コラム

VCがESG投資に取り組まない理由がなくなる日は近い

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、STRIVEのインベストメントマネージャー四方智之氏がまとめたものを転載させていただいた。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@tomo4kata ESG、SDGs、インパクト投資、サステナビリティ、、、 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報を…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、STRIVEのインベストメントマネージャー四方智之氏がまとめたものを転載させていただいた原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@tomo4kata

ESG、SDGs、インパクト投資、サステナビリティ、、、

ここ数年で聞くようになったこれらの用語はそれぞれの違いは分かりにくいし、上場企業がブランドイメージ向上のために叫んでいるだけではないかという少し穿った見方もしていた時期もあり、なぜここまで盛り上がっているのか、本質的な理由が分からないというのが正直な私の感想でした。

一方で、2020年半ばから海外VCの動きを見ていると、気候変動特化ファンドや明確なESG投資の方針を掲げるファンドが明らかに増え、これは潮目が何か変わりつつあるのか、とも感じるようになりました。

上場企業はもちろんのこと、スタートアップ界隈でもダイバーシティなどが叫ばれるようになった一方で、VCにとってそもそもESG投資というものは取り入れる余地があるのか?取り入れるとしたらどのような形が可能なのか?といった点を中心に書いてみたいと思います。

ESG投資、インパクト投資、SDGs、結局どう違うの?

本題に入る前に、ESGやインパクト投資の違い、なぜESG投資が今盛り上がっているのか、といった点についてまず触れたいと思います。

社会的責任投資

ESGというワードが広まる以前だと、1990年ごろから使われていた社会的責任投資=SRI(Socially Responsible Investing)という概念があります。これは端的に言うと、社会からの企業への期待が反映された投資行動です。

元々は1920年代にキリスト教的倫理観を反映して、タバコや武器、アルコールなどの企業を投資対象から外した投資手法が起源であり、その後1960年代には社会運動の視点が含まれていました。

ESG投資

「ESG投資」は、「Environment=環境」「Society=社会」「Governance=ガバナンス」の頭文字をとった言葉。上記の社会的責任投資のコンテクストを汲んで、今日、企業が長期的な価値向上のためには考えるべき課題として、財務的フレームワークの外に存在する、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきています。

● E(環境): CO2の排出量削減、再生可能エネルギーの利用、生産過程における廃棄物の低減など
● S(社会):女性の活躍推進、製品・サービス提供者としての責任、地域社会への配慮など
● G(ガバナンス/企業統治):株主の権利と平等性の確保、適切な情報開示、社外取締役の設置など

そのルーツは、2006年に国連主導で発足した責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)です。同原則は署名機関が自主的に取り組む6原則からなっていますが、その第1原則が「私たちは、投資の分析と意思決定プロセスにESG課題を組み込みます」となっています。すなわち、PRIの責任投資=ESG投資です。

(余談ですが、ESG投資は英語だとESG Investingという言葉で使われておらず、ESG IntegrationあるいはESG Incorporationという用語が使われており、投資プロセスに環境、社会、ガバナンスの課題を組み込むという第1原則の特徴が明確に出ています。)

インパクト投資

また、最近だと「インパクト投資」という言葉も聞くようになりました。こちらは社会課題解決を目的としてリターンと同等、またはそれ以上に社会的インパクトを重視する投資であり、銘柄の選択もそうした考えに基づいています。

よくESG投資とインパクト投資とで間違われやすいですが、ESG投資はリスク・リターンを最大化・適正化するために環境や社会への影響を考慮するものであるのに対して、インパクト投資は環境や社会へのポジティブな変化を生み出すことがそもそも投資の目的と位置づけられています。

SDGs

ESGとの違いが一番ややこしい用語ですが、簡単に言うとSDGsは国連が定めた社会や企業が達成すべき「目標」であるのに対して、ESG投資はその目標を達成する「手段」という位置づけになります。

企業からすると、社会的課題解決に取り組むことでESG投資をするGPIFなどの金融機関から投資を得られるといったイメージです。こちらが関係を表した図表になります。

サステナブル投資

環境、社会、ガバナンス課題を考慮する投資には、以上のような社会的責任投資、ESG投資、インパクト投資など、さまざまな投資がありますが、これらをまとめて表現する用語としては、「サステナブル投資」が世界的に使われています。

ざっくりと1ページにまとめたものがこちらになります↓

また、各投資手法はMECEではないというのもここで強調しておきます。ESG投資は社会的責任投資から派生したものと考えられますし、インパクト投資と被る要素もあるというのを表したのがこちらです。

ESG投資の急拡大

サステナブル投資推進に取り組む世界各国の団体が加盟しているGSIAのレポートによると、サステナブル投資額は世界の運用資産総額の36%に匹敵する35.3兆ドル(約3,883兆円)に達し、過去2年間(2018年~2020年)で15%、過去4年間(2016年~2020年)で55%増加しました。

その中でも日本の資産運用残高は過去4年間で約6倍と、他地域と比較して非常に高い成長率になっており、アメリカ、ヨーロッパに次ぐ規模まで拡大しています。

(出典:GSIA

なぜこれだけESG投資が盛り上がるのか?

ここまでESG投資が急拡大している背景には、主に2つの流れがあります。

一つ目は、ここ数年で世界経済はESGを考慮しないことを政治的・商業的リスクと捉えるようになったことです。World Economic Forumの「グローバルリスク報告書 2021年版」では、この先10年で最も社会・政治・地政学的な影響が大きいリスクとして、「感染症の拡大」に加えて、「気候変動」「サイバー攻撃」が並んでいます。

こうした世界経済の流れを受けて、機関投資家や大富豪のファミリーオフィスなどの金融業界のプレイヤーが先んじてESGをリスク要因とする認識するようになり、投資対象となる産業界にも対応を求めるようになりました。

二つ目は、先述のPRIです。2008年のリーマンショック以前に目立っていた「短期的な利益を目指す」というESGの対極にある思想は、リーマンショックによる世界恐慌を機に反省すべき姿勢だとして捉えられ、その結果、「持続可能な事業に投資する」という世界的な共通の価値観としてESG投資は重要視され始めました。

PRIに署名するのは、GPIFなど一般人の資金を預かって運用する年金基金や保険会社であり、これらの機関投資家は「社会的に良いから」といった理由だけでは投資対象を選定しません。言い換えると、「ESG投資はパフォーマンスが高いからESG投資をします」と、プロの投資家が認めるようになってきているわけです。2021年9月時点で4,308の投資機関がPRIに賛同・署名しており、ここ数年で急速に増えています。

(出典:PRI

VCは「LPからお金を集めるため」にESG投資をすべきなのか?

