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プロセスエコノミーと小さな経済の時代

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先日、アルというソーシャル漫画サービスをやっているけんすうこと古川健介さんから突然メッセージがやってきて「00:00 Studio(ふぉーぜろすたじお)というサービス始めたよ!マニアックでリリース前なんだけどクリエイターめちゃ増えてる!」というお便りをいただいたんですね。 00:00 Studioはクリエイター(漫画とかイラストの作家さんたち)が作業中を淡々とライブ配信するもので、彼が言う通り、す…

画像クレジット:「プロセス・エコノミー」が来そうな予感です」より

先日、アルというソーシャル漫画サービスをやっているけんすうこと古川健介さんから突然メッセージがやってきて00:00 Studio(ふぉーぜろすたじお)というサービス始めたよ!マニアックでリリース前なんだけどクリエイターめちゃ増えてる!」というお便りをいただいたんですね。

00:00 Studioはクリエイター(漫画とかイラストの作家さんたち)が作業中を淡々とライブ配信するもので、彼が言う通り、すごくマニアックです。ちょっと覗いてみたのですが、よくあるYouTubeのかっちょいいイラストの早回し制作動画とかと違い、本当に単なる制作風景です。目の前でnoteを書いている(というか、単にテキストが打ち込まれている)様子を見るというのはなんというか悪いことをしているような感覚にも近く、ライブ配信やコンテンツを視聴するとはなんぞやということを考えてしまいました。

リアリティショーや日常のライブ配信、雑談でもなく、覗き見です。

00:00 Studio:応援コメントはニックネーム入れたら送ることができます

ということでサービスはさておき、彼がこのサービスと一緒にシェアしてくれた「プロセスエコノミー」という考え方に興味あったので共有したいと思います。

プロセスエコノミーとはその通り、何かの過程自体もビジネスにする考え方です。対局にあるのがアウトプットエコノミーで、できた商品やサービスを購入するのに対して、できている過程に課金したり、そこに共感してコミュニティに参加するといった具合です。実際、けんすうたちが運営しているアルでは「アル開発室」というコミュニティをやっていて、アルを開発する上でのプロセスを公開しながら、課金で毎月200万円ほどの収入を得ているそうです。

さて、プロセスを最終のプロダクトに反映させる事例として、私が好きなストーリーがAllbirdsのケーススタディです。同社は温室効果ガスゼロを目指して製品づくりを進めていて、サイトのメインコンセプトとして強く打ち出しています。同時にAllbirdsについてはAmazonコピー問題という別の事件がありました。

当然ですがAmazonの商品にこのような製品の物語はなく単なるコピーです。もちろん消費者がどちらを選ぶかはその方々の状況次第なのですが、ここで重要な視点に「共感できるかどうか」というものがあるんですね。けんすうが言うところのプロセスエコノミーにも通じる大切なキーワードで、製品やサービスに差がどんどんなくなる時代、人々がなぜそれを手にするか。そこには絶対的な「スキ!」という感情がなければならない、共感できるものと一緒にいたいというのはごく自然な考え方ではないでしょうか。

けんすうの言う「プロセスまで含めてサービスや製品を好きになりたい」という考え方に同意するのはそういう理由からです。

パッションエコノミーと共感

Allbirdsでは全面的に環境にやさしい製品作りを押し出して消費者に共感を与える

もうひとつ、プロセスエコノミーに興味を持った理由として、とあるトレンドがあります。それがパッションエコノミーです。

ギグワークなどの「消費される」個人の生き方と異なり、個人のスキルや情熱(パッション)を別の価値に変えようという動きで、日本でもクラウドワークス・ランサーズなどのクラウドソーシング関連、BASEやMOSHといったコマースプラットフォーム、ココナラやビザスクと言ったスキルシェア、YOUTRUSTやOffersのような副業プラットフォームなどなど、様々な形で個人をエンパワメントするサービスが拡大しています。

今、日本ではようやくというか、終身雇用だったり新卒一括採用などの昭和的動きが商習慣的にも終わりを迎えつつあり、例えば先日公表された電通の個人事業主制度などは大きな話題になりました。仕事を人生の全てではなく、一部として考えれば色々な選択肢を渡り歩くのは当然で、その中に一時期は個人や小さなチームで生きてみたい、というものが出てきても不思議ではありません。

ただ、この生き方、まだまだ環境が揃っているとは言い難い部分があるんですね。特に「どうやって自分たちを知ってもらうか」というのが難しい。企業は何か製品やサービスを出す際「プレスリリース」という手法を使ったり、広告を打ったりして認知を取るわけですが、当然この方法は資本力勝負な面があります。

では資本力にどうやって小さなチームが立ち向かうか。それが先程例に挙げたAllbirdsのような「共感」を生み出す力と方法なのです。

特にプロセスは継続的に情報を出すことができます。自分がどうやって製品を作っているのか、なぜこれが必要なのか、そういったストーリーを組み込みながら、小さく情報を出していくと、自然とその考え方に同調してくれる人々が集まってくれます。課金してくれるかどうかは設計次第ですが、それでもそういう人の輪が広がっていくと、自然と小さな活動が徐々に力を持っていくのです。ちなみにBRIDGEも小さいイベントを通じてスタートアップコミュニティで共感を重ねた結果、今の状況があります。

ソーシャルメディアの発達も後押ししてくれていて、Twitterやブログサービスなどで自分の考え方を表現しやすい時代になりました。そこに共感できるストーリーがあれば、大量の広告よりも効果的に人を巻き込むことができます。

