コラム

Z Venture Capital 創業物語:アジアNo.1のCVCを目指して(後半)

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本稿はZ Venture Capital代表取締役の堀新一郎氏の手記「ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します」を前後半にて転載させていただいたもの。CVCがどのようにして立ち上がり、成長していったのかその軌跡を辿る上で重要な記録になっていたので、ご本人の承諾を元に転載させていただいた。彼の記事はこちらでも読める。 3号ファンド設立:2018年8月 (前半からのつづき)社長就任、組織づくり、E…

写真は2020年2月に都さんが入社した時の記念撮影。早くこの頃に戻りたいですね

本稿はZ Venture Capital代表取締役の堀新一郎氏の手記「ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します」を前後半にて転載させていただいたもの。CVCがどのようにして立ち上がり、成長していったのかその軌跡を辿る上で重要な記録になっていたので、ご本人の承諾を元に転載させていただいた。彼の記事はこちらでも読める。

3号ファンド設立:2018年8月

(前半からのつづき)社長就任、組織づくり、EV Growth立ち上げと色々なイベントが次々と起こりますが、当然国内スタートアップの資金調達環境は賑やかなので、投資活動は休むことなく進みます。また、日を重ねるにつれスタートアップの資金調達金額はどんどん大きくなっていきます。ついこの間まで30億円のファンドを運営していた自分たちが、突如200億円という巨大なファンドを任された時には一体いつになったら組入が終わるんだろう、と想像も容易にできなかったものです。

YJCはシードからレイターステージの全てのステージに投資するオールステージVCです。レイターステージでは2016年にビズリーチへ16億円の投資を実施しました。また、east venturesと共同で運営するアクセラレータープログラム「Code Republic」でも続々とシード投資も行っています。気付くと2号ファンドの組入も順調に進み、新たなファンドを設立する必要が出てきました。1号・2号ファンドで素晴らしい起業家の皆様とご一緒させていただいた実績を評価していただき、ヤフー取締役会で叱咤激励のメッセージとともに200億円の3号ファンド設立の承認が降りました。

3号ファンド設立の年は、ヤフーの経営体制が変わった年でした。全社で投資活動を積極化していく号令が新社長の川邊さんから発せられていました。川邊さんからは「キャピタルゲインだけではなく、CVCとしてシナジー創出で結果を出して欲しい」というメッセージを頂きました。新しい経営陣の期待を胸に、YJCはシナジー創出を2012年8月の創業以来、より強く意識した運営に移行していくようになります。

具体的な戦略は、前述したセクター別のスペシャリストをコマース、メディア、フィンテックとZホールディングスが所有する事業アセットに合わせた3本の柱とし、これら3領域を重点投資領域に設定します。各セクターのスペシャリストが事業開発のテーマを各カンパニー長に提案する流れを作りました。この活動は2018年から開始していますが、まだまだ改善の余地があり、進化させていかないといけない、と思っています。

Z Venture Capital爆誕:2021年4月

YJCとLINE V合併、新生「Z Venture Capital」誕生ーー堀代表に聞く“300億円新ファンド”と投資戦略

ある日、Zホールディングスの経営幹部からLINEとの経営統合について聞かされます。そして、LINE VenturesとYJCを一つにするという話が舞い降りてきました。LINE Venturesのメンバーは8割以上がソウル、サンフランシスコ、北京といった海外拠点にいます。

コロナ禍で合併相手のメンバーと直接顔を合わせて話し合うことすらも出来ません。令和の時代のM&Aは全てオンラインで進めなくてはなりません。元々PMIを経験したことがないのに、ぶっつけ本番でオンライン・グローバルPMIにチャレンジです。

言葉やカルチャーの違いから様々なすれ違いも生まれます。「Zoom飲み会やらなくなったよねー」というような声が聞こえますが、Zoom飲み会しか交流する手段がないので今でも月1でパートナー間ではやってます(笑)

数々のハードル(!?)を乗り越え、無事に2021年4月1日にZ Venture CapitalとしてZホールディングスのCVCとしてYJCとLINE Venturesは生まれ変わりました。ファンドサイズも300億円とさらにビッグになりました。

合併からの6ヶ月間の振り返り: 2021年10月1日

ミドルバック総責任者に就任した岡本紫苑CFO・General Counsel

ファンドのPMIの経験がある方はそんなにいらっしゃらないと思いますが、私にとっても初めてのことで思った以上に大変でした。2020年2月にジョインしてくれた都さん(現ZVC取締役COO、パートナー)の加入はとても力強かったです。都さんは韓国語、日本語、英語を堪能に話すことが出来ます。旧LINE Venturesの幹部と腹を割って話す際には都さんに沢山助けてもらっています。

投資委員会運営やDue Diligence(投資検討業務)といった超重要な業務に加え、人事評価制度などファンド運営のみならず会社運営に関わる様々な業務を統一化していかなくてはなりません。ビジョン、ミッション、バリューの策定なども本来であればオフサイト合宿を開催して喧々諤々の議論を行いたかったですが、全てオンラインで対応しなくてはいけません。

ZホールディングスとLINEの統合に関して公正取引委員会による審査が行われていたこともあり、LINE Venturesの皆さんとCVCの統合について議論することが直前まで出来ませんでした。なので、4月1日までに合併に関する全てのタスクを消化できませんでした。とりあえず、投資活動ができるようになっていないとマズイ、ということでファンドの設立だけは間に合わせ、4月1日からガンガン投資ができるようにしました。ホームページもとりあえず形式的にLPだけ準備しました(正式版は年内にリリース予定です)。

結果、この半年間、約30社近くに約50億円弱の投資を行うことが出来ました。もちろん、日本だけではなく、米国・東南アジアにも投資をしています。Z Venture Capitalに関わる全メンバーの努力に本当に感動しています。

アジアNo.1のCVCを目指すべく、投資活動に並行して会社運営もどんどんパワーアップしていっています。

5月より、Z Venture Capitalは取締役会設置会社に移行しました。また、監査役にはZホールディングスの法務統括部長である妹尾執行役員に就任してもらいました。

また、8月からは今までフロントメンバーとして活躍してきた岡本紫苑さんにCFO兼General Counselに就任いただき、フロントの活動に加えてミドルバックの総責任者として国内とグローバルのファンド運営に深く携わっていただくことになりました。

そして、10月からはメンバーがZ Venture Capital株式会社に転籍します。Z Venture Capitalの定める勤務形態・報酬体系のもとで、投資活動に従事してもらいます。独立子会社として、独り立ちしていきます。

思い返すと2013年6月に小澤さんに誘われて、ヤフー主務・YJC兼務という形でベンチャー投資業務に携わってきました。道中、ヤフーのM&Aの業務が忙しくなりすぎてスタートアップ投資がままならなくなり、主務をYJCに切り替える、といった経緯もありました。しかし、この8年間はずっと「出向」という扱いでした。今回の転籍は、親会社Zホールディングスの私達に対する期待がとても大きいものだと受け止めています。

原文はこちらから

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Z Venture Capital 創業物語:YJキャピタル創業、突然やってきた社長交代(前半)

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本稿はZ Venture Capital代表取締役の堀新一郎氏の手記「ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します」を前後半にて転載させていただいたもの。CVCがどのようにして立ち上がり、成長していったのかその軌跡を辿る上で重要な記録になっていたので、ご本人の承諾を元に転載させていただいた。彼の記事はこちらでも読める。

皆さんこんにちは。Z Venture Capitalの堀です。

2021年10月。YJキャピタルとLINE Venturesが合併しZ Venture Capital(以下、ZVC)として新たな航海に出てから半年が過ぎました。10月1日よりZVCメンバーは、ヤフーからの出向を解除しZVCに転籍します。引き続き、グループ会社の一員ではありますが、大企業ヤフーの社員という保護された立場がなくなり、イチCVC(Corporate Venture Capital)の社員として独り立ちしていくことになりました。(旧LINE Venturesのメンバーは年明けに転籍予定です)

