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農産物流通特化型SaaS「nimaru」運営のkikitori、JAグループと資本業務提携——まずは湘南農協に導入

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農産物の流通現場向け SaaS「nimaru(旧称:bando)」を運営する kikitori は14日、JA グループ(全国の農協グループとその関連組織)と業務提携したことを明らかにした。また、同社は、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合(GP:グローバル・ブレイン、LP:農林中央金庫)から3,000万円を資金調達したことも明らかにしている。 2015年に創業した kikitori は、国…

Image credit: Kikitori, JA Group

農産物の流通現場向け SaaS「nimaru(旧称:bando)」を運営する kikitori は14日、JA グループ(全国の農協グループとその関連組織)と業務提携したことを明らかにした。また、同社は、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合(GP:グローバル・ブレイン、LP:農林中央金庫)から3,000万円を資金調達したことも明らかにしている。

2015年に創業した kikitori は、国産青果における既存の市場流通を DX(デジタルトランスフォーメーション)支援するスタートアップだ。国産青果の約8割を担う既存の市場流通において、卸売事業者や仲卸業者といった既存流通の業務効率化を狙い、これらの事業者間の需給調整の連絡を、従来の電話によるやりとりからモバイルをインターフェースとした SaaS へのシフトを促している。

kikitori では個人の生産者(農家)に対して nimaru のサービスを提供しており、その情報を受け取る卸売事業者や仲卸業者などからは業務が効率化するとして評価を得てきた。しかし、生産者から市場に届けられる青果の約6割が農協を通じてのものであるため、農協から来る情報についても nimaru 上でデジタルデータとして受け取りたいとのニーズがあった。

Image credit: Kikitori

kikitori は昨年、JA グループの AgVenture Lab による指名型アクセラレータプログラム「Plant & Grow」第1期に採択。第1期では生産・流通現場の「見える化・データ化」がテーマに設定され、kikitori では各地の農協と協業する場合の試みとして、2月から湘南農協に nimaru を導入する。この導入に当たっては nimaru は一部機能がカスタマイズされ、生産者→農協→市場の情報フローが一気通貫化される見込みだ。

生産者〜卸売事業者・仲卸業者をつなぐ存在であるが(上図)、両端の双方をユーザとして増やすことが事業のスケールアップにつながる。nimaru を使う生産者を増やす → その生産者と取引のある卸売事業者・仲卸業者が nimaru を使う → その卸売事業者・仲卸業者と取引のある別の生産者が nimaru を使う、という上昇スパイラルを描いていて、農協との連携はこの最初の生産者ユーザの獲得に大きく寄与することが期待できる。

日経によると、nimaru は10の青果物市場で導入されており、2021年に50市場に広げる計画。

kikitori は昨年5月、シードラウンドで Coral Capital から5,000万円を調達している。

コロナ後の世界で加速する「全産業デジタル化」と投資戦略 / GBAF 2020レポート

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 12月4日に開催されたグローバル・ブレインの年次カンファレンス「Global Brain Alliance Forum 2020(GBAF 2020)」は感染症拡大の影響もあり、完全オンラインでの開催となった。来るべきコロナ「後」の世界を見据えたGBの新たな戦略やアジア各国に…

グローバル・ブレインの新戦略を発表する百合本安彦氏(写真:GB Universe編集部)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

12月4日に開催されたグローバル・ブレインの年次カンファレンス「Global Brain Alliance Forum 2020(GBAF 2020)」は感染症拡大の影響もあり、完全オンラインでの開催となった。来るべきコロナ「後」の世界を見据えたGBの新たな戦略やアジア各国におけるデジタル化推進・オープンイノベーションなどが壇上で語られ、そして終盤では、毎年恒例となっている「Startup Pitch Battle」も披露された。

本稿では全体戦略とセッションステージで語られたハイライトをまとめる。

運用総額1524億円、グローバルでのExitケースも

ステージに登壇したグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏は冒頭、「コロナによって発生したパラダイムシフトは100年に一度の機会。コロナ後において大手企業はスタートアップの技術を活用し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)をより推進していく時代になる」とキーノートの口火を切る。

2021年はグローバル・ブレインにとってファンド設立20周年の節目の年となる。2020年は新たにキリンホールディングスや農林中央金庫、セイコーエプソン、そしてヤマトホールディングスと共同でファンドを設立し、それぞれの産業イノベーション加速を目的に200億円規模の資金を確保した。三井不動産とは2号ファンドも開始し、現在の運用残高は1524億円となる。また来年の計画として8号ファンドおよびグロースファンドの設立についても言及しつつ、モビリティやエネルギーなど、これまで手をつけていなかった領域についても取り組みの意欲を見せた。

現在の体制は70名規模。日本、韓国、インドネシア、シンガポール、ヨーロッパ、アメリカに拠点を構え、年間100件の新規・追加投資案件に対し、150億円ほどの資金を注入した。また、Exitについては1,000億円の評価額を超えることとなったウェルスナビをはじめ、ハンドメイドコマースのクリーマ、韓国KOSDAQに上場予定のNBTなど4件のIPOが生まれた。買収については今年1月、出資先のイスラエル企業Loom Systemsが業務プロセス大手ServiceNowの傘下となっており、「海外投資先のイグジット成功モデルが完成しつつある」と成果の意義を強調する。

「昨年、イスラエルの出資先であるAspectivaがWalmartに15カ月で買収されたのですが、これはJVPというイスラエルナンバーワンVCとの共同投資でした。Loom Systemsも実は同じくJVPとの共同投資で、売却先のServiceNowはニューヨーク証券取引所に上場している10兆円規模の企業です。このような形で海外のExitも増えてくるのではないかと考えています」。

加えて海外投資における注目地域は中国とインドだ。特に中国はアメリカとの対立によってその他地域、特に隣国である日本との関係に微妙な変化が生まれつつある。また、中国版NASDAQと言われる新興市場「科創板(Science and technology innovation board:STAR Market)」が開始するなどテック投資の盛り上がりも顕著だ。百合本氏はこのような背景を含め、現在の市場をこう分析する。

「グローバル・ブレインでは日本をはじめ韓国、インドネシア、シンガポール、ロンドン、サンフランシスコに拠点を構えており、これを更に拡大したいと考えています。というのも、アメリカが世界のリーダーとしての地位を放棄したことで秩序のない状況が生まれており、これは我々のグローバル戦略にとって非常にチャンス。更に今まで開いていなかった中国スタートアップへの窓が開くようになった。中国とアメリカの対立によって、日本側のスタートアップや大手に対して中国側が非常に関心を寄せている。関係構築するチャンスだと考えています」。

中国はこれまで国外への資金持ち出しが厳しく制限されていたが、今年になってそれが緩和されたのも大きい。「中国に安心して投資できる環境になった(百合本)」ことからグローバル・ブレインはこのプレゼンテーション中に2021年中の中国、上海事務所開設を公表している。また、インドについても同じく来年のバンガロール事務所開設を予定とした。

ライフサイエンスにインパクト投資、投資領域の拡大

プレゼンテーションではグローバル・ブレインの注目投資領域についても言及があった。特に強調されたのがライフサイエンスだ。現在、研究者出身のチームを構成しており「投資案件についても5件と実績が出てきた。注目領域はアドバンスドセラピーと呼ばれる、遺伝子治療やマイクロバイオのようなテーマ。また、デジタルヘルスについても力を入れようと考えてまして、既存医薬品、医療機器のような分野を進化させたい」と、この分野への投資を強調した。

また、昨今のSDGsなどに現れている、社会的な要請に基づいた活動についてもインパクト投資という形で積極化させる。

「インパクト投資は社会的だけでなく、経済的リターンを追求するという点でESG投資とは異なります。社会的なペインをテクノロジーで解決できるようになった。Apeel Sciencesという食品をコーティングする企業があるのですが、これによって食品の保存期間を伸ばすことができる。結果、フードロスを解決したり、冷蔵設備のない場所に食品を提供するといったことが可能になる。ここにはAndreessen Horowitzやビル・ゲイツ財団などが出資しています」。

この他にも地球温暖化が持続可能な社会を実現するための技術については、グローバルで必要性はもちろんのこと、日本でも菅総理大臣が所信表明演説で「2050年までの温室効果ガス排出ゼロ」を宣言するなど、脱炭素社会への方向性が揺るぐことはなさそうだ。

キーノートでもこれらの技術への注目、投資の加速が言及されていた。全体戦略の詳細については別項にてお伝えしたい。

DXにインド、ライフサイエンス、GBAFで語られた重要テーマ

入山章栄氏と津脇慈子氏

さて、GBAFではいくつかの重要テーマについてのセッションも披露されたのでいくつかピックアップしてお伝えしたい。最初にご紹介するのは今、日本のテック業界で最も注目を集めていると言ってよいだろう、産業デジタル化をテーマに話題の二人がセッションに登場した。

「After コロナのDX推進とオープンイノベーション」と題されたステージには「世界標準の経営理論」などでグローバルの企業経営戦略の研究を続ける早稲田大学ビジネススクールの入山章栄氏と、デジタル庁立ち上げで一気に注目度が上がった国内デジタル戦略を担当する経済産業省の大臣官房企画官、津脇慈子氏が登壇した。

入山氏はかつて日本の企業が辿ってきた道のりが今を縛り、これまでのデジタル化やダイバーシティへの許容を阻んできたと「経路依存性」の問題点を指摘する。その上で、今回のコロナ禍がそれらをリセットする機会になるのではと、産業全体のデジタル化加速に期待を寄せた。

「(コロナ禍があった結果)結構な全部変えられそうなのですよ。評価制度もリモートだったらデータがいくつも入ってくることになるので当然変えられるチャンスになる。全部を変えられる企業は新しいものを生み出せる。けどそうじゃない企業は負けてしまう。最後のチャンスだと思ってその手段を進めて欲しい」(入山章栄氏) 。