個人や小さな経済活動が広がる時代というのは向こう数年でもっと広がると思います。今回のパンデミックを機にリモートワークが進み、遠方に引っ越した人たちの話題もよく耳にするようになりました。特殊な資金調達をしてIPOを目指すスタートアップのような方法は極めてリスキーですが、自分のスキルや経験を活かした生き方というのはライフイベントに合わせて選択できてしかるべきなのです。

パッションエコノミーという時代にいかに共感を生み出すことができるかが、今後の経済活動を占う鍵になるのではないでしょうか。

iPad ProでMac OS「Big Sur」を使ってみた

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先月お披露目となったM1 Mac、話題になってますね。個人的にはM1チップを体験したいと思いつつ、Big Surの方で試したいことがあったのでそちらをやってみました。 タッチパネルでの擬似体験です。 参考記事 macOS「Big Sur」公開:iOSとの融合進む(1/2) Sillicon Mac:石橋を叩いて渡るApple、初の「M1」チップ搭載Macを振り返る(1/4) 特集:新型MacとBi…

通知センターはiOSとほぼ同じインターフェース、体験になりました

先月お披露目となったM1 Mac、話題になってますね。個人的にはM1チップを体験したいと思いつつ、Big Surの方で試したいことがあったのでそちらをやってみました。

タッチパネルでの擬似体験です。

参考記事

本誌の翻訳パートナーメディア、VentureBeatの辛口コラムニストでガチのApple信者、Jeremy Horwitz記者がレポートしている記事にもありましたが、今回のBig SurではiOSとの融合がかなり進んでいます。例えばメニューバーのコントロールパネルのデザインがiOS側に寄せられていたり、M1チップでは実際にiOSアプリの一部を動かすこともできるので、いよいよMac OSとiOSの差が縮まってきている印象です。

で、Jeremy記者が記事中で残念としているものに「タッチパネル」がありました。そう、今回の新たなMacファミリーには強力なM1チップが載ったものの、筐体はほぼ同じ(一部ポートが減って同時接続するディスプレイの数が減った分マイナス)で終わったのですね。まあ、現時点でM1チップへのネイティブ対応がまだまだの状況で、いきなりハードにまで手を入れるというのは今の時代のAppleはやらないかなと。逆に言えばスティーブ・ジョブズ時代だったらかなり斜め上のハードが登場していたかもしれません(苦笑。

さておき、Big SurがiOSに近くなったのであれば、間違いなくタッチ操作は必要になってきます。

実はiPadでMac OSを簡単に動かす方法があります。そう、Sidecar機能です。正しくはワイヤレス(BluetoothとWifiがONになってる必要あり)経由でMacの表示をiPad側に転送しているだけなので、ここで動いているわけではないのですが遅延もほぼなく、実際にMacbookを扱っているような感覚で操作できます。実際、私は執筆時のメインマシンとしても使っていたりするので間違いはないです(ただし、同じローカルネットワーク内にいる必要があります。それと全てのタッチ操作ができるわけではありません)。

iPad上で直接画像を指で拡大したりスクロールするのは便利

新たにデザインが変更となった通知センターやポップアップは、確かに指で触りたくなるアイコンになっているので、大きさの問題はあるものの、無意識に指が動きそうになります。そして現時点で便利なのが拡大縮小、二本指でのスクロールですね。プレビューアプリなどで指のピンチが使えるのですが、画像処理する時に直感的で現時点NOW、便利に使ってます。スクロールも指でやれるので左手でスクロール、右手でマウス操作、という両刀使いができます。

インターフェース的にはまだMac OSのデザインがちょっとiOSに近いた感じだけなので、マウスは必須ですしキーボードも普通に使いますが、それでも境目がなくなっていくことでMac側で使えるアプリが一気に拡大するなど、期待できる点は多いです。

あともうひとつ。バッテリーと通信ですね。

実は筆者は以前、Macbook Airを使っていました。グラフィックがかなり弱く、例えばAdobe製品や映像・音声関連を動かすと非力感は否めず、また、何よりもバッテリーが全然持たなかったです。ウェブブラウザとエディタアプリを使う程度で2時間持つかどうか。Work From Homeが始まったこともあって、持ち運びの機会が減った今年最初に据え置き(場合によって持ち運んでもOK)のMac miniにしました。

今回新たに登場したM1 Macbook Air/Proは多くのYouTuberたちがレビューしている通り、バッテリーの持ちがすこぶるよくなったようです。友人も使っているので聞いてみたところ、体感的にはiPadと同じような減り方になったとウキウキ声だったのを記憶しています。

iPad Pro(12インチ)経由でBig Surを使ってみた(筆者撮影)

iPadはバッテリーの持ちはもちろん、同時にLTE通信が可能です。そう、ずっと夢にまでみたSIM内臓Macbookの擬似体験です。Sidecarでは同じローカル環境にいないと本体のMac miniと接続できないので、外出する際はリモートデスクトップ(筆者はSplashtopというアプリを使ってます)なのですが、擬似的とは言え、やはりすぐに繋がる環境を一度手に入れるとテザリングする気が失せてしまいます。Macbookは現在の筐体だとタッチ操作やモバイル通信を前提にしていないので、もしかしたら今回試したiPadによる擬似Mac環境の方が現実に近いかもしれません。

それ以外に今回導入が期待されていたファンクションとしてFace IDもありました。ラップトップやデスクトップは室内での利用が多いので、マスク問題も解決されますし、何より便利です。今もまだ、パスワードでキーを叩く必要があるのは主にMac環境ですから、数年内にこちらに移行していただきたいところです。

補足:Sidecarでマウスを使う場合、iPad側にBluetooth接続したものは使えません。ややこしいですが本体のMacに繋がってるマウスを操作する必要があります。個人的にもハマったので補足までに。

