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a16zが考える4つのコンシューマテック・トレンド

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ピックアップ記事: Four Trends in Consumer Tech 米国著名VC「Andreessen Horowitz(a16z)」は1月23日、コンシューマテック市場4つのトレンドに関するブログ記事を発表している。本稿ではその内容を紹介しつつ、筆者の考えを整理してみたい。 1. Super App マーケットデータサービス「eMarketer」の調べによると、2019年にモバイル利用…

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ピックアップ記事: Four Trends in Consumer Tech

米国著名VC「Andreessen Horowitz(a16z)」は1月23日、コンシューマテック市場4つのトレンドに関するブログ記事を発表している。本稿ではその内容を紹介しつつ、筆者の考えを整理してみたい。

1. Super App

マーケットデータサービス「eMarketer」の調べによると、2019年にモバイル利用時間がTV視聴時間を初めて上回った。具体的にはモバイルが3時間35分である一方、TVは3時間43分。

モバイルシフトは長い間言われ続けており、そこまで不思議なことではない。ただ、注目すべきはその中身。利用時間のうち3時間近くがアプリに消費されており、残りの26分しかモバイルブラウザーに使われていない。加えて、新規アプリのダウンロード数の少なさが目立つ。平均的なユーザーの毎月の新規アプリダウンロード数は0であることも珍しいことではない。

誰もが自分好みのアプリを集中的に使い、新規アプリをダウンロードすることがなくなったのが現状であり、新陳代謝が全く行われていないのがモバイル市場とも言える。そこで登場するのがSuper App。

記事では中国のライフスタイルサービス「Meituan(美団)」を紹介している。2013年から同社は収益源の多角化を考え始めたという。手始めにホテル予約サービスができるボタンをアプリ上部に設置。今では中国の宿泊予約50%ほどのシェアを占めているとのこと。ちなみにホテル市場の競合「Ctrip」はシェアを22%にまで縮小させている。

Meituanは他にもエンタメやモビリティ系サービスを次々と立ち上げ。高頻度ながら利益率の低いサービスで顧客獲得を進めつつ、最終的には低頻度で利益率の高い事業へと送客する仕組みを確立した。顧客理解と幅広いデモグラフィック分布を武器に攻勢を強めている。こうしたサービスの一極集中モデルをSuper Appと呼ぶ。

中国では「WeChat」や「Alipay」、東南アジアには「Gojek」がSuper Appとして市場を確立。米国では「Uber」が同様の動きを見せている。記事ではアジアから欧州へとSuper Appのトレンドが来ていると紹介されている。

仮にユーザーに高頻度で使われるアプリを運営しているのならば、常に新しい収益源となるサービス立ち上げを勧めている。もしユーザーに頻繁に使われるサービスでないのであれば、大手企業が持たない付加価値や顧客データを基に提携を模索すべきとアドバイスしている。一例として「Spotify」を挙げている。同社はユーザーの音楽趣向データを保有。このデータを用いて、アーティストのツアー都市と、各都市での公演曲選定サポートに役立つだろうと指摘している。

2. Commerce

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モバイルユーザーの大半は、ビデオアプリ・コミュニケーションアプリ・ソーシャルメディアアプリなどのアプリに多くの時間を費やしている。これらのアプリは広告配信ツールとしては最適であり、購買チャネルとして主流となる可能性を秘めているという。

記事では短尺ライブストリーミング動画アプリの事例を紹介。農家が美味しそうに実っているみかんをスライスする動画から、直接みかんを購入し、取り寄せることができるEC機能が紹介されている。また、同じくその場でオンライン注文可能なロブスターを、漁師が捕まえる動画を紹介。

ユーザーの背景を汲み取りながら動画コンテンツを配信し、購買意欲を掻き立てる新たな小売チャネルがトレンドになりつつあると述べた。

3. Go Physical

中国では200以上の空港で顔認識機能を備えたキオスクが配置されている。各人がどのゲートに行くべきか、どのようにそこに到達するかを正確にキオスクを通じて伝えてくれる。また、学校の教室では顔認識を使った出欠機能も実装済。

米国でも同様の動きが見られるとのこと。デルタ航空はチェックインと搭乗のため、複数の国際空港で顔認識をテスト。72%の人は、以前の方法よりも顔認識技術を使った手法を好むと回答しているという。ニューヨークの一部の私立学校では、顔認識を使用して銃や、キャンパスにいるべきではない危険人物を選別している。また、英国では、中国企業「Tencent(腾讯)」と提携して、動画や映画、TV番組に広告情報をオーバーレイする2年間の広告に関する独占契約を結んでいる。

従来私たちが目にしてきたデバイスや場所に対し、新たな技術が実装されることで現実世界での生活のありかたが大きく変わろうとしている。

4. Earshare

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10年前は「モバイルファースト製品とはどのようなものか?」を考える時期であった。カメラとGPSが活用され始めたため、InstagramやLyftのような素晴らしい会社が登場した。ここにきて、オーディオ消費が爆発的に増加している。そこで 「オーディオファーストのコンテンツはどのようなものか?」を考える必要性が増していると記事では指摘。

たとえば、Andreessen Horowitzの投資先であるポッドキャスト企業「Knowable」が一つの答えを示している。同社は『スタートアップを立ち上げる方法』、『ポッドキャストを始める方法』、『自信を持って話す方法』、『よりよく眠る方法』など、さまざまなトピックに関する厳選されたオーディオコースを提供するポッドキャストプラットフォーム。

Knowableが他社ポッドキャスト企業より一歩進んでいる点は、「オーディオファースト + Super App」の思考を組み合わせている点。一例として『スタートアップを立ち上げる方法』のポッドキャストコースを購入したユーザーの事例を挙げている。このユーザーは高確率で起業することを検討している。そこでAWSと連携し、コース購入者に1,000ドルのAWSクレジットを提供しているという。他のコースでも提携企業を見つけ、特典を提供する戦略を採用。

Super Appの要素の組み合わせた戦略は強力に働き、先述した「必ずしも高頻度で使われるアプリでないのであれば、提携を模索すべきである」という質問への解となっている。

各企業はより多くのユーザーへリーチするためのチャネルを探している。そこで多くの提携先を見つけ、新たな収益化を図ろうと躍起になっている。そのため、誰もがSuper Appになるため、協力し合う時代が到来していると指摘する。顧客は誰で、コアサービスを支えるために他にどんなサービスが必要なのか、データ資産を活用して新しい収益源を作り出す必要がある。

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話題のポイント: 以上が発表された内容の紹介でした。ここからは簡単に筆者の考察を2点ほど述べていきたいと思います。

Super Appがもたらす新体験

あらゆるサービスを一社がパッケージとして提供するSuper App。昔から長く米国で使われているサービス「Craiglist」がSuper Appの最初の事例として数えられるかと思います。

ただ、同社はモバイル時代に一切対応できていません。また、Craiglistの抱える複数サービスの中から、特定分野の体験のみを圧倒的に向上させるスタートアップは多数登場したものの、全てを束ねてプラットフォーム化させられたライブサービス企業はあまり登場しませんでした。GAFAでさえ、それぞれに弱いサービス領域があり、完全なコンシューマサービス企業としては数えられない印象です。

一方、中国ではBATの台頭と共に、急速にトップ数社による全サービス領域の網羅およびユーザーの囲い込みが加速。立ち上げられていない領域を探す方が困難になってきていますし、スタートアップは太刀打ちできないほど各分野への参入攻勢は強力です。

このように、中国ではモバイル時代の流れに乗って垂直統合型のサービスが登場しています。ウェブ時代からのシフトチェンジを求められてきた米国勢とは違い、時代に沿った形でいち早く市場を席巻してきました。ピックアップ記事にある通り、Super Appのトレンドは欧米へと渡り、世界中で特定企業の寡占状態を引き起こすキーワードとなると考えます。

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ここで注目すべきはSuper Appがもたらす新たなUXです。それはユーザーのしたいことを願うだけで、最短ルートで叶えてくれる「魔法のランプ」のような体験です。

Super App上では特定のサービス名は意味を成しません。同一アプリから特定サービスを探し・引き出す体験がベースにあるため、「何をしたいのか」というユーザーのニーズを言語化してアプリ上検索する体験が上位に来ます。Googleのようなサイトからサービス名を頼りに検索することは想定されていません。

現在はアプリからタイピングを通じて検索する体験が一般的。ただ、インプット手法は音声へと変わっていくでしょう。Google HomeやAmazon Alexaを使うように、何をしたいのかを声に出せばサービスを検索・引き出せる体験が次の主流になると考えます。

「モバイルファースト」から「オーディオ(ここではボイス)ファースト」の思考に沿ったSuper AppのUXが次に来ると感じています。Knowableが「オーディオ + Super App」で成長しているように、Super Appは音声体験を最大限に高めることでスマホの次にやってくる音声時代で活躍できるでしょう。

耳の覇権争い

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オーディオファーストを探すべきだとブログ記事では指摘されていましたが、そこまで音声市場に魅力があるのはなぜでしょうか。具体的には3つほど挙げられます。

1つはスマートスピーカーの普及。Amazon Echoシリーズが市場シェア約70%を占めている中、次のようなデータが公表されています。こちらの記事によると、全世代平均で週17時間ほどオーディオコンテンツを消費するとのこと。Podcastやラジオ、ストリーミング音楽などが該当します。なかでもスマートスピーカー所有者は、非所有者と比較してプライムアワー(8-10PM)に47%以上多くの時間をオーディオコンテンツに割いているそうです。

スマートスピーカーがプライムアワーに使われるシチュエーションを自宅リビングであると仮定すると、私たちがより多くオーディオコンテンツに増える機会は増えるでしょう。2019年6月時点で7,000万台のスマートスピーカーが流通していますが、次の3〜4年で1億台を数えるはずです。こうしたスピーカーによってリビングで消費するオーディオコンテンツ時間は比例して増えると想像できます。

2つ目は「観る」から「聴く」行動へ私たちの習慣が変わりつつある点です。これは先述したハードウェアによって提供されるオーディオ体験とは違い、習慣という最も力強い市場成長を支える要素となります。

読者の方で、スクリーンオフにした状態でYouTubeを聴き流した経験のある方はいないでしょうか?筆者はYouTubeの有料ユーザーなのですが、ざっと見積もって利用時間の7〜8割は聴き流しており、そのためにお金を支払っています。こうしたユーザーの新たな行動様式が自然と構築され、習慣化されることほど強力な市場要因はありません。

<参考記事>

実際、マーク・アンドリーセン氏も同じような点を指摘しています。同氏曰く、YouTubeの視聴者は職場で仕事をしながら動画コンテンツを「聴く習慣」ができていると語ります。1日8時間ほど労働時間があるとすると、週平均40時間ほどオーディオコンテンツの視聴時間が発生する計算です。これは前述した世代平均のオーディオコンテンツ消費時間17時間の6倍にも匹敵します。