元ソニー・インディア・ソフトウェア・センター社長の武鑓行雄氏

また、インド市場については「イノベーション大国に変貌するインド」として元ソニー・インディア・ソフトウェアセンター 社長の武鑓行雄氏が登壇し、世界各国のメーカーなどが巨大な開発拠点を展開するインドという市場について解説した。ソニーが国外で展開する最大規模の開発拠点はインドにあり、武鑓氏が代表を務めた2008年~2015年の間に、当初600人ほどだった体制が3倍に拡大したそうだ。テクノロジーのイノベーションについてはシリコンバレーに目が行きがちだが、武鑓氏によれば、こういったシリコンバレー企業の多くがソニーと同様にインドに進出し、拡大している状況があると語った。

「インドのIT産業は2000年当時に80億ドルの売上だったものが現在は1910億ドル、産業として23〜4倍に拡大しています。またGDPは当時に比較して6倍に拡大していますが、まだ日本の半分。ただこれもあと10年するとちょうど日本と並ぶと言われています。中国(のGDP)を振り返ると10年前に日本と並んで今の状況があるので、インドのこれからの10年で何が起こるのか、ぜひみなさんにも考えていただきたい」(武鑓行雄氏)。

その他にも大企業とスタートアップの協業事例としてKDDIやJR東日本スタートアップの取り組みが紹介されたほか、「神経難病への挑戦―科学者、教育者、そして起業家の視点から」という題目で慶應義塾大学医学部の教授で、同時に起業家でもある岡野栄之氏による講演が披露された。岡野氏は再生医療及びiPS細胞の研究で第一人者であると同時に、東証マザーズに上場するサンバイオの創業科学者として関わりを持つ「起業家」という顔を持つ。バイオベンチャーがどのような過程で研究と事業を両立させるのか、その道のりを語った。

なお、これらのセッションはGB Universeで改めて詳細を別項としてお伝えしたい。

英語力に3ヶ月で効果、AI英会話の「スピークバディ」ら受賞、GBAF 2020で披露されたスタートアップ7社ご紹介

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 12月4日にグローバル・ブレイン(GB)が開催する年次イベント「Global Brain Alliance Forum(GBAF)」の2020年の回が開催され、イベント終盤のイベント「Startup Pitch Battle」では、GBが昨年末からの約1年間に投資を決定したス…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

12月4日にグローバル・ブレイン(GB)が開催する年次イベント「Global Brain Alliance Forum(GBAF)」の2020年の回が開催され、イベント終盤のイベント「Startup Pitch Battle」では、GBが昨年末からの約1年間に投資を決定したスタートアップ企業のうち、今注目の領域の7社を選定した。

MCは、Corporate Management Groupディレクターの石井輝亜が務め、「Startup Pitch Battle」には、GBAF賞・審査員賞・オーディエンス賞の3つの賞が用意された。員賞の審査を行ったのは次の方々だ。

  • 起業家・エンジェル投資家 有安伸宏氏
  • ヘイ株式会社 代表取締役社長 佐藤裕介氏
  • 日活株式会社 社外取締役 杉山全功氏

GBAF賞: スピークバディ CEO 立石 剛史 氏

スピークバディ CEO 立石 剛史 氏

英語でのオンライン会議が増えるなど英語はますます必要になっているが、日本人の英語力は依然としてアジアで最下位の状態。立石氏自身も英語は苦手だったが、就職時に外資系企業に内定したことをきっかけに猛勉強、各種英会話スクールに通って約4,000時間をかけ、苦労した末、TOEICでほぼ満点を達成した。

英語を習得するためにはいくつかの方法があるが、仕事があると語学留学は難しい、対面型のマンツーマン英会話だと料金が高い、オンライン英会話だと授業のたびに講師が変わってしまう、などの問題がある。バーなどで外国人の友達を作る、というのもなかなか難しい。そこで開発されたのがAI英会話の「SpeakBUDDY」だ。

SpeakBUDDYは、いつでもどこでも使えて月額1,950円。AIがユーザに合ったカリキュラムを作成するため効率的な学習ができる。4つのAI——会話AI(フリートーク)、音声認識、自然言語処理(英作文添削)、機械学習(各機能の精度向上)——を使っており、ユーザはAIと実際の会話が楽しめ、さらにAIにより現在の英会話レベルの判断をすることも可能だ。

言語習得のための科学に基づいてサービスが設計されているため、CEFR-J(日本の英語教育に適用した言語参照枠)を基にした10段階評価で、SpeakBUDDYを3ヶ月間使ったユーザが1.2レベル上がる事象が報告された。SpeakBUDDYでは最新の言語習得理論に基づき、コミュニケーションを通じて学び、タスクをこなして定着させる方法でユーザに言語マスターを促す。

2016年9月にローンチしたSpeakBUDDYは、サービス開始から3年9ヶ月が経過した2020年6月現在、有料ユーザが2万5,000人を突破。国内アプリストアの教育・トップセールスで常に上位につけている。アプリをローカライズすることで、英語習得に熱心な中国やアジア諸国へ進出するための準備も着々と進めているという。

毎年1月〜4月の一年の始まりの時期、「今年こそ英会話をマスターしたい」という新年の抱負から SpeakBUDDY のサインアップに至るケースが多いとのことで、来年年明けのマーケティング準備を始めているという。また、コンピュータサイエンスに強いメンバーを社内に擁しており、音声認識を自前技術で実装するなど内部の技術力が高い点について自負している、と立石氏は語った。

審査員賞: RevComm 代表取締役 會田 武史 氏

RevComm 代表取締役 會田 武史 氏

電話営業における顧客〜担当者のやりとりは、当事者間同士のブラックボックス化されてしまっているのが現状だ。上長や同僚は当事者間で何がどのように話されているかわからないし、また、同じ電話営業でも担当者によってどうしてパフォーマンスにばらつきが出てしまう。さらにその会話内容が成約にうまく合致しているのか外れているのかを客観的に判断することは難しい。

RevCommが開発した「MiiTel」は、俗人的になりがちな電話営業をAIを使って可視化し、より生産性の高い電話営業の実現を支援するサービスだ。システムは顧客管理ツールと連携した IP 電話で構成されており、担当者はPCから03または0120で始まる電話番号で発着信が可能。顧客との会話は録音・解析され、話している時間・聞いている時間・沈黙の時間・相手の話に被せて自分が話た時間・会話の回数・話速が可視化される。

話した内容については全文が文字起こしされ、それが要約され他の担当者と共有しやすいように可視化される。従来の方法は、担当者が自ら会話内容を要約してシステムに入力する必要があったが、この点が自動化されることによりインプット工数が劇的に短縮される。要約される情報量は、会話前後のコンテキストによって増えるため、情報共有を通じた生産性や成約率の向上にも寄与する。

MiiTelのダッシュボード上ではどんな商談内容だったかも可視化されるため、担当者ごとの傾向、例えば、ある担当者は話し相手の顧客に被せて話がち、というようなことがわかる。担当者自らがそれを振り返り、「今までより0.5秒遅れて話してみる」といったセルフコーチングの昨日を提供することもできる。

MiiTel は開始から2年で400社以上(IDでは12,000 以上)に導入、これまでに2,500万件以上のコールを処理した。今後は、担当者が顧客に話す内容の一部を自動的に音声出力する「自動スクリプトモード」、アポ取りを自動化する「自動アポモード」のほか、セールス以外にもミーティングや経営判断、人材採用のリモート面談ツールへの導入など当社独自の音声解析やAIの技術を活用したサービスの多様化を図る。

オーディエンス賞: any 代表取締役 吉田 和史 氏

any 代表取締役 吉田 和史 氏

114分—これは会社で働く人が1日に情報を探している平均の時間だ。勤務時間を8時間として、実に4分の1を情報を探し出すのに費やしていることになる。anyの提供するQastは、社内版の“知恵袋〟機能「Q&A」と社内版の”Wikipedia〟機能「メモ」によって、情報を探し出す時間を社員1人あたり30分削減、また、重複して対応する時間を60分削減する。

Q&A に質問を投稿すると、その内容は社内メールやチャットツールにメッセージとして送信され、その質問に回答ができる社員からメッセージが返信される。質問を投稿することでスコアがたまり、このスコアを人事評価に活用したり、貢献度の見える化に応用したりすることができるという。

メモには、社内での成功・失敗事例、アナウンス、議事録などを掲載できる。メモに登録された情報は、タグやキーワードで検索できる対象となるほか、添付ファイルの内容も検索対象になるので、情報の検索効率が格段に改善される。SlackやTeamsと連携すると、チャット上でのやりとりをメモ上にワンクリックで貯められるので、流れ去っていくフロー型の情報ツールの欠点も補える。

やりとりをメモ上にワンクリックで貯められるので、流れ去っていくフロー型の情報ツールの欠点も補える。

サービス開始から2年半で2,000社超が導入しており、最近では特に社員500人以上の大手企業の導入が拡大しているという。部署や拠点間を跨いだナレッジの蓄積・活用手段として注目を集めており、従来のポータルサイトやイントラネットのリプレイスソリューションとして採用されることが多いようだ。

将来は、ファイル共有サービスやメールサービスとの連携も行い、社内のあらゆる情報リソースをよりシンプルに検索できるようにしたい考えだ。anyではカスタマーサクセスに注力し、新たな企業ユーザがQastを導入する際は2名ほどの担当をつけ、タグの付け方、フォルダの作り方など、情報の整理方法を提案していることが、大企業ユーザが導入を決めるカギになっているとのことだった。

SWAT Mobility 日本法人代表 末廣 将志 氏

SWAT Mobility 日本法人代表 末廣 将志 氏

SWAT Mobilityは、デマンドレスレスポンス型ダイナミックルーティングアルゴリズムで、移動課題を解決しようとするスタートアップだ。2016年にシンガポールで創業、今年2月に日本市場へ進出した。郊外での高齢者の交通代替手段、都心における慢性的な交通渋滞、ラストワンマイルの移動手段などを、N:N(乗客複数 vs. 運転者・車複数)の最適なルート計算でソリューション提供する。