もはやゲームだけのものではないーー70億ドル評価の「Discord」が得た新たな価値

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ピックアップ:Discord is close to closing a round that would value the company at up to $7B ニュースサマリ:オンラインチャットプラットフォームの「Discord」は新たな資金調達ラウンドを間もなく終了する。TechCrunchが関係者の話として報じているもので、今回の調達での価値は最大70億ドルとみられる。6月に行った1…

Image Credit:Discord

ピックアップ:Discord is close to closing a round that would value the company at up to $7B

ニュースサマリ:オンラインチャットプラットフォームの「Discord」は新たな資金調達ラウンドを間もなく終了する。TechCrunchが関係者の話として報じているもので、今回の調達での価値は最大70億ドルとみられる。6月に行った1億ドルでは35億ドルの価値であったため、5ヶ月で2倍の評価を得る。

話題のポイント:2015年5月、Discordはゲーマー向けの音声通話・メッセージングアプリとしてローンチされました。今ではマルチプレーをする際の必需品としてゲーム好きなら知らない人はいない存在となり、コロナの影響もあって2020年の月間アクティブユーザー数は1億2000万人に到達しているそうです。

そんな急成長を遂げるDiscordですが、愛好している筆者自身その役割の変化を感じています。それは、単なるコミュニケーションツールから懐かしく心地よいオンラインのたまり場のような場所になってきているのです。

元々サーバーに招待することでコミュニケーションが始まるDiscordでは、始めるきっかけのほとんどが顔見知りの友人とゲームをするときの通話機能が目当てです。役割として求めるものもSkypeやHangoutと変わりはありません。

それがオンラインでしか知らない友人との待ち合わせ場所になり、同じゲームが好きという共通点しかない人との情報交換の場になり、業界単位で良質で早い情報を交換する場に変わってきています。それまでTwitterでたくさんの人をフォローすることで必死に集めていた業界の流れはもはやなんの苦労もなくDiscordで集められるようになりました。Twitterで発信を繰り返し、影響力がなんとなく強まっているように見える「まやかし」のような数字はそこにはありません。

アニメの聖地である秋葉原に赴くような、中国テクノロジーの聖地深センに赴くような、そんな気持ちにさせてくれるコミュニティがDiscordにはあります。Discordを使わない人の最大の誤解は間違いなく「ゲーム向け」というターゲット設定でしょう。

今年のはじめに35億ドルの評価で1億ドルを調達してから数カ月。今回の調達でさらにコミュニティ向けに洗練されていくDiscordがメンタルを落ち着かせられるオンライン空間を作り上げることに疑いの余地はありません。

教育系ARをリードするMergeの戦略を紐解くーーFacebook SparkARへの拡張を発表

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ピックアップ:Merge Brings Hands-on Digital Teaching Aids to Instagram with Merge Cube ニュースサマリ:幼稚園から高校までの教育向けARソリューションを提供する「Merge」は11月20日、FacebookのSparkARプラットフォームに機能拡張したことを発表した。これによりMergeCubeがInstagramカメラ内で利…

Image Credit:Merge

ピックアップ:Merge Brings Hands-on Digital Teaching Aids to Instagram with Merge Cube

ニュースサマリ:幼稚園から高校までの教育向けARソリューションを提供する「Merge」は11月20日、FacebookのSparkARプラットフォームに機能拡張したことを発表した。これによりMergeCubeがInstagramカメラ内で利用可能となる。Instagramで使えるようになった機能は次の4つ。

  • 人体ー鼓動する心臓、頭蓋骨、脳、肺
  • 細胞ー微細な植物細胞、動物細胞、真菌細胞、ニューロン
  • ウイルスー風邪やCOVID-19などのウイルス
  • 太陽系ー太陽系全体の軸方向の傾き、回転や地球と月の公転

話題のポイント:AR / VRのSTEM(科学、技術、工学、数学)プラットフォームとして、米国学校図書館協議会やTech&Learning ISTE 2019などで受賞歴がある同社の特徴は「マーカー」を使ったMerge Cubeにあります。19.99ドルで販売するMerge Cubeは正六面体のそれぞれの面をデバイスに認識させ、デジタルオブジェクトの向きと位置を一致させるためのマーカーの役割を持ちます。真新しい技術ではなく、正六面体の回転情報のやり取りが主となるシンプルな仕組みで動作します。

Image Credit:Merge

今、ARに関わる多くのチームは空中にマーカーなしでデジタルオブジェクトを配置し、様々な入力インターフェイスで操作するようなシステムを開発しようとしています。素直に考えれば、何か基準となる固有のものがないと使用できないシステムは不便そうです。そこでMergeはプラットフォームの中心となる、汎用性の高い皆が持っているハードウェアを売る存在となる戦略を取ります。AlexaやGoogle Home、スマホやPCが分かりやすい例でしょう。

Video Credit:Merge

だからこそコンテンツはMerge Cubeが売れるような、手首をひねって見たくなるような、普段見てるものでも違う側面を覗き込むような感覚が芽生えるものが充実しています。ビジネスモデルのシンプルさが手数を生み、シミュレートされたデジタルオブジェクトを見るというアイディアがウケたのだと思います。さらに言えば、この状態を作れる内容として教育系STEMは相性が良かったと言えます。

さらにこの戦略はMergeにサードパーティを呼び込むきっかけを与えます。

趣味や目的を持ったクリエーターが自己表現の一環として行う二次創作には爆発力があります。コミックマーケットやエンターテイメントの切り抜き動画などは導入として大きな役割を持つ良い例です。なので、今回のSpark ARへの拡張によるInstagram、Facebookでのエフェクト利用は、学生の学習体験を魅力的で有意義なものにするというよりは、クリエーターの自己表現欲を満たしてサードパーティとして参加させる役割の方が大きように思います。

