コラム

宇宙ビジネスのトレンド全体像ーースタートアップ参入の現状と今後

本稿は独立系ベンチャーキャピタルSTRIVEによるものを一部要約して転載させていただいた。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。なお、転載元のSTRIVE Blogでは起業家やスタートアップに興味のある方々に向けて事業成長のヒントとなるコンテンツを配信中。投資相談はSTRIVE(公式サイト・Twitter)をチェックされたい 今日では、日本人起業家といった民間人による宇宙飛行のニ…

本稿は独立系ベンチャーキャピタルSTRIVEによるものを一部要約して転載させていただいた。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。なお、転載元のSTRIVE Blogでは起業家やスタートアップに興味のある方々に向けて事業成長のヒントとなるコンテンツを配信中。投資相談はSTRIVE(公式サイトTwitter)をチェックされたい

今日では、日本人起業家といった民間人による宇宙飛行のニュースが話題になり、また、GPSの位置情報確認など宇宙を介したサービスを誰もが日常的に使っています。さらに、多くのスタートアップ企業が宇宙ビジネスにチャレンジしていく中で、宇宙のもたらしてくれる価値が大きく高まりつつあります。今回は、宇宙ビジネスの全体感を掴み、スタートアップのビジネスチャンスの可能性を探ってみたいと思います。Let’s strive to know the Space Industry Trend!

宇宙開発・利用のこれまで

宇宙開発・利用は、アメリカ合衆国とソビエト連邦の対立を受けた冷戦期の宇宙開発競争の中で20世紀中盤から大きく進展しました。宇宙技術のミサイルなどの軍事利用への転用、国民の一体感の醸成や国威の発揚を目的に、国家が主導し巨大な航空・電気事業者等と連携し宇宙を開拓してきました。21世紀に入ると、政治情勢の変化などを受け、宇宙開発・利用は官需による牽引から民需への流れが強まります。異業種企業や多くのスタートアップ企業が宇宙ビジネスに参入する中で、新たに商用宇宙市場が拡大しました。このような潮流やそこで活躍する企業のことを「New Space(ニュースペース)」と呼びます。

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宇宙ビジネスのトレンド

「New Space」へのパラダイムシフトは、宇宙分野のイノベーションの進展、宇宙利用の低コスト化によるユーザー層の拡大、官から民という宇宙産業の商業化などのドライバーにより進んでいます。例えば、地球観測衛星が取得する膨大な量の画像データは、ビッグデータ処理やAIなどの進化によりソリューションビジネスに活用することができるようになりました。また、様々な新技術の登場により衛星やロケットの小型化、量産化が進んだことで、宇宙をより安価に用いることができるようになり、エンドユーザーが利用しやすくなっています。政府は自らが宇宙機器の開発・運用を手掛けるのではなく、宇宙ベンチャーを支援しながら彼らのサービスを購入するようになり、そのような下支えによりベンチャーキャピタルなどのリスクマネーが流入しています。

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スタートアップが参入する領域

一般的にスタートアップの多くは、地球に近く打上げ費用が比較的安価な低軌道上の宇宙開発や、地上で宇宙データ・通信などを活用するサービスを展開しています。スタートアップが参画する宇宙ビジネスのセグメントとして、下記が挙げられます。

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注目を集める小型衛星市場

特に注目を集めているのは、小型衛星に関連したビジネスです。数kgから数百kgの衛星で、通信、地球観測(リモートセンシング)、IoTなどのミッションを持ち、主に低軌道上で運用されています。政府が主導して開発・運用をする何トンもの大型衛星に比べ、短期間かつ低コストで作ることができ、かつ、打上げも相乗りなどを活用して安くすることができます。一方、低軌道の小型衛星が地球上をカバーできる範囲は狭くなるため、商業サービスへの利用のためには衛星コンステレーション(複数衛星による一体運用)を構築します。小型衛星の打上げは今後10年間で大きく拡大することが見込まれており、打ち上げられた衛星の数は2,962個から13,912個まで4倍近くになると予測されています

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こちらは、日本の宇宙スタートアップが製造する小型衛星です。光学センサや合成開口レーダ(SAR)による地球観測、デブリ(宇宙ゴミ)除去、人工流れ星などのミッションを持っています。質量は100kg前後なので、原付バイクくらいの重さになります。2011年から2020年にかけて、約300回のロケット発射によって約3千の衛星が打ち上げられました。小型衛星の多くが、他の衛星とのロケット相乗りでまとめて軌道上に届けられます。

小型衛星の活用事例

小型衛星のミッションの一つに、インターネット通信があります。世界では約30億人がインターネットに未接続と言われ、特にアフリカ、アジア、南米などの一部地域でインターネット利用率は依然として低いままになっています。衛星インターネットは、それらのデジタルデバイドの解消や、また、携帯電話の基地局設置が難しい山岳地帯、海や空の上などの通信手段としての活用が期待されています。地球全体をカバーするために、数千から万単位の通信衛星を宇宙空間に配備する必要があり、巨大な資本力を持つスタートアップ企業がこの分野に参画しています。

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地球観測(リモートセンシング)も小型衛星の主要なミッションの一つです。宇宙にあるため災害に強い、広い地域を観測できる、同一のセンサを用いて一定の時間間隔で長期間にわたり観測できるなど、衛星の利点を生かして、広大な農地の生育状況をモニタリングしたり、漁業資源や海洋環境の把握をしたりしています。IoT衛星は、船舶や航空機のステータスデータを受信したり、通信モジュールからの位置情報や土壌の乾燥具合などを受信したりするミッションを持ちます。天候情報などを含めた効率的かつ安全な船舶のルートの確保や、家畜や土壌の管理などの用途に用いられています。

宇宙ビジネスの可能性

宇宙ビジネス全体では、2019年度の市場規模は約40兆円にのぼっています。そのうち、政府予算など衛星以外の宇宙産業が3割弱、衛星関連の宇宙産業が7割強となっています。宇宙といえば衛星の製造やロケットの打上げのイメージが強いですが、実はその割合は全体の4.8パーセントほどに留まり、「スカパー!」などの衛星テレビや、GPS受信機などのセグメントが大きくなっています。

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証券会社大手Morgan Stanleyによると、2040年の宇宙ビジネスの市場規模は、消費者向けブロードバンドやインターネットなどのセグメントの伸長によりおおよそ100兆円にまで拡大すると予測されています。成長ドライバーとしては、衛星打上げ、衛星インターネット、深宇宙探査、月面着陸など10つが挙げられています。日本航空宇宙学会が発表した「JSASS宇宙ビジョン2050」によると、この30年間で宇宙旅行の人数が年間数百人から1,000人にまで増えるとされており、宇宙がより身近になっていく様子を見て取ることができます。

米国の宇宙ビジネス特化ベンチャーキャピタルのSpace Capitalは、Silicon Valley Capitalと共同で発表したレポートにおいて、今後、地球観測衛星や通信衛星のビジネスがGPS(全地球測位システム)と同様に大きく成長する可能性を指摘しています。GPSはアメリカ合衆国が運用する約30の衛星コンステレーションが提供しており、当初は軍事利用目的でしたが、1980年代から民間へ開放されました。2005年にGoogle Map及びそのAPIがローンチされ、その後、UberやTinder、Pokémon GOなど様々なアプリケーションが誕生し、40兆円を超える市場規模にまで成長しました。

GPSアプリケーションがいわゆる“カンブリア爆発”を起こしたように、地球観測や通信分野のアプリケーションが爆発的に誕生するかの期待が集まっています。

編集部注:続きはSTRIVEの元記事をぜひご覧ください。後半では多数のスライドと共に宇宙大国アメリカの現状から国内外の代表的な宇宙ビジネススタートアップ、課題などに触れています。

スタートアップがCTOを見つける方法、Reproに三代目・尾藤正人(BTO)氏就任

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ニュースサマリ:顧客とのエンゲージメントに特化したマーケティングプラットフォームのReproは6月7日、開発組織の責任者(CTO)に、ウノウやUUUMなどで活躍した尾藤正人氏(BTO氏)が6月1日付けで就任したことを伝えている。 尾藤氏はメルカリ創業者の山田進太郎氏が創業したウノウの初期メンバーとしてCTOを務めた後、2015年からUUUMの執行役員CTOとして上場までを牽引した人物。2020年に…

