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いま米国で注目される新トレンド「パッション・エコノミー」とは?ーー 個性を売りにする“マイクロ起業家”

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ピックアップ記事: The Passion Economy and the Future of Work 最近「パッション・エコノミー」という言葉をよく聞くようになりました。端的に筆者の解釈で用語を定義すると、“個性あるサービス経済”と説明できます。初めて聞く人も多いかもしれませんが、私たちが普段よく触れるYouTuberやSHOWROOM、ニコニコ動画配信者の実態を的確に表した用語であると考えま…

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ピックアップ記事: The Passion Economy and the Future of Work

最近「パッション・エコノミー」という言葉をよく聞くようになりました。端的に筆者の解釈で用語を定義すると、“個性あるサービス経済”と説明できます。初めて聞く人も多いかもしれませんが、私たちが普段よく触れるYouTuberやSHOWROOM、ニコニコ動画配信者の実態を的確に表した用語であると考えます。

具体的にパッション・エコノミーを下記3つの特徴に分けてみます。各特徴を説明するために、筆者がこのトレンド概念を知ったきっかけである、シリコンバレーの著名VC「Floodgate」が出資する「Dumpling」を一例に挙げます。

  1. ユニーク性: 労働者の個性を“バグ”ではなく“機能”として活かす
  2. SaaS: マイクロ起業家を輩出する機能提供に終始
  3. 直接営業: 魚は与えず釣竿を与えるスマートな事業モデル

 

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Image Credit: Dumpling

Dumplingは買い物代行サービスを開業できるSaaSを展開します。サービス提供者は同社が提供するソフトウェアを通じて、自分だけのサービスページを持ち、決済や配達スケジュールの予約までを管理できるようになります。集客はサービス提供者が自ら行う必要があるため、Dumplingはあくまで集客術のノウハウ支援しかしません。ユーザーはDumplingのページ経由で自分だけの買い物代行者を持つことができます。

オペレーションなどを全てサービス提供者一人で回さないといけない一方、Dumplingは毎注文額から5ドル、そしてユーザーから5%の手数料だけを徴収します。従来、買い物代行市場はInstacartが寡占しており、同社がオペレーションからサプライチェーン管理までを担っていたため、サービス提供者の手取り額も限られていました。しかし、Dumplingでは全てがサービス提供者の管理となるため、Instacartの倍ほどの収益を稼げるようになるといいます。

最も困難な点はサービス提供者が一定数の顧客を獲得できるところまで。一度回り始めれれば、高い収益をサービス提供者は定期的に獲得でき、ユーザー側も信頼できる人に買い物代行を継続して任せられるようになります。

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Photo by Craig Adderley on Pexels.com

さて、先述の3つの特徴に話を戻しましょう。まずは「ユニーク性」に関して。Dumplingのサービス性を通じて得られるユニーク性は、自分だけの買い物代行者を得られる点にあります。“分野特化型の執事”を獲得できると言えるかもしれません。チップを多めに払えば、その時折に合わせた配達手法などのカスタマイズ性も出してくれるでしょう。

Instacartではオペレーションが画一しているため、こうした配達者のカスタマイズ性は黙殺されていました。このように従来型のプラットフォームでは個性を「バグ」と見なしていましたが、新たなプラットフォームでは立派な「サービス機能」と捉えます。

筆者は会ったことがありませんが、たとえば東京のUberEats配達員の中には自前のキットを使って他の配達員より丁寧かつ保温状態の良いお弁当を届けてくれる優秀な人がいると聞きました。こうした優秀な配達スキルを活かして各々に収益を最大化できるのが特徴です。

配達員自らが料金設定をできるため、他より高級なサービスを提供していると感じれば高い料金設定が自由にできます。プラットフォームの画一した報酬体系に縛られる必要はありませんし、ユーザーは優良なサービスを指名して使い続けることができます。こうしたサービス提供者が持つ高いホスピタリティやパッションを指して、「パッション・エコノミー」と呼ばれる所以だと考えます。

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Photo by MockupEditor.com on Pexels.com

2つ目は「SaaS」。サービス提供者が事業を行うための最低限の機能を与えることで「マイクロ起業家」として事業を運営させる機会を提供するのがここで述べるSaaSの本質です。Dumplingではスケジュール機能や料金設定、ランディングページ作成機能などが当たります。ちなみに、実際に登記をするなどしてサービス提供者が会社を創設することはありません。あくまでも小さな事業を立ち上げるだけ。「マイクロ」と称されるのはこの理由からです。

SaaSで考えなければいけないポイントは2つ挙げられます。1つは引き抜き。サービス提供者の高いスキルを特徴とするサービスでは引き抜きが最大の懸念となるかもしれません。

たとえば、先に述べたUberEatsの配達員が個人的に雇われてユーザーから収入を得ることも考えられます。こうした引き抜きを防ぐためにも、SaaSの機能拡充が必須になります。事業に欠かせない機能を見極めて実装することが必要です。

もう1つはアクセシビリティ。今まで手の届かなかったサービス領域に一般消費者が届くようになる世界観を指します。たとえば、かつてウェブサイト作成は限られた企業だけの特権でした。しかし、今となっては「Strikingly」や「Wix」、「Weebly」の登場により誰でも無料でサイト作成ができる時代になりました。

同じ流れがサービス経済でも発生しています。買い物代行者を一般の人が持てる時代はInstacartの登場まで来ていませんでしたし、Dumplingのように“分野特化型の執事”を持てることはありませんでした。こうした特定層にだけに限られて提供されていたサービスが、SaaSにより民主化されています。この民主化のギャップが大きいほどサービス価値が高まります。

3つ目は「直接営業」。SaaSというビジネスモデルを採用していることから、各サービス提供者のユーザー獲得支援を直接行うわけではありません。この点が従来のマーケットプレイスモデルとの大きな違いです。

冒頭でも紹介したように、魚を与えず釣竿を渡す事業モデルを採用しています。これはエンドユーザー獲得のためのマーケティングコストを圧倒的に削減できることから、非常に効率的な事業展開を目指せるポイントでもあります。また、サービス提供者が仲介業者であるプラットフォームの影響を極力省けることから、“サービス経済のD2C化”を促進するモデルともいえます。

