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創業期に「従業員」は採用しなくていい

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創業期の起業家のみなさん、組織戦略やチームづくりに頭を悩ませていませんか? 「組織戦略に絶対的な自信がある」「自分なら最強のチームがつくれる」という方はおそらく稀でしょうし、チームビルディングやマネジメント経験の少ない若手起業家のみなさんなどは特に先行き不安なこともあるのではないでしょうか? 創業すぐ、友人や知人など、継続的な関係性を経て、信頼できるからこそ選んだ初期メンバーだけの数人のチームなら…

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創業期の起業家のみなさん、組織戦略やチームづくりに頭を悩ませていませんか?

「組織戦略に絶対的な自信がある」「自分なら最強のチームがつくれる」という方はおそらく稀でしょうし、チームビルディングやマネジメント経験の少ない若手起業家のみなさんなどは特に先行き不安なこともあるのではないでしょうか?

創業すぐ、友人や知人など、継続的な関係性を経て、信頼できるからこそ選んだ初期メンバーだけの数人のチームなら、不安を感じることも少ないかもしれません。また、そうしたメンバーのリファラル(紹介)で採用がうまくいっていれば、もう少しチームが大きくなっても問題は起こりづらいかもしれません。

一般的にはリファラル採用は、属性の近いメンバーが集まり、コンフリクトの起こりづらい組織づくりに有効だと言われています。スタートアップはそうした関係性のあるメンバーで始まることが多いと思います。友人と共同創業、前職の同じ事業部の仲間が経営メンバー、といった感じです。

そのため、創業期には組織の課題というものにそれほどマインドシェアを割く必要がないケースもありますが、一方で、私たちが見ている限りでは、組織の課題というものは、3人でも5人でも、上記のようなリファラル採用が成立している組織でも起こり得ます。

例えば、重要なことから日々の細かなことまでどうも意思決定の軸がずれる、コミュニケーション量の不足でお互いの行動が見えづらくなり疑心暗鬼になる、そして情報共有の質が落ちてくる、ルールを制定したりツールを導入しようとしたときに反発が起こる、陰でネガティブな話題をまき散らされる、いったことです。

組織の課題というものは、顕在化してきて初めて対策をとるというケースがほとんどです。しかし、それでは手遅れということもありますし(数名の組織なんて簡単に壊れてしまいます)、必要以上に問題解決にマインドシェアを割くことになってしまうこともあります。なので、組織戦略とまではいかなくとも、まずは組織づくりの入り口を意識することから始めましょう。

創業期のスタートアップの採用や組織づくりの成功事例に関する情報はいろいろあるものの、その全てが必ずしも自分(あなた)にとって再現性のあるものとは限りません。一方で、回避すべきポイントを押さえておき、ある程度「同じ轍を踏まない」ということをするのは可能だと思います。

そのために、特に採用時に意識しておくべき“回避”のヒントを3つお伝えしたいと思います。

スキルフィットだけで採用しない

なぜ採用をするのか?と言われれば、企業価値向上のためでしょう。スタートアップにおける企業価値向上とは、PMF(プロダクトマーケットフィット)を早め、売上を立てること。そのためにはざっくりと、ビジネスサイドのメンバーと開発のメンバーが必要、といったことになります。

要するに、採用したい人に求める成果は比較的はっきりしているので、「成果を出せそう」というスキルや経験からの予測を判断基準に採用することになります。しかしながら、スキルだけを求めてしまうと、その人は成果だけに固執し、経営やチームづくりについては考えてくれなかったり、周りにも同じことを求めたりするかもしれません。

成果を出すために手段を選ばない人もいるでしょう。そうなると、重要な意思決定の局面で軸がずれることが起こり得ます。そういった人の見極めには、一緒に3カ月働いてみる、戦略について議論してみる、といった採用の前段階を踏むことをおすすめします。

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目的と手段を混同している人を採用しない

最近はミーハーな気持ちでスタートアップに目を向けている人も多く、目的と手段を混同している人を散見するようになりました。そういった人を見極めるためには、「未来の話」をたくさん聞き出しましょう。「人生を賭けてどんなことを成し遂げたいと思っていますか?」「あなたの“自己実現”とはどんなことですか?」などです。

その回答が「会社を上場させたい」「CFOになりたい」などだったとしたら、それは手段を目的化している可能性があります。「成長したい」という回答も同様です。自己実現やビジョンなど、抽象的な話に終始するとしても、お互いにそれに共感できるのかはとても重要です。まずは「見ている山のてっぺん=ビジョン」をすり合わせるのです。これをカルチャーフィットと表現することもできます。登り方=戦略は、ビジョンさえすり合っていれば、その後いくらでも議論することができます。

“従業員目線”の人を採用しない

カルチャーフィットしているメンバーだけを集めていれば、チームカルチャーという点で著しく差異が生まれたり、コンフリクトが起こったりするケースはあまりないかもしれませんが、個としての目線(立場)の違いによりそれが起こるケースはあり得ます。目線の違いとは何かといえば、「経営目線」か「従業員目線」かということです。

経営目線の人が見ているのは「会社やチームの未来」です。一方で、従業員目線の人が見ているのは「自分の未来」です。前者は主語が「自分たち」、後者は主語が「自分」という違いもあるかもしれません。なので、最初から「雇われる自分/雇われている自分」という目線が強い人は、採用しない方が賢明かもしれません。

「企業価値を上げるためにどうする?」という議論に、「自分はこうしたい/自分はこうしたくない」というコメントをしてくる可能性があるからです。そのマインドを変えるのは相当に難しいので、創業期は特に「自分たちはこうあるべきだ/チームとしてこうありたい」という目線の人を選ぶようにしましょう。見極めには、「チームで問題が起こりました。こんなときどうしますか?」といったケーススタディ的な質問や議論が役立ちます。

いかがでしょうか。

目の前の採用候補者が、あなたの目にとても魅力的に映ったとしても、上記3点について、ぜひ一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。それらが問題ないと判断できるようであれば、目の前のその人は、あなたのチームを成功に導くキーマンになってくれるでしょう。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、ジェネシア・ベンチャーズのアソシエイト、一戸将未氏によるもの。Twitterアカウントは@ichinohe_GV。特に、初めての起業や若手の起業家の方への具体的なアドバイスを実施している。1月28日には、同社GPで東南アジア投資責任者の鈴木隆宏氏によるメンタリングデーも開催予定。くわしくはこちらから。

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旅のストーリーが個人を強くする時代

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トラベル業界の2019年を振り返ると、大きく分けて2つの領域に資金が集まった印象です。1つはオンライン・トラベルエージェンシー(OTA: Online Travel Agency)市場。 なかでも今年はソフトバンクビジョンファンドによる「GetYourGuide」や「Klook」への連続大型投資など、孫正義氏が掲げる「群戦略」の一つにトラベルという領域が入っていることが証明された年でもありました。…

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トラベル業界の2019年を振り返ると、大きく分けて2つの領域に資金が集まった印象です。1つはオンライン・トラベルエージェンシー(OTA: Online Travel Agency)市場。

なかでも今年はソフトバンクビジョンファンドによる「GetYourGuide」や「Klook」への連続大型投資など、孫正義氏が掲げる「群戦略」の一つにトラベルという領域が入っていることが証明された年でもありました。

また、OTAに対してサービスを提供する市場も大きく伸びた印象です。「ダイナミックプライシング」はバズワードとなりました。AIや機械学習を活用してOTA事業者の顧客データのパーソナライズ化を促進。各ユーザーに対してユニークな価格提案やサービス内容を設定できるといった内容です。同領域では、ピーターティール氏が投資する「FLYR」が市場をけん引していると思います。

brown wooden center table
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2つ目はAirbnbを筆頭とする民泊市場。こちらもまた、ソフトバンクビジョンファンドが新興OYOに投資するなど「〇〇版Airbnb」が数多く台頭し始めました。

まず、ビジネス向け旅行者に特化した民泊プラットフォーム「2nd Address」、ハイエンドな物件のみをリスティングする「Sonder」、一室丸ごと貸し出し&アーキテクチャーデザイナーによる部屋のデザイン性を売りとする「Lyric」が〇〇版Airbnbや、Airbnbの競合として頭角を現しています。(*LyricはAirbnbに投資されています。)

とはいえ、民泊市場においてAirbnbの絶対的王者感は否めません。たとえば同社ではビジネス向けに「Airbnb for Business」を提供、ハイエンド向けには「Airbnb Plus」と称しブランドサービス提供を始めています。

bedroom door entrance guest room
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Airbnbがリードするトラベル市場の中でユニークな動向を掴むには、Airbnbと一線を画している民泊スタートアップの存在を考えてみるとよいかもしれません。

たとえば、新築マンションを民泊化する「WhyHotel」、キャンプ場版Airbnb「Hipcamp」、ミレニアル世代をターゲットに旅行中のみ自身の部屋を民泊化できる「Leavy.co」などが挙げられます。彼らは単なる民泊ではなく、あらゆるトレンドを織り交ぜた市場戦略を採用しています。2020年以降、こうした特定コンセプト型民泊事業者が、ユニコーンへ近づく可能性は大いに考えられるでしょう。

ここまで上げた2つの市場領域は既に成熟しています。また、事例に挙げた企業らを代表として、思い立ったらすぐに旅行に出かけられる、旅行に出かけるまでの壁をなくすサービスを確立させています。

Airbnbは、宿泊地選定にかける時間・費用の短縮化、前述のLeavy.coであれば、旅の資金を半自動的にリアルタイムで生み出せる点で貢献していると言えるでしょう。このように、今後も全体的なサービス・クオリティーは上昇を遂げていくことが予想できます。

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さて、「ギグエコノミー」から「パッションエコノミー」へ、トレンドが移り変わっている点も見逃せません。個々人のスキルを活かして、いつもとは違った旅行体験を提供する経済圏に注目が集まっていくと感じます。

特別な旅行体験を提供するには「ストーリー」が重要になってきます。Hotspring代表取締役の有川鴻哉さんが自身の新サービスについてnoteで語っていたように、“旅行とはストーリー”であって、そのストーリーを旅行者同士が享受しあえる世界観がやってくるはずです。

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有川鴻哉さんのnote

ただ、ストーリーをうまく表現する、パッションエコノミー文脈で活躍するプラットフォームやサービスは、未だ誕生していません。しかし先行事例は登場しています。たとえば、P2P型で旅人と旅人をマッチングさせ、旅人同士ならではの視点でホテルのブッキングを代行する「TRVL」が挙げられます。

同社は、TripAdvisorにコメントを長文でつけている旅行者「Travel Pro」から直接アドバイスをもらいながらホテルを決めることが出来るサービスを展開。Travel Proは、プラットフォーム上で予約代行をすることでコミッションフィーがもらえるため、自身の経験・スキルを活かして稼げるパッションエコノミーを端的に表現しているサービスと言えるでしょう。

SNS性も持ち合わせている点も特徴で、今後ホテルブッキングに留まらず、スケジュールの立案や秘境フォトスポットなど、Travel Proだからこそ独自に提供できる旅行パッケージを作れるサービスにまで成長できると感じました。

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「旅人」という経歴も徐々に認知されるものになってきています。

日本ではTABIPPOが旅のエキスパートに特化した就職転職エージェント「旅人採用」を運営しています。今までFacebookやLinkedInの経歴欄は大学や職業、留学経験などが一般的でしたが、これからは「旅」における経験から自身の価値を表現することも可能になります。

こうした文脈こそ、「旅 × パッションエコノミー」を体現したものだと思います。旅行経験を単発で終わらせず、人生の中心に据え置き、キャリアに活かす流れは理にかなっています。

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仮想地球を提唱するEXA

将来的にブロックチェーンの考えを取り入れることで、新たなビジネスモデルも誕生するかもしれません。

たとえば、ブロックチェーンと位置情報を組み合わせ、旅行者が特定の場所・日時に立っていたことを証明するプラットフォームを成立できれば、「旅人版・LinkedIn」が可能になります。実際、ロケーションとブロックチェーンを組み合わせた例でいえば、メタップス創業者の佐藤航陽さんが個人で取り組まれている「EXA」がその例の一つでしょう。

同プロジェクトでは、現実世界の経済発展度とは真逆の「地球」を作り出しています。その「地球」を動き回り、経済発展度が低い箇所であればあるほど、トークン発掘量が多いなど、実際に移動する価値を作り出せていることが特徴です。

筆者は国外旅行を頻繁にしている視点から、EXAのように移動した事実を上手く価値表現できる仕組みには魅力を感じるのです。マイレージのような感覚でしょうか。

筆者がなぜ移動への価値にこだわるかというと、2016年7月6日にリリースされたアプリ「PokemonGo」が大いに関係しています。リリース当時、私が生活していたアメリカ・シアトルでも大きな話題となり、近所の公園には連日多くの人があつまり警察も出動するなどお祭り騒ぎでした。その時、人は根本的に移動することを好み、熱中するものなんだと肌で感じました。人の移動から価値表現をどう生み出すかを考えるきっかけとなりました。

もちろん今でも、YouTubeに動画を公開したり、ブログを書いたり、インスタ映え写真をアップロードするなど、旅行した価値を表現する方法はたくさんあります。しかし、従来のツールは単調なものになりやすい印象です。「旅 × パッションエコノミー」が到来し、旅が人生の中心の一つとなった時代には物足りなく感じるのではと思っています。ブロックチェーンを活用した、新たな価値創出に期待感を持っています。

ということで、2020年からのトラベル市場を考えると、今回説明してきたように、ブロックチェーンとの組み合わせが価値を表現するという意味ではベストだと考えています。「旅 × パッションエコノミー」をヒントに、もっと旅が楽しめる日がやってくるのを心待ちにしています。