尾藤さんと平田さん

ニュースサマリ:顧客とのエンゲージメントに特化したマーケティングプラットフォームのReproは6月7日、開発組織の責任者(CTO)に、ウノウやUUUMなどで活躍した尾藤正人氏(BTO氏)が6月1日付けで就任したことを伝えている。

尾藤氏はメルカリ創業者の山田進太郎氏が創業したウノウの初期メンバーとしてCTOを務めた後、2015年からUUUMの執行役員CTOとして上場までを牽引した人物。2020年に同社を退任した後は技術顧問やエンジェル投資家として活動を続けてきた。今回のReproも顧問先のひとつとして関わり、2021年6月から執行役員CTOとして専任することとなった。

Reproはアプリを中心にユーザーのエンゲージメントを高めるためのコミュニケーションツールを提供する。現在世界66カ国にて利用実績があり、これまで累計で7,300件に導入されている。

話題のポイント:テクノロジー系のスタートアップにとって「CTO(最高技術責任者)」の存在は言うまでもなく重要なのですが、創業期からアイデアに溢れる優秀かつナイスガイな最高技術責任者がいるケースは稀です。こういった人材がスタートアップする場合のほとんどは、自身か共同で創業しますので、わざわざ約束されている条件を捨ててまで従業員として入る必要がないからです。

でも、優秀なエンジニアリングのチームがなけばそもそもテック領域でスタートアップすることは困難になります。今回のReproの件はうまくその矛盾を解決しているかもしれません。

きっかけは組織崩壊

Reproにはこれまで尾藤さんの前に2人のCTOがいました。初代が三木明さんで二代目が橋立友宏(joker)さんです。それぞれ現在もReproに在籍して別の役割を担っています。にも関わらず三代目のCTOを必要とした背景は組織崩壊がきっかけでした。

Reproは200名近くの体制になっているのですが、2019年頃から好調だったReproのセールスを拡大させるべく一気に人を採用したそうです。同社代表の平田祐介さんが成長を焦ったことが要因だったと振り返っていましたが、結果、彼がオフィスで挨拶した社員に「ところでどこの部署の方ですか?」と聞かれてようやく組織崩壊を認識するに至ります。

提供する機能が顧客の要求に合ってなかったり、新参と古参の価値観の違いなど、肥大化する組織がギクシャクしはじめ、ついに役員会の席で平田さんは経営から現場執行を掌握するよう要請を受けることになります。特に開発まわりのオーナーシップに不安があったため、当時のCTOだった橋立さんと立て直しをすべく、課題の洗い出しを実施します。

そこで出てきたのが技術組織のマネジメント、でした。

野武士のような初代・共同創業者

少し話を巻き戻します。創業期のReproをご存知の方であれば、彼らが野に放たれた野武士のような存在と聞いて納得いただけるのではないでしょうか。特に平田さんは眼光が鋭く、元コンサルの荒々しさを全面に押し出したファイティングスタイルが特徴的でした。共同創業した初代CTOの三木さんはそんな黎明期のReproを牽引した技術者です。

この時期のReproはとにかくはやくモノを作ることが最優先で、生き残ることが至上命題です。そしてReproはアプリマーケティングの分野で徐々に頭角を表すことに成功します。いわゆる市場に認められたプロダクト・マーケット・フィットの瞬間です。

しかしこの時期、喜ぶのも束の間、次の問題が発生します。スケールへの問題です。

写真左から初代で共同創業者の三木CTO、平田代表、二代目の橋立CTO、三代目となった尾藤CTO

6カ月を1カ月に変えた魔法使いの二代目(Joker)

苦労したReproがようやく日の目を見て、導入が順調に進んだある日のことです。2015年のIVS(※スタートアップのコンペティション)に登壇していた平田さんのスマホが激しくなり続けます。システムトラブルです。

Reproはそのサービスの性質上、トラフィックの大きいサービスに導入されれば、当然ながら同等の処理を走らせる必要があります。100万人が利用するアプリが導入すれば、その100万人に対してコミュニケーションが発生するからです。当時、20人ほどだったReproはそのスケールの問題に直面します。

そうです、サービスがトラフィックに耐えきれず止まってしまったのです。

アプリの稼働は待ってくれませんから、すぐに根本的な解決をする必要があります。平田さんは三木さんたちと解決策を検討しますが、スケールの問題に対応しようとすると6カ月はかかる、という絶望的な試算が出てしまいます。スタートアップにとって顧客に6カ月利用を待ってくれというのは無理ゲーです。

そこで平田さんと三木さんは意を決して、この問題を解決してくれるエンジニアを探すことにしたのです。とにかくチームのみんなにこのままではまずいので、自分たちが思う最高のエンジニアを探して欲しいと依頼します。思いつくまま、リストアップ作業を続けた結果、候補に挙がったのが二代目CTOとなる橋立(joker)さんでした。

しかし、橋立さんはエンジニアリングには興味があるものの、組織マネジメントは無理と断ります。

ただ、ここで引いたのではReproは止まったままです。平田さんたちは橋立さんに三顧の礼(詳細な条件は非公開)で頼み込み、ようやく承諾を得ることに成功します。結果、6カ月かかると試算された改修を二代目CTOは1カ月半でクリアし、Reproは倒産の難を回避することになったのです。

そして組織崩壊へ・・・(戻る)

昨年に30億円の大型調達を公表した平田さん

何もなかった時代にとにかく作った初代とスケールを支えた二代目。

Reproのエンジニアチームは代替えをしつつ、その時々の問題をクリアしてきました。三代目への代替えも次の課題に対応するものとして実施されます。ただ、今回の問題はエンジニアリングというより組織、経営の問題でもあります。そう、平田さん自身の課題にも向き合う必要があったのです。

平田さんは前述の通り、闘志を剥き出しにして戦うファイティングスタイルが特徴です。組織が少数精鋭、数十名の時期であればこういったトップ・ダウンも有効ですが、さすがに200名近くになるとそうはいきません。「どの部署でしょうか?」と社員の方に尋ねられるようになるわけです。

どうすれば自分のスタイルを変えられるのか、平田さんを変えた意外な答えが「コーチング」の体験だったそうです。詳細は割愛しますが、平田さんはコーチングを受けることで、自分が組織のボトルネックになっているということに気がついたそうです。

組織とどのように向き合うべきか、何が問題だったのかを把握しはじめた平田さんは橋立さんと共に、組織戦に強い指導者を探すようになります。方法は二代目を探した時と同様、思いつくままのリストアップ作戦です。その結果、UUUMを2020年に退職したばかりの尾藤さんたちが候補に上がった、というわけです。

スタートアップは本当に数年という短い時間で一気に成長します。経営陣はその数年という間に企業の成長に合わせて自身も変革する必要に迫られます。一方で人の成長は形式的に促せるものでも、実現できるものでもありません。

そういう意味でReproが辿ったケースは稀ではありつつ、理想的なモデルとも言えます。三代のCTOをうまくバトンタッチすることの再現性はないに等しいかもしれませんが、課題に合わせて柔軟に経営組織を変化させることができるかどうか、という視点は必要不可欠なのではないでしょうか。

現在、初代CTOを務めた三木さんはエンジニアリングスキルを活かし、エンタープライズを中心にデジタルマーケティング戦略の提案と実行を担うSolution Planning(ソリューション・プランニング)を管掌し、二代目CTOを務めた橋立さんは高い技術力を活かしChief Architect(チーフ・アーキテクト)として開発に専念するそうです。

Robinhood競合「Public」が音声配信開始、特化型コミュニティーで浸透するライブ音声/GB Tech Trend

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。 今週の注目テックトレンド 音声の話題を聞かない日がないというほど、特にClubhouseが登場してから盛り上がり続けている音声市場。これまでは音声アプリとしてプラットフォー…

ライブ音声配信サービスを立ち上げた「Public.com」。Image Credit: Public.com。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