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Image Credit: Podia

ここまでDumplingを例にパッション・エコノミーを3つの側面から説明してきましたが、最後にパッション・エコノミーの変遷を3つの次元から紹介したいと思います。

まずパッション・エコノミー1.0。実はパッション・エコノミーの考えは最近までデジタルコンテンツにのみ当てはまる概念でした。たとえば、最初に述べたYouTubeの動画投稿とスーパーチャット機能や、SHOWROOMのモバイル特化のライブ配信とギフト機能は、まさにマイクロ起業家を支援するSaaS機能と位置付けられます。配信者はユニークなコンテンツを配信しなければ多くの登録者を獲得できませんし、登録者獲得のためには自分で直接営業をしなければいけません。

YouTubeを筆頭とするデジタルコンテンツの提供SaaSは分野特化型に広がりを見せます。これが2017-2018年から現在に至るまでのパッション・エコノミー2.0です。

複数事例を挙げると、教育市場では「Podia」「Teachable」「Thinkific」が代表的。各サービスではコンテンツ作成者がビデオコースと会員費設定ができるSaaSを提供します。これまで特定分野を教えられる“知識系インフルエンサー”は単発オンラインクラスを「Lynda.com」や「Udemy」で提供出来ていましたが、継続利用を目的としたクラスを設立出来ずにいました。

この商機を狙ったのが先の3社です。事実、ピックアップ記事によるとPodiaのトップクリエイターは月に10万ドル(約100万円)以上を稼いでいることから十分にPMFが成立している分野だと言えます。ちなみにライブ教育配信プラットフォームの「Outschool」や「Juni Learning」では平均して数千ドルを稼げるそうです。

別の分野では有料ニュースレタープラットフォーム「Substack」が有名です。コンテンツ制作者が有料メルマガを気軽に始められるSaaSになっています。同サービスのトップライターは年間50万以上を稼ぐとのことです。

このように創造性に富んだデジタルコンテンツを世界中に発信して稼げる分野特化型SaaSが多々登場してきています。デジタルコンテンツ提供者は大規模なオーディエンスを構築し、ニッチな趣味や特技などの情熱を効率的に収益に変えて生計を立てられます。

これはまさに誰もが「マイクロ起業家」になれるツールであり、私たちが将来「仕事」と考える概念を大きな変える意味合いを持ちます。このトレンドはしばらくは続くでしょうし、日本でも似たようなコンセプトが複数事例出てくることが予想されます。

woman sharing her presentation with her colleagues
Photo by Canva Studio on Pexels.com

そして2019年になって登場してきたのがパッション・エコノミー3.0。「Uber」「Taskrabbit」「Care.com」に代表される対面サービスがギグエコノミーのトレンドを追い風に登場しました。過去10年の間で巨大になったオンデマンド市場は、私たちが手軽にお金を稼げるプラットフォームとして人気を博しています。一方、ここまで説明してきたように個性を不要とする均一的なオペレーション化が進んでしまいました。そこで登場したのがDumplingです。

Dumplingは人々の個性を武器として際立たせて生計を立てるオフラインサービスSaaSの好例で、Instacartに取って代わるパッション・エコノミー文脈サービスに当たります。これからはUberやTaskRabbitなどのオンデマンド市場のあらゆる分野で似たようなコンセプトのサービスが多数登場すると筆者は睨んでいます。

Instacartのようなプラットフォームに全てを握られた形ではなく、Dumplingのようにサービス提供者とユーザーが共に「個性」の良さを享受できる業態に注目が集まっています。これは商品経済の代表格であるAmazonの登場の後、商品提供者がユーザーと直接的な関係を築けるShopifyが誕生したのと同様の流れがサービス経済でも発生していると考えられます。

現在は分野特化型のニッチなサービスしか立ち上がっていないことから、パッション・エコノミー文脈でユニコーンが誕生するかには疑問が残りますが、間違いなく2019年のトレンドの1つとして挙げられる概念でしょう。

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コーヒー豆で車を作る?ーー実は再利用可能なあの「残りカス」、こんなものにまで転用可能

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ピックアップ:Ford is making car parts—with waste from McDonald’s coffee beans ニュースサマリー:コーヒー豆の残りかすの再利用に注目が集まりだしている。 Ford Motorは4日、マクドナルドが販売するコーヒー豆の粉を再利用し、同社が生産する車の部品開発に再利用する計画を発表した。CNBCによれば、同社はインテリアやボンネットへの利…

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Image Credit: Kaffee Form

ピックアップ:Ford is making car parts—with waste from McDonald’s coffee beans

ニュースサマリー:コーヒー豆の残りかすの再利用に注目が集まりだしている。

Ford Motorは4日、マクドナルドが販売するコーヒー豆の粉を再利用し、同社が生産する車の部品開発に再利用する計画を発表した。CNBCによれば、同社はインテリアやボンネットへの利用を考えていると報じており、現状から20%ほど重さを軽減できるとしている。

Fordではまず、コーヒー豆の総量約30万個に相当するヘッドランプを取り囲む部品の製作に取り掛かるという。記事によると、提携を結んだマクドナルドのマックカフェでは2018年米国において、年間8億2200万カップのコーヒーが販売されているそうだ。

話題のポイント:今まで肥料としての再利用にとどまっていたコーヒー豆ですが、近年、そうした肥料への再利用に加え、新たな利用手法があらゆる角度から考えられています。ご紹介したFordの例以外にもいくつか取り組みがあります。

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University of Pennsylvania

たとえばバイオ燃料への再利用。ペンシルベニア大学による研究によれば、コーヒーの焙煎・抽出過程にて生じた残りかすには平均15〜21.5%の油分が含有されているそうです。また、油以外の個体部分はバイオマスペレットへの再利用が可能だとされており、一つのコーヒー豆の残りかすから2種類のエネルギー生成が可能であると述べられています。

同論文では、ニューヨークにおいてトラックを利用して875カ所のスターバックスコーヒーとドンキンドーナツを週に2・3回のペースで回収した場合、1時間当たり1215.3キロのコーヒー豆の廃棄物を得られるとしています。それらを全て上述したバイオディーゼル燃料へと再利用すると1時間当たり130キロ、バイオマスペレットを324.2キロの割合で生成可能と結論付けています。