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Amazon Goにみる「OMO戦略」を紐解く

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2019年はOMO(Online Merge Offline)戦略に注目が集まった年でした。 従来のネットから実店舗へ誘導させるO2O(Online To Offline)戦略から、顧客データを基にオンラインであろうがオフライン店舗であろうが、パーソナライズ体験を提供するOMO戦略に多くの小売企業が戦略の舵取りをしています。たとえば中国で急速に成長してユニコーン入りした「Luckin Coffee…

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2016年ベータ版の際に筆者撮影

2019年はOMO(Online Merge Offline)戦略に注目が集まった年でした。

従来のネットから実店舗へ誘導させるO2O(Online To Offline)戦略から、顧客データを基にオンラインであろうがオフライン店舗であろうが、パーソナライズ体験を提供するOMO戦略に多くの小売企業が戦略の舵取りをしています。たとえば中国で急速に成長してユニコーン入りした「Luckin Coffee」が挙げられます。

同社はスマホで注文をした後に送付されるQRコードを、店舗入り口にある読み取り機にかざせば商品を受け取れるシームレスな体験を提供。「行列」の概念を取り払い、中国ではスターバックスを追い抜くほどの成長を見せています。

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Luckin Coffee Q3 2019

Luckin Coffeeはモバイル上に登録された顧客の注文データを、従来型のカフェ型店舗・ピックアップ専門店舗・デリバリーサービスのあらゆるチャンネルで活かし、ビックデータ戦略に成功している好例です。

同社の決算資料にある会社概要には、「BIG DATA」の記載があり、当初からOMOを事業戦略として据え置いていることがわかります。

We leverage our big data analytics and AI to analyze the huge volume of data generated from our operations and continuously improve our systems (Luckin Coffee会社概要より

同社のようなオンラインとオフラインをシームレスに繋げたモデルはOMOと呼ばれ、今後の店舗型ビジネスの核となると言われています。実際、Luckin CoffeeはOMO戦略を踏襲し、2019年10月からはお茶に特化したサービス「Luckin Tea」を立ち上げています。

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Image Credit: Amazon Go

ここからはOMOの未来を考えていくため、無人店舗「Amazon Go」をベースに、Amazonが思い描くOMO戦略を考察していこうと思います。

Amazon GOの現状

現在Amazon Goは同社の本社を置くシアトルに5店舗、サンフランシスコに4店舗、ニューヨークに8店舗の全米に計17店舗がオープンしています。Bloombergが2018年に報じたレポートでは、Amazonは2021年を目途に全米に3000店舗オープンさせるとしていたので、店舗数の視点では予定より遅れているのでしょう。

Amazon Goはアプリをリリースしており(上図)、アプリ上で発行されるURLを店舗改札にかざすことで入店することが可能となります。この入店体験はLuckin Coffeeも採用しています。

ECサイトと同じアカウントが利用されるため、Amazon Goの購買行動データと連携されます。たとえば、Amazon Goで分析した顧客の商品の好みなどを活かし、Amazonマーケットプレイスにパーソナライズさせた商品のレコメンド表示させることが出来るようになります。

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AmazonはOMO戦略を率先して展開する企業であり、最高の顧客体験をどのチャネルであっても提供する仕組みづくりに努めています。ただ、実績はまだ伴っていない印象です。

筆者シアトルの自宅真横にもAmazon Goの小さな店舗があり、よく目にするのですが利用客はほぼいない状態が続いていると感じます。一方、Amazon本社横に建てられた店舗には、日中訪れれば多くの人で賑わっているのですが、どうやらローカルユーザーでなく観光客のように思います。日本からの訪問者も多いようで、スーツを着たおそらく視察に来たであろう日本のビジネスマンに会うことが出来ます。

実際、CNBCによればAmazon Goの店舗において売り上げが出ているのは本社店舗のみだそうです。とはいえ、Amazon Go店舗は2020年以降も着実に増えていくことには間違いなく、同社の次の出店戦略として「空港」に目をつけているとCNBCが報じています

空港への出店戦略は大いに納得で、現状Amazon Goが街中で利用されていない根本的な「理由」を補完できるのではと感じます。

OMO戦略からみるAmazon GO

Amazon Goはあくまでコンビニエンスストアと名乗っているわけですが、特に私たち日本人からすると、コンビニとは24時間開いていて、あらゆるバラエティーの商品を手に入れることが可能な場所という印象を持ちます。

しかしAmazon Goはそんなことなく夜には閉まります。店舗数も少ないので、コンビニとしての価値にはやや疑問符がつきます。また、店舗ではオフィスワーカーの利用を想定してかサンドイッチやホットドッグなどの軽食を用意していますが、サンドイッチ一つで7ドル程の価格であり、お手軽とは言えません。

ただ、空港であれば、入店の必要もなく行列の生じない「軽食」の需要は大いにあると言えるでしょう。例えば5時間のトランジットの中で、レストランに入るほどおなかは空いていないけど、飲み物とサンドイッチ程度欲しいといった需要は多いはずです。

加えて空港の不動産であれば、軽食等を料理する環境が既に整えられている可能性も高く、設備投資への心配も少ないと思います。また、心理的面でも空港の食事で「10ドル」以下で済むのであればそこまで高いと感じないのではないでしょうか。街中と空港の値段差を比較したある調べによれば、平均して1.5〜2倍で商品が販売されているとしています。

将来的にAmazon Goがグローバル展開を狙うのであれば、重要なターゲットロケーションにもなりそうです。また、空港は中規模以上であれば、大体が24時間のオペレーションが多くなります。そのためAmazon Goは不動産契約をするのみで、24時間営業の店舗を低リスクで開始することが可能となります。空港の24時間のコンセプトに最適な店舗ソリューションがAmazon Goになるかもしれません。

Amazonが仕掛けるもうひとつのOMO戦略

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さて、Amazon傘下の実店舗といえばAmazon Goに加えて生鮮食品スーパーマーケットのWhole Foodsがあります。こちらも、筆者自宅の近所にありよく利用するのですが、Whole Foodsの「アマゾンカラー」が年々強さを増してきているように感じています。

たとえば、Whole Foodsはプライム会員限定の割引を実施していたりしますが、最も特徴的なのはプライム会員限定のデリバリーサービスです。AmazonマーケットプレイスからWhole Foodsのサイトにアクセスし、オンライン注文を35ドル以上することで無料で指定アイテムの配達をオーダーすることが可能です。

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Whole Foodsオーダー画面。チップの額は、Optionalとあるようにゼロドルにも調整可能

Whole Foodsはオーガニック食料品販売がベースにあるため、一つ一つの商品の値段は他スーパーマーケットと比較すると高くつく傾向にあります。ただ、無料配達という付加価値をそもそもプライム会員であったのであれば、Whole Foodsで買い物しようとなるはずです。この点、Amazonは会員がWhole Foodsを利用するように巧みに導線を引いていると思います。

ではAmazonはWhole Foodsを通してどのようにOMO対応させているのでしょうか。

Amazon Go同様に、Whole Foodsの実店舗でプライム会員限定の割引を受けるためには、QRコードを表示させスキャンする必要があります。加えて、Whole Foodsの食料品をオンライン注文する場合も、プライム会員ページにログインしてから注文します。こうしてAmazonはWhole Foodsのほぼ全ての購買チャネルから顧客データを獲得しています。まさにOMO戦略に則った打ち手です。

実店舗とオンラインの融合を進めるAmazonですが、顧客データ数を増やすため、2020年以降、Amazon Goはひとまず空港における新店舗設立に力を入れ、ダウンタウン近郊の街中にはWhole Foodsを増やし、「アマゾンエクスペリエンス」の接点を増やすといったリアル店舗戦略になるのではと思います。

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この流れに続くかのように、Amazonは2020年、LAの郊外Woodlands Hillsに新ブランドのスーパーマーケットを設立すると、CNETによって報じられています。報道の決め手となったのは、同社HP上の求職欄に突如現れた「Grocery Associate」の内容です。

職種の内容は以下のように記載されていました。

Join us as we launch a new Amazon grocery store in Woodland Hills. We are passionate about creating a shopping experience that customers will love. If you are customer-obsessed, like learning new things, and want to contribute to end-to-end store operations for a new business, this is the place for you!

new Amazon grocery store」の表記からもわかるように、こちらの店舗はAmazon GoでもWhole Foodsでもなく全く新しいブランド名がついた店舗となる模様です。

まだ正式にどういったコンセプトなのかはAmazonによって公開されていません。ただ、空港をメインにAmazon Go、ダウンタウンに近い街中をメインにWhole Foodsという拡大戦略が正しいとすれば、新しい店舗ブランドは、コストコのようなコンセプトの大型生鮮食料品店になる可能性が濃厚です。まだ詳細は公開されてなく、OMO戦略の一環として展開される店舗かも分かりませんが、可能性は高いと言えるのではないでしょうか。

オンラインベースでECを拡大させてきたAmazonが、その知見を大いに生かしリアル店舗をどのように世界へ羽ばたかせていくのか。OMO文脈と絡め、2020年からAmazonがリアル店舗をどのように反映させ、オンラインとオフラインを繋ぎ合わせていくのかとても楽しみです。

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Facebookがライブコマースへ本腰、しかし中国市場には未だ巨大市場が眠る

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ピックアップ: Facebook Acquired a Startup to Build a Live Shopping Feature ニュースサマリー: Facebookは2019年12月20日、同社フリマサービス「Marketplace」内でライブ動画ショッピング機能を実装するため、2017年にシリコンバレーで創業した「Packagd」を買収していたらしい。関係者筋の話としてBloomber…

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ピックアップ: Facebook Acquired a Startup to Build a Live Shopping Feature

ニュースサマリー: Facebookは2019年12月20日、同社フリマサービス「Marketplace」内でライブ動画ショッピング機能を実装するため、2017年にシリコンバレーで創業した「Packagd」を買収していたらしい。関係者筋の話としてBloombergが報じたもので、買収時期は2019年初頭。

PackagdはYouTube動画向けのショッピング機能を開発していた。次世代の24時間テレビショッピングネットワークの構築を目指していた。同社チームの大半は、9月にはFacebookチームに参画していたという。今後どのようなサービス設計になるかは明らかにされていないが、ユーザーがライブ動画を見ながら買い物を楽しめるものになるとのこと。

Facebookは2018年、タイでライブコマース機能を試験投入していることから、本買収を通じて米国市場で類似機能を再現するとされている。

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話題のポイント: ライブコマースは中国市場で爆発的に普及しています。独身の日セールでは、Alibaba(阿里巴巴)やTencent(騰訊)傘下のEコマースサービスで28億ドル規模のライブコマース経由の購買が行われています。一方、米国市場では中国ほどの売上を上げている印象はありません。たとえば、今では米国世帯の半数がPrime会員に加入しているとはいえ、Amazon Prime Dayにライブコマースが売上を伸ばしているといった話は聞きません。

そこで登場するのがFacebook。従来、Marketplaceはローカル特化のフリマとして成立していましたが、もしライブコマース機能が実装されれば、国が離れていたとしても個人間売買を促進できる、越境ライブコマースサービスとして市場参入できます。

SNSの特徴を最大限に活かし、欧州と欧米ユーザーを繋ぐプラットフォームとして機能させることでAmazonとは違った価値提供ができます。今回の買収を通じて、これまでローカルだった場所が、急にグローバルなネットワークへと成長するとっかかりを得られる可能性も見いだせるでしょう。

ただ、Facebookは大きな商機を逃しています。というのも、最もライブコマースがホットな中国市場に参入しようとしても、市場から締め出しを食らっているため出来ないのです。このGAFAの参入障壁を狙っているのが欧米のスタートアップたち。たとえば米中をライブコマースで繋ぐ「ShopShops」や、インフルエンサーが店舗からライブ動画配信する「roctona」が挙げられます。彼らは中国市場向けに越境ビジネスを仕掛け、ライブ配信者ネットワークを構築しています。

GAFA勢の穴を埋めるように、スタートアップは成長を遂げています。日本でも「Live Shop!」などが人気ですが、仮に中国市場向けにアパレル・医薬品商品を販売するライブコマースアプリへと方向性を変えれば成長が狙えるかもしれません。ここで覚えておくべきことは、GAFAが取りこぼした大きな商機が、中国顧客を前提とした越境市場に潜んでいる点です。この点を見逃さず、配信者ネットワークを世界規模で展開できた企業は、ライブコマース市場で勝ち抜けられるはずと感じます。

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リチウムイオン電池は“多様性”の時代へーーエアバスが選んだ「Amprius」の魅力を紐解く

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ピックアップ:Airbus Partners with Amprius, Leader in High Energy Density Battery Technology ニュースサマリ:シリコンベースのリチウムイオン電池を開発する「Amprius」は2019年10月31日、Airbus Defence and Spaceから資金調達したことを発表している。調達額は非公開。今回の資金をもとに、Am…

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Image Credit:Amprius HP

ピックアップ:Airbus Partners with Amprius, Leader in High Energy Density Battery Technology

ニュースサマリ:シリコンベースのリチウムイオン電池を開発する「Amprius」は2019年10月31日、Airbus Defence and Spaceから資金調達したことを発表している。調達額は非公開。今回の資金をもとに、AmpriusはAirbusの次世代事業「高高度疑似衛星: HAPS」と、「電気垂直離着陸: e-VTOL」向けのバッテリー大量生産体制の確立を目指す。