音声の話題を聞かない日がないというほど、特にClubhouseが登場してから盛り上がり続けている音声市場。これまでは音声アプリとしてプラットフォームを狙うプレイヤーに注目が集まっていましたが、徐々に「機能」として音声サービスを提供する動きが増えるかもしれません。これはつまり、ユーザーにとってはどのアプリへアクセスしても音声対話をする場が用意される未来を示唆しています。

例えば最近ライブ音声配信機能を実装した「Public.com」で、同社はRobinhoodと競合している株式トレードアプリとして米国で有名です。2月には12億ドルの評価で2億2,000万ドルの調達を実施しました。すでにユニコーン企業へと成長を遂げており、登録ユーザー数は100万人を超えています。

今回実装された機能の正式名称は「Public Live」です。ローンチ当初は誰もがストリームを立ち上げて話せる場所ではなく、Public側が手配したモデレーターのトークイベントに参加できる形式になるとのことです。イベントは週3回を予定。

Publicはサービス立ち上げ時からコミュニティ志向の強いサービスで、投資家のポートフォリオを確認し合ったりできるなど、投資家同士の情報交換・コミュニケーションに重視したSNSとしての側面を持たせていました。この点、Robinhoodとの差別化を必死に図っており、今回のライブ音声配信機能もその一環と見られます。

最近ではLinkedIn、Facebook、Twitterらも、音声配信機能を自社のプラットフォームを強化できる重要な機能であるとし、サービスリリースへと漕ぎ着けています。彼らの動きに追従するように、Publicに代表されるような主要SNS以外のプレイヤーも音声サービスをローンチしはじめているのが現状です。それではPublicのような音声サービスとは一見関係のない企業に音声の波が来ている理由はなんなのか。2つほど考えられます。

1つは開発土壌が揃いつつある点です。これは開発者向けSDKサービスも出揃っている点が大きいでしょう。たとえば中国のスタートアップ「Agora.io」などを使えば、簡単にライブ音声配信機能を実装できる開発者向けSDKも市場に揃っています。

もう1つの理由として特化型コミュニティ志向が挙げられます。多くのライブ配信アプリで見かけられるように、ユーザーは自分の興味・関心のあるトピックを選択した上で、話しやすいストリームに招待される動線が引かれています。言い換えれば、同じ話題で話せる密なコミュニティを複数所有するのが音声プラットフォームなのです。

ただ、Publicのように特定のテーマに沿ってユーザーが集まるサービスで音声対話ができた方が、特にビジネスに関する情報収集であれば得することが多いと考えられます。特化型コミュニティを抱えるサービスが音声機能を他社SDKを通じて高速に立ち上げれば、大手プラットフォームに負けないほどのエンゲージメントを叩き出せる可能性が十分にあります。こうした実情を各市場のプレイヤーが理解し始めており、ハードルの高い動画などではなく、誰もが顔出しせずに配信できる音声に舵を切り始めているのが最新の市場動向であると感じます。

各市場にはニッチなテーマを持ったアプリが多く存在しています。彼らがテキストチャット機能に並ぶものとして、当たり前に音声配信機能を実装する日は遠くないかもしれません。

今週(5月25日〜5月31日)の主要ニュース

Grab、GoTo、Sea——東南アジアでスーパーアプリの覇権を握るのは誰か?【ゲスト寄稿】

本稿は、Golden Gate Ventures のマネージングパートナー Vinnie Lauria 氏による寄稿だ。「Entrepreneur アジア太平洋版(オンライン版)」に掲載された記事を、執筆者と発行者の了解のもと翻訳・転載する。 This article was first published in Entrepreneur APAC. <関連記事> ニュースレターの購読 注目すべき…

本稿は、Golden Gate Ventures のマネージングパートナー Vinnie Lauria 氏による寄稿だ。「Entrepreneur アジア太平洋版(オンライン版)」に掲載された記事を、執筆者と発行者の了解のもと翻訳・転載する。

This article was first published in Entrepreneur APAC.

<関連記事>


東南アジアでは、Grab と GoTo という、配車サービスをルーツとして IPO を目指す2つのデカコーンの競争が注目されている。しかし、実際に進行しているのは、世界でも有数の新興市場で、どちらのスーパーアプリが勝利を収めるかという、3つのバトルロイヤルだ。

Grab と GoTo の両社は、配車サービスやフードデリバリの枠を超えて進化している。Grab と GoTo は、配車サービスやフードデリバリだけでなく、モバイルフレンドリーな10カ国の ASEAN 地域であらゆる商品を販売するためのゲートウェイとなる、決済アプリという新たなコアを中心に未来を築いている。両社とも、シンガポールを拠点とする Sea という強力な第3の競合に直面している。

この興味深い問題は、誰が勝つかということではなく、どのようにして勝つかということだ。Grab、GoTo、Sea の3社は、すべてを支配するアプリクラスターの所有に向けて、それぞれ異なる道のりを歩んでいる。ここでは、3社のプロフィールを紹介し、5つの重要な戦略分野で各社がどのような地位を築いているかを見ていこう。

Image credit: kojinaka / 123RF

候補者

Grab は、2012年にマレーシアで設立され、その後すぐに本社をシンガポールに移し、バンコク、ハノイ、マニラなど、約300の都市圏で ASEAN 全体のプレゼンスを確立している。アプリ「GrabPay」を中心に、電子口座、ローン、保険などの金融商品を提供している。

  • 長所:幅広い地域での事業展開、各市場での現地事情に精通していること、全体的に優れたリーダーシップを発揮していること。
  • 短所:スーパーアプリの製品ポートフォリオに、2つの主要な要素が欠けていること。

GoTo は、GojekとTokopediaが最近合併してできた会社で、Gojekはバイクの運転手がストリートレベルの兵士であることから名付けられた。

  • 長所:GoTo は、商品の種類が圧倒的に多い。母国インドネシアの人口は2億7,000万人を超え、ASEAN の中では圧倒的に大きい。
  • 短所:GoTo はインドネシア以外ではあまり存在感がなく、熱心な競合参入者から本拠地のある市場を守らなければならない。

情報開示:Golden Gate Ventures は、Ruma Mapan の買収を通じて Gojek の小口株主となっている。また、Gojek のスピンアウト企業である GoPlay にも出資している。

Sea は、オンラインゲームの制作・販売会社Garenaを母体としている。Sea社は、多国籍ECプラットフォームのShopeeや決済アプリのSeaMoneyも所有している。

  • 長所:ニューヨーク証券取引所に上場している企業でありながら、収益性の高い人気のある2つの分野を持っていること。
  • 短所:??? 後ほど述べる。

5つの戦略的要素で候補者を採点

このスーパーアプリコンテストには、配車サービスとデリバリ、エンターテイメント、eコマース、決済アプリという4つの重要なビジネス競争分野がある。また、5つ目の「無形の領域」は、持続的なリーダーシップとビジョンを持つ創業者 CEO の存在が、全体として戦略的に価値があるとされている。以下に、それぞれの要素が重要である理由と、それぞれの要素について私が Grab、GoTo、Sea をどのように評価するかを示する。ここでは、1点を「完全に準備ができている」、0点を「全く準備ができていない」、その中間を0.5点とするシンプルなスコアリングシステムを使用した。

配車サービスとフードデリバリ

配車サービスだけでは利益が出ないかもしれないが、路上に車が走っていることは、いくつかの点で利益をもたらす。配車サービスは、ユーザ数を増やすためのロスリーダー(利益度外視の目玉商品)になる。フードデリバリは、利益を生み出すとともに、自社の決済アプリを受け入れてくれる加盟店のネットワークを構築する。これらの活動は、人々が企業の活動を実際に目にすることで、リアル世界でのブランド認知度を高めることにつながる。

  • Grab:1点。同社と提携しているタクシーやバイクのドライバーが、遠く離れた何百もの都市で仕事をこなしている。
  • GoTo:1点。Gojek の最先端車両サービス(現在は四輪車も含む)は、現在のところ主にインドネシアであるが、広く浸透している。
  • Sea:0点。配車サービスは行っておらず、フードデリバリも前四半期に開始したばかりで、競合に大きく遅れをとっている。