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University of Pennsylvania

ちなみに、一人当たりのコーヒーショップ数(coffee shops per capita)は、ニューヨーク・マンハッタンが米国で第2位。その倍近くある第1位のシアトルでは、単純計算でバイオ燃料も倍近く生成できるということになるのではないでしょうか。

さて、車・バイオ燃料ときて次にご紹介するのはドイツのスタートアップ「Kaffee Form」です。同社は残りかすをタンブラー・カップの生産に再利用。販売する製品からはコーヒーの香りが漂うと言い、まさに、コーヒー好きには最高なタンブラーと言えるでしょう。

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Image Credit: Kaffee Form

Kaffee Formはこの製品を通して、日常に「コーヒー豆のカス」を登場させることで、環境保全への意識を変えていきたいとHPで述べています。ミッションに「reshape consumer habits」とあるように、身の回りにあるもので商品を生産することで、長期的に消費者行動を変えていくことを目指しています。

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Image Credit: Kaffee Form

特に日本では今まで、”リサイクル”と聞くとあまりエキサイティングな認識はされない存在だったと感じます。たとえば小学校などで「3R」として習うのが「Recycle, Reuse, Reduce」ですが、そこから発展してリサイクル活動へ結びつけるような教育はあまり目にしません。

米国では、以前ご紹介したRidwell社のように、個人や家庭で積極的なリサイクル活動を好んで行う傾向にあると感じます。

<参考記事>

その他にも米国スターバックスは完全にプラスチックストローを廃止したり、企業が環境保全に対してアクションを取ることも求められている風潮に変わりつつあります。日本では、スタートアップとしてこうした事業をあまり聞きませんが、世界的にトレンドになりつつある市場であると思います。

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セクハラ解任でも1億ドル調達、SoFi創業者の新たな挑戦は「住宅ローン×ブロックチェーン」

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ピックアップ:SoFi founder Mike Cagney’s already well-funded new startup is raising another $100 million ニュースサマリー:オンライン学生ローンサービスでユニコーンとなったフィンテック企業「SoFi」の創業者MIke Cagney氏が設立した新会社「Figure」が11月初旬、1億ドル規模の調達を行っていたこ…

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Image Credit: Figure

ピックアップSoFi founder Mike Cagney’s already well-funded new startup is raising another $100 million

ニュースサマリー:オンライン学生ローンサービスでユニコーンとなったフィンテック企業「SoFi」の創業者MIke Cagney氏が設立した新会社「Figure」が11月初旬、1億ドル規模の調達を行っていたことが明らかになった。

Figureが提供するサービスは、ホーム・エクイティー・ローンや借り換え住宅ローンなどの住宅ローンおよび借り換え学生ローンである。Mike氏はセクシャルハラスメント疑惑によりSoFiを2017年に解任されており、離職後すぐの2018年Figureを設立している。Figureはサービス立ち上げ後から着々と成長し、既に累計約1億ドルの調達を実施している。

※ホーム・エクイティー・ローン=住宅価格から住宅ローン未払い額分を除いた資産を担保に発行されるローン

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Image Credit : Provenance

話題のポイント:Figureがターゲットとするのは、増加傾向にある高齢者層であり、彼らが持つ住宅を担保にローンを組むことを促します。米国でも高齢化は進んでおり、今後巨大化する市場に狙いを定めているのだと考えることができます。

この点、学生をメイン・ターゲットにしていたSoFiと多少の違いがあることがわかります。しかし、Figureは借り換えの学生ローンを提供していますし、実はSoFiは住宅ローン分野にも進出しています。そのため、Cagney氏は古巣SoFiと競合のビジネスを行なっていると捉えることもできるでしょう。

ただ、大きな違いとして、FigureはProvenanceブロックチェーン技術をベースにサービス開発をしている点が挙げられます。実はFigureのプロダクトはほとんどの処理をProvenanceプラットホーム上で実行しており、手数料の削減、透明性の向上を実現しています。

公開されている同社の業績データは未だ見当たりませんが、上記の先進的な技術の導入が結果的にユーザー増加に寄与し、本調達に繋がっているのかもしれません。ブロックチェーンは未だ未成熟なテクノロジーとされていますが、今後の同社の成長によって、証券市場におけるその有用性が証明される可能性があります。

一時は、自身の失態により創業した会社を追われる形となってしまったCagney氏ですが、SoFiをユニコーン企業まで押し上げた才能は腐ることなく、新たな技術を用いることで、フィンテック領域における彼の挑戦は次のステップへと進んでいます。今後のFigureの躍進に注目が集まります。

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業績見合いでローン提供「Uncapped」はスタートアップの株放出問題への対抗策となるか

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ピックアップ:Uncapped raises £10M to offer ‘revenue-based’ finance to growing businesses ニュースサマリー:12月1日、スタートアップ向けローン提供サービス「Uncapped」が、サービスのローンチと同時に1,000万ドルの資金調達を実施。資金は株式と借り入れの両方で行われる予定で、投資家には、Rocket Interne…

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Image Credit : Uncapped

ピックアップUncapped raises £10M to offer ‘revenue-based’ finance to growing businesses

ニュースサマリー:12月1日、スタートアップ向けローン提供サービス「Uncapped」が、サービスのローンチと同時に1,000万ドルの資金調達を実施。資金は株式と借り入れの両方で行われる予定で、投資家には、Rocket Internet’s Global Founders CapitalやWhite Star Capital、Seedcamp、そしてその他複数のエンジェル投資家が名を連ねている。

同社はロンドンに本社を置くポーランド発の企業。スタートアップ向けに業績ベースのローン提供サービスを展開する。スタートアップはVCやエンジェルなどの投資家からのエクイティー(株式)投資に依存しており、それが将来的な自己株比率の不足をもたらすなどの問題に繋がっていた。

しかしUncappedからの借り入れは株放出に頼らない業績ベースのローン。10万~100万ポンド(約1400万~1億4000万円)を貸し出し範囲とし、手数料は一律6%、投資家よりも高速で資金調達を実行できる点を強みとしている。