AR/VRが日常生活に普及するキラーハードウェアの登場が待たれる現在において、教育というアプローチで事業を成立させているMerge。たしかにスマホのような革命が起きたときには淘汰される存在になるかもしれません。しかしこういった取り組みを通じてデジタルアセットに慣れ親しんだデジタルネイティブな世代が社会でAR/VRの価値を真に解き放つことを考えれば、彼らの功績はすでに偉大なものと言えます。

タイピングより効率的な音声コーディング「Serenade」の価値ーー病気でもエンジニアとして生きる方法

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ピックアップ:Serenade snags $2.1M seed round to turn speech into code ニュースサマリ:音声コーディングアプリを開発する「Serenade」は11月23日、AmplifyPartnersとNeoが主導するシードラウンドで210万ドルの資金調達を公表している。同社は効率を犠牲にすることなく、従来の入力メカニズムに依存しない、よりアクセスしやすい…

Image Credit:serenade

ピックアップ:Serenade snags $2.1M seed round to turn speech into code

ニュースサマリ:音声コーディングアプリを開発する「Serenade」は11月23日、AmplifyPartnersとNeoが主導するシードラウンドで210万ドルの資金調達を公表している。同社は効率を犠牲にすることなく、従来の入力メカニズムに依存しない、よりアクセスしやすい音声によるコード記述方法を提供している。今回の資金はSerenadeチームの強化とプラグインや自動化などの開発強化に使われる予定。

話題のポイント:会話のように自然にOSとしゃべりする。これがSerenadeが生み出す価値です。

Quoraのエンジニアだった共同創業者のMatt Wiethoff氏が同じ動作を繰り返すことで組織損傷や炎症を起こす反復運動過多損傷を発症してコードが書けなくなったことをきっかけに創業されたのが同社だそうです。エンジニアが生産的な開発ができることを前提に作られているため、これまでのディクテーションソフトウェアとは全く異なる新しい音声コーディングアプリと言えます。

ディクテーションソフトウェアはNATOアルファベットを使用して話す必要があったり、単語とキーストロークの独自のマッピングを記憶する必要があったりします。たとえ使いこなせたとしても、ソースコードで発生するすべての文字を口述するのはあまりに面倒です。Pythonで関数を作成するとき「d>e>f>h>e>l>l>o>左括弧>右括弧>コロン>改行>インデント…」と言っていたのでは生産的とは言えません。

Video Credit:serenade

Serenadeの共同創業者Tommy MacWilliam氏はこの音声コーディングアプリが最終的に単なる身体的障害を手助けする救済ツールから飛躍し、コーディングを変えうる発明になるとブログに綴っています。

Ultimately, we don’t think Serenade can be just as fast as typing—we think it can be faster. (Serenadeはタイピングほど開発を速くするとは思いません。もっと速くなると思います)

では具体的に他の音声プログラミングソリューションとはどのように違うのか、特徴をまとめていきます。

コード専用にカスタムモデルした音声テキストエンジン

音声テキスト技術の多くは典型的な会話で訓練されていることがほとんどです。会話の中で「attr」または「enum」と言う頻度を考えれば分かる通り、これはコードには理想的な学習材料とはなりません。一般的なプログラミング構造、変数名、およびプログラミング時に言う他の単語を学習し、編集しているファイルのコンテキストを使用できることさえできます。

たとえば、関数の中に「thebridge」という変数があるとします。コンテキストがない音声テキストエンジンでは一般的な用語でないため「ザブリッジ」という単語を低くランク付けしてしまいます。一方で、コンテキストを使用できるSerenadeでは「ザブリッジ」のように聞こえた言葉が変数である可能性が高いことを知っているため、代替リストのトップにランク付けできます。つまり変数、関数、クラスなどの名前を口にするとき、Serenadeはそれが何を意味するのかを正確に読み取れるのです。

Video Credit:serenade

自然言語でコーディング

たしかに文字ごと単語ごとに口述するのは非効率的で遅いです。それはプログラム言語が自然言語と文法が異なることに起因します。仮に関数の中身を自然言語で構築できるのであれば、口述が日常会話並みの意味伝搬速度を発揮することになるでしょう。

Serenadeは構文や暗記を気にすることなく自然な英語の入力で「create function hello」と言うだけでhello関数を作成できるようになっています。もちろん「クラスの削除」や「パラメータのURLの追加」など既存コードの操作も自然言語に対応しています。

ファイルの上部にある関数を削除したいときには「最初の機能を削除」と言うだけ。関数を書いている最中で、fooという変数を書き忘れていたときには「パラメータfooを追加」と言うだけです。

この機能が改善されていく未来にMacWilliam氏が言う「タイピングを超える効率性」をエンジニアにもたらします。タイピングを完全に置き換える場合でも、キーボードと一緒に使用してワークフローに多様性と柔軟性を導入する場合でも、音声によるコーディングは開発速度の向上に役立つことは間違いなさそうです。

Epic Gamesが狙う「バーチャルセレビリティ業界」のポジションーー彼らはなぜフェイストラッキング企業を買い集める(2/2)

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(前回からのつづき)今回のターゲットユーザーは「バーチャルセレビリティ」でした。所謂キズナアイのようなバーチャルで活動する有名人のことです。YoutubeやBilibiliで動画投稿とライブ配信するVtuberだけでなく、TikTokやInstagramでインフルエンサーを務めるImma、Binxieもバーチャルセレビリティの括りです。 年々登録者が増すにつれて視聴時間も増加し、2019年には上位…

Image Credit:imma.gramitsbinxie

(前回からのつづき)今回のターゲットユーザーは「バーチャルセレビリティ」でした。所謂キズナアイのようなバーチャルで活動する有名人のことです。YoutubeやBilibiliで動画投稿とライブ配信するVtuberだけでなく、TikTokやInstagramでインフルエンサーを務めるImma、Binxieもバーチャルセレビリティの括りです。