ストリーミングエンタテインメント

Insignia Ventures Partners の Yinglan Tan 氏が昨年 Wiredfocus に語ったように、テックプラットフォーム企業は「ユーザが長期的にプラットフォームに関与し続けるための計画が必要」で、これはストリーミングエンターテイメントの役割だ。注目を集めると同時に、注目を維持することで、自ら収益を生み出し、人々があなたの会社をスクリーンに映し出すようになるのだ。

  • Sea:1点。Sea 傘下の Garena は明らかに勝者だ。なぜなら、オンラインエンターテインメントでは、ゲームがルールだからだ。多くの若者がモバイルに最初にインストールするアプリはゲームだ。ゲームはソーシャル性が高く、インタラクティブであるため、注目を集めることができ、参入障壁が高く収益性の高いビジネスである。
  • GoTo:0.5点。GoTo のエンターテイメントユニット「GoPlay」は、アジアの長編映画やビデオシリーズをストリーミング配信している。これらも人気があるが、競争相手はたくさんいる。独自のニッチを開拓するために、同社は現在、ジャカルタを舞台にしたアメリカのシリーズ「Gossip Girl」のリメイク版など、GoPlay オリジナル作品を制作している。また、若者に人気のライブストリーミングサービスも開始している。これは、形式的なものだが、GoPlay のコンテンツがインドネシア中心であるのに対し、Garena のコンテンツは ASEAN 全体にアピールしているので0.5点とした。
  • Grab:0点。数年前、Grab はアジアの配給会社である Hooq と提携し映画やシリーズに進出したが、Hooq は倒産してしまった。現在、Grab にはエンターテイメントはサービス提供していない。

e コマース

Amazon の e コマースモデルは、大量の在庫を事前に購入して倉庫に保管するため、薄利多売となる。アジアの企業は、売り手と買い手をマッチングさせる軽量なマーケットプレイスモデルを好んで採用し、大量生産で高収益を実現している。しかし、東南アジアでは e コマースの競争が激しく、Alibaba(阿里巴巴)傘下の Lazada やインドネシアのユニコーン Bukalapak など、さまざまな企業が参入している。

  • Sea:1点。Sea の eコマース部門 Shopee は、ASEAN 全域で事業を展開しており、昨年は Tokopedia の母国であるインドネシアで、Tokopedia を上回るサイト訪問者数を記録した。ASEAN の e コマース事業者のトップリストには、Shopee が必ず含まれている。
  • GoTo:0.5点。Tokopedia は、Gojek との合併に強力なプラットフォームを提供している。十分にサポートされた事業者ネットワークはさまざまな商品を提供し、総取扱高は伸び続けている。しかし、インドネシアでは5社以上のユニコーンがトップの座を争っているため、プラットフォームの国内重視の姿勢が弱点となっている。もし Tokopedia が国内での戦いに負けるようなことがあれば、その見通しは厳しいものになるだろう。
  • Grab:0点。e コマースはサービス提供していない。

決済アプリ

中国での Alipay(支付宝)の成功が示すように、広く使われている決済アプリを所有することは、3つの大きなメリットをもたらす。アプリは有料サービスの収益源であり、(Ant Financial=螞蟻金融が行っているように)金融商品を販売するためのハブであり、さらにアプリを利用する顧客のデータの宝庫でもある。このデータを分析することで、今後のマーケティングの対象としたり、顧客の消費力を判断したり、さらには新しい製品ラインやパートナーシップへの戦略的ベンチャーを形成したりすることができる。

  • Grab:0.5点。GrabPay は強力で、東南アジア全域で人気が高まっている。また、Grab はインドネシアの OVO やベトナムの Moca のようなローカルプレーヤーとの提携を積極的に行い、最大の露出を図っている。しかし、これは、顧客を所有し、データを利用してより多くのサービスを販売するという点ではアキレス腱である。Grab が優位に立つためには、現地の決済会社を買収する必要があるだろう。
  • GoTo:0.5点。GoPay も人気が高まっており、大小の加盟店で受け入れられている。しかし、インドネシア以外の市場で GoPay が決済手段として選ばれるようになるとは考えにくい。また、Tokopedia との合併により、外部の加盟店が購入履歴へのアクセスを提供できなくなる可能性がある。
  • Sea:-0.5点。SeaMoney は、Garena のゲーマーや Shopee での買い物には問題なく利用できる。問題は、Sea が配車サービスやデリバリのインフラを持っていないことで、アプリの幅広いユーザー層や受け入れ可能な加盟店の幅広いネットワークを構築するチャンスが大きく制限されていることだ。この欠点は、多くの悪影響を及ぼす可能性があるため、Sea に罰則を与えなければならない。

創業者 CEO の存在

テックスタートアップは、元々の製品やビジネスモデルの規模を拡大するだけでは、大きく成長することはできない。技術革新と進化が必要であり、創業者(またはその一人)がこのような発展段階を経て会社をリードし続けることに価値がある。Alibaba では、Jack Ma(馬雲)氏が起業家としてのビジョンや文化を守り続けた。Apple は、Steve Jobs 氏の下で初期に繁栄し、彼が去ったときには低迷し、彼が戻ってきたときには再び奮起した。Amazon、Facebook、Airbnb、Microsoft、Intel など、いずれも主要な創業者が持続的にリーダーシップを発揮している。新しいリーダーへの引き継ぎは、会社が確固たる地位を築いてから行うのが理想的だ。

ASEAN のスーパーアプリ戦争では、まだ誰も確固たる地位を築いていない。これからたくさんの革新が起こるだろう。創業者 CEOが率いる企業は、無形だが大きな強みを持つことができるだろう。

  • Grab:1点。Anthony Tan 氏は、ハーバード大学の MBA 学生としてこのスタートアップを構想し、それ以来、スマートに同社をリードしてきた。
  • Sea:1点。Forrest Li 氏は、Garena がまだ創業後間もなかった頃に買収し、それを中心に Sea を構成する残りの部分を構築し、現在も指揮を執っている。
  • GoTo:0.5点。Gojek の主要創業者である Nadiem Makarim 氏は、現在インドネシアの教育文化大臣を務めている。Tokopedia の主要共同創業者らも、合併後の GoTo を率いることはないだろう。合併によって強力な新会社が誕生する一方で、2つの大企業を統合するという複雑な問題が発生し、リーダーシップチームには多くの負担がかかる。しかし、何人かの共同創業者は、まだビジョンを推進するために参加している。Gojek 元 CEO の Andre Soelistyo 氏と Tokopedia 元社長の Patrick Cao 氏のドリームチームは、インドネシアのビジネスを成功させるための20年にわたる知識を持っている。

トータルスコア

これまでのところ、レースは互角のように見えるが、私は優位に立てる可能性があると考えている。私の読みでは、Grab の強みは決済と地域拡大であり、Sea の強みはスティッキーなエンターテインメントと e コマースである。 GoTo の強みはインドネシアであり、総力戦に向けて準備を進めている。VC として好きなタイプの企業は、壁に背を向けて生き残りをかけて戦っている企業だ。GoTo はそのような企業だ。

東南アジアは大きく成長している。勝者は1人だけではなく、各関係者が戦略的に動く余地があり、買収からメガ合併まで幅広く考えられる。いずれにしても、期待できることが1つある。このバトルロイヤルがどのように展開するかを見ることで、他の市場におけるスーパーアプリのプラットフォーム企業の将来について多くのことを知ることができるだろう。

これからどうなる「SPAC」上場

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の一宮翔平氏が共同執筆した。 昨年から米国テック・スタートアップ投資の話題としてトレンドになっているのが「SPAC(特別目的買収会社)」です。GB Universeをチェックいただいているみなさんであれば、少なくともこのキーワードを目にしたことはあ…

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の一宮翔平氏が共同執筆した。

昨年から米国テック・スタートアップ投資の話題としてトレンドになっているのが「SPAC(特別目的買収会社)」です。GB Universeをチェックいただいているみなさんであれば、少なくともこのキーワードを目にしたことはあると思います。具体的にはSPACというスキームを用いた未上場企業の公開化のことで、ここ直近では東南アジアで配車サービスなどを展開するGrabがこのSPACを使って上場することになり、その時価総額が390億ドルを見込んでいることから歴代で最大規模のSPAC上場と伝えられています。

