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シリーズ:チャレンジャーバンクの世界

シリーズ:チャレンジャーバンクの世界

銀行という体験を新しく作り出しているスタートアップたちがいる。チャレンジャーバンク、と呼ばれる彼らは各国の事情、暗号資産などの新しい動きに合わせ、様々な金融体験を生み出そうとしている。その境界線はどこにあるのか。関連する話題をニュース解説や識者コラムの形式でお届けする

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シリーズ:チャレンジャーバンクの世界の話題

チャレンジャーバンクのRevolut、法人顧客が50万件を突破

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  ピックアップ:Revolut Business celebrates 3 years – and 500K business customers ニュースサマリー:Revolutは9月3日に50万人のビジネス顧客を獲得したことを発表した。3年以上前に開始したRevolutのビジネスサービスは、世界中であらゆる業界・規模のビジネスを支援している。Revolutのビジネスアカ…

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ピックアップ:Revolut Business celebrates 3 years – and 500K business customers

ニュースサマリー:Revolutは9月3日に50万人のビジネス顧客を獲得したことを発表した。3年以上前に開始したRevolutのビジネスサービスは、世界中であらゆる業界・規模のビジネスを支援している。Revolutのビジネスアカウントは月額課金で利用できる法人向けの口座サービス。無料利用も可能だが、月額25ユーロの有料版と比較すると機能に制限がかかる仕様だ。

無料版でも銀行送金・28種類の通貨交換・デビットカード・モバイルアプリ・他金融サービスへの接続など様々な機能にアクセスできるが、有料版になると、決済の一元化・24時間のサポート・利用又は決済における認証・資産マネジメントなどの機能も利用可能になる。

最近は、特にモバイルアプリの機能拡充や対応通貨の多様化、デビットカードなどの提供など、様々な新機能追加を進めている。

話題のポイント:Revolutは世界でも最大規模のチャレンジャーバンクです。競合には、N26やMonzoなどのスタートアップが挙げられますが、世界展開の規模でいえば、Revolutが現在はトップを走っていると言えるでしょう。

現状Revolutのビジネス口座は、ヨーロッパ及びスイスでのみ提供されていますが、米国とオーストラリア市場への進出も視野に入れています。日本では既に個人口座の開設がスタートしているので、そう遠くない未来に国内でもビジネス口座の提供を始めるかもしれません。Revolutはオープンバンキングを導入しているため、複数のフィンテック企業ないし金融企業は、独自サービスと顧客のRevolutアカウントとを連携し、Revolut上から金融サービスを提供することが可能です。

したがって、国内に参入していく過程で、国内の資産管理・投資・保険などのサービスを提供するフィンテック企業とコラボレーションを起こす未来も期待できます。同時に国内のモバイルバンクサービスとは競合関係になるかもしれません。

RevolutのCEOであり創設者であるNik Storonsky氏は法人顧客の対応強化をメッセージしています。

私たちは、企業がお金と時間を節約できるようにお手伝いできることを嬉しく思っています。当社のRevolut Businessウェブおよびモバイルアプリの新しい構造は、当社が準備しているいくつかの本当にエキサイティングな製品への道を開きます。ビジネスアカウントを次のレベルに引き上げるのが待ち遠しいです。

ここ数年、欧州からは画期的なチャレンジャーバンクが次々に登場し、世界中にそのビジネスを拡大しています。その中でも、日本に参入を決めたのはRevolutが初めてです。今後のチャレンジャーバンクの発展に注目が集まります。

参考記事:欧州フィンテックの新潮流「チャレンジャー・バンク」とオープン・バンキング規制改革「PSD2」を紐解く

「Revolut」は5.8億ドルの評価を獲得、チャレンジャーバンクとは何者か

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のFounder兼CEOでGeneral Partnerの百合本安彦氏が共同執筆した。 2015年、英国発のフィンテック企業「Revolut」はシリーズDラウンドのエクステンションを公表した。2月に実施した調達と合わせて5億8000万ドルの評価で8…