3つ目は運転時間。米国では月間1.1億回の自動車通勤が発生。合計走行時間は25億時間にも及ぶといいいます。これから自動運転技術がさらなる発展を遂げ、完全自動運転化が実現すれば車内の運転時間がそのまま余暇時間として新たな市場に成り代わります。

そこでオーディオコンテンツは市場シェアの大半を占めると考えられます。というのも、動画視聴をしては仮に事故を起こした際に運転手が過失を取られることが予想され、非常にリスクの高いコンテンツになるためです。オーディオであれば視界を逸らさずにコンテンツ消費できます。

<参考記事>

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ここまで3つの市場成長背景を紹介してきました。筆者の予想ではさらに3つの側面から音声市場は開拓されていくと考えます。

1つはスマホ備え付けの音声アシスタント経由のサービス利用です。iPhone備え付けの「Siri」とAndroidの「Google」。アシスタントに今したいことを指示するだけで、希望するサービスを最後まで体験できる流れ。ロック画面を開くことなく完結する「魔法のランプ」的なUXからユーザー獲得できるチャンスが生まれるはずです。この点、スマホOSを寡占するAppleとGoogleには、音声時代のSuper Appの座をいち早く狙える理があります。

2点目は先述したSuper Appが提供する音声検索。依然としてアプリを開くステップを挟みますが、1つ目と同様に、スマホ時代に最適な音声体験としてユーザーに支持されるはずです。

3点目は移動時間や自宅で聴くポッドキャストの視聴時間や、運転時間に聴くオーディオコンテンツが挙げられます。まさにKnowableはどこでも聴ける高品質なオーディオコンテンツを提供することで、奇をてらうことのない自然なオーディオ体験を構築。一見、競合差別化のできていない体験から、Super Appのような多角的なサービス展開を狙っています。

最後に、ピックアップ記事で「Super App + オーディオ」の重要性が叫ばれたように、筆者も音声を軸にした新たな体験を軸に急成長する企業が登場すると感じています。音声市場はこれからより活気付くでしょうし、あらゆる企業が音声体験に注目するはずです。

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MBAも変化の時代、働きながら受講可能な「NAMBA(Not an MBA)」とは

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ピックアップ:Jolt raises $14.1m to target US MBA market ニュースサマリー:イスラエル発のエドテック企業「Jolt」は13日、シリーズAにて1410万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはBalderton Capitalが参加し、Hillsven Capital、Octopus Venturesも同ラウンドに参加している。 Joltは低価格…

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Image Credit: Jolt

ピックアップJolt raises $14.1m to target US MBA market

ニュースサマリー:イスラエル発のエドテック企業「Jolt」は13日、シリーズAにて1410万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはBalderton Capitalが参加し、Hillsven Capital、Octopus Venturesも同ラウンドに参加している。

Joltは低価格かつ月払いが選択可能な、従来の大学院(MBA)に相当するスクールを運営。イスラエル・テルアビブ、イギリス・ロンドンに校舎を構える。調達した資金は米国・ニューヨークへの進出に用いられるという。

同社ホームページによれば、最安価格のコースは月175ポンド(約220米ドル)または合計4500ポンド(約5800米ドル)から受講可能だという。学生自身で受講スケジュールの調整ができる点も特徴で、休職することなくフレキシブルに学位取得をすることも可能だ。伝統的な「MBA」ではなく、独自にサービス設計する「NAMBA(Not an MBA)」の取得を目指す。

話題のポイント:「大学・大学院機関」といえば、大きな校舎を持ち、大人数が収容可能なクラスルームで授業やディスカッションを行うイメージが一般的でした。ところが、ミネルバ大学の登場に代表されるように、校舎の必要性やオフライン授業の必要性に対する疑問が提唱され始めます

イスラエルとロンドンをベースにMBAライクな授業を実施するJoltも校舎を持たず、コワーキングスペースの一室で授業を行う形式をとっており、伝統的な大学院とは環境から違うことが分かります。

今回ご紹介するJoltはそうした環境のみならず、コアとなる「コンテンツ」にも大きく変革をしています。同社独自プログラム「NAMBA」がどういった意味でMBAを「Not」しているのか、具体的に見ていきましょう。

MBAの問題点

JoltではMBAの問題点を2つあげています。1つ目は柔軟性に欠ける「スケジュール」。基本的にMBAは社会人経験を数年積んだ後に進む道です。そのため、休職するか一度退職する選択肢を求められます。一方、Joltでは「働きながら通う」ことをベースとしたカリキュラムを設定し、フレキシブルに授業選択が可能なカリキュラム・デザインを採用しています。

2つ目が「高い授業料」。オンラインマーケティング会社「QuinStreet」の調べによれば、MBAの学位を取得するまでにかかる授業料の平均は5万ドルから8万ドルとのデータを公開しています。対してJoltでは、約10分の1相当の5800ドルの低価格授業料を設定しており、月額支払いもできることから金銭問題を限りなく取り除くことを目指しています。

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Jolt Academic Committee のメンバー例

さて、同社のカリキュラムは正確にはMBAではなく、世界のMBAで提供されているコンテンツを基に新たに生み出したオリジナルの学位「NAMBA」を提供しています。カリキュラムは「Academic Committee」と呼ばれ、各業界で活躍している名だたるMBAプログラムを卒業したメンバーが作り上げています。

同委員会は理論的・実践的な研究をベースとした3つのコンセプトを踏襲し、NAMBAのサービスデザイン設計をしているといいます。その1つが、Googleが優れたマネージャーをリサーチするために実施したプロジェクト「Project Oxygen」です。

JoltではGoogleの同プロジェクトの研究成果を活用し、そこで定義される10つのスキルをNAMBAで身に着けることができるよう、カリキュラムに盛り込んでいます。

2つ目はMBAの最高峰ハーバードビジネススクールの所属するハーバードビジネスレビューが提唱する、最高のマネージャーに必要な17のスキル。

3つ目はGlassdoorとLinkedInにて募集のあったスタートアップ企業にて、マネージャー職として求められているスキルを同社独自に分析したもの。全12のスキルが挙げられています。

同社ではただ単に「イノベーティブな授業」と語るだけでなく、実際に研究成果として挙げられているファクトを基にカリキュラム作成が行われています。教科書にある決まりきった定例を学ぶのではなく、時代やトレンドに沿った形で、かつ実践的なスキルを集中して学ぶことが出来る環境を作り上げているようです。

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また、同社では「Super-HR Club」と呼ばれるコミュニティー運営を通し、あらゆる業界業種の最新トレンドを自然と吸収できる環境を整えています。

たとえば、デザインを学びたければMOOCを通じたオンライン学習や、オフラインで学べる場の提供も充実させています。Joltは実践スキルのレベルアップを叶える一方、従来のMBAが目指してきた「素晴らしいマネージャー・経営者」になるための最新トレンドを学ぶことができるといえるでしょう。

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具体例を挙げれば上図にあるように、Calculus 101(微分積分)やStatistics 101(統計学)を題材として学ぶのでなく、「Data」という大きな視点で学ぶことで、トレンド全体を踏まえながら専門性を学ぶことができます。

米国は下降、その他は上昇トレンド

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Quartzが発表したデータによれば、年々名門MBAへの出願率は下降を続けており、時間とお金をかける意味がないとまで言われるまでにMBAの価値は疑問視されるようになっています。2018から2019年において米国トップ10のMABスクールに対する出願率は前年度と比べ5.9%、約3400人減少したとのデータもあります。

ただ、世界に目を向ければ下降気味であるのは米国のみで、逆にアジア圏では相当数の上昇を見せているのが実情で、まだまだMBAグローバル市場は衰えていないとも言えます。

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Quartz

ではなぜアメリカだけがMBAの出願率低下に陥っているのでしょうか。語学学校などを運営する教育機関「Kaplan」の調べによれば、わざわざ米国のMBAを目指さない理由の42%を、経済が好調であることと紐づけています。その他にも、MBAの価値に対する疑問視や、政治的な影響、高額な授業料、MBAを必要とする職の低下などが挙げられています。

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Kaplan

対して、MBA出願率が最大の成長率(約8%)のアジア・パシフィック地域では、GDP増加や新興ユニコーン企業の台頭などを牽引に、マネジメント職の需要が今まで以上に高くなりつつある状況が大きく影響しています。

北米に本社を置く企業が、APEC地域に拠点を大規模に設立することも珍しくなくなりつつあることも一つの要因となっているかもしれません。なかでもシンガポールは米国と同等レベルまでに1人当たりのGDPが成長を遂げており、APECが世界経済にとって重要なエリアになっていることは間違いありません。

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APEC

米国で伝統的なMBAを取得することの価値はこれからも変わらず存在し続けるかと思います。ただ、Joltをはじめ、新たな形でのMBAが一般的になれば、より実践的なカリキュラムを提供するスタートアップや教育機関が増えることも予想されます。ミネルバ大学のように、世界を旅しながら学ぶ大学院が誕生してもおかしくなく、そこまで到達すれば「特定の国で取得するMBA」といった概念も取り払われることになるでしょう。

学べるチャンスが世界に広がりつつある今、MBAの価値を作り上げてきた旧来のMBA提供者たちが内部からどうイノベーションを起こして、新興エドテックスタートアップと差別化するのか、といった視点も面白いと思います。

 

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自滅系起業家を指す新ワード「苦業家」とは?

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ピックアップ記事: “No More ‘Struggle Porn” by Nat Eliaso 起業家は苦しい日々を長く過ごします。結果が出るまで数年単位の辛抱が必要です。根をあげたくなる時期もあるでしょう。ところが、最近ではこうした苦悩する日々に美徳を感じ、結果以上に苦しいプロダクト開発に憧れてしまう「苦業家」が登場しているようです。 苦業家を語るには、彼らの本質である特有のポルノ感覚を知る必…

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ピックアップ記事: “No More ‘Struggle Porn” by Nat Eliaso

起業家は苦しい日々を長く過ごします。結果が出るまで数年単位の辛抱が必要です。根をあげたくなる時期もあるでしょう。ところが、最近ではこうした苦悩する日々に美徳を感じ、結果以上に苦しいプロダクト開発に憧れてしまう「苦業家」が登場しているようです。

苦業家を語るには、彼らの本質である特有のポルノ感覚を知る必要があります。

「Struggle Porn」という言葉を知っているでしょうか。直訳すると「苦悩ポルノ」。最近、起業家精神を美化するための1つのプロパガンダ用語として使われているようです。

苦悩ポルノを意訳すると、ストレスで苦しんでいる自分の姿を好み、一生懸命やっている姿を評価軸に生きているスタイルです。具体的には、先行きのない物事に対して自分自身を強く駆り立て、世間一般から自分の身を犠牲にするほど一生懸命働くように急かされる要求に対し、必死に応えようとする強迫観念を指します。