ヤフー、LINEといったインターネット業界を代表する企業を親会社に持つ二つのCVCが統合というイベントもあり暫くバタバタしていたので、今日は改めてこれまでの9年を振り返ってみたいと思います。

YJキャピタル創業: 2012年9月

侍衣装のオンデマンド撮影の手配がつかず、鎌倉武士のコスプレ写真になってしまったことは良き思い出です

2012年3月、創業期からヤフーを牽引してきた井上社長が宮坂さんに経営をバトンタッチしました。FacebookがNasdaqにIPOした5月、ヤフーではCVC立ち上げの議論がスタートしました。

破壊的イノベーションを発見しに行き、スタートアップと共に成長する。そしてキャピタルゲインも得る。そういった目論見でYJキャピタル(以下、YJC)が、10億円の1号ファンドが設立されました。初代社長には当時のヤフーの大矢CFOが就任。取締役にエンジェル投資家としても有名な小澤さんが加わり、矢継ぎ早に投資を決めていきます。3ヶ月で投資資金は底を尽き、20億円の投資総額の増額を行うという荒々しい船出でした。

かくいう私は2012年4月にヤフーに入社し、M&Aチームに配属されました。YJCに参画するのは2013年7月で、YJC設立から10ヶ月が過ぎていました。

2号ファンド設立: 2015年1月

30億円に増額したファンドもあっという間に投資余力が無くなりました。1号ファンドの投資先は続々とIPOし、設立から2年しか経っていませんでしたがVCとして驚異のパフォーマンスを叩き出していました。YJCの親会社ヤフーは、2号ファンドの運用総額を200億円に増やします。2倍、ではなく約7倍です。私は当時取締役会に同席出来なかったので伝え聞いた話ですが、これほど順調にいっているのであれば1,000億円にまで増やしても良いのではないか?という意見も出ていたとのことです。当時1,000億円のファンドが出来たらどんなことになっていたことやら(笑)

2号ファンドは200億円。1号ファンドでは国内投資だけを行ってきましたが、200億円の軍資金を持って海外投資にも足を踏み入れることになりました。このタイミングで小澤さんはヤフーショッピングの責任者も兼務していたこともあり、多忙を極めていたので社長を当時のヤフーのM&A責任者の平山さんに引き継ぎます。

海外にはヤフージャパンの名は知られていない。海外の起業家に覚えてもらえるようなインパクトを先に残そう。そういった狙いから全メンバーが侍のコスプレをし、ホームページをリニューアルしました。

社長交代: 2016年10月

社長就任を受けてオフィスにいたみんなとパチリ

ファンドサイズが200億円になり、投資対象エリアも世界に広がったことでメンバーはあちこち飛び回っていました。そんな最中、平山さんにカフェに呼び出され「他社に転職することになったから後は任せたい」と突然の告白を受けます。大矢さん、小澤さん、平山さんと続いたバトンを私が受け継ぐことになりました。

代表を引き受けた後、いくつかの課題が浮かび上がってきました。社長じゃなかった頃には見えていなかった景色だったかもしれません。1つ目はメンバーの離脱。これはもう、私自身の問題であり、深く反省しています。社長という役職をきちんと理解していなかったこと、そして結果を出さなくてはいけないという焦りからメンバーの育成やサポートを疎かにしていました。

もう一つは海外投資のパフォーマンス。2015年から海外投資をイスラエル、韓国、米国、東南アジアといったエリアで行ってきました。国内投資のパフォーマンスと比較すると海外投資の結果は活動期間2年弱と短い期間ではありましたが、誰がどう見ても低調でした。社長になってから初めて行った意思決定は【海外新規投資の凍結】でした。

投資資金も余っており急いで投資を進めなくてはならない状況でしたが、足元を固めることを優先して組織づくりに着手します。

組織づくりは決して平坦な道のりではなかったです。CVCという歴史の浅い組織体が、独立系を含む数々のVCが乱立するマーケットで外部から採用が容易に出来なかったからです。ヤフーでは中途採用に関して厳しい基準があります(これは組織として素晴らしいことです)。ポンポンと採用がまず出来ない。

人材要件を満たす高スペック人材に来てもらおうにも、競合VCほどの柔軟な報酬制度というわけではないのでなかなか良い人材に入ってもらえません。採用は、ヤフーにいる人材を引っ張ってくるしか方法がありませんでした。社員数が数千人もいるから十分じゃないか、という声もあるかもしれませんが、ヤフーの社員でVC業務を経験した者は皆無だったので、これまた百戦錬磨のキャピタリストが活躍しているマーケットでは大きな周回遅れを強いられました。

こうした状況下で、世間で活躍しているキャピタリスト(ソーシング力を持っていて、ビジネス経験も豊富で、金融・会計・法務ノウハウを保有している)をロールモデルにした人材開発を諦めます。世の投資銀行、証券会社、コンサルティングファームがやっているようにセクター別のスペシャリストを擁立することに方針転換しました。これは社内でも反対の声がありましたが、生き残る道として選択しました。

EV Growth Fund設立:2018年4月

EV Growth Fundの面々と。左から衛藤バタラ氏、Willson氏、Roderick氏、堀、大久保義春氏

海外投資の凍結を決めたものの、海外投資が成功する要件とは何か・そもそも投資が成功する要件とは何か。ということをずっと考えていました。私の上司でありメンターでもある小澤さんには「投資してもらいたい、と思われるブランド・信用が無ければどこの国で投資をやっても良い起業家に投資出来ない」と言われていました。

国内では小澤さんが約4年間かけてYJキャピタルの立ち上げに尽力してくれたため、YJキャピタルに素晴らしいブランドが築かれたと思っています。しかし、海外で同じことをやろうと思うと、そもそも人生を海外生活にかけられる人材を採用し、その人がブランド立ち上げるまでに4〜5年は待たなくてはなりません。グローバルでスタートアップ投資はどんどん成長していたので、思ったように海外進出出来ない現状に焦りの気持ちがどんどん募っていきました。

そんな中、グローバル市場でブランド力を保有するパートナーと共同GPという形であれば海外投資にチャレンジ出来る、と考えるようになりパートナー探しを始めました。どのVCもヤフーと共同GPを立ち上げるメリットを感じてもらえなかったのですが、east venturesのManaging DirectorのWillsonと話す機会が2017年9月に訪れます。日本ではメルカリを始めとする数々の著名なスタートアップに投資しているVCですが、東南アジアではTokopediaやTravelokaのシードステージから投資をしている、東南アジア№1のシードVCです。

私はYJCで東南アジアのエリアを中心に投資を行っていましたが、誰もが投資をしたいと思っている優良企業のシリーズAに参加出来ずにやきもきしていました。一方で、east venturesは殆どの有望なスタートアップのシードステージに投資していました。当時、シードVCでeast venturesが頭一つ抜け出ていたからです。そして、彼らのポートフォリオ企業に対して東南アジアを代表する有名なVCがシリーズAでバンバンと投資を決めていました。

「私もそのインナーサークルに入りたい」と常々思っていましたが、出張ベースでは簡単に入れてもらえません。そこで「シリーズA以降の投資機会を域内の他のVCに提供する前に、east venturesとYJCで先に出資しませんか」と私からWillsonに提案したところ、「たまたま同じ提案をSinarmasから受けたところでこれは何かの偶然かもしれない。SinarmasもYJCも共にeast ventures Seed FundのLPなので、この際3社でGrowthステージに特化したVCを作って、東南アジア№1のVCを一緒に目指していかないか」とトントン拍子で高層が実現に向けて突き進んでいくことになりました。

本提案はヤフーの経営陣から「このスキームなら海外投資を任せられる」とお墨付きをいただくことになり、半年後には150億円のEV Growth1号ファンドをeast ventures、SinarmasとYJCの3社の共同GPファンドとしてスタートすることが出来ました。

後半につづく原文はこちらから

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企業向けGoogle検索を目指す「Glean」—エンタープライズ検索領域での活躍を目指す/GB Tech Trend

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 今週の注目テックトレンド…

5,500万ドルの調達を発表したGlean。Image Credit: Glean。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