サービスは、乗客用アプリ・ドライバー用アプリ・管理者用アプリの3つで構成。乗客は乗りたい場所、降りたい場所、予約ボタンを押せば車を呼ぶことができ、ドライバーはアプリに表示された地図上の指示に従って目的地に最適なルートで乗客を送り届けることができる。管理者アプリでは、サービスオーナーとして、各車の現在地や稼働状況などをリアルタイムで把握することができる。

SWAT Mobilityでは主に、企業向けや公共交通機関向けに世界7カ国でサービスを提供している。日本では、ケーブルテレビ大手ジュピターテレコムの営業員・保守員のオンデマンド送迎に利用されている。ジュピターテレコムではこれまで、社用車を使って営業員・保守員が顧客訪問していたが、事故の多発やそれに伴う保険料の上昇、出先での駐車場確保の時間などに悩んでいた。

7月から実施されたこの実証実験では、営業員や保守員が予約してから10分くらいで現場に到着することが確認され、3ヶ月間で約8,000回の乗車が認められた。車の効率的な運用が可能になることから、ジュピターテレコムが持つ社用車4台を1台に減らしても運用が可能であることがわかった。ジュピターテレコムは SWAT Mobility の仕組み全国4,500台ある社用車の約半数に導入する予定。

また、新潟市下町(しもまち)では、SWAT Mobility が新潟交通や日本ユニシスと協業で、オンデマンドバスの運用実験を行っている。地方都市や郊外では人口減少に伴い路線バス利用者を使う人が減っているが、単純にバス路線を廃止したのではユーザビリティが下がってしまう。サービスの品質を維持したまま、サステナブルな移動手段を提供する仕組みとして注目を集めているという。

その他タイやフィリピンなどの東南アジアでは、トヨタと協業で医療従事者向けの感染予防策を施した通勤用の送迎サービスを提供。出退勤時間が不規則で、一般通勤客との接触を極力減らす必要がある医療従事者向けに、医療施設と自宅を直接繋ぐ仕組みを提供した

ROXX 代表取締役 中嶋 汰朗 氏

ROXX 代表取締役 中嶋 汰朗 氏

採用候補者の適性を面接だけで見抜くのは難しい。事実、企業と人のミスマッチから、10人採用しても2人は1年以内に離職し、採用後3年以内に離職した人のうち37%は半年以内に離職している。小規模なスタートアップにとって、ミスマッチがもたらすダメージは特に大きい。ROXX「backcheck」を使えば、仕事を共にしないとわからない採用候補者のことを採用前に知ることができる。

backcheckは採用候補者本人の許可をもらった上で、その人のかつての同僚・上司・部下などの第三者(推薦者)から、人物像や職場での仕事ぶりをヒアリングすることができるリファレンスチェックサービス。採用する企業からの依頼をもとに、推薦者にオンラインでのチェックを依頼、回答された内容を分析レポートしてまとめ届けてくれる。アルゴリズムでの性格診断や社会人としてのわきまえなども網羅する。

寄せられる回答は採用候補者には開示されないことが明示されているため、推薦者は忌憚のない意見をコメントすることができる。実際にヒアリングして得られた回答のうち81%にはネガティブな評価も含まれており、採用候補者の得意なこと、不得意なことを踏まえて多面的な評価に役立っている。チェックを依頼できれば94%が回答してくれ、依頼から3日間で企業にレポートが届く。

推薦者をかたって不正に評価が回答されるケースも50人に1人くらいの確率で生じることも確認しており、ROXXでは独自の不正検知機能を開発し導入。採用候補者が積極的な転職活動を行なっている際に備え、推薦者に複数企業からオンラインでのチェックを依頼された際に、回答を使いまわせる機能も追加した。

昨年10月のローンチしたbackccheckだが、今月で取り扱ったリファレンス件数が8,000件を突破。審査員からは「便利なサービスなので、もっと急速なグロースが望めるのでは?」との指摘があったが、中嶋氏は「backcheck でどんな情報が得られるかのイメージをマーケティングだけで伝えるのが難しい」とし認知度向上が課題であるとした。

投資家が起業家を、反対に、起業家が投資家を事前にリファレンスチェックできるサービスも計画している。

Anyflow 代表取締役 CEO 坂本 蓮 氏

Anyflow 代表取締役 CEO 坂本 蓮 氏

企業では、従来オンプレミスで利用されてきた各種システムが、クラウドベースのSaaSへと置き換わる流れが顕著だ。現在、企業一社あたりのSaaS平均導入数は7個とされ、10個以上のSaaSを導入している企業は全体の24%を占める。SaaS市場は年間13%のペースで成長を続け、2024年には1兆円規模に達するとみられる非常に有望な分野と言える。

しかし、SaaSの導入が増えた結果、問題も生じる。MAツールで得られたリード情報をCRM(顧客管理ツール)に同期したり、以前なら社内システム間で接続できたデータ連携がSaaS単位でデータが分断された結果、連携を諦めたり手で重複して入力したりするケースが発生してしまう。

SaaS間のデータ連携にはエンジニアが必要になるが、これだけのために専任のエンジニアを社内に置いている企業は稀で、エンジニアは他の業務を抱えていることから、SaaS間データ連携の開発に時間を割くことが難しい。なぜならSaaSの使い方を学び、データ連携のコーディングを行い、実装しテストした上で必要に応じてメンテナンスを続けていく必要があるからだ。

AnyflowはSaaS同士のシステム間連携を直感的に行えるiPaaS(integration Platform as a Service)で、プログラムを書くことなく実装ができる、いわゆる「ノーコード」ソリューションだ。あらゆるSaaSを統合し、自動化し、生産性を上げることを念頭に置いており、エンジニアに手間を負わせることなく、ビジネス部門手動でSaaSの連携を進めることが可能になる。

今年2月に正式ローンチ後、順調にユーザを拡大。代表の坂本氏によれば、ビジネスの日常に組み込まれることでLTVが高くなり、チャーンレートが低くなるという。企業がどういったSaaSを、どういったワークフローで、どういった業務プロセスに利用しているかの情報が蓄積されるため、将来は、企業にベストプラクティスに基づいた自動化を提供できるプラットフォームを目指すとした。

QunaSys 代表 楊 天任 氏

QunaSys 代表 楊 天任 氏

QunaSysは、量子コンピュータのためのアルゴリズムやソフトウェアを開発強しいているスタートアップだ。Google が昨年2019年10月に実証を発表した量子超越(Quantum Supremacy)は、世界最速のスパコンでさえとても長い時間約1万年かかる何らかのある計算問題を、量子コンピューターでは3分20秒という圧倒的に高速に実行できるもの計算できたとして注目を集めた。

現在紹介されているの量子コンピューティングハードウェアの技術の多くは、産業面への応用への道はまだ程遠いものの、ライト兄弟の飛行機の初飛行がその後のドーバー海峡の商用飛行に、そして、現在の飛行技術の開発につながったように、量子コンピューティングもここからどう使えるかという議論につながっていくだろうと、楊氏は語った。

量子コンピュータの応用が期待されるのは特に量子化学シミュレーション分野だ。高エネルギー密度の二次電池開発、太陽光を使って酸素や水素を合成する人工光合成、高効率な肥料合成を実現するアンモニア合成触媒、Co2CO2の高効率な分離回収方法など、量子コンピューティングの計算力を使ってた量子化学シミュレーションにより、新素材の開発や反応機構の解明の発見を効率化する動きへの貢献が期待される。

Qunasys ではこれまでにさまざまな量子コンピュータのための様々なアルゴリズムを開発しており、そのアルゴリズムを化学メーカーが活用できるようソフトウェアとして提供している。クラウドサービス「Qamuy」として日本の主要化学メーカー40社ほどに提供、このアルゴリズムをどうビジネスに使えるかを共同研究している。

化学メーカー以外では製薬分野メーカーでの活用、特に創薬においては治験のプロセスで長い時間を要することから、新薬の毒性試験(安全性確認)において、試験に先立って毒性をあらかじめ予測するような機能し、治験プロセスを短縮することが量子コンピューティングに期待されているそうだ。

花き業界をデジタル化する「HitoHana(ひとはな)」モデルーーCEOの視点:Beer and Tech 森田氏

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 コロナ禍によって2020年は大きく市場が動いた年になりました。デジタル化の波は全ての産業に到来し、新たなパラダイムの変わり目を感じている経営者の方々も多いと思います。一方、各業界・市場の構造や課題は外からは見えづらく、新たなビジネスチャンスに気が付かないケースも多々あります。…

Beer and Techチーム。画像提供: Beer and Tech

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

コロナ禍によって2020年は大きく市場が動いた年になりました。デジタル化の波は全ての産業に到来し、新たなパラダイムの変わり目を感じている経営者の方々も多いと思います。一方、各業界・市場の構造や課題は外からは見えづらく、新たなビジネスチャンスに気が付かないケースも多々あります。

そこでGB Universe編集部ではグローバル・ブレインで実施している投資先のPR支援プログラムと連携し、各業界に特化した成長スタートアップのCEOにその市場の読み解きと、成長している「理由」を語っていただくインタビューシリーズを開始することにいたしました。

初回に登場するのはお花のデリバリーで急成長中のBeer and Tech代表取締役、森田憲久さん。運営する「HitoHana(ひとはな)」は農林水産省が主導する生産者支援プログラムに参加し、コロナ禍によって廃棄される可能性のあったお花を約3カ月で2万3,000件以上出荷することに成功します。これはプログラム全体の約7割に相当(※)したそうです。(※2020年5月–9月のプログラム期間中、全体で33012件の出荷と発表されている中、HitoHanaは本格参加から3ヶ月間(9月–11月)で23,408件を出荷。)

グローバル・ブレインが支援するスタートアップの創業者「CEOの視点」を通じ、新たなビジネスチャンスや成長企業へ参加するきっかけとなれば幸いです(文中の太字は全てGB Universe編集部、回答はBeer and Tech代表取締役の森田憲久氏)。