本稿ではSPACのスキームの現段階における手法やケーススタディ、そして課題についておさらいをしてみたいと思います。

SPACとは

では改めてSPACというスキームについて簡単に整理します。特別買収目的会社とは特定の事業を持たず、未公開会社や事業を買収することだけを目的とした投資ビークル(組織体)で、英語ではSPAC(Special Purpose Acquisition Company)と呼びます。何も入っていないことから空箱や、後ほど出てくるブランク・チェック・カンパニー(白紙の小切手)などと呼ばれることもあります。

このSPACを「先に」株式市場に上場させ、その後に実際の事業を持った企業を買収することで未公開企業の株式を市場に流通させるのが「SPAC上場」の基本的な考え方です。この株式公開化・資金調達手法のメリットはやはりスピードです。一般論としてSPACは従来のIPOプロセスより早い公開化が可能で、ディールストラクチャの柔軟性が高く、株価をより早くフィックスできるなどのメリットがあると言われています。

一方で、必ずしも通常のIPOより費用は低くなく、株主構成や対外プレスのコントロールが相対的に少なく、従来のIPOの方が高い時価総額になる可能性がある点も指摘されています。つまり投資家に対して“Optics”が良くない可能性があるわけです。注意すべきは従来のIPOより「良い・悪い」という議論ではなく、公開化などを目指すベンチャー企業にとってSPACというスキームが合っているかどうかが検討のポイントです。

GrabがSPAC上場へ

米国のテック企業を中心にほぼ毎日のようにSPACの話題が出ています。この背景には長年続く金融緩和の影響もあり、金余りの状況で投資先銘柄が不足する需給バランスの問題が影響しているように感じます。日本ではマザーズのように企業評価で100億円前後の上場も珍しくありませんが、米国ではその規模は大きく変わります。一方、そこまで成長するには当然時間がかかるわけです。SPACはこういった需給バランスの問題から顕在化してきたと考えてもよいと思っています。

一方、SPACでの上場を「裏口」と表現する人がいるように、通常のIPOを選択できなかった企業の裏技と取る向きもあります。創業者の辞任や上場の断念で話題となったWeWorkもSPACを使った上場を準備していると報じられています

課題も多く最近でもSPAC王と言われてきたChamath氏がスポンサーしたSPACが軒並みに株価が不調な状態になったり、SPACへの訴訟(開示が不十分なケース)が増えており、今後これらのトラブルはもっと増えるのではと指摘する弁護士事務所も存在しています。

一方、アジア圏におけるSPAC上場はまた異なる視点も加わります。特に株式市場が弱く流動性が少ない東南アジアでは海外市場への上場が自然とターゲットに入っており、歴代で最大規模(時価総額は390億ドルの見込み)のSPAC上場となるGrabのようなケースが生まれたりしています。ちなみに現時点(記事執筆時は5月20日)でUberの時価総額はおおよそ1,000億ドル、ライバルのLyftが200億ドルです。

これからどうなる「SPAC」上場

SPACの歴史自体は古く、1980年代頃からシステムとして登場しています。当時のアメリカ株式店頭取引は現在ほど規制が厳しくなったこともあり、未上場・未登録の株式が取引される市場は不正の温床とされていました。「ブランク・チェック・カンパニー」などの用語はこの頃に登場していて、例えばブランク・チェック・カンパニーを通じて資金を調達し、買収候補のうわさなどで株価を吊り上げたら売り抜くような不正や、自らが出資した会社を高い価格で買収させる方法、調達した資金を私的に流用するなど多くのトラブル・訴訟が発生したことを受け、1992年に米国証券取引委員会がブランク・チェック・カンパニーの規制を強化して、現在のSPACに至っています。

そして2000年に勃発したITバブルによってSPACは一旦、その存在を潜めていきます。ブームが復活したのはここ1年で2020年に入ってからSPACの組成が急増しています。こちらのリサーチによれば、 SPACを使った上場数は2017年に34件だったのに対し、2020年は248件、2021年は5月時点で324件と4年で10倍近くに膨れ上がっています。ただ、直近の数は流石に価格パフォーマンスが芳しくない状況で組成は大幅に減少しています。 また、一般論としてSPACによる希薄化を考慮すると、時価総額は組成金額の3〜5倍に落ち着いているようです。

現時点でSPACという手法を使った上場は国内では認められていません。また、日本ではまだテックセクターが資本市場における力が相対的に弱かったり、需給バランスが崩れつつある米国で発生したのと同じような背景でSPACブームがやってくることはなさそうです。

一方、SPAC自体のスキームが進化していく可能性は高いと考えています。既に従来のスキームを一部変えるなどのイノベーションが起こっており、件数が大幅に増えていることや、今回のGrabのようにメインストリームの会社がSPACを利用することにより成熟が進むのではないでしょうか。

SPACにはもうひとつ、ウォール街を中心とした世界からシリコンバレーが主導する金融の世界へシフトしているトレンドの一環という見方もあります。伝統的にウォール街の投資銀行がパブリックマーケットに上場できる・できないの鍵を握っていたことから「ゲートキーパー」と呼ばれていた彼らへリターンの一部を“IPO Pop“などを通じて一部ロストしているため、Direct ListingやSPACなどのスキームを魅力的に感じるVCも多いのは事実です。

リモートワークに商機「ビジネス向け」音声サービスたち/GB Tech Trend

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。 今週の注目テックトレンド 音声SNS「Clubhouse」の登場により、ビデオ通話ではなく声だけの対話体験が一般に認知されました。コンシューマー市場での行動体験は、時期をず…

500万ドルの調達を発表した「Spot Meetings」。Image Credit: Spot Meetings。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

音声SNS「Clubhouse」の登場により、ビデオ通話ではなく声だけの対話体験が一般に認知されました。コンシューマー市場での行動体験は、時期をずらしてビジネス市場へと応用される場合が多々あります。

今回取り上げる「Spot Meetings」もその一つです。同社は座りながらビジネス会議を行う従来のサービスとは違い、音声だけでハンズフリーに会議を行えるユーザー体験の実現を目指しています。5月20日には500万ドルの資金調達を発表しました

Spot Meetingsアプリ上では、音声アシスタント「Spot」がユーザーの音声コマンドを理解してタスク処理をしてくれます。たとえば「Spot Fetch」と言うと、コマンド後40秒の内容を録音して書き起こし、会議中メモとして保存しておいてくれます。また、会議参加者が共有できるノート機能も実装されており、会議アジェンダを事前に書き込んだり、発言録にコメントを足しておいて議事録としてシームレスにシェアできる動線も用意されているとのこと。

昨今、ビジネスシーン向けの音声プロダクトの活躍を徐々に聞くようになりました。たとえばSlack Fundから出資を受ける「Yac」が挙げられます。同サービスは非同期型の音声コミュニケーションツールです。アプリかウェブアプリをインストールして、同僚や上司に向かって録音メッセージを送り合う体験を実装しています。録音記録は手軽にシェアできる動線もあり、まさに「音声版Slack」としての市場ポジションを狙っていることが伺えます。同社は1月25日に750万ドルの調達に成功しています。

他にも現在ステルスで活躍する「Riff」や、Y Combinator出身でリアルタイム・コラボレーションツール「Tandem」もその一つとして数えられるでしょう。どんな場所・タイミングからでも気軽に参加できて、ミーティング参加後体験までしっかりと設計された音声系サービスが待望されています。

一般的に音声系スタートアップサービスは、「議事録作成」「音声書き起こし」などのキラー機能を謳う傾向にありますが、その点はZoomによってカバーされています。Zoomもマーケットプレイスを通じたAdd-Onサービスの導入により、その体験性を確実に強化しているためです。たとえばAI自動翻訳サービス「Otter.ai」との連携があれば、Zoom音声を高精度に書き出し可能です。AI翻訳の面においては、Spot Meetingsやその他各サービス以上のアウトプットを出せることでしょう。