最大の問題点は「苦悩していると感じているなら、自分は正しいことをしている」と思い込んでしまう点です。何か新しい挑戦をし続け、苦悩するのが美徳となっています。

そして苦悩ポルノを実現するために必要なものは「ハッスル」。お金を稼ぐよりも、自分の価値観に合った働き方はハッスルと呼ばれます。ハッスルは、生計を立てることを優先する働き方「ジョブ」と対比される用語となっています。

決してハッスルは悪いことではありません。自分の熱意を注げることに時間を費やし、趣味として楽しんでいたものに本気で挑戦して仕事にしていくプロセスは当たり前になってきました。今後、こうした働き方は普通になってくるでしょう。一生懸命に熱意の持てる領域に挑戦することは評価されるべきです。

ただ、苦悩ポルノの考えが入ると副作用が発生します。

苦悩ポルノの問題点

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ポルノに取り憑かれている人にとっての正常な状態とは、進歩に苦悩しているプロセスそのもの。数値指標などはあまり関係なく、プロセスに満足してしまっているため、終わりなく徒労な物事に取り組みます。終わりがなくなるのです。

失敗しているように感じることこそが進歩。自分自身が一生懸命働いていることを感じられていれば良いので、たとえば収益指標などを見る必要がなくなります。

個人でやる分には一切問題がありません。自由に趣味や小さな仕事へ多く取り組み、満足するまで勤しめばよいでしょう。しかし、資金調達をしたりして、責任が伴う起業家になると話が変わってきます。

苦悩ポルノに陥っている起業家は、数字が出ずに苦悩し続ける自分の姿に酔いしれて時間を過ごします。いざ次の資金調達が必要な場合は、苦悩したプロセスから見出した将来の成長性だけを語り投資家を説得します。ただ、スタートアップにとってはトラクションが出ているかが重要。最終的には下請け業務に徹する中小企業になるか、倒産してしまいます。

苦業家の登場

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このように、苦労しているから何かを成し遂げていると感じ、目標をいつまで経っても達成しきれない起業家を「Strugglepreneurs(Struggle + Entrepreneur)」と呼びます。日本語では「苦業家」とでも訳せるでしょう。

苦業家は「忙殺ポルノ」にも陥っている特徴を持ちます。「トラクションを得るのが難しい。それでは何か他のことを試してみる必要があるかもしれない」と考える代わりに、「これはまだうまくいっていないが、もし苦労し続ければ最終的にはうまくだろう」と考えてしまうのです。とにかく自分を忙しくしていれば、いずれは報われるだろうと考え、時間を費やしてしまうのです。忙殺ポルノは、苦悩ポルノを満足させる条件となります。

ピックアップ記事では、SNS系で活躍するビジネス系インフルエンサーが苦業家を大量生産しようとしている現象に警鐘を鳴らしています。「一生懸命働け、嫌いな仕事はいますぐ辞めろ、お前ならできる」と伝え、成果ではなく、苦悩するプロセスを美化するメッセージを発し続けるのです。

ここで留意すべきは、一生懸命働くことは決して悪いことではない点です。あくまでも記事では、明確なロードマップとマイルストーンの持つことなしに時間を過ごす危険性を指摘しています。自分が苦悩しながら働いていないことに罪悪感を持つ苦悩ポルノの感覚は2次的に持つべきだと語られています。どれだけ一生懸命働いているかは、起業家が作り出している価値や進歩の良い指標とはならないと述べています。

最終ステージ、「構ってちゃん症」

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快適さは起業家にとっては「死」に値し、平凡な状態は「悪」であるのが苦悩ポルノの世界の常識。恥ずかしなら筆者は、3年前まで起業していた時に同じ感覚を持っていました。正確には苦悩ポルノをよりこじらせた「構ってちゃん症」になっていたと、今になって思います。

結果がなかなか出ないことであったり、何か周りからそっと手助けが欲しい時、頑張っている姿をさりげなくみせて評価されたい「構ってちゃん症」に陥っていたと、最近になってようやく客観視できるようになりました。

それではどうすべきだったのか。自己分析をして2つほどアイデアが浮かんだので書き記します。

  • 先輩起業家から聞かされる苦悩自慢には耳を塞ぐ。起業家 = 苦悩と自分を思い込ませるべきではなかった
  • ざっくりでも悩みを相談できる相手を多く見つけることが先決。日頃から人に会い、いざとなったらヘルプを求められる当てを多く持っておくべきだった

起業イベントやブログ記事、Twitterを覗けば、先輩起業家の苦悩話がたくさん落ちています。こうした話は笑い話となり、起業家の通過儀礼のように語られます。全く生産性ではないにも関わらず、深夜まで仕事をしたり、悩んでいる姿をオフィスで見せられても周りの雰囲気が悪くなるだけでした。

また、お金がないとは言え、毎日1食だけで過ごしたり、オフィスで貰った残飯だけで過ごすような生活を自分に強いるべきではありませんでした。当時はほんとにお金がなかったため、そして給与を減らして会社を生かすための仕方ない選択とはいえ、やはり悪手でした。

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評価されるべきはプロダクトの成長指標のみ。

最後に、苦業家は自己満足で終わることが常です。特に私のように構ってちゃん症に取り憑かれると、永遠とやってくることのない他人からのヘルプを求め、結局自己完結の世界で自滅します。そして、苦業家はスタートアップにとっての自殺に通じます。全くもってカッコイイものではありませんし、評価されるものではありません。いかに周りを巻き込みつつ、通る必要のない苦悩を避けながら最短でプロダクトの成長にたどり着けるかが肝となります。

私はシリコンバレーで大きなチャンスをもらいながら、結局失敗しています。当たり前なことですし、恥ずかしい内容ですが、これから起業される方が同じ道を通らないように記しました。少しでも参考になると嬉しいです。

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中国ソーシャルコマースの衝撃ーー「インスタ+Amazon」“RED”(小紅書)攻略法

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ここ数年、アジアのEC市場は目を見張る成長を遂げてきました。 特に大きな注目を集めるのが中国です。2019年11月11日、Alibaba Group(阿里巴巴集団)によって中国最大の買い物日となった独身の日(W11, ダブルイレブン)でAlibabaは、毎年のように売上記録を更新し、2018年に308億米ドル(約3.4兆円)だった売上は2019年には384億米ドル(約4.2兆円)を記録しました。 …

ここ数年、アジアのEC市場は目を見張る成長を遂げてきました。

特に大きな注目を集めるのが中国です。2019年11月11日、Alibaba Group(阿里巴巴集団)によって中国最大の買い物日となった独身の日(W11, ダブルイレブン)でAlibabaは、毎年のように売上記録を更新し、2018年に308億米ドル(約3.4兆円)だった売上は2019年には384億米ドル(約4.2兆円)を記録しました。

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2012-2019、独身の日取引額の推移(資料:バベル)

独身の日と比較される米国のブラックフライデーの2019年のEC売上は74億米ドル(約8,100億円)であることや、日本の楽天の2018年における国内EC流通総額が3兆4310億円であることを考えるとその勢いがよく分かります。

また、AlibabaのW11における化粧品・コスメカテゴリのGMVは、前年比で64%以上増加しており、彼らの成長を牽引しています。同時にこの中国のEC市場を考察する際、なくてはならない存在がKOL(Key Opinion Leader、日本におけるインフルエンサー、以下「KOL」)です。マーケティング戦略で欠かせない役割を担うようになっています。

そして今、この分野で彼・彼女たちが熱視線を送っているプラットフォームが「RED(小紅書、以下「RED」)」です。

私たちバベルは中国・東南アジアなどのグローバル市場で、日本企業のデジタルマーケティング・販売支援を手掛けており、中国のEC市場、特にソーシャルコマース市場の急成長を身を持って実感しています。一方、中国市場を攻めるためには独特のルールも知らなければなりません。

そこで本稿ではこのREDを通じた、日本から中国市場に挑戦するためのノウハウを共有したいと思います。

中国版“インスタ+Amazon”「RED(小紅書)」

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ソーシャルECのRED(小紅書)

RED は「世界中の良いモノが見つかる」をメインコンセプトにしている、中国最大規模のソーシャルコマースプラットフォームです。2019年7月時点で、REDは登録ユーザー数は3億人以上、月間アクティブユーザー数(MAU)は1億人以上に達しております。

Weibo(微博)やWeChatと肩を並べる、中国5大プラットフォームの内の1社として急成長しており、中国のデジタル広告宣伝費のほとんどがこれらのプラットフォームに投下されています。

衣食住すべての日常生活にまつわるレビュー(口コミ)投稿型のSNSであり、コスメ、ファッション、旅行、グルメなど、多様な体験が写真や動画を交えて投稿されています。中国の消費者、特に若い女性にとって必要不可欠なサービスとなっています。

一方で他のSNSと異なるのは、アプリ内で商品を購入できるソーシャルコマースに最初から取り組んでいる点です。いわば「Instagram」に「Amazon」のようなEコマースがプラスされた「コンテンツ型ソーシャルコマースプラットフォーム」といったところでしょうか。

FacebookやInstagramなどもショッピング機能の統合を計画しており、実際にInstagramからコマースへの導線は実現していますが、その遥か先を行っているのがREDです。ユーザーの属性は都市部在住で、iOSを使っている(=可処分所得が高く比較的裕福な)20代の女性が主体です。

中国では中産階級に属する人が4億人を超えて内需が拡大し続けています。その結果、品質の良い日本製品の需要が高まっており、ブランド企業にとっていかに中国のアウトバウンド及びインバウンドのマーケティングチャネルを確立していくかということが課題視されています。

日本の良いモノ、観光地に関する情報収集のニーズが日々高まっているため、日本在住の中国人や訪日中国人によって、RED内で日本に関する投稿が日々増加しています。

中国ECでも最も重視されているレビュー(口コミ)

これは中国に限ったことではありませんが、商品やサービスの購買においてレビュー(口コミ)の重要性は非常に高いです。一方、その信頼性については各メディアで評価が分かれています。

コンテンツ型ソーシャルコマースのREDと通常のECの違いは、ユーザー間の信頼関係の有無です。

REDはユーザー間のコミュニケーションを重視し、Instagramのように動画や画像といったフォーマットで、クオリティと共感性の高いコンテンツの投稿を促すことにより、ユーザー間の信頼関係を構築しています。

ユーザーが写真とともに商品やサービスのレビュー記事を投稿・シェアし、その記事を読んだユーザーがそのまま商品を購入できる、という導線を作り上げています。

RED攻略における4つの最重要ポイント

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かつては百貨店で売れたコスメも、スマホで新たに認知を獲得しなければ売れない時代、どのような点が重要になるのでしょうか?REDを参考に紐解いてみます。

  • コンテンツ・イズ・キング
  • アルゴリズムを理解する
  • KOL選定と最適なコンテンツ制作
  • 中国現地事情に精通したパートナー選定

(1)コンテンツ・イズ・キング

最も重要なことは、プラットフォームの特徴を理解することです。まず、REDのユーザーは、20代女性がほとんどであり、特に海外のコスメ・美容情報に特化していること。

ユーザーエンゲージメントが高い関連投稿を表示するという、アルゴリズミックフィードが実装されており、TikTokと同様にフォロワー数と関係なく、質の高いコンテンツがユーザーにインプレッションする、コンテンツ・イズ・キングのプラットフォームです。