花き業界の課題と現状

森田さんの実家は胡蝶蘭の生産者。画像提供: Beer and Tech

森田さんはご実家もお花の事業をされているんですよね

森田:はい、緊急事態宣言が出された頃、胡蝶蘭の生産者である実家から連絡がありました。そこで父から「お花屋さんがみんな閉まってしまい、今年は花が咲いてきた胡蝶蘭を大量に余らせてしまうかもしれない。ネット花屋さんだけが頼りだから、大変な状況だけど頑張ってほしい」と言葉をかけられたんです。

それで農林水産省のフラワーロス支援キャンペーン(※)に参加して送料を無料にした

森田:珍しく私に弱気な姿をみせた父親を見て、同様の悩みを抱えている生産者さんがいることに思いが至ったんです。インターネット経由でお花を売ることが少しでも生産者さんの助けになるのであれば、と思って参加しました。(※農林水産省が主催している国産農林水産物等販売促進緊急対策プロジェクト。)

パンデミックで顕在化した部分含め、花き業界の課題について教えてください

森田:花屋さんは現在1万5,000店あると言われています。平均の年商は2,300万円ぐらいで、非常に小さな会社がばかりです。だいたい1兆円ぐらいのマーケットだと言われているのですが、最大手の会社でもマーケットシェアは3%程度です。

マーケットが拡大する時は小さなお店でも良かったのですが、マーケットが徐々に縮小していく中では、店舗の採算は合いづらくなっていきます。お店を守るために、一人で多くの業務を抱え込み、朝早く店を閉めるのに疲れましたというフローリストも少なくありません。

そういう状況だとテクノロジー投資も難しそうですね

森田:はい、コロナウィルスは予想されていた店舗が減少しユーザーがECにシフトしていくという未来を前倒しで現実化しました。特に、お客様の移動に制限がかかったことやリモートワークが進んだことで家で過ごす時間が増え、お花や植物の需要は伸びました。しかし、お店で購入していたユーザーの生活動線上にあったお花屋さんがなくなってしまい、そういった方々がお花を求めてオンライン流れてきたと考えています。

花き業界におけるデジタル化のプレーヤーの状況を教えてください

森田:花き業界のデジタル化は1995年に米国の1−800FLOWERS.comのインターネット販売をきっかけに進みはじめました。1−800FLOWERS.comは提携する花屋さんをネットワークし、インターネットで注文を受けたらお届け先の近くにあるから提携店からお花をお届けする、というモデルでした。

国土の広いアメリカのどこにでもお花が贈れる、フラワーデリバリーサービスという業態を確立し、NASDAQに上場を果たし、いまも順調に株価を伸ばしています。国内でも花キューピットさんを筆頭に同様のモデルの花のECに取り組む企業が登場しています。

確かにお花の「ギフト」と言えば花キューピットが強いですね

森田:確かにこのビジネスモデルは、大きな国土がある米国の配送問題を解決するには素晴らしい解決策ではあるものの、AmazonのようなECと違い、お花はスケールすることで仕入先に対して価格交渉力を持つことができません。販売面をとったことが必ずしも強い優位性をつくるわけではないんです。

そのため、2012年ぐらいから米国でフラワーデリバリーサービスを手掛けるスタートアップが立ち上がり、ヨーロッパや中国でもそのトレンドは続きました。新しく生まれたスタートアップは中間業者を排除することで価格競争力をつけ、デザイン性を高めるビジネスモデルを採用しました。

HitoHanaの開始は2015年11月ですね

森田:はい、当時から海外サイトをみていたわけではありませんが、世界のスタートアップ同様、僕らも店舗からECへオンラインシフトするマーケットの中で、市場流通比率の高さや既存のECプレイヤーのデザイン性には課題が残っているように感じていました。

しかし、実際に事業を始めてみると、日本の花のECにおける流通業者のマージンは8%程度でそこまで大きくなく、米国のように中間業者を省いても劇的な大きなインパクトがないことがわかりました。一方で、公共交通機関や物流網が整っている日本では提携花屋さんにオペレーションを任せてECサイトのウェブマーケに注力し販売額を伸ばしても、デザインコントロールできない上に仕入れコストも大きく下がらず、まだ課題が残っているように感じました。

日本特有の業界課題を発見したと

森田:一人のユーザーとして感じていた古臭いデザインの問題と競争優位なきビジネスモデルが生み出した厳しい労働環境、この両方を解決するようなビジネスモデルを模索する中で、HitoHanaは今の姿に近づいてきました。

HitoHanaが採用したSPA型モデルのメリット

ここからHitoHanaのモデルについてお聞きしたいのですが、全体像を教えていただけますか

森田:これらの問題を解決するために、HitoHanaのビジネスモデルは、提携花屋さんをネットワークするECではなく、商品企画から仕入れ・制作・発送までバリューチェーン全体をコントロールするSPA型のECを展開しています。

大手小売と同じ一気通貫のモデルですね

森田:僕らは花屋さんにオペレーションを外注し、スケールさせやすい構造を捨てる代わりに、ECに特化したオペレーションを自ら設計し、オペレーションをスタッフ集め、業務プロセスの中でデジタルデータを生み出し、データが貯まれば貯まるほどお客様の提供価値が増していく構造を選択しました。

HitoHanaのビジネスモデル。画像提供: Beer and Tech

例えば、HitoHanaでは、注文を受けて実際に制作した花束はすべて撮影し、画像データとして保存しています。その画像データ一つでも次のような活用をしています。

  1. 制作した花束の画像は花束をオーダーしてくれた方にお送りします。ギフトの花束はお届け先に届き注文者が確認することができないため画像をお送りすると非常に喜ばれます
  2. 制作した花束の画像は商品詳細ページにあるギャラリーに掲載され、購入検討しているユーザーさんが実際どのレベルのデザインが納品されるのかわかり安心感が増します
  3. ギャラリーから制作した花束の画像を選択肢、類似デザインを指定してオーダーすることができます。お花のデザイン要望をテキストで伝えるのは非常に難しく、画像を利用することでお客様が要望を伝えやすくなっています
  4. 制作した花束の画像は、レビューにも表示され、どんなデザインに対してついたレビュー点数なのかわかるようになっており、より意味あるレビューになっています
  5. 制作した花束の画像は制作者と紐付けられ、誰が何をどんなデザインで制作したかわかり、デザインフィードバックがされるようになっています

販売すればするほどデータが蓄積されて体験が改良される

森田:そうです。この例のようにデータを取得から活用までの一連の流れを作ることで、現場で働くメンバーの仕事の価値を流してしまうのではなく、ストックし積み上がるように設計しています。デジタル化をオペレーション効率化に使うのだけではなく、提供価値を増幅する仕組みを根幹に据えることで、データそのものとデータを生み出す組織が、他者が真似できない優位性を築いていくんです。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)がツールのデジタル化ではなく、構造のデジタル化であると言われますが、そのケーススタディですね

森田:このようにデータによって提供価値をつくることでお客様の支持を集めた結果が農水省におけるプログラムの成果に繋がったのではないでしょうか。花き販売では43サイト(楽天、Yahoo、食べチョク等)が販売参加している中、花と植物領域に特化したサービスとして大きな存在感を残せたと思っています。

デジタル化で花き業界はどう変わる

HitoHanaで制作されたフラワーデザイン。画像提供: Beer and Tech

最後に花き業界がデジタル化することでどう変わるのか、聞かせてください。森田さんのお話ではご実家の事業も含めた現在の小売事業者はある意味で競合してしまう存在になります。どのような発展のシナリオがあるのでしょうか

森田:コロナ以前から国内でも毎年10%程度フラワーデリバリーサービスが成長すると言われていました。なのでお花の購入チャネルが店舗からオンラインへと流れるのは確実です。実際、国内の花や植物マーケットに参入意思がある会社は米国のフラワースタートアップのBOUQSやAmazonなどが登場しており、これから数年で競争環境はより厳しくなると思います。その上で、フラワーデリバリーサービスが成長することで花き業界にも大きく3つの変化が起きると考えています。

なるほど

森田:1つ目は、フラワーデリバリーサービスと生産者との密接な連携です。ECの規模が大きくなればなるほど、商品写真に近しいものを作るために同じ花材が必要になり、特定の生産者への発注額が急激に伸びていきます。

既に生産計画などに踏み込みこんでの花材確保の話が進めていますが、フラワーデリバリーサービス事業者と提携生産者が連携し、商品企画時点から連携するようになるはずです。こうした連携の中で、市場でセリ落とされて勝手にサーブされる状態から、他業界のD2Cのようにサプライチェーンの透明性は増し、生産者の顔の見えるような世界に変わっていくと思います。

SPAのようなサプライチェーンを受け入れる、という変化ですね

森田:2つ目は、労働環境のホワイト化です。店舗からフラワーデリバリーサービスで勤務するフローリストさんが増えることで、労働環境は是正されていくはずです。というのも、フラワーデリバリーサービスは注文は24時間受け付けられるため、店舗のように制作時間以上にフローリストを拘束する必要がありません。また、規模化することで分業とシステム化が進み、一人あたりの生産性は大幅に改善するからです。

実際、弊社のフローリストの1日の制作数は、店舗の勤務時の3倍以上であるにも関わらず、配送会社様へ荷物を引き渡したら、定時でお仕事終了になります。自身の才能が活きるプロセスにフォーカスでき、価値が積み上がる構造が作れれば、労働時間だけでなく、店舗勤務よりも良い給与を提供できるはずです。

この辺りは規模の経済が効きやすい部分ですね

森田:最後は人気フローリストの登場です。お花は前述の通り、スケールしてもコストが劇的に下がることはありませんので、利益を伸ばすためには提供価値を上げる方向性にシフトしていくことが予想されます。提供価値を上げていく方向の中で、注文されるのが個々のフローリストのデザインスキルです。

