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Column

カルチャーに半年もの時間を投資したスタートアップが得たもの(1/2)

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本稿はPR TIMES STORYからの転載記事。一部、執筆者の許諾を得て要約・編集をしております 今月、atama plusでは、自分たちが大切にしているカルチャーについてまとめた「atama+ culture code」を公開しました。 カルチャーコードとはValuesを体現するために必要なことを言語化したものです。作成にあたっては職種横断のカルチャーコード検討タスクフォースを作り、全メンバー…

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atama plusが発行したカルチャーコード・ブック

本稿はPR TIMES STORYからの転載記事。一部、執筆者の許諾を得て要約・編集をしております

今月、atama plusでは、自分たちが大切にしているカルチャーについてまとめた「atama+ culture code」を公開しました。

カルチャーコードとはValuesを体現するために必要なことを言語化したものです。作成にあたっては職種横断のカルチャーコード検討タスクフォースを作り、全メンバーを巻き込みながら実に半年以上の時間をかけ侃侃諤諤の議論を行いました。

創業3年目(作成開始当時)のリソースの限られたスタートアップがなぜこんなにもカルチャーに投資を行うのでしょうか?本稿では、カルチャーに投資する理由、そしてその結果得られたものの体験をみなさんに共有したいと思います。

「エライ」のはMission

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創業前のatama plus(写真:atama plus)

話は創業前にさかのぼります。これはatama plusを創業した2017年4月のさらに半年前の写真です。私の自宅に集まり、これから立ち上げる会社(まだ名前もない!)のMissionについて議論していた頃の様子です。

なぜ、私たちはそれなりに順風なキャリアを歩んできたにもかかわらず、わざわざリスクをとって新しい会社を立ち上げるのか?そんな議論を重ねた結果、「教育を通じて社会を新しくするために会社を創るんだ」ということを決めました。

そうです。創業より先に決めたのはMissionの方だったのです。ですから、atama plusはなぜ存在するのかというと、答えは明快です。「Missionを実現するため」。それ以外にありません。

atama plusは、社会のまんなかを新しくするために、限られた生徒ではなく、数億という規模の生徒に良い教育を届けていく。そのために、atama+というサービスを軸としたビジネスで、教育を進化させる持続可能な仕組みをつくる、そしてそれをなるべく早く実現することを目指すという会社です。

そのため、atama plusの意思決定の基準もシンプルです。あらゆる決定の基準は、究極的にはただひとつ「Missionの実現に向かって前進しているか?」。

それだけです。

判断に迷ったらここに立ち返っています。ちなみに、atama plusでは組織図の一番上にはMissionがあり、代表である私は一番下にいます。「エライ」人はいなく、「エライ」のはMissionです。誰かの顔色をうかがうよりもMissionの実現に向かって前進することを最優先にしています。

カルチャーは庭

企業のカルチャーとは何なんでしょうか?

カルチャーは変わり続けるものです。
仲間が一人増えれば変わる。
事業やプロダクトが変われば変わる。
組織が変われば変わる。毎日変わり続けます。

カルチャーは変化し続ける「状態」なので、どんなカルチャーを作りたいかを決めて、それに向かって努力し続けるのみです。カルチャーは「建築物」のように一度作ったら壊れないものではなく、作るのに時間はかかるし手入れし続けないとすぐに壊れる「庭」のようなものです。

種を植えたり雑草を抜いたりしながら、ずっと丁寧に磨き続けるものだと思います。毎日の地道な積み重ねの結果が企業のカルチャーとなります。atama plusは「一人ひとりがMission実現の当事者」であるカルチャーであり続けたいと思っています。それにはMissionに共感したメンバーが集まり(そういう人だけ採用し)、そして全員が継続してカルチャーを磨き続ける必要があります。

atama plusの強みは何ですか?

よく聞かれる質問ですが、教科書的な回答をしようと思えば「プロダクト」「ビジネスモデル」「データ」「顧客基盤」「ブランド」、、、などがあげられますが(私も社外にはそんな説明をすることが多いですが)、本当はそこじゃありません。

真の強みは「カルチャー」です。プロダクトもビジネスも真似できますが「カルチャー」は真似できるものではありません。「庭」はすぐには作れません。

ひとつ、例を挙げさせてください。

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atama plus4月のプレスリリースより

2020年2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国の学校に臨時休校要請がなされました。私たちの顧客である塾も休校することとなります。

Atama plusのプロダクトは塾内のみで利用することを前提に作られており、塾が休校したら全く使えないものになります。さらにタイミングの悪いことに、臨時休校要請の翌日2月28日はオフィス移転の日で、引越し準備で仕事どころではないといった状況でした。それでも、急ピッチで開発した自宅でも利用できるプロダクトを塾に提供し、1カ月後にはユーザー数が10倍以上に伸びることとなりました。

すべてのチームが自律して動いた結果でした。各チームの一人ひとりがMission実現の当事者だったのです。(後編へ続く)

参考記事:なぜatama plusはここまでカルチャーに投資するのか?

本稿はAI先生「atama+」を開発・提供するatama plus代表取締役、稲田大輔氏によるもの。Facebookアカウントは 彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はdaisuke.inada.10。 こちらからコンタクトされたい

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ビジネス資料のGitHub化ーーNotion2.0が目指す「テンプレ図書館」の衝撃

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 プログラミングをせずとも、ウェブもしくはモバイルアプリを直感的に構築できるノーコードサービス分野が成長してきました。「Bubble」や「AppGyver」のようなアプリ開発、日本の「STUDIO」や「Strikingly」に代表されるLP開発など、領域は様々です。ノーコードの本質は、時間やコストを圧…

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Almanacウェブサイト

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

プログラミングをせずとも、ウェブもしくはモバイルアプリを直感的に構築できるノーコードサービス分野が成長してきました。「Bubble」や「AppGyver」のようなアプリ開発、日本の「STUDIO」や「Strikingly」に代表されるLP開発など、領域は様々です。ノーコードの本質は、時間やコストを圧倒的に削減することにあります。そして今、ノーコードトレンドの考えが新たな体験として企業で広く使われるドキュメント作成分野にも広がりつつあります。

Almanac」は、ビジネスドキュメントテンプレートのクラウドライブラリを提供。マーケティング、人事、法務テンプレートなど、専門家によって公開された、磨き上げられた1万件の文書を提供しています。各資料をコピペすれば、ユーザーは手軽にプロのドキュメント内容をトレースできます。UIはノートツール「Notion」にとても似ています。

同社はサンフランシスコに拠点を置き、シードファンディングで900万ドルを調達。General Catalyst、Inspired、Abstract、Shrug、Worklife、Indicator、Wing、Liquid2とともにFloodgateがリードしたシードラウンドを経ています。現在のユーザー数は1万ほど。

ユーザーは、チェックリストや販売促進用の電子メールスクリプト、コースガイドなどのドキュメントをコピー可能なテンプレートから選べます。クラウドベースでありながら、バージョン管理が可能なソーシャル・コラボレーション機能も備えています。

同社の提供価値は大きく3つです。「バージョン管理」「ドキュメントのソーシャル性」「トレース」。順に説明していきます。まずは「バージョン管理」から。

たとえばローカル作成したファイルをチームメンバー複数人で管理していると、やがていろいろな箇所にちらばり、「最新版はどこにあるんだっけ」など、バージョン管理ができない問題が発生します。こうした非同期の問題に対して、NotionやEvernoteが解決してきたようなクラウドベースの手法を取り入れています。

