップSafetyWingは、8月1日、byFoundersやDG Incubationから350万ドルを調達した。同社はデジタルノマドのためのセーフティーネットを構築すべく、医療保険などを提供しているノルウェー出身のスタートアップで、Y Combinatorを卒業したばかりだ。

同社が目指しているのは、国境を超えて働く人に対して本来国単位で提供される保険などの社会保障を提供することである。特にアメリカ出身の起業家やリモートワーカーの中で、タイやコロンビア、メキシコなどの生活コストが低い国に住みながら働く人を想定しているという。現在販売している保険商品としては、旅行保険と医療保険が含まれたパッケージで保険料が4週間で37ドルになっている。

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Nomad List

話題のポイント:元々特定の拠点を持たずリモートワーク中心に働く人のことをノマドと呼びます。デジタルノマドはより自由度高くPCとネット環境さえあれば、国境を超えて旅しながら働く人のことです。モバイル機器やクラウド環境の充実はこのような自由な働き方を推し進めています。

2015年に開かれたDNX Conference(デジタルノマドカンファレンス)では、2035年までにデジタルノマドは10億人に増えるとの予測が発表されました。この背景にはいくつかの社会的、技術的変化があります。

<参考記事>

既にアメリカではフリーランスの割合が半分近くに達しており、企業に雇用されない働き方はスタンダードになりつつあります。さらにスマホのインターネットの速度は4Gから5G、6Gへと高速化の一途をたどっており、大都市でなくとも世界中のあらゆる場所で快適なモバイルインターネット環境を実現できます。

また社会的な現象としては婚姻やマイハウスといった、伝統的に価値があると考えられていた慣習に対する価値観が変化してきたことも挙げられます。以下のように2035年には欧米での婚姻率は40%未満にまで減少するという予測もあります。

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“There will be 1 billion digital nomads by 2035”より)

また航空券の価格や各国間の所要時間の現象も重要です。例えばベルリンーロンドン間のフライトは現在はおよそ2時間の所要時間で75ドルですが、30分の所要時間で20ドルの価格になるという予測もあります。

最近は日本でもフリーランスやリモートワークの社会的な普及が進みました。一方で上述した背景は日本においても同様に働くため、この潮流を更に推し進め国境を超えて働くスタイルも広まる可能性があります。ビジネスとしては旅行関係のサービスのバリエーションとして、現地で働いて収入を得るというスタイルを支えるサービスが本格的に出てくるかもしれません。

今回紹介した保険サービスだけではなく、NomadListというサービスではデジタルノマドが旅先を選ぶためのプラットフォームサービスも展開されています。同サービスでは数多の旅行ガイドサービスとは異なり、コワーキングスペース情報など各国で働くことを前提にしたガイドが特徴的です。(執筆:矢部立也

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従業員の欠勤など生産性の低下に対する研修アプローチ「レジリエンス」ーーheadversityがシード資金を獲得

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ピックアップ:Edtech startup headversity secures $1 million in seed funding to evolve its workplace resilience training platform ニュースサマリ:7月22日企業のレジリエンスをトレーニングするアプリを開発するheadversityはシードラウンドにて個人投資家から100万ドルを調達した…

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ピックアップ:Edtech startup headversity secures $1 million in seed funding to evolve its workplace resilience training platform

ニュースサマリ:7月22日企業のレジリエンスをトレーニングするアプリを開発するheadversityはシードラウンドにて個人投資家から100万ドルを調達した。

同社はカナダのアルバータ州にて2016年に設立されたスタートアップで、メンタルヘルスの専門家や心理学者、学習やマーケティングの専門家を中心に、人々がチャレンジをしたり精神的な健康を維持するためのプラットフォームを開発している。

レジリエンスは経営学や組織論で注目が集まっている概念で、ストレスが一定以上かかったときに元の状態に戻る力のことを指す。同社はオフライン、オンラインのプログラムやゲーミフィケーションを組み合わせたプログラムを提供し、組織的にレジリエンスを鍛え、メンタルヘルスや組織力へのアプローチを可能にしている。