ここから本題になります。

アメリカではもちろんのこと、近年は日本でもVCのファンドサイズが拡大するにつれて、機関投資家がVCをアセットクラスとして見るようになってきました。

前述の通り、多くの機関投資家はPRIに署名しているので、VCがESG投資をすることは出資検討をしてくれるLP候補が増えることになり、ファンドの資金は調達しやすくなります。

一方で、「VCがESG投資をすべき」なのは「LPからお金を集めるため」というのは理由になっていそうで、実は本来の理由ではないのでは?と個人的に違和感を覚えました。

なぜなら、当たり前のことですが、VCにとっての仕事は「LPからお金を集める」だけでなく「そのお金で投資してリターンを出す」ことも含まれるからです。

VCがESG投資に取り組むべき本質的な理由

他のアセットクラスと比較すると、VC全体におけるESG関連の取り組みは出遅れているのが現状です。これはVCが投資しているテック関連企業はESGにあまり関係がないからと思われているからかもしれません(例えば温室効果ガスを大量に排出したり、河川の汚染に繋がるような事業は少ない)。

しかし、実際はESGを考慮することは、VCが投資するスタートアップ企業の長期的な成功、ひいてはVCの最終的なリターンにとって非常に重要性が高いと言えます。それは昨今のテック企業において顕在化したリスクが事業の収益モデルや持続可能性に直接的な影響を及ぼしているためです。

<個人情報保護>
FacebookやGoogleといったユーザーのあらゆるデータを追いかけて収益化される「監視資本主義」をビジネスモデルとするような企業は、ユーザーの許可なしに収集した個人情報を利用していることが倫理的問題として提起され、実際にCookie規制などの事業上のリスクの対処に追われています。(一部の投資家からはFacebookをESGファンドの銘柄に組み入れることは果たして正しいのか?という声も上がっています。)

<労働者の権利>
UberやLyftなどの企業は、運転手や配達員などの仕事をオンラインで単発で請け負う「ギグワーカー」の労働者の権利問題があります。ギグワーカーは会社員と違って企業が雇用しているわけではなく、年収も200万円~300万円未満の割合が最も多いとされ、病気やケガなどで働けなくなった場合、死活問題になります。
上場後も赤字が続くUberなどの企業にとって、ギグワーカーの賃金や待遇改善による人件費の高騰は当然避けたいですが、そもそも労働力搾取と見られてしまう事業の持続可能性が根本の問題であると言えます。

<企業文化>
WeWorkの企業文化も記憶に新しいトピックかもしれません。株式上場のためのS-1申請のタイミングで、CEOアダム・ニューマン氏による独裁と見れるような企業構造やガバナンスの問題や、アルコールやセックス、麻薬など何でもありのパーティーに従業員は参加を強要されるなどの実態も報道され、最終的に上場計画の撤回に追い込まれました。

上記の3つの事例では、各社が上場後、もしくは上場手前になってリスクが顕在化しました。GAFAによる個人情報の利用は2020年代の新たな人権問題になるでしょうし、人工知能による差別の助長など、スタートアップにとっては上場前でも事業継続のリスクとなりえる問題が増えています。

VCは一般的に、ディスラプティブ(破壊的)なビジネスモデルが投資対象となるケースが多いです。しかし、ESG課題に対する適切なアプローチを考えられていないディスラプティブな企業は、いずれ法規制が追いついたときに損失を被る可能性があります。リスクを低減し、リターンを最大化するために、ESG投資は今後VCにとって必須の考え方になってくるでしょう。

ESGをDDプロセスに組み込む必要性

しかし、経験豊富なVCであれば通常のDDにおいてESGのリスクを特定できるのでは?とも思うかもしれません。そういったケースもあるとは思いますが、体系的に投資の意思決定プロセスにESGを組み込まないと重要なリスクが見落とされる可能性は当然あります。

体系的なアプローチをとって仕組みで対応することは、PEファンドと比べてチームの規模が小さく、投資先の多いVCファンドにとってより意味があるでしょう。

一方で、海外も含めてまだVC業界では仕組みとして対応できているファームがほぼないのが現状です。国際的な人権団体のAmnesty Internationalによると、Sequoia、Tiger Global、a16z、Acccelなどを含むTop VC 10社全てが人権尊重をDD項目に入れていませんでした。VCのDDプロセスにおいてどのようにESGの要素を考慮すべきかは今後さらなる議論が必要です。

アーリーステージでこそ取り組むべき

労働者や消費者との関係については、一度事業がスケールしてしまった後だと、大きく方針を変更することは困難になります。スタートアップは早い段階でESGの考え方を取り入れるすることで、急成長の基盤を作り、長期的な持続可能性を確保することができます。

投資家は新しい調達ラウンドごとに、DDプロセスの中で事業のフェーズに対して適切なESGのリスクと機会を評価し、必要なアクションプランを練るべきです。そして、投資した後も上場を見据えてESGの考え方をインストールするために投資先向けのトレーニングなどを提供していく必要が出てくるでしょう。

まとめ(&宣伝・告知)

ここまでVCがESG投資に取り組むべき理由について書きましたが、具体的に投資の意思決定プロセスの中にESGをどう考慮し、どのようなDD項目を設けるか、そして基本的にリソースが限られている投資先との関係の中で、出資後はどのようにESGの考えを取り入れてもらうのが適切なのかは正直手探りの状態です。

このテーマに関心があるスタートアップ、そしてVCの皆様とぜひ議論させてもらいたいです!ESG経営をどのように取り入れるべきなのかもそうですし、ESG領域のソリューションを企業や消費者に対して提供しようとしているスタートアップの方ともお話しできたら嬉しいです。

現状私の投資先だと、アスエネResilireの2社がESG領域の事業を展開しています。クリーン電力サービスと温室効果ガス排出量管理SaaSを提供しているアスエネは、まさにE(環境)のど真ん中と言える気候変動の課題にチャレンジしています。

<関連リンク>

また、直近資金調達のリリースが出たResilireは気候変動に伴う自然災害の増加に対応するためのサプライチェーンリスク管理SaaSを提供しており、事業継続マネジメント(BCM)に対して今まで以上に注目が高まる中で、小林製薬などの大手企業への導入が進んでいます。

最後に告知になりますが、そんなResilire社のCEO津田さんと、9/14(火)18時~にサプライチェーンリスクやらESGやらについて雑談する予定です。ご興味ある方はぜひご参加ください!