私たちの生活と検索は切っても切れない関係となりました。Googleなどの総合インターネット検索サービス以外にも、個別のサービス内検索もあります。たとえばECサイトを訪問した際、商品検索をするケースが考えられるでしょう。

ではみなさんの企業内資料・ノウハウに関してはどうでしょうか。何か欲しい資料があった時、すぐには見つからない時、資料管理に詳しい人に聞いたり、担当部署の人にわざわざ聞いたりすることがないでしょうか。適任者がいない場合は、時間をかけて探すこともするはずです。

この最適化のされていない「エンタープライズ検索」に注目が集まっています。9月15日、5,500万ドルの調達を発表した「Glean」はまさにこの領域で活躍を目指すスタートアップです。

Gleanはステルス企業ですが、公開されたコンセプト動画を観る限りではウェブ検索プラットフォームを提供するようです。事前にGleanのウェブ上でSlackやGoogleアカウントと連携・閲覧権限の許可をしておくと企業内ドキュメントを分析し、Google検索結果のように該当箇所・関連ドキュメントが表示される、という仕組みです。

AI機械学習を用いて類似のキーワード(例えば「四半期の目標」と「第1四半期の注力分野」)を抽出・理解するのが特徴的で、従業員の職種に基づいた検索結果のパーソナライズ化も実現しているといいます。

Gleanの関連サービスとして「Guru」も挙げられます。同社はAIサジェストサービスを提供しているサービスで、GmailやSlack、顧客との電話中やチャット問い合わせ中にわからない単語やマニュアルが出てきた際、エクステンション(SlackやChromeに導入できるAd-onサービス)を通じて手軽に回答を引き出せます。

検索サービスとして独立させている「Glean」と、プラットフォームのAdd-onに終始している「Guru」。使い勝手は違いますが、どちらも企業内ドキュメント需要に対応しようとしています。

両社の目指す先は「ナレッジハブ」の確立です。毎日検索されることで従業員が気になる点がデータとして集まります。集まった項目を「ホットワード」として抽出し、たとえば新人研修向けに自動で重要な内容だけをまとめたりできます。両社は検索データが集まるからこそ実現されるビックデータの活用の機会を伺っています。

コロナにより在宅ワークが当たり前になった今、冒頭で述べたように資料に詳しい人に直接聞くことが難しくなりました。国内でもQastやWikiタイプのサービスがナレッジ共有にチャレンジしていますが、資料内検索のDXを推進する領域はさらに取り組むチームがふえるのではないでしょうか。

今週(9月13日〜9月19日)の主要ニュース

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10年起業家:ギアチェンジの時、上場の意味

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(前回からのつづき)シリコンバレーで出会った起業家と学生はやがて2社の上場企業を生み出した。しかし話はそう簡単なものではない。一社はチームに大きな問題を抱え、もう一社はジェットコースターのような日々を過ごすことになる。10年が経過した今、スタートアップが上場する意味とは何かを振り返る。 グッドパッチ、上場を目指す Gunosyを開発した学生3人は連続起業家となった木村新司氏と出会う。サービス立ち上…

Gunosyで知名度を上げたグッドパッチは上場を目指しチームを拡大させる(写真提供:グッドパッチ)

(前回からのつづき)シリコンバレーで出会った起業家と学生はやがて2社の上場企業を生み出した。しかし話はそう簡単なものではない。一社はチームに大きな問題を抱え、もう一社はジェットコースターのような日々を過ごすことになる。10年が経過した今、スタートアップが上場する意味とは何かを振り返る。

グッドパッチ、上場を目指す

Gunosyを開発した学生3人は連続起業家となった木村新司氏と出会う。サービス立ち上げの翌年、法人としてのGunosyが動き出した。一方、そのきっかけを作ることになった土屋尚史氏もまた、プライベートなデザイン会社としてだけでなく、もう少し先の世界を見たいと思うようになる。

「私も全然資金調達とか考えずにグッドパッチを起業したんですが、やはりGunosyが大きくヒットした翌年には、社員を20名近く抱えるようになったんです。そもそもスタートアップ自体が好きで、大企業と一緒に仕事をするというよりも彼らと一緒に仕事をしたかったんですよね。だからどこかで影響を受けていたんでしょう、ワンチャンス、そういう機会があったら挑戦してやろう、という野心的な気持ちは持っていました」(土屋氏)。

グッドパッチが最初に外部の投資家から調達をすることになったのは創業から2年後の2013年12月。DG インキュベーションから1億円の資金調達だった。その後、2016年にシリーズBラウンド(参加した投資家はDG インキュベーション、Salesforce Ventures、SMBC ベンチャーキャピタル、SBI インベストメント、FiNC。調達金は4億円)、その翌年の2017年にはシリーズCラウンドでSBI インベストメントと三井住友海上キャピタルから総額4億円を調達している。

黒字を達成して数十人のチームを擁するまでに成長した、クライアントワーク中心のデザイン会社が上場を目指すというのは珍しいステップだった。外部投資家を入れれば、当然ながら経営はそれまで以上にガバナンスを求められるようになる。1人気ままなオーナー社長ではいられなくなるのだ。それでも土屋氏もまた、社会の公器となる道を選んだ。

「迷いですか?全然ありましたよ(笑。まあそれでももし、やれるチャンスがあるのなら挑戦してやろうと。ただ、最初の起業ですから上手くいかないだろう、正直に言うと、どうしようもなければ会社を売ればいいや、ぐらいに思っていました。それでもそれから会社が成長し、今で言うミッションやビジョンのようなものを考え出した時、社会的な存在意義が見えてきて、自分がこの会社をやり続ける意味がありそうだなと感じたんです。そこからですね。腹が括れたというか。もちろんそういう意味では周囲のスタートアップや起業家の方々の刺激はすごく大きかったと思います」(土屋氏)。

その後、グッドパッチは調達した資金と積み上がる依頼を糧に、急速にチームを大きくする。当時を振り返って土屋氏は、この急成長にあまり恐怖を感じず、その勢いに身を任せていたと語る。自分は本質的には正しい選択をしている、失敗も数多く知っている、だから大丈夫ーー。しかしその先に待ち受けていたのはシリーズBラウンドを前後して経験した組織崩壊だった。

成長痛を経験し、それでもグッドパッチは踏みとどまる。

「組織が成長する中、私はキャッシュというか売上を重要視していたんです。組織が危うい状態になっていた時でも昨年比で45%とかの売上成長があった。もし、あの時、調達した資金を未来への投資だ、などと言って既存事業をおざなりにしていたら今はなかったでしょうね。それともうひとつ。あの時、悪い経営であるということを自分が認めなかったらダメだっただろうなとも思っています。もしも致命傷があったとしたらそれですね」。

成長のジェットコースターに乗ったGunosy

2014年当時の福島氏。目の覚めるようなマーケティング施策は驚きの連続だったようだ(ニュースレコメンドエンジンのGunosyがKDDIと資本業務提携、調達金額は12億円かーーTVCMも開始へ

話を巻き戻そう。Gunosyは2011年10月に産声を上げ、その翌年の12年10月に法人化することになる。事業にすることを考えていなかった福島氏ら3人の学生たちは、木村氏によって大きく人生を変えることになり、それまで二人三脚で立ち上げを支援した土屋氏の元から卒業することになる。

「当時はとにかくGunosyをTwitterで呟いてる人を見つけては『いいね!』して回ったり、一部機能がうまく動いてくれなくて炎上した時の対応を一緒にやったりしてました(笑。ただ、当時彼らは就職すると聞いていたので自分としては起業した方がいいのに、ぐらいに思っていました。彼らは優秀だし、Gunosyの成長と共にグッドパッチにも仕事が舞い込んできましたから。そうこうしてる時、確かアプリを開発する段階だったかな、福島さんから電話があって『起業することになりました』と」(土屋氏)。