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のFounder兼CEOでGeneral Partnerの百合本安彦氏が共同執筆した。

2015年、英国発のフィンテック企業「Revolut」はシリーズDラウンドのエクステンションを公表した。2月に実施した調達と合わせて5億8000万ドルの評価で8000万ドルの資金を獲得したことになる。今回出資したのはTSGコンシューマー・パートナーズで、評価額は変わらないそうだ。2月に実施した内容はTCVがリードしたもので、これにより同社の累計調達額は9億1700万ドルにものぼる。紛れもないユニコーン(10億ドル評価)企業だ

グローバル・ブレインでは2018年にソニーフィナンシャルベンチャーズと共同でSFV・GB投資事業有限責任組合を立ち上げ、フィンテック企業への投資を実行している。本稿では、私たちのフィンテック領域に関する知見と共に、現在、世界中で大きなうねりとなっている「チャレンジャー(ネオ)バンク」について整理してみたいと思う。

4つの視点から見る未来の銀行

その前にまず、現在の銀行のあるべき未来像から考えてみたい。

調査会社のForresterは「未来の銀行に関するレポート」にて、4つの価値観をベースに次の10年の銀行の形を考察している。

  • Invisible(目に見えない形で動く)
  • Connected(サービス連携)
  • Insights-driven(顧客へのインサイト提供)
  • Purposeful(目的意識)

そしてこれらの価値は「顧客」「銀行」「コラボレーター(外部企業・ブランド)」の3者が密に連携することによって市場開拓が進むとしている。

具体的に何が起こるのか。大きく二つの方向性が考えられる。

最適化した金融体験の提供

今後、金融サービスはあらゆるプラットフォームと連携するようになる。例えば米VCのAndreessen Horowitz(a16z)は「Why Every Company Will Be a Fintech Company」と題したオピニオン記事であらゆる企業がフィンテック化していく世界を論じた。

従来、金融サービスを提供する際、各コラボレーターとは独立したものとなっており、顧客体験が全くの別物となっていた。例えば住宅販売企業はローン支払いサービスをシームレスに提供する必要があるが、別々のインターフェースになると顧客満足度は大きく下がる可能性がある。こうした非接続性はブランド毀損に繋がってしまう。

これらの体験は本来、1つのフローの中で完結するものである。そこで生まれた概念がBanking as a Service(BaaS)だ。金融サービスをモジュール的に扱い、顧客体験を最優先に「組み合わせて」提供する。銀行サイドは汎用性のあるAPIを用意するだけでOKだ。

例えば私たちが支援するsolarisBankはまさに、その上で動くサービスレイヤーを提供する企業になる。ベルリン発BaaS企業で、銀行サービスをオンデマンドで機能別に提供するビジネスモデルを展開している。欧州圏のフィンテック企業を中心に、決済や送金、KYC、カード、レンディングなどの銀行機能をモジュール化して提供している。

これが未来の銀行にあるべき「Invisible(目に見えない形で動く)」と「Connected(サービス連携)」の現在進行形と言えよう。

預けるだけが目的ではない

ではもう一つ、Forresterが提示する「Insights-driven(インサイト提供)」と「Purposeful(目的意識)」とは何を示すのか。

銀行はかつてのように金融資産を預けるだけの存在ではなくなりつつある。つまり、顧客の金融生活を銀行側がしっかりと理解し、どのような利用をすれば「心地よい生活を送れるのか」。そのインサイトを提供する需要が高まっているというのだ。

例えばWealthNavi(ウェルスナビ)は国内でトップクラスのロボアドバイザー・サービスなのだが、ソニー銀行と提携をし「WealthNavi for ソニー銀行」を提供している。

このように、金融資産の状況、保険の加入、住宅ローンの借り換え、こういった情報を預かるデータから導き出し、顧客に的確に伝える。顧客は金融資産の保全だけではない、より幅広いサービスの提供を求めているようになっている。