この点は、フォローしているユーザーの投稿がフィードに多く表示される、InstagramやYoutube等のプラットフォームとREDの大きな違いになります。

(2)アルゴリズムを理解する

では、TikTokと全く同じ仕組みかというと大きく異なる点があります。

REDには投稿の累積効果があります。投稿数の多寡がブランド認知に直結しており、過去の投稿も検索結果への上位表示や検索時のレコメンド順位に影響しています。

アルゴリズミックフィード主体のプラットフォームは、一時的なインプレッションを大量に集め、コンテンツがフローで流れてくのが基本ですが、REDの投稿には長期的に何度も繰り返し読み返されるストック性があります。

また、Board機能によってユーザーは自分のお気に入りの投稿をまとめ上げ、何度も見直します。(PinterestでいうBoard・InstagramでいうSave機能が非常に良く使われているイメージです)

(3)KOL選定と最適なコンテンツ制作

KOLマーケティングにおいては、どの商品を、誰に、どのようなストーリーで投稿してもらうか、といった点が最も重要です。上記のような特徴およびアルゴリズムをしっかりと理解し、データ基づいた広告プランニング、投稿スケジュール策定、動画/画像クリエイティブ制作をすることでマーケティング効果を最大化できます。

(4)中国現地事情に精通したパートナー選定

最後に、中国現地事情に精通しており変化の激しい中国市場への適応能力が高いマーケティングパートナーと組む、もしくは自社内にチームを構築することです。中国マーケットは目まぐるしく変化しており、中国展開を初めて行う事業会社が自社で全て対応するのは非常に難しく、マーケティングパートナーを組むことが現実的な選択肢となっています。

いかがだったでしょうか。

資生堂などはいち早く中国市場に参入し、成功している会社の1つです。

1981 年に北京市からのオファーを受け、「グローバル SHISEIDO」という当時のブランドを輸入品として北京飯店などでの販売開始。資生堂の中国進出の始まりです。資生堂のように長く中国で挑戦している会社のいくつかは成功しております。

2019年、資生堂の売上全体における、中国の比率が18.7%となり前年比で+12.8%伸びております。日本国内は+3%で、アメリカは-1%、欧州は+1.1%だということを考えると非常に重要な拠点となっており、成果が出ていることが分かります。

中国市場が熱気を帯びている今、企業の成長戦略における重要性がさらに増すことは確実です。

<参考記事>

本稿は中国と日本で動画総合広告プランニングを提供するバベルの代表取締役、 杉山大幹氏によるもの。Twitterアカウントは@tamiki_。彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はこちらからコンタクトされたい

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実は日本よりキャッシュレス後進国、滞在でみえた「お金体験アップデートのチャンス」とは

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2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。 ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。 今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば…

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2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。

ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。

今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば、日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18.4%となっています。キャッシュレスの首位を独走する韓国が89.1%、その次を行く中国が60%と、日本社会のキャッシュレス比率が同じアジア圏でも大きく差が出ていることが分かります。

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キャッシュレスビジョン2019

ではドイツはというと、日本の更に下、キャッシュレス決済比率14.9%を記録し、現金至上主義な社会であることが示されています。

理由として、財務省のレポートにもあるように、同国の歴史的背景に由来する、キャッシュが持つ「匿名性」の影響が挙げられます。レポートでは、第二次世界大戦時に中央政府による市民の監視が影響しているのではと述べられています。

「ベルリンの壁が崩壊したのは1989年であり、30年余が経過したものの、東西分断の痕跡は現在のベルリンにも少なからず見て取れる。当然、都市を分断した「中央監視」に関連して刻まれた記憶と感情は消えておらず、匿名性の価値が、インターネットの時代に改めて想起されたとしても不思議ではないであろう」ー財務省発表、スウェーデンのキャッシュレス化・ドイツのキャッシュレス化(下)ドイツ編より引用

以上より、中央管理を避ける風潮が国民文化としてのキャッシュを好むカルチャーを作っている一つの大きな要因だと考えられます。例えばドイツ銀行が公開したデータのように、ドイツにおけるデビットカードの保有率が大変高い状態にあるのもその裏付けのひとつと言えます。

Captureさて、話をベルリン拠点のチャレンジャーバンク「N26」に戻しましょう。同社のユーザー数は2019年4月時点で約250万人(※)とBusiness Insider Intelligenceに報じられています。N26はドイツ拠点というだけで、EU圏の対応国に住所を持っていれば誰でも口座開設可能です。

※補足修正:記事初出時に25万人と誤記しておりました。正しくは250万人が引用元記事の情報です。ご指摘いただきありがとうございます。

ドイツの人口は2018年時点で約820万人。同社からユーザーの居住国は公開されていませんが、ドイツ人ユーザー数はそこまで多くないのではと感じています。というのも前述の通り、キャッシュを好む傾向から、キャッシュレス決済といったチャレンジャーバンクならではの価値提供が見込めないからです。

実際、筆者は昨年末にドイツ・フランクフルトに滞在していたのですが、到着するまではいくら現金を好むといえ、フランクフルトのような大都市であれば生活に困らない程度でクレジットカード決済可能だろう、そう思っていました。

しかし、たとえばローカルのコーヒーショップやレストランなどは基本入り口に大々的に「CASH ONLY」と貼られており、大通りを歩いていてもカード決済可能な店舗を探すのに一苦労といったレベルです。カード支払いがほとんどできない有様でした。

改めてドイツ銀行が公開したデータを見ると、2017年におけるドイツ人のキャッシュ利用率は全体の74.3%。次いでデビットカードが18.9%を占めており、クレジットカードはたったの1.6%しかありません。ここで着目すべきなのは2008年からの変動率の少なさでしょう。

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Payment behavior in Germany 2017

2008年においてキャッシュ利用率は全体の82.5%で、実際に年々下降してるとはいえ約10年間で8%ほどのみがキャッシュレスへ動くのみとなっており、これは非常に小さな割合だと言えます。つまり、ドイツにおいて「銀行」に求められているのは昔ながらといえる「お金の安全な保管」だけなのです。

極端な比較となりますが、UBSのデータによれば、中国では2010年時点での現金決済比率が全体の約65%を占めていたのが、2020年には約半分となる30%程度に収束するだろうといったレポートを算出しています。

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UBS

中国ではAlipayやWeChat PayなどのQR決済がこのトレンドの要因となっているのは明確です。ドイツでも多くのフィンテック・スタートアップが本拠地を置いてあることを考慮すれば、本来はキャッシュレスのムーブメントが起きていてもおかしくありません。しかし、現実はその逆でした。

キャッシュレスの壁「チップ文化」

ドイツが「匿名性」を理由にキャッシュを好んでいるのは事実でしょう。ただ、ドイツが国として世界のキャッシュレストレンドに感化されない要因は他にもありそうです。

ローカルカフェで働いている20代の男女バリスタに話を聞いてみたところ、揃って「金銭的に自立した職種として認められるためにキャッシュ(チップ)が必要なんだ」といった答えが返ってきました。ドイツ滞在で実際にカードで支払いをして気が付いたことは、クレジットカードのマシーンにそもそもチップを上乗せして会計するステップが用意されていません。

これはアメリカのようにクレジットカードを通したチップ付与であると店舗全体で総分配になる反面、キャッシュであればそのまま個人の収入へと繋がることを意味しています。

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こうした社会的問題とキャッシュレスを考えたとき、ふと思いついたのはコーヒースタートアップ「Bellwether Coffee」です。

<参考記事>

同スタートアップは、コーヒー購入者が直接コーヒー栽培農家に「投げ銭(チップと表現してもいいでしょう)」を送金できる焙煎機を開発し、途上国の違法児童労働問題の解消を目指しています。

ある意味では、キャッシュレスだからこそスムーズにエコシステムが形成されていると言えます。直接的に従業員へ現金をチップしたいという気持ちがあるならば、それをそのままデジタライズさせることも可能と考えます。

ということでドイツ滞在からみえた「キャッシュレス途上国」の課題を考えてみました。

現金で成り立っているチップ文化をわざわざ壊してまでデジタライズさせるためには、さらにクリティカルな価値提供が求められることは間違いありません。そういった意味でN26のようなフィンテック企業が、チップのような細かい体験を各国の文化に合わせてアップデートしていけば面白いことになるのではないでしょうか。

こういったキャッシュ至上主義国家におけるチャンレンジャーバンクには、お金にまつわる体験をアップデートする役割も期待されます。

今後もN26を始めとして欧州発のチャレンジャーバンクが勢力を増し、グローバルになっていくと思います。こうした流れを理解したうえで、フィンテック・ソリューションを開発できれば、日本でもお金に対する文化を根本的にアップデートしていけるのではないかなと思います。

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次の起業トレンド「Superhuman for X」を知っているか?ーー領域特化の“フェラーリ”を作れ

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ピックアップ記事: The “Superhuman of X” “メール版フェラーリ”とも界隈で称される「Superhuman」をご存知でしょうか。2014年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は3,300万ドルに上ります。現在シリーズBラウンド。 Superhumanのコンセプトは「あらゆるアクションを0.1秒以内に達成させる」。圧倒的なスピード感とサクサク感を持たせる…

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Image Credit: Superhuman

ピックアップ記事: The “Superhuman of X”

“メール版フェラーリ”とも界隈で称される「Superhuman」をご存知でしょうか。2014年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は3,300万ドルに上ります。現在シリーズBラウンド。

Superhumanのコンセプトは「あらゆるアクションを0.1秒以内に達成させる」。圧倒的なスピード感とサクサク感を持たせることから“メール版フェラーリ”の愛称が付いています。

誰もが使うGmailの体験を超えることは至難といえます。しかしSuperhumanは強気の価格設定・ターゲティング・圧倒的に優れたサービス設計で、新たなメール体験を実現させています。同社は月額30ドルで次世代メールプラットフォームを提供。ターゲットユーザーは3時間/日以上メールを利用しているヘビーユーザーのみ。サービス利用は招待制。

豊富なショートカットが用意されており、ユーザーはほぼ全てを駆使するように教育されます。具体的には3つのサービス学習手法が用意されます。1つはオンボーディングプロセス(詳細は後述)。2つ目は「Super human Command」と呼ばれるポップアップ画面を呼び出せば、すぐさま該当ショートカットを検索できる導線を用意。

最後は、各アクションをクリックベースで起こす際、毎回ショートカットコマンドを表示して教える。たとえば、メールを捨てるためにゴミ箱ボタンをクリックしようとすると、「Cmd + Shift + ,」ショートカットがポップアップ表示されます。

“プロシューマー”を狙え

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Image Credit: Superhuman

著名VCであるAndreessen Horowitzが参加している点や、10万人以上がウェイトリスト入りしている市場需要から、確実にGmailの体験を超える突破ポイントを掴んでいるといえるでしょう。サービス体験は価格を裏切らないものと呼べそうです。