話題のポイント:Ampriusの最大の魅力は「軽さ」です。この点において現在市場に出ている製品で最も優れているでしょう。下図は重量エネルギー密度(横軸)と体積エネルギー密度(縦軸)を示したもので、赤い領域がAmpriusの製品です。横軸に注目すると、最新のリチウムイオン電池に比べても重量を60%ほど軽減できていることがわかります。

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Image Credit:Amprius HP

なぜAmpriusは軽い電池を作れるのでしょうか。答えはとてもシンプルです。採用している素材が軽いのです。

Ampriusは電極を100%シリコンで作製しています。シリコンはリチウムイオン電池で採用されることが多いグラファイトに比べると、1gに約10倍の電気を貯めることができます。言い換えれば、シリコンと同量の電気を貯めるのに必要な重量が1/10で済むということです。

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Image Credit:Amprius HP

シリコンを使うと軽くできることはよく知られています。この事実が知られているにも関わらず、シリコンが採用されないのには理由があります。シリコンは充電されると、膨張して破壊されてしまう欠点を抱えているのです。

少しでもシリコンの恩恵に授かろうと、シリコンをグラファイトに混合する試みがされる中、2007年にスタンフォードの研究者は問題を根本的に解決する研究を発表しました。シリコンをナノワイヤー形状にすると、電気を貯めても壊れないといった内容です。そして、発表をした研究者がAmprius創業者のYi Cui氏でした。つまり、Ampriusの凄さとは、シリコンが持つ能力をほぼ100%活かせる点にあるのです。

さて、そもそもリチウムイオン電池において軽さは魅力となり得るのでしょうか。実際、日常生活でリチウムイオン電池の重さに嫌々している人は少ないと思います。

Ampriusの電池を搭載することを公式に公開しているアプリケーションは下記です。

  • 高高度疑似衛星(High Altitude Pseudo-Satellite:HAPS)
  • コンフォーマルウェアラブル
  • クワッドコプター
  • 電気垂直離着陸(e-VTOL)車両
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Image Credit:Amprius HP

今回の調達および提携では、Airbusが開発するHAPS機種「Zephyr」とe-VTOL車両に、Ampriusの電池が採用されることを前提に行われました。HAPSとは成層圏を無人で飛ぶ飛行機で、ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルとFacebookが、ネットワークが繋がりにくい地域や発展途上国にインターネット環境を提供するのに基地局として利用することを発表しています。

HAPSには疑似衛星の名前が付いていることからも分かる通り、衛星同様に永続的なサービスを維持するためには、数カ月間の連続飛行が求められます。回線を継続して提供するためには、航続距離が必要になる仕組みです。そして、重さは航続距離に大きく影響します。

簡単に解説します。水平に飛行するには重量と釣り合う揚力が必要です。仮に飛行機の重量が軽くなると、必要な揚力(浮くための力)は小さくなります。HAPSが飛行する環境を考慮すると、揚力を小さくするためには迎角(空気の流れに対する翼の角度)を小さくすればよく、そのとき抗力が小さくなることが一般的に知られています。抗力が小さい状況とは、同じ速度を出すにしても必要なエネルギーが少なくても済むということです。例えると、50m走で7秒を出すとしても、向い風が強い状況と、追い風が強い状況では、疲れ方が全く違うのと同じです。

飛行を少ないエネルギーで維持できれば航続距離が伸びます。そのため重さはHAPSを実用化するための重要な要素なのです。これはHAPSに限らず、ドローンやe-VTOL、軍人が身に着けるコンフォーマルウェアラブルでも同じくことが言えます。

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Image Credit:Amprius HP

以上のように、Amprius軽さがとても求められる業界に足して、自社の強みを活かして事業展開をしています。

Pocket-lintによると、現在材料の選定から構造の改良に至るまで、様々なアプローチで研究が盛んに行われています。なかには、全く壊れないバッテリーを作れるという金ナノワイヤー、折り紙のように折り畳めるバッテリーなどがあり、強みがはっきり見えるものが目立ちます。今後、Ampriusのようにバッテリーの強みに合わせて用途が決まるような多様性が生まれていくのはないかと思います。

バッテリー性能の発展次第で、今後IoTや5Gが生活を劇的に変えるのかがかかっていると言っても過言ではありません。どの企業がどのポジションに着くのか、そういう視点でも増々注目していきたい業界です。

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小さなストーリーの時代がやってくる

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後数時間で2019年、もっと言うと2010年代が終わります。 今年を振り返り、スタートアップシーンを取材する側として気がついたことのひとつに「ストーリーテリングの力」があります。サービスや商品がコモディティ化し、差別化が難しくなった現代において物語による巻き込みは長らく王道のPR手法です。 それがスタートアップシーンにもやってきた、ということは言い換えれば、このイノベーションの最先端においても差別…

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色々あって幻になったBASE5周年記事のカット

後数時間で2019年、もっと言うと2010年代が終わります。

今年を振り返り、スタートアップシーンを取材する側として気がついたことのひとつに「ストーリーテリングの力」があります。サービスや商品がコモディティ化し、差別化が難しくなった現代において物語による巻き込みは長らく王道のPR手法です。

それがスタートアップシーンにもやってきた、ということは言い換えれば、このイノベーションの最先端においても差別化が難しくなりつつある、ということの裏返しです。もうちょっと言うと差別化だけでなく、あまりにも複雑になったテクノロジーの言語化がさらに困難になっているという側面もあるのです。

当たり前ですが聞こえのよい偽りのストーリーで消費者を欺くということではありません。強い起業家というのは元来、物語を持っているものです。それを言語化し「それの何が世界を変えるのか」を表現する。分かりにくくなりつつある境界線を、共に戦う仲間や消費者に正しく届けることが重要なのです。

<参考記事>

11月にBRIDGEはリニューアルに合わせてPOSTというプロジェクトを立ち上げました。起業家が自分の言葉で世界を物語化し、小さなストーリーを重ねる。一人称でありながら宣伝に終わらず、共感を得られる情報とする。これらの取り組みを通じ、この重要性が来年以降も続くであろうことを確信しました。

来年以降もスタートアップに寄り添った情報の提供のあり方を考えて、コミュニティに貢献していきたいと思います。

と、ここでひとつストーリーに関してお知らせを。2014年の春から36回に渡って連載し、2017年末で休載していた「隠れたキーマンを調べるお」を復活させることにしました。スタートアップにとって組織や経営陣の重要性が高まる中、シーズン2として再開する調べるおにぜひご期待ください。以下はEast Venturesフェローで、連載を担当してもらっている大柴貴紀さんからのメッセージです。

以下、大柴さんのコメント。

「隠れたキーマンを調べるお」の更新が滞って一年が経ってしまっていた2018年末、平野さんから「平成も終わるので、一旦締めましょう」と連絡がありました。たしかに一旦締めるのもアリだなと思い、2回に渡る「完結編」を書いてちょうど一年です。

久しぶりに平野さんから連絡をもらって会った日のこと。

「今年はどんな一年でしたか?」と聞かれて考えたんですが、やはりEast Ventures(以下、EV)加入直後から担当していたBASEの上場が一番大きなトピックだったように思います。

EVに加入してもうすぐで丸6年が経ちます。20代前半のメンバーが試行錯誤してサービスを運営していたBASEは、今や100人を超える社員数を誇り、そして東証マザーズへ上場しました。その成長過程を近くから見ることができたのは、僕にとっても大きな経験になりましたし、とても感謝しています。

2014年春。あの頃はフードデリバリー事業をやっていて、自らも配達員として駆け回っていた堀江(裕介・dely代表取締役)くん、当時EVのインターンで、直後にアメリカに渡り起業した内藤(聡・Anyplace創業者CEO)くん。6年が経ち、みんなとてつもなく成長してるし、成功への第一歩を築きつつあります。

そんな起業家達の日々のストーリーを見ることができるのは楽しいし、彼らがステップアップしていくのは素直に嬉しいです。

しかし、彼らが一番すごいのは「継続する力」だと思ってます。経営は楽しいことや嬉しいことだけではありません。苦しいことや悲しいことの方が多いかもしれない。そんな毎日を粛々と耐え、改善し、成長に繋げていく。その「継続力」に僕は敬意を払っています。

そして同時に、この起業家の「長旅」に寄りそう同伴者は必ずいます。楽しいときも苦しいときも起業家に寄りそい、共に乗り越える同伴者。その同伴者は得てして表に出てきません。やはり僕はその「同伴者」にスポットを当てたいし、それを望む声も地味に多いのです。

平野さんから「また何かやりましょう」と言われた際、いくつかのアイデアは浮かんだんですが、やっぱり「それならば『隠れたキーマン』を再開するのがよい気がします」と伝えました。

ということで、約2年のブランクを経て、2020年『隠れたキーマン』再開します!

2020年もBRIDGEをどうぞよろしくお願いします!

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次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(4:シンギュラリティ)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 各業界でこまやかにデジタル化が進んだ社会では、人とAIが役割の分担を明確にする。より個性や多様性を尊重する時代になり、人種や性別・障がい、地方といったギャップを超えるためのテクノロジーの必要性が高まる。伴って資本の考え方も変化し、一見すると経済合理性に乏しい社会的な貢献事業にも新たな道が開かれる。 最終回となる本稿では「人の次」について言及したキャピタリス…

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Photo by Yogendra Singh on Pexels.com

次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

各業界でこまやかにデジタル化が進んだ社会では、人とAIが役割の分担を明確にする。より個性や多様性を尊重する時代になり、人種や性別・障がい、地方といったギャップを超えるためのテクノロジーの必要性が高まる。伴って資本の考え方も変化し、一見すると経済合理性に乏しい社会的な貢献事業にも新たな道が開かれる。

最終回となる本稿では「人の次」について言及したキャピタリストたちの声に耳を傾け、探る旅の締めくくりとしたい。

シンギュラリティがやってくる

2005年に記されたレイ・カーツワイル氏の著書「THE SINGULARITY IS NEAR: When Humans Transcend Biology(邦題:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生/NHK出版)」はテクノロジー信奉者にとってある意味「預言書」と言うべき一冊だ。著書の中でカーツワイル氏は2030年をこう表現している。

VRの世界では、われわれはひとつの人格に縛られなくなる。外見を変えて事実上他の人間になれるからだ。肉体(現実世界の)を変えることなく、三次元のヴァーチャル環境に投影される体を簡単に変えられる。複数の相手向けに、同時に複数の異なる体を選ぶこともできる。だから、両親から見るあなたと、ガールフレンドがにが複接するあなたが別人ということもありうる。(中略)恋愛中の二人はなりたい姿になれるし、相手になることもで きる。こうした決定はすべて簡単に変えられるのだ(引用:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生)

YJキャピタルの堀新一郎氏もこの世界観の到来を心待ちにしている一人のようだ。

2014年に上映された映画「トランセンデンス」で注目を浴びるようになったシンギュラリティ。シンギュラリティ(Singularity)とは、未来学上の概念であり、人工知能自身の「自己フィードバックで改良、高度化した技術や知能」が、「人類に代わって文明の進歩の主役」になる時点(Wikipedia抜粋)のことです。

モバイル、IoTがデータのタッチポイントを増やし、クラウドコンピューティングがデータの格納に革命を起こしました。溜まったデータを解析・学習し、最適解を出すAI Techが2019年はメジャーになりました。これからの10年はAIの先に求められるサービスが主役になると思います。

シンギュラリティ時代に求められるのは仕事と遊びの再定義でしょうか。 仕事はオフィスに行かなくてもどこでも出来るようになります。小売店舗の店員はほとんどがロボット化され、デリバリーもドローンやロボットがやってくれるようになります。

オフィスは物理的空間からバーチャル空間に移行し、リモートワークはもっと加速していきます。チャットボットに代表される自動応答は2019年現在は無機質ですが、ユーモアを言ったりしてもっと人間味が出てくるようになるでしょう。ANRIが出資する「株式会社わたしは」は、そういった時代を見据えた言語処理を先んじて開発しています。

エンターテイメントも2018年に上映された「レディ・プレイヤー・ワン」のように、仮想空間で人々が交流する流れが一気に加速します。弊社の出資先でもあるミラティブのように、スマホの中でゲームやカラオケといったリッチコンテンツを楽しむ世界がより加速しします。gumiの出資先の「よむネコ」はVR空間の対戦ゲームを開発しており、ゲーム内アイテムをブロックチェーンで取引する世界観を目指していると聞いています。

グローバルの視点では、オンラインにおける米中戦争が加速化していくと予想しています。つまり、これからの戦いはFacebookやWeChat・Tiktokといったアプリケーションレイヤーにとどまらず、LibraやFusion Bankといった仮想銀行・仮想通貨の覇権争いが本格化するわけです。こういった戦いに対して、日本の政府や企業がどういった姿勢で対抗・調和を図っていくのかとても注目しています。そういった背景から、ゴールドラッシュ時代のツルハシ屋・ジーンズ屋に大きなビジネスチャンスがあると思います。

2000年に登場した3Gから約20年、2020年に5G元年を迎えます。ハイレゾのコンテンツがリアルタイムで飛び交い、仮想空間はVR・ARといった技術でさらなる進化を遂げる。スマホの次のデバイス、オンライン上で資産を管理するためにブロックチェーンが重要な役割を果たしていく。全てが自動化していく中で、人間らしさやアート、ユーモア、幸せといったものの価値が重要となってくるのでしょうか。思いっきり夢想しながら、全ての領域を見逃さずウォッチしていきます(笑)。

これからの10年も忙しくなりそうです【シンギュラリティ時代の到来に向けて】

(動画:Mirrativはアバターを纏って第三空間に居場所を作ることができる)