<関連リンク>

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

Second Lifeに再来したメタバースの波:そして新たな可能性「Tilia Pay」へ(4)

SHARE:

(前回からのつづき)Lindenn LabはかつてAltberg氏の下でオリジナルの決済システムである「Tilia Pay」に7年間で3,000万ドルを投資し、米国での運営に必要な州のライセンスをすべて取得している。 Oberwager氏によると、Tilia Payは他の企業の仮想経済を活性化させることができるという。ユーザーを自社版のメタバースに呼び込み、お金を使ってもらい、デジタルで稼いだお金…

Uplandでは、Lindenn LabのTiliaを使って決済をする

(前回からのつづき)Lindenn LabはかつてAltberg氏の下でオリジナルの決済システムである「Tilia Pay」に7年間で3,000万ドルを投資し、米国での運営に必要な州のライセンスをすべて取得している。

Oberwager氏によると、Tilia Payは他の企業の仮想経済を活性化させることができるという。ユーザーを自社版のメタバースに呼び込み、お金を使ってもらい、デジタルで稼いだお金を現金化できるようにする。これは、メタバースの基本的な機能であり、Second Lifeは長い間これに時間を費やしてきたーー。そうOberwager氏は語る。

ただこれは、見かけほど簡単なことではない。クリエイターがバーチャルコンテンツの対価を得るためには、プラットフォームパブリッシャーはまず、送金規制に対応する必要がある。クリエイターが仮想商品と交換して現金化する際には、プラットフォームパブリッシャーが送金業者となり、全米50州でライセンスを取得する必要があるからだ。これは、NFT(ノンファンジブル・トークン)を扱う取引所にも当てはまる。

Oberwager氏によるとTiliaは仮想通貨、ゲーム、NFTの機会に焦点を当てた唯一となる、完全認可の送金業者になっている。Tilia Payは、PayPalとCoinbaseを組み合わせたようなサービスで、仮想世界やゲームプラットフォームのために、パブリッシャーに「金融のレール」を提供する。Tiliaウォレットを使用することで、仮想世界からゲーム、パブリッシャー、NFT取引所は、クリエイターやその他の人々が仮想通貨を不換通貨に交換することを合法的に可能にする。

UplandはNFTをベースとした仮想不動産取引のエコシステムで、プレイヤーは現実世界の住所にマッピングされた仮想不動産を売買し、モノポリーのように遊ぶことができる。Tiliaとの提携以前は、Uplandのプレイヤーは、他のプレイヤーに自分の仮想不動産を米ドルで販売することができなかった。これは、あるユーザーから他のユーザーへの資金移動をするためには、米国およびその他の管轄区域において資金移動のライセンスが必要だからだ。

Zenescope MetaverseはSecond Lifeの中では新しい・Image Credit: Linden Lab

Second Lifeでは、ユーザーの興味を引くため、それ以外のことも手がけている。コミックブック出版社のZenescope Entertainmentとライセンス代理店を務めるEpikと契約を結び、暗く歪んだ世界観を持った作品「Grimm」の世界観をSecond Life内のZenescope Metaverseとして実現した。

ファンたちは、Zenescopeのコミックブックやグラフィックノベルで人気を博した古典的なキャラクターたちと対話し、シナリオを演じ、さまざまなストーリーを追うことができるようになっている。このバーチャル体験では、シンデレラ(通称:シンディ)が登場する。シリアルキラー・プリンセスはミニシリーズに登場する主人公だ。それ以外にもBelle: the Beast Hunter、Mad Hatter、Jabberwockyたちも登場している。Zenescopeのファンは約7,000万人で、現在、Second Life内で購入できる50種類のデジタルアイテムを用意している。

Oberwager氏は、これをきっかけにSecond Lifeにおけるブランドやエンターテイメントのパートナーとのコラボレーションが数多く始まるだろうと語っていた。そして、これを機に一騒ぎ起こしたいとも思っているようだ。

「メタバースは今、注目の的です。Second Lifeは先駆者ですが、多くの人は今でも生き生きとしていることを知りません。他のゲーム会社と同じように、我々もコロナ禍の影響を受けました。しかし今、我々はこの混乱を脱したタイミングで再浮上のチャンスを得たのです。これは私たちにとって非常に魅力的なことなのです」(Oberwager氏)。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

Second Lifeに再来したメタバースの波:改良を重ねる(3)

SHARE:

(前回からのつづき)Second Lifeはを変えたもの、それは他のゲームと同じくパンデミックの影響だ。現実の世界での出会いが困難になったため、仮想世界に入って交流するユーザーが増えたからだ。 「Second Lifeが復活したのは、どこにも行けなくなったからです。わずか3年半前には、Robloxと同じ規模だったのですから。しかし今、再び成長し始めています。今では再エンゲージメント戦略により多くの…

セカンドライフは18歳を迎えた・Image Credit: Linden Lab

(前回からのつづき)Second Lifeはを変えたもの、それは他のゲームと同じくパンデミックの影響だ。現実の世界での出会いが困難になったため、仮想世界に入って交流するユーザーが増えたからだ。

「Second Lifeが復活したのは、どこにも行けなくなったからです。わずか3年半前には、Robloxと同じ規模だったのですから。しかし今、再び成長し始めています。今では再エンゲージメント戦略により多くの人々が交流しはじめています」。

Second Lifeはその歴史の中で実に7,000万人以上ものユーザーが自分のアカウントを作成している、これは可能性がある。Oberwager氏はこう語っていた。

「私たちはSecond Lifeを再開するわけではありません。ただ改善し集中しているだけです。メタバースに関するあらゆる会話の中で、私たちの名前は先駆者として再び出てきました。そのため、コンバージョン率も上昇しているのです。私たちは年間6億ドルの経済規模があります。私たちは、クリエイターがお金を稼げるような方法でサポートしているからです。私たちの目標は、クリエイターにとって最もコストのかからない場所になることなのです」。

Second Lifeにはライブビデオのストリーミングがサポートされているので、人々は仮想映画館で一緒にショーを見ることができる。それについて問題が発生した場合の対処法も確立されている。Lindenn Labは言論の自由を支持している。しかし無法なメタバース市民に対する対処方法も考えている。

「Second Lifeでは、ユーザーが作成した不正なコンテンツや模倣品などの問題に長い間対処してきました。ここには、米国特許商標庁と同様の機能を持つ、独自のSecond Life版・特許商標庁があります。AIを使用してこうした窃盗を阻止し、ブランドからのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)による削除要請にも対応しています。悪質な行為を取り締まるための覆面アバターもいるのです」。

「我々にもルールがあり、それを破れば問題になる」とOberwager氏は言う。「これこそが契約社会と呼ばれるものだ。もし誰かに嫌がらせをすれば、システムから追い出される」。

次につづく:そして新たな可能性「Tilia Pay」へ

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

Second Lifeに再来したメタバースの波:生き残りを賭けて(2)

SHARE:

(前回からのつづき)Second Lifeはその粘り強さにもかかわらず、メインストリームになることは叶わなかった。実際、Second Lifeは複数のリーダーたちがバトンを繋いでいる。 Philip Rosedale氏は、ドットコム・バブルの最中の1999年にLinden Labを設立した。そして、バブル崩壊の余韻が残る2003年、なんとかしてSecond Lifeの立ち上げに漕ぎ着ける。2008…

Second Lifeは経済規模が大きい/Image Credit: Linden Lab

(前回からのつづき)Second Lifeはその粘り強さにもかかわらず、メインストリームになることは叶わなかった。実際、Second Lifeは複数のリーダーたちがバトンを繋いでいる。

Philip Rosedale氏は、ドットコム・バブルの最中の1999年にLinden Labを設立した。そして、バブル崩壊の余韻が残る2003年、なんとかしてSecond Lifeの立ち上げに漕ぎ着ける。2008年に彼は退任し、Linden LabはMark Kingdon氏、Rosedale氏(この創業者は4カ月だけCEOに復帰した)、Bob Komin氏らがその後のCEOを歴任した。そして2010年、同社は大規模なレイオフを行った。