そのためユーザー体験の刷新でしか戦える場所がありません。このユーザー体験が抜本的に変わるきっかけになったのが冒頭で紹介したClubhouseの登場です。コンシューマーの行動が変われば、その流れがビジネス市場へと流れ込むのは必然です。こうしたユーザー行動を軸にした市場変化を見逃さず、次のワーク・コミュニケーションツールとして支持されるべき、各スタートアップが活躍しているのが現在です。どこまで音声チャットがビジネス領域で市民権を得られるのかは未知数ですが、Clubhouseによって音声対話の良さを知ってしまった今、主要サービスの登場が期待されます。

今週(5月18日〜5月24日)の主要ニュース

フードテック台頭の背景とその理由「2つの人口増減」

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の木塚健太氏が共同執筆した。 近年、SDGsなどの啓発で持続可能な社会づくりへ関心が高まっています。日本における大きな指針としては、昨年10月に宣言された2050年に向けた脱炭素社会の実現があり、社会全体でエネルギーや資源に関する考え方を転換する時…

植物肉(ミラクルミート)を使った唐揚げ。写真: DAIZ。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の木塚健太氏が共同執筆した。

近年、SDGsなどの啓発で持続可能な社会づくりへ関心が高まっています。日本における大きな指針としては、昨年10月に宣言された2050年に向けた脱炭素社会の実現があり、社会全体でエネルギーや資源に関する考え方を転換する時期を迎えているのは間違いありません。

こういった変革期にコロナ禍の影響もあり、大きく変化したのが私たちと食に関する向き合い方です。身近なところでは非接触を余儀なくされたことからフードデリバリーの躍進がありますが、これもひとつのデジタル化の流れと言えます。例えば予約をして食料を消費するスタイルが定着すれば、データによる管理がしやすくなり、食品のロスが減る効果が見込めるかもしれません。

このような背景から、今世界では食とテクノロジーを組み合わせた「Food Tech(フードテック)」の流れが加速しています。私たちグローバル・ブレインも今年4月に発芽大豆を使用した植物肉原料『ミラクルミート』の開発・生産を行うDAIZ社へ出資を発表しています。

2010年代半ばから動き出したこのトレンドは、個別に進化を続けてきた食品、家電、小売、そのバックエンドにおける各業界の動きが融合しつつあるものです。大きくは「食のパーソナライズ」「自動化 / 省力化」「代替食 / Future Food」「SDGs領域(フードロス解決)」が挙げられますが、本稿では特に注目が高まるフードデリバリーやゴーストキッチンに見られる自動化の流れと、代替たんぱくとなる未来の食料について解説してみたいと思います。

労働人口減少で避けられない自動化・省力化

※1出典:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」

外食産業における人材不足は声高に叫ばれている社会課題ですが、ある労働市場の2030年推計(※1)では、食を含むサービス産業が突出して担い手不足に陥る筆頭業界とされています。こういった中、期待されているのがロボットの活用や「作る場所」と「食べる場所」の分離とその運営の効率化です。

その上で、コロナ禍の影響もありフードデリバリーやゴーストキッチン、D2Cが世界的に急拡大しました。消費者の行動や習慣は変容しており、今後も成長すると考えられています。

構造としてはラストワンマイルを配達するデリバリープラットフォームが定着し、そこを活用した事業主体であるデリバリー専門の飲食店が出現しています。そしてこれをキッチンのインフラで支えるのがゴーストキッチンです。国内のデリバリープラットフォームはLINE子会社となった出前館とウーバーイーツの2強体制で、ここにローカルに注目したシン(Chompy)やデジタルコンビニのレキピオ(QuickGet)といったスタートアップが別の角度で挑んでいます。

店舗を持たないフードデリバリー専業の事業者が食事を作るためのキッチンを貸し出す業態のゴーストキッチンですが、海外の先行事例としてはインドのRebel Foodsや2016年にUber創業者のTravis Kalanick氏が設立したCloud Kitchens、韓国のWecookなどがあり、拠点数も拡大しています。一方国内はまだ各社シード段階で、成長はこれからといった状況です。

食べる場所、作る場所の変化もあれば、食品そのものの生産工程や届け方についても変わりつつあります。D2Cの流れは食品に限ったものではありませんが、GBが出資する完全栄養の主食「ベースフード」のような消費トレンドに沿った製品を自社で企画・製造し、直接消費者に届ける仕組みはこれからも拡大すると考えています。

アプローチもさまざまで、消費者の嗜好をデータ化して定期購買を促すサブスクモデル(例:おやつのサブスク)や自社企画のオリジナル商品(例:日本酒や完全食の自社企画)生産者と直接繋ぐマーケットプレイス(例:産直系のEC)、冷凍技術の発達による食品EC(例:ケーキやパンの冷凍販売)などが挙げられます。

世界人口増で足りなくなる動物性たんぱく

矢野経済研究所が昨年5月に発表した代替肉(植物由来肉・培養肉)世界市場に関する調査によれば、2020年の市場規模は2,570億円規模で、これが2030年には約1.9兆円に成長すると予測しています。

米国などでは特化型VCだけでなくトップ・ティアVCも含めて各VCが投資を牽引し、2015年以降継続して海外食品大手企業のCVCが設立され、存在感を発揮しているのが現状です。投資金額、Deal数共に引き続き増加傾向で、ここ5年(2016年〜2020年)で投資件数は2倍以上に増加しています。

これらの理由は明確で、この先、世界的な人口増加に対して動物性たんぱく質の供給が不足する未来が予想されているからです。また生産だけでなく、畜産は実は二酸化炭素の排出元としても環境にインパクトを与えています。人口が増えたことに対して畜産を単純に増産できない状況にあるのです。従来の代替タンパク(主に植物肉)は、ベジタリアンやビーガン、ムスリムなどの宗教的 / 倫理的な理由が大きかったようですが、今後はこれら別の課題から需要増が見込まれています

特に代替タンパク分野は成長が著しく、ここ数年でそうした商品を提供するスタートアップも資金調達を進めてきました。Perfect dayがここ2年で3億ドルを調達、Impossible Foodsが昨年に約7億ドルを調達(これまでの累計では16億ドル)するなどディールサイズも大きくなっています。2019年に上場したBeyond Meatも2020年度は売上として4億ドルを達成(昨年対比135%)し、実需の変化を示しています。

植物肉(ミラクルミート)を使ったハンバーグ。写真: DAIZ株式会社。

一方国内は2020年になり特化型VCやアクセラレーター、フードテックスタートアップ向けのシェアオフィスが開設されるなど、投資やコミュニティづくりに活発な動きが確認できるようになりました。プレーヤーとしてもGBの出資先であるDAIZをはじめ、昆虫食のGryllus、培養肉のインテグリカルチャー、ゲノム編集肉のリージョナルフィッシュなど、バラエティも増えています。

今回はフードテック領域に関するトピックスを大きく二つ、解説してみました。日本における労働人口の減少と世界的な人口の増加。この二つの人口の動きが、大きく私たちの食生活に影響を与えることになりそうです。

今回言及しなかったパーソナライズ(個人の嗜好における対応)やフードロス対策は共に食に関するデータが普及することで大きく改善できる分野でもあります。世界の状況をふまえ、現在の国内はまだ黎明期であることを考えると、今後のこの領域の動きには期待できるのではないでしょうか。

日本の資産運用業界、ESG投資を重視する基調【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿) The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture c…

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿

The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist.