ATB FinancialやCopeman Healthcare、カナダのオリンピック委員会などの組織がパイロット版のプログラムを提供しており、今回調達した資金を用いてプロダクト開発やサポート、マーケティングの強化に取り組むという。

話題のポイント:今回取り上げたスタートアップが重視するのは「レジリエンス」という概念です。もともと2013年にダボス会議で取り上げられた考え方で、テクノロジーやグローバル化など様々な側面で不確実性が増す中、人々の変化によるダメージを抑え、創造的に飛躍するための力として活用が期待されています。

この概念の経営の文脈での論考としてリンダ・グラットンの「未来政府」があります。同書では企業のレジリエンスを考えるフレームとして以下の3つを紹介しています。

  1. 感情面:クリエイティビティを発揮できるような、ポジティブな感情が働くか
  2. 知識・知恵面:素早くアイディア・考えを集約し、統合することができるか
  3. 内外の人間関係面:社内外の相互作用が活発に発生し、発揮されているか

やや抽象的ですが同書の中では、個人で実践できるレベルで、十分な休息をとる、仕事とプライベートのポジティブサイクルを作る、自分の仕事を見直すなどの具体的なアクションが挙げれらています。

headversityはこのレジリエンス強化を企業にソリューションとして提供しています。精神疾患の治療や予防といった類のメンタルケアの枠を超えて、マインドフルネスや自己分析などを用いたアプローチも提供し、より社員が積極的に参加できる研修と言えるかもしれません。

同社のCEOで精神科医のRyan Todd氏は、多くの企業が取り組んでいる精神疾患で働けない人へのアプローチはどうしてもハードルが高くなる傾向があり、それ以上にその他95%の人に対して逆境を乗り越えるための手段を提供したいと語っています。

個人向けのサービスが中心であったメンタルヘルステック領域ですが、個人でケアを続けることのハードルは高く、企業向けのサービスであることのメリットは大きいと思われます。

出勤している社員の健康問題による業務遂行能力低下を測定するものとして、プレゼンティーイズム(出社してるけど業務に支障がある状態)が注目されています。ある米国の労働者のデータでは健康問題による労働者一人あたりの損失額を比較した際、医療費が2778ドル、休業による損失が661ドル、プレゼンティーイズムはなんと6721ドルとなっています。

欠勤や休職など目に見える形ではない生産性の低下に対するアプローチとして、headversityはこのプレゼンティーイズムへのソリューションとなり得るのではないでしょうか。(執筆:矢部立也

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メンタルヘルスをアプリで改善ーー認知行動療法実践アプリ「UpLift」がシード資金獲得

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ピックアップ: A SCIENCE-BACKED APP FOR DEPRESSION SUFFERERS, RAISES $1M SEED ニュースサマリ:メンタルヘルススタートアップであるUpLiftは7月22日、シードラウンドでthe Laidir Foundationから100万ドルの資金を調達した。the Laidir Foundationはワシントン州にある非営利団体で、世界に良い影響…

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ピックアップ: A SCIENCE-BACKED APP FOR DEPRESSION SUFFERERS, RAISES $1M SEED

ニュースサマリ:メンタルヘルススタートアップであるUpLiftは7月22日、シードラウンドでthe Laidir Foundationから100万ドルの資金を調達した。the Laidir Foundationはワシントン州にある非営利団体で、世界に良い影響を与えることを志向している。

同社はノースカロライナ大学医学部にてコンピューターによる認知行動療法(CCBT)を学んでいた学生により設立され、消費者向けにCCBTを実践するアプリを開発している。アプリでは、ユーザーに合った認知行動療法のボットによるセッションが提供される。最初のセッションは無料で、次のセッションからは月に29.99ドルのサブスクリプションプランが利用可能。

アプリは2018年に公開後、1万ダウンロードおよび1000人の有料会員を抱えている。同社が120人のうつ病患者を対象に行なったテストでは、標準的なうつ病スコアが1カ月で50%下がったという。同社は調達した資金を用いてプロダクトとチームを強化し、うつ病に苦しむ100万人にリーチすることを目指している。