次に「ドキュメントのソーシャル性」。

未だビジネスドキュメント作成においてソーシャル性を持たせたツールは確立されておらず、誰もが自由に改訂し、新たなデータとして公開できるような体験というものは浸透していません。他方、Githubはエンジニアのコードを、Figmaはデザインソースをオープンにさせ、コラボレーション・プラットフォームとして確立させることで大きな成功を収めています。そこでAlmanacも、ビジネスドキュメントに同様の価値を付けようとしています。

最後に「トレース」。

単にユーザー同士がコラボレーションできる場を提供するだけではNotionなどに勝てません。そこでAlmanacは各領域の専門家のドキュメントをオープンにすることで、誰もが資料デザインをトレースできる環境を整えました。ビジネスドキュメント領域にインフルエンサーを登場させ、誰もが欲しくなる資料をキュレートする場を作ったのです。

手軽に0-1で直感的に資料作成でき、その資料の出来栄えはプロ並み。ノーコードで重要視されるポイントを綺麗にビジネスドキュメント作成に応用したのがAlmanacと言えるでしょう。上記、3つの点を抑えることで大手競合サービスに並ぼうとしているのがAlmanacです。

コロナが大流行する中、Almanacは急速に成長しており、プラットフォーム上で作品の公開、サンプルを執筆するユーザーの数は、過去2カ月間で9倍に増加しているとのこと。

Almanacのようなドキュメントサービスは特定言語に依存しているため、日本でも類似サービスは十分に立ち上げ可能でしょう。日本市場にローカライズさせることで、一定規模の市場を開拓できるかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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KDDI「200億円買収」のソラコムが急成長、IPOも視野にーーグローバル展開の秘策を語る #discovery2020

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買収から3年、創業5年のソラコムが新たな成長への歩みを始めるようだ。 今日、オンライン開催となったソラコムの年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2020」の壇上で発表された成長戦略の中には明確に「IPO」の文字が刻まれていた。創業から2年、200億円という高評価でKDDIグループ入りしたIoTプラットフォームのソラコムが3年という時間でどのように成長し、そして次にどこに向かおう…

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ソラコム共同創業者、玉川憲氏と安川健太氏(写真提供:ソラコム)

買収から3年、創業5年のソラコムが新たな成長への歩みを始めるようだ。

今日、オンライン開催となったソラコムの年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2020」の壇上で発表された成長戦略の中には明確に「IPO」の文字が刻まれていた。創業から2年、200億円という高評価でKDDIグループ入りしたIoTプラットフォームのソラコムが3年という時間でどのように成長し、そして次にどこに向かおうとしているのか。

イベントに先立って、ソラコム創業者で代表取締役の玉川憲氏に話を伺った。彼らが創業から目指し続けた「グローバル・プラットフォーム」への一つの「解」と共にご紹介したい。

200万回線

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買収時に8万回線だったSORACOM、3年で200万回線へ(資料提供:ソラコム)

Internet of Things、モノのインターネット化に必要不可欠な通信環境をクラウドでコントロール可能にし、あらゆる機器のサービス化を実現したのがソラコムの提供する「SORACOM Air」だった。衝撃的なデビューから約5年、今年の6月末には200万回線の契約を公表している。

この数字、実は3年前にKDDIが高評価で買収した際には8万回線と多くなかった。契約しているアカウント数(※法人と個人を含む契約者数で回線数とは別)は7000アカウント(現在は1万5000アカウント)とある程度のボリューム感があるものの、ビジネスとしてまだ各社が手探りの状態だったからだ。ユースケースとしても自動販売機のメンテナンスやスタートアップのIoT機器(まごチャンネルやWHILLは良い事例)への利用などバラエティに富むものの、数字という面ではインパクトに欠ける。

これを大きく変えたのが日本瓦斯(ニチガス)とソースネクストの事例だ。ニチガスではLPガスのスマートメーター化を進め、2020年度中の85万回線を見込む。一方、ソースネクストは翻訳機「ポケトーク」が大ヒットし、こちらも2020年2月時点で70万台を記録している。ここにはソラコムの「eSIM」技術が採用され、ユーザーはわざわざモバイル通信契約を意識することなく翻訳サービスを利用することができるようになっている。

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ニチガスのスマートメーター事例(資料提供:ソラコム)

結果、KDDIグループ入りしてから1年後の2019年6月には100万回線、そしてその1年後に200万回線をマークするようになった。KDDIもまた別口で法人向けIoT回線契約を2000年頃から提供しており、グラフの通り綺麗な成長曲線を描き始めている。

もちろん、ソラコムについてはその数字の大半は大口2社の契約であることは確かだが、それでもその可能性のある企業が彼らのネットワークに1万5000アカウント以上が存在している。具体的な事例は明かせないとしつつも、決済関連は非常に有望だそうで次のヒットの可能性は充分すぎるぐらいにあるだろう。

グローバル化への壁:ローミング問題を超える

今日の発表で最も(関係者にとっては)インパクトのある内容が「サブスクリプションコンテナ」だったのではないだろうか。国境を超えた通信価格がエリアによって7割以上も安くなる、IoT関連サービスを世界展開する際のローミング問題を解決する技術だ。

簡単に説明しよう。通常、モバイル通信(私たちが普段使ってるスマホも含め)を海外で利用する場合、現地のSIMを買うか、ローミングして日本のキャリアから海外キャリアへ再接続して利用することになる。

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サブスクリプションコンテナを使えば現地価格の通信がSORACOMの体験を通じて利用可能に(資料提供:ソラコム)

現地SIMは現地キャリアの価格で利用できるものの、購入したり、プリペイドの契約、追加チャージなどがめんどくさい。ローミングはそのまま国内キャリアが使えて便利な反面、価格に反映されてしまう。

IoT機器でも同じことが発生していた。ソラコムのIoT回線サービスを海外で使う場合、提携する海外キャリアにローミングして使う以外に方法がなく、例えば可愛らしいロボットにSIMを入れて日本から海外販売する場合、ローミングした通信費がサービスに乗っかってしまう。一方、現地の回線をロボット事業者が独自に入れようとすれば、各国でキャリアと交渉・契約し、さらにSORACOMのような管理ツールなしにユーザーとの契約を管理する必要が発生する。

もちろんほぼ不可能な話だ。

これを仮想的に実現したのが今回発表されたサブリプションコンテナの考え方だ。イメージとしてはeSIMに近く、SORACOMのプラットフォーム上で事業者サイドが各国の回線契約自体を切り替えることができるので、ローミングと異なり契約そのものが現地キャリアのものになる。結果、前述したような7割〜最大9割という大きな値下げが期待できるようになる、というわけだ。

実はこれまでもSORACOMはカバレッジとしてグローバル(ローミング)と特定地域を分けて提供していたのだが、今回発表されたサブスクリプションコンテナの機能を使えば利用できるエリアの範囲はGSM/3Gで148カ国・296キャリア、LTEで76カ国・148キャリアに拡大する。

実際に国を切り替えるデモを見せてもらったがワンクリックで終了とあまりにもあっけない。これで事業者は出荷する先の国を世界主要都市から選ぶことができるようになるのだ。

取材時、玉川氏が「これでようやく真のグローバル化が見えてきた」と感慨深そうに呟いていたのが印象的だった。

IPOも視野「スウィング・バイ」オープンイノベーション

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ソラコムとKDDIの取り組み(資料提供:ソラコム)