TechCrunchの記事で同社CEOのIsmail氏は以下のように答える。

資金調達を検討する起業家に最初に立ちはだかるのは、“数%のエクイティー(株式)を手放すのか、はたまたデット(借り入れ)を行うのか”という、二者択一の意思決定。エクイティーは遅い上に株放出が必須であり、またローンもハイリスクという欠点があります。しかしUncappedは、両方の良いとこどりをした代替手段となり得ます。

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Image Credit : Uncapped

話題のポイント:Uncappedのファイナンス・サービスに関して気になるポイントは、同社の業績ベースの与信がどれほど効力があるのか、という点でしょう。ローンが高スピードかつ低い手数料である点は借り手のスタートアップにとって大きなメリットではあるものの、彼らの貸し倒れ率を一定以下に抑えなければ同社のビジネスは成り立ちません。

そのため、ローン提供先事業の債務返済能力を適切に与信を取るする必要があり、その方法の質の高さがサービスのコア・バリューになるとも言い換えられます。

与信の方法について、ピックアップ記事の中でIsmail氏は、「Uncappedは事業者がこれまで蓄積してきた販売データや、事業者らが利用するStripeやShopfyなどの外部サービス内の決済・販売データなど、多数のソースに依拠する形でデータを収集し、与信審査を行う」といったコメントを残しています。

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Image Credit : Uncapped

Uncappedが想定する借り手事業者は、Eコマースやサブスクリプションサービス、D2C、SaaS、アプリやモバイルゲーム、マーケットプレイスの6つのカテゴリに属する事業者であるとされています。これら6つのサービスが選ばれる理由は、与信データの収集を行いやすい事業モデルであるためだと考えられます。

実際、Uncappedは借り手に2つの条件を設けています。1つは商品・サービスの販売をオンライン決済で行なっていること、そしてもう1つはサービスの運用を少なくとも9カ月以上継続できるていることです。

ちなみにStripeやShopfyは既に自社サイトベースの業績データに依拠したローンサービスを提供しており、Uncappedの競合に当たります。一見するとより多くの業績データをプラットフォーム内で握るStripeやShopifyの方が優位性が高そうです。しかし、Uncappedは事業者自身が持つ販売データや事業者が運用するFacebookのようなSNSなども含め多面的にデータを収集しています。特定サービスに依存せず相対評価できているという見方もできるので、これはこれで強みを持っているといえるでしょう。

さて、全ての起業家の悩みのタネでもある資金調達を、より簡単かつ低コストなものに変革する「Uncapped」。欧州スタートアップの需要を掴み、かつ適切な出資を行うことで、新しい資金調達モデルを生み出すことができるのでしょうか。同社の今後の発展に期待が高まります。

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9億人が利用、Alibaba(阿里巴巴)とTencent(騰訊)中国「フィンテック」共通戦略を紐解く【前編】

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ピックアップ:5 Ways Ant Financial & Tencent’s Fintech Growth Playbooks Are Evolving 先日のヤフー・LINE連携で話題になったのが中国テックジャイアントの存在です。GAFAに対抗してBAT(※最近は「B」がBaidu・百度ではなくByteDance・字节跳动)とする場合も)と呼ばれていますが、なかでも勢いがあるのがフィン…

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Image Credit : Pexels

ピックアップ5 Ways Ant Financial & Tencent’s Fintech Growth Playbooks Are Evolving

先日のヤフー・LINE連携で話題になったのが中国テックジャイアントの存在です。GAFAに対抗してBAT(※最近は「B」がBaidu・百度ではなくByteDance・字节跳动)とする場合も)と呼ばれていますが、なかでも勢いがあるのがフィンテック分野での躍進です。

Alibaba(阿里巴巴)グループのAnt Financial(蚂蚁金服)が提供する「Alipay(支付宝)」、そしてライバルのTencent(腾讯)が提供する「WeChat Pay」がそれです。この中国2大モバイル決済アプリについて、米調査会社のCB Insightsが詳しい戦略の考察を掲載していました。本稿ではこれに沿った形で、この2大決済アプリが今、どのような状況なのかを紐解いてみたいと思います。

中国国内決済のほぼ全てを支配する

CBIの記事によれば、トップを走るAlipayは、実に中国国内の決済の54%を占めており、それを追う形のWeChat Payのシェアは約40%だそうです。

つまり、中国のモバイル決済はAlibabaとTencentという、米国のGAFAらと肩を並べる中国巨大テック企業の2社によってほぼ完全に独占されている状態で、これら2社を合わせると、中国国内のユーザー数は実に8〜9億人になるそうです。日本の総人口のざっと5倍です。

事業構造も異なります。Alipay陣営のAlibabaグループはコマースが中心。対するTencentはゲームとメッセンジャー「WeChat」によるコミュニケーション関連事業がメインになっています。特にTencentは広告事業の成長が頭打ち状態の一方、フィンテック関連サービス(レンディングや保険など)が年間40%もの成長を示していると記事は指摘しています。

Ant Financialの推定評価額は1,500億ドル(Alibaba全体では約4,570億ドル)、フィンテック事業に限定したTencentの評価額は1,230億ドル(Tencent全体では約3,875億ドル)と拮抗しており、今後、ヤフーやLINE、東南アジアで勢力を伸ばすテックスタートアップ各社はこことのポジション争いをアジア圏で繰り広げることになりそうです。

といってもこの2社、時価総額では世界トップ10入りの桁違いなので背中は遠いです(※日本のトップを走るトヨタは約1960億ドル)。

AlibabaとTencentが取ったフィンテックの共通戦略

CBIの記事ではこの事業が異なる2社が、フィンテック分野においては同じような戦略を取っていると考察しています。それが次の5つです。

  • 1. Building flywheel effects  – フライホイール効果の構築
  • 2. Making virtual credit a part of everyday life – ユーザーの日常の一部にクレジットを作り出す
  • 3. Prioritizing health insurance – 健康・医療保険を優先する
  • 4. Diversifying options for savings and investing to expand the market – 預金・投資オプションの多様化
  • 5. Focusing on small businesses – スモールビジネスへのフォーカス