話題のポイント:日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、メンタルヘルスに対して投薬ではなく「現実の受け取り方」や「ものの見方」といった認知にアプローチする方法論を認知行動療法といいます。

近年では今回取り上げた企業のように、コンピューターを用いてこの認知行動療法を実践するアプリケーションが多くリリースされています。以下の米国のVCであるWHITE STAR CAPITALによるマッピングでも、この認知行動療法が一つの分野として掲載されておりメンタルヘルス関連のスタートアップのうち33%がこの分野に該当しています。

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(Mapping out the Mental Health startup ecosystemより)

この分野ではセラピストとの対面セッションが高価格であること、また自分の精神上の問題を他人に公開することの心理的障壁があることを考えればコンピューターやAIが介在することの価値は高いでしょう。しかしながら対面ではなくセルフケアになるからこそ、顧客に継続的に使ってもらうことの難易度は高く、サブスクリプション型のビジネスモデルである認知行動療法アプリケーションの持続性には疑問符も付きます。

こうした背景を受けて最近は遠隔医療技術を用いて、ボットではなく実際のセラピストによるセッションを組み込んだシステムでの療法が実践されているようです。この場合、アプリケーションの使用から取得できる定量的なデータは、セラピストが対話の中から得る定性的な情報と合わせてよりパーソナライズされた治療が可能になります。

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Lyraウェブサイト

例えばメンタルヘルススタートアップのLyraではユーザーデータを用いて対面カウンセリング、オンラインカウンセリング、セルフケアアプリなどから適切な治療方法を提供しています。

また認知行動療法に関する新たな潮流としては、疾患予防やメンタルウェルネスといった治療ではない形のアプリケーションが多くリリースされています。この領域では瞑想アプリのCalmはユニコーンの仲間入りを果たしており、アメリカでは非常にポピュラーなアプリケーションになっています。ポジティブ心理学など疾患の治療ではなく人生をより充実させるための手段が充実してくる中で多様なアプリケーションが期待されます。

日本人は日常的なメンタルケアへの関心はあまり高くないように感じますが、アメリカほど対面のカウンセリングが普及していないからこそ、テクノロジーを用いたメンタルケアが普及する素地はあるかもしれません。(執筆:矢部立也

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インフルエンサー・メッセージ動画を販売する「Cameo」が5000万ドル調達、ファンビジネスの新たなプラットフォームモデル

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ピックアップ:Cameo raises $50M to deliver personalized messages from celebrities & influencers ニュースサマリー: 著名人のビデオメッセージのマーケットプレイスを運営するCameoが6月25日にKleiner Perkinsをリードインベスターとして5000万ドルの資金調達を実施している。本ラウンドにはChe…

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ピックアップ:Cameo raises $50M to deliver personalized messages from celebrities & influencers

ニュースサマリー: 著名人のビデオメッセージのマーケットプレイスを運営するCameoが6月25日にKleiner Perkinsをリードインベスターとして5000万ドルの資金調達を実施している。本ラウンドにはChernin Group、Spark Ventures、Bain Capital、そしてLightspeed Venture Partnersも参加している。

Cameoはシカゴを拠点に2017年に設立されたスタートアップ。5ドルから3000ドルまでの価格で著名人に希望の内容でメッセージ動画をリクエストすることができる。

使い方は様々で誕生日や結婚式にてサプライズ動画として使うケースが多いが、自分を鼓舞するため、営業や求人にてPRのためなどに使われている。今回調達調達した資金はモバイルアプリの機能強化に加えて、グローバル展開の強化に用いる。既にロンドンとオーストラリアに支社を設けており、タレント獲得のための人員を強化している。

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話題のポイント:今回取り上げたCameoは多種多様なタレントが参加しており、中にはスーパースター級のタレントも参加していますが、多くはSNSのフォロワー数が1万人周辺のインフルエンサーが多いです。Cameoが今後拡充したいタレントのセグメントは、CEOや投資家などビジネスで大きな影響力を持っている層です。彼らもプロスポーツ選手や芸能人に比べて影響範囲は狭いので、同じくフォロワー数万人ほどのタレントという位置づけになるでしょう。