数万ユーザーどころじゃない、百万ユーザーが見える位置にいたGunosyであれば欲しいと思う企業はいくらでも出てくるはずだ。学生だけでの起業に不安があるなら売却するという手もある。ーーそんな風に考えていた土屋氏の元に届いた彼らからの報告は意外に映る。そして学生たちが土屋氏と一緒に作っていたGunosyは「株式会社Gunosy」となり、徐々に彼の手を離れることになる。

そこからGunosyの急成長が始まった。本格的なマーケティング施策の開始だ。

アトランティスを創業してグリーに売却した木村氏はアド・テクノロジーのプロだった。スマートフォンシフトが進む当時、企業はいつかやってくる「手のひらの市場」に広告を出稿することになるだろう。そう考えた彼らはまず、Gunosyを一大メディアに成長させる道から歩みを始める。

投下したマーケティング予算は莫大で、赤字は毎月数千万円にも上った。メディア成長のために先行投資して大きく「Jカーブ」を掘る、典型的なスタートアップの戦い方だ。福島氏は冷静に事態を眺めつつ、突然の成長ジェットコースターに乗った気分をこう振り返る。

「自分たちで確かに信じてる理論はあったんですよ。数字がここまで行った時、こういう数字が出てるので理論上こうなるはずだ、とか。でも、周囲からは厳しい意見をものすごく言われてなんだろうこのギャップは、と。走ってる自分たちは爆速でも、何て言うんですかね、飛行機に乗ってても自分が速く動いている感じってしないじゃないですか。あんな感覚でしたね。やれることをやろうと。

明確にこうやれば利益が付いてくるというのは投資を踏んだ時に分かっていたんです。ただ、Facebook広告などに資金を投下していたんですが、その規模が大きすぎて訳が分からないとは思っていました。木村さんは『やるから』と。そういう感じで」(福島氏)。

Gunosyはその後、2013年10月からエンジェルとして参加していた木村氏が正式に共同代表として就任し、徐々に事業としての輪郭を明瞭にしていく。土屋氏はやや寂しさも感じつつ、ギアチェンジを果たした両社はそれぞれ別々の道を歩み出すことになる。

そして上場へ

グッドパッチは2020年にマザーズへ上場する(UI/UXデザイン支援のグッドパッチ、東証マザーズ上場へ、評価額は43億円規模に

木村氏の参加で資本を得たGunosyはその後、大きく踏み込みを続けながら2014年にKDDIとJAFCOを外部株主に迎え、さらに大胆に踏み込みを続けた。結果、ダウンロード数を900万件手前まで伸ばした2015年4月、東証マザーズへ上場を果たすことになる。学生たちが趣味の延長でサービスを立ち上げてから4年弱、ここから一気に二桁億円以上の事業を作ることに成功したのだ。

あれから紆余曲折あり今、福島氏はGunosyを離れてLayerX代表取締役として新しい道を歩んでいる。彼は改めて上場の意味をこのように語ってくれた。

「当時と今でまず、大前提として未上場の資金調達マーケットってほぼなく、Gunosyは累計で30億円ぐらいを集めたんですが、それが本当に限界ぐらいでした。だから当時、ニュースアプリでそこまで掘ることはできず、けれどもあるシナリオを考えると60億円ぐらい必要だと試算が出たんです。最悪のケースを考えると上場しか資金を集める方法がない。だから公開しようというのが当時の考え方でしたね。

今は随分と考え方は変わっていて、ある程度の会社がベンチャーから成熟した企業に成長するまでって、やっぱり初期の頃は役員たちがオーナーシップ持ってバシバシ意思決定した方がいいんですけど、あるタイミングからやはり変わると思うんです。

組織が一定以上のサイズになると、その決め方だと伸びなくなる。そういう瞬間があって、そこが上場のタイミングなんじゃないかなと考えてます。投資しているファンドは償還などの期限があるので、現実的にはもうちょっと早くなるとかそういう事情はあるかもしれませんが、資金調達のために上場を急ぐことはもうないかなと。

それとまた違った視点で海外投資家からの声というのもあります。海外の機関投資家の方々って君たちのミッションは何かとか、何を成し遂げたいのか、とか日本の産業構造がこうある中で君たちはどこにポジションしているのか、という30年、50年のスパンの話を聞いてくるんです。なぜか未上場の投資の方がロングスパンのように言われることがあるんですが、全く逆で、上場企業の方が投資に関しては長期視点を求められるんです」(福島氏)。

Gunosyの上場を見届け、5年後となる2020年にグッドパッチは同じく東証マザーズに上場する。あれから1年経った今、デザイン会社として株式を公開する意味を土屋氏はこう語ってくれた。

「結果的になんですが、企業って上場してから組織的に崩れることが割と多かったなと思うんです。そう言う意味で自分たちはその前に組織崩壊を経験できたことはよかったかなと考えるようになりました。

なので、上場を後にしてマイナスは本当になく、自分たちはおそらくデザインとデジタル領域のスタートアップと理解されることが多いんですけど、このビッグマーケットでデザインは価値があるがまだまだ認知や信頼が足りないという中、上場してポジションを得られたことはやはり大きかったと思います。会社の認知度もそうですし、そこから得られる信用というものは特にこの領域でチャレンジしようという人たちの採用にかなりプラスとして寄与してくれています。

特に需給のバランスではデザイナーって本当に見つからない状況になっているんです。それまで平均年収400万円とか、デザインが好きだからやってます、みたいなマーケットだったんですが、自分たちがデジタル領域に可能性を拡大できたことで報酬も上がっていく。そういうことを上場によってプロモーションできた価値、意味合いはあっただろうなと思っています」。

次につづく/全ては自責から始まる:土屋・福島氏対談

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VCがESG投資に取り組まない理由がなくなる日は近い

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、STRIVEのインベストメントマネージャー四方智之氏がまとめたものを転載させていただいた。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@tomo4kata ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up ESG、SDGs、インパク…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、STRIVEのインベストメントマネージャー四方智之氏がまとめたものを転載させていただいた原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@tomo4kata

ESG、SDGs、インパクト投資、サステナビリティ、、、

ここ数年で聞くようになったこれらの用語はそれぞれの違いは分かりにくいし、上場企業がブランドイメージ向上のために叫んでいるだけではないかという少し穿った見方もしていた時期もあり、なぜここまで盛り上がっているのか、本質的な理由が分からないというのが正直な私の感想でした。

一方で、2020年半ばから海外VCの動きを見ていると、気候変動特化ファンドや明確なESG投資の方針を掲げるファンドが明らかに増え、これは潮目が何か変わりつつあるのか、とも感じるようになりました。

上場企業はもちろんのこと、スタートアップ界隈でもダイバーシティなどが叫ばれるようになった一方で、VCにとってそもそもESG投資というものは取り入れる余地があるのか?取り入れるとしたらどのような形が可能なのか?といった点を中心に書いてみたいと思います。

ESG投資、インパクト投資、SDGs、結局どう違うの?