ソラコムの創業は2014年11月。翌年3月から玉川氏が前職(Amazon Web Service)を離れて本格的に事業を開始し、2015年6月にはInfinity Venture PartnersおよびWorld Innovation Lab(WiL)から7.3億円を調達。第一弾となるサービス「SORACOM Air」を公開した。

サービスインから約半年の翌年2016年5月には シリーズBラウンドでやはりIVPとWiLから24億円を調達。そして2017年8月にKDDIが過半数を200億円で取得するという「ザ・スタートアップ」の物語だった。

ただこの買収劇の時、なぜ全株ではなく過半数だったのかやや不思議な気持ちがあったのも事実だ。しかしこうやって振り返ると、当時の回線契約はたった8万回線。玉川氏がよく話していた「グローバル」の規模感からはほと遠い位置だったことがよくわかる。まだ何も成し遂げていない状態だったのだ。

連結の営業利益1兆円を超えるメガ企業にスタートアップがどこまでインパクトを残せるのか。

ここまでの3年間は両社合わせて1400万回線というIoT市場の拡大・牽引が分かりやすい結果として残った。この市場をグローバルサイズにするために、両社が取った決断はソラコムの株式上場も含めた独立的な成長路線になる。

今後、グローバル展開を本格化させようとすると、場合によって各国のキャリアやキープレーヤーとの資本を含めたパートナーシップ戦略が必要になってくる。また、優秀な人材も集めなければならない。こういった機動力のある、資本も含めた経営戦略は独立も視野に入れた方がやりやすいと考えたのだろう。

具体的な計画は(上場するかも含めて)まだこれからの話だが、これだけの成長株が公開されることになれば話題になるのは間違いない。ちなみにKDDIはもうひとつのオープンイノベーション施策として「非通信業」のスタートアップを買収したマーケティング・グループ「Supershipホールディングス」を形成し、こちらも上場を目指すとしている。

玉川氏は今回の成長に向けた戦略を「スウィングバイ」と表現していた。巨大な惑星の引力を活用してより遠くに飛ぼうとする飛行方法だ。大企業が新たな成長を目指す上で新しい概念や技術をいち早く取り入れ、市場を開拓するオープンイノベーションの新たな展開としてもソラコムの事例は引き続き注目に値するのではないだろうか。

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「Facebookの改善」は可能なのか?

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Facebookは今までにないレベルでボイコットの脅威に直面している。公民権運動を実施する連合団体Stop Hate For Profitは、Facebookに対して10つの提案を実施し、ハラスメントや女性蔑視、人種差別や過激主義への対処を求められている。 このようなFacebookへの問題提起の共通点は、誰もがFacebookの軌道修正が可能だと信じている点だ。 しかし、もしそうでないとしたらど…

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Photo by Juan Pablo Serrano Arenas on Pexels.com

Facebookは今までにないレベルでボイコットの脅威に直面している。公民権運動を実施する連合団体Stop Hate For Profitは、Facebookに対して10つの提案を実施し、ハラスメントや女性蔑視、人種差別や過激主義への対処を求められている。

このようなFacebookへの問題提起の共通点は、誰もがFacebookの軌道修正が可能だと信じている点だ。

しかし、もしそうでないとしたらどうだろうか?

もちろん、私はFacebookが批判へ対応を講じない理由に結び付けたいのではない。むしろ、提起されている問題はFacebookの根本的な構造、つまりソーシャルメディアそのものに起因しているのではないかということだ。

同社はよく「何も対策を講じていない」と指摘される。しかし、実際Facebookは数多くの行動を取ってきているのが事実だ。

ヘイトスピーチ対策においては、同社は最新の報告書にて今年のQ1で960万件のコンテンツをブロックしたと触れており、昨年Q4の570万件から増加していることが分かる。また、今週は「Boogaloo」と呼ばれる反政府的活動のグループを200件以上閉鎖している。加えて5月には、Content Oversight Board (コンテンツ監視委員会)を開設した。これらはFacebookの対処の内、ほんの一握りの例だ。

このように、Facebookはテクノロジーでの解決を模索する以外にも人的解決策の取り組みも拡大してきている。しかし、ニューヨーク大学の研究が指摘しているように、これらの多くが第三者機関に依存しており、不十分な要素が目立つことが指摘されている。

さて、冒頭で触れた連合団体の提案では、「差別、バイアス、ヘイトスピーチの監視を強化するための、自社内における組織編制」が要求されている。また、透明性を検証するための第三者機関への情報提供、悪質なコンテンツに影響を受けた広告主への返金、白人至上主義、反ユダヤ、ホロコースト修正主義、ワクチン関連のフェイクニュースや気候変動否定主義に関連するグループの削除などが含まれている。

ほかの多くの提案は、有害コンテンツをフラグ化できる機能、政治的コンテンツの正確性、政治家への特例撤廃などは既に同社が取り組んでいる、または検討しているとされているものだ。提案の中には、誹謗・中傷を受けた被害者が、Facebookの従業員と話す機会を持てるコールセンターの設置というものもあるが、これは現実的でないように思える。

さて、Facebookは実際に、コンテンツの監査などいくつかの措置に合意したものの、未だボイコット運動の勢いは収まりを見せていない。同社副社長のニック・クレッグ氏は、インタビューにて有害なコンテンツ検閲に努力を惜しまないと述べている。

「Facebookはヘイトスピーチを放置しておいたところで、全く利益を生みません。何十億もの人がFacebookやインスタグラムを利用しているのは、そこでポジティブな経験ができるからです。広告主もユーザーも、悪意あるコンテンツをみたくはありません。つまり、私たちがそうしたコンテンツを取り締まることには大きなインセンティブがあるのです」。

しかし、有害コンテンツの完全な排除は現実には不可能に近いと言えるだろう。同氏は以下のようにも語っている。

「日々、多くのコンテンツが投稿される中で、悪意あるコンテンツのみを見つけることは非常に難しいと言わざるを得ません。Facebookでは、プラットフォームの安全性とセキュリティー対策のため、人員を約3倍の3万5000人規模に増員しています。そういった意味では、私たちは悪意あるコンテンツを見つけ出すAI技術のパイオニアと言えるでしょう」。

つまり、同社が取り組んでいる対策は、現時点で講じることのできる最善の一手なのだ。しかし、極右勢力にとっては未だにFacebookがプロパガンダ・フェイクニュースを生み出す最善の手段だと認識しているのが現実だ。

とはいえ、Facebookが自身で公開している同社の「対策」結果によると、昨年4月から9月までの間に32億件の偽アカウントを削除したとしている。これは、2018年の実績である15.5億アカウントからほぼ倍増していることになる。

これは、MAUが23.7億人を超えるSNSと考えると驚異的な数字だろう。言ってしまえば、同社は四半期ごとに月間利用者数を超えるフェイクアカウントを追い出していることになる。それでも、まだ月間アクティブユーザーの5%は偽物であるとの推測を出している。

この状況を踏まえると、現在提案されている対策を仮に全て受け入れたとしてもFacebookが根本的に変化を成し遂げることは難しいのではないだろうか。いわば、Facebookは少数の「偽の人物」が「本物の人物」を煽りフェイクニュース、プロパガンダ、ヘイトスピーチを拡大させる身近な最良のツールと化している。

抜本的にFacebookを改革するのなら、ユーザー登録に身元確認書類を必須にするなどの対策が考えられるが、ユーザーからの大きな反発が起こることは容易に想像できる。ほかには例えば、米国政府が主導になってプラットフォームがコンテンツに対して法的責任を回避することを許容しない法律の再制定も想像できる。しかし、それもマジョリティーに受け入れられる可能性は低いだろう。