2010年からは、元EAの幹部であるRod Humble氏がSecond Lifeの魔法の一部をモバイルやその他のプラットフォームの新しいアプリケーションに持ち込もうとしている。しかしそれは上手くいかず、Humble氏は2014年に同社を去っている。2014年に引き継いだEbe Altberg氏は、Second Lifeの好調を支えた1人だ。彼はかつて「Sansar」と名付けられた「VR版Second Life」を作ろうとするも意図したような力強さは得られなかった。筆者はAltberg氏とは何度か会っているのだが、彼はSecond Lifeがまだ成功していることを人々が思い出す必要があることを強く主張していた。

Altberg氏は長い闘病生活に苦しみつつ、Second LifeをAmazon Cloudに展開し、スタッフを削減し、Sansarを売却し、最終的には2020年7月にOberwager氏とRandy Waterfield氏らの投資家グループにLinden Labを売却するなど、大きな転換期をなんとか乗り切ったのだ。

残念なことに、Altberg氏は6月に病気で亡くなってしまった。後任の会長に就任したObewager氏は、Altberg氏が会社を素晴らしい状態で残してくれたと語っている。Second Lifeは18年目を着実なものとして迎え、上半期の財務実績は10年以上ぶりに最高のものとなったのだ。

次につづく:改良を重ねる

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

Second Lifeに再来したメタバースの波:年間6億ドルを生み出す元祖・仮想世界(1)

SHARE:

メタバースという考え方がこれまで以上に話題になっている。私は昨日、コロンビア大学のコロンビア・ビジネス・スクールのSharad Devarajan氏のMBAクラスで、メタバースに関する講義を持つ機会に恵まれた(私は彼らにビットコインを買うようにアドバイスした)。 授業のリサーチで、さまざまなテーマの検索数を計測できる「Google Trends」でメタバースの状況を確認したところ、ここ1年ほどで爆…

Second Life is trying to get people to re-engage with it. Image Credit: Linden Lab

メタバースという考え方がこれまで以上に話題になっている。私は昨日、コロンビア大学のコロンビア・ビジネス・スクールのSharad Devarajan氏のMBAクラスで、メタバースに関する講義を持つ機会に恵まれた(私は彼らにビットコインを買うようにアドバイスした)。

授業のリサーチで、さまざまなテーマの検索数を計測できる「Google Trends」でメタバースの状況を確認したところ、ここ1年ほどで爆発的に増加していることがわかる。Facebook、Roblox、Epic Gamesなどの大企業がメタバースの胴元になろうと競い合っており、多くの企業がメタバース戦略について語っている。

しかし、だ。

18年前に誕生したSecond Lifeという仮想世界では、そのずっと前からメタバースであることが話題になっていた。Second Life(2003年にデビューした仮想世界)の生みの親であるLinden Labは今でも健在だ。Linden LabはSecond Lifeで稼いだ仮想通貨を米ドルに換金できる「Tilia Pay」と呼ばれるクロスプラットフォームの決済システムを用意することで、現代におけるメタバースの役割を果たそうと考えている。これは、小説「Snow Crash」「Ready Player One」のように、すべての仮想世界が相互に接続された宇宙、メタバースにとって非常に重要な要素なのだ。

Google Trendsでのメタバースに関する言及/Image Credit:Google

毎日のアクティブユーザー数が4,300万人を誇る「Roblox」のような「新しい」メタバース企業を称賛する現在、どうしてもSecond Lifeの存在を忘れがちになる。ちなみにSecond Lifeは年間6億ドルの国内総生産(GDP)を誇っている。これまでに20億以上のユーザー資産が作成され、毎日20万人のアクティブユーザーがいて、年間3億4500万件以上の取引が行われている。クリエイターへの報酬は年間8,040万ドル以上もある。ある時代に成功した企業が別の時代にも成功するのは非常に難しい。しかし、実はSecond Lifeは複数の時代を経ても成功しているのだ。

Linden Labの会長であるBrad Oberwager氏は、本誌GamesBeatのインタビューでこう語ってくれた。

「Second Lifeの18年前と現在を比較すると、世界はSecond Lifeに戻ってきているようです。誰もがSecond Lifeになろうとしている。これはとても興味深いことです。クリエイター経済の中でクリエイターのことを考えると、Second Lifeはいまだにリーダー的存在で、人々はお互いに直接支払いを受けています。私たちこそ、まさにその経済そのものなのです」。

次につづく:生き残りをかけて

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

10年起業家:世界を変えた「お節介」のワケ

SHARE:

2010年代を駆け抜けたグッドパッチとGunosy。まだスタートアップという概念もままならない2011年を前後して創業したこの2社は、とあるきっかけで出会い、成長のチャンスを得てそれぞれの存在価値を見出すようになる。学生たちが作ったアプリはやがて情報をつなぐインフラとなり、そのデザインをきっかけに次の扉を開いた起業家は上場を目指すことになった。 起業家の身の上にはその過程で何が起こり、どのように乗…

サービス開始当初のGunosy、グッドパッチはこのデザインを手がけたことで脚光を浴びることになる

2010年代を駆け抜けたグッドパッチとGunosy。まだスタートアップという概念もままならない2011年を前後して創業したこの2社は、とあるきっかけで出会い、成長のチャンスを得てそれぞれの存在価値を見出すようになる。学生たちが作ったアプリはやがて情報をつなぐインフラとなり、そのデザインをきっかけに次の扉を開いた起業家は上場を目指すことになった。

起業家の身の上にはその過程で何が起こり、どのように乗り越えていったのか。

本誌ではグッドパッチ創業者の土屋尚史氏と、Gunosy共同創業者であり、現在はLayerX代表取締役を務める福島良典氏にこれまでの10年を振り返っていただく機会を得た。これから数回にわたりこれまでの道のりをお伝えする。

まずは彼らの出会いと成長から話を始める。

東大生たちとの出会い

Gunosyを立ち上げた頃の関喜史氏、福島良典氏、吉田宏司氏(写真左側、手前から・グッドパッチ提供)

大阪でいくつかの仕事を経て、デザインに自分の仕事を見出しつつあった1人の青年がいた。若かりし頃の土屋氏だ。グッドパッチの創業は2011年9月。次の人生を求めて渡米したこの年から約9年後の2020年6月、デザイン企業として同社は東証マザーズへ上場を果たすことになる。

そのきっかけとなったのがこの渡米で出会った1人の東大生、Gunosy共同創業者の関喜史氏だ。関氏はシリコンバレーで出会ったこの起業家にある一通のメッセージを送る。全てはここから始まった。

「9月に(シリコンバレーから)東京へ戻ってきて、グッドパッチを創業することになるんですけど、創業の1カ月後ですかね。サンフランシスコ滞在時にシリコンバレーを一緒に旅してた関さんからメッセージが届いたんですね。大学の友人たちとサービスを作ったので登録してください、と」(土屋氏)。