本題に入る前に、ESGやインパクト投資の違い、なぜESG投資が今盛り上がっているのか、といった点についてまず触れたいと思います。

社会的責任投資

ESGというワードが広まる以前だと、1990年ごろから使われていた社会的責任投資=SRI(Socially Responsible Investing)という概念があります。これは端的に言うと、社会からの企業への期待が反映された投資行動です。

元々は1920年代にキリスト教的倫理観を反映して、タバコや武器、アルコールなどの企業を投資対象から外した投資手法が起源であり、その後1960年代には社会運動の視点が含まれていました。

ESG投資

「ESG投資」は、「Environment=環境」「Society=社会」「Governance=ガバナンス」の頭文字をとった言葉。上記の社会的責任投資のコンテクストを汲んで、今日、企業が長期的な価値向上のためには考えるべき課題として、財務的フレームワークの外に存在する、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきています。

● E(環境): CO2の排出量削減、再生可能エネルギーの利用、生産過程における廃棄物の低減など
● S(社会):女性の活躍推進、製品・サービス提供者としての責任、地域社会への配慮など
● G(ガバナンス/企業統治):株主の権利と平等性の確保、適切な情報開示、社外取締役の設置など

そのルーツは、2006年に国連主導で発足した責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)です。同原則は署名機関が自主的に取り組む6原則からなっていますが、その第1原則が「私たちは、投資の分析と意思決定プロセスにESG課題を組み込みます」となっています。すなわち、PRIの責任投資=ESG投資です。

(余談ですが、ESG投資は英語だとESG Investingという言葉で使われておらず、ESG IntegrationあるいはESG Incorporationという用語が使われており、投資プロセスに環境、社会、ガバナンスの課題を組み込むという第1原則の特徴が明確に出ています。)

インパクト投資

また、最近だと「インパクト投資」という言葉も聞くようになりました。こちらは社会課題解決を目的としてリターンと同等、またはそれ以上に社会的インパクトを重視する投資であり、銘柄の選択もそうした考えに基づいています。

よくESG投資とインパクト投資とで間違われやすいですが、ESG投資はリスク・リターンを最大化・適正化するために環境や社会への影響を考慮するものであるのに対して、インパクト投資は環境や社会へのポジティブな変化を生み出すことがそもそも投資の目的と位置づけられています。

SDGs

ESGとの違いが一番ややこしい用語ですが、簡単に言うとSDGsは国連が定めた社会や企業が達成すべき「目標」であるのに対して、ESG投資はその目標を達成する「手段」という位置づけになります。

企業からすると、社会的課題解決に取り組むことでESG投資をするGPIFなどの金融機関から投資を得られるといったイメージです。こちらが関係を表した図表になります。

サステナブル投資

環境、社会、ガバナンス課題を考慮する投資には、以上のような社会的責任投資、ESG投資、インパクト投資など、さまざまな投資がありますが、これらをまとめて表現する用語としては、「サステナブル投資」が世界的に使われています。

ざっくりと1ページにまとめたものがこちらになります↓

また、各投資手法はMECEではないというのもここで強調しておきます。ESG投資は社会的責任投資から派生したものと考えられますし、インパクト投資と被る要素もあるというのを表したのがこちらです。

ESG投資の急拡大

サステナブル投資推進に取り組む世界各国の団体が加盟しているGSIAのレポートによると、サステナブル投資額は世界の運用資産総額の36%に匹敵する35.3兆ドル(約3,883兆円)に達し、過去2年間(2018年~2020年)で15%、過去4年間(2016年~2020年)で55%増加しました。

その中でも日本の資産運用残高は過去4年間で約6倍と、他地域と比較して非常に高い成長率になっており、アメリカ、ヨーロッパに次ぐ規模まで拡大しています。

(出典:GSIA

なぜこれだけESG投資が盛り上がるのか?

ここまでESG投資が急拡大している背景には、主に2つの流れがあります。

一つ目は、ここ数年で世界経済はESGを考慮しないことを政治的・商業的リスクと捉えるようになったことです。World Economic Forumの「グローバルリスク報告書 2021年版」では、この先10年で最も社会・政治・地政学的な影響が大きいリスクとして、「感染症の拡大」に加えて、「気候変動」「サイバー攻撃」が並んでいます。

こうした世界経済の流れを受けて、機関投資家や大富豪のファミリーオフィスなどの金融業界のプレイヤーが先んじてESGをリスク要因とする認識するようになり、投資対象となる産業界にも対応を求めるようになりました。

二つ目は、先述のPRIです。2008年のリーマンショック以前に目立っていた「短期的な利益を目指す」というESGの対極にある思想は、リーマンショックによる世界恐慌を機に反省すべき姿勢だとして捉えられ、その結果、「持続可能な事業に投資する」という世界的な共通の価値観としてESG投資は重要視され始めました。

PRIに署名するのは、GPIFなど一般人の資金を預かって運用する年金基金や保険会社であり、これらの機関投資家は「社会的に良いから」といった理由だけでは投資対象を選定しません。言い換えると、「ESG投資はパフォーマンスが高いからESG投資をします」と、プロの投資家が認めるようになってきているわけです。2021年9月時点で4,308の投資機関がPRIに賛同・署名しており、ここ数年で急速に増えています。

(出典:PRI

VCは「LPからお金を集めるため」にESG投資をすべきなのか?

ここから本題になります。

アメリカではもちろんのこと、近年は日本でもVCのファンドサイズが拡大するにつれて、機関投資家がVCをアセットクラスとして見るようになってきました。

前述の通り、多くの機関投資家はPRIに署名しているので、VCがESG投資をすることは出資検討をしてくれるLP候補が増えることになり、ファンドの資金は調達しやすくなります。

一方で、「VCがESG投資をすべき」なのは「LPからお金を集めるため」というのは理由になっていそうで、実は本来の理由ではないのでは?と個人的に違和感を覚えました。

なぜなら、当たり前のことですが、VCにとっての仕事は「LPからお金を集める」だけでなく「そのお金で投資してリターンを出す」ことも含まれるからです。

VCがESG投資に取り組むべき本質的な理由

他のアセットクラスと比較すると、VC全体におけるESG関連の取り組みは出遅れているのが現状です。これはVCが投資しているテック関連企業はESGにあまり関係がないからと思われているからかもしれません(例えば温室効果ガスを大量に排出したり、河川の汚染に繋がるような事業は少ない)。

しかし、実際はESGを考慮することは、VCが投資するスタートアップ企業の長期的な成功、ひいてはVCの最終的なリターンにとって非常に重要性が高いと言えます。それは昨今のテック企業において顕在化したリスクが事業の収益モデルや持続可能性に直接的な影響を及ぼしているためです。

<個人情報保護>
FacebookやGoogleといったユーザーのあらゆるデータを追いかけて収益化される「監視資本主義」をビジネスモデルとするような企業は、ユーザーの許可なしに収集した個人情報を利用していることが倫理的問題として提起され、実際にCookie規制などの事業上のリスクの対処に追われています。(一部の投資家からはFacebookをESGファンドの銘柄に組み入れることは果たして正しいのか?という声も上がっています。)

<労働者の権利>
UberやLyftなどの企業は、運転手や配達員などの仕事をオンラインで単発で請け負う「ギグワーカー」の労働者の権利問題があります。ギグワーカーは会社員と違って企業が雇用しているわけではなく、年収も200万円~300万円未満の割合が最も多いとされ、病気やケガなどで働けなくなった場合、死活問題になります。
上場後も赤字が続くUberなどの企業にとって、ギグワーカーの賃金や待遇改善による人件費の高騰は当然避けたいですが、そもそも労働力搾取と見られてしまう事業の持続可能性が根本の問題であると言えます。

<企業文化>
WeWorkの企業文化も記憶に新しいトピックかもしれません。株式上場のためのS-1申請のタイミングで、CEOアダム・ニューマン氏による独裁と見れるような企業構造やガバナンスの問題や、アルコールやセックス、麻薬など何でもありのパーティーに従業員は参加を強要されるなどの実態も報道され、最終的に上場計画の撤回に追い込まれました。

上記の3つの事例では、各社が上場後、もしくは上場手前になってリスクが顕在化しました。GAFAによる個人情報の利用は2020年代の新たな人権問題になるでしょうし、人工知能による差別の助長など、スタートアップにとっては上場前でも事業継続のリスクとなりえる問題が増えています。

VCは一般的に、ディスラプティブ(破壊的)なビジネスモデルが投資対象となるケースが多いです。しかし、ESG課題に対する適切なアプローチを考えられていないディスラプティブな企業は、いずれ法規制が追いついたときに損失を被る可能性があります。リスクを低減し、リターンを最大化するために、ESG投資は今後VCにとって必須の考え方になってくるでしょう。

ESGをDDプロセスに組み込む必要性

しかし、経験豊富なVCであれば通常のDDにおいてESGのリスクを特定できるのでは?とも思うかもしれません。そういったケースもあるとは思いますが、体系的に投資の意思決定プロセスにESGを組み込まないと重要なリスクが見落とされる可能性は当然あります。