なるほど、インスタでもお花の写真は人気ですが、マイクロインフルエンサーが登場してもおかしくないですね

森田:いままで店舗のある商圏の中でしかサービスを届けられなかった才能があるフローリストは、フラワーデリバリーサービス上で全国のお客様にサービスが提供できるようになることで、ユーザーに才能があるフローリストは発見され、オンライン発で人気フローリストが生まれてくると考えています。フローリスト個人の指名料やギフティングの仕組みなどが進み、もう一度憧れの職業に返り咲けるのではないかと思います。

デジタル化によってこのようなシナリオが生まれ、これまでの花き業界における店舗が抱えてた問題を解決し、フローリストや生産者との関係が変わるのではないかと考えています。

長時間のインタビューありがとうございました

社会的インパクト投資の現在地——クラウドクレジットが手がける「女性事業主(起業家)」支援の実例

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび皆川朋子氏が共同執筆した。 日本政府が「2050年までに温室効果ガス排出量ゼロ」とする長期指標を発表し、国家単位でのSDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)に対する具体的な取り…

クラウドクレジットが提供する「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド1号」は社会的インパクト重視ファンドの一例。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび皆川朋子氏が共同執筆した。

日本政府が「2050年までに温室効果ガス排出量ゼロ」とする長期指標を発表し、国家単位でのSDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)に対する具体的な取り組みが明確になりました。これにより、より一層国内においてもSDGs・ESG投資(Environmental, social and corporate governance)への注目や、社会的課題に取り組む事業への需要が高まることが予想されています。

こうした社会課題に対する投資は、社会的インパクト投資とも呼ばれ、グローバル・ブレイン(GB)においても経済的リターンに加え、社会的リターンを評価する仕組みづくりに挑戦しています。

今回は、GBの出資先でもあり海外融資案件に特化した貸付型クラウドファンディング事業を運営するクラウドクレジットが手がける社会的インパクト投資の未来とその意義についてご紹介していきます。

歴史ある社会的インパクト投資

社会的インパクト投資の対象となるSDGsやESGと聞くと、世界情勢が比較的安定し、国際連合などのインターナショナル・オーガナイゼーションが誕生してきた近年に提唱され始めたものである、という印象があります。

実際にはこうした世界規模での社会課題への関心は1960年代には既に登場しており、同時代に提唱された「SRI(社会的責任投資)」が社会的インパクト投資の始まりともいわれています。

SRIは社会的価値観や倫理観により、投資判断が下されることから「ネガティブスクリーニング」をベースとした手法とされていました。つまり、SRIも「社会的悪」とされる企業を投資対象から外し、社会的に求められる企業へ資本の流入を進める社会的インパクト投資の概念を一部備えていると考えられます。

しかしこうした流れは、2006年に国際連合が主導して設計した「責任投資原則(Principles for Responsible Investment)」により大きく変わることとなります。これは、世界の環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)の課題を従来の投資分析と意思決定のプロセスに融合させ、持続可能な金融システム構築を目指すことを掲げたもので、まさにESG投資と言われる源泉となっています。

さらに2015年にはSDGsが採択され、いよいよ本格的にあらゆる企業・個人が社会的リターンを実現すべく、各々の施策を講じはじめた、というわけです。各国の首脳陣、経済界を中心として新しい投資の考え方が議論されていった結果、誕生したのが経済的リターンとともに社会的リターンも追求していく「社会的インパクト投資」なのです。

社会的インパクト投資市場の現在地とクラウドクレジットの役割

GBが出資するクラウドクレジットは、ソーシャルレンディング型で世界各国の資金需要者(優良中堅中小企業)を選定してファンド化することで、日本の個人投資家が、気軽に1万円から融資できるオンラインプラットフォームを運営しています。

個人投資家には利回りを、資金需要者には資金調達先を多様化する手段を提供することで、通常資金が届かないような様々な取組に向けた資金提供の機会を提供します。今年10月末時点で、ファンド全体の運用残高は158億円、累計販売額は321億円、登録ID者数は4.8万人を達成し、海外貸付型クラウドファンディングにおいては国内No.1の地位を築いています。

またクラウドクレジットでは、2018年1月に初の社会的インパクト投資に重視したファンドの販売を開始しています。具体的には「ペルー金融事業者支援ファンド」・「東南アジア未電化地域支援プロジェクト」・「メキシコ女性起業家支援ファンド」などをシリーズとして販売し、2020年にはこれらのファンド残高が20億円を突破したことも公表し、多くの投資家がファンド購入を通じて金融包摂(フィナンシャル・インクルージョン)によるSDGs達成に貢献しています。

例えば貧困削減とジェンダー平等にフォーカスした社会的インパクト投資シリーズ「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」は、SDGsで掲げられている次のミッションステートメントに準じたものとなっています。

  • 「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」
  • 「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」
SDGsのスローガン

ファンドの実質的な貸付先(海外資金需要者)は、ペルーにおける女性事業主グループ向け融資を行う貯蓄信用協同組合で、ペルーには商業銀行からの借入ができない女性の個人事業主が多くいますが、これをビジネスチャンスと捉え、この分野での融資を拡大してきました。女性事業主を中心に貯蓄サービスや貸付を実施することで、これらのSDGs目標への貢献が期待されています。また、13〜50人を一つのグループにまとめ、グループに対する融資を行うとともにメンバー間では相互に連帯保証を負ってもらうという仕組みにより、リスクを低減しています。

クラウドクレジットによれば社会的インパクト投資の市場規模は年々増え続け、グローバルで2015年時点で1380億ドルとされたものが、3年後の2018年には5020億ドルと3倍程度の上昇率を見せているそうです。また、国内においても2016年の337億円規模から、2018年には3440億円とおよそ10倍の成長を遂げており、市場における需要・供給が共に大きく拡大していることが分かります。

社会的リターンの「計測」は可能か

投資において経済的リターンの有無は、主にリスク/リターンという経済的なパフォーマンス指標が重要視されています。では、社会的インパクト投資における「社会的リターン」は経済的リターンと同等に指標計測が可能なのでしょうか。

ロジックモデルの運用

クラウドクレジットは、リターンの度合いをより体系的に計測するため「社会的インパクト測定」の指標の設計を、ファンドごとにロジックモデルを設定しています。具体的には、貸付先(海外資金需要者)が現行で利用しているものを含め、GIINが発表する「Impact Reporting and Investment Standards+(IRIS+:『インパクト評価のための指標カタログ』)」等に基づいて、クラウドクレジットと貸付先(海外資金需要者)で協議を行い、指標の見える化を進めています。

ベンチャーキャピタルとしての社会課題解決への取り組み

この記事に先立ってGBではソーシャルスタートアップとの取り組みについてもお伝えしてきました。社会的な要請に基づく投資活動はより一層重要性を増してきます。今後についても引き続きソーシャルスタートアップやSDGsに関するイベントや情報発信、インパクト投資やSDGs観点での協働などの活動を検討して参ります。

現実世界のアナリティクス「MODE」が600万ドル調達、グローバル・ブレインら出資

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ニュースサマリ:カリフォルニア拠点のIoTソリューションを提供するMODEは12月10日、増資の実施を公表している。増資を引き受けたのはグローバル・ブレイン、Ture Ventures、Compoundの3社。調達した資金は600万ドル(日本円で約6億円)で、株式の評価額などの詳細は非公開。調達した資金でソリューション開発を進めるほか、日本での営業展開も強化・加速させる。 MODEの創業は2014…

ニュースサマリ:カリフォルニア拠点のIoTソリューションを提供するMODEは12月10日、増資の実施を公表している。増資を引き受けたのはグローバル・ブレイン、Ture Ventures、Compoundの3社。調達した資金は600万ドル(日本円で約6億円)で、株式の評価額などの詳細は非公開。調達した資金でソリューション開発を進めるほか、日本での営業展開も強化・加速させる。

MODEの創業は2014年。企業向けのIoTプラットフォームとして業務用アプリケーション、IoT向け処理クラウド(PaaS)、センサデバイス用ゲートウェイをパッケージングして提供している。用途としてはロボットや自動運転、工場、各種センサデバイスなどのデータ収集から解析、管理を実施する。例えばメーカー等でリアルな現場の遠隔操作やデータ収集・解析が必要なサービスを立ち上げたい場合、MODEのパッケージを使うと事業化がスムーズに実施できる。パナソニックの関連企業などが実際に導入しており、商業施設などでの顧客データ収集や解析といったサービス基盤として活用している。

話題のポイント:MODEを知る上でのキーワードは「現実世界のアナリティクス」と「リカーリングモデル」の二つです。それぞれ解説していきます。

彼らが提供するのはIoTビジネスにおける管理基盤です。例えばお掃除ロボットを開発している企業があったとします。商業施設向けの大型モデルで、勝手に廊下を掃除してくれるので単純に人件費が節約できます。この場合、よくあるのはメーカーとして売り切りして定期的なメンテナンス費用を貰うモデルになります。ただこれだけでは「サービス」とは言い難い状態です。

そこでIoT機器に出番が回ってきます。センサーを搭載したお掃除ロボットはフロアの状況を確認して破損箇所を調べたり、時間帯における商業施設の人の混み具合を搭載したカメラで計測したりすることが可能です。メーカーとしてはお掃除ロボットを「掃除機」ではなく「サービス」として販売することができるようになるのです。しかしこういった事業モデルを構築するには、そもそものデータを収集する方法、解析する方法、そしてそれら全体をコントロールするためのコンパネが必要になります。そこでこれらをまとめてパッケージングしたのがMODEだった、というわけです。

ロボット向けパッケージ
  • 管理コンパネ:各事業者が利用する管理コンパネ。テンプレートでカスタマイズが可能
  • IoT向けPaaS:データ処理クラウド
  • センサデバイス向けゲートウェイ:IoT機器からのデータをクラウドに格納するためのゲートウェイ