詳細はぜひ原文をご一読いただくとして、これらの項目に沿って気になったポイントを解説してみたいと思います。

1. Building flywheel effects  – フライホイール効果の構築

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「フライホイール効果(弾み車)」とは、Amazonの成長を解説する際にジェフ・ベゾスが引き合いに出した理論です。一言で言えば、“ビジネスの中に好循環を生み出すこと”を意味します。

ジェフベゾスは、Amazon商品の低価格化→顧客満足度の上昇→取引ボリューム増加→品揃えの充実、に至る一連の好循環をフライホイール効果と表現しました。Ant FinancialやTencentの場合、決済アプリと関連金融サービスによる相乗効果がそれです。

CBIがまとめたAnt Financialのデータによると、2019年6月のデータではAlipayユーザーのうちAnt Financial以外の金融サービスを3つ以上利用しているユーザーは80%、5つ以上利用しているユーザーは40%となっています。

具体的には、Alipayの提供するWallet内から、中国の一般的な銀行預金金利と同程度かそれ以上の金利(過去の一時期4%に到達、現在2%周辺)をもらえる「余額宝」と呼ばれるMMF(マネー・マーケット・ファンド)サービスを簡単に利用できたりします。

他にもローンや保険サービスをAlipay Walletから簡単に利用できるなど、関連サービスへの導線が上手く出来ているため、ユーザーの人気を集める理由となっています。新たなサービス導線の誕生ですね。

2. Making virtual credit a part of everyday life – ユーザーの日常の一部にクレジットを作り出す

アジア圏におけるミレニアルやZ世代と呼ばれる新しい年代のユーザーはインターネットで決済することが当たり前になっている状況があります。

<参考記事>

ここで重要なデータがクレジット(信用)です。

Ant Financialが運営する消費者信用サービス「Huabei」は、こうした世代向けに無利息のクレジットを提供し、大きく消費を加速させています。データによれば、同サービスが開始した2015年から累計貸し出し額は1,400億ドル(約15兆円)に及んでいるそうです。

驚かされるのは成長率です。

原文のグラフを見ると一目瞭然ですが、1,400億ドルというのは2017年前半までの累計額の10倍です。この増加を2年と少しの期間で達成しているということには驚かされずに入られません。Tencentも「Fenfu」と呼ばれる同様のサービスを開発しており、2019年末までにローンチされる見込みです。記事の後半では残りの3〜5について解説をお送りします。

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クラフトビール版Amazon「TapRm」がディスラプトする業界規制の“しがらみ”

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ピックアップ:Beer-loving commerce startup TapRm raises $1.5M ニュースサマリー:クラフトビール専門EC「TapRm」は11月26日、150万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はThe Brow Groupが努め、VU Venture Partners、Branded Strategic Hospitalityも参加した。 同社は昨年NY…

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Image Credit: TapRm

ピックアップ:Beer-loving commerce startup TapRm raises $1.5M

ニュースサマリー:クラフトビール専門EC「TapRm」は11月26日、150万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はThe Brow Groupが努め、VU Venture Partners、Branded Strategic Hospitalityも参加した。

同社は昨年NYにて創業。米国にはビール生産者が直接小売販売できない法律があることから、仲介業者を挟む必要がある。しかし、仲介と小売業者の両方のライセンスを持つTapRmを利用すれば、レストランやバーからの大規模な発注を狙えるほか、直接一般消費者への販売も可能になる。

話題のポイント:アルコール特化版AmazonともいえるのがTapRmです。同社が提供する機能はいたってシンプルで、アルコールのECサイトです。商品的な差別化要素としては、Amazonなどで扱っていないオリジナクラフトルビール販売(地域限定など)に特化している点が挙げられます。

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上図を見ると、アメリカの大手スーパー「Whole Foods」や「Walmart」で目にするビールとは違う種類を扱っていることが一目でわかります。しかし、アメリカにおいてアルコールEC市場はそこまで盛り上がりをみせていません。

Profiteroが公開したデータによれば、アルコール購入者のうちECサイトを利用した割合はたったの8%でした。言い換えれば残りの92%は店舗での購入ということになります。ちなみに下のグラフを見ると日本は中国に続いて全体の2位に位置しており、アルコールのオンライン購入が比較的盛んであることが伺えます。

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Image Credit: Profitero

アメリカにおけるアルコール飲料市場に消費者が投じる金額は、米国商務省によれば年間2300億ドル以上ともいわれていますが、意外にもEC市場は未成熟だったのです。

この背景には、冒頭でも言及したアルコール販売に対して制定する法律「Three-Tier Distribution System」にあるのかもしれません。これは、酒類の販売の際、生産者は小売業者や消費者に対し直接販売をすることができず、卸売業者を通さなければならないと定められた法律です。

つまり、基本的にアルコール生産者は自身でECサイトを立ち上げ販売することができず、いわゆるDirect to Consumer(D2C)モデルの推進がやりにくいわけです。

こういった規制のしがらみに着目したプラットフォームがTapRmです。同社は小売と卸売業のライセンスを同時取得することで、生産者が直接的に酒類販売を実施できるプラットフォームの提供に成功した、というわけです。潜在的にメーカーは直接販売したかった、ということなのでしょう。

また米国では州法が存在し、「他の州では合法だったビール販売手法が、この州では法律違反だった」といったことも起こりやすいため、アルコール生産者にとっては変に自社で販路を開拓するより、TapRmを利用して販売する方が安全というメリットもあります。

Infographic: 2014 Was Another Great Year For U.S. Craft Beer | Statista
Image Credit: Statista

Statistaが公開したデータによれば、2014年におけるクラフトビール醸造所は合計で約3,400カ所。内訳としては自前の醸造所を持ち、自家製ビールを提供する酒場やレストランを指すブリューパブが約1,400ヵ所、小規模醸造所が1,870、残りは小規模な醸造所が続く形です。

2008年比で醸造所が2倍に増えている点から成長市場であることは明らかです。EC市場も合わせて盛り上がるのは時間の問題ではないでしょうか。

こうしたマーケット情勢とオンライン市場を組み合わせ、法的問題を解決することがTapRMの目指しているところでしょう。今後は、サブスクリプションモデルなど、あらゆる事業展開が実施されていきそうです。