年々登録者が増すにつれて視聴時間も増加し、2019年には上位20人の視聴時間が2018年の2倍となりました。2020年はカバーが提供するホロライブからYouTube登録者数100万人を超えるライバーが一気に3人も誕生するなど、2019年の成長率を上回るペースで影響力を増しています。

すでに企業に所属して、マネジメントを受けるタレントは2D/3Dキャクターを操作するフェイスモーション技術を提供されているものの、今後ゲーム実況や雑談配信から企画が多様性を増した際、キャラクターが生きる世界にはゲームエンジンが必要不可欠になります。

開発者をプラットフォームごとに最適化する業務から開放し、今後も増えるであろう視聴方法(Oculus、PSVR、iPhone、iPad …etc)に対応し続けていくUnreal EngineかUnityのどちらかがゲームエンジンとして選ばれることになるでしょう。

その時、ウェブカメラだけでリアルタイムな高精度なフェイスモーションキャプチャができて、Discord/OBSなどで利用できる仮想ウェブカメラ機能を実現しているHyprsenseの技術はバーチャルセレビリティはもちろん、バーチャルセレビリティ予備軍にも刺さる要素となり得ます。

Image Credit:hyprsense

まとめると、現在進行系で拡大を続ける「バーチャルタレントが自由を手にするツルハシとなる」これがフェイスモーションキャプチャ技術企業を買収し続けるEpic Gamesの目論見かなというのが筆者の考えです。

コンソールやPCでプレイすることを前提とし、視覚的に豊かなゲームに最適である一方、重く、使う人を選ぶ傾向があるのがUnreal Engineです。モバイルゲームではUnityが主流ではありますが、5GやGoogle Stadia/GeForce NOWなどのストリーミングサービスを背景に今後モバイルゲームのビッグタイトルに関わっていくことも十分視野に入れているでしょう。

追い風吹くUnreal Engineが現実と仮想世界の狭間でどんなツールをクリエイターに提供するのか。デジタルツインを始め、単なるゲームを生み出すための物理エンジンから異業種への基盤技術として飛躍しようとするゲームエンジンの動向に今後も目が離せません。

Epic Gamesが狙う「バーチャルセレビリティ業界」のポジションーー彼らはなぜフェイストラッキング企業を買い集める(1/2)

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ピックアップ:Real-Time Facial Animation Dev Hyprsense Joins Epic Games ニュースサマリ:Epic Gamesは11月16日、主要なリアルタイムフェイスモーションキャプチャ技術の開発者であるHyprsenseを買収することを発表している。Hyprsenseは創業まもなくVRHMDの顔追跡システムを開発。次にモバイル、PC、組み込みプラットフォ…

Image Credit:hyprsense

ピックアップ:Real-Time Facial Animation Dev Hyprsense Joins Epic Games

ニュースサマリ:Epic Gamesは11月16日、主要なリアルタイムフェイスモーションキャプチャ技術の開発者であるHyprsenseを買収することを発表している。Hyprsenseは創業まもなくVRHMDの顔追跡システムを開発。次にモバイル、PC、組み込みプラットフォーム向けの2Dウェブカメラベースの汎用顔追跡ソリューションを開発した。HyprsenseのメンバーはEpic Gamesのゲーム開発チームと緊密に連携し、3LateralおよびCubicMotionが主導するデジタルヒューマンチームとも協力する。

話題のポイント:Epic Gamesは2019年1月に「デジタルヒューマン」の技術(アニメーションと人間の表情をリアルタイムで置き換えるリグロジック)を持つ3Lateral、2020年3月にはゲームタイトルで使われていたソフトウェアとモーションキャプチャ用のハードウェアリグをセットにしたPersonaシステムを持つCubic Motionを立て続けに買収しています。つまりEpic Gamesによるフェイスモーションをキャプチャする技術を有する企業の買収は今回のHyprsenseで3社目となります。

一見するとリアルタイム、フェイスモーションキャプチャという共通点があるため同じような企業を買収したように感じますが、それぞれテレビ、映画、ゲーム、ビデオ会議、配信と用途が違うためアプローチや精度、必要となるハードウェアでさえ異なるものです。

人間に似たロボットやCGに対して否定的な感情が芽生える「不気味の谷現象」を解決するためという大義名分はあるものの、これら全てをUnreal Engineに組み込むことで使用制限を大きく広げたいというのがEpic Gamesの戦略だと考えられます。

現在主に使われているゲームエンジンはUnreal EngineとUnityの2つしかありません。SteamのSourceエンジン、AmazonのLumberyardエンジン、ゲームが会社が自社開発するゲームエンジンも使われていますが利用者数は少なく、大手パブリッシャーの任天堂やスクウェア・エニックスもUnrealを使用したタイトルを販売し始めています。

Unityが基本的にサブスクリプション型で一定収益を得ているのに対して、Ureal Engineはライセンス料で収益を得ています。Unreal Engineを使用して稼いでくれればくれるほど比例して収益が大きくなる仕組みです。つまり、活用例が少なくても高単価であればUnreal Engineのライブラリを充実させるのに十分な理由となります。(次につづく)

VRトレーニングの効果はいかに?:Walmartの実証実験にみる「VRが解決するもの」(2/2)

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ピックアップ:Transfr Secures $12M Series A Financing to Scale Immersive VR Job Training Platform (前回からのつづき)ピックアップタワーは顧客がインターネットで買った品物を、店舗で受け取るための保管機です。生鮮品を取り置くオンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)ではなく、一般商品が対象ではあるものの、従業員…