特にセンサデバイス向けのゲートウェイについては数多くのデバイスに対応するため、独自のプラグインを用意しており、新しいデバイスに対応する場合も1、2週間ほどで開発ができるようになっているそうです。ちなみにパッケージとしてはセンサー向けのSENSOR CLOUD、モビリティ向けのMOBILITY CLOUD、生産現場向けのFACTORY CLOUDに加え、ロボット向けのROBOT CLOUDが提供されています。

さて、前述した2つのキーワードに戻ります。まずアナリティクス。

彼らのパッケージを活用してサービスを考える際、最も利用価値が高いのが現実世界を解析する、という考え方です。導入事例として挙げられているパナソニック関連の「ENY Feedback」では、商業施設でのリクエストや満足度を簡単なUIで拾えるようにするソリューションなのですが、当然ながら重要なのは現場で得られた顧客フィードバックの解析とその結果の利活用になります。メールマーケティングのようなデジタル・CRMと異なり、現実世界で得られたローデータを確実に収集し、解析・分析し、クライアントが活用できる情報として加工する必要があるわけです。

こういった現実世界におけるPDCAは、従来の方法だとデータ収集量に難があったり、開発コストとサービス事業モデルのバランスが悪いといった課題がありました。そこでMODEは基幹部分をある程度パッケージにすることでその世界観をぐっと現実に引き寄せたのです。ポイントが管理コンパネで、言わばGoogleアナリティクスのレポート画面のようなものです。MODE代表取締役の上田学さんにお話伺いましたが、スクラッチで開発するよりもある程度の定型パターンで開発工数を下げられるような仕組みになっているというお話でした。

そして現実世界のPDCAが可能になれば、当然ながらリカーリングモデルの構築が現実的になってきます。ハード売り切りとメンテナンス程度だった事業モデルは、月額課金とLTVで計測できるものに進化し、追加のサービスによってアップセルやLTVの改善といった施策も戦略的に考えることができるようになるのです。

MODE創業者の上田さんは前職でTwitterの本社でグロースハック・チームに在籍していた経験があります(その前はGoogle米国本社で日本のマップ開発に携わった方です)。データからプロダクトを改良し、継続したユーザーからまたフィードバックデータを回収してそれを改善に繋げる。この思想をそのまま現実世界に持ち込めば、もっと世界が良くなるとMODEをスタートアップしたとお話されていました。

モノからコト売りという事業転換が叫ばれて久しいですが、持続可能な社会を考える上で、MODEのような存在はより必要とされる時代がそこまできてるのではないでしょうか。

ヤマトHDが中国配送ロボ「YOURS Technologies」に出資ーーラストワンマイルの課題解決へ

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ニュースサマリ:ヤマトホールディングスは中国で自動配送ロボットの開発・事業展開を進めるYours Technologies(以下、Yours)への出資を公表している。出資額や条件等の詳細は非公開。出資は今年3月にグローバル・ブレインと共同で設立したファンド「KURONEKO Innovation Fund」の初号案件となる。今後、両社は技術交流などを通じて国内での自動配送ロボットの活用に向けた検討…

ニュースサマリ:ヤマトホールディングスは中国で自動配送ロボットの開発・事業展開を進めるYours Technologies(以下、Yours)への出資を公表している。出資額や条件等の詳細は非公開。出資は今年3月にグローバル・ブレインと共同で設立したファンド「KURONEKO Innovation Fund」の初号案件となる。今後、両社は技術交流などを通じて国内での自動配送ロボットの活用に向けた検討も開始する。

Yoursは2018年創業のスタートアップで中国北京を拠点に、食品などのデリバリーができる小型の自動走行ロボットを開発している。北京にある50箇所以上のショッピングモールや歩行者天国などの場所で自動配送の契約を結んでおり、実際に食品などのデリバリーを実施している。

話題のポイント:今年3月に公表されたヤマトHDの新ファンドの初号案件です。グローバル・ブレイン側でこのファンドを担当するチームに聞いたのですが、配送ロボット以外にもかなりの数で投資検討が進んでいるそうで、具体的な技術やサービス範囲の明言はありませんでしたが「幅は広い」というお話でした。

たまたま初号案件が配送ロボットというわかりやすい物流テクノロジーでしたが、別にこっち方面をものすごく攻める、というわけではなさそうです。さておき、配送ロボット(ドローン)はここ数年目まぐるしい進化を遂げています。AmazonのScoutやStarshipTechnologies、国内はZMPや楽天が中国EC大手の京東集団と共同でテスト運用を開始するなどの動きがあります。

今回の出資にあたってファンドのチームは全世界のドローン案件を見てまわったそうです。その中でこのYoursが採用された理由は圧倒的なコスト優位というお話でした。当然ながらヤマトHDではこれら自動配送に関する調査や研究は進めており、一番の問題点はどうやってコストを下げるかという点にあったそうです。

ショッピングセンターで配送するYoursの自動配送車(Image Credit : Yours

一般的に自動運転走行にはLiDAR(ライダー)センサーが使われることが多いです。レーザー光を使って対象物までの距離を計測するセンサー技術なのですが、とにかく価格が高い。数万円から数百万円のものまであるそうなので、当然ですが、自動運転させるにはコストもそうですし盗難などの危険性も伴うわけです。

そこでYoursはこのLiDARを取っ払って一般的なカメラを使うことでコストを劇的に下げることに成功しました。具体的な価格比較は難しいですが桁がひとつ落ちるレベルだそうで、その一方、Yoursはこういった高価なハードウェアの代わりにソフトウェアを活用しているんですね。特に彼らのコンピュータービジョンのアルゴリズムが優れていて、こういったハードウェア構成でも高精細の地図を作成することが可能というお話でした。

用途としては広範囲のエリアというよりは、彼らが導入を済ませているショッピングモールや一定範囲のエリアでのフードデリバリや物流で、今後、こういった実際のサービス展開を続けながら、MaaSのようなプラットフォームビジネスへの拡大も可能性としてはありそうでした。

VCがSDGsと社会貢献に取り組むワケーー鍵はソーシャルスタートアップとの“繋がり”に

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事(前半、後半)からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび社会貢献活動チームが共同執筆した。 グローバル・ブレイン(以下、GB)はSDGs達成・社会貢献に取り組むべく、本格的な活動を開始しました。なぜ我々ベンチャーキャピタルが取り組むのか、そしてどのように社会に貢献してい…

画像提供:ヘラルボニー・写真左から共に代表取締役の松田崇弥氏(CEO)、松田文登氏(COO)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事(前半後半)からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび社会貢献活動チームが共同執筆した。

グローバル・ブレイン(以下、GB)はSDGs達成・社会貢献に取り組むべく、本格的な活動を開始しました。なぜ我々ベンチャーキャピタルが取り組むのか、そしてどのように社会に貢献していくのか、これまでの活動を振り返りながら未来を語ってみたいと思います。

ヘラルボニーをご存知ですか?

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、福祉を起点に新たな文化を作ることを目指すソーシャルスタートアップです。

自閉症という先天性の障害のある兄を持つ双子の経営者が2018年に創業しました。経営者の二人は幼いころから兄に対する社会からの目線に疑問を抱いており、障害を敢えて個性と言い切ることで、違う視界から、違う世界を、社会に向けてプレゼンテーションするために事業を営んでいます。社会のために障害のある方を順応させるのではなく、彼等の個性のために社会が順応していく世界を目指すのがヘラルボニーの使命です。

画像提供:ヘラルボニー

現在、ヘラルボニーは約1,000点以上の知的障害のあるアーティストが描く作品と消費者を繋ぐキュレーター事業を行っています。慈善活動ではなくビジネスを通して、事業パートナーである福祉施設やアーティストの方へ対価をお支払し、互いにサステナブルな関係を構築しています。

GBの取組み

GBがソーシャル・スタートアップの支援活動を本格的に開始し始めたのは2018年からです。

当時、ソーシャルスタートアップへの面会を開始し、2019年2月にはソーシャルスタートアップや彼らを支援する方を集めたイベントを開催し、約140名の皆様にご参加いただきました。それを皮切りに、社内でも社会課題に対する認識を高めるためLGBTQに関する研修を開催するなどしていましたが、その経緯の中でヘラルボニーのみなさんともお会いしています。

ヘラルボニーの活動をお手伝いするため、昨年主催したGBAF(※)の会場でヘラルボニーの展示会を開催し、ご来場者の皆様に作品をご覧いただいたり、一部の絵画はGBでも購入しました。今後はオフィスでもお越しいただく皆様に作品をご覧いただけるよう展示する予定です(※年次開催のイベント「グローバル・ブレイン・アライアンスフォーラム」)。

ヘラルボニーの展示会の様子

社会課題を解決する「繋がりを生み出すハブ」

これまでのソーシャルスタートアップの支援活動を通じて、具体的にこの領域で必要とされていると感じるのはやはり「繋がり」です。

端的に言えば、ソーシャルスタートアップを大企業の方にご紹介して、そこで生まれる協業をひとつずつ丁寧に積み重ねていく。ステージが早いソーシャルスタートアップは信用や成長支援を必要とされています。GBはスタートアップへの投資と大企業とのオープンイノベーションの推進を長年実施してきた強みがあります。

例えば福祉施設への支援という観点では直接福祉施設に寄付をする方法もあります。しかし、GBが敢えてヘラルボニーが実施されているビジネスに沿って協業支援を行ったのは、彼らのようなスタートアップが成長し、より多くの福祉施設とのお取引が増えることこそ、エコシステム全体を持続的な活動にし得ると考えたからです。

このように今後もイベント等を通じてソーシャルスタートアップの方を支援していきたいと考えています。

私たちのネットワークやノウハウを活かし、かつ大企業のお力をお借りしながらステージの早いソーシャルスタートアップの認知度や信用度の向上、そしてソーシャルスタートアップが大企業との協業の機会を得ることが、このエコシステムを正しく継続的に維持することに繋がると考えています。