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拡大する途上国フィンテックへの投資ーーソフトバンクとTencent(騰訊)が南米チャレンジャーバンクへ1.5億ドル出資

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ピックアップ:Argentine fintech Ualá raises $150M led by Tencent and SoftBank ニュースサマリー:アルゼンチンの個人資産管理アプリ「Uala」は11月25日、シリーズCラウンドにてSoftBankのラテン・アメリカ特化イノベーション・ファンド及び中国テック・ジャイアント「Tencent(腾讯)」らから合計1億5,000万ドルを調達したと…

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Image Credit : Uala

ピックアップArgentine fintech Ualá raises $150M led by Tencent and SoftBank

ニュースサマリー:アルゼンチンの個人資産管理アプリ「Uala」は11月25日、シリーズCラウンドにてSoftBankのラテン・アメリカ特化イノベーション・ファンド及び中国テック・ジャイアント「Tencent(腾讯)」らから合計1億5,000万ドルを調達したと発表した。同社の創業は2016年で、本調達により累計調達額は約1.95億ドルに達する。

Ualaは近年欧米を中心に台頭する「Revolut」や「Monzo」に代表されるチャレンジャー・バンク事業をラテン・アメリカで展開。同社のアプリとカードを通して、預金・送金・融資・投資信託などほぼ全ての種類の金融サービスを利用できる。なお、欧州のチャレンジャー・バンクとの違いとして、Ualaが銀行免許を取得せずにサービス展開している点が挙げられる。

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Image Credit : Google Play

話題のポイント:WeWork経営危機問題を横目に、SoftBankによる海外投資は着々と加速しています。最近では、同社が仕掛けるラテン・アメリカ地域特化のイノベーション・ファンドが、先日ブラジルのEコマース企業「VTEX」の1億4000万ドル調達ラウンドにも参加していました。

アルゼンチンは現在深刻なインフレーションや3,300億ドル規模の債務など、国家の金融面で様々な問題を抱えており、加えて金融サービスの普及率も先進国に比べれば低い状況が続いています。そのためUalaのような個人向け資産管理アプリは同国の金融サービスへのアクセスを急拡大させられると考えられます。

このようにSoftBankは途上国の未成熟な金融システムを代替しうるデジタル・バンキングに投資の可能性を見出しています。実際に今年5月頃、SoftBank及びSoftBank Vision Fundはブラジルの担保貸付サービス「Creditas」に2億ドル超の出資を実施した経歴があります。

一方、中国最大のテック・ジャイアントでWechatなどを運営するTencentもSoftBankと同様の投資戦略を持っていると考えられます。TencentはWechat Pay及びその他の多数フィンテック・サービスを展開していることから、事業提携を通じた長期的な関係構築を見据えた戦略も感じさせられます。

Tencentは既にブラジル発のチャレンジャー・バンク「Nubank」との戦略的提携及び出資(1億8,000万ドル)を実施した過去があります。こうした投資実績からTencentはラテン・アメリカ市場を熟知していると考えてよく、本投資決行の大きな自信になっていることは言うまでもないでしょう。ちなみにNuBankは現在ラテン・アメリカではまだ珍しいユニコーン企業へと成長しています。

TencentとNubankのように、中国のフィンテック・ジャイアントが新興国のフィンテック・サービスに大型出資を行う案件は本件が最初ではありません。実はTencentが運営するWechatの競合にあたるAlipay(支付宝)と、その運営企業「Ant Financial(蚂蚁金服)」は数年前、インド市場へ影響力を拡大することを目的に、(関連会社アリババからの投資に加え)技術輸出という形でインド最大の決済大手「PayTm」を支援しています。

Ant Financialは現在まで投資を複数回続け、結果的にPayTmはインドで最も大きな決済アプリとなりました。つまりTencentによる戦略的投資は、Ant FinancialによるPaytmへの戦略的投資を大いに参考にしていると考えられます。

さて、アルゼンチン経済の特殊な背景と言う違いはあるものの、UalaはTencent及びNubankの成功モデルを参考にできる分、サービス拡大の難易度は高くないと言えるのではないでしょうか。両企業を参考にしつつ、効果的に開発と資本注入を繰り返すのがUalaの今後の事業プランとなっていくでしょう。

Ualaは未だアルゼンチン以外の南米諸国へとサービス展開する予定はないとしていますが、おそらくTencentは今後も大型資金を同社に投入し続けていく意向でしょうから、将来的に他国参入を実施する可能性は十分にあるはずです。Ualaの今後の成長・拡大にSoftBankとTencentの投資戦略の面からも注目です。

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学術書サブスクの「教材版Netflix」Perlegoは欧州学生の心を掴めるか

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ピックアップ:Perlego Raises $9 Million Series A to Grow E-Book Library ニュースサマリー:欧州28カ国に電子書籍サービスを展開する「Perlego」は11月20日、シリーズAラウンドにて、Charlie SonghurstやDedicated VCなどの複数投資家らから合計700万英ポンド(※約900万ドル:約1,000万円)を調達したと発…

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ピックアップPerlego Raises $9 Million Series A to Grow E-Book Library

ニュースサマリー:欧州28カ国に電子書籍サービスを展開する「Perlego」は11月20日、シリーズAラウンドにて、Charlie SonghurstやDedicated VCなどの複数投資家らから合計700万英ポンド(※約900万ドル:約1,000万円)を調達したと発表した。

同社はロンドン拠点のスタートアップ。教科書版Netflixとも呼べる、20万点以上のデジタル教科書読み放題(サブスクリプション)サービスを提供する。調達資金は英語以外のコンテンツ拡充およびヨーロッパ市場へのさらなる拡大に向け活用される予定。加えて、今後アクセス可能なコンテンツ数を25万に増加させるとのこと。

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話題のポイント:「教科書や参考書、学術書は一般の本に比べ割高」という印象を持っている人は少なくないと思います。高校や大学、塾で購入を強制される教材というのは安くても1,000円以上、学術書などは高ければ3,000~5,000円ほどの価格帯のものもあります。