Image Credit:cleveron

ピックアップ:Transfr Secures $12M Series A Financing to Scale Immersive VR Job Training Platform

(前回からのつづき)ピックアップタワーは顧客がインターネットで買った品物を、店舗で受け取るための保管機です。生鮮品を取り置くオンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)ではなく、一般商品が対象ではあるものの、従業員が扱えるようになるためには比較的複雑なプロセスを覚え、特定の方法で実行する必要があります。従来は人間の指導員を店舗に派遣してeラーニング、ハンズオントレーニング、キットを使った模擬トレーニングを丸1日かけて実施していたそうです。

実際にピックアップタワーにおいてVR環境を作成してセットアップする方法を従業員に示したところ、 移動不要でトレーニング時間を96%減のわずか15分まで短縮することに成功します。Walmartは新型コロナウイルス流行に伴う食料品や生活必需品の需要急増に対応するため、20万人の組織変更を2カ月程度で実施するなど人の出入りが激しい企業です。人材を移動させて行う高コストな人材育成を大幅に抑えられたことは小さい成果ではありません。

Strivrによると、Walmartでは他にもカスタマーサービスに関する200のアカデミーにVRトレーニングを追加したパイロット・プログラムを実施しています。結果として従来のトレーニングに比べて満足度が30%上昇、テストでのスコアも70%上昇、さらに10%〜15%高い知識保持率を記録したそうです。

Walmartのピックアップタワーに限らず多くのスキル習得トレーニングはセミナーからビデオ、ロールプレイングから終日のグループトレーニングセッションが必要です。これらの受動的な方法は時間がかかり、規模が大きくなく、労働者を数時間または数日間仕事から引き離す必要があります。

しかし、受動的なトレーニング方法は必ずしも知識の保持につながるとは限りません。受講から数時間で習ったことの約3/4を忘れてしまうことも珍しくないといいます。従業員がフロアに着くまで、それらのトレーニングが機能したかどうかトレーニングへの投資が報われたかどうかは明確ではないのです。

VRプラットフォームでは、従業員がどこを見ているか、何に時間をかけすぎているかを追跡できます。現場のシミュレートから各従業員のフォローまで経営者が不安を抱えるROIの最大化という点に、今後更にVRトレーニングは活かされていくでしょう。

Image Credit:TRANSFRVR

trainingmagによると、米国企業はこういった企業研修に2019年に830億ドル、参加者1人あたり約1,300ドルを費やしています。人がすでに持つスキルと仕事人必要なスキルの間にはギャップが存在あり、 特に製造業ではスキルギャップにより、2018年から2028年の間に240万人もの雇用が埋められず、最大2.5兆ドルの経済的影響が生じる可能性があると言われます。

そうした背景もあって、スキルがほしい人だけでなく企業や州単位でも関心が高まっています。今回取り上げたTransfrはアラバマ州全体の支援を開始し、スキル取得の目的でコミュニティカレッジシステムや産業労働者委員会で使用されています。Transfrは2021年までに10〜15の同様の契約を締結を進めているそうです。

企業がこの実証済みの方法を導入するにつれ、Walmartのようなアーリーアダプターの事例がアーリーマジョリティを説得し、今後活用事例が増えていくサイクルを生み、VRトレーニングがVRにとってのキラーコンテンツとして確立されるのは遠い未来の話ではありません。

VRトレーニングの効果はいかに?:Walmartの実証実験にみる「VRが解決するもの」(1/2)

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ピックアップ:Transfr Secures $12M Series A Financing to Scale Immersive VR Job Training Platform ニュースサマリ:VRトレーニングを全米の認定職業訓練プログラムに導入するために取り組む「TRANSFRVR」は11月20日、シリーズAで1,200万ドルを資金調達した。Firework Venturesが主導し、既存の…

Image Credit:TRANSFRVR

ピックアップ:Transfr Secures $12M Series A Financing to Scale Immersive VR Job Training Platform

ニュースサマリ:VRトレーニングを全米の認定職業訓練プログラムに導入するために取り組む「TRANSFRVR」は11月20日、シリーズAで1,200万ドルを資金調達した。Firework Venturesが主導し、既存の投資家のAlbum VC、Imagination Capital、個人投資家としてGreg Norman、Stuart Udell、JeffVinik、DavidBlakeが加わった。

同社はVRによるスキルトレーニングのための製造工場や倉庫のシミュレーションを作る。入門レベルでは安全で効果的に作業を学ぶ方法を提供し、導入例としてはロッキードマーティン、マツダトヨタマニュファクチャリングなどがある。

話題のポイント:VRの活用事例として「VR×トレーニング」が様々な産業で認められつつあります。今回取り上げたTransfrはニュースにあったようにロッキードマーティンやマツダトヨタマニュファクチャリング、4月にシリーズBで3,000万ドルの資金調達したStrivrはWalmartやVerizon、GEに人材育成の重要な要素としてVRトレーニングを提供しています。

もちろん、これら導入を決めた企業は実証実験を行っているわけですが、果たしてVRトレーニングによってどのような効果が得られたのでしょうか。今回はWalmartの事例を紹介していきます。

Walmartは現在、カスタマーサービストレーニングへの新しいアプローチとして、1万7,000台を超えるOculusGoを全米のすべての店舗に導入しています。これにより約100万人を超える従業員がどこにいても仕事に欠かせないスキルを学ぶことができる状態です。

Walmartといえば、Eコマースや小売のデジタル化に多額の投資を実施して復活した企業として、日本でも話題に上げることが少なくありません。その代表的な一例としてピックアップタワーがあります。(次につづく)

VCがSDGsと社会貢献に取り組むワケーー鍵はソーシャルスタートアップとの“繋がり”に

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事(前半、後半)からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび社会貢献活動チームが共同執筆した。 グローバル・ブレイン(以下、GB)はSDGs達成・社会貢献に取り組むべく、本格的な活動を開始しました。なぜ我々ベンチャーキャピタルが取り組むのか、そしてどのように社会に貢献してい…

画像提供:ヘラルボニー・写真左から共に代表取締役の松田崇弥氏(CEO)、松田文登氏(COO)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事(前半後半)からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび社会貢献活動チームが共同執筆した。

グローバル・ブレイン(以下、GB)はSDGs達成・社会貢献に取り組むべく、本格的な活動を開始しました。なぜ我々ベンチャーキャピタルが取り組むのか、そしてどのように社会に貢献していくのか、これまでの活動を振り返りながら未来を語ってみたいと思います。

ヘラルボニーをご存知ですか?