カーツワイル氏の著書で語られるポスト・ヒューマン論の興味深い点は、端末的なデバイス、コンピューティングの進化だけでなく、これらを極めて高い次元で人体と融合させようと試みていることだろう。

あなたが本物の現実世界を体験したいと思うときには、ナノボットは今いる場所(毛細血管の中)を動かずなにもしない。VRの世界に入りたいと思えば、ナノボットは五感をとおして入ってくる現実世界の情報をすべて抑制し、ヴァーチャル環境に適した信号に置き換える。脳はこれらの信号をその肉体が体験したものであるかのように捉える。(中略)そのようなヴァーチャルな場所を訪れ、 シミュレートされた人間ばかりでなく、本物の人間(もちろん、突きつめれば、両者に明確な違いはない)を相手に、ビジネスの交渉から官能的な出会いまで、さまざまな関わりをもつことができる(引用:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生)。

STRIVEの堤達生氏は、2020年代がこの「トランスヒューマン時代」に向けた準備の10年になると考えている。

10年前の2010年から今日まで、新しいものは実はそれほど多くは出ていないのではないかと思います。2000年代の10年間の方がスマホとソーシャルとクラウドが生まれ、変化という意味でのインパクトは大きかったです。2010年代は2000年代に生まれたものが進化と深化をし、そして拡張した10年でした。

では、2020年代の10年間はどんな時代になるのか。一言で表現すると「トランスヒューマンの時代に向けた10年間になる」。

AIやブロックチェーン、MR等の進化に加えて生命科学の発展に伴い、テクノロジー的には、従来の人間を大幅にアップデートする、すなわち「トランスヒューマン」の誕生の時代になるのではないか思っています。

つまり2020年代の10年間は、人間の記憶、判断、予測というものをテクノロジーがサポートしていくのはこれまで通りの流れだが、身体的にも古いパーツは取り換えて、よりバージョンアップしていくようになります。従来なら病気やケガで諦めていたものを新しいパーツに取り換えて、コンプレックスに感じていたものを自分の理想に近づけるようにこれまた取り換えていく。

こういうことが、時間をかけながら抵抗感なく受け入れられる、そういう時代に向けての10年間になるのではないでしょうか。

この時代感をベースに、投資家としてはこれまで以上に生命科学の領域におけるコアになるテクノロジーやそれに基づく、健康・美容系のサービスに加え、逆に人間の精神性は急には変らないため、それらをサポートするようなコーチングやマインドフルなサービスにも着目しています【2020年代の幕開け】

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C2C領域はさらにバーティカルが進む(月次流通は50%成長に拡大、スニーカー売買のモノカブがXTech Venturesなどから2.2億円を調達

W venturesの東明宏氏もまた人体の拡張について注目するとしていた。

人生の多様化を支援/促進するサービスについては、そもそも人間の寿命を長くする(永続化させる)技術、人間の身体を拡張する技術/世界観等、根元の部分(技術)から、余暇を楽しくするサービスまで、幅広く注目していきたいと思っています。XR領域の離陸による新たなコミュニケーション/エンターテイメントのイノベーションにはW venturesとしても積極的に投資し、一緒に未来を作っていきたいです。

人々の多様な価値観に対応したサービスとしては、趣味性の高い領域でスニーカーのC2C「モノカブ」、ヘルスケア領域で美容医療の口コミサイトの「トリビュー」、食領域でおやつのサブスクリプション「snaq.me」、スポーツ領域でランニングのバーティカルコミュニティ「Runtrip」等の投資先が伸びています。また、人々の価値観の変容に、既存の巨大コミュニケーションサービスが応えきれなくなってきているなとも感じており、でっかいコミュニケーションサービスの新たな出現にも期待しています【リアル世界の分散とバーチャル世界の融合、マルチアイデンティティ時代の本格到来】

この世界観は決してSci-Fiの中だけではない、ということはみなさんもご存知のはずだ。Googleが「量子超越性」の実証に成功した、という話題はムーアの法則には続きがあることを示唆しているし、イーロン・マスク氏は脳とマシンを実際につなげるプロジェクト「Neuralink」を公表している。

やや広い範囲で発生する「人類の拡張」が最初のステップになるとしたのは、伊藤忠テクノロジーベンチャーズの小川剛氏。

2020年から2030年にかけてロボットやAIがビジネスの実装の段階に入り、人間の仕事を奪うのではなくアシストし、人間の能力と仕事が広い意味で様々に拡張していることが「実感」できるサービスを提供出来る会社が注目されるでしょう。単にARで視覚が拡張しているという単純な世界観ではなく、実際に仕事が劇的に効率化したり早くなる「あー俺って拡張してる(笑」って凄さを提供できる感じですね。ロボットもAIも各ビジネスに実装して使えてナンボの世界になるかと思います。

R2-D2的にサポートしてくれるものから、広義で考えてソフトウェアで超効率化的なSuperhuman, PathAIなどもAugmentationの範疇に入る現時点の注目企業かと思います。2030年までに量子コンピュータが実装されると化学計算など特定用途は異次元で早くなり超効率化するのではないでしょうか【「Augmentation 」が継続して起こる】

ポスト・ヒューマン論は尽きることないが、その一方で距離感が掴みづらいのも確かだろう。そこで最後にもう少し距離の近い視点を2つほど紹介したい。まずはセキュリティだ。今回、実は意外にもあまりこのテーマを挙げた投資家が多くなかった。しかし、社会の多くがデータ化される時代、プライバシーの問題は更に注目を集めることになる。

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隠れた黒船・ピーターティール氏のPalantir社

これについて指摘したのがANRIの鮫島昌弘氏だ。

日本の大企業は従来オンプレミスな環境で閉じた環境下でしたが、今後はDX化やSaaSの活用に伴いサイバー攻撃によるセキュリティインシデントが急増し、セキュリティーへのニーズが高まると予想します。実際に、現在の日本でのサイバーセキュリテイーのインシデント一位は電子メール、FAX等の誤送信・誤発送等のヒューマンエラーが1位ですが、米国ではDos/DDoS攻撃やwebアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃が上位に挙がっています(NRIセキュアテクノロジーズ社の調査結果等)

具体的には、クライアント企業のインターネットに接続している全ての機器やクラウドベンダーを一元的に管理するExpanse社(FoundersFund、ピーター・ティール氏も出資)、IoT機器の増加に伴うネットワーク拡大に対応する形でのボットネット対策を行うPerimeterX社やクラウド型WAFを提供するSignal Sciences社等をベンチマークとして、日本でサイバーセキュリティーのスタートアップに1000社投資したいと考えてます。

また、日本進出を発表した、ピーター・ティール氏率いるPalantir社の動向には引き続き注目しています【日本の大企業のDX化に伴うサイバーセキュリティベンチャーの勃興】

もう一つが「クラウドの次」になる。計算と容量というシンプルなネットワークは徐々に性格を帯び始め、人類にとって役立つサービスを提供する労働力となる。IDATEN Venturesの足立健太氏はその世界がさらに重層化すると予想した。

人類はこれまで多種多様な自動化を実現してきました。

古くは、牛や馬といった「動物の力による自動化」(農作業や運搬など)、水や風といった「天然に存在する自然の力による自動化」(何人がかりでやるような重労働など)、さらに「蒸気・電気・磁気といった自然の力を増幅・制御することによる自動化」(産業革命)です。家庭レベル(家電など)から国家レベル(発電所など)に至るまで、実に様々です。

そして人類は、自動化されて浮いた時間を持て余すことなく、その時間を使って研究開発を続け、新たな技術を生み出し続けています。その最たる例が、20世紀末から一気に台頭してきたIT技術でしょう。IT技術により、人類はこれまでの肉体労働中心の自動化から、知識労働の自動化へも足を踏み出しました。

IT技術が登場した当初は、主に情報のやり取りを自動化する領域(ウェブブラウザや電子メールなど)が中心でしたが、IT技術の恩恵を顕在化させる情報処理端末がメインフレームからデスクトップPC、ラップトップPC、そしてスマートフォンへと、どんどんエンドユーザー(情報発信源)に近づき、両者の接触が常態化することで自動的に情報のやり取りが可能な範囲が拡がり、日常生活の多くがIT技術によって自動化・ディスラプトされてきました。

ただ、もちろん、まだまだ自動化され切っていない領域は残されています。2020年代は、そういった「残された自動化の金脈探し」をする人類の旅が続くと予想しています。

自動運転からRPAまで、実に様々な自動化の概念が顕在化した2010年代後半ですが、例えばIoTや脳チップといった概念を筆頭に、まだまだ情報の処理端末と発信源の接触拡大が続いており、そこから発生する自動化の可能性にいち早く気づき、事業化した企業が今後数年は、そのポジションをリードすることになるでしょう。

正直、現時点でどの企業がどの分野でリードするか分かりませんが、こういう時にあって注目している企業群の一つが、大量のデータ処理を容易に行えるようにする技術を展開している企業です。例えるなら、ゴールドラッシュの時代のツルハシ屋さんやジーンズ屋さんです。

IDATEN Venturesの出資先でいいますと、ニュージーランドのNyriadや、日本の情報システム総研、シマントがこれにあたります。

さて2020年代後半ともなると、リアル世界・サイバー世界を問わず、上記の流れを受けて、多くの自動化を実現するツール、いわばロボットが誕生していることでしょう。すると、そういったロボットを自由に使いこなすロボマス(ロボットマスター)による起業が本格化してくると予想します。

AWSのようなクラウドサービスがIT技術による起業ハードルを著しく下げたアナロジーで、上記のロボットは事業推進ハードルを著しく下げます。なぜなら、そうしたロボットを複数組み合わせ、駆使することで、24時間休むことなく非常に早いスピードでPDCAを回し続けることができるようになるからです。結果、超速で成長するスタートアップがいくつも誕生してくるでしょう。これが「ロボマス起業家によるスタートアップの超速化」です。

ロボマス起業家に求められるのは、多種多様なロボットを駆使する能力はもちろん、人々が思いもよらないようなアイデアを描く想像力、そしてそれを真っ先に実行に移す行動力になると思います。起業コスト・事業推進コストが低下し、そこで差別化がはかられにくくなってくるため、勝負の大きなポイントは、起業前のアイデア段階に移ってくるでしょう。

もしかしたら、人間の社員が0人で、いわゆるユニコーン企業を創り出す起業家も現れるかもしれません。VCとしても、特にシードVCにおいては、投資タイミングがどんどん前倒しされてくると思います。

2000年代、2010年代はIT技術を駆使できるITマスターが世界をリードしてきた側面がありますが、2020年代は、自動化を実現する各種ロボットを生み出す起業家と、それらロボットを駆使して事業を推進するロボマス起業家に着目です【『残された自動化の金脈探し」と「ロボマス起業家によるスタートアップの超速化」】

探る旅の終わりに

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4回に渡ってお届けした次のパラダイムシフトを探る旅、いかがだっただろうか。もちろん年末の企画ということも加味してリップサービス的なコメントや、ポジショントークもあったと思う。けど、ここで挙げた25名の投資家たちは数え切れないほどの起業家と対面し、自身も研鑽を積んだ人物ばかりだ。その言葉に嘘はない。

全体を通じて感じるのは「ポストiPhone」のようなエポックメイキングを求める声が少なくなったことだ。分かりやすいデバイス、スティーブ・ジョブズ氏のようなカリスマはメディアとしても言語化が容易だ。しかし今の時代、事はそこまでシンプルでなくなっている。

一人、今回の企画にあたってこんな声を寄せてくれた投資家がいた。

10年後の2030年、正直ここでまとめられることの7割は当たらないと思っています。たとえば今から約10年前の日本iPhone上陸の際、おそらく業界でも多くの人たちがここまでの普及を予想してなかったのではないでしょうか。なので、起業家(とそれを支援する私達投資家)は自分が信じる未来を作っていくことを意識し、こういう質問には10年後に絶対くる(ではなく来させる、が正解かもしれない)とポジショントークを続けていただければな、と思います。

弊社も僕も投資先が多いのでたくさん語りたい、語るべき未来がありますが、多すぎてスペースに入らないので省略します。個人的にはスタートアップ的には「人工知能搭載型人型ロボ『ヒューマギア』が様々な仕事をサポートする新時代 AIテクノロジー企業の若き社長が、人々の夢を守るため…今飛び立つ!」みたいなストーリーがあったらいいなと思っています。震える手抑え書きなぐる未来予想図でした!(TLMの木暮圭佑氏)

奇しくもスマホシフトが起こした情報化の波は、ステレオタイプな「右向け右」をダサいこととしてしまった。だからこそ彼が言うように、次に起こるパラダイムの波はとても曖昧で、でもいつの間にか世界を支配している、そういうものになるような気がしている。

この連載が次のスタートアップのヒントになれば幸いだ。

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次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(3:多様性とポスト資本主義)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 個人と体験の時代、社会はデジタル化がさらに進み、各業界でトランスフォーメーションが発生する。人工知能が単純作業を代替し、効率化された時代において人は「人生の時間の使い方」を新たに考えることになる。では、引き続き次のパラダイムシフトを探る旅に出たいと思う。(これまでの連載) 少子高齢化とダイバーシティ パーソル総合研究所と中央大学が公表した調査「労働市場の未…

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

個人と体験の時代、社会はデジタル化がさらに進み、各業界でトランスフォーメーションが発生する。人工知能が単純作業を代替し、効率化された時代において人は「人生の時間の使い方」を新たに考えることになる。では、引き続き次のパラダイムシフトを探る旅に出たいと思う。(これまでの連載)