画像提供:ヘラルボニー

また、GBの社内では定期的にSDGsやそれぞれの社会課題について学ぶ機会を今後設けることで、社内でのより活発な啓蒙活動を実施していきます。その活動の中では、日々接しているスタートアップの方々のうち社会課題の解決に取り組んでいる方をお呼びし、知見の共有をしていただくことで社員の視野を広げることも計画中です。

日本のいま

世界の社会起業家900人に聞いた「社会起業家にとって最も良い国」調査(2016年)では日本は第40位です。評価項目は「政府支援」「人材確保」「事業投資の機会」「社会起業家の生活力の確保」の4点ですが、世界のGDPランキングから考えるとやはり低水準と言わざるを得ません。

GBだからできることをやる。

投資という新たなアイデアと資本をつなぎ、事業を生み出すことを手掛けてきたGBだからこそ、社会と企業、消費者、関心、こういったものをつなぎ合わせる「ハブ的役割」を担えるのではないかと考えています。次回は企業がSDGsにどう向き合うべきか、その基本的な考え方と、GBの役割をもう少し掘り下げてお伝えしたいと思います。

企業がSDGsに取り組むべき理由

池田 真隆氏:株式会社オルタナ取締役 オルタナS編集長

ベンチャーキャピタルがSDGsの達成や社会貢献を目指すとどうなるのでしょうか。その活動の方向性を語るために、先日開催したGB社内でのワークショップの様子を紹介させていただきます。

今回ご講演いただいたのは、若者による社会変革を応援するソーシャルメディア「オルタナS」池田編集長です。池田編集長の講演内容を元に、企業の社会貢献やSDGsの取り組みの潮流・将来について本記事でお伝えします。

そもそもの企業における社会貢献活動は主にCSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)として位置付けられてきました。最近では国連の提唱するSDGsとも結びつけられているケースも多いですが、その違いは何でしょうか。

まず、企業のCSRの歴史は古く、1920年頃に遡ります。経営管理の哲学を提唱したオリバー・シェルドン氏によりCSRの概念が生まれ、公害や労働など問題を抱えることもある企業が社会とどう向き合うべきなのか、というコンプライアンス遵守、企業活動の「ガバナンス(企業統治)」強化の一環として広がっていきました。これらはネガティブ・インパクトの最小化が目的です。また、社会貢献活動やフィランソロピーなどのポジティブ・インパクトの最大化を目的とした企業活動も行われてきました。

しかし、現在では深刻化する社会課題の解決や企業の社会責任はますます重要になり、金融庁と東証の定める「コーポレート・ガバナンス・コード」に社会・環境問題に関する持続的な活動が盛り込まれるなど、多くの企業が対応が求められるようになっています。

そこで、これからの企業のCSRは、企業価値創造を目的としたサプライチェーンを含むリスクマネジメントや行動規範などのコンプライアンス遵守の拡大や、価値創造型CSRあるいはCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)と呼ばれる経営手法が注目されています。

資料提供:株式会社オルタナ

さて、企業への社会要請から広まったのがCSRであるのに対して、産業革命以降急激に活発化した人間活動によりリスクが増した地球環境の持続可能性のために、国際目標として生まれたのがSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)です。

SDGsは2001年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における2016年から2030年までの国際目標であり、17の目標と169のターゲットで構成されています。

資料提供:株式会社オルタナ

それでは、企業は具体的にどのようにCSRやSDGsに取り掛かればよいでしょうか。近年注目を集めているのは、先ほどの価値創造型CSRに位置付けられている「アウトサイド・イン(社会課題の解決を起点にしたビジネス創出)」と呼ばれるアプローチです。つまり、今までの顧客ニーズからのマーケットインや技術シーズからのプロダクトアウト型の開発ではなく、視座をあげて社会課題やニーズから新規ビジネスを作る、という開発手法です。

資料提供:株式会社オルタナ

では、例えば環境問題に対して企業がアウトサイド・イン・アプローチを取り入れるとどのようになるのでしょうか。

近年、海をはじめとする自然環境にプラスチックが悪影響を及ぼすというニュースをしばしば目にするようになりました。私たちの身近でもゴミ袋の有料化や、ストローが再生利用可能な素材に変化するなど、社会的課題としてプラスチックの利用方法が急速に見直されています。

例えば、この領域でも先導的な活動をしているユニリーバは、2025年までにプラスチックパッケージを100%再利用可能・リサイクル可能・堆肥化可能にすることなどを含んだ「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を宣言しています。

アウトサイド・イン・アプローチを通じて、パッケージ原材料を持続可能なものに切り替えるための新たな素材開発やより環境にやさしい製造工程、販売網が構築されるなど、社会課題解決そのものが新規ビジネスに繋がる可能性があります。

未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していく・・・こうした姿勢が「未来の顧客」に対する新しい商品・サービスの提供を可能にし、結果的に企業の持続的な成長に結びつくのではないでしょうか。

最後に、金融の世界でもESG投資の普及が進んでいます。ESG投資とは、財務指標に偏らず、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮した投資活動を指し、投資先である企業に対してより一層社会との対話を求める取り組みです。国内外で浸透に向けた官民の活動が加速しています。

ここまでオルタナS池田編集長のご講演を参考に、SDGsやCSR・企業の社会貢献についてまとめてきました。事業開発に取り組む大企業やスタートアップの皆さんも、未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していくことができるかもしれません。こうした姿勢を取り入れることで未来の顧客や将来世代に対する新しい商品・サービスの提供が可能となり、結果的に企業の持続的な成長や社会的インパクトにも結びつくのではないでしょうか。

GBが取り組むSDGs達成と社会貢献の考え方

最後にGBの具体的な活動内容についてご紹介します。

ベンチャーキャピタルであるGBは、起業家支援とイノベーション促進を通して、社会課題の解決と社会の発展に貢献できるよう努めてきました。ソーシャルスタートアップであるヘラルボニーとの協業では、主催イベントでの情報発信、同社の事業拡大に向けた大企業ネットワークのご紹介、GB主催のヘラルボニ―作品展示会開催等を通じて、ご支援に努めてきました。

そしてこの度、新たに「SDGs・社会貢献方針」を策定し、下記3つのテーマに関する活動を通して、SDGsの達成と社会の持続可能な成長に貢献していくことを目指していきます。

  • 社会福祉・コミュニティ支援:地域や世界が抱える問題を当事者として直視し、社会課題の解決とコミュニティの繁栄に繋がる活動を推進します。
  • 次世代育成:多様性のある将来を切り開くために、次世代を担う青少年たちのスタートアップマインド育成と成長に貢献する活動を推進します。
  • 地球環境保全:持続可能な社会実現のため、事業活動と経済活動の両立を目指し、自然環境や生物多様性の保全を支援する活動を推進します。

GBは投資家、金融エコシステムの一部という立場を活かしつつ、SDGsの視点で社会課題の解決・発展に寄与する活動を推進しています。最近では、活動を推進する社内チームも発足させ、より一層効果的に活動できるよう日々取り組んでいます。

今後は、オープンイノベーションを通じたソーシャルスタートアップ支援、次世代育成プロジェクト、環境関連の社内活動、SDGsに関わる情報発信や啓蒙活動を予定しています。こうした様々な活動を通して持続可能な社会と企業の成長の両立を目指し、一歩一歩着実に前進していきたいと思っています。

今後も引き続き、具体的な活動をお伝えしていきますので、ご覧いただければ幸いです。

ソニーがスタートアップのデザイン支援をする理由

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の重富渚氏、木塚健太氏が共同執筆した。 テクノロジー系スタートアップにとって、ブランドやPR活動の重要性は年々高まっています。例えば日経BPコンサルティングが毎年実施している一般消費者6万人を対象にしたブランド価値調査「ブランド・ジャパン」の最新結…

左からソニーデザインコンサルティング福原寛重氏とグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の重富渚氏、木塚健太氏が共同執筆した。

テクノロジー系スタートアップにとって、ブランドやPR活動の重要性は年々高まっています。例えば日経BPコンサルティングが毎年実施している一般消費者6万人を対象にしたブランド価値調査「ブランド・ジャパン」の最新結果によると、総合でトップを取ったのは「YouTube」、次点が「LINE」(※昨年トップはAmazon)で、インターネット・サービスが消費者の脳裏に深く焼き付いていることがわかります。

ブランドに期待される効果のひとつに「第一想起」というものがあります。ある分野のサービスを使おうとした時、消費者が真っ先に思い浮かべる認知順位のことです。PRの手法では「ソートリーダーシップ」などと呼ばれ、各社の露出戦略やストーリーづくりなどに大きく影響を与えています。

グローバル・ブレインでは、先日公表させていただいたValue Up Teamと連携した形で、スタートアップのデザインやPRを支援するプロジェクトが進んでいます。今回は2回に渡り、この活動にフォーカスしてご紹介させていただきます。

デザイン視点での経営戦略

グローバル・ブレインではソニーデザインコンサルティングと協業し、デザイン視点での経営戦略の可視化からデザイン組織のマネジメント、量産に耐えられる製品デザインまで幅広い範囲を支援する体制を構築しています。内部だけでは支援が難しい場合、外部のスペシャリストや企業と連携して事業の価値向上に貢献するケースとなります。

ブランディングやクリエイティブは会社や製品の価値を正しく伝えるための重要な手段です。具体的には(1) デザインコンサルティング、(2) デザインマネジメント、(3) デザインサービスの3テーマで支援を実施します。

まず、デザインコンサルティングです。これはデザイン視点で経営戦略の可視化を行い、デザインによる事業課題の解決・価値創造を狙うアプローチになります。目的や目標を共有可能なものとして可視化し、事業効率や意思決定を効率化させるために、ブランドコミュニケーションやクリエイティブディレクションなどを支援します。

次のデザインマネジメントでは、デザイン組織のマネジメント、デザイン評価やKPIなどのツール提供やコンサルティング、クリエイティブ人材の教育といった点を手がけます。