2011年当時はスティーブン・ローゼンバウム氏の書籍「キュレーション」が日本語版としても発行され、コンテンツ発見の新たな体験が模索されていた頃だ。それまでオンライン・ニュースの情報収集と言えばRSSリーダーが主流だったが、この年を皮切りに日本でもさまざまなニュース・アプリが登場することになる。

土屋氏のメッセージに届いた「Gunosy」はそのひとつだった。彼は「ここに当時のトップページがあるんですけど」と、学生たちが作ったサイトを見せつつその時の衝撃を語る。

「当時、シリコンバレーにも似たようなニュースキュレーションのサービスがあって、おおって感動したのを覚えてます。ただ、とにかくサイトデザインがヤバかった(笑。関さんにこれ面白そうなんだけどデザイン大丈夫?って聞いて。それで開発した福島さん、吉田(宏司)さん、関さんの三人と話をして、じゃあ自分がやろうかと。さすがに大学生からお金取るわけにいかないからいいよ、タダでって」(土屋氏)。

iPhoneが登場し、スマートフォンシフトがこれから起ころうとする中、デザインが整ったGunosyは瞬く間にユーザーを集め、数万人が利用する人気アプリに成長した。そしてそのデザインを手がけたグッドパッチの元に仕事の依頼が舞い込むようになり、土屋氏は創業からわずか2年で事業を軌道に乗せることに成功する。

世界を変えた「お節介」のワケ

東大生3人が作ったGunosyの最初のサイト。パワーポイントでデザインした

ところで立ち上げの際、Gunosyはあくまで東大生のプロジェクトであり、法人化はもとよりビジネスモデルも何もない、純粋な「興味」で始まっている。福島氏は開発当初をこう振り返る。

「本当に法人化とか考えてなくて、創業者3人とも大学院まで今で言うAIですね、機械学習とかウェブマイニングとかの研究をしていて。3人ともITサービスやアプリが大好きで、何か作りたいよねみたいなノリだったんです。

ただ、それだけで作ってもつまらないから、自分たちが困っていることや研究した内容を使って何かできないかなというのは考えてました。それで共通項として出てきたのが情報収集だったんです。当時から情報は氾濫していて、それを何とかフィルタリングしてニュースを送るサービスにできないだろうかと」(福島氏)。

1万件のタイトルよりもおすすめされた10件の情報の方が価値があるーーそれなら自分が使いたい。そう考えた3人は「最初のユーザー=制作者」という考え方でアルゴリズムの開発に着手する。「今日のニュースどうだった」を繰り返し調整し、サイトは見よう見まね、ツールはパワーポイントで作った。

筆者はふと、土屋氏になぜ事業にするつもりもない学生たちのプロジェクトの手伝いをしようと思ったのか尋ねてみた。

「直感ですね。関さんたちは正直、出会った当時はあまりよく知らなかったんですが、大学院ですごい研究をしているということだけは聞いていました。あと、RSSリーダーで情報収集するということの課題は自分も感じていたんです。日本の東大というトップの学生3人がアルゴリズムを組んでニュースサービスを作っている。その時、直感的に日本からもしかしたらグーグルのような企業が生まれるのかもしれないなと思ったんです。

シリコンバレーに行ってたこともあって、当時のインターネットサービスってスタンフォードの学生が中退してスタートアップした、というストーリーをよく読んでいて、もしかしたら同じような未来が見えるのかもしれないと。だから手弁当でやるよ、と言ったんです」(土屋氏)。

土屋氏の予想はGunosyが法人化したことで半分当たることになる。予想外だったのは学生たちだけでの起業ではなかった、という点だ。

Gunosy、法人化へ

写真中央:木村新司氏

Gunosyは2011年10月に産声を上げ、その翌年の12年10月に法人化することになる。事業にすることを考えていなかった福島氏ら3人の学生に転機が訪れたのは1人の人物、現在、Gunosyの会長を務める木村新司氏との出会いだ。

木村氏もまた福島氏らと同じく東大出身で、2007年にモバイル・アドネットワークの先駆けとなるアトランティスを創業している起業家だった。Gunosyが生まれた2011年に木村氏は同社をグリーに売却し、彼もまた土屋氏と同じく、東大生が作ったこのニュースキュレーション・サービスに新たな可能性を見出そうとしていた。

Gunosyを事業化するにあたっての課題はマネタイズモデルだ。未成熟なスマートフォンアプリの市場でユーザー課金は期待が薄い。しかし木村氏が経験した広告技術を組み合わせれば、勝ち筋が見える。そうして彼らは手を取り合うことになった。

ただ、福島氏は見えない未来にそこはかとない恐怖も感じていたようだ。

「やっぱり最初はビジネスになるなんて全く思ってなかったですよ。当時、映画「ソーシャルネットワーク」ってあったじゃないですか。自分たちがそういう風になっていくなんて想像できなかったですね。まあ一言で言えばビビってたんですよ。

一年ぐらいかな、法人化とか考えずに卒業まで時間あったので、会社にした方がいいとか言われたんですけど、一旦、自分たちにそういう自信がないから社会人になってもサービスを続けられるように改善を続けていこう、という話はしてました。

ただ、思ったよりもユーザーがついてくれた。今思えば大した数字じゃないですよ。けど、当時の学生からするともの凄いインパクトがあった。多分、数万人とかのユーザーがアクティブな状態だったんですが、それが凄いことかどうかもよく分かっていなかったですね」(福島氏)。

自分たちの困りごとと研究のために作ったアプリが「当たった」。いや、当たったかどうかも分からないまま、彼らは木村氏と出会い、いよいよ自分の将来を真剣に考え出す。当時、就職先が決まっていた福島氏は冷静にスタートアップに飛び込むリスクとメリットを天秤にかけてひとつの答えを導き出す。

「いろいろ考えた時、スタートアップに飛び込んでもリスクがないなって思ったんです。自分たちがやってみた結果、その一年ですごい技術力もつきましたし、普通に働くよりもいろんな意思決定がいっぱいできたんです。世の中では新卒のレールを外れると大企業行けなくなるとか言うんですが、今は明確にそれが嘘だって自信持って言えます。

当時はそこまでの確信はなかったですけど、起業したことで大企業に行けなくなってもいいや、何とかなるだろう、と。逆にここでやらなければ自分が老人になった時、似たようなサービスが日本から出てグーグルみたいな会社ができました、それを自分以外の人間がやっていたとしたらもの凄い後悔するだろうなと」(福島氏)。

その感情に気がついた学生3人は木村氏と共に動き出す。学生プロジェクトではない「社会の公器」としてのGunosyを立ち上げることになった。

次につづく/10年起業家:ギアチェンジの時

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

業界トッププレーヤーに聞いた、東南アジアのゲームスタートアップ最新トレンド

SHARE:

Golden Gate Ventures の最新レポートによると、今後10年間で、メディアとエンターテインメントは、東南アジアの投資先として最も魅力的な分野の一つになるという。それは、この地域におけるスタートアップのイグジットの数からもすでに明らかだ。Crunchbase によると、これまでに行われた合計80件のイグジットのうち、メディアとエンターテインメントは4番目に多いイグジットを記録している…

CC0: Dewang Mhatre via Pixahive

Golden Gate Ventures の最新レポートによると、今後10年間で、メディアとエンターテインメントは、東南アジアの投資先として最も魅力的な分野の一つになるという。それは、この地域におけるスタートアップのイグジットの数からもすでに明らかだ。Crunchbase によると、これまでに行われた合計80件のイグジットのうち、メディアとエンターテインメントは4番目に多いイグジットを記録している。

エンターテインメントの中でも、ゲームは世界的に最も規模が大きく、最も広がりのある産業だ。2021年の時点で、ゲームプレーヤーの数は30億人という驚異的な数字になり、これは世界人口の約40%に相当する。Newzoo の予測では、今年の世界のゲーム市場は1,758億米ドルの収益が見込まれている。Research And Markets の調査によると、東南アジアに関しては、市場は年平均8.5%の成長が見込まれている。

ゲーム業界はどこに向かっているのか、そしてこの活況を呈している業界の主要なトレンドは何なのか。

e27 では、地域で最も急成長しているメディアパブリッシャー SHAREit、シンガポールのソーシャルメディアユニコーン BIGO、NFT を採用した人気ゲーム「Axie Infinity」を所有するベトナムのブロックチェーンゲームデベロッパー Sky Mavis など、いくつかの市場プレーヤーに話を聞いた。

<関連記事>

パンデミックに煽られた行動変化:モバイル、e スポーツ、ライブストリーミング

2019年の世界成長率で1位となったこの地域のモバイルゲームは、スマートフォンの高い普及率を背景に、その存在感を示した。この勢いは、新型コロナウイルスによって引き起こされたロックダウンの延長により、近年さらに加速している。モバイルゲームは、家に閉じこもっている人たちにとって最も現実的な娯楽として注目されている。

モバイルコンサルタント会社 App Annie によると、2021年第1四半期に世界中のユーザーがダウンロードしたゲームの数は、2019年第4四半期と比較して30%増加した。また、モバイルゲームへの支出は、2021年第1四半期に1週間あたり17億米ドルを記録し、パンデミック前の水準から40%増加した。

さらに、ベトナムやフィリピンなどの新興市場では、モバイルゲームへの消費者支出が50%以上の伸びを示している

SHAREit Group のパートナー兼グローバルバイスプレジデント Karam Malhotra 氏は、次のように述べている。

一時は、ゲームは社会的に孤立するものと考えられていたが、監禁されている世界中の人々が、画面の向こう側にコミュニティのつながりを求める手段としてゲームに目を向けた。

SHAREit Group のパートナー兼グローバルバイスプレジデント Karam Malhotra 氏
Image credit: SHAREIt Group

このように、ソーシャルゲームは、e スポーツの爆発的な成長を後押しする注目すべきトレンドとして浮上している。

東南アジアのゲーマーは、コミュニティプレイを好む傾向が強く、有利な環境や政府の政策も相まって、この地域での e スポーツの盛り上がりに貢献している。(Malhotra 氏)

Research And Markets に掲載された調査結果によると、人々は現実のスポーツをスタジアムに行って見ることができないため、アジアにおける e スポーツの視聴者数は2020年には6億1,840万人となり、2019年に比べて21%増加している。

e スポーツが主流になったのは、シンガポールを拠点とするライブストリーミングプラットフォーム「BIGO」が、パキスタンの情報放送省や Garena と協定を結び、若いゲーマーの業界参入を支援・促進するためのイニシアチブを立ち上げたことによる。

ゲーマーたちは、Bigo Live のようなグローバルなライブストリーミングプラットフォームを利用して、リアルタイムのゲームストリーミングを観察し、紹介し、つながり、コンテンツを作成している。Bigo Live で最もバイラルなゲームとしては、Bang Bang(MLBB)、PlayerUnknown’s Battleground(PUBG)、Free Fire、Fortnite、Call of Duty、Valorant などがある。

Bigo バイスプレジデントの Mike Ong 氏は、次のように述べている。

ライブストリーミングは、ゲーマーが e スポーツを観戦したり参加したりするための人気フォーマットとして登場しただけでなく、ゲーマーがコミュニティを構築してつながりを持つための重要なプラットフォームでもある。

Bigo バイスプレジデントの Mike Ong 氏
Image credit: Bigo

Ong 氏は、ロックダウン・ブルースの影響で、より多くの人々がデジタルプラットフォームを利用し、ゲームのライブストリームを見るようになったと付け加えた。ゲームのライブストリーミングを楽しむユーザの数は、2019年から2020年にかけて、世界的に11.7%以上の増加が見られた。

ユーザは、コンテンツ制作者に有利なライブストリーミングのようなビデオファーストのソーシャル体験にシフトしている。ユーザは、プロダクションが制作した伝統的なコンテンツではなく、コンテンツ制作者を直接認識するモデルに移行し始めており、本物の体験へのシフトに気づいている。(Ong 氏)

Bigo によると、ゲームのライブストリーミングでは、インドネシア、ベトナム、タイが上位にランクインしている。

<関連記事>

VC を魅了するブロックチェーンゲーム

こうしたユーザー行動の変化は、テクノロジーを駆使したゲーム体験のニーズも高めた。特に、近年のブロックチェーン技術の進歩は、ブロックチェーンゲームのポジティブなモメンタムを育んできた。

2018年にリリースされたベトナムのスタートアップ Sky Mavis が開発したブロックチェーンゲーム「Axie Infinity」は、東南アジアで開発された初の NFT を採用したゲームとなった。8月にスタートアップは、このゲームが7月に過去最高の80万人のデイリーアクティブユーザを獲得し、まもなく100万人の大台に乗ると発表した。

<関連記事>

NFT を採用したゲーム「Axie Infinity」
Sky Mavis

それ以来、ゲームとブロックチェーン技術の組み合わせは、ゲーマーがゲーム内の真のアイテム所有権を利用することで、より人気を集め、投資を集めている。

今年初めには、ベトナムのスタジオ Topebox が開発したゲーム「My DeFi Pet」も、Axia8 Ventures、OKEx Blockdream Ventures、OKEx から100万米ドルの投資を受けた。このゲームは、DeFi(分散型金融)と非ファンジブル・トークン(NFT(非代替トークン)の機能を持ち、プレイヤーはプレイ中にトークンを獲得したり、イベントに参加して報酬を得たり、ゲーム内のキャラクターを取引して利益を得たりすることができる。

先月、仮想競馬プラットフォーム「Zed Run」を所有する Virtually Human Studio は、メディアとテクノロジーに特化した投資会社 TCG Capital Management がリードするシリーズ A ラウンドで2,000万米ドルを調達したばかりだ。このラウンドには、Andreessen Horowitz と Red Beard Ventures も参加した。