体系的なアプローチをとって仕組みで対応することは、PEファンドと比べてチームの規模が小さく、投資先の多いVCファンドにとってより意味があるでしょう。

一方で、海外も含めてまだVC業界では仕組みとして対応できているファームがほぼないのが現状です。国際的な人権団体のAmnesty Internationalによると、Sequoia、Tiger Global、a16z、Acccelなどを含むTop VC 10社全てが人権尊重をDD項目に入れていませんでした。VCのDDプロセスにおいてどのようにESGの要素を考慮すべきかは今後さらなる議論が必要です。

アーリーステージでこそ取り組むべき

労働者や消費者との関係については、一度事業がスケールしてしまった後だと、大きく方針を変更することは困難になります。スタートアップは早い段階でESGの考え方を取り入れるすることで、急成長の基盤を作り、長期的な持続可能性を確保することができます。

投資家は新しい調達ラウンドごとに、DDプロセスの中で事業のフェーズに対して適切なESGのリスクと機会を評価し、必要なアクションプランを練るべきです。そして、投資した後も上場を見据えてESGの考え方をインストールするために投資先向けのトレーニングなどを提供していく必要が出てくるでしょう。

まとめ(&宣伝・告知)

ここまでVCがESG投資に取り組むべき理由について書きましたが、具体的に投資の意思決定プロセスの中にESGをどう考慮し、どのようなDD項目を設けるか、そして基本的にリソースが限られている投資先との関係の中で、出資後はどのようにESGの考えを取り入れてもらうのが適切なのかは正直手探りの状態です。

このテーマに関心があるスタートアップ、そしてVCの皆様とぜひ議論させてもらいたいです!ESG経営をどのように取り入れるべきなのかもそうですし、ESG領域のソリューションを企業や消費者に対して提供しようとしているスタートアップの方ともお話しできたら嬉しいです。

現状私の投資先だと、アスエネResilireの2社がESG領域の事業を展開しています。クリーン電力サービスと温室効果ガス排出量管理SaaSを提供しているアスエネは、まさにE(環境)のど真ん中と言える気候変動の課題にチャレンジしています。

<関連リンク>

また、直近資金調達のリリースが出たResilireは気候変動に伴う自然災害の増加に対応するためのサプライチェーンリスク管理SaaSを提供しており、事業継続マネジメント(BCM)に対して今まで以上に注目が高まる中で、小林製薬などの大手企業への導入が進んでいます。

最後に告知になりますが、そんなResilire社のCEO津田さんと、9/14(火)18時~にサプライチェーンリスクやらESGやらについて雑談する予定です。ご興味ある方はぜひご参加ください!

<関連リンク>

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Second Lifeに再来したメタバースの波:そして新たな可能性「Tilia Pay」へ(4)

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(前回からのつづき)Lindenn LabはかつてAltberg氏の下でオリジナルの決済システムである「Tilia Pay」に7年間で3,000万ドルを投資し、米国での運営に必要な州のライセンスをすべて取得している。 Oberwager氏によると、Tilia Payは他の企業の仮想経済を活性化させることができるという。ユーザーを自社版のメタバースに呼び込み、お金を使ってもらい、デジタルで稼いだお金…

Uplandでは、Lindenn LabのTiliaを使って決済をする

(前回からのつづき)Lindenn LabはかつてAltberg氏の下でオリジナルの決済システムである「Tilia Pay」に7年間で3,000万ドルを投資し、米国での運営に必要な州のライセンスをすべて取得している。

Oberwager氏によると、Tilia Payは他の企業の仮想経済を活性化させることができるという。ユーザーを自社版のメタバースに呼び込み、お金を使ってもらい、デジタルで稼いだお金を現金化できるようにする。これは、メタバースの基本的な機能であり、Second Lifeは長い間これに時間を費やしてきたーー。そうOberwager氏は語る。

ただこれは、見かけほど簡単なことではない。クリエイターがバーチャルコンテンツの対価を得るためには、プラットフォームパブリッシャーはまず、送金規制に対応する必要がある。クリエイターが仮想商品と交換して現金化する際には、プラットフォームパブリッシャーが送金業者となり、全米50州でライセンスを取得する必要があるからだ。これは、NFT(ノンファンジブル・トークン)を扱う取引所にも当てはまる。

Oberwager氏によるとTiliaは仮想通貨、ゲーム、NFTの機会に焦点を当てた唯一となる、完全認可の送金業者になっている。Tilia Payは、PayPalとCoinbaseを組み合わせたようなサービスで、仮想世界やゲームプラットフォームのために、パブリッシャーに「金融のレール」を提供する。Tiliaウォレットを使用することで、仮想世界からゲーム、パブリッシャー、NFT取引所は、クリエイターやその他の人々が仮想通貨を不換通貨に交換することを合法的に可能にする。

UplandはNFTをベースとした仮想不動産取引のエコシステムで、プレイヤーは現実世界の住所にマッピングされた仮想不動産を売買し、モノポリーのように遊ぶことができる。Tiliaとの提携以前は、Uplandのプレイヤーは、他のプレイヤーに自分の仮想不動産を米ドルで販売することができなかった。これは、あるユーザーから他のユーザーへの資金移動をするためには、米国およびその他の管轄区域において資金移動のライセンスが必要だからだ。

Zenescope MetaverseはSecond Lifeの中では新しい・Image Credit: Linden Lab

Second Lifeでは、ユーザーの興味を引くため、それ以外のことも手がけている。コミックブック出版社のZenescope Entertainmentとライセンス代理店を務めるEpikと契約を結び、暗く歪んだ世界観を持った作品「Grimm」の世界観をSecond Life内のZenescope Metaverseとして実現した。

ファンたちは、Zenescopeのコミックブックやグラフィックノベルで人気を博した古典的なキャラクターたちと対話し、シナリオを演じ、さまざまなストーリーを追うことができるようになっている。このバーチャル体験では、シンデレラ(通称:シンディ)が登場する。シリアルキラー・プリンセスはミニシリーズに登場する主人公だ。それ以外にもBelle: the Beast Hunter、Mad Hatter、Jabberwockyたちも登場している。Zenescopeのファンは約7,000万人で、現在、Second Life内で購入できる50種類のデジタルアイテムを用意している。

Oberwager氏は、これをきっかけにSecond Lifeにおけるブランドやエンターテイメントのパートナーとのコラボレーションが数多く始まるだろうと語っていた。そして、これを機に一騒ぎ起こしたいとも思っているようだ。

「メタバースは今、注目の的です。Second Lifeは先駆者ですが、多くの人は今でも生き生きとしていることを知りません。他のゲーム会社と同じように、我々もコロナ禍の影響を受けました。しかし今、我々はこの混乱を脱したタイミングで再浮上のチャンスを得たのです。これは私たちにとって非常に魅力的なことなのです」(Oberwager氏)。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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Second Lifeに再来したメタバースの波:改良を重ねる(3)

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(前回からのつづき)Second Lifeはを変えたもの、それは他のゲームと同じくパンデミックの影響だ。現実の世界での出会いが困難になったため、仮想世界に入って交流するユーザーが増えたからだ。 「Second Lifeが復活したのは、どこにも行けなくなったからです。わずか3年半前には、Robloxと同じ規模だったのですから。しかし今、再び成長し始めています。今では再エンゲージメント戦略により多くの…

セカンドライフは18歳を迎えた・Image Credit: Linden Lab

(前回からのつづき)Second Lifeはを変えたもの、それは他のゲームと同じくパンデミックの影響だ。現実の世界での出会いが困難になったため、仮想世界に入って交流するユーザーが増えたからだ。

「Second Lifeが復活したのは、どこにも行けなくなったからです。わずか3年半前には、Robloxと同じ規模だったのですから。しかし今、再び成長し始めています。今では再エンゲージメント戦略により多くの人々が交流しはじめています」。

Second Lifeはその歴史の中で実に7,000万人以上ものユーザーが自分のアカウントを作成している、これは可能性がある。Oberwager氏はこう語っていた。