少子高齢化とダイバーシティ

パーソル総合研究所と中央大学が公表した調査「労働市場の未来推計2030」によれば、高い確率で日本はこの10年、減少する人口との戦いを繰り広げることになる。この中で私たちが認識を新たにすべきキーワードが「多様性」だ。性別、国籍、年齢、個性。あらゆる多様性に対して偏見を最小限にし、そのギャップをテクノロジーで解決する。

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パーソル総合研究所と中央大学「労働市場の未来推計2030」

特に元気なシニア層の活躍はもう待ったなしの状態だ。伊藤忠テクノロジーベンチャーズの戸祭陽介氏は少子高齢化先進国としての取り組みの必要性を指摘する。

これまで高齢者向けのITサービスは(1)シニアのIT化が進まない、(2)サービス運営者の年齢が若くシニア市場を理解していない、という理由から発展していないと推察しています。一方、これらの問題は時間の経過とともに解消され、高齢化先進国である日本独自のサービスが展開されると予想しています。今後、これらのビジネスが海外に進出し、日本の新たな強みになるのではないでしょうか。

一方、少子化対策としての外国人移民や、国際的に安価な技術者を求めた海外企業の進出等により、オリンピック以降、日本在住の外国人は増加すると予想しています。新大久保のような街がたくさんできるイメージですね。その生活をサポートするためのインフラとして、外国人に特化したサービスの増加も予想されます【少子高齢化先進国として、シニアIT化と在日外国人向けのサービスの発展】

東京オリンピックがやってくるのもよいきっかけだ。2020年は海外からの来客ももちろん、特にパラリンピックに代表される、「障がい」を人の「個性」として考える時間は増えることになるだろう。今の社会的な認知と、実際の彼・彼女たちの状況をしっかりと理解すれば、そこに生まれているギャップはチャンスになりうる。朝日メディアラボベンチャーズの白石健太郎氏もまた、この多様性に注目すべきとしていた。

世界の支援テクノロジー市場には2024年までに260億ドル規模になる(Coherent Market Insights)という予測があり、国内でも障害者テクノロジーの分野に参入するスタートアップが増えてくると考えています。

もちろん課題もあります。高性能な車椅子や補聴器などを目にすることはありますが、価格帯がネックとなって普及率が上がっていません。一方、導入が比較的簡単な無料アプリであっても、途中から有料化になってしまうなどの問題があり、ユーザーが離脱してしまう問題も起きています。

そんな中、世界中の視覚障害者のボランティアとロービジョンの方を結びつけて、毎日の作業を支援するアプリ「Be My Eyes」というデンマークのサービスがあります。このアプリが秀逸なのはコスト負担をユーザーに負わせるのではなく、ユーザーがMicrosoftやGoogleなどの大企業に支援を求めることで継続利用できる仕組みとなっている点です。

今後このようなコスト負担をユーザーに求めない新たな形のサービスが増えてくるのではないでしょうか。日本ではまだまだ普及に時間がかかりそうですが、この領域では元セカイカメラの開発者である井口尊仁氏が開発している無料音声SNSアプリ「Dabel」を個人的に注目しています【The Rise of startups for Disabled people(障害者向けスタートアップの躍進)】

年齢も多様化が進む。特にスタートアップする年齢はここ数年でも若年化が進んでおり、幅広い人たちがチャレンジする世の中になりつつあると思う。自身も20代で独立系ベンチャーキャピタルを立ち上げたTHE SEEDの廣澤太紀氏は、実感を持ってこれを感じている一人だろう。

優秀な高校生の進路選択において、日本の大学だけでなく海外の有名大学を目指すというケースが加速していると感じています。日本国内だけでなく、若くして海外での生活を経験した優秀な日本人が急増すると思います。また、デバイスや通信環境の変化が起こると考えています。

スマートフォンの普及のように、カメラなどのセンサーが増加し、視覚情報などのデータ化や共有はより進むのではないでしょうか。この10年間で、デバイスなどの変化によるC向けプロダクト参入チャンスと、海外経験をもった若手がより多く登場し、創業期から「グローバルC向けプロダクト」を作る若手起業家たちがより活躍すると思います【「グローバルC向けプロダクト」を作る若手起業家の増加】

多様性は何も人だけに限った視点ではない。日本はやや東京に一極集中しすぎた感がある。この反動からか、これまでにも地方から声を上げようという動きはあった。これからの10年はそれが更に加速するのではないだろうか。福岡拠点のベンチャーキャピタル、F Venturesの両角将太氏はその波が「モビリティ」から始まると予想する。

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福岡で実証実験を続けるモビリティサービス

自動運転や空飛ぶクルマの普及により、ヒトの移動、モノの移動においてパラダイムシフトが起きると予想します。自動運転技術のオープンソース化も可能性があると思っていて、例えば「mobby」のような電動キックボードや「メルチャリ」のようなシェアリングサイクルを放置していても、自動で回収してくれるモビリティ事業等をスタートアップが展開できるようになってくると思います。また、モビリティのパラダイムシフトに伴い、東京一極集中だった社会も変わり、地方都市のあり方も変わってくるはずです。

まず、ヒトの移動に革新が起きると、移動することと住むことの境目がなくなり融合していくと思います。東京に住居を構えなくても各都市にいながら交流人口が増加するでしょう。また、スマートシティ化が進み、生体認証などによりあらゆる個人の行動データが取得可能になります。

キャッシュレスもより高いレベルで実現され、モビリティ×ARによる広告配信によって、買い物もよりシームレスになるでしょう。暗号通貨による決済も当たり前になり、グローバルな送金もしやすくなります。一方、モノの移動に革新が起きると、自動運転やドローン配送などにより新たな物流網が構築され、都心にいなくても快適なコマース体験が実現されると思います。さらには、災害時の物資搬送や医療なども迅速に届けられるようになりそうです【モビリティによるパラダイムシフトで東京一極集中から地方分散社会へ

ポスト資本主義の輪郭

日本でも徐々に進むあらゆるモノのデータ化、ブロックチェーンによる資産の自律管理、個人と多様性の時代。モノが貨幣を経ないでモノと交換ができる、その世界観はフリマアプリで実現された。ゆるやかに輪郭がぼやけつつある経済はどうなるのか。グロービス・キャピタル・パートナーズの今野穣氏もキャッシュレス確立をきっかけに、人々のカネの考え方や動きに変化があらわれるとした。

貨幣のデジタル化という意味での「狭義のキャッシュレス」が2020年代前半のうちに確立します。現状の「銀行口座」がどういった位置付けに進化・転換するのかマイルストーンとなるのではないでしょうか。それに付随して信用スコアなどデータと貨幣の融合が図られることになるでしょう。また、ESGやSDGsなどの流れ、二次流通やシェア経済の進展に伴い、実体経済のスピードを大きく超過する過度な金融経済に揺り戻しが起きる。言い換えれば、時としてキャッシュを介さない、既存の金融経済の外側での経済活動が生まれてくると思います。

金融経済の外側での動きは前述の通り、個人間売買のプラットフォームでもう始まっている。このパラダイムの中において重要になるのはやはりデータだ。今野氏はこう続ける。

AIの社会実装という不可逆な流れの中で、キャッシュ(現金)よりもデータの重要性が増す。データそのものが経済活動における最も価値のある資産となり得るし、データそのものの価値交換も行われていくと思われます。また、仮想通貨を含めた多様な個別経済圏の確立も予想しています。デジタライズされた既存通貨や仮想通貨の普及に伴い、かつ場合によっては貨幣を介さない形で、新たにコミュニティ毎の独自経済圏が発展していくのではないでしょうか。同時に非労働時間の可処分時間に増加による、コミュニティ活動自体が活発になることも予想しています【多角的「キャッシュレス」時代の到来】

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想像の遥か上をいくFacebook仮想通貨「Libra」のスゴさを解説するーーいきなり米国議員から開発停止要求も

こうしたデータによる「金融の拡張」は資本の考え方にも影響を及ぼす。ジェネシア・ベンチャーズの田島聡一氏はそれによって、スタートアップする事業の範囲が社会的な活動にまで広がる可能性を指摘した。

2030年に向けた時代の大きな変化の一つは、いわゆるスタートアップと社会起業家がより一段とシームレスになっていくことだと考えています。このように考える背景としては、環境破壊の進行やSDGsに対する意識の高まりなどによって、スタートアップにはその事業内容により大きな社会的インパクトが求められ、社会起業家にはより強いビジネスモデルが求められるようになる(社会起業家にも事業としての持続性が求められるようになる)からです。

スタートアップと社会起業家がよりシームレスになる。この変化に合わせて、資金調達手段が更に多様化すると考えています。現在は、従来からの資金調達手段であったエクイティファイナンス、デッドファイナンス以外に(株式投資型を含む)クラウドファンディングがようやく普及してきましたが、SIB(Social Impact Bond)のような仕組みが進化し、民間にまで拡がるのではと考えています。社会的インパクトを推し進める起業家の後押しがより一層進むのではないでしょうか【スタートアップと社会起業家がよりシームレスになり、資金調達手段がより多様化する】

朝日メディアラボベンチャーズの山田正美氏も、金融システムがアップデートされ、通貨や貨幣に変化が起こるとした。ただ、この変化は国境を曖昧にするという点で「Libra」のように脅威とされることもある。

ブロックチェーンを活用して、既存の金融システムをアップデートするような国をまたいで利用されるサービスの可能性に注目しています。通貨や決済という概念が、物理的なモノや行為と紐付かなくても、信用やスコアリングといった形で可視化されるようになります。2020年代は、新しい信用と金融の時代が来ると考えています。そういう意味で、facebookの「Libra」のチャレンジには注目しています。

まだ見ぬ新しいテクノロジーが世界を席巻するというよりは、2010年代に研究が進んだAI・ブロックチェーン・AR/VRといったテクノロジーが、次の10年に本格的に花を咲かせると考えています。AIは現在のインターネットのようにあたりまえになり、多くのことは自動化されていきます。5Gやデバイスの進化がAR/VRの本格普及を後押しして、スマホのスクリーンに加えて、新しいUXが発明され、その上でコンテンツやサービスを展開する新しいプレイヤーが現れると思います【2020年代は、新しい信用と金融の時代】

では次回は最終回、シンギュラリティの到来について語ってくれた投資家の言葉でこの探るたびの締めくくりとしたい。

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ミレニアル世代の住体験にコンサルコマース、注目あつまる「世界の250社」まとめ(4/4)

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1編ではエンタープライズ、フード領域、2編ではフィンテック、教育、ギグ経済領域を見てきました。3編ではヘルスケア、メディア、トラベル市場で起きている変化を紹介しました。最終編となる本記事では、不動産、小売、モビリティに触れて、連載を締めくくりたいと思います。 エンタープライズ(1編) フード(1編) フィンテック(2編) 教育(2編) ギグ経済(2編) ヘルスケア(3編) メディア(3編) トラベ…

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1編ではエンタープライズ、フード領域、2編ではフィンテック、教育、ギグ経済領域を見てきました。3編ではヘルスケア、メディア、トラベル市場で起きている変化を紹介しました。最終編となる本記事では、不動産、小売、モビリティに触れて、連載を締めくくりたいと思います。

  • エンタープライズ(1編)
  • フード(1編)
  • フィンテック(2編)
  • 教育(2編)
  • ギグ経済(2編)
  • ヘルスケア(3編)
  • メディア(3編)
  • トラベル(3編)
  • 不動産(本編)
  • 小売(本編)
  • モビリティ(本編)

ローリスク住宅購入

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Image Credit: ZeroDown
  • Divvy」は頭金2%から自宅を購入できるサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、9月に4,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Singaporean sovereign wealth fund GICとLennarがラウンドに参加。
  • FlatFair」は敷金なしの会員制入居サービスを提供。2016年にロンドンで創業し、8月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリード投資を務めた。
  • Haus」は住宅の共同所有プラットフォームを運営。2015年にサンフランシスコで創業し、7月に410万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Montage Ventures、RIT Capital Partners、Tim Ferrissがラウンドに参加。
  • Landed」は教職員向け頭金レンディングサービスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、4月に750万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Initialized Capitalがラウンドに参加。
  • ZeroDown」は頭金なし・数年住み込み体験をして高級住宅購入できるサービスを提供。2018年にサンフランシスコで創業し、8月に1億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Goodwater Capitalがリード投資を務めた。

一軒家を購入するには多額の頭金が必要となります。そこで登場したのがイギリス発の共同オーナーシップ不動産購入サービス低所得者向け住宅ローンサービス「Divvy」。同社はクレジットスコアが著しく低い550以下の顧客を対象に、物件購入をサポート。約5万ドルから20万ドルの価格帯の物件を取り扱います。

顧客が購入希望物件の2%以上の支払いを済ませ、残りの最大98%をDivvy Homes側が負担。同社負担額は顧客が毎月返済し、最大3年をかけて物件所有権の10%に当たるまで支払いが続きます。支払い終了時には、顧客のクレジットスコアが580にまで上昇している目算で、それを超えると金融機関などからローンを組むことができます。ローン借り入れが決まれば、借り入れ額がそのままDivvyへ支払われる仕組みです。住宅購入から住宅ローン借り入れまでの橋渡しをしているのがDivvyというわけです。

似たようなコンセプトとして、イギリス発の共同オーナーシップ不動産購入サービス「Unmortgage」が挙げられます。顧客は購入金額の最低5%を支払うだけでUnmortgageと共同して住宅を購入することができます。居住者は毎月一定の賃貸料を支払い続けることで住み続けられます。賃貸に加え、Unmortgage側が負担した最大95%の住宅購入額を毎年一定額ずつ買い戻していきます。顧客の所有オーナーシップ率が100%になり次第、物件が自分のものなります。