これらの取引は、エンターテインメント、ゲーム、NFT の分野で活躍する企業に対する投資家の関心の高さを示している。

しかし、このような投資は、従来の VC や CVC だけに限られたものではあらない。個人の仮想通貨投資家も、ゲームのガバナンス・トークンに賭けて、その発展を後押ししている。Axie Infinity のトークンは、1ヶ月前には1トークンあたり3~4米ドルだったものが、現在では約70米ドルの価値がある。

ゲームデザインと経済デザイン

ブロックチェーンは、モバイルゲームのマネタイズと仕組みを変えている。それは、従来のゲームとは異なり、プレイヤーが自分のゲーム体験を NFT でマネタイズすることを可能にし、機会領域を形成している。(SHAREit の Malhotra 氏)

Sky Mavis CEO の Trung Nguyen 氏は、成功例として、Axie Infinity はゲームデザインと経済デザインの両方を兼ね備えていると述べている。「Play-to-earn」モデルにより、ゲーマーはデジタル資産の所有権を確認し、仮想アイテムのためのトークンでデジタル価値を創造し、それを現地通貨に交換したり売買したりすることができる。

とはいえ、ブロックチェーンゲームと従来のゲームのデザインには、いくつかの矛盾点がある。従来のゲームは開発者への一方的な収益を最大化することを目的としているが、ブロックチェーンゲームの分散型プラットフォームは真の経済として機能し、アプリ内取引とユーザの創造価値の合計を最大化することで、エコシステムが拡大する。(Nguyen 氏)

同氏の見解では、魅力的なゲームプレイをデザインし、健全なゲーム内経済を確保することで、これらの相反する要素のバランスをとることが、ユーザベースの確保と拡大につながるとのことだ。

また、ブロックチェーンゲームは、金銭的な利益や貯蓄を得るための代替的で容易なアプローチとなっている。ゲームは、テクノロジーを普及させ、「ファイナンシャル・インクルージョンを高める」ための「アブストラクタ」として機能する。

これは、パブリッシャーに以前よりも幅広い視聴者にリーチするための直接的な手段を提供するプラットフォームとしてのモバイルの台頭と相まって、開発者にはジャンル、フォーマット、マネタイズモデルにおいて創造性を発揮する力を与えている。

例えば、ゲーム内の没入型広告はより洗練されたものになっており、ゲーム技術と視聴者を深く理解する必要がある。広告は、デジタルの世界にシームレスに存在し、決して邪魔にならないものでなければならない。

また、この2年間で、すべての地域の開発者が、広告のみの収益化戦略からアプリ内課金を含めた収益化戦略へとシフトしてくる。

広告をクリエイティブに統合したパブリッシャーは、解約率が低く、ライフタイムバリューとリテンションが高くなる。(Malhotra 氏)

また、ゲームのストリーミング配信の場合は、視聴者からのギフトやアプリ内通貨によって、クリエイターの仕事ぶりを評価することができる。

当社のユーザは、お気に入りの配信者にさまざまな形のバーチャルギフトを贈り、受け取った配信者はそれを現金に換えることができる。これは、配信者への恩返しの気持ちを育み、クリエイター経済の最前線に立つための継続的な取り組みの一環だ。(Bigo の Ong 氏)

より広い意味で、人々のゲーム体験の民主化は、今後数年間のこの分野の成長を後押しする最も重要なトレンドとなっている。

我々は、カジュアルゲーマー、ソーシャルゲーマー、ミッドコアゲーマー、ハードコアゲーマー、プロゲーマーなど、ミレニアル世代のモバイルゲーム体験を民主化している。(Malhotra 氏)

【via e27】 @E27co

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

Facebookが放つ「仕事向け」メタバース:Zoom後のリモートワーク(4/4)

Zoom後のリモートワーク (前回からのつづき)Time Magazine誌の技術・ビジネス担当編集者であるPeter Allen Clark氏もまた「プライバシーやハラスメントに関する懸念が残る」と同様の感想を持つひとりだ。彼はアプリをデモする機会を得たのだが、同じくHorizon Workroomsを体験したVentureBeatのDean Takahashiと同様、オーディオ体験を高く評価し…

Image Credit : Facebook

Zoom後のリモートワーク

(前回からのつづき)Time Magazine誌の技術・ビジネス担当編集者であるPeter Allen Clark氏もまた「プライバシーやハラスメントに関する懸念が残る」と同様の感想を持つひとりだ。彼はアプリをデモする機会を得たのだが、同じくHorizon Workroomsを体験したVentureBeatのDean Takahashiと同様、オーディオ体験を高く評価していた。そしてそれ以上に今の状況が変化することに興味を持っていたようだった。こう感想を語る。

「考えてみると、あの空間であの技術を使ってかなりいい経験ができたと思います。ただ、これは目新しいだけに過ぎないかもしれないのでまだ判断は難しいかな。確かにリモートワークを始めて1年半が経ち、電話会議を体験する新たな方法を手に入れたことは正直なところ新鮮でした」。

彼は全ての電話会議をこれにするかは別として、いくつかのコールは試してみたいと語っていた。

パンデミック(そしてLamm氏はザッカーバーグ氏がメタバースという言葉を「共同利用」したと指摘していたが)という背景がなければ、今回の発表がこれほど話題になるとは考えにくい。実際、Horizon Workroomsに対する好意的な反応は、パンデミックや遠隔地での共同作業の代替手段を求める声が多かったからだ。実際、NewYork Times紙のテクノロジー・レポーターであるTaylor Lorenz氏は、このアプリの発表後にこんなツイートを残している。

「私は少数派かもしれませんがZoomよりもこちらの方が好きです。確かに物理的な存在感や共有スペースには、Zoomよりも明らかに劣るものがあります。一方で、もし私たちがリモート優先の未来に向かっているのであれば、特にクリエイティブな仕事をしている時はこういった共有スペースが今後の鍵を握ることになるでしょう。少なくとも、正しい方向への一歩だと思います」。

データ分析会社Sisu Dataの創業者であるPeter Bailis氏は本誌に対し「FacebookのHorizon WorkspacesやGoogleのProject Starlineのような、より没入感のある体験には大きな期待が持てます」と語る。Project Starlineとは、3Dで目の前に相手がいるように見えるビデオチャットツールのことだ。

「対面でのコラボレーションには再現が難しい具体的な何かがあります。このVRアプローチは、フルタイムの対面式ワークプレイスに必要な時間、手間、費用を必要としない、魅力的な中間的選択肢を提供することができる」とし、現在のリアルな場所はまだ、仮想的な仕事には最適化が進んでいないとその考えを示した。前出のDorkin氏もVRでの仕事について同意していた。

「VRツールは人々を結びつける可能性を秘めていると思います。しかし、私はFacebook以外の誰かが独自のバージョンを開発するのを待とうと思っています」(Dorkin氏)。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