Image credit: 401(K) 2012 via Flickr
Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 Generic

ESG(Environmental, social and corporate governance)の朝が来たようだ。資産運用マネージャーたちは、投資活動における環境・社会・ガバナンスの原則に対する真実の瞬間に目覚めつつある。

もちろん、企業や金融機関は何年も前から ESG について語っている。企業のホームページを見ても、「私たちは、フィデューシャリー(受託者)と ESG の原則を企業行動の頂点に置いています」というような文言が無いものはなかなか無い。年次報告書には「Sustainability(持続可能性)」という項目があり、そこには並木道のある公園でセミの鳴き声を聞きながらピクニックをしている一家(通常は3人)の艶やかな写真が掲載されている。実際、ここ日本でも、ほぼ毎日のように企業がネットゼロ目標(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)を発表しているように思える。

しかし、実際に ESG を実践するには、パンフレットに書かれているような言葉だけでは不十分だ。特に資産運用業界では、ESG への関心が高まっているようだ。私が関わった資産運用会社の多くは、大きく分けて2つのカテゴリに分かれる。

報告段階

最も多いグループは、棚卸しの段階にあるようだ。彼らは、膨大な数の保有資産の中から、ESG の遵守状況やエクスポージャー(金融資産のうち、市場の価格変動リスクにさらされている資産の割合)を判断しようとしている。この取り組みには、データ収集の努力とそれに続く報告手続が必要で、大規模なものになる可能性がある。

行動段階

もう一つの小さなグループは、より進んだ段階にある。これらの先見性のある企業は、おそらく棚卸しの段階と並行して、ESG の原則を自社のプロセスやビジネスモデルに深く連携することで、解き放たれる可能性のある将来の機会を模索している。単なる報告にとどまらず、保有するポートフォリオの ESG 行動に影響を与えようとするかもしれない。

前者については、ビッグ4のような伝統的な監査法人や大規模なコンサルティング会社が、おそらく最も適切なガイダンスを提供してくれるだろう。2つ目の「機会の探求」については、専門のコンサルタントやソートリーダー(思想的指導者)が新たに登場している。

ESG を実行し、その目標を達成するのは大変なことだ。私たちも、自分の小さな VC ファンドで ESG をどの程度実施するのが最も適切なのか、いまだに悩んでいる。このテーマについての専門知識を深めたいと考えている資産運用マネージャーには、私たちのネットワークの中で、両方のカテゴリの専門家や、私たちを支援してくれたアドバイザー、そして LP の何人かをご紹介したいと思う。

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gojekとGrab、そのUberを凌駕する事業戦略——アジアのスーパーアプリ、これまでと今後【ゲスト寄稿】

本稿は、Golden Gate Ventures のマネージングパートナー Vinnie Lauria 氏による寄稿だ。「Fast Company(オンライン版)」に掲載された記事を、執筆者と発行者の了解のもと翻訳・転載する。 This article was first published in Fast Company. <関連記事> ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップ…

本稿は、Golden Gate Ventures のマネージングパートナー Vinnie Lauria 氏による寄稿だ。「Fast Company(オンライン版)」に掲載された記事を、執筆者と発行者の了解のもと翻訳・転載する。

This article was first published in Fast Company.

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Image credit: Grab/gojek

2009年、Uber の共同創業者らが会社設立の準備をしていた頃、アジアの若い起業家らがハーバード・ビジネス・スクールの MBA プログラムに入学してきた。その中から、まったく異なる進化を遂げた2つの配車スタートアップが誕生した。現在 Grab と呼ばれている会社は、マレーシアの学生である Anthony Tan 氏と Hooi Ling Tan 氏(二人は偶然苗字が同じなだけで血縁関係は無い)がビジネスプランコンテストに応募する際に考案したものだ。優勝はできなかったが、その後、東南アジアの ASEAN 10カ国の急成長都市で Uber を追い抜くまでになった。

一方、ジグザグの道のりでトップに立った同級生もいた。 Nadiem Makarim 氏は、故郷インドネシアの仲間とリモートで仕事をしながら、MBA を取得する際のサイドプロジェクトとして gojek を立ち上げた。この配車サービスは、マッサージセラピーから映画製作まで、さまざまなビジネスに異業種展開している。そして今週、gojek は e コマース大手の Tokopedia との合併という、インドネシア史上最大のビジネス取引を発表した。(情報開示:Golden Gate Venturesは、Ruma Mapan の買収を通じて gojek の小口株主となっている。また、gojek のスピンアウト企業である GoPlay にも投資している。)

gojek と Grab はともに、ベンチャー企業が資金を提供するデカコーンとなり、それぞれがニューヨークとアジアの証券取引所での IPO を目指している。そして、東南アジアの人々の携帯電話の画面に表示される、配車サービス以上のものを独占しようと競争している。Grab と gojekはそれぞれ、アメリカ市場ではまだ見られないものを提供している。それは、人々が購入したいと思うあらゆるものを販売するための潜在的なゲートウェイである決済アプリを備えた、スーパーアプリの組み合わせだ。

gojek の紆余曲折

Image credit: gojek

gojek は2010年にささやかにスタートした。遠く離れた創業者がパートタイムで指揮を執る、ローカルでローテクな事業だった。この会社は、インドネシアの首都ジャカルタで、ojek(インドネシア語でバイクタクシーのこと)のドライバに電話やツイッターで乗り物を予約するコールセンターに過ぎなかった。このモデルは高い成長を約束するものではなかったが、ドライバと客とやりとりを通じて貴重な経験を得ることができた。

スマートフォンの普及に伴い、gojek は2015年にモバイルアプリのプラットフォームとして再出発し、拡大を目指した。創業者のMakarim 氏は当時、フルタイム CEO を務めていたが、社内に技術スタッフはほとんどいなかった。そこで彼は、アプリの開発を を開発会社の Ice House Indonesia に委託した。このような奇妙で少々怪しげな戦術にもかかわらず、gojek は、現場での経験とインドネシアの新興市場の大きさを武器に、ベンチャーキャピタルから資金を集めることができた。インドネシアは世界で4番目に大きい国で、人口は2億7千万人を超えている。

そしてこの時点で、gojek はオンラインプラットフォーム企業を作るための標準的なプレイブックを覆した。慣例では、最初は1種類の製品やサービスに集中し、徐々に他の製品やサービスを追加していくというものだ。Amazon は本屋として4年間活動した後、音楽やビデオを扱うようになった。Uber は5年前に Uber Eats を追加したばかりだ。しかし、gojek は、ある意味で〝一つのことに集中する宿題〟をすでに済ませていたのだ。モバイルアプリとして再出発したとき、同社は MVP(最小単位製品)モードから、製品の種類を最大限に増やすことへと一気に加速した。配車サービスに加えて、調理済食品や食料品、処方箋薬の配達も開始した。2016年4月には、決済アプリという重要な要素が加った。車やバンを持つドライバが、バイクサービスのー団に加わった。そして、電撃的な買収が行われた。

gojek は、地元のサービスプロバイダと提携し、さまざまなサービスを提供した。マッサージセラピストが必要ですか? 掃除屋さん? gojek のドライバは、そのどちらか、または両方を客の家に届ける。また、トラックのレンタルや自動車修理も問題ない。この戦略は、「ラピッドプロトタイピング・フェイルファースト」の一形態と言えるだろう。今ではこれらのサービスのほとんどがなくなってしまった。VC からの資金調達と収益の増加により、gojek は、3つのスーパーアプリを中心に約20の製品ラインを持ち、より充実したラインナップを構築した。その中には、大規模なものも含まれており、さらに大きなものも登場している。

Image credit: gojek

決済アプリである GoPay には、保険や投資などの金融商品が付随している。このビジネスグループは、アリババのアリペイやアント・フィナンシャルと同様に、半独立してスピンアウトしている。GoPay には、決済大手の Paypal、Facebook、Google などが出資している。

印象的な動きとして、gojek はエンターテイメントのストリーミングに手を広げた。アプリ「GoPlay」では、アジアの長編映画や動画エピソードに加え、「Netflix Originals」にちなんで名付けられたカスタムメイド「GoPlay Originals」がストリーミングされている。これらの作品には、アメリカのティーン向けシリーズ「Gossip Girl」をジャカルタをテーマにリメイクしたものや、「Filosofi Kopi(インドネシア語で「コーヒーの哲学」)」などがある。「The Series」は、インドネシアの人気映画から派生したものだ。

gojek はインドネシアの e コマースプラットフォーム「Tokopedia」と合併、メガ企業 GoTo が誕生する。興味深いことに、Alibaba(阿里巴巴)は Tokopedia に、Tencent(騰訊)は gojek に出資しているため、新会社 GoTo は中国の大手企業を共同出資者として、上場を目指すことになる。

以前、gojek と Grab は合併の可能性があると思われていたが、その交渉は決裂した。まもなく単独での上場を予定している Grab は、製品の多様性では gojek に劣るが、ASEAN 全体での存在感ははるかに大きく、異なる種類のアプローチで Uber を東南アジアから追い出した実績がある。