インフルエンサー・マーケティング・プラットフォームのマーカリー(Markerly)が実施した調査によると、スポンサーつきでないインスタグラムの投稿に対する「いいね!」の割合は、フォロワー数1000未満のアカウントでは8%だが、フォロワー数1000~1万のアカウントでは4%になるとのことです。その後もフォローワー数が増えるに従って、いいねの割合は低下していきます。つまりインフルエンサーのエンゲージメントはフォロワー数が閾値に達すると、減少していくということになります。

実際、筆者が5月頃にこのCameoでカテゴリーやソーシャルでの影響力、参加時期などを250くらいのサンプルから調べたことがあったのですが、確かに必ずしも影響力の大きな有名人やインフルエンサーの購入数が伸びておらず、少数でもファンコミュニケーションをしっかりしているインフルエンサーの方が直接課金されやすいという状況がありました。

一方、Cameoには多くのスーパースターも参加しています。Cameoの価格設定はタレントが普段稼ぎ出す収益を参考に考えられているそうです。

たとえば、NFLの選手の場合、年俸/試合時間、つまり、1分あたりの当該選手の給料を計算します。その結果、タレントがその価格設定をすれば、NFLでプレーしている時と同じ給与となるので、タレントにとっても見合うビジネスである、という理屈です。

日本のインフルエンサービジネスはタレントマネジメント形式がまだまだ主力ですが、今後、こういったプラットフォーム型も当然出てくることになると思います。その際、どこが抜け出してくるのか引き続き注目してみたいと思います。(執筆:矢部立也

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セラピストのためのWeWork「Alma」が800万ドル調達ーー作家から大麻まで、専門コミュニティ・スペースビジネスの可能性

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ピックアップ:Alma, the WeWork for therapists, gets $8 million to draw ‘soulfulness into the world’ ニュースサマリ:ニューヨークに拠点を置くメンタルヘルスケアのスタートアップAlmaは6月21日、Tusk Venture Partnersをリード投資家として800万ドルを調達した。 同社は…

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ピックアップ:Alma, the WeWork for therapists, gets $8 million to draw ‘soulfulness into the world’

ニュースサマリ:ニューヨークに拠点を置くメンタルヘルスケアのスタートアップAlmaは6月21日、Tusk Venture Partnersをリード投資家として800万ドルを調達した。

同社は精神科医や心理学者、臨床心理士などメンタルヘルスケアに関わる専門家に月額制のコワーキングスペースを提供している。日程調整や請求など専門家の業務を効率化するツールや、患者と専門家のマッチングも実施する。Almaは物理的なスペースが必要ない専門家に対してもコミュニティメンバーシップサービスを提供しており、患者とのマッチングやイベント、請求サービスへのアクセスが可能になっている。

話題のポイント:ただ物理的な場所を提供するだけではなく、コミュニティ形成を提供価値にするのが今回紹介するAlmaです。世界的にコワーキングスペースの数は急増しており、2022年までに3万箇所に達すると推計する情報もあります。

コワーキングスペース運営は、物理的空間の提供というだけでは単なる不動産転貸サービスに留まり、ビジネスモデルの革新性に欠けます。WeWorkが黒字化への道が見えず、ビジネスモデルの不確実性が疑われているのもこのサービスの難しさでしょう。

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そこでコミュニティというユニークな価値を創出すべく、出てきた新たな潮流が特定の属性の人に特化したコワーキングスペースです。働く女性のためのThe Wing、インディーズゲーム開発者のためのGlitch City、作家のためのThe Hatchery Press、大麻業界で働く人のためのParagon Spacesなど様々なコンセプトが生まれています。

こうした空間ではイベントや顧客基盤の共有を通して、ビジネス的なメリットを享受できるようなコミュニティ形成が行われています。以下はAlmaの例ですが業務ツールの提供やオンラインでの顧客獲得支援など、コワーキングスペース側が専門家のビジネス支援を行っていることがわかります。またAlmaは専門家だけではなく、患者に対しても適切なセラピストとのマッチングという形で付加価値を提供できます。