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、福祉を起点に新たな文化を作ることを目指すソーシャルスタートアップです。

自閉症という先天性の障害のある兄を持つ双子の経営者が2018年に創業しました。経営者の二人は幼いころから兄に対する社会からの目線に疑問を抱いており、障害を敢えて個性と言い切ることで、違う視界から、違う世界を、社会に向けてプレゼンテーションするために事業を営んでいます。社会のために障害のある方を順応させるのではなく、彼等の個性のために社会が順応していく世界を目指すのがヘラルボニーの使命です。

画像提供:ヘラルボニー

現在、ヘラルボニーは約1,000点以上の知的障害のあるアーティストが描く作品と消費者を繋ぐキュレーター事業を行っています。慈善活動ではなくビジネスを通して、事業パートナーである福祉施設やアーティストの方へ対価をお支払し、互いにサステナブルな関係を構築しています。

GBの取組み

GBがソーシャル・スタートアップの支援活動を本格的に開始し始めたのは2018年からです。

当時、ソーシャルスタートアップへの面会を開始し、2019年2月にはソーシャルスタートアップや彼らを支援する方を集めたイベントを開催し、約140名の皆様にご参加いただきました。それを皮切りに、社内でも社会課題に対する認識を高めるためLGBTQに関する研修を開催するなどしていましたが、その経緯の中でヘラルボニーのみなさんともお会いしています。

ヘラルボニーの活動をお手伝いするため、昨年主催したGBAF(※)の会場でヘラルボニーの展示会を開催し、ご来場者の皆様に作品をご覧いただいたり、一部の絵画はGBでも購入しました。今後はオフィスでもお越しいただく皆様に作品をご覧いただけるよう展示する予定です(※年次開催のイベント「グローバル・ブレイン・アライアンスフォーラム」)。

ヘラルボニーの展示会の様子

社会課題を解決する「繋がりを生み出すハブ」

これまでのソーシャルスタートアップの支援活動を通じて、具体的にこの領域で必要とされていると感じるのはやはり「繋がり」です。

端的に言えば、ソーシャルスタートアップを大企業の方にご紹介して、そこで生まれる協業をひとつずつ丁寧に積み重ねていく。ステージが早いソーシャルスタートアップは信用や成長支援を必要とされています。GBはスタートアップへの投資と大企業とのオープンイノベーションの推進を長年実施してきた強みがあります。

例えば福祉施設への支援という観点では直接福祉施設に寄付をする方法もあります。しかし、GBが敢えてヘラルボニーが実施されているビジネスに沿って協業支援を行ったのは、彼らのようなスタートアップが成長し、より多くの福祉施設とのお取引が増えることこそ、エコシステム全体を持続的な活動にし得ると考えたからです。

このように今後もイベント等を通じてソーシャルスタートアップの方を支援していきたいと考えています。

私たちのネットワークやノウハウを活かし、かつ大企業のお力をお借りしながらステージの早いソーシャルスタートアップの認知度や信用度の向上、そしてソーシャルスタートアップが大企業との協業の機会を得ることが、このエコシステムを正しく継続的に維持することに繋がると考えています。

画像提供:ヘラルボニー

また、GBの社内では定期的にSDGsやそれぞれの社会課題について学ぶ機会を今後設けることで、社内でのより活発な啓蒙活動を実施していきます。その活動の中では、日々接しているスタートアップの方々のうち社会課題の解決に取り組んでいる方をお呼びし、知見の共有をしていただくことで社員の視野を広げることも計画中です。

日本のいま

世界の社会起業家900人に聞いた「社会起業家にとって最も良い国」調査(2016年)では日本は第40位です。評価項目は「政府支援」「人材確保」「事業投資の機会」「社会起業家の生活力の確保」の4点ですが、世界のGDPランキングから考えるとやはり低水準と言わざるを得ません。

GBだからできることをやる。

投資という新たなアイデアと資本をつなぎ、事業を生み出すことを手掛けてきたGBだからこそ、社会と企業、消費者、関心、こういったものをつなぎ合わせる「ハブ的役割」を担えるのではないかと考えています。次回は企業がSDGsにどう向き合うべきか、その基本的な考え方と、GBの役割をもう少し掘り下げてお伝えしたいと思います。

企業がSDGsに取り組むべき理由

池田 真隆氏:株式会社オルタナ取締役 オルタナS編集長

ベンチャーキャピタルがSDGsの達成や社会貢献を目指すとどうなるのでしょうか。その活動の方向性を語るために、先日開催したGB社内でのワークショップの様子を紹介させていただきます。

今回ご講演いただいたのは、若者による社会変革を応援するソーシャルメディア「オルタナS」池田編集長です。池田編集長の講演内容を元に、企業の社会貢献やSDGsの取り組みの潮流・将来について本記事でお伝えします。