最後のデザインサービスはより制作現場に近いプロダクトデザインやユーザーインターフェイス、コミュニケーションデザインやグラフィックデザイン、その他デザイン業務に携わります。デザイン支援と聞くと最後の「デザインサービス」をイメージされるかもしれませんが、実際はより根源的な経営課題の解決まで伴走するのが特徴です。

ソニーデザインコンサルティングのクリエイティブディレクター福原さんは、なぜソニーがスタートアップを支援する理由について下記のように語っています。

弊社がスタートアップ支援する理由は様々ですが、事業の早い段階で『デザイン』というものが事業に対して提供できる『効用』を理解いただくことが最も重要だと考えています。デザインとは単なる表現やお絵かきではありません。ある意味では事業そのものもデザインとも言えるものだと思います。そのような視点からデザインを改めて考察いただいたり、クリエイティブに関する理解、表現の整理、こだわるべき点と力を抜くポイントなどを議論することで、事業にとってデザインが有益な効果を発揮すると考えているからです。

ファーメンステーションのケース

プログラムで手掛けた除菌ウェットティッシュのパッケージ

具体的にこの支援プログラムを受けたケースをご紹介します。ファーメンステーションは独自の発酵技術を使って未利用資源からエタノールを精製し持続可能なプロダクトを企画・開発するスタートアップです。グローバル・ブレインは2018年に投資を実行し、彼らの事業成長を支援しています。

昨今、社会におけるSDGsの気運が高まり、循環型事業を手掛けるファーメンステーションの注目度も増してきました。

そのような背景も後押しし、大手企業とのコラボレーション製品(除菌ウェットティッシュ)の開発が計画として持ち上がりました。この製品には非食用米やリンゴの搾りかすといった本来であれば捨てられてしまう「未利用資源」を活用して精製したエタノールを使用していることが特徴です。

ラボでの製造の様子

また、昨今の感染症対策の流れもあり、アルコール消毒関連製品が一般消費者にも身近な存在となっている中、事業会社などがノベルティとして除菌ウェットティッシュを配布する場面も増えてきました。そこで今回の製品にはノベルティとして配布する際に、メッセージを沿えて提供できるアイデアを盛り込むことになりました。

リンゴの搾りかす

単なる「無料の配布物」ではなく、これを企業が消費者とのコミュニケーション手段として使うことで、感染症拡大への対策であると同時に、持続可能な社会を目指すというメッセージも込めることが可能になりました。

コーポレートカルチャーにまで遡る

デザイン・プロジェクトは開始から約2カ月で成果となりました。

今回、ファーメンステーションにとっては初めてのマス向け製品のためデザインにも力を入れたく、グローバル・ブレインに相談を持ち込まれたのがはじまりです。

最初に取り組んだのはメッセージの整理です。除菌ウェットティッシュのデザインを作るにあたり、コンセプトや伝えたいことなど製品が生まれるまでの経緯をソニーデザインコンサルティングチームに共有します。

製品のデザインは会社のミッションと関連するため、会社全体のミッション、ビジョン、バリューの整理と言語化から各事業を通して伝えたいことの整理・言語化までサポートを行っていただきました。ファーメンステーションではこれらの一連のサポートをコーポレートカルチャーを見直すよい機会として取り組まれました。

ファーメンステーションでプロジェクトに参加した酒井里奈さんは今回の取り組みをこう振り返ります。

「ファーメンステーションにとって初のマス向け製品でした。未利用資源から生まれた製品、という背景をどこまで積極的に伝えるパッケージにするか、何度も議論を繰り返し、デザイン案を複数いただき完成しました。こういったコンセプトの製品がこれからの時代の常識になるといいなと思っていますし、この製品が、そのきっかけになることを願っています。販売も予定しているので、是非多くの方に長く使っていただける製品にしたいと思います」。

次回はグローバル・ブレインで実施しているもうひとつのコミュニケーション戦略支援、「PR」についてお伝えします。

コロナ禍で変わる採用テクノロジー、注目は「採用の分散化」と「リモート福利厚生」

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の坂本祥子氏が共同執筆した。 お知らせ:11月21日にグローバル・ブレインでは支援先40社を集めたオンライン採用イベントを開催。詳細はこちらから 感染症拡大防止を受け、企業における採用活動も大きな岐路に立っている。 例えばオンライン面接の拡大はその…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の坂本祥子氏が共同執筆した。

お知らせ:11月21日にグローバル・ブレインでは支援先40社を集めたオンライン採用イベントを開催。詳細はこちらから

感染症拡大防止を受け、企業における採用活動も大きな岐路に立っている。

例えばオンライン面接の拡大はその影響のひとつだ。グローバル・ブレインでは先頃、採用ソリューションを手掛けるmanebi(マネビ)に出資したが、彼らもまた提供するオンライン採用・研修ソリューション「playse.」を大きく伸ばしている。昨年11月公開したウェブ面接ツールは、公開後8カ月で1,100社が導入した。

この大きな変化の時期、何が課題となり、どこに余白が生まれるのか。本稿では特に採用の前後で発生する変化に注目してトレンドを探ってみたいと思う。

オンライン面談は何を変える

オンラインでの面談を経験した方であれば、多少なりとも対面と異なる部分を感じただろう。候補者の雰囲気や性格など定性的な情報収集がやや難しくなった一方、多くのデータを収集できるようになったのは進歩と言える。

ここで注目したいのが面接プロセスの分散化というアイデアだ。

オフライン面接の場合は「場所」と「面接官」の2要素が必要となる。一方、オンライン面接の場合「面接官」だけでできるので、例えば採用スクリーニングのプロセスを外部委託することも考えられる。

シアトル拠点の「Karat」は、企業に代わってエンジニア候補者の面接を担当してくれる。顧客企業の方で予め選定した候補者たちを、彼ら独自の質問とスコアに当てはめて評価する。その結果得たフィードバックから企業は面接プロセスを先に進めるのだ。利用企業は第三者によってフェアに候補者を判断できる点も買われている。

なによりこの事例で理解できるのは「データ」の重要性だ。様々な企業のオンライン面接を請け負うことで、的確な質問やコーディングディスカッションの手順をノウハウとして蓄積することができる。結果、評価する際のスコアの精度はどんどん上がっていくことになるだろう。

ROXXが展開する「back check」

履歴の評価(リファレンス・チェック)も重要なポイントだ。バックグラウンドチェックは欧米のギグ・ワーカーの台頭によって市場を大きく拡大したサービスで、米国では「Checkr」が一番手として有名だが、日本ではROXXが展開する「back check」が拡大中だ。昨年10月に正式リリースしたばかりだが、既に累計導入社数は500社を突破1している。

例えばROXXのような企業がKaratが手掛ける採用スクリーニングを開始すれば、リファレンスまで含めた採用候補のスコアリング・ポートフォリオが一気通貫に提供できることになる。

オンライン面談の課題

しかし当然ながら課題もある。現在、採用担当は会えない分をなんとかしようと、コミュニケーション接点作ることにリソースをかけている。手間も大きく、応募者側も継続的にコンタクトが欲しいわけではない。オンラインになった結果、辞退しやすくなったことも要因としてある。いわゆる「ドタキャン」だ。

この効率化を進めているのがmanebiのソリューションになる。現在、playse.ブランドウェブ面接eラーニングを展開しており、9月から選考辞退などを防止するエンゲージメントソリューションを開始した。特に重要なツールが動画で、オンライン就職活動における動画情報提供は、7割以上が志望動機向上につながるという調査結果もある

mabebiの展開する「playse.エンゲージメント」

playse.エンゲージメント」は動画で採用候補者・新入社員に会社の文化やルールを浸透させるツールで、二次面接の後に動画A、オファー後に動画Bのように視聴状況を確認しながら選考プロセスと動画を紐づけ、また、各動画の視聴後にテストをすることで浸透度を測ることも可能になっている。建設関連の利用企業はこれにより面接辞退の率が昨年比で50%も改善した。

さらにデータを活用することで、将来的には採用目標数や達成度を求職者の志望度(情報取得の度合いで計測)、選考状況、プロセス途中のアンケートなどから可視化・予測することも可能になる。

定着支援に必要な福利厚生の考え方

こうやって採用後にやってくるのが「定着」だ。いわゆる離職率を下げる一連の施策を、企業から離れた場所にいる従業員に対して的確に実施しなければいけない。

ここで考えておきたいアイデアがリモート環境でも使える福利厚生だ。「Zestful」は従業員が自分で福利厚生内容を選べるサービスで、NetflixやStarbucks、Spotifyといった私たちが日常的に使うようになったサービスを従業員が自由に選び、与えられた福利厚生予算を自分の裁量でパッケージングすることができる。

Zestfulの利用企業は、同社が提携するベンダーの中から従業員に提供したいサービスを選び、プログラム名を付ける。たとえば月最大50ドルまで補助される「Healthy&Happy」と名付けたプログラムから、自由にClassPassやCalm、Headspaceといった運動・ウェルネス系サービスを従業員が選べたりする。従業員が通わないような指定ジムでしか提供されない福利厚生より柔軟性を持つのだ。こうしたプログラムは複数持つことができ、仮に企業側が従業員の健康を推進したいのならば、Healthy&Happyに対する予算割合を増やす設計にもできる。

たとえば企業がリモート環境下でも健康的な生活を送って欲しいと思い、東京に多く拠点を持つジム費用を浮かせる福利厚生パッケージを提供したとしても、同じ系列ジムを持たない遠方のリモート社員は使えない。このギャップを埋める柔軟性が必要となる。そのソリューションの1つがZestfulにある。

HRWinsによると、ベンチャーファームは2019年の第1四半期だけでHRテック企業に17億ドルを投資しているというデータもある。また別のレポートによると、2019年の投資額は238件で53.3億ドルに達し、2018年の投資総額40億ドルから20%以上増加している。感染症拡大という未曾有の出来事で、HR市場も大きく動くことが予想される。新たな課題をいち早くキャッチすることが求められるだろう。