学生は学習を進めれば進めるほど、または進級する度にこうした高額な教科書を購入する必要が発生し、社会人でお金がある訳でもない彼らにとっては悩ましい問題といえます。

まさにこのような問題解決に挑むのがPerlegoです。年額プランの場合は月額10ユーロ(約1,200円)、月額プランの場合は月額15ユーロ(約1,800円)で、2,000に及ぶ主要な出版社から20万冊以上の教科書にアクセスし放題になります。

同社のアプリはiOSとAndroidのスマホどちらかも利用でき、オフラインダウンロード機能を使えばWifi環境がなくても読むことができます。また専門家がキュレーションした教材リストにもアクセスでき、ユーザーがどの書籍を読むか迷う心配を減らす機能も提供します。この辺りのサービス設計は定額制ストリーミングサービスの代表格といってもいいNetflixやSpotifyを大いに模倣していると考えられます。

さらに実際のアナログ本さながらにメモやマーカーをいれることができたり、学生は20%割引だったりと、価格・利便性の面でターゲットである学生層の心を掴む利点も充実していることが分かります。

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Perlegoの競合としては、世界的な教育書籍出版社「Cengage」が提供するサービス「Cengage Unlimited」などが挙げられます。同サービスは現段階で米国限定の提供を行なっていることから、今後欧州地域に参入する可能性もあります。そのため、Perlegoは一刻も早く欧州地域で独占的地位を築く必要があるでしょう。

また、Amazonの「Kindle Unlimited」や「Amazon Ignite」に代表される巨大プレイヤーによるサービスも参入も長期的に考えられます。比較的小さな市場とはいえ、Perlegoにとっては厳しい競争が待ち受けていることが想像できます。

こうした競合への対抗戦略として考えられるのは2つ。1つ目に提携戦略。すなわち欧州市場の教材出版社や教育機関との提携を通じてサービス普及の加速を図るというものです。

仮に主要な出版社と先んじて独占的な契約を結ぶことができれば、それはユーザー数拡大を促すだけでなく、競合を抑え込む強力な障壁となるでしょう。また、教育機関へのサービス提供ができる場合、コストを支払うのは教育機関側となるため、生徒に無料で電子書籍を提供するモデルが考えられます。その場合、Perlegoはまるでデジタル図書館のように機能し、生徒を魅了することができるはずです。

もう1つが、現在Netflixが進めるオリジナル・コンテンツ戦略です。出版社との提携も強力ですが、著者を直接的に囲うことができれば中間マージンの削減やサービスの独自性上昇に繋がります。

上述のような提携戦略や、サブスク先駆者であるNetflixを踏襲した戦略を持ってすれば、マス狙いのAmazonの電子書籍・教材のサブスク・サービスが人気を博したとしても競争力を十分に発揮し、大手サービスにも対抗することが可能なのではないでないでしょうか。その意味で、今後の同社のサービス拡張戦略にはとても注目が集まります。

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4.5万人が稼働するUberロンドン市場で営業権が一時失効に

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  ピックアップ:Uber’s fate in London hangs in the balance as transport regulator reportedly weighs a ban ニュースサマリー:Uberが持つロンドン市での営業権利が失効されたようだ。ロンドン交通局(正式名 Transport for London)は失効日である25日までに新たな営業ライセンスを発行…

 

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ピックアップUber’s fate in London hangs in the balance as transport regulator reportedly weighs a ban

ニュースサマリー:Uberが持つロンドン市での営業権利が失効されたようだ。ロンドン交通局(正式名 Transport for London)は失効日である25日までに新たな営業ライセンスを発行するかどうかの判断を迫られたが、発行の動きを見せなかったことから静かに幕引きとなった。

ただし、Uberに21日間の控訴猶予日が残されていることから、すぐにオペレーションが止まることはない。また、裁判が始まれば判決が出るまで営業を続けていくことができる。ロンドン交通局はUberの運営禁止に関し積極的な検討を行なってきたとされ、一方のUberは当局の判断について楽観的だとの意見を述べていた。

しかし、ロンドン交通局はUberがいくつかの交通安全上のリスクを孕んでいる点を懸念。たとえばロンドン交通局がUberのドライバーを全て特定できておらず、1.4万にも及ぶ未登録車両が存在している点を問題視していた。

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話題のポイント:Uberのロンドンでのサービス提供に暗雲が立ち込めてきているようです。2017年、Uberは初めてロンドン交通局に営業ライセンスを没収されました。その後、改善を試みた上で一時的な営業ライセンス付与に至り、15カ月に渡ってオペレーションを回しました。さらに今年9月には新たに一時営業ライセンスを取得し、11月までの約2カ月間の営業を行なってきました。

Uberにとってロンドンはヨーロッパの中でも最も利用数を誇る、4.5万を超えるドライバーを抱える市場です。今後のロンドン交通局の対応次第で本当に営業を停止する必要に迫れられます。そうなった場合は非常に大きな機会損失を生むでしょう。

ロンドン・ラジオ・ステーションの編集者はTwitter上でタレコミ情報をツイート。ロンドン交通局は同氏に対し「Uberはポジティブな改善をし続けてはいる」と回答しているようで、Uberによる一定のオペレーション改善努力は認めていることが分かります。この点が今後どう転ぶかは注目でしょう。

一方、Uberは余裕な姿勢を見せ続けています。というのも、Uberは控訴・上訴を行うことで実質的にオペレーションを延長し続けることができてしまうからです。許されるギリギリのラインを見計らいながら改善を施していくと同時に、だらだらと裁判の期間を引き延ばす戦略が垣間見れます。

Uberとしても欧州最大規模のロンドン市場を失うことだけは避けたいはずです。事実、Financial Timesによれば同社の株価は当ニュースを受け6%以上下落しました。これから裁判に臨み、出来る限りの改善を尽くすでしょうが、ロンドン交通局がどこまで譲歩するのかが焦点となりそうです。

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旅行中のお部屋を「即現金化」するLeavy.co、そのカラクリを考えてみた

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ピックアップ:Leavy.co, the app for millennials who want to rent out their room while travelling, discloses $14M funding ニュースサマリー:パリに拠点を置くトラベルスタートアップ「Leavy.co」は26日、シードラウンドにて1,400万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はPri…