では、Facebookは一体どうすればいいのだろうか?おそらく、この問題は規制を求める側とFacebookのやり取りがほぼエンドレスに続く状況へ帰着するのだろう。

もちろん、Facebookは、ある程度ボイコットが収まるまで自主的な規制強化を施すことになる。並行して新たな規制論者が生まれ、また、それと同時に何もそこで起きていないかのように何十億人もの人がFacebookを利用し続ける。そうした傍では、悪意を持った人々がいかにFacebookを悪用するか考え続けている、という状況が続くのだ。

そしていつの日か、何十年・何百年の間人類と時間を共にしたFacebookがどの様に私たちの暮らしに影響を与えたのか振り返る、そんな時が来ることになるのではないかと思う。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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次の10億ドル企業は「子供の寝かしつけ」市場を狙う

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 ピックアップ:Moshi, a sleep and mindfulness app for kids, raises $12M Series B led by Accel ニュースサマリ:子供向けの寝かしつけ音声アプリ「Moshi」は、AccelをリードにLatitude VenturesとTrip…

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Photo by Anastasia Shuraeva on Pexels.com

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

ピックアップ:Moshi, a sleep and mindfulness app for kids, raises $12M Series B led by Accel

ニュースサマリ:子供向けの寝かしつけ音声アプリ「Moshi」は、AccelをリードにLatitude VenturesとTriplepoint Capital参加のラウンドで1,200万ドルを調達した。同社は子供の睡眠を助けるアプリを開発。アプリには150近いオリジナルコンテンツが用意されており、80本の30分就寝ストーリーは、すべて同社が執筆・制作したものだ。

コンテンツ1つ1つの流れは、子供が寝やすいように忠実に練られている。たとえば、同アプリで最も人気のあるストーリーの一つである「Mr.Snoodle’s Twilight Train」では、ストーリー全体の背景に「シュッシュッポッポ」という電車の音が鳴り響く。この効果音は、子供の平均的な安静時心拍数に合わせたもので、子供が安らかな気持ちになれるように工夫されている。

現在10万人以上のサブスクライバーを抱え、8,500万回のストーリーが再生されているという。年間40ドルの利用料で収益化を図る。

もともとMoshiはMindy Candyという会社が名称を変更したもの。評価額10億ドルを超える「ユニコーン企業」の仲間入りをした瞑想アプリ「Calm」の創業者兼CEOであるMichael Acton Smith氏が創業したのだが、Calmに専念するために同社を抜けている(後継として現Moshi CEOのIan Chambers氏が着任)。つまり、流れとしてはCalmと同じDNAを汲んでいることがわかる。

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Photo by nappy on Pexels.com

話題のポイント:お子さんの寝かしつけに悩まれている方は多いのではないでしょうか?

コロナの影響で子供と一緒に過ごすことが多くなり、寝かしつけ問題(お昼寝含め)がさらに顕著になっているかもしれません。これは長年に渡って親御さんたちの大きなペインポイントでもあり、ここを切り口に、子供を落ち着かせる音声コンテンツを提供するのが「Moshi」です。

室内フィットネス市場では「Peloton」「Mirror」などの大型器具が注目を集めています。一方、自宅で手軽にできる瞑想アプリ領域も「Calm」を筆頭に、「SimpleHabit」のような瞑想版Netflixや、「Journey Meditation」のようなオンデマンドライブ配信が人気です。「自宅 + フィットネス/瞑想」のトレンドが子供市場にもやってきた、と今回のニュースは読んで良いでしょう。

子供独特の精神状態全てに対応するため、まずは寝かしつけという誰もが共感する課題から入り、将来的には自閉症やADHDなどの特定状態に対応するための音声コンテンツを提供することができれば、巨大プラットフォームになる可能性も見えてきます。音声書籍ストアや、Amazon的なマーケットプレースなど色々な展開が予想できるので、まさに「子供向けCalm」の市場を独占できる戦略思考です。チーム背景も文句ないので、急成長が望めるスタートアップの匂いがしてきます。

ちなみに数年前にはAmazon Alexa Fundから出資を受けた、Echoを使った絵本読み聞かせサービス「Novel Effect」が登場しています。同社もまたMoshiと同じ読み聞かせ市場を狙っており、親御さんや教師が読む幼児向け本に合わせて、Amazon Echoやスマホから効果音が出る立体演出サービスを提供します。「音のAR」とも呼べる領域で、累計調達額は310万ドル。Techstartsアクセラレータプログラム出身のスタートアップです。

現在、Novel Effectは保育園を中心にB2B営業をかけてサービス展開させており、Moshiに関しても、仮に寝かしつけの一定の効果がしっかりと検証されたのであれば、保育園に卸せるかもしれません。Cにも、Bにも展開でき、坂路拡大に悩む出版社との提携も考えられます。日本でも十分にトレンドとなる領域だと感じますし、その最前線にいるのがMoshiと言えます。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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【IPOスタートアップの資本政策解剖】マネーフォワード編〜第2回「Smartround Academia」から

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前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。 金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴー…


前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。

金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックスの東京オフィスとサンフランシスコを経て、2014年にマネーフォワードに参画。同社が個人向けの家計簿アプリから、事業者向けの会計サービスへと進化を始めた直後のことだ。昨年までマネーフォワードの CFO を務めていた金坂氏だが、IPO 経験を生かし昨年設立された成長企業向けのフィナンシャルアドバイザリーを提供するマネーフォワードシンカの代表に就任。7月1日付けで、金坂氏が再びマネーフォワードの CFO に復帰就任したことが発表されている

なお、マネフォワードシンカは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今年3月に VC とスタートアップのオンライン面談マッチングを支援する活動を実施したほか(すでに終了)、5月には投資家向けに保有する未上場スタートアップ株式の売却先を紹介する株式売却アドバイザリーサービスを開始している。

今回の聞き手も、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

<これまでのマネーフォワード関連記事(一部)>

<上場前(2012年5月〜2017年9月)>

マネーフォワードは2017年9月に上場を果たしたが、上場前段階で44億円、上場後も市場以外で143億円を調達するなど、事業成長に成長資金を常に調達し続けている。最初の資金調達となったのは、創業から7ヶ月後の2012年12月。代表取締役の辻庸介氏の古巣マネックス証券のベンチャー投資部門からだった(当時のマネックス・ビジネス・インキュベーション、現在のマネックスベンチャーズ)。マネーフォワードにとって初めての外部資金調達(2,000万円)だったが、同社ではこれをシリーズ A ラウンドと位置付けている。

シリーズ B〜C ラウンド位までは VC 調達が多いが、シリーズ C〜D ラウンドあたりからは地方銀行や事業会社からの調達が増えている。マネーフォワードは、B 向けの販売チャネルとして地方銀行や会計事務所などとの協業を行っており、事業ステージの進捗とともにベンチャー資金よりは事業パートナーからの資金注入が増えていることがわかる。ちなみに金坂氏がマネーフォワードに参画したのも、同社が シリーズ C を始める2014年のことである。

スタートアップ経営者にとって資金調達のリードを掴むことは重要ミッションの一つであり、この日の視聴者からは金坂氏に対し、自社に合った VC や投資家にたどり着く方法、投資家とのリレーションに対して質問が多くなされた。質問の順序は前後するが、金坂氏の説明を要約すると概ね次の通りだ。