ただ、ショートカットを全て覚えるにはユーザー側に多大な学習コストを必要とします。しかしコストを受け入れて積極的に使うユーザー層が確実に存在しています。そこでキーワードになるのが“Prosumerization of the enterprise”です。

Prosumerizationを意訳すると「プロ消費者化」。Gmailに代表されるコンシューマ向けのツールを使い倒し、仕事をものすごい早いスピードでこなせるプロの仕事人になることを指します。また、“Producer”と“Consumer”を組み合わせた用語でもあります。「生産消費者」と訳され、生産と消費を同時にこなす新たな消費者を意味します。今回の場合、先方から送られてくるメールコンテンツを消費(読み)しながら、生産的に対応(返信)する人を指します。

Superhumanでは一見ユーザーコストが高いように思えますが、そもそもプロ消費者を当初からターゲットにしているため、学習コストに嫌気を感じる一般ユーザーは対象外。そのため、30ドルの高価格設定と招待制度は、プロ消費者だけに利用してもらいたいユーザー獲得戦略に紐づいています。具体的には下記4つを戦略的に実現させています。

  • 本当に価値を感じてくれるビジネスインフルエンサーに特化することでサービスの高級感を演出
  • 強気の価格設定で収益性を当初から実現
  • ターゲットユーザーであるプロ消費者だけを囲うことでサービス体験を高品質に常に保つ
  • プロ消費者は利用頻度が著しく高いため、フィードバックループを完成させてサービス改善フローを構築

プロ消費者向けのサービスを作り上げるだけで、一石二鳥では終わらず、上記のように一石四鳥の戦略を打ち出せます。

今後、Gmail以外にも“Prosumerization of the enterprise”のトレンドは到来するはずです。ExcelやWordで発生するタスクを、圧倒的なスピードとサクサク感でこなせるサービスはまさにそれらのターゲットとなりえます。

実際、すでにファイナンシャル業界で「OpenFin」と呼ばれる金融市場特化の新たなOSが誕生しているように、単体サービスではなく、ハードウェアの体験を丸ごと変えてしまうサービスも登場するかもしれません。

このように、プロ消費者意識がエンタープライズ領域で起きているトレンドが発生しているのです。従来、2C向けに広く展開されていたサービスを、企業向けに再発明するトレンドとも言えます。Superhumanは圧倒的なスピード感をメールサービスに持たせることで、“Prosumerization of the enterprise”を実現しました。

ちなみに“Prosumerization of the enterprise”は、本メディアでも最近頻繁に触れてきたパッションエコノミー文脈で登場した用語「マイクロ起業家」を英語で表す“Enterprization of cousumers”と並列して語られることも多いフレーズです。次の数年は、この2つのフレーズに注目が集まることは必至でしょう。

2つのフレーズを詳細な説明で比較したいと思われる方は、筆者も好んで聴いているスタートアップ情報を発信するポッドキャスト「Off Topic」のエピソード21を聴くと理解が非常に深まります。

Superhumanの作り方

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Image Credit: Superhuman

ここからは「So you’re building a “Superhuman of X”?」の記事一部の抄訳を織り交ぜながら、Superhumanのプロダクト開発戦略を時系列に紹介していきたいと思います。大きく6つの段階に分かれます。

第一フェーズ: Superhumanの始まりはユーザー候補300名へのヒアリング。解決策を聞くのではなく、どんなことに問題意識を持っているのかを傾聴して理解する「ママテスト」と呼ばれる手法でヒアリングを進めていったそうです。

第二フェーズ: 次にユーザー課題を小さなタスクへと分解をして取り組みます。複数タスクの解決に向けて一斉に取り掛かり、大きなプロダクトを作ろうとすると、往往にしてスタートアップは負けてしまうため、小さくスタート。また、取り組む課題を選定するためには、製品の優先順位付けが大切になります。Superhumanの場合、改めてユーザーヒアリングを実施することで解決したようです。ここで大切にしたのが下記の3点。

  • 本質を付いた正しい質問をすること
  • 得られた「ファクト」をセグメント分けして「インサイト」へと昇華
  • インサイトを基に、ユーザーがすでにヘビー利用しているサービスの理解と、同サービスに対して課題に感じている点の解決に自分の時間を50:50で使う

Superhumanは300名のユーザー候補が日常的に使うGmailに目をつけ、3時間以上使っているヘビーユーザーの課題を選出。毎回のメール処理における時間コスト解決に注力することを決めたことがわかります。

第三フェーズ: 次の段階では、具体的に数値に落とし込めるサービスゴールを設定します。大好きなゲームでラスボス設定をするのと同じ感覚です。Superhumanでは次のようにゲーム設定をしています。

  • ラスボス討伐: 受信ボックスの未読メール数を0にする
  • プレイヤー: ユーザー
  • ゲームルール: 必ずオンボーディングを受ける
  • コントローラー: キーボードとショートカット

興味深いのはどんなゲームでも操作方法をチュートリアルで教わるように、オンボーディングセッションを設定している点です。

ユーザーはサービスの利用価値を見出せなければ、すぐに解約してしまいます。30ドルも支払っていればなおさらです。そこで、登録ユーザーは1on1でのオンボーディングプロセスが課せられます。

一見、スケールのしない手法に見えます。ただ、通常のカスタマーサクセス部隊を編成し、長期的にサポートするより短時間にユーザーにサービス理解を促せるため、最終的に低コストで収まり、顧客満足度を最大化できるのだそうです。Superhumanの高い継続率と低い解約率の裏側には、オンボーディングで初見ユーザーをプロコンシュマーへと変えてしまう魔法のステップが用意されているわけです。

おそらく、オンボーディングの有無で大きく解約率が変化する「マジックナンバー」をSuperhuman側は掴んでいるはず。ゆえに時間を惜しんでまで、ユーザーに仕事を早く終わらせる方法を最初の時点で押していると思われます。

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Image Credit: Superhuman

第四フェーズ: さて、ラスボスを討伐させるまでのベースはできました。次に行うのは理想的な利用フローです。受信ボックスを0にするための諸条件や選択肢を洗い出していきます。

たとえば、未読ボタンを押さない(返信を後回しにしない)、リマインダーを使いこなす、スケジュール送信を積極的に使うなどが挙げられます。Gmailで本来行われるべきベストプラクティスを日常的に実行できるツールであろうとし続けたのがSuperhumanです。この点は、上述した「ユーザーがすでにヘビー利用しているサービスの理解」に由来するでしょう。

第五フェーズ: 最低限機能する製品「MVP」は第四フェーズまででなんとか完成。次に考えるべきはバイラル性です。Superhumanは非常に巧みなバイラル戦略を敷いています。具体的には3つ。

  • 「受信ボックス 未読メール数0」を押すとTwitterシェアする感想共有導線を確保
  • メール署名欄にSuperhumanへ飛ぶリンクを用意して招待を拡散
  • ウェイティングリストに友人が載っていた場合、ユーザーが直接優先的にサービス利用を促せるアプリ内リファラル戦略採用

ユーザーの最終目的である未読0に、感想をシェアする導線を置いたは巧みな考えであると言えます。ユーザーのモチベーションが最高潮に達する際、シェアが増えるのには納得がいきます。事実、SuperhumanのTwitterアカウントには2万人以上のフォロワーがついています。比較的地味なサービス領域である点を考慮すれば、非常にアクティブな場を形成しています。他の点に関しても、過去の大手メールサービスのバイラル戦略や、日本のMixiが採用していた招待戦略に見られる考えを忠実に踏襲しているように思えます。

第六フェーズ: 製品開発の最後は収益化です。Superhumanではヒアリング直後の、ざっくりとした製品像が浮かび上がってきた時点からユーザー候補にサービスへの支払い意思があるのかを勇気を持って何度も聞いていたそうです。

加えて、従来のサブスクリプションサービスが提供するような段階的な価格設定はしていません。フリーサイズ的に誰もに使われる有料サービスではなく、あくまでも特定ユーザーのニーズを満たせるのか否かだけに集中するための収益戦略を採用しています。

記事では「最強の商品開発」をSuperhumanの創業者は必ずや読んでいるに違いないとしており、詳しい内容を理解するために一読することをお勧めします。また、FirstRoundCapitalの「It’s Price Before Product」の動画もお勧めしていました。

Superhuman for Xとは?

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Photo by Mateusz Dach on Pexels.com

最後に本題の「Superhuman for X」について紹介します。Superhumanのサービス形態を様々な領域で応用・再現する考えを指します。ピックアップ記事ではSuperhuma系サービスの要素を次のようにまとめています。

  • スピード重視の設計
  • 特定ユースケース・ユーザーの課題解決に注力したサービス
  • ユーザー意見を十分に反映させたエクスペリエンス製品
  • 美しく、考え抜かれたデザイン
  • 従来の大手サービスを現代風に再発明
  • 高品質な有料サービス vs 一般の無料サービスの構図を作る
  • 秀逸なオンボーディングやバイラル戦略で差をつける

続けて、もしSuperhuman for Xの起業アイデアを探している場合に検討すべき評価項目を一覧化しています。

  • 現在広く利用されているサービス・ワークフローにおいて、効率的でない部分や、特定ユースケースに偏りすぎている点はどこか?
  • このワークフローにとってスピードはどれほど重要か?
  • このワークフローはどのくらいの頻度で実行されるのか?
  • このワークフローに対して、ユーザーは1日あたり何時間費やすのか?
  • 新製品を通じてどのような新しいワークフローを作成できるのか?
  • ユーザーが無料の類似サービスに慣れていた場合、支払意思額はどの程度か?そもそも意思は存在するのか?
  • あなたのアイデアが跳ねるきっかけをニッチ市場のなかでどのように作るのか?