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Image Credit: Leavy.co

ピックアップ:Leavy.co, the app for millennials who want to rent out their room while travelling, discloses $14M funding

ニュースサマリー:パリに拠点を置くトラベルスタートアップ「Leavy.co」は26日、シードラウンドにて1,400万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はPrime Venturesが務めた。Index Venturesも同ラウンドに参加している。

Leavy.coは旅行者が旅に出ている間、自宅またはアパートメントを短期賃貸として貸し出せるプラットフォームを提供している。利用者は宿泊者とやり取りする必要なく、プラットフォーム上からオンデマンドで物件を探すことができる。鍵の受け渡しなどは該当地域の物件管理を担当するオンデマンド・ホストが代行する。

最大の特徴は、部屋を貸し出すオーナーの報酬受け取りまでの早さにある。同社では物件をリスティングした時点で代金が支払われる。そのため、貸し出すユーザーは旅に出る前に資金を手元に置くことが出来る。また、結果的に予約者が獲得できなかった場合でも、通常の金額がそのまま支払われる。価格自体は需要と供給に従った、ダイナミックプライシングによって設定される。

話題のポイント:Leavy.coのコンセプトは「旅するミレニアルを増やすこと」。しかし旅をするために多額の借金を背負っていては元も子もありません。このギャップを埋めるために「旅をしながら稼ぐ」手段としてLeavy.coのアイデアに行き着いたと同社のホームページで語られています。

たしかに旅をする = 普段住んでいる家が空くため、その部屋を民泊化する手段は真っ先に思いつくマネタイズ方法です。とはいえ、信頼できる友人がいるなら別ですが、貸し出すとなればトラブル対応に備えてその場にできるだけ居合わせたり、細かくやり取りをしなければならない煩雑さがありました。

そこでLeavy.coでは、アプリ内コミュニティーで気軽に「Hosts on Demand(ローカルホスト)」を募集する仕組みを作りました。オーナーはホストに諸対応を安心して任せられるため、思い立った際に気軽にリスティングできるサービス設計になっています。

また、ユーザー層にも特徴があります。Leavy.coのユーザー数は6万5000人を超え、そのうち60%がミレニアル世代の女性であるとのこと。Airbnbやその他民泊プラットフォームでは、家族が所有する自宅の一室やそもそも投機目的の部屋が主流ですが、若い女性向けの物件が出揃うことで、差別化が生まれていることが予想されます。

さて、2017年に創業したLeavy.coがたった約2年間でユーザー数6万を超えるまでに成長を遂げた理由として、冒頭で紹介した前払いシステムが挙げられます。

これ、一体どういう仕組みなのでしょうか。

上述通り、同社では物件の貸し出しの有無に関わらず、ダイナミックプライシングによって設定される価格をオーナー側へ支払う契約になっています。当たり前ですが、オーナーに対して予約者が付かずに一定額を支払い続ければ、ただ損失が積み重なるだけの仕組みです。

CEOのChaouachi氏もTechCrunchのインタビューにて「もし宿泊者を獲得できなければすべてのリスクは我々が請け負うこととなります」と語っています。裏を返せばリスティングされればほぼ確実に宿泊者が集まるという仮説で運営をしているわけです。

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Image Credit: Leavy.co

ここからは筆者の仮説です。

上図に記した305ユーロは、仮にフランス・パリにて12月23日から27日までの5日間、シングルベッドの部屋を貸し出した場合にオーナーが受け取れる金額です。旅に出ている間、1日当たり、約60ユーロ(日本円で7200円)ほど受け取れるので、旅費の足しにはなりそうです。

Leavy.coが利益を生み出すためには上記金額より高値で市場に出す必要があります。失敗すれば100%の不利益です。さてここで競合となるAirbnbのリスティングを見てみましょう。

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Image Credit: Airbnb

同じ条件におけるAirbnbのリスティング価格帯は安くて1日100ドルほどです。そうです、Leavy.coの方がざっくり40%ほどのディスカウントになっています。オーナー目線でいえば、Airbnbに高値でリスティングしても利用者が現れなければ利益はゼロですから、割安でもリスクフリーで貸し出しせるLeavy.coは魅力です。

また、空室率の問題もあります。

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D.C. Policy Center

上図はアメリカ・ワシントンD.C.におけるデータになりますが、Airbnbにおける月間貸し出し率を現したデータです。NPO法人であるD.C. Policy Centerによれば、ワシントンD.C.におけるAirbnbの貸出率はほとんどが年間20日以下であり、数多くが9日以内の宿泊であることがわかっています(同データにおけるAirbnbの物件はすべて貸し切り物件、つまりLeavy.coが提供する「家」と同じ条件。)

つまり短期滞在の物件は人気なのですね。空いていない可能性が高い。

一方、Leavy.coは一つの場所を連泊前提で利用できるため、断片的に滞在場所を変えるリスクが低く抑えられます。こういった空き状況とプライシングのデータを使い、適切な提示額を導き出すことで利用客のマッチング成功率を100%に近づけているのではと考えます。

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Image Credit: Leavy.co

 

またアプリ内ではコミュニティー通貨として「Leavy Coin」を導入し、写真投稿など、ユーザーが自身の住む町に関わることでコインを獲得できます。こうしたGoogle Mapsのローカルアドバイザーのようなエコシステムを独自に設計している点も特徴でしょう。

加えて、モバイル決済「Leavy Pay」も様々な店舗で利用でき、一つのアプリ内でコイン獲得から決済機能までを実装しています。また、オンデマンドのローカルホストとしてお金を稼ぐことも可能です。

このように、コミュニティー形成と決済機能を両立させることで、自宅を民泊サービスに掲載する機会がなかったユーザーでも継続して利用できる仕様を目指しているのではないかと思います。様々な収益ポイントを設定することで「せっかく旅にいくんだったらリスティングするか」というユーザー行動を導くことができるかもしれません。

ローカルに根付きながらお金を稼げる、もしくはローカルを抜け出して遠くに旅行をしながらでも稼げる、こういった新たな経済圏のアイデアは日本でも参考になるのではないでしょうか。

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