「私たちはSecond Lifeを再開するわけではありません。ただ改善し集中しているだけです。メタバースに関するあらゆる会話の中で、私たちの名前は先駆者として再び出てきました。そのため、コンバージョン率も上昇しているのです。私たちは年間6億ドルの経済規模があります。私たちは、クリエイターがお金を稼げるような方法でサポートしているからです。私たちの目標は、クリエイターにとって最もコストのかからない場所になることなのです」。

Second Lifeにはライブビデオのストリーミングがサポートされているので、人々は仮想映画館で一緒にショーを見ることができる。それについて問題が発生した場合の対処法も確立されている。Lindenn Labは言論の自由を支持している。しかし無法なメタバース市民に対する対処方法も考えている。

「Second Lifeでは、ユーザーが作成した不正なコンテンツや模倣品などの問題に長い間対処してきました。ここには、米国特許商標庁と同様の機能を持つ、独自のSecond Life版・特許商標庁があります。AIを使用してこうした窃盗を阻止し、ブランドからのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)による削除要請にも対応しています。悪質な行為を取り締まるための覆面アバターもいるのです」。

「我々にもルールがあり、それを破れば問題になる」とOberwager氏は言う。「これこそが契約社会と呼ばれるものだ。もし誰かに嫌がらせをすれば、システムから追い出される」。

次につづく:そして新たな可能性「Tilia Pay」へ

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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Second Lifeに再来したメタバースの波:生き残りを賭けて(2)

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(前回からのつづき)Second Lifeはその粘り強さにもかかわらず、メインストリームになることは叶わなかった。実際、Second Lifeは複数のリーダーたちがバトンを繋いでいる。 Philip Rosedale氏は、ドットコム・バブルの最中の1999年にLinden Labを設立した。そして、バブル崩壊の余韻が残る2003年、なんとかしてSecond Lifeの立ち上げに漕ぎ着ける。2008…

Second Lifeは経済規模が大きい/Image Credit: Linden Lab

(前回からのつづき)Second Lifeはその粘り強さにもかかわらず、メインストリームになることは叶わなかった。実際、Second Lifeは複数のリーダーたちがバトンを繋いでいる。

Philip Rosedale氏は、ドットコム・バブルの最中の1999年にLinden Labを設立した。そして、バブル崩壊の余韻が残る2003年、なんとかしてSecond Lifeの立ち上げに漕ぎ着ける。2008年に彼は退任し、Linden LabはMark Kingdon氏、Rosedale氏(この創業者は4カ月だけCEOに復帰した)、Bob Komin氏らがその後のCEOを歴任した。そして2010年、同社は大規模なレイオフを行った。

2010年からは、元EAの幹部であるRod Humble氏がSecond Lifeの魔法の一部をモバイルやその他のプラットフォームの新しいアプリケーションに持ち込もうとしている。しかしそれは上手くいかず、Humble氏は2014年に同社を去っている。2014年に引き継いだEbe Altberg氏は、Second Lifeの好調を支えた1人だ。彼はかつて「Sansar」と名付けられた「VR版Second Life」を作ろうとするも意図したような力強さは得られなかった。筆者はAltberg氏とは何度か会っているのだが、彼はSecond Lifeがまだ成功していることを人々が思い出す必要があることを強く主張していた。

Altberg氏は長い闘病生活に苦しみつつ、Second LifeをAmazon Cloudに展開し、スタッフを削減し、Sansarを売却し、最終的には2020年7月にOberwager氏とRandy Waterfield氏らの投資家グループにLinden Labを売却するなど、大きな転換期をなんとか乗り切ったのだ。

残念なことに、Altberg氏は6月に病気で亡くなってしまった。後任の会長に就任したObewager氏は、Altberg氏が会社を素晴らしい状態で残してくれたと語っている。Second Lifeは18年目を着実なものとして迎え、上半期の財務実績は10年以上ぶりに最高のものとなったのだ。

次につづく:改良を重ねる

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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Second Lifeに再来したメタバースの波:年間6億ドルを生み出す元祖・仮想世界(1)

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メタバースという考え方がこれまで以上に話題になっている。私は昨日、コロンビア大学のコロンビア・ビジネス・スクールのSharad Devarajan氏のMBAクラスで、メタバースに関する講義を持つ機会に恵まれた(私は彼らにビットコインを買うようにアドバイスした)。 授業のリサーチで、さまざまなテーマの検索数を計測できる「Google Trends」でメタバースの状況を確認したところ、ここ1年ほどで爆…

Second Life is trying to get people to re-engage with it. Image Credit: Linden Lab

メタバースという考え方がこれまで以上に話題になっている。私は昨日、コロンビア大学のコロンビア・ビジネス・スクールのSharad Devarajan氏のMBAクラスで、メタバースに関する講義を持つ機会に恵まれた(私は彼らにビットコインを買うようにアドバイスした)。

授業のリサーチで、さまざまなテーマの検索数を計測できる「Google Trends」でメタバースの状況を確認したところ、ここ1年ほどで爆発的に増加していることがわかる。Facebook、Roblox、Epic Gamesなどの大企業がメタバースの胴元になろうと競い合っており、多くの企業がメタバース戦略について語っている。

しかし、だ。

18年前に誕生したSecond Lifeという仮想世界では、そのずっと前からメタバースであることが話題になっていた。Second Life(2003年にデビューした仮想世界)の生みの親であるLinden Labは今でも健在だ。Linden LabはSecond Lifeで稼いだ仮想通貨を米ドルに換金できる「Tilia Pay」と呼ばれるクロスプラットフォームの決済システムを用意することで、現代におけるメタバースの役割を果たそうと考えている。これは、小説「Snow Crash」「Ready Player One」のように、すべての仮想世界が相互に接続された宇宙、メタバースにとって非常に重要な要素なのだ。

Google Trendsでのメタバースに関する言及/Image Credit:Google

毎日のアクティブユーザー数が4,300万人を誇る「Roblox」のような「新しい」メタバース企業を称賛する現在、どうしてもSecond Lifeの存在を忘れがちになる。ちなみにSecond Lifeは年間6億ドルの国内総生産(GDP)を誇っている。これまでに20億以上のユーザー資産が作成され、毎日20万人のアクティブユーザーがいて、年間3億4500万件以上の取引が行われている。クリエイターへの報酬は年間8,040万ドル以上もある。ある時代に成功した企業が別の時代にも成功するのは非常に難しい。しかし、実はSecond Lifeは複数の時代を経ても成功しているのだ。

Linden Labの会長であるBrad Oberwager氏は、本誌GamesBeatのインタビューでこう語ってくれた。

「Second Lifeの18年前と現在を比較すると、世界はSecond Lifeに戻ってきているようです。誰もがSecond Lifeになろうとしている。これはとても興味深いことです。クリエイター経済の中でクリエイターのことを考えると、Second Lifeはいまだにリーダー的存在で、人々はお互いに直接支払いを受けています。私たちこそ、まさにその経済そのものなのです」。

次につづく:生き残りをかけて

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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10年起業家:世界を変えた「お節介」のワケ

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2010年代を駆け抜けたグッドパッチとGunosy。まだスタートアップという概念もままならない2011年を前後して創業したこの2社は、とあるきっかけで出会い、成長のチャンスを得てそれぞれの存在価値を見出すようになる。学生たちが作ったアプリはやがて情報をつなぐインフラとなり、そのデザインをきっかけに次の扉を開いた起業家は上場を目指すことになった。 起業家の身の上にはその過程で何が起こり、どのように乗…

サービス開始当初のGunosy、グッドパッチはこのデザインを手がけたことで脚光を浴びることになる

2010年代を駆け抜けたグッドパッチとGunosy。まだスタートアップという概念もままならない2011年を前後して創業したこの2社は、とあるきっかけで出会い、成長のチャンスを得てそれぞれの存在価値を見出すようになる。学生たちが作ったアプリはやがて情報をつなぐインフラとなり、そのデザインをきっかけに次の扉を開いた起業家は上場を目指すことになった。