仮に何年か住み続けた後に転居を決めた場合、所有オーナーシップ率を買い戻してもらえるのでキャッシュバックが発生します。月額賃料を支払いながら住み続けられ、気に入ったらオーナーシップを買っていく、「所有」と「共有」を橋渡しするビジネスモデルです。Unmortgageの場合はDivvyとは違い、住宅体験をサブスク化させ、かつ一軒家購入までの検討期間を顧客に持たせています。類似事例として全米トップクラスに住宅価格が高騰するサンフランシスコでの住宅購入に特化した「ZeroDown」がいます。

Divvy、Unmortgage、ZeroDownは高級商材を購入するためのブリッジとなるサービスで急成長しています。ここで注目すべき点は、なんでもレンタル/共有する時代になっていると思われがちですが、未だに「所有ニーズ」が多いに存在する点です。おそらく今後も一定の所有ニーズ層が存在し続けるはずです。こうした顧客に対し、所有のハードルを下げるような価値提供のできる、本項で紹介したようなスタートアップが活躍できるでしょう。

ミレニアル世代が求める住体験

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Image Credit: Lyric
  • Bungalow」はコリビングサービスを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、11月に3,200万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Founders FundとCoatueが共同でリードを務め、Khosla Ventures、A-Rod Corp、Atomic VC、CAA Ventures、Cherubic Ventures、Maverick Capital、Nine Four Ventures、Wing Venturesがラウンドに参加。
  • Domio」はグループ旅行者向けにアパートホテルを提供。2016年にニューヨークで創業し、12月に1億ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。GGV Capitalがリード投資を務めた。
  • Life House」はローカルかつソーシャル志向のブランドホテルを運営。2017年にニューヨークで創業し、7月に1億ドルの資金調達をプライベートエクイティラウンドで実施。Blue Flag Partnersがラウンドに参加。
  • Lyric」はアパートのワンルームを貸し出す高級民泊サービスを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、4月に1.6億ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Airbnbがリードを務め、Tishman Speyer、RXR Realty、Obvious Ventures、SineWave、Dick Costolo、Adam Bain、Barry Sternlicht、NEA、SignalFire、Fifth Wall Ventures、Tusk Venturesがラウンドに参加。
  • Mint House」はビジネス旅行者向けのアパート民泊サービスを提供。2017年にニューヨークで創業し、5月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Revolution Venturesがリード投資を実施。
  • Quarters」は欧州でコリビングサービスを提供。2016年にベルリンで創業し、1月に3億ドルの資金調達を実施。Medici LivingとW5 Groupがラウンドに参加。
  • Selina」はラテンアメリカ地域を中心に若い旅行者向けの滞在拠点およびコワーキングスペースを提供。2012年にロンドンで創業し、4月に1億ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Access Industriesがリードを務め、Grupo WieseとColony Latam Partnersがラウンドに参加。
  • Sonder」は自社所有の民泊サービスを提供。2012年にサンフランシスコで創業し、7月に2.25億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。WestCap、Valor Equity Partners、Tao Capital Partnersがラウンドに参加。
  • Tripalink」は学生や若手ビジネスマン向けコリビング住居を提供。2016年にロサンゼルスで創業し、8月に1,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Calin SJG Fund、K2VC、Tekton Ventures、Oriza Venturesがラウンドに参加。
  • WhyHotel」は新築マンションを民泊として貸し出すサービスを提供。2017年にワシントンD.C.で創業し、12月に2,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Harbert Growth Partnersがリードを務め、Camber Creek、Highland Capital Partners、Working Lab Capital、Geolo Capital、Revolution’s Rise of the Rest Seed Fundがラウンドに参加。
  • Zeus」は社宅やビジネス旅行向けの民泊サービスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、12月に5,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Airbnb、Spike Ventures、Picus Captail、NFX、Initialized Capital、CEAS Investments、Alumni Ventures Groupがラウンドに参加。
  • 2nd Address」はビジネス旅行向け民泊サービスを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、2月に1,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。GVがリードを務め、Foundation Capital とAmicus Capitalがラウンドに参加。

民泊市場では「高級ブランド志向」と「ソーシャルライフ」がキーワードになっていると感じた1年でした。まずは高級ブランド志向からお話しします。

Airbnbを筆頭に大手サービスに市場はほぼ取られてしまい、各社が次に攻めたのがアパート部屋の賃貸や自社運営の民泊拠点の貸し出しです。たとえば、Airbnbが巨額投資をしている「Lyric」が挙げられます。同社はアメニティが完備され、アプリを通じた24時間カスタマー対応付きのアパート民泊を運営。また、「WhyHotel」は空き部屋の多い新築マンションを高級アパート民泊サービスとして貸し出しています。「Sonder」は自社で物件を所有し、ネットワーク全ての部屋を自社ブランドに統一して貸し出しています。

それぞれAirbnbより比較的割高な価格帯でサービスを提供。その裏には、「高いキュレーション」が求められる市場需要が伺い知れます。部屋の管理からインテリアデザインまで、各社とも高い質を提供しています。キュレーションが求められる理由として、ネットワークビジネスでしばしば発生する、質の悪いサービス提供者に嫌気が差している一定層が存在している点が挙げられます。

この点、AirbnbはLyricに投資することで、民泊市場の低価格層から高級層まで、ほぼ全ての顧客の需要に応えようとする戦略を持っていると想像できます。ちなみに、ホテルと同等の質を求めるビジネスマンからの需要は高く、「Zeus」や「2nd Address」がビジネス層をターゲットにしています。

中長期の住居を提供するコリビングサービスでは、同世代の若者が集まる「ソーシャル要素」が鍵となっています。ブランディングの一環として、旅行者や居住者との交流は欠かせない要素となっています。しかし、コリビングスタートアップの多くがSonder同様に自社ブランドとして場所を提供しているため、Airbnbのようなネットワークモデルではなく、住宅やホテルを又貸しするWeWorkに似たビジネスモデルを採用。ただ、このモデルでは巨額のコストがのしかかるでしょう。たとえば、「Life House」のようなホテル事業者が事業者が挙げられます。

今回リスティングした企業の大半が、WeWorkの上場撤回事件が発生するまでに資金調達を完了しています。WeWorkのようにユニットエコノミクスが成立していなくとも、ミレニアル世代が求めるソーシャルやコラボレーション価値を前面に押し出すことで成長を続けられてきた、言わば“バブル勢”と捉えられます。

今後は“WeWork後”の正念場を試される立場になることは必至でしょう。又貸しモデルで調達を続けてきた民泊およびコリビング勢は、2020年以降、投資家からの厳しいファイナンスチェックが入ることは容易に想像がつきます。

リセール市場は堅調

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Image Credit: Bump
  • Bump」はストリートウェア特化のP2Pソーシャルマーケットプレイスを運営。2017年にロンドンで創業し、4月に750万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。e.venturesがリードを務め、Kleiner Perkins、Y Combinatorらがラウンドに参加。
  • Depop」は中古ファッション商品マーケットプレイスを運営。2011年にロンドンで創業し、6月に6,200万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。General Atlanticがリードを務め、HV Holtzbrinck Ventures、Balderton Capital、Creandum、Octopus Ventures、TempoCap、KlarnaのCEO Sebastian Siemiatkowski氏がラウンドに参加。
  • Medinas」は医療機器製品の中古マーケットプレイスを運営。2017年にバークレーで創業し、10月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。NFXがリードを務め、Precursor Ventures、Sound Ventures、FJ Labs、Bryan Fristがラウンドに参加。
  • thredUp」は中古服マーケットプレイスを運営。2009年にサンフランシスコで創業し、8月に1.75億ドルの資金調達をシリーズFラウンドで実施。Park West Asset Management、Irving Investors、Goldman Sachs Investment Partners、Upfront Ventures、Highland Capital Partners、Redpoint Venturesがラウンドに参加。
  • Vinted」は手数料無料の中古ファッション商品マーケットプレイスを運営。2008年にリトアニアで創業し、11月に1.28億ユーロの資金調達をシリーズEラウンドで実施。Lightspeed Venture Partnersがリードを務め、Sprints Capitalらがラウンドに参加。

thredUp」の2019年レポートによると、米国中古アパレル市場は2023年に510億ドルにまで成長すると予測されています。これは2018年の240億ドルの2倍強の規模です。また、アパレル市場と比べて中古市場は21倍も早い速度で成長しているとのこと。なかでも女性層の成長は強く、2018年に5,600万人が中古アパレル商品を購入した経験があると分析。前年度比4,400万人から大きく前進しています。市場の16%を占めるZ世代購買者は、3人に1人が今後中古品を購入したいと希望していることから、各社とも次のターゲット市場として狙いを定めています。

今回リスト入りしている中でも、「Bump」や「Depop」などのストリートファッション商品を展開するサービスはZ世代を取り込んでいる模様です。「thredUp」「TheRealReal」「Poshmark」はミレニアル世代には人気である一方、Z世代の取り込みはまだ不十分な印象です。この点、Z世代から爆発的な人気を誇る、次のアパレルリセール市場で急成長を遂げられる可能性がスタートアップに残っています。既存サービスの体験を次世代向けにアップデートするスタートアップに商機が訪れるでしょう。

レポートの中で興味深い動向として指摘されているのが、コンマリメソッドの普及。部屋を掃除して、本当に大切なものだけを残し大切に使う“Konmari”の考えがリセール市場にも広がりつつあります。コンマリした人は不用品を2次流通を利用するため市場を活性化させます。実際、Netflixでコンマリ番組が配信された直後は、要らない洋服を詰めてそのままthredUpに出品できる「Clean Out Kit」の提供数が80%上昇したとのこと。Konmariに代表される新しいコンセプトが市場を底上げしている動きは覚えておくべきかもしれません。デジタルコンテンツとリセール市場に強い導線が出来ていることがClean Out Kitの実績からわかるため、メディアの視点からもリセール市場参入を検討できそうです。

リセール市場向けプライベードブランド化の動きもあります。「Rent The Runway」は自社貸し出しサービス専用のブランドを作っており、thredUpもリセール向けの洋服ラインを構築。新しいものではなく、長くいろんな人の手に渡ることを想定して作られたファッションブランドが市場で出来つつある点が見逃せません。多くのブランドが生まれていますが、プラットフォームと連携して洋服を卸す、リセール特化ブランドが誕生してもおかしくないでしょう。

越境 × ライブコマース

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Image Credit: NTWRK
  • ShopShops」は米国の小売店舗から中国へ配信するライブコマースアプリを開発。2016年にニューヨークで創業し、7月に1,400万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Axios、Union Square Ventures、Forerunner Ventures、TCG Capitalがラウンドに参加。
  • THE NTWRK」はライブコマースアプリを開発。2018年にロサンゼルスで創業し、9月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Foot Lockerがラウンドに参加。

単独アプリやWebサービスが欧米ライブコマース市場を制するのは厳しい印象です。大きな理由としてGAFAが本格的に動き始めたことが挙げられます。Facebookは、12月20日、ローカルコミュニティ内で中古品を売買できるフリマ機能「Marketplace」にライブコマースを実装するため、動画ショッピング機能を開発するスタートアップ「Packagd」を買収したと報じられました。Facebookは2018年、タイでライブコマース機能を試験投入していることから、米国市場で同機能を再現するとされています。

ライブコマースは中国市場で爆発的に普及しています。独身の日セールでは、AlibabaやTencent傘下のEコマースサービスで28億ドル規模のライブコマース経由の購買が行われています。一方、米国市場では中国ほどの売上を上げている印象はありません。たとえば、今では米国世帯の半数がPrime会員に加入しているとはいえ、Amazon Prime Dayにライブコマースが売上を伸ばしているといった話は聞きません。

そこで登場するのがFacebook。従来、Marketplaceはローカル特化のフリマとして成立していましたが、もしライブコマース機能が実装されれば、国が離れていたとしても個人間売買を促進できます。つまり、これまでローカルだった場所が、急にグローバルなネットワークへと成長するとっかかりを得るのです。ちなみにInstagram Liveが自社プロダクト内で競合になってしまうかと思われますが、Facebook MarketplaceとInstagramは利用シーンが大きく違うため、ユーザーの共食いをすることはないでしょう。

しかしFacebookは大きな商機を逃しています。というのも、最もライブコマースがホットな中国市場に参入しようとしても出来ないのです。このGAFAの参入障壁を狙っているのが欧米のスタートアップたち。たとえば米中をライブコマースで繋ぐ「ShopShops」や、インフルエンサーが店舗からライブ動画配信する「roctona」が挙げられます。彼らは中国市場向けに越境ビジネスを仕掛け、ライブ配信者ネットワークを構築しています。

GAFA勢の穴を埋めるように、スタートアップは成長を遂げています。日本でも「Live Shop!」などが人気ですが、仮に中国市場向けにアパレル・医薬品商品を販売するライブコマースアプリへと方向性を変えれば成長が狙えるかもしれません。ここで覚えておくべきことは、GAFAが取りこぼした大きな商機が中国顧客を前提とした越境市場に潜んでいる点です。この点を見逃さず、配信者ネットワークを世界規模で展開できた企業は、ライブコマース市場で勝ち抜けられるはずと感じます。

コンサル・コマースに注目

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Image Credit: Curated
  • Curated」はオンラインショッピングする際にアドバイスをくれる専門家とのマッチングプラットフォームを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、10月に2,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Forerunnerがリード投資を務めた。
  • DesireList」はプロの意見をもとに買い物をするEコマースを運営。2015年にアトランタで創業し、3月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。前McDonalds CEOのDon Thompson氏がラウンドに参加。