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一般的な町のクリニックでは患者は医師の選択肢はなく、マッチング精度という点では低いかもしれません。しかし専門家のコミュニティを持っていることで、豊富な専門家の中から最適なセラピストに出会える可能性が高まるのもこういったスペースの利点です。

特色のあるコミュニティとしてのコワーキングスペースではWeWorkのような強烈なスケールは望めないかもしれませんが、ネットワーク外部性が働きやすく、ビジネスとしての拡張性も感じられます。(執筆:矢部立也

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高齢化する日本がターゲットーー第一生命なども出資、スマホを使った認知症の検知・治療「Neurotrack」が2100万ドル調達

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ピックアップ:Cognitive health assessment startup Neurotrack raises $21M Series C ニュースサマリー:デジタルヘルスのスタートアップ「Neurotrack」は6月11日、シリーズCで2100万ドルを調達した。調達した資金は、認知機能テスト及びメモリーヘルスプログラムのグローバル展開に用いられるという。本ラウンドには、既存投資家のKh…

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ピックアップ:Cognitive health assessment startup Neurotrack raises $21M Series C

ニュースサマリー:デジタルヘルスのスタートアップ「Neurotrack」は6月11日、シリーズCで2100万ドルを調達した。調達した資金は、認知機能テスト及びメモリーヘルスプログラムのグローバル展開に用いられるという。本ラウンドには、既存投資家のKhosla Venturesに加え、日本の大手保険会社である第一生命と損保ホールディングスが参加している。

同社は10分程度の所要時間で、スマホを使って受けられる認知機能テストを提供。診断には同社が特許を保有する眼球運動追跡アルゴリズムが用いられる。また、メモリーヘルスプログラムを提供し、食事や睡眠といった生活習慣の改善を通した認知機能低下に関する改善アドバイスを実施する。

同社は急速に高齢化の進む日本を成長市場と捉えており、昨年から日本の生命保険会社とともに認知症保険の一環としてプロダクトの試験導入を進めている。

話題のポイント:Neurotrackは米国を中心に急速に成長しているメンタルヘルステックです。メンタルヘルスの予防、診断、治療の領域には機械学習を始めとしたテクノロジーを活用することで、より効率的でパーソナライズされたアプローチが可能になるとして特に米国にて注目されています。

White Star Capitalの調査によれば、米国では5人に1人が何らかの精神疾患を患っており、60%の人が診断を受けることができておらず、適切な治療が施されていないとしています。こうした社会的背景と比例するように、近年では急激にメンタルヘルステックスタートアップへの関心が集まりつつあります。別のVCの調査報告によれば、2018年におけるVCによる同エリアへの投資件数は前年比で約3倍に増加しています。

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Image Credit : Mapping out the Mental Health startup ecosystem

特に予防や診断の分野では、医療機関が介在することが難しくNeurotrackのように手軽にアセスメントを受けることができれば、重症化する前に治療をしたり生活習慣の改善をしたりすることができます。こういった流れにはこれまでの医療のあり方の変化が背景にあります。

国内でも経団連が次世代のヘルスケアの姿として「未病・予防ケアへのシフト」「個別化されるヘルスケア」「個人の主体的な関与」という提言を掲げています。一方でこの実現にはコストなどの観点から、モバイルデバイスやAIといったテクノロジーや医療データの活用が必須になってきます。

一般消費者の意識にも変化が見られます。2019年6月行われた博報堂・日立の共同調査の結果では、AIによるプロファイリングが期待されている分野として、運転や金融などの分野を上回る形で病気予防がトップになっています。

既に予防がポピュラーになっている生活習慣病などに加えて、うつ病や認知症などあらゆる人が患ってしまう可能性がある精神的な病に関しても、予防や定期的な診断を習慣づける必要があると思います。そのためには使いやすく負担にならないUI/UXであり、治療や行動改善など次のアクションへスムーズに移行できるプロダクトが必要でしょう。