  • アーリーステージにおいて特に重要なのは資本政策。後戻りできず、投資家とのやりとりで飲んだ条件や契約が、結果的に上場で足を引っ張ることが起こりうるのがエクイティファイナンスの怖さだ。バリューエションも、ダイリューションも、上げ過ぎても下げ過ぎても良くない。多面的な角度から考えることでリスクを下げるべきだと思う。
  • 投資家との契約にあたっては自社にあったアドバイザーと相談し、二社以上の投資家と話すことで、投資家との契約における交渉力を維持すべきだと思う。
  • エクイティファイナンスにかけた時間は、2014年の時で半年(シリーズ C)、2015年の時で4ヶ月(シリーズ D1)、その次は数ヶ月くらい(シリーズ D2)。回数を経るにつれ、普段からリレーションが取れているため、短くできるようになっていった。
  • 投資家とは常にコミュニケーションし、「次にファイナンスするときは声をかけてください」と言ってもらえる関係性を確立しておく。あるラウンドのファイナンスが終わった瞬間から、投資家には次のラウンドに参加してもらう可能性があるという位置づけ。
  • 地方銀行から資金を調達できた背景には、ビジネス面でのアライアンスが進んでいることが大きく影響している。アプリを作るとか、クラウドサービスを進めるとか、そういった協業関係が無いと、地方銀行からの資金調達は難しいのではないか。
  • バリュエーションが100億円を超えてくると VC からの調達は難しくなってくることも事実。投資家に対しては、バリュエーションや投資リターン以外のメリットを見せる必要が出てくる。レイターステージで事業パートナーからの調達が増えるのには、そういう理由もあるだろう。
  • ストックオプションは、基本的に年に1回の形で運用していた。全株式の中で、上場時の何%を割り当てるかは投資家らとの契約の中で決めていた。例えば、ストックオプションで付与できる割合を全株式の15〜20%程度に設定しておき、創業から上場までを4年と見るなら、1年あたり4〜5%程度は付与できる、というようなイメージ。誰にどのように付与するかについては、社員が100人程度の規模までは評価制度が確立されていなかったので、CEO や CFO が相談して決めていた。
  • どの投資家から、バリュエーションをいくらにして、どれだけ調達するかについては、まずは自分たちのビジョンを明確にし、それに必要な資金を算出する。そして、どの程度のバーンレートをカバーして、その金額で何年持たせられるかを計算する。マネーフォワードの場合は、比較的厚めにファイナンスしてきた。ストレッチしたバリュエーションでファイナンスができたのは幸運だった。そして、投資家には、事業上の関係やフィーリングも含め、一緒の船に乗ってやっていける人や企業を相手に選ぶべきだ。
  • 投資家に伝えていくストーリー(業績見通しの計画)については、事業のステージによって違ってくる。2014年くらいまでは(シリーズ C あたり)売上はまだ1億円に届かない位の業績だったので、今後どういうプロダクトをローンチしていくのかを話していた。2015年(売上4億4,000万円)、2016年(売上15億4,000万円)くらいになると、トラックレコードで将来成長を見せられた。売上がまだ無いときは SAM(実際に提供可能な市場規模)や TAM(獲得可能な最大市場規模)で、売上が出てきたら実績の延長線で話せるようになる。
  • 資金調達は CEO 中心でも CFO 中心でもできるが、どんな体制で臨むかはその会社次第。資金調達に表面的なスキルよりも、むしろ、投資家との信頼関係を築いたり、最後までやり切れる人だと見てもらえたりすることが大事。投資家も経営者を2〜3年見ていればそのあたりが分かってくるので、安心して投資ができるようになる。投資家に対しては、真摯かつ愚直に事業に取り組んでいる姿を見せ続けるというのが王道。ファイナンスが必要になってから、ある日投資家に出会い、「いきなり投資を決めてください」と申し出る選択肢は勧めない。

<上場(2017年9月)>

スタートアップ経営者にとって、自社の業績が上場基準を満たしたとして、いつ上場するかというのは熟慮すべき課題。最近では、ファンドの大型化によって、資金需要だけで考えれば VC からの調達でも充足することができるだろう。しかし、「金は天下の回りもの」であるゆえ、経済のある部分がスタックすると資金調達を含め経済全体がスタックする危険を指摘する CFO は多い。

マネーフォワードでは、シリーズ E ラウンドを迎えた2016年前後から経営陣の間で上場に向けた話が出始め、「上場を最速で目指そう」という意見の一致から2017年夏にターゲットを定めた。マネーフォワードの初期投資家の代表者でもあり、辻氏の心の師でもある松本大氏が言う「上場はタイミングが難しいがゆえ、できるときにするのがいい」という以前からの進言も参考にしたそう。

タイミングは重要であるが、タイミングは簡単にずらせるものでもない。したがって、シンプルに考えた結果、最速を目指した。すべての会社に当てはまらないかもしれないが、マネーフォワードの場合、IPO できるときに IPO して次の成長に備えるということで、そういうタイミングになった。(中略)

海外ではかなり大きくなるまでは IPO しないという傾向がある。これは IPO しないというよりも、大きくならないと IPO できないからという感じ。日本の場合はマザーズという新興市場があるので、IPO できるタイミングで IPO というのもありだし、大きくしてから IPO するというどちらも選択肢としてありだと思う。(金坂氏)

<上場後(2017年9月〜)>

マネーフォワードが2020年4月に公開した第1四半期の決算説明会資料によると、同社の株主のうち機関投資家比率は過半数を超え、海外機関投資家が36%、国内機関投資家が16%を占める。昨年、日経が発表した売上高100億円以下の上場企業「NEXT1000」を対象にした調査では、2018年度に海外投資家を増やした会社1位はマネーフォワードだった(89社)。別の日経記事によれば、これら海外からの公募増資は、主に M&A 資金などに充てるためのものだ。

実際のところ、クラビス(2017年11月)、ナレッジラボ(2018年7月)、ワクフリ(2018年8月)、スマートキャンプ(2019年11月)と、マネーフォワードはスタートアップ買収にも積極的だ。マネーフォワードの海外投資家からの資金調達は、日本の SaaS や会計系サービスなどへの強い期待の現れと見ることもできる。また、買収はしていないが、Chatwork(東証:4448)や BASE(東証:4477)といった上場を果たしたスタートアップに対する投資家でもあった。

そういったこともあり、マネーフォワードはこれまで海外投資家への IR 活動を積極的に行ってきた経緯がある。IPO 以降、通算で三度にわたる海外からの資金調達を行っており、1度目は IPO と同じタイミングで、旧臨報方式(アメリカを除くアジアやヨーロッパなどの世界にオファリングをする)により30億円、2度目と3度目は海外公募増資(Global Offering)により、それぞれ66億円(2018年12月)と47億円(2020年1月)を調達している。1度目の調達時に旧臨報方式を選んだのは投資家からの需要が大きかったこためで、英文でのドキュメンテーション作成も必要とされなかった。

金坂氏によれば、M&A する場合と、マイナー出資する場合では、投資先スタートアップの選定基準が全く異なってくる。マネーフォワードの M&A 戦略はプロダクトを増やす M&A とユーザを増やす M&A に大別されるが、これまではプロダクトを増やす方に終始してきたそうで、今後はユーザを増やす M&A 案件も手掛けていきたいという。また、M&A では買収先のスタートアップの経営者をマネーフォワードグループの経営陣に迎えることを前提とするため、会社間や人の間のカルチャーフィットが重要となる。資本提携や出資の場合はこの限りではなく、投資先のスタートアップの経営者が IPO までやり切れるかどうかを見極めるそうだ。