専門家の意見を聞きながら、最適な商品を購入するパーソナライズ体験は見逃せない動きでしょう。購買活動において、コンサルタントを雇う体験が人気です。このコンセプトは2編で紹介したパッションエコノミーと強く結び付いています。「Curated」は専門知識のある人が、お客さんと一緒に商品を選ぶ体験を提供。これは個々の強みを活かしてサービス化させるトレンドを掴んで生まれたサービスと言えます。小売市場swhパーソナライズ体験の重要性が叫ばれて久しいですが、コンサル・コマースはその解の1つを指し示しています。

シェアリング店舗の行方

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Image Credit: Neighborhood Goods
  • Bulletin」はEC事業者向けに実店舗の販売スペースをブース貸しするサービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、7月に700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Foundation Capital、Kleiner Perkinsらがラウンドに参加。
  • Neighborhood Goods」はブース貸しモデルのデパートを運営。2017年にダラスで創業し、9月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Global Founders Capitalがリードを務め、Forerunner Ventures、Serena Ventures、NextGen Venture Partners、Allen Exploration、Capital Factoryらがラウンドに参加。
  • Showfields」はブース貸しモデルの体験型デパートを運営。2017年にニューヨークで創業し、2月に900万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Hanaco Venturesがリード投資を務めた。

米国スタートアップ界隈では店舗業態を販売から不動産へシフトさせる動きが始まっています。代表的な企業に「Bulletin」が挙げられます。月額2,000〜3,000ドルで店舗一画を各ブランドの販売商品の展示スペースとして割り当てる不動産事業を展開。EC事業者が手軽に一等地店舗に商品を並べる機会提供を行っています。店舗側は場所を貸し出すだけのモデルであるため、あとは簡単な商品在庫スペースだけあれば十分です。

売り場だけ確保できれば良いため、従来型の店舗と比べて1坪当たりの売上上昇に注力できます。さらに月額サブスクリプションモデルのため店舗側は一定売上が担保されます。販売売上に左右されずに一定の売上予測が可能になるのです。出店ブランド側も多額の出店費用リスクを負う必要がなくなるWin-Winの関係構築をしました。

最近では「Neighborhood Goods」や「Showfields」のように、デパート規模の大きなハコでBulletinのようなシェアリング店舗事業を展開する事例が目立ちます。また、お客さん同士の交流や、イベントにも注力した新しい娯楽施設としての側面を持たせる動きもあります。こうした動向から、ポスト2019年の店舗はシェアリング不動産事業をベースに、顧客体験を最大化させるエンタメ化が加速するように思えます。先述したデパートスタートアップが提供する体験コンテンツが、どの程度客単価を引き上げるかは未だ実験段階であるため、今後何かしらのソリューションが登場してくることが望まれます。

物流アクセス向上

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Image Credit: Darkstore
  • Darkstore」は当日配達物流サービスを小売企業に提供。2017年にサンフランシスコで創業し、9月に2,100万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。EQT Venturesがリード投資を務めた。
  • FLEXE」はオンデマンド物流サービスを提供。2013年にシアトルで創業し、5月に4,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Activate CapitalとTiger Global Managementが共同でリードを務め、Madrona Venture Group、Redpoint Ventures、Prologis Venturesがラウンドに参加。
  • Flowspace」はオンデマンド物流サービスを提供。2017年にロサンゼルスで創業し、4月に1,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Canvas Venturesがリードを務め、Moment Ventures、1984 Ventures、Y Combinatorがラウンドに参加。
  • Happy Returns」はオフライン返品ネットワークを小売業者に提供。2015年にサンタモニカで創業し、4月に1,100万ドルの資金調達を実施。PayPalがリードを務め、USVPとUpfront Venturesがラウンドに参加。
  • Saltbox」は物流倉庫付きコワーキングスペースを提供。2019年にアトランタで創業し、9月に320万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Village Globalがリード投資を務めた。
  • what3words」は郵便配達の困難な地域向けに特定3用語で配達先を定義するサービスを提供。2013年にロンドンで創業し、4月に非公開ラウンドを実施。

物流市場では対Amazonをサポートするサービスが登場しています。Amazon Primeの登場以来、即日配達サービスが当たり前になってしまいました。しかし、既存小売店がすぐに即日対応できる物流網を準備できるはずがありません。そこで登場したのが「Darkstore」。都市部に特化したフルフィルメントサービスを展開しています。利用企業は当日配達サービスを手軽に展開できるようになります。物流面でAmazonに対抗する武器を、高速で販売店が実装できるサービスとして実績を伸ばしています。

また、Amazonでは返品できるのが当たり前。欧米では日本と比べて返品率が高いため、どの小売店も返品サービスを付けておかなければAmazonに客が取られてしまいます。ただ、当日配達同様に、サービス実装には多大のコストが必要。この課題を解決するのが「Happy Returns」です。提携ECブランド商品であれば、顧客は最寄りのショッピングモールに開設してあるHappy Returnsのブースで返品作業を行えるサービスを提供します。顧客は箱詰めして送り返す手間暇を省け、返品対象品を手渡しするだけで即金でお金を得られるメリットがあります。

同社は各ブランドへの返品数が一定数以上集まってから返送・配達を行います。返品物流を小分けではなくまとめ配達の物流手法へと変えたのです。1品ずつ返品するのでは、EC事業側の管理コストがかかり過ぎますし、物流業者の仕事が増えてしまいます。この課題を解決したのがHappy Returnsなわけです。このようにAmazonが得意とするサービス領域を自社で作り出し、パートナー企業へ提供するアドオン事業が物流市場で成長しているのが印象的です。日本では運送業者の過剰労働が社会問題になったことから、本項で紹介したスタートアップを模倣した事業に支持が集まるかもしれません。

業界再編が進む小売ブランド

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Image Credit: Le Tote

洋服サブスクスタートアップ「Le Tote」が老舗デパート「Lord & Taylor」を買収したニュースは衝撃でした。この買収劇から予想できるのは個客管理の可能性です。たとえばデパート入り口で、Le Toteのユーザーアカウント認証を行うタブレット導線を用意した場合、オンラインアカウント情報と店舗内で購入した商品データとの連携に成功します。データ連携の最大のメリットは、Le Toteのオンライン店舗とLord & Taylor内の購買データを統合させることで、オンラインとオフラインのどちらのチャネルから顧客が流入しても、最適な商品提案が可能となる「オムニチャネル戦略」を採用できる点にあります。

Amazonが成功している点もまさにここ。無人店舗「Amazon Go」の来客は入り口でアカウント認証が必要です。これは店舗内購買データをAmazon Marketplaceでも活かして、最適な商品レコメンドをするための導線を確保するためのものです。つまり実店舗顧客はオンライン・マーケットプレイスに来てもAmazonにターゲティングされ、高い精度のパーソナライズ商品提案される対象になるのです。

Le ToteはもともとEコマース企業。デパート体験をオムニチャネル戦略を採れるように最適化させることは想像に難くありません。改めてリストを見てみると、2019年は大型倒産や買収が相次ぎましたが、オムニチャネル戦略を匂わせるディールはAmazonの生鮮食品ブランド店舗のニュースのみ。たとえば、Old Navyが単に店舗を増やしたとしても、提供価値や戦略上の甘さで、Le Toteのようなスタートアップに買収される対象になってしまうかもしれません。また、Forever 21に代表される大手アパレル企業がドミノ倒しに破産申請していく可能性も否めません。顧客体験を最大化させる新業態や戦略採用が急務となりそうです。こうした流れは、ゆくゆく日本の小売市場でも顕著になってくるはずでしょう。

高速移動社会の立ち上がり

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Image Credit: Boom Supersonic
  • BlackBird」はプライベートジェット手配サービスを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、6月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAで実施。New Enterprise Associatesがリード投資を務めた。
  • Boom Supersonic」は超音速航空機を開発する企業。2014年にコロラド州で創業。Emerson Capitalがリードを務め、Y Combinator Continuity、Caffeinated Capital、SV Angel、Sam Altman、Paul Graham、Ron Conway、Michael Marks、Greg McAdooが参加。
  • Karem Aircraft」は空飛ぶタクシーを開発する企業。2004年にカリフォルニア州で創業し、7月に2,500万ドルの資金調達をシリーズAで実施。Korea’s Hanwha Systemsがリード投資を務めた。
  • Hermeus」は超音速航空機を開発する企業。2018年にアトランタで創業。Khosla Venturesがリード投資を務めた非公開ラウンドを実施。
  • Isar Aerospace」は小型ロケットを開発する企業。2018年にドイツで創業し、12月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。 Earlybird Venture CapitalとAirbus Venturesが共同でリードを務め、UVC PartnersとVito Venturesがラウンドに参加。
  • Jet Edge International」はプライベートジェット手配サービスを提供。2007年にカリフォルニア州で創業し、3月に6,000万ドルの資金調達をプライベートエクイティラウンドで実施。Solace Capital Partnersがリード投資を務めた。
  • JetPack Aviation」は空飛ぶモーターバイクを開発する企業。サンフランシスコで創業し、Draper Associates、YC、Cathexis Venturesらから200万ドルの資金調達を実施。
  • Loft Orbital」は小型衛星に利用企業のセンサーを複数載せて打ち上げるライドシェアサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、11月に1,300万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Foundation Capitalがリードを務め、Ubiquity VC、Uncork Capital、Cendana Capital、Swell VC、GFA Venturesがラウンドに参加。
  • Relativity Space」は3Dプリント技術を使ったロケット製造企業。2016年にカリフォルニア州で創業し、10月に1.4億ドルの資金調達をシリーズCで実施。BondとTribe Capitalが共同でリード投資を務めた。
  • Skyports」は空飛ぶタクシー向けの着陸パッド(ミニ空港)を建設する企業。2017年にロンドンで創業し、12月に5,35万ユーロの資金調達をシリーズAで実施。Deutsche Bahn Digital VenturesとGroupe ADPがリードを務め、Levitate Capitalが参加した。
  • Virgin Hyperloop One」は真空チューブを利用した輸送システムを開発する企業。2014年にロサンゼルスで創業し、5月に1.72億ドルの資金調達を実施。
  • Volocopter」は都市内移動向け電動ヘリコプターを製造。2011年にドイツで創業し、9月に5,000万ユーロの資金調達をシリーズCで実施。Zhejiang Geelyがリード投資を務めた。
  • Wheels Up」は会員制のプライベートジェットサービスを提供。2013年にニューヨークで創業し、8月に1.28億ドルの資金調達をシリーズDで実施。Franklin TempletonとT. Rowe Priceらがラウンドに参加。

空飛ぶタクシーはいよいよ実用化に向けて本格始動。欧州ドイツや米国カリフォルニア州を中心にスタートアップが活躍している印象です。上記のリストには入っていませんが、ドイツ拠点の電動空飛ぶタクシー企業「Lilium」も数億ドル単位で資金調達を模索しています。市場の動きを見ていると、3-5年以内に高価格ながら商用化されそうです。

注目なのは空飛ぶタクシー時代の“プロバイダー”の市場ポジションを狙う企業が出てきている点です。具体的にはタクシーが離着陸するための「ミニ空港」を作り上げる企業たちが挙げられます。「Skyports」のようにビルの屋上に滑走路を作ったり、都市部の空きスペースに専用小型空港を建てて、次世代の“管制塔”を目指しています。

機体開発と空港整備の両方が進み、いずれ空飛ぶタクシーの輸送は地域間の新たな移動手段として確立されるはずです。ここで真剣に考える必要があるのがディスラプト。空飛ぶタクシーが飛び始めると、中距離移動手段がディスラプトされる可能性を考える必要があります。たとえば高速バス移動手段の優位性が揺らぐかもしれません。また、郵便物輸送などの簡易な物流に変化が訪れるかもしれません。都市部とベッドタウン、もしくは地方間における輸送や物流は大きく前進することが予想されます。

さらに、ロケットの高速生産が始まる動きも見逃せません。機体数が増えれば、打ち上げ需要も自ずと増えてきます。こうした需要に対して、打ち上げ拠点の供給は間に合っていないでしょう。そこで、基地ビジネスやライドシェアに注目が集まるはずです。たとえば北海道などで広大な土地所有権を持つ人が、簡単な打ち上げ基地を作りあげられるサービスや、時間別にスムーズに打ち上げができるオンデマンド型の打ち上げ事業が生まれてくるはずです。実際、Sequioa Capitalが投資をした「Vector」が打ち上げ基地ビジネスに着手していました。また、「Loft Orbital」が小型衛星のライドシェア事業に取り組んでいます。こうした次世代の宇宙ビジネスに注目が集まるでしょう。

skyline skyscrapers panorama panoramic
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さて、250社のまとめ紹介はここまでです。1編から最後まで読んでくださった方は、最新欧米スタートアップ事情にかなり精通できるまで事例がインプットされていると思います。その上で、新しい事業構想を考える上で参考になる企業が1社でも見つかれば幸いです。

ただ、1点伝えなければいけないのは、4編を通じて紹介した30のキーワードは全て市場で十分に裏付けをされたもの。日本で起業や新規事業立ち上げをする上では通じるかもしれませんが、世界で戦うアイデアを探す上では、そのまま真似しても勝てません。3-5年は遅れをとってしまっていると言って過言ではないでしょう。

トレンド情報はメディアで消費されやすいものですが、事業の急成長性には欠けてしまいます。そのため、単にキワード情報をインプットするのではなく、全く市場からキーワードを引っ張ってきて掛け合わさせる思考法をおすすめします。新しいアイデアは必ず異業界のコンセプトを移植させ、化学反応を起こすことで誕生することがしばしばあります。この点は『模倣の経営学』に詳しく書かれているため、時間を取って読まれることをおすすめます。

また、第1編の冒頭でもお伝えしましたが、「Accessibility」が鍵になっています。各企業が既存概念をどのように民主化させ、私たちの共感を得られる体験にまで最適化させているかを考えれば、いろいろと発見があるはずです。

改めて、最後まで読んでいただいてありがとうございました。本連載がみなさんにとって実りある“ポスト2019年”を迎える一助になれたらありがたい限りです。

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次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(2:DX・デジタルトランスフォーメーション)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 オンラインやオフライン、リアルやバーチャルといった境界線は曖昧となり、より「体験」が重視される時代。ブロックチェーンによる自律分散型の情報管理は「個人」という考え方を強調する、という世界観について識者と共にお伝えした。 では、新しい世界を探る旅の続きを始めよう。 DX全盛の時代 「これまでの発明上位100件と同じだけの発明が登場する可能性は小さくなるばかり…

man holding black backpack
Photo by Oliver Sjöström on Pexels.com

次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

オンラインやオフライン、リアルやバーチャルといった境界線は曖昧となり、より「体験」が重視される時代。ブロックチェーンによる自律分散型の情報管理は「個人」という考え方を強調する、という世界観について識者と共にお伝えした。

では、新しい世界を探る旅の続きを始めよう。

DX全盛の時代

「これまでの発明上位100件と同じだけの発明が登場する可能性は小さくなるばかり。イノベーションはもはや、限りある資源、だ」(イーロン・マスク未来を創る男/アシュリー・バンス著/2015年、講談社)

現代のイノベーター、イーロン・マスク氏を記した著作の中でアシュリー・バンス氏が引用した一節だ。米国防総省で物理学者だったジョナサン・ヒューブナー氏は2005年の論文で未来をこう予想し、ドットコム・バブル崩壊後のイノベーションを「名ばかり」と一蹴している。

それから約15年。実際はどうなったのだろうか?