Superhumanはスピード改善を最重視したプロダクトです。ただ、1on1オンボーディングを設定しているため、ユーザーの学習コストが多く関わる製品でもあります。直感的にサービス利用方法を理解できる方が良いとする2C向けサービスとは対峙するサービス導入手法でしょう。

それでも利用しようとする人が多く列をなしているのはなぜでしょうか。答えは「ツール時間 > タスク時間」の式で表せます。サービスの使い方を理解する時間を取るほど、タスク完了時間は圧倒的に短くなるのです。

Superhumanの場合、最初に独特のショートカットの使い方や機能を全て頭に叩き込むことで、生産性が圧倒的に上がります。後々に獲得できるメリットが圧倒的に大きいのです。こうした体験を数字で表現した頂点が「未読メール0」なのです。

一方、たとえば2C向けアプリでいくら直感的にアプリの使い方がわかったとしても、生産性が上がることはありません。この点、「直感的にサービス利用方法を理解できる方が良い」といった批判が2Cサービスから出てきたとしても、比較対象違いであることが指摘できます。

もちろん、サービス理解の時間は短ければ良いのかもしれません。ただ、最終的に生産性向上に繋がらなければサービスとしての提供価値軸が変わってくるため、そもそもエンタメやSNSアプリなどに代表される2Cサービスと、サービス導入時間に関する比較はお門違いとなります。生産性を追求するビジネスでのユースケースを狙う“Prosumerization of the enterprise”の所以はここから来ていると言えます。

このように、Superhuman for Xを開発するには生産性をハックする独特のマインドが必要となります。エンタメ系2Cサービスとは全く違った哲学が必要です。

2020年、普段利用する生産性ツールは、本来備わっている機能をほぼ100%駆使し、体験性を最大化できているのでしょうか。もしできていないのであれば、そこには大きなビジネスチャンスが眠っているはずです。今後数年、あらゆるビジネスシーンでこうしたチャンスに着目できたスタートアップに急成長の機会が巡ってくるでしょう。

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「UberEats労働問題」で考えるギグ・ワークのこれからと「パッションエコノミー」

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まだ記憶に新しいかと思いますが、11月20日にUberEatsは日本法人設立に合わせて、同プラットフォームのプロバイダーとして活動する配達員の報酬カットを公表しました。本稿では2020年代にも拡大するであろう、個人の働き方、ギグワークの問題点について少し考察してみたいと思います。 何が発生したのか:配達員の収入は、配送距離などに応じた基本報酬に加え、配達回数などに応じたボーナス分で構成されています…

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Image Credit: UberEats

まだ記憶に新しいかと思いますが、11月20日にUberEatsは日本法人設立に合わせて、同プラットフォームのプロバイダーとして活動する配達員の報酬カットを公表しました。本稿では2020年代にも拡大するであろう、個人の働き方、ギグワークの問題点について少し考察してみたいと思います。

何が発生したのか:配達員の収入は、配送距離などに応じた基本報酬に加え、配達回数などに応じたボーナス分で構成されています。今回カットされたのは主に基本報酬の方です。

具体的には、配達員が店で商品を受け取った際の「受け取り料金」が300円から265円に。注文者に商品を渡す「受け渡し料金」が170円から125円。店から配達先までの距離に応じた「距離報酬」が150円から60円(1キロあたり)に引き下げられました。

同時に、UberEatsが徴収するサービス手数料が35%から10%に減少し、件数をこなすほどに一定のペースで受け取れる「インセンティブ報酬」が増加するとのプラスの変更がなされたため、UberEats側は「改定が配達員の収入に影響を与えることは想定していない」と主張しています。

これに対し12月5日、UberEatsの配達員により結成された「ウーバー・イーツ・ユニオン」は抗議の一環として記者会見を開き、上述の改定の撤回及びUberEats側に、同ユニオンと団体交渉を応じることを求めました。

同ユニオンは、上述の低い報酬・運営の透明性の欠如に関する批判以外にも、配達員が業務内の事故により怪我・病気を患った際の労災保険や医療費の保証、休業を余儀なくされた場合の補償などを要求しています。

これに対し、UberEats日本法人は一貫して「配達員は労働者ではなく個人事業主であるため、団体交渉に応じる法的義務はない」と公表して対応を拒否しています。ちなみにUberEatsは2019年101日、ドライバーの業務中の傷害に対する補償制度を開始していることから、委託業務に関連する一定のサポートはしているようです。

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Image Credit : ウーバー・イーツ・ユニオン

何が問題なのか:UberEats配達員は「労働者」か「個人事業主」か

さて、以上のニュースを踏まえると「なぜ配達員は個人事業主であるにも関わらず、”ウーバー・イーツ・ユニオン”という労働組合を結成し、雇用者としての保険・補償を求め、団体交渉を申し込んでいるのだろうか?」といった疑問が湧いてきます。

UberEatsの配達員は「誰でもできる(市場における希少性が極めて低い)仕事」です。誰でもできる仕事は、すなわち誰でも参入可能で、コモディティ化しやすいという特徴があります。市場原理として、価値(対価)が低下するという危険に晒されることになります。

そこでこういった危険を回避するため、専門性がそこまで高くない人々は、一般的には賃金・労働環境に関し雇用者への交渉余地のある従業員として働き、労働組合に加入することで、法的な面を含めて自身の生活の安全を守るわけです。

さて、以上を踏まえると、UberEatsの配達員は明らかに非熟練型のサービス業なので、個人事業主としてではなく、きちんと労働者として扱われるべきではないか、と考えることもできます。

実際に労働者という概念は、ある業務が実質的に労働者性を持つか否かによって決まるため、仮に配達員が法的に労働者認定されるのであれば、UberEatsは対応を講じる必要が生じます。

ですが、この判断が非常に難しいのです。Ubereatsの配達員が労働基準法における労働者に適応されるかは、依頼主との間にどれだけ使用従属関係があるか、どれだけ自律性の高い働き方をしているかという一定の基準に従って定められます。

しかしその法的根拠が、別の法律である労組法との間で微妙に異なっていたり、労働者性と呼ばれる判断基準(※参考)が複雑・曖昧であるため、明確に労働者か個人事業主かを判断することが困難だとされているのです。

※本件に関する専門家による参考解説記事(Yahoo! ニュース)

よって現在では、過去数年の同様の労働問題においては、一概に労働者の定義を定め適応するのではなく、個別事例ごとの判断が最も合理的だという見方がなされていると言います。

したがって、今後のUberEatsとユニオンの動向や交渉(場合によっては訴訟)の結果が待たれます。法的見解により配達員が労働者認定をされるのか、または新しい枠組みが制定されるのかといった決定は、同社の事業が拡大した数年後の未来に、確実に待ち受けています。

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Image Credit : ウーバー・イーツ・ユニオン

Uberの苦境と、UberEatsの今後

海外の判例に目を向けることも大切です。実は上述の問題・争議は既に5年以上前から世界中で起こっている現象で、何も真新しいことではありません。Uber社が米証券当局に提出した上場申請書類の中では、サービスを担う運転手の一部から雇用関係の認定や、損害賠償を求める訴訟を数多く起こされているという事実もあります。

これはUberEatsではなくUberの話ですが、例えば英国の雇用審判所はある訴訟の中で、Uberのドライバーは自営業者ではなく労働者であると認定しています。また、仏最高裁も料理配達サービスの運転手はウーバーと「従属関係にある」と雇用関係を示唆する判断を示しています。

ですが、このような訴訟にUberが屈してしまうと、これまで無視してきた規制遵守のコスト・ドライバーへ支払う報酬額が増加し、事業モデルそのものが成り立たなくなる危険性があります。このような問題の影響もあり、現在のUberの株価は2019年の春に公開して以来、下降傾向です。

さて、話を少し広げ過ぎてしまいましたが、今回のUberの報酬カットと、それに付随するユニオンの問題提起は、直近5年に世界中で問題となっていた「プラットフォーム vs プロバイダー(UberEatsの場合の配達員)闘争」が、ついに日本上陸を果たした初めの一歩にも思えます。

ギグ・エコノミーのこれから

最後に、Uberのようなプラットホームのアンチテーゼとして期待できる新しいプラットホームの在り方として、2つのトレンドを紹介します。

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Photo by Valeria Ushakova on Pexels.com

一つは”パッションエコノミー”と呼ばれる、ネットワーク内のプロバイダーへより権限・裁量を与えることで、各提供者による差別化を可能にするSaaSモデルのプラットフォーム。豊富な営業ツールを提供し、料金設定の自由化を行うことで、プロバイダーのユニーク性・直接的な営業スタイルを促進します。

結果的にコモディティ化しづらく、サービス価格設定をプラットフォーム側に握られない健全なプラットフォームが形成されます。

<参考記事>

そしてもう一つが、利益を目指さない、調和を重視する”協同組合型”のプラットフォーム。ローカルな組合組織を形成し、手数料は低く設定することでプロバイダーを保護。またサービスの仕様変更などに関連するコミュニティの意思決定も、参加者全員の協議・投票により民主的に決定されるプラットフォーム。

事例としては、AirBnBの代替案としての「FairBnB」や家事代行シェアリング「Upandgo」、ドイツのオンライン・マーケットプレイス「FairMond」などがあげられます。どれも組合型を志向しており、共同運営・正当な収入などの利点を重視しています。

以上2つの事例は、Uberのようにスケールするかと言われれば難しいでしょう。前者は専門性や能力主義に基づいているため、急速なプロバイダーの増加を促すことはできません。一方で後者はスケールを目指しておらず、またガバナンスの構造上意思決定プロセスに時間がかかるという弱点を持ちます。

ですが、Uberのような行き過ぎたプラットフォーム・モデルに対抗するプロテスト運動として、オルタナティブなプラットフォーム・モデルとして非常に魅力的で、その発展には期待が高まります。

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ITエンタープライズ本社が集うシアトルの「社会課題解決型」スタートアップたち

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アメリカ西海岸でテックスタートアップの聖地といえばサンフランシスコです。郊外にはシリコンバレーを要し、各所に名だたるVCが拠点を構えています。 さて、サンフランシスコと「西海岸」「テック」のキーワードで比較されるのがワシントン州に位置するシアトルです。どのように比較されるかといえば、サンフランシスコはテックスタートアップが集まり、シアトルにはエンタープライズ企業が集まる、そういった捉え方をされがち…

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ワシントン湖を境に西はシアトル・ダウンタウン、東にベルビュー・レドモンド

アメリカ西海岸でテックスタートアップの聖地といえばサンフランシスコです。郊外にはシリコンバレーを要し、各所に名だたるVCが拠点を構えています。

さて、サンフランシスコと「西海岸」「テック」のキーワードで比較されるのがワシントン州に位置するシアトルです。どのように比較されるかといえば、サンフランシスコはテックスタートアップが集まり、シアトルにはエンタープライズ企業が集まる、そういった捉え方をされがちです。

実際そのイメージは間違っていません。

シアトルには大手IT企業を含め、あらゆる分野の本社の集合体で街が構成されています。たとえばAmazon。シアトルダウンタウンに構える同社HQはアマゾンタワーと呼ばれ、近辺には植物園型の「The Spheres」を構え、その特徴的な球体施設はアマゾンカラーを豊富に生み出しています。

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ダウンタウンシアトルから車で15分ほど東へ向かいレイクワシントンを越えた先にはMicrosoft本社がある街、レドモンドへたどり着きます。Amazonとは対照的に、大学にあるような2・3階建てのキャンパスを広大な土地に広げ、自然色豊かにマイクロソフトカラーを出しています。

シアトルはAmazon、Microsoft以外にも、オンライン旅行代理店のExpediaやコーヒーチェーンのStarbucks、航空機器製造のBoeing、ビッグデータ解析・BIツールとして著名なTableau、オンライン型の不動産データベースZillowなどを擁しており、挙げればキリがないほどエンタープライズ企業が本社を構えます。

シアトルで働くテックワーカーにとって上記であげた企業間を転職するのが普通のことです。筆者が出会った方は、Microsotで3年、Amazonで3年エンジニアとして働いたのち、同市にキャンパスを持つワシントン大学で教鞭を1年とり、その後Starbucks本社で新規サプライチェーンのマネジメント兼開発職に就く経歴を持っていました。