起業家の身の上にはその過程で何が起こり、どのように乗り越えていったのか。

本誌ではグッドパッチ創業者の土屋尚史氏と、Gunosy共同創業者であり、現在はLayerX代表取締役を務める福島良典氏にこれまでの10年を振り返っていただく機会を得た。これから数回にわたりこれまでの道のりをお伝えする。

まずは彼らの出会いと成長から話を始める。

東大生たちとの出会い

Gunosyを立ち上げた頃の関喜史氏、福島良典氏、吉田宏司氏(写真左側、手前から・グッドパッチ提供)

大阪でいくつかの仕事を経て、デザインに自分の仕事を見出しつつあった1人の青年がいた。若かりし頃の土屋氏だ。グッドパッチの創業は2011年9月。次の人生を求めて渡米したこの年から約9年後の2020年6月、デザイン企業として同社は東証マザーズへ上場を果たすことになる。

そのきっかけとなったのがこの渡米で出会った1人の東大生、Gunosy共同創業者の関喜史氏だ。関氏はシリコンバレーで出会ったこの起業家にある一通のメッセージを送る。全てはここから始まった。

「9月に(シリコンバレーから)東京へ戻ってきて、グッドパッチを創業することになるんですけど、創業の1カ月後ですかね。サンフランシスコ滞在時にシリコンバレーを一緒に旅してた関さんからメッセージが届いたんですね。大学の友人たちとサービスを作ったので登録してください、と」(土屋氏)。

2011年当時はスティーブン・ローゼンバウム氏の書籍「キュレーション」が日本語版としても発行され、コンテンツ発見の新たな体験が模索されていた頃だ。それまでオンライン・ニュースの情報収集と言えばRSSリーダーが主流だったが、この年を皮切りに日本でもさまざまなニュース・アプリが登場することになる。

土屋氏のメッセージに届いた「Gunosy」はそのひとつだった。彼は「ここに当時のトップページがあるんですけど」と、学生たちが作ったサイトを見せつつその時の衝撃を語る。

「当時、シリコンバレーにも似たようなニュースキュレーションのサービスがあって、おおって感動したのを覚えてます。ただ、とにかくサイトデザインがヤバかった(笑。関さんにこれ面白そうなんだけどデザイン大丈夫?って聞いて。それで開発した福島さん、吉田(宏司)さん、関さんの三人と話をして、じゃあ自分がやろうかと。さすがに大学生からお金取るわけにいかないからいいよ、タダでって」(土屋氏)。

iPhoneが登場し、スマートフォンシフトがこれから起ころうとする中、デザインが整ったGunosyは瞬く間にユーザーを集め、数万人が利用する人気アプリに成長した。そしてそのデザインを手がけたグッドパッチの元に仕事の依頼が舞い込むようになり、土屋氏は創業からわずか2年で事業を軌道に乗せることに成功する。

世界を変えた「お節介」のワケ

東大生3人が作ったGunosyの最初のサイト。パワーポイントでデザインした

ところで立ち上げの際、Gunosyはあくまで東大生のプロジェクトであり、法人化はもとよりビジネスモデルも何もない、純粋な「興味」で始まっている。福島氏は開発当初をこう振り返る。

「本当に法人化とか考えてなくて、創業者3人とも大学院まで今で言うAIですね、機械学習とかウェブマイニングとかの研究をしていて。3人ともITサービスやアプリが大好きで、何か作りたいよねみたいなノリだったんです。

ただ、それだけで作ってもつまらないから、自分たちが困っていることや研究した内容を使って何かできないかなというのは考えてました。それで共通項として出てきたのが情報収集だったんです。当時から情報は氾濫していて、それを何とかフィルタリングしてニュースを送るサービスにできないだろうかと」(福島氏)。

1万件のタイトルよりもおすすめされた10件の情報の方が価値があるーーそれなら自分が使いたい。そう考えた3人は「最初のユーザー=制作者」という考え方でアルゴリズムの開発に着手する。「今日のニュースどうだった」を繰り返し調整し、サイトは見よう見まね、ツールはパワーポイントで作った。

筆者はふと、土屋氏になぜ事業にするつもりもない学生たちのプロジェクトの手伝いをしようと思ったのか尋ねてみた。

「直感ですね。関さんたちは正直、出会った当時はあまりよく知らなかったんですが、大学院ですごい研究をしているということだけは聞いていました。あと、RSSリーダーで情報収集するということの課題は自分も感じていたんです。日本の東大というトップの学生3人がアルゴリズムを組んでニュースサービスを作っている。その時、直感的に日本からもしかしたらグーグルのような企業が生まれるのかもしれないなと思ったんです。

シリコンバレーに行ってたこともあって、当時のインターネットサービスってスタンフォードの学生が中退してスタートアップした、というストーリーをよく読んでいて、もしかしたら同じような未来が見えるのかもしれないと。だから手弁当でやるよ、と言ったんです」(土屋氏)。

土屋氏の予想はGunosyが法人化したことで半分当たることになる。予想外だったのは学生たちだけでの起業ではなかった、という点だ。

Gunosy、法人化へ

写真中央:木村新司氏

Gunosyは2011年10月に産声を上げ、その翌年の12年10月に法人化することになる。事業にすることを考えていなかった福島氏ら3人の学生に転機が訪れたのは1人の人物、現在、Gunosyの会長を務める木村新司氏との出会いだ。

木村氏もまた福島氏らと同じく東大出身で、2007年にモバイル・アドネットワークの先駆けとなるアトランティスを創業している起業家だった。Gunosyが生まれた2011年に木村氏は同社をグリーに売却し、彼もまた土屋氏と同じく、東大生が作ったこのニュースキュレーション・サービスに新たな可能性を見出そうとしていた。

Gunosyを事業化するにあたっての課題はマネタイズモデルだ。未成熟なスマートフォンアプリの市場でユーザー課金は期待が薄い。しかし木村氏が経験した広告技術を組み合わせれば、勝ち筋が見える。そうして彼らは手を取り合うことになった。

ただ、福島氏は見えない未来にそこはかとない恐怖も感じていたようだ。

「やっぱり最初はビジネスになるなんて全く思ってなかったですよ。当時、映画「ソーシャルネットワーク」ってあったじゃないですか。自分たちがそういう風になっていくなんて想像できなかったですね。まあ一言で言えばビビってたんですよ。

一年ぐらいかな、法人化とか考えずに卒業まで時間あったので、会社にした方がいいとか言われたんですけど、一旦、自分たちにそういう自信がないから社会人になってもサービスを続けられるように改善を続けていこう、という話はしてました。

ただ、思ったよりもユーザーがついてくれた。今思えば大した数字じゃないですよ。けど、当時の学生からするともの凄いインパクトがあった。多分、数万人とかのユーザーがアクティブな状態だったんですが、それが凄いことかどうかもよく分かっていなかったですね」(福島氏)。

自分たちの困りごとと研究のために作ったアプリが「当たった」。いや、当たったかどうかも分からないまま、彼らは木村氏と出会い、いよいよ自分の将来を真剣に考え出す。当時、就職先が決まっていた福島氏は冷静にスタートアップに飛び込むリスクとメリットを天秤にかけてひとつの答えを導き出す。

「いろいろ考えた時、スタートアップに飛び込んでもリスクがないなって思ったんです。自分たちがやってみた結果、その一年ですごい技術力もつきましたし、普通に働くよりもいろんな意思決定がいっぱいできたんです。世の中では新卒のレールを外れると大企業行けなくなるとか言うんですが、今は明確にそれが嘘だって自信持って言えます。

当時はそこまでの確信はなかったですけど、起業したことで大企業に行けなくなってもいいや、何とかなるだろう、と。逆にここでやらなければ自分が老人になった時、似たようなサービスが日本から出てグーグルみたいな会社ができました、それを自分以外の人間がやっていたとしたらもの凄い後悔するだろうなと」(福島氏)。

その感情に気がついた学生3人は木村氏と共に動き出す。学生プロジェクトではない「社会の公器」としてのGunosyを立ち上げることになった。

次につづく/10年起業家:ギアチェンジの時

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