「ConstructionTechの出現で、100年変化がないと言われてきた建設現場でのイノベーションが起きつつあるように、未だにデジタル対応できていない領域がどんどんなくなり、リアルで発生する情報が全てデジタル化され、ネットに繋がっていく世界が拡大すると考えています」。

世界的な情勢をこのように俯瞰するのはサイバーエージェント・キャピタルの面々だ。日本、中国、北米の市場で活動する彼らが目にしているのは、見栄えのよい「イノベーション」ではなく、じわじわと広がる破壊的創造の環境なのだという。代表の近藤裕文、中国の北川伸明、北米の南出 大介が連名で送ってくれたコメントには、各国で現在進行する「アナログからデジタル」への、こまやかな変化が記されていた。

5GやAIチップなどのインフラの発展、Edge computingやBlockchainによるコンピューティングアーキテクチャの転換、小型・長時間稼働のバッテリー・常時無線給電など、アナログからデジタル変換の基盤を支える技術が進化します。そして、AIはより精度・適応範囲を求めさらに競争が激化していきます。

その中で、人間の果たす役割がよりクリエイティブな活動にシフトし、コラボレーションの重要性が増すと考えています。例えば今年上場したzoomなどは、オンラインでのコミュニケーションに変化をもたらしました。

米国の投資先であるInsiteVRはVR空間でコラボレーションが可能となるプラットフォームを提供しています。特に建築・建設分野において顧客・設計士・現場などの関係者が仮想の建物の中にいながら議論ができるような仕組みですね。

また、中国の投資先であるiTutorGroupは、オンライン教育サービスを提供していて、学習する場所や時間を問わないというシンプルなオンラインサービスの特徴に加え、個々のユーザの能力、習熟度や学習目的に応じた、最適な講座内容、テキストを自動でシステム側で選択するなど、教育産業のデジタル化を推進しています。

最後に日本の投資先であるCinnamonは、事務作業におけるペイパーワークをOCR/AIのアプローチで代替できるレベルに達しています。例えば、保険契約の複雑な書類を正確に読み込み、データ化する、といった作業です。単純作業を代替することで、ヒトがよりクリエイティブな活動に集中できる世界がもう到来しているのです【アナログからデジタル変換の適応領域の拡大と人の役割のシフト】

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InsiteVRはVR空間でのコラボレーションを可能にする

デジタルトランスフォーメーション(DX)。

今、まさに発生しているこのトレンドを「ひとつの側面」で語ることは難しい。既存業界の変化は、まるでアゲハ蝶が羽化するかのようにゆっくりと、しかし確実に進行している。アプリコット・ベンチャーズの白川智樹氏もその進行の鍵として「5G×AI」を挙げる。

2010年代においては、4G×スマートフォンでメディア・広告・ECに大きな変化があったように、2030年に向けた10年という中長期でみると、5G×AIが基盤となる企業や社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)に注目しています。

インフラ・交通・行政・防犯・工場・建設・介護施設・医療・小売現場などの都市にデバイスやロボット(協働ロボットやテレイグジスタンス)が浸透し、サービス型のビジネスモデルに転換、社会の生産性向上や労働力不足の解決に貢献していくと思います。そういった点では、通信事業者や各産業の大手企業が中心となり、PKSHAさんなどをはじめとしたスタートアップとの連携により上記のイノベーションが多数生まれるのではないでしょうか【5G×AIが基盤となるデジタルトランスフォーメーション】

ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロ氏もそれに続く意見を持った一人だ。彼の視点では、DXによって生まれた時間が人を更に進化させるとしている。

ここ数年、AIを取り入れたSaaSスタートアップが多数出現しています。日本企業のSaaS普及率が50%超えて、もはやSaaSを活用しない企業の方がマイノリティーになってきていると同時に、AIを取り入れたSaaSの普及率も上がってきています。

これによってAIの力を使った生産性が異常に高い従業員や職種が実現されると予想しています。例えば1人の従業員がAIのサポートによって3人分の生産性が発揮できるようになる、といった例です。

具体的な事例では、カスタマーサポートやコールセンターの世界でKARAKURIがAIを使った生産性アップのサービスを提供していたり、MiiTelはより効果的なインサイドセールスを生み出すSaaSを提供しています。今後も経理、税務、監査、人事でAIは強化されていくでしょう【AIに強化されたハイパー生産性職種の出現】

ところで、シンプルなデジタルシフトにおける効率化自体はこれまでにも語られてきた文脈だ。エンタープライズの使者としてSansanを皮切りに、SmartHRやfreeeなど数多くのスタートアップが貢献してきた。ではここで彼らが語る「次に期待されるDX」とはどういうものなのか?iSGSインベストメントワークスの五嶋一人氏は、領域の拡大に注目する。

製造業をはじめとする様々な企業活動における作業の効率化において、急速な浸透を見せている「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」は、第一次産業〜第三次産業、第四次産業まで浸透し、この結果人々の生活や体験に大きな変革が起きると考えています。

明確に成長が可視化される市場となっていますが、これに続くのは「衣・食・住」の領域におけるDXであり、スタートアップとベンチャーキャピタルにとっての「次の10年」の主戦場の一つになると考えています。

最終消費者の購入体験はもとより、「衣」であれば各種材料の生産・仕入れからデザイン・製造・流通・小売、さらにリサイクルまで、「食」であれば、生産者にはじまり、流通・小売・飲食店・廃棄の削減まで、「住」であれば不動産の開発から販売、運用、売却まで、あらゆる場面でテクノロジーを活用してビジネスモデルを変革できる機会があるのです【「衣・食・住」に関わるあらゆる領域のデジタル・トランスフォーメーションとライブ・エンターテイメントには、スタートアップに大きなチャンス】

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化粧品EC「NOIN」開始1年で累計流通額8億円を突破ーー夜はメイクよりスキンケア、行動データでマッチング精度高める

前回のテーマでもある体験(UX)とDXの関係性について語ってくれたのがSTRIVEの根岸奈津美さんだ。

中国で先進しているOMO(Online Merges Offline)をテーマとしたサービスが日本でも拡大すると思います。小売りやメーカー主導の売り切りのモデルや単純なECモデルに代わり、オンラインとオフラインの顧客接点を多く持つ企業による、購入前後も価値提供するリカーリングモデルや、オンラインの行動データを基にしたリアルサービスをエンパワーするサービスなどが台頭してくると思います。

先進企業として中国の保険会社である平安保険や、Alipay(支付宝)やWechat上に載るデリバリーや交通サービス、Alibaba(阿里巴巴)の提供するB2BプラットフォームLST、などに注目しています。日本においては、コスメの購買に関してOMOデータを提供する「ノイン」に注目しています。ノインではオンライン上の購入者データに、オフライン店舗のデータを統合することで、より実態に即した効果の高いデータソリューションを提供しています【DX(デジタル・トランスフォーメーション)の台頭によるUX】

デジタル化した社会では、ノインの事例のように人が「どこで買うか」という感覚を曖昧にする。だからこそ、企業は「データ」に着目し、それを足がかりに選んでもらうための「体験」を創造しなければならない。商品での差別化が難しくなった今だからこその戦略だ。

世代による体験も重要なキーワードになる。五島氏もこのように言及する。

また、ミレニアル世代・Z世代が完全に消費の中心となることもあり、「体験」を商品とするライブ・エンターテイメント産業は「次の10年」も一層の拡大を続けていくでしょう。これはリアルなイベントはもとより、インターネット上での繋がりにより発生するイベントや、AR・VRを活用したものも当然含まれます。また広義には美容やDoスポーツ領域といった個人に素晴らしい体験を提供する事業を含んでもよいのではないでしょうか。

音楽・スポーツの他、多人数が同時参加する各種イベント等の事業も、DXの浸透によりデータの利活用が一層進み、インターネット上のサービスやコミュニティとの連携をより一層深化させていきます。結果、エンターテイメントに対する嗜好性の細分化も一層進み、細分化されたファンとその嗜好性に応えるべく、新たなオンラインコンテンツの開発、新たな課金モデルや物販モデルが生まれ続けると期待しています【「衣・食・住」に関わるあらゆる領域のデジタル・トランスフォーメーションとライブ・エンターテイメントには、スタートアップに大きなチャンス】

※動画:BizteXの提供するRPAサービス

一方でエンタープライズ方面の変革には「既存システム」という巨大なハードルが立ちはだかる。ここでいうシステムとはテクノロジー的なシステムはもちろん、業界や人的なカルチャー、意思決定メカニズムなども含める総合的な「仕組み」のことだ。

この点についてジェネシア・ベンチャーズの田島聡一氏は、だからこそ業界でも汎用的に使うことのできるインフラにチャンスが芽生えると指摘していた。

産業構造の進化については、SaaSなどのソフトウェアやIoTデバイスの導入によってサプライ/バリューチェーンのデジタル化や多層取引構造の破壊プロセスがより一層進行するでしょう。同時に、これらのプロセスを通じて得られる多次元なデジタルデータを、様々な産業における生産性の最大化に充分に活かすべく、企業の内外を繋ぐデータマネジメント環境の整備や構築が進むと考えています。

そういった動きと並行して基幹システムやオンプレ、SaaSの垣根が融解し、これらを繋ぎ込む手段としてのiPaaS(integration Platform-as-a-service)の普及がより一層進むと思っています。支援先で言えば、建設業界のDXを目指す助太刀やフォトラクション、企業の内外を繋ぐデジタルアセット管理サービスAPIを提供しているZerobillbank、RPAやiPaaSの展開を推し進めるBizteXなどがあります【産業のDXと並行して、基幹システムやオンプレ、SaaSの垣根が融解し、iPaaSの普及が進む】

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食べチョクは一次産業のデジタル化を推進する

iPaaSのようにある程度汎用的に利用が可能なシステム・インフラが躍進するのはある意味、技術が普及期に入っている証拠とも言える。五島氏はそれに加え、効率化を進める業界のテーマとしても、産業全体を覆うような物流や移動といったダイナミックな視点が必要と語る。

技術的な観点では、ブロックチェーン・IoT・AI・ビッグデータ・ロボットといったテクノロジーが本格普及段階に入り、より安価より簡単に利用できる「枯れた」技術になり、いい意味でただの「道具」としてこれらのテクノロジーを使いこなし、新たな価値を提供できるスタートアップに大きなチャンスがやってくると考えています。

iSGSは「Be a LifeStyle Changer(生活の革新者であれ)」を投資ポリシーの中心に据えて投資活動をしていますが、上記の文脈からの投資先の例として、あらゆる産業の根幹となる物流(倉庫)の最適化を担うsouco、一次産業の生産者と消費者を直接繋ぎ、生産者が生み出す付加価値を可視化して消費者に届ける「食べチョク」、バスを活用して人々の移動を最適化するワンダートランスポートテクノロジーズなどがあります。

同じく飲食店の業務を効率化し飲食店と顧客の関係に革新をもたらすサービスとして、モバイルオーダー&ペイサービス「PICKS」、飲食店予約において全く新しい収益モデルに挑戦しているBespoがあり、エンターテイメント領域ではVRゲーム「東京クロノス」に期待しています。さらに、あらゆる新産業の根幹となるAI技術の開発のみならず自らAI を活用した新産業の創造に挑み続けるエクサウィザーズも挙げたいと思います。

これら例示した投資先は、いずれも「次の10年」を担う事業の中では相対的に立ち上がりが早いと考えられる領域をターゲットとし、更にすべて現業に留まらない大きなビジョンを有するスタートアップとして期待を寄せています【「衣・食・住」に関わるあらゆる領域のデジタル・トランスフォーメーションとライブ・エンターテイメントには、スタートアップに大きなチャンス】

長くなってしまったので、少子高齢化とダイバーシティは次回にまわし、ポスト資本主義の輪郭と合わせてお届けする。

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