また、上場後は、いかに株主に長く会社を愛してもらうか、もっと言えば、株を持ち続けてもらうかというのはテーマだ。安定株主をどうやって確保するかという視聴者からの問いには、金坂氏は次のように応えた。

安定株主という概念は信じていない。どんな株主にも、売りたい時に売る権利があるからだ。ただし、投資家とはコミュニケーションを密にとって、長期にわたって株式を保有してもらえるよう努力はしている。投資家とは立場が違うので、株式を売り出すタイミングについては交渉はできても無理は言えない。普段からしっかりした IR を心がけ、マネーフォワードの場合は大口の株式売却があっても、株価に影響を与えずに、それをいい投資家にまた買ってもらえている。

<その他>

  • 株主が多いと株主とのコミュニケーションが大変になる、と懸念する経営者もいる。マネーフォワードの場合、ミドルステージ以降は、事業パートナーに株主になってもらったものが多い。そのため、彼らに対しては投資家への説明以前に事業における説明があり、月1回ペースでの KPI 報告会、その後、社長や担当者も交え飲み会という形で運営していた。株主=事業パートナーに毎月会っているので、次のファイナンスの情報も伝えやすい。複数の株主が同時に同じ場所に集まれ、効率的に意見を交換できる点でもよかった。
  • 新型コロナウイルスの影響で資金調達が難しくなるのも事実だろうが、工夫をする方法はある。まず、資金が足りないからと言って新規投資家に連絡を取る前に既存投資家と密にコミュニケーションをとるべきだ。新規投資家と既存投資家では、そのスタートアップに対して持っている情報量が違うし、既存投資家がサポートできないのに新規投資家がサポートするのは難しい。既存投資家の支援を獲得し、それから新規投資家を呼んでくるべき。営業上ムダなコストはとことん削ること。

マネーフォワードシンカのクライアント企業

金坂氏が代表を務めるマネーフォワードシンカでは、スタートアップが IPO などイグジットを目指す上でのフィナンシャルアドバイザリー事業を行っている。昨年9月の創立から、スタッフメンバーは総勢10名体制にまで成長。マネーフォワードの上場を通じて得られた知見や経験をもとに、2021年までにスタートアップ100社の支援を目指しているそうだ。

また本セッション終盤には、先月のエルピクセルの元取締役横領事件にも触れられた。CEO は CFO に全幅の信頼を置くものだが、悲しいことにこういう事案が時々世の中を賑わせてしまう。今回の事件では、銀行口座の通帳コピーが細工されるという単純なトリックで経営陣が騙されてしまったわけだが、マネーフォワードを使えば、口座情報はリアルタイムで金融機関からアグリゲートされるため、その情報をオンラインで経営陣が共有すれば、同じような問題は生じない、とのことだった。

スマートラウンドは、起業家の資本政策づくりを支援する SaaS「smartround(スマートラウンド)」のユーザが去る6月16日で1,000社を超えたと発表した。smartround のローンチは昨年6月22日なので、1日平均約2.8社のペースでユーザが増えたことになる。また先頃、これまでの「資本政策 smartround」「経営管理 smartround」「会社紹介 smartround」「ライブラリ smartround」に加え、新たに「株主総会 smartround」をリリースした。株主総会 smartround の機能の一部は、先月ケップルがローンチした「株主総会クラウド」と競合する可能性がある。

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変化するエンジニア採用、グローバル化で広がる「チーム開発」の可能性

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 企業が海外人材を雇用するには面倒なプロセスをクリアしなければなりません。 他国で合法的に人を雇用するためには、現地法人を設立し、現地の労働法を学び、現地の給与計算を行い、現地の弁護士を探して、各国法に準拠した雇用契約書を作成する必要がありました。こういった現地雇用法や規制への準拠は、ほとんどのスター…

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

企業が海外人材を雇用するには面倒なプロセスをクリアしなければなりません。

他国で合法的に人を雇用するためには、現地法人を設立し、現地の労働法を学び、現地の給与計算を行い、現地の弁護士を探して、各国法に準拠した雇用契約書を作成する必要がありました。こういった現地雇用法や規制への準拠は、ほとんどのスタートアップおよび中小企業にとって対応コストが高すぎて、海外人材へのアクセスは容易にできません。

一方、米国ではクラウドソーシングおよびフリーランス人材採用プラットフォームとして「Upwork」や「Fiverr」があります。しかしながら、プラットフォーム側の人材精査が甘いために企業が一人一人細かく面接する必要があったり、本格採用をするには別途手続きを自社で手配する必要があります。プラットフォーム事業として成長していながらも未熟な印象です。

こうした問題を解決し、どの国からでも・どの国に住む人でも雇用できるようにしたのが、4月22日に1,100万ドルの調達を果たした「Remote」です。

Remoteは世界中のどこにいても、誰でも数分で採用活動を開始できるHRプラットフォームを運営しています。さらに採用だけでなく、先述したような給与計算・福利厚生・コンプライアンス・税金など、海外人材を“正しく”雇用する際に必要なリーガル/アドミン業務を、1つのプラットフォームで処理してくれます。ヘルプが必要な場合には、Remoteの専属弁護士が対応に当たり、適切な処理を支援します。

パンデミック禍、リモートワークの成長傾向が高まる中で、他国での契約社員や正社員の雇用を簡素化できるニーズは刺さるはずでしょう。なにより、海外へ直接赴けない環境下、手軽にバーチャルな意味で現地法人を立ち上げられるプラットフォーム開発は非常に価値を発揮するはずだと感じています。

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Photo by Ketut Subiyanto on Pexels.com

Remoteの提供価値はその名の通り「海外リモート人材採用」にあります。SmartHRが提供しているような労務管理の機能をグローバルに拡大させ、さらに人材採用プラットフォームとしての機能も持ち合わせ持ち、一気通貫でチームを作るサービスを提供しています。

現在は個人開発者を採用するプラットフォームですが、注目すべきは“Hire your own team in any country”とあるように、グローバルチーム組成を行えるメッセージ性に重きを置いている点です。

昨今、従来のスポット開発依頼の仕事とは違い、チームプロジェクト単位の開発仕事に対応するプラットフォームに対するニーズが上がっています。個人ではなく「開発チームおよびプロジェクト」を丸ごと外注するクラウドソーシングプラットフォームに注目が集まりつつあります。

例えばウェブサイトやアプリ開発の外注サービス「Engineer.ai」は「アプリ開発のコンビニ」を作っています。

UberやInstacart、Snapchatと言った代表的なプラットフォームとそっくりのテンプレートをマーケットプレイスで選ぶと、そのままの機能を備えたサービス開発を外注できます。諸機能を取捨選択してオリジナルアプリの開発も可能です。

一方のEngineer.aiは事前に用意したテンプから「選んで買ってもらう」流れを採用しているため、自社でユニークな機能を毎回構築する必要がありません。工数のかかる機能開発注文がくる可能性を潰しており、自分たちの開発しやすい・利益率の高いサービス開発に誘導しているのです。

Enginner.aiは自社で世界中のエンジニアを囲い、依頼のあったテンプレートから即座にチーム組成を実施し、過去の記録からコンポーネントを渡して開発効率化を図っているわけですが、こうしたグローバルチーム組成を誰もができる可能性を秘めるのがRemote、というわけです。