Grab の勝利方程式

Image credit: Grab

gojek の Uber に対する主な強みは、渋滞を縫って移動できる軽快な Ojek のバイク群と、安い料金で呼べることだったが、Grab は多国籍企業としての急成長と各市場に対するローカルな感性を組み合わせた戦略で勝負に出た。Grab はこの組み合わせにより、各国で最も価値があり、かつ微妙な違いがあり、規制が厳しい分野のひとつである決済・金融サービスを開拓した。決済アプリは、潜在的な収益源であるだけでなく、顧客とその消費パターンに関するデータが常に蓄積されているという点でも、非常に価値がある。このデータを活用すれば、あらゆる製品やサービスのマーケティングに役立てることができる。

Grab は2012年にマレーシアの首都クアラルンプールでデビューした。初日からアプリを使って規模を拡大し、最初の1年でマニラとシンガポールに進出し、その後も都市部の市場を増やしている。現在、Grab は、ASEAN 10カ国のうち8カ国、約300の都市圏で事業を展開している。バンコクやホーチミンシティのような巨大都市から、ベトナムのベンチェーやマレーシアのタワウのような人口10万〜50万人程度の地方都市まで、さまざまな都市で展開している。

Grab はそれぞれの新市場において、外国の競合相手ではなく、現地のタクシードライバや車両オーナーのパートナーとして、より効率的に運賃を探せるプラットフォームを提供した。Grab は、Uber が対応していない現金払にも対応し、かつてはタクシーに乗ることさえためらわれていた都市で、安全性と信頼性を強調することで顧客に対応した。Uber はアメリカでは隔週払いの給与モデルを採用していたが、Grab はアジアの多くのドライバが、客がクレジットカードで支払をしても、毎日現金を必要としていることに気づいた。そこで Grab はまず週払で給与を提供し、その後ドライバを「GrabPay」アプリに切り替えさせ、乗車後すぐに支払を払い出せるようにした。

さらに、Grab は各市場で現地の投資家を募り、現地の技術者や管理者を採用した。これは、Uber がアメリカの資金に頼り、アメリカ人スタッフを〝輸入〟していたのと対照的である。現地投資家は、入手困難な配車サービスライセンスや決済ライセンスの取得など、さまざまな面で Grab に貢献している。 現地投資家は、Grab がフィリピンで繁栄することを確実にした一方で、gojek はそれから数年後の2019年にフィリピンの配車サービスライセンスを取得できなかった。シンガポールでは、政府系ファンドの Vertex が、Grab に多額の初期資金と繁栄する都市国家の市場へのアクセスを提供した。また、Grab は本社をマレーシアからシンガポールに移転し、豊富な人材を獲得した。Grab は多くの場所で、財閥系の富裕層に投資を依頼し、時には彼らを雇用することもあった。例えば、高級ホテル Shangri-La のオーナーと関係を持ち、このホテルの一等地に送迎レーンを確保したこともある。

今後の展望

Image Credit: Grab

Grab には世界的に大きな支援者がいる。主要な投資家には、ソフトバンクや Uber 自身などがいる。Uber は、ASEAN から撤退する際に ASEAN の資産を Grab の株式と交換した。Grab と gojek-Tokopedia 連合の両社が IPO 資金を得た暁には、両者の競合関係が注目される。そして何より、この2つの新進気鋭の企業の今後は、スーパーアプリのビジネスモデルの将来を占う上での試金石となるだろう。

Grab のスーパーアプリ・クラスターは gojek に比べてスリムだが、重要な決済・金融のコアを持っているという点で、まだ強力な力を持っている。gojek のストリーミングエンターテイメントは、強力な切り札になる可能性がある。gojek は、人々に注目され、自分の作品をスクリーンに表示させ、その状態を維持することができる。GoTo との合併で gojek のポートフォリオにオンラインショッピングが加われば、それは大きな力となるだろう。

Grab と GoTo は、スーパーアプリで配車サービスとその他の交通手段を提供するという、Uber の手法をはるかに超える領域を目指している。この軌道は理にかなっていると思う。配車サービスはどこで試みられても、商品を販売するためのユーザベースを構築するためのロスリーダー(訳注:集客数を上げるため、収益を度外視した低価格で販売する目玉商品のこと)として最も適していると思われる。アジアの2大企業は、従来の配車サービスアプリをタクシー乗り場に残し、業績を向上させるサービスをバンドルすることで Uber を凌駕している。

リモートワークに商機、備品管理SaaSで成長を続ける「Firstbase」/GB Tech Trend

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。 今週の注目テックトレンド コロナ禍になりリモートワークが普及しました。その中で、新たな需要として誕生したのがリモートワーカー管理です。とりわけ備品管理市場のSaaS化に注目…

a16zをリードに調達をしたFirstbase。Image Credit: Firstbase。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

コロナ禍になりリモートワークが普及しました。その中で、新たな需要として誕生したのがリモートワーカー管理です。とりわけ備品管理市場のSaaS化に注目が集まっています。

今回、「Andreessen Horowitz」をリードとして1,300万ドルもの資金調達をした「Firstbase」はまさにリモート社会の備品管理ツールとしての市場ポジション獲得を狙っています。同社は「リモートチーム向けOS」として遠隔で働く従業員向けの備品管理ソフトウェアを提供しています。

オフィスとの物理的距離が開いてしまった昨今、会社に置かれている備品を分散型的に社員の自宅に配置する必要が企業に出てきました。小規模スタートアップであれば各従業員で適当に賄う備品ですが、大規模企業になるとセキュリティ観点からも管理に一定のコストをかけつつモニターする必要が出てきます。

そこで登場したのがFirstbaseです。リモート環境下の従業員にPC・ラップトップなどの必要IT機材を手配して、誰がどのバージョンの備品を持っているのかといったステータスを一目でわかるソフトウェアを提供しています。

基本的にはソフトウェアの月額サブスクモデルなのですが、機材購入から配達までも一貫して提供するハードウェア購入支援ツールとしての側面も持っており、それら備品購入の際にはショットで費用が発生するようになっています。

米国では年間4,000億ドルものオフィス管理ツールへの出費があるとも言われる注目市場で、この数値がリモート環境下になっても変わらないとすればスタートアップにとっては大きな狙い目でしょう。従来のマニュアルでの備品管理が通用しないとなれば、新たな管理SaaSが必要なるのは当然で、そこをすかさず狙ったのがFirstbaseというわけです。

Firstbaseの今後を考える上での先行事例として、Y Combinator出身の「Hivy」が挙げられます。同社はオフィスマネージャー向けプラットフォームを展開していました。2017年に「Managed by Q」に買収されています。また、GBの投資先でもあるEdenもオフィス管理サービスプラットフォームを提供しており、2020年に「Managed by Q」を買収しています。

Hivyのターゲット顧客は大手IT企業に務めるオフィスマネージャーでした。彼らが持つ課題感として、従業員からのリクエスト(備品の故障や環境整備など)やアクティビティの管理、Amazonでの備品購入などのタスクが無数に投げられる点が挙げられました。小規模のスタートアップであれば担当者に口頭で伝えれば良いでしょうが、50〜100名以上の規模になってくると全てのリクエストに応えるのが難しくなります。

Hivyを使えば、社員がパソコンやモニター・周辺機器を購入したいと検討したとき、購入可能なデバイス一覧が掲載されたオンラインカタログを通じて、予算内で購入申請をマネージャーに送れたりします。HivyはAmazonと直接連携しているため、備品購入などもHivyから離れることなく商品を注文することができました。従業員はHivyのウェブページへ直接アクセスして使っても良いですし、Slack経由でも利用可能です。リクエストは全てオフィスマネージャーへ通知され、TrelloのようなチケットUIに沿ってタスク管理できました。Firstbaseもこうした従業員とマネージャーとの新しいコミュニケーションツールとしてのプロダクト価値も見いだせるかもしれません。

リモートワークは不可逆的な流れでもあるため市場規模はこれからも拡大するはずです。この中でFirstbaseがどこまで顧客企業を獲得するのか、アジアでは同様の流れが登場するのかに注目されます。

今週(4月29日〜5月2日)の主要ニュース