テック大企業間での転職は当たり前で、だからといって永遠にテックというわけでもなく、スターバックスのようにコーヒー業界に飛び込んだりすることも珍しくないというわけです。

さて、やはりシアトル発のスタートアップは数少なく、筆者が調達ニュースをチェックしていても「Seattle-based」の文字を見ることはとてもまれでした。ただ、シアトル発のスタートアップ数が少ない状況が徐々に変わりつつあるかもしれないデータを、Pitchbookがレポートで示しています。

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同レポートによれば、シアトル発のスタートアップもまた2019年着実に伸びています。同年度にVCやエンジェル投資家から資金調達した企業数は374社で計35億ドルと、2017年度まで下がり続けていたトレンドを盛り返していることが分かります。

筆者はシアトルに計4年ほど住んでいますが、先日、初めてサンフランシスコに1か月ほど滞在した際、両者に大きな違いを感じました。サンフランシスコのテックワーカーのスピリットには、英語でいう起業家としての「Entrepreneurship」が文字通りそのまま街に溶け込み、いわゆる私たちがテック系メディアで垣間見るテクノロジーの世界を体現している、という雰囲気があります。

逆にシアトルでは、生活の中心には「家族」があります。

もちろん米国や欧州諸国において、家族や親類と多くの時間を割く傾向は事実で、それはサンフランシスコでも同じでしょう。ただ、実際にシアトルに住んで感じる、生活の中での「家族の時間」はより大切にされていると感じます。そういった意味で、やはりスタートアップのカルチャーとは少し離れた特性をシアトルは持っているのかもしれません。

ということで、ここからは昨年に登場したシアトル発の調達スタートアップの中から、代表的なものを紹介していきます。まずは「Boundless」から。

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<参考記事>

同社は米国移民のグリーンカード手続きを手軽に、かつシームレスに行えるサービスを提供しています。米国で近年注目を集めている移民問題に対して、うまく切り込んだスタートアップです。

従来、移民手続きを進めるためには弁護士など専門家への依頼が必要であり、かつ、手続きの不透明さに疑問がありました。そこでBoundlessはオンライン化を通じて申請プロセスに透明性を持たせました。UXを高めることで、全米で利用者を増やしています。

まさに米国が直近で抱える社会問題解決をベースとしたスタートアップと言えるBoudlessですが、シアトルでは比較的こういった社会問題解決型スタートアップが多いと感じています。

例えば廃品回収サブスクを名乗る「Ridwell」も印象に強く残っています。同社はAmazon本社があるシアトルだからこそ意識する、空き配達箱問題に目を付け、いかにリサイクル資源として再利用するかの提言をしています。

<参考記事>

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シアトルにもサンフランシスコ発スタートアップのように、最先端技術のくくりにはいるAIやビッグデータを活用したり、それらデータのビジュアライズ化を図るスタートアップも誕生しています。

Polly」はSlackに代表されるビジネスチャットツールとの連携ツールを提供。社内のあらゆるデータの可視化を実現しています。「Showdigs」は内見版Uberと呼ばれ、オンデマンド内見エージェントを生み出しています。内見希望者(Uber利用者)と内見エージェント(Uberドライバー)をマッチングするP2Pプラットフォームを運営しています。

Uberが新たな形で”タクシー”ドライバーを生み出したように、新たな不動産エージェントを生み出すことを目指しています。

<参考記事>

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Photo by Sergei Akulich on Pexels.com

Pitchbookが示していたように、シアトル発のスタートアップは増加傾向にあり、なかでもシアトルカラーが示されている社会問題解決型である「Boundless」などのスタートアップに資金が集まりだしていると感じます。Amazon、Microsoft、Starbucksなど今やエンタープライズといわれる企業達が作り上げてきたシアトルのカルチャーだからこそ誕生するスタートアップなのかもしれません。

2020年以降、シアトルはどう変わっていくのか。今後のシアトルという街が、サンフランシスコとは違ったカルチャーを持ちつつ、どのように「街づくり」をしていくのかとても楽しみにしています。

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MaaSで注目したい13のケーススタディー

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2018年、日本政府によって閣議決定された「未来投資戦略2018」。 同戦略では、インターネットの発展によって生じたあらゆるデータやAIを効率的に活用し、生活の最適化を推し進めていく考え「Society5.0」が語られています。具体的には、Society5.0の定義は次のようなものになります。 「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立…

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Image Credit: Finnish Ministry of Transport &di Communications, 2016 

2018年、日本政府によって閣議決定された「未来投資戦略2018」。

同戦略では、インターネットの発展によって生じたあらゆるデータやAIを効率的に活用し、生活の最適化を推し進めていく考え「Society5.0」が語られています。具体的には、Society5.0の定義は次のようなものになります。

「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」- Society 5.0とは – 内閣府

Society5.0を目指していくうえで重要となるセクターは以下の5つに分解されます。

  1. フィンテック/金融分野
  2. モビリティー
  3. コーポレート・ガバナンス
  4. スマート公共サービス
  5. 次世代インフラ

最もイメージしやすいのはフィンテックの分野でしょう。QRコードによるモバイルペイメント合戦など、日本においても金融文脈から実際に手に触れる機会が年々増えてきています。

一方、“モビリティー”と聞いても、日本では具体的なイメージは湧かないのではないしょうか。

海外に目を向ければ、たとえばUberやLyftによるタクシー市場のP2Pマーケットプレイス化、LimeやJUMPなどによるドッグレス型電動スクーターが街に浸透し始め、目に見えた変化でトレンドを負いやすい環境にあると思います。

また、「自動運転」技術に関してもこれからのモビリティーを大きく先導していくのは間違いないでしょう。最大手ともいえるテスラは今年末にCybertruckを発表したことで話題になりましたが、2020年度からは自動運転の配車サービス「robotaxi」にも着手することが既に発表されています。

自動運転タクシーに関して言えば、Google発のWaymoが今年末にセーフティードライバー無しの実証実験へ着手し始めるなど、2020年がターニングポイントとなることが予想できます。

ただ、Society5.0を前提としたモビリティーサービスはライドシェア、スクーター、自動運転以外にも数多く存在し、大きなインパクトを社会にもたらす可能性を秘めています。

今回は2019年に筆者がピックアップしたスタートアップの中でも、2020年以降盛り上がるだろうと考える「MaaS × 〇〇」のエリアに取り組むスタートアップを振り返っていきたいと思います。

海外

1. Miles

参考記事:排気ガスを出さない「理由」を作るMilesーー環境と「移動に価値を付ける」そのアイデアとは

  • Miles」は環境問題とモビリティーを融合させたリワード型アプリケーションを提供。ユーザーは様々な移動手段の中で徒歩や自転車など、CO2削減に貢献するほどリワードとして「マイル(ポイント)」を還元率高く獲得することが可能。たとえば徒歩移動をした際は実際の距離の10倍、自転車であれば5倍、Uberであれば2倍のポイントを獲得できる。

Milesは移動手段を利用して、環境問題への寄与を上手にわかりやすく価値化できていると思います。同社では積極的に市町村と共同でCO2削減プロジェクトを立ち上げ、街を挙げて「移動」のあり方をユーザーに訴求しています。

移動に対するインセンティブ設計をどう施すかが最大の難点でしたが、環境問題の解決につながるMilesのサービスを市町村にプログラムとして提供し、補助金として資金を得ることでエコシステムを作り出そうとしています。

2. Swiftly

参考記事:街の渋滞をビッグデータで解決、公共交通機関向けMaaS「Swiftly」が1000万ドル調達

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  • Swiftly」はバスや電車などの公共交通機関向けにMaaSプラットフォームを提供。位置情報ビッグデータを利用し、渋滞改善に対するルート改善策を企業・団体へ提供する。

Swiftlyは個人の「位置情報」に目を付け、街の流れを根本的に改善することを目指しています。特筆すべき点は、ロケーションデータを分析・可視化し、なぜ特定の場所で渋滞が起きているのかを探れる点にあるでしょう。

たとえば同社のプラットフォームを利用し、ある公共交通機関の停車駅と信号の位置が効率よく配列されていないことから渋滞が起きていることを突き止め、実際に解消させることも可能です。

3. Lilium

参考記事:2025年に空飛ぶタクシー実現目指す「Lilium」が描く“街と大自然を20分でつなぐ”生活

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  • Lilium」は飛行型で電気自動運転車の開発・研究を実施。いわゆる「空飛ぶタクシー」を開発する同社は価格帯を重要視しており、誰でも利用できる料金設定で2025年を目途に商用利用を目指す。

空飛ぶタクシーの最大の魅力は、都市問題・人口集中問題解決へ向けたソリューションを期待できる点にあります。同社CEOの発言にもある様に、低価格な空飛ぶタクシーが当たり前となれば、森に囲まれた家を持ちながら都会で働くことが実現できます。また、新たな交通手段が増えることで都心で深刻化する渋滞問題の解消も期待できるでしょう。

空飛ぶタクシーはUberもUberAirプロジェクトで実証実験段階に入るなど、市場全体では5年を目途に実用段階へ入る雰囲気を見せています。2025年ごろには今の私たちがUberを使うような感覚で(金額的にも)空を移動手段に利用できるのも夢でないかもしれません。

4. Blackbird

参考記事:プライベートジェットを民主化するBlackBird、「空のシェアエコ」はどのような経済圏を生み出すか

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  • BlackBird」はプライベートジェットやパイロットをユーザーとマッチングさせ、航空機のシェアリングプラットフォームを提供。短中距離の移動手段に特化しており、低価格かつ短時間の空移動の体験の実現を目指している。

BlackBirdも空の移動に目を付けたスタートアップです。参考記事のタイトルにもある様に、プライベートジェットの民主化を図るため「空のシェアエコ」の概念を作り出した先駆けと言えます。たとえばアメリカのように、距離としてはそこまで遠くないが、山越えがあり車だと時間がどうしてもかかってしまう際の、最適な移動ソリューションとなる、といった具合です。

5. Aero

参考記事:オンデマンドプライベートジェット「Aero」が1,600万ドル調達ーーBlackJetの失敗を教訓に、空路のシェアエコ再挑戦

  • Aero」はミレニアル世代やジェネレーションZ世代をターゲットとしたオンデマンド型プライベートジェットのマッチングプラットフォームを提供。同社は飛行機を管理せず、プライベートジェット運用企業とパートナシップを組む。利用者は大手エアライン利用者に使われる空港ではなく、プライベート空港から飛行機に搭乗する。

Aeroは一見上述したBlackBirdと類似しています。しかし、BlackBirdでは移動がメインのため航空機もヘリコプター型に近いものが多いですが、Aeroでは私たちがイメージする通りの「プライベートジェット」を提供しています。