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Neurotrackには日本市場向けのページも開設されている(同社ウェブサイトから)

さて、Neurotrackが焦点を当てているのは認知症です。認知症の影響因子は加齢であり、厚生労働省の調査によれば、高齢化が急速に進行する日本では2025年までに730万人に達するという予測もあります。

こういった背景から日本でもNeurotrackと同じように認知症ケアに取り組む会社が出てきています。例えばブレインケアは認知トレーニングや脳トレの提供に加えて、データ分析による認知症予防や認知症リスク低減など幅広く取り組んでいます。

CEOのElli Kaplan氏も述べているように、認知症は多くの場合対処が遅れてしまうことが問題でその予兆を検知し適切な処置を施すことが重要です。そこでNeurotrackは学術的な研究をベースに診断技術を開発したということです。(執筆:矢部立也

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医療データを統合・管理するAbacus Insightが1270万ドルの資金調達

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ピックアップ:Healthcare data integration startup Abacus Insights lands $12.7M Series A ニュースサマリー:医療データの管理・共有における課題解決を目指すAbacus Insightは5月30日、CRVをリードインベスターとしたシリーズAラウンドで1270万ドルを調達した。 電子カルテや会計ソフトなど、医療現場のIT化は着実に…

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ピックアップ:Healthcare data integration startup Abacus Insights lands $12.7M Series A

ニュースサマリー:医療データの管理・共有における課題解決を目指すAbacus Insightは5月30日、CRVをリードインベスターとしたシリーズAラウンドで1270万ドルを調達した。

電子カルテや会計ソフトなど、医療現場のIT化は着実に進んでいるが、データという観点で見たとき、サイロ化による業界全体での情報の非対称性が問題になる。ここでいう医療におけるサイロ化は、各医療機関やその他機関ごとにシステムやデータ管理が独立して存在している状況を指し示す。

Abacus Insightは、健康保険会社向けに医師や薬剤師、その他医療従事者の間でやりとりされる患者の医療データを共有するプラットフォームを開発することを目指している。保険会社と医療機関は共通の病歴データにリアルタイムでアクセスすることができ、より適切な医療行為を行うことができる。

同社は現在40人の従業員がおり、今回調達した資金で従業員数を2倍にし、開発力の増強を図る。

話題のポイント:医療データのサイロ化、つまり孤立状態が起こってしまう背景には、センシティブな個人情報の扱いがあります。もし、ネットワークのどこか一つの機関でもセキュリティーが脆弱でやりとりの改ざんが起こってしまった場合、情報流出等の大きな問題に繋がりかねないからです。

こうしたセキュリティーに対する解決策として注目されているのがブロックチェーンです。ブロックチェーンは分散的に改ざん不可能な取引記録を残すことができるという特徴から、医師による記録である電子カルテを始め、医療に関わるやりとりの情報を安全に管理できます。

秘匿な情報の管理には向きませんが、閲覧権限を厳密にコントロールできるので、複数の主体の間で医療情報のやりとりを行う基盤として期待されています。まだ実際にブロックチェーンを医療データに活用した例は多くありませんが、電子カルテを積極的に導入し、国民の健康情報を一元管理しているエストニアでは、セキュリティーの観点からブロックチェーンでの管理が導入・運用されています。

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参照:福岡エリアにおける医療情報連携に関する実証実験の完了

エストニアの事例は極めて先進的ですが、地域限定もしくは関わる主体を限定する形でデータの共有基盤やブロックチェーンを導入することも可能です。

実際に日本でも2017年に福岡県の飯塚病院を中心とする実証実験が行われています。ここではブロックチェーンと情報連携基盤を組み合わせる形で、効率化や利便性の向上を目指していました。

医療機関に留まらず、保険会社、薬剤師、介護施設など複数の主体間でデータのやりとりは発生していきます。また今後はIoTデバイスなどの普及で様々な生体情報が医療情報として取得され、分析や管理をすることも増えるのではないでしょうか。(執筆:矢部立也

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