彼らが仮に企業と個人を結びつける採用プラットフォームから、企業と開発チーム(組成)を支援するサービスへと成長すれば、より多額の取引を発生させるはずです。国内ではランサーズがチーム単位で発注できるサービスを提供していますが、これのより発展的な拡大・グローバル版です。

採用市場は「チーム採用」へと変わりつつあり、これからは「グローバル・チームプラットフォーム」が台頭してくる時代になると感じます。こうした背景を踏まえ、「アジア版Remote」のような企業が日本から登場しないか、期待をしながら市場を見ています。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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リモートワークはやめてオフィスに戻った話

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緊急事態宣言の解除から1カ月近くが経過しようとしています。報道など見てると、観光地や商店街などに賑わいが戻りつつある様子が伝えられる一方、世界的なパンデミックは収束どころか拡大している地域もあり、ああ、結局ワクチンが出てくるまでは薄氷を踏むような状況なのだなと再認識している次第です。 気になる働き方の変化についても各社方向性が決まりつつあります。 例えばそもそも昨年からテレワークを計画していたKD…

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Photo by Marc Mueller on Pexels.com

緊急事態宣言の解除から1カ月近くが経過しようとしています。報道など見てると、観光地や商店街などに賑わいが戻りつつある様子が伝えられる一方、世界的なパンデミックは収束どころか拡大している地域もあり、ああ、結局ワクチンが出てくるまでは薄氷を踏むような状況なのだなと再認識している次第です。

気になる働き方の変化についても各社方向性が決まりつつあります。

例えばそもそも昨年からテレワークを計画していたKDDIや、今年早々に全グループ社員をリモート推奨としたNTTグループのように、事業者自体がテレワーク関連のサービスを提供しているようなケースは妥当として、カルビーのようなメーカーまで新しい生活スタイルに合わせてきています。中でも日立製作所についてはかなり意外でしたが、記事にある通り数年前から実験を繰り返していたということで、改めて経営サイドの準備の大切さを感じるわけです。

一方、スタートアップ含め、比較的動きやすいテクノロジー系各社はどうでしょうか。

ここ数回、オフィスのあり方については各社の意見をまとめて書いてきましたが、Work From Homeのメリットで聞こえてきたのは(1)多様な生活に対応できるようになった、(2)通勤時間の無駄と同時に業務の棚卸しと効率化が議論できた、辺りに集約されるかなと。

<参考記事>

感染症拡大防止の観点で自宅に高齢者などを抱える人は、引き続き感染リスクを下げるために在宅が必要になると思いますが、それ以外にも子育てや介護など、ライフステージにおけるイベントは突然やってきます。こういったケースに働き方が柔軟に対応できるようになった結果、とあるテクノロジー系大手では離職率が下落したという話も聞いています。

また、多くの経営者、マネジメントで意見があったのが業務効率化、無駄の削除です。サイバーエージェントの意思決定が参考になりますが、原則出社に戻す一方、会議については社内であってもオンライン対応するというのが代表例です。場所の確保や移動時間もそうなのですが、オンライン・ミーティングは事前の準備等がしっかりとしていないと、かなりグダグダになります。特に会議中に発言をしないケースでは、本当に参加していたかどうか分からないため、発言責任などがより鮮明になるのも特徴です。それ以外にもハンコなくそう運動や、実は名刺いらなくね?問題など、今後もビジネスシーンにおける効率化は進むのではないでしょうか。

しかし思ったよりも「いや実は違うんじゃないか」と言われているのがコスト削減メリットです。

感染症拡大が決定的になった時、スタートアップ各社でオフィス解約の動きが活発化したのですが、やはり検討の結果、オフィスに戻るという選択をした企業もあります。LayerXもオフィス解約で話題になった1社でしたが、検討を重ねた上で、やはりチーム全員で場所に集まろうという意思決定をしたそうです。

リモートワークに関するメリット等の議論は他社のそれらと大差変わりなく、例えば採用に関する一次面接などは引き続きオンラインを継続するなど、双方の良い点を取り入れていくという意思決定になったというお話でした。しかしそれ以上に彼らが懸念したのが「新しい働き方を議論するコスト」だったそうです。これは大変興味深いコメントでした。

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完全テレワークの実施は約5割、同僚とのコミュニケーションも課題に。 ~ウィズコロナ時代テレワークの課題・工夫に関する調査結果を発表~(KDDI調査・6月11日)

KDDIが実施したリモートワークに関する調査でも、例えば雑談が少なくなる、運動不足になりがち、作業環境が悪い、といったデメリットが挙げられています。では、これらをどうやって解消するのか。この意思決定はスタートアップのような小さなチームにとっては結構な負担です。また、彼らのようにクリエイティビティや思考プロセスが求められる業務が多い分野もリモートワークが苦手とするところです。

具体的なオフィスの契約についても、完全になくしてしまうという意思決定はあまり聞こえてこなくなって、定期的に対面できる場所の必要性を訴える声や納得感の方が大きくなりつつあります。前述のサイバーエージェントは基本出社に戻って、その代わりに週に1回の「リモデイ」という原則リモートの日程を加えますし、こちらのオフィスのように曜日単位で借りられるオフィス、というものも出現してきています。

先行事例としても例えば、投資事業を手がけるミスルトゥではオフィスではなく「MISTLETOE OF TOKYO」というコミュニティスペースを運営していて、ここでは出社が目的ではなく、繋がりを作るといったセレンディピティを重視した考え方になっています。

重要なのはオフィスの考え方も多様性が一気に拡大する一方、「完全になくす」という選択肢は多くの企業にとっては難しいのだろうなということです。最終的にはオフィスの契約は残るケースが多くなり、一時的に期待されたコスト効率化(特に小さなチーム)についてはそこまで劇的なものにはならないのかもしれません。

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ミスルトゥが展開するスペースはオフィスというよりギャラリー

因みに本誌編集部では長らくWork From Anywhere(※在宅ではないので)の考え方で運営しています。シンプルに記事を書く、取材するという活動には各自の自律的な意思決定が重要で、そこに複数の判断が介在すると動きが鈍くなります。一方、事業については、企画運営などの観点からミスルトゥに似たようなコミュニティスペースを作ったりしたこともあります。

きっかけは悲しいパンデミックではありますが、場所ありきではなく、働き方や事業に合わせて場所を考えるよいきっかけであることは間違いないのではないでしょうか。

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創業2年で評価額830億円(7.8億ドル)の新星スタートアップ、そのビジネスモデルとは

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 新しい投資運用の形として、注目のスタートアップが小売市場に登場しました。名前は「Thrasio」。創業年2018年のスタートアップです。 Thrasioは2019年4月に650万ドルのシード調達を実施。そこからたった1年しか経っていない2020年4月、シリーズBで7,500万ドルの大型調達に成功して…

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

新しい投資運用の形として、注目のスタートアップが小売市場に登場しました。名前は「Thrasio」。創業年2018年のスタートアップです。

Thrasioは2019年4月に650万ドルのシード調達を実施。そこからたった1年しか経っていない2020年4月、シリーズBで7,500万ドルの大型調達に成功しています。同時期に3,500万ドルのデッド調達をしているため、総額1億ドル超を調達していることになります。現在の評価額は7.8億ドルという急成長企業です。

同社はAmazonサードパーティ・プライベートレーベル事業を買収する事業を運営しています。Amazonの商品の中から「トップレビューのあるベストセラー商品」を見つけ出し、そのブランドを中小企業のオーナーから購入します。Crunchbaseが伝えるところによると、すでにある程度の利益を生み出しているそうです。