そもそもの企業における社会貢献活動は主にCSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)として位置付けられてきました。最近では国連の提唱するSDGsとも結びつけられているケースも多いですが、その違いは何でしょうか。

まず、企業のCSRの歴史は古く、1920年頃に遡ります。経営管理の哲学を提唱したオリバー・シェルドン氏によりCSRの概念が生まれ、公害や労働など問題を抱えることもある企業が社会とどう向き合うべきなのか、というコンプライアンス遵守、企業活動の「ガバナンス(企業統治)」強化の一環として広がっていきました。これらはネガティブ・インパクトの最小化が目的です。また、社会貢献活動やフィランソロピーなどのポジティブ・インパクトの最大化を目的とした企業活動も行われてきました。

しかし、現在では深刻化する社会課題の解決や企業の社会責任はますます重要になり、金融庁と東証の定める「コーポレート・ガバナンス・コード」に社会・環境問題に関する持続的な活動が盛り込まれるなど、多くの企業が対応が求められるようになっています。

そこで、これからの企業のCSRは、企業価値創造を目的としたサプライチェーンを含むリスクマネジメントや行動規範などのコンプライアンス遵守の拡大や、価値創造型CSRあるいはCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)と呼ばれる経営手法が注目されています。

資料提供:株式会社オルタナ

さて、企業への社会要請から広まったのがCSRであるのに対して、産業革命以降急激に活発化した人間活動によりリスクが増した地球環境の持続可能性のために、国際目標として生まれたのがSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)です。

SDGsは2001年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における2016年から2030年までの国際目標であり、17の目標と169のターゲットで構成されています。

資料提供:株式会社オルタナ

それでは、企業は具体的にどのようにCSRやSDGsに取り掛かればよいでしょうか。近年注目を集めているのは、先ほどの価値創造型CSRに位置付けられている「アウトサイド・イン(社会課題の解決を起点にしたビジネス創出)」と呼ばれるアプローチです。つまり、今までの顧客ニーズからのマーケットインや技術シーズからのプロダクトアウト型の開発ではなく、視座をあげて社会課題やニーズから新規ビジネスを作る、という開発手法です。

資料提供:株式会社オルタナ

では、例えば環境問題に対して企業がアウトサイド・イン・アプローチを取り入れるとどのようになるのでしょうか。

近年、海をはじめとする自然環境にプラスチックが悪影響を及ぼすというニュースをしばしば目にするようになりました。私たちの身近でもゴミ袋の有料化や、ストローが再生利用可能な素材に変化するなど、社会的課題としてプラスチックの利用方法が急速に見直されています。

例えば、この領域でも先導的な活動をしているユニリーバは、2025年までにプラスチックパッケージを100%再利用可能・リサイクル可能・堆肥化可能にすることなどを含んだ「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を宣言しています。

アウトサイド・イン・アプローチを通じて、パッケージ原材料を持続可能なものに切り替えるための新たな素材開発やより環境にやさしい製造工程、販売網が構築されるなど、社会課題解決そのものが新規ビジネスに繋がる可能性があります。

未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していく・・・こうした姿勢が「未来の顧客」に対する新しい商品・サービスの提供を可能にし、結果的に企業の持続的な成長に結びつくのではないでしょうか。

最後に、金融の世界でもESG投資の普及が進んでいます。ESG投資とは、財務指標に偏らず、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮した投資活動を指し、投資先である企業に対してより一層社会との対話を求める取り組みです。国内外で浸透に向けた官民の活動が加速しています。

ここまでオルタナS池田編集長のご講演を参考に、SDGsやCSR・企業の社会貢献についてまとめてきました。事業開発に取り組む大企業やスタートアップの皆さんも、未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していくことができるかもしれません。こうした姿勢を取り入れることで未来の顧客や将来世代に対する新しい商品・サービスの提供が可能となり、結果的に企業の持続的な成長や社会的インパクトにも結びつくのではないでしょうか。

GBが取り組むSDGs達成と社会貢献の考え方

最後にGBの具体的な活動内容についてご紹介します。

ベンチャーキャピタルであるGBは、起業家支援とイノベーション促進を通して、社会課題の解決と社会の発展に貢献できるよう努めてきました。ソーシャルスタートアップであるヘラルボニーとの協業では、主催イベントでの情報発信、同社の事業拡大に向けた大企業ネットワークのご紹介、GB主催のヘラルボニ―作品展示会開催等を通じて、ご支援に努めてきました。

そしてこの度、新たに「SDGs・社会貢献方針」を策定し、下記3つのテーマに関する活動を通して、SDGsの達成と社会の持続可能な成長に貢献していくことを目指していきます。

  • 社会福祉・コミュニティ支援:地域や世界が抱える問題を当事者として直視し、社会課題の解決とコミュニティの繁栄に繋がる活動を推進します。
  • 次世代育成:多様性のある将来を切り開くために、次世代を担う青少年たちのスタートアップマインド育成と成長に貢献する活動を推進します。
  • 地球環境保全:持続可能な社会実現のため、事業活動と経済活動の両立を目指し、自然環境や生物多様性の保全を支援する活動を推進します。

GBは投資家、金融エコシステムの一部という立場を活かしつつ、SDGsの視点で社会課題の解決・発展に寄与する活動を推進しています。最近では、活動を推進する社内チームも発足させ、より一層効果的に活動できるよう日々取り組んでいます。

今後は、オープンイノベーションを通じたソーシャルスタートアップ支援、次世代育成プロジェクト、環境関連の社内活動、SDGsに関わる情報発信や啓蒙活動を予定しています。こうした様々な活動を通して持続可能な社会と企業の成長の両立を目指し、一歩一歩着実に前進していきたいと思っています。

今後も引き続き、具体的な活動をお伝えしていきますので、ご覧いただければ幸いです。