Facebookが放つ「仕事向け」メタバース:Facebookが抱える問題(3/4)

Facebookが抱える問題 (前回からのつづき)Facebookはバーチャルリアリティに早くから取り組み、2014年にヘッドセットのスタートアップ企業であるOculus VRを20億ドルで買収している。しかし、Facebookといえばメインのソーシャルネットワークにおける数々の問題、特にプライバシーに関する問題がこの企業のあらゆる部分に及んでいることが広く知られている。Lamm氏がああいった反応…

Image Credit: Facebook

Facebookが抱える問題

(前回からのつづき)Facebookはバーチャルリアリティに早くから取り組み、2014年にヘッドセットのスタートアップ企業であるOculus VRを20億ドルで買収している。しかし、Facebookといえばメインのソーシャルネットワークにおける数々の問題、特にプライバシーに関する問題がこの企業のあらゆる部分に及んでいることが広く知られている。Lamm氏がああいった反応に出てしまったこともよくわかる。というのも本誌、VentureBeatがHorizon Workroomsについて話を聞いた多くの企業創業者、経営者、従業員も同様の反応だったからだ。このコンセプトに興味を持つ人も多いが、同時にこれがFacebookならば別、ということなのだ。

「Facebookのデータプライバシーに関する過去の経緯を考えると、彼らがこの取り組みを牽引するのに適しているとは思えません」。ーーこう語るのは従業員13人のオールリモート企業、Streamlyticsで代表を務めるAngela Benton氏だ。同社はユーザー提供型のデータサービスを開発している。

彼女はメタバースのアイデアを「非常に力強い」と感じており、Horizon Workroomsのようなバーチャルなリモートワーク環境が普及すると信じている一人だ。しかし、彼女は非中央集権的な未来を見据えており、メタバース型企業に関連するユーザーデータをFacebookで一元管理すべきではないと考えている。彼女は「自分のチームのために投資するようなものではない」と断言する。

BiggerPocketsの創業者であり、現在は複数のスタートアップ企業にアドバイスを提供しているJoshua Dorkin氏もまた、Facebookには信頼という面で問題があり、それが企業がHorizon Workroomを採用する意思に影響を与えるだろうと語る。

「トラッキング、プライバシーの侵害、偽の情報など、人々がFacebookに対して抱いている信頼の問題を考えると、あらゆる企業がこの新たなVR技術にすぐに飛びついて採用するとは考えにくいでしょうね」。

次につづく:Facebookが放つ「仕事向け」メタバース:Zoom後のリモートワーク(4/4)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

 

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録

Facebookが放つ「仕事向け」メタバース:本当に必要なの?(2/4)

SHARE:

職場のためのVR (前回からのつづき)バーチャルな世界に身を置くことで「Zoom疲れ」を解消するというコンセプトは別に新しいものでもないし、実践しているのはFacebookだけではない。Microsoftは3月に「Mesh」を発表している。これはARを使った仮想空間で同僚がアバターと対話し、「オブジェクト」を渡すこともできるというものだ。また、ホログラムやアバターなどを使って仮想ミーティング市場の…

Image Credit: Facebook

職場のためのVR

(前回からのつづき)バーチャルな世界に身を置くことで「Zoom疲れ」を解消するというコンセプトは別に新しいものでもないし、実践しているのはFacebookだけではない。Microsoftは3月に「Mesh」を発表している。これはARを使った仮想空間で同僚がアバターと対話し、「オブジェクト」を渡すこともできるというものだ。また、ホログラムやアバターなどを使って仮想ミーティング市場の一角を占めようとしているプレーヤーとして「Holopod」や「Imverse」、「Spaceform」などもある。「Spatial」も競合で、Oculus Quest 2でホログラムスタイルのバーチャルミーティングを可能にする製品を提供している。

今年初めにエリクソンは、2030年までに「非物質化されたオフィス(dematerialized office)」が定着するというレポートを発表している。これは、人々が仕事上のやり取りをすべて仮想空間で行うようになることを意味する。また、IDCは最近、ARとVRに対する全世界の支出が、2020年の120億ドル強から2024年には728億ドルに拡大すると予測している。この数字には仕事用アプリ以外のものも含まれているが、世界のAR・VRへの支出のうち、商業的なユースケースが占める割合が高まっていることがわかる。アジア太平洋地域では商用のVR/AR技術への支出が、すでに消費者向けの支出を上回っている。主なユースケースはトレーニングや産業用メンテナンス、小売店でのショーケースだ。

ザッカーバーグ氏は説明会の中で、Facebookの従業員は約半年前からWorkroomを社内会議に利用していると明かしている。一方で、Facebookの従業員のほぼ5分の1にあたる約1万人がVRやAR関連のプロジェクトやテクノロジーに取り組んでいるものの、一般の人々はそれほど興味を持っていないというデータもある。ソフトウェアスタジオ「Myplanet」が最近実施した調査によると、職場でのVR利用は最も受け入れられていない用途のひとつで、回答者の49%がこのアイデアに不快感を示しているという。

一方でゲームや映画、教育、旅行、友人や家族との通話などにVRを利用は賛同者が多い。また、Cuban氏が言及している通り、たとえVRを愛している人であっても必ずしも長期的に常用するとは考えていない。

HashiCorpのイベント・体験型マーケティング担当ディレクターであるJana Boruta氏はVentureBeatの取材に対し、同社が最近実施した従業員サミットのために、ミーティングエリアやアクティビティを備えた仮想世界を作成したことを明かしている。そこで彼女は「デザインされた世界を従業員たちは、2Dのアバターとして実際の顔をスクリーンに映し出しながら歩き回ることができた」と説明していた。

しかし「お互いの近況報告も終えた1、2日もすればログインしなくなってしまった」とその結末を語る。彼女のチームは、人々がこの体験を楽しんでいることはわかったものの、お互いがつながるための永続的な手段としては使えないことも理解したのだ。その上で彼女はWorkroomへの疑問をこう語る。

「FacebookのHorizon Workroomsに対して私が抱いている疑問は次のようなものです。まず、同僚と一緒にVR環境で会議に参加することで、実際に何ができるのか?次に実際の顔や特徴を見るのと比べて、その人のアバターで意味のあるつながりをつくることができるのか?そして最後はこれはただの楽しいツールであっても、実際には気が散ってしまうなどのマイナスの結果をもたらす可能性があるのではないか、ということです」。

機械学習を手がける「Hypergiant」の創業者、Ben Lamm氏もまた、この製品に対して同様の直感的な反応を示している。

「現在、市場に出回っているコラボレーション・ビデオツールに比べて、本当に付加価値があるのかどうかわかりません。この製品の核心はOculus 2のハードウェア販売を拡大し、人々をFacebookの世界にもっと夢中にさせるための販売ツールでもあります。Facebookはこれまで歴史的に数々の失敗をしてきました。私は仕事人生をも支配される覚悟はありませんね」。

次につづく:Facebookが放つ「仕事向け」メタバース:Facebookが抱える問題(3/4)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録