Thrasioの着眼点は、Amazonで事業展開をする中小企業が抱える「ビジネスを始めるのは簡単だが、成功すると時間の経過とともに管理が難しくなる」という課題です。成長フェーズにあるが、生産から配送、価格最適化、広告展開まで手に負えなくなってしまったブランドを買い取る「ミニ買収」を繰り返し、爆発的な成長を遂げているのがThrasio、というわけです。この手のブランドは、オーナーが予想していた以上のスピードで成長してしまい、手に負えなくなっているケースが大半とのこと。

これまでに43の事業をオールキャッシュで買収し、自社オペレーティング・プラットフォームに統合。ブランディングや検索などを通じて最適化を図っています。買収したブランド製品には、フィットネス機器ブランド「Beast Gear」、疲労防止フロアマット「TrailBuddy Hiking Poles」などが挙げられます。

利益が500万ドル以下のブランドに対して投資家があまり注目してくれない、という状況も追い風になっています。100万ドルから500万ドルの範囲でThrasioが独占的に買収オファーを出している状況はPeter Thielが提唱する、ニッチ領域で高いシェアを占める典型例であると感じます。

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Photo by Tobias Dziuba on Pexels.com

さて、Thrasioのモデルは小売市場における新たな投資業態です。ここからは考察になってしまいますが、おそらくビジネスモデルは次のようなものでしょう。

  1. 投資家などから出資を募る(事業資金を募る)
  2. 過去の売り上げデータなどを分析して成長性の高いブランドをピックアップ (AIによる期待収益予想)
  3. 買収提案をして、ディールが決まったらAmazonアカウントを連携させるだけ(FBA – Fullfillment by Amazon
  4. 1〜2年で元を取る

日本でも楽天で大きく成功している中小企業ブランドがいたり、100均やちょっとした商品開発にアイデアを持って行って成功させている個人がいます。こうした人たちのExit先として成立させる小売買収事業は、パンデミック禍で落ち込んでしまっている企業を救い、投資マネーを循環させる上で良いかもしれません。もし期待収益を高精度で予測できるのならば、収益も確保でき、Thrasioのような成長ビジネスになるはずです。

D2Cブランドが世界的に乱立しており、消費者からしたらどれを選べば良いのかわからない状態になっていますので、新たな買収モデルとして一度スキームを作ってしまえば、他の様々な市場で買収事業モデルが応用される予感がしています。経済を促す社会的な意味合いも込めて、そしてある種の新たな投資ファンド事業として、ポストコロナで活躍する可能性は大いにあるでしょう。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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スタートアップが本当に重視すべき「粗利」の捉え方

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ピックアップ:Moats Before (Gross) Margins スタートアップが本当に重視すべき「粗利」の捉え方について、Andreessen Horowitzがレポート「Moats Before(Gross)Margins」を公開している。同レポートでは、スタートアップが高い粗利率を継続しなくても安定した経営を可能とする4つの「Moats(堀)」を例に挙げ分析している。 Economie…

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Photo by Francesco Ungaro on Pexels.com

ピックアップ:Moats Before (Gross) Margins

スタートアップが本当に重視すべき「粗利」の捉え方について、Andreessen Horowitzがレポート「Moats Before(Gross)Margins」を公開している。同レポートでは、スタートアップが高い粗利率を継続しなくても安定した経営を可能とする4つの「Moats(堀)」を例に挙げ分析している。

  • Economies of Scale(規模の経済・スケールメリット)
  • Meaningful Differentiated Technologies(意味のあるテクノロジー優位性)
  • Network Effect(ネットワークエフェクト)
  • Direct Brand Power(ブランド力)

もちろん、スタートアップが利益を重要視しなくていいという主張ではない。利益が立たなければ、そもそも企業経営は続かないし、R&Dやマーケティング費用等へのキャッシュフローが回らず、悪循環に陥る。

むしろ、上記にあげたような「Moats」が前提にあるからこそ、高い利益率は自然とついてくる性質にある。つまり、粗利の高さが「Moats」となり安全な企業経営を出来るのではなく、注目すべきなのは「Moats」を如何に構築していくかであって、ゴールのないR&D・マーケティングではないということだ。その一例にAppleを取り上げ、同社の粗利率は38%のみであることを指摘している。

以下で、それぞれのMoatsに関する詳細をまとめた。

Economies of Scale

Economies of Scaleの顕著な例として、Amazonの流通ネットワークが挙げられている。絶対的な経済規模を構築し、コスト面で優位性を獲得することでユーザー視点で見れば「そのプロダクトを利用する意味」を自動的に生み出すことが可能となる。これが、生産可能量の絶対数増加に伴うコスト優位性を意味するEconomies of Scaleだ。

では、Economies of Scaleを自社が得ているかの判断基準はどういったものになるのか。レポートでは以下のようにまとめられている。

  • 単価コストが競合より「確実かつ明確に」低くなっているか?
  • ユニットエコノミクス(最小単位あたりの収益性)を下げず、単価コストが成長しているか?
  • サプライヤー・バイヤーに対する「明確な交渉材料」を持っているか?

「交渉材料」を市場から獲得した例には「Spotify」が挙げられる。確かに同社はテイラースウィフトなどのアーティストと、音楽に対する捉え方の違いから問題を抱えていた過去があった。しかし、Spotifyは今や5000万曲以上のコンテンツまでスケールさせ、アーティストとの明確な交渉材料を手にしはじめている。

Meaningfully differentiated technology

経営者として「明確な」テクノロジーの違いを導くためには、プロダクト機能や性質のどの1点にフォーカスした差別化に取り組んでいくかがキーとなる。多くの企業は自社の技術が「飛びぬけて素晴らしい」と信じているため、それを別の角度から表現していくことが重要となる。

  • その技術・プロダクトはIP(Intellectural Property: 知的財産、特許など)を取得しているか?
  • 競合より価格設定が多少高くても、その技術に投資するユーザーから選択してもらえるか?

Network effects

粗利が低くとも、なぜ成長を遂げることができるのかに対する答えが「ネットワーク・エフェクト」です。UberやLyftなどのデジタルマーケットプレイスのスタートアップの成長過程をその代表例に挙げる。ネットワーク・エフェクトが自社プロダクトに生じているかは、「ユーザーエンゲージメント」・「マネタイズ」の2点から判断できるとしている。

  • ユーザー数が伸びるのと並行して、ユーザーエンゲージメント(DAU/MAUなど)に成長はみられるか?
  • プラットフォームにおける需要と供給にオーガニックグロース(自律的成長)がみられるか?

Direct brand power

「強い」ブランド力の構築には「カルト的信者」をどのように長期的目線で集めていくかが重要となってくる。もちろん、そうしたブランドの構築には資金投入が求められるが、必要資金と捉えるより投資と捉えリターンを求めるべきであるとしている。

  • 売り上げのトラフィックが常に「Organic > Paid」となっているか?
  • 初期のCAC率(Customer Acquisition Cost: 顧客獲得費用)は継続的に下落傾向にあるか?

実際、スタートアップを経営するうえで上記にあげたような「Moats」は知らないうちにマーケティング施策に取り組まれていることが多いと感じる。だからこそスタートアップ経営としてトップがこういったオーダーを重視すると、自然にこれ自体が一つのMoatsとなり、スタートアップのDefensibilityへと繋がるのだと思う。

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