Blackbirdが2〜4人ほどの航空機であるのに対し、Aeroでは飛行機型で数十人搭乗できる設計となっています。インテリアもBlackBirdが簡易的であるのに対し、Aeroでは内装を重視し「空の移動+体験」な空間を作り出していると言えます。

価格帯はカリフォルニア州オークランドから、コロラド州テルライドまで2時間のフライトを予約した場合一人当たり約900ドルとなっており、通常フライト価格の3〜4倍となってます。

国内

1. Whill

参考記事:WHILLが仕掛ける「歩道版Uber」、50億円を調達して新たなMaaSビジネスを開始へ

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  • Whill」は高齢者や障害を持った、移動に問題を抱える層をターゲットとしたモビリティー製品を提供。年齢や障害を理由に「移動」が制限されない世の中を目指す。

Whillでは電動車いすを開発します。加えて、MaaSプラットフォームとして公共交通機関とタッグを組み、利用者がシームレスな移動を経験できる仕組みを作り上げているのが特徴的といえます。同社HPでは、MaaSプラットフォームとのコラボレーション先として病院、空港、ミュージアム、ショッピングモール、歩道(サイドウォーク)、テーマパークを挙げており実用化が期待されています。

2. LUUP

参考記事:人口減少時代を「移動」で救え!C2Cサービスの移動インフラを目指す「LUUP」ーー電動キックボードのシェアリング事業で5自治体が連携

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  • LUUP」は日本で電動キックボードのシェアリングサービスを展開。2019年末には、沖縄のリゾート施設にて初の実証実験を開始し、国内マイクロモビリティーをリードしている。

電動キックボードの規制が未だ厳しい国内市場です。LUUPは着実に実証実験の回数を重ね、自治体や観光に目を付けて同社プロダクトの浸透を進めています。マイクロモビリティーに関する国内動向を追う上で欠かせないスタートアップであることは間違いないでしょう。

3. Maas Tech Japan

参考記事:Beyond MaaSを見据えた「理想的な移動社会」への挑戦ーービジネス効率化の旗手たち/MasS Tech Japan代表取締役CEO 日高 洋祐氏

  • MaaS Tech Japan」は、MaaSに関わるデータプラットフォームを各公共交通機関や企業に提供する。経済産業省・国土交通省が進めるスマートモビリティチャレンジにおける実証実験に参加するなど数多くのPoCを進めている。

MaaS Tech Japanでは、総合MaaSソリューションを提供するため、数多くの実証実験からビッグデータを収集・解析している段階にあります。日本においては、MaaSのビッグデータを収集解析する企業は耳にすることが少なく、エンタープライズとMaaSスタートアップの貴重な架け橋になることを目指しています。

4. Carstay

参考記事:新進気鋭の起業家が大物キャピタリストとアイデアを磨きあげる合宿イベント「Incubate Camp 12th」が開催

  • Carstay」はバンライフ実現のためのバンシェアプラットフォームを提供。新しい移動の形を宿泊と結びつけている。インバウンド観光客が増える中で大きな問題となっている宿不足の問題を、移動可能な宿としてバンを共有し、車中泊体験の提供で解決しようとするスタートアップ。

モビリティーとトラベルを繋ぎ合わせる比較的珍しいスタートアップです。移動の概念を宿泊の観点を盛り込むことで根本的に変えることを目指しています。同社が参入する領域はラストワンマイルのようにMaaSにとって重要なセクターとなると思います。

番外編

JR東日本

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JR東日本」はモビリティー変革コンソーシアムを結成するなど、主体的に移動の新たなコンセプト構築に取り組んでいます。身近な取り組みでいえば、朝の通勤時間帯の混雑を緩和する対策として有楽町線での「S-Train」の導入や、SUICAを中心としたモビリティーとその他観光業との融合などが挙げられます。

小田急電鉄

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小田急電鉄」では中期長期計画に「モビリティ × 安心・快適」とした施策を挙げるなど、JR東日本と同様にMaaSに取り組んでいます。

MaaSの先駆けと言えるフィンランド・ヘルシンキにてWhimを運営するMaaS Globalともデータの連携やサービスのパートナシップを結んだことも今年10月には発表しました。小田急は通勤通学に多用されていますが、箱根のように東京から少し離れた観光地へアクセスす手段も提供します。そのため、外国人観光客とMaaSを組み合わせた事業も今後オリンピックを機に増えていくと考えます。

トヨタ自動車

多様な仕様のe-Palette Concept
TOYOTA

「TOYOTA」は言わずと知れたモビリティー企業ですが、自動運転の発展のためにMaaS文脈は不可欠と捉え研究開発を進めています。昨日のCESでは大きな発表もありました。

<参考記事>

昨年には、e-Palette Conceptを発表し、自動運転×MaaSをトヨタなりに提示しUberとパートナシップを結んでいます。また、2019年にはソフトバンクとの共同出資にて新会社「MONET Technologies」を設立し、人の流れや人口分布、交通渋滞や車両の走行ログなどを統合的に絡めたデータプラットフォームを活用していくことを公開しています。

MOBI (Mobility Open Blockchain Initiative)

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MOBI」はブロックチェーンをMaaSで活用することを目指し設立した団体です。メンバーには既存モビリティー企業であるHONDAやFord、GMなどが参加し、IBMやアクセンチュアその他ブロックチェーンスタートアップ企業がコラボレーション可能な環境となっています。

なかでもV2X(Vehicle to Everything)文脈とブロックチェーンをうまく掛け合わせ、ビッグデータルートからモビリティー問題解決を目指すMaaSプラットフォームとは一線を画し、MaaSソリューションの最先鋒となると考えています。

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離婚で持ち家はどうなる?財産分与、3つの方法とは

昨年末に離婚を公表したお笑いコンビ「FUJIWARA」の藤本敏史さんとユッキーナこと木下優樹菜さんのニュースが世間を賑わせました。 芸能人の離婚がワイドショーで取りざたされていますが、現代において日本の夫婦は、3組に1組は離婚すると言われている時代です。これは、婚姻数の低下に加えて離婚数が増加していることにより、分母と分子の幅が狭くなってきているためです。厚生労働省のデータによれば、1970年代は…

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Photo by burak kostak on Pexels.com

昨年末に離婚を公表したお笑いコンビ「FUJIWARA」の藤本敏史さんとユッキーナこと木下優樹菜さんのニュースが世間を賑わせました。

芸能人の離婚がワイドショーで取りざたされていますが、現代において日本の夫婦は、3組に1組は離婚すると言われている時代です。これは、婚姻数の低下に加えて離婚数が増加していることにより、分母と分子の幅が狭くなってきているためです。厚生労働省のデータによれば、1970年代は婚姻数が約100万件に対し、離婚数は約10万件、つまり10組に1組は離婚すると言われていました。しかし約40年の間に婚姻数が66万件に減少し、離婚数は約23万件に増加、つまり3組に1組が離婚するという数値になります。

また、余談ですが、離婚が圧倒的に多い月は「3月」、2位は12月となっており、お子さまの学校や、税金や健康保険など、区切りの良い月を選択されている傾向にあります。

厚生労働省「平成22年人口動態統計」より

 

結構な確立で発生する離婚ですが、気持ち的な問題以外にも重たい決断が待ち構えています。そのひとつが「お家」です。借家であれば次の住まいを探す程度で済みますが、「持ち家」だった場合はなかなか大変です。

実際、結婚後に住宅を購入していた場合その家をどうしていくのか、という点に頭を抱える人が多くいらっしゃいます。名義は夫婦の共有名義になっているがどうしたらいいのか、住宅ローンがまだ残っているがどうしたら・・・。結婚後に購入した住宅が、離婚によってどのような影響を与えていくのでしょうか。私たちは、中古住宅の買取マッチングサービス「インスペ買取」を運営しているのですが、こういった問題を抱える方々の声も定期的に届いています。

では具体的に何が起こるのか、みていきましょう。

まず、結婚後に住宅を購入した場合、住宅は「財産分与」の対象になります。離婚後に今の住宅をどうしていくのかを考える下準備として、住宅の名義人、住宅ローンの債務者を確認する必要があります。財産分与の方法はいくつかあります。

  • 住宅が単独名義の場合、奥様との共有名義にすることで住宅を1/2ずつ所有する
  • 夫婦の共有名義の場合、相手方に代償金を支払い、単独名義に変更する
  • 家がいらないという場合は、売却をして資金を1/2ずつに分ける

では、離婚に伴う住宅の問題点を解決できる方法を3つご紹介します。

home real estate
Photo by Binyamin Mellish on Pexels.com

1:賃貸に出す

家を売却せずに共有名義、もしくは単独名義で家を残しておくケースです。賃借人がつけば家賃収入を見込めるため、住宅ローンを使用していたとしても月々の返済の相殺を期待できます。しかし、人口動態からみて、賃貸の需要が少ない地域ではあまり現実的ではない方法です。

2:仲介会社に依頼し「仲介」にて売却

こちらは双方が住宅を手放したいケースです。仲介会社は「仲介」にて個人の買主を探します。住宅ローンが残っている場合、売却をするにあたり抵当権の抹消、つまり、住宅ローンの完済が必須です。この場合、売却期間の長期化をリスクに背負いながらローンの返済を並行しますが、売却がうまくいけばローンの完済に加えて余剰金が発生する可能性もあります。

しかし、仲介では「個人の買主」を探す必要があるため、SUUMOなどの不動産情報サイトに掲載して近隣の方に見つかる可能性があったり、売却後に瑕疵が見つかるとどちらが責任を負うかなど、さまざまなリスクもあります。

3:買取会社に依頼し「直接業者買取」にて売却

上述の2つ目のケースと同様に住宅を手放すケースです。買取会社に依頼すると買取会社が直接買取るため、仲介の際に発生するようなデメリット(売却期間の長期化や売却後の瑕疵責任など)は避けられます。一方、買取の場合は市場の相場価格よりも低い金額で売却となることも多いため、万が一売却額が住宅ローンの返済額に届かない場合は差額分の資金を工面し返済に充てる必要があります。

ちなみに、仲介に出してから買取会社に依頼するのはオススメしません。というのも、仲介市場で「売れない」ということを証明してしまっては、買取側も手控えるからです。買取側は宅建業者のポータルサイト(レインズ)でまずそこを調べるのでご注意です。

日常のワイドショーでも取り上げられる芸能人の離婚問題をもう少し掘り下げて見ると、さまざまな住宅の問題が隠れていることがわかります。離婚以外にも人々のライフスタイルが多様性を帯びる中、現在、国内には846万戸の空き家が存在し、15年後には2,000万戸以上に膨れ上がるというシンクタンク予測もあります。

<参考記事>

こういった中古住宅の流通をスムーズにすることで、新しいビジネスチャンスも生まれてきます。社会的問題解決の一任を背負う立場として、中古住宅市場の活性化となれば幸いです。

本稿は「インスペ買取」を開発・提供するNonBrokers株式会社のカスタマーサクセス、佐々木大輔氏によるもの。彼らの事業や採用に興味がある方は、こちらからコンタクトされたい。

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