チャレンジャーバンクとは何か

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Image Credit: Revolutウェブサイト

では、こういった新たな金融に関わる体験を実現するにはどうしたらよいか。ここで生まれた概念がチャレンジャー(ネオ)バンクだ。

チャレンジャーバンクには2つの種類が存在する。銀行業免許を持つ「チャレンジャーバンク」と呼ばれる業態と、免許を自社では持たずに提携銀行を介して事業運営する「ネオバンク」だ。どちらの種類であっても、通常は専用のモバイルアプリとデビット/クレジットカードを提供するサービス形態が一般的である。主要なサービスは次のようなものがある。

Revolt、Monzo、N26:欧州で産声をあげたこの3社(RevolutとMonzoは英国、N26は独)が特に注目されることが多い。EU圏内の移住などでやってきたユーザーが手軽に銀行口座を開設し、複数の通貨をまたいで送金ができることからユーザーを伸ばしている。参考までに、Sensor Twoerのデータを元にしたこちらのインフォグラフィックによると、2019年末のそれぞれのダウンロード数はトップがRevolutで、Monzo、N26にダブルスコアをつけている状況だ。

Square、Venmo:やや議論があるのがこの「ウォレット」サービスだ。通常、これらはチャンレンジャーバンクのカテゴリではなかったのだが、特に米国でSquareとVenmoの獲得口座の数が非常に大きく、実は全ての銀行と比べてもウォレットの数の方が多いという調査結果もあって本命視する向きもあるぐらいだ。また、アカウント数が大量にあるだけでなく顧客獲得コスト(CAC)が安いのも特徴で、機能面での差別化が難しくなる中、金融商品におけるCACを下げる目的で注目が集まっている。

参考情報:Ark Investmentレポート

Varo Money:チャレンジャーバンクから免許を取得して正式な銀行に「鞍替え」した例がVaro Moneyだ。チャレンジャーバンクは通常、認可を受けている銀行と提携してサービスを提供する。しかし彼らは今年7月末にOCC(米通貨監督庁)から米国全土で銀行業務を実施できる認可を取得し、正式な国法銀行となった。オール・モバイルの正式な銀行の誕生で、これにより送金や家計簿管理だけでなく、貸付やクレジットカードなどのサービスを提供できるようになった。

日本におけるチャレンジャーバンクの可能性

Revolutの大型調達やウォレットの躍進、Varo Moneyの国法銀行化などを通じてチャレンジャーバンクの可能性について考察してきた。最後に日本における未来像も少し触れておきたい。

日本ではよく、チャレンジャーバンクの得意とする「送金」バリューが発揮できないのでは、などの指摘をされるケースがある。特に日本は一世代前の金融機関が発達しすぎてイノベーションが起こし辛い現象「Overbank」が起きている。街を歩けばコンビニで現金が下ろせる。すごく便利な国だ。

ただ、ここのブレイクスルーは必ず起こると考えている。その転機と考えられるのが、現在厚生労働省内で検討されている「デジタルマネーよる賃金払いの解禁」である。この解禁によって資金移動業者が発行するプリペードカードの利用が劇的に増える可能性がある。

つまり今まで銀行が独占的に給与受取口座を取り扱うことにより個人のお財布を握ってきたわけだが、今後は銀行口座を持たなくても給料を受けとることができるようになるのだ。

個人は銀行の支店に行くことなくeKYC1でデジタルマネーの口座を開設し、給料の受取口座として指定してしまえばプリペイドカードで各種支払いをし、生活資金が足りなければ借り入れもできるし、送金や運用も家計簿としても活用することができる。

しかもすべてスマートフォン1台あれば完結。たとえ銀行の給与受取口座をすぐに変えることができなくても、生活資金分をデジタルマネーに資金を移せば快適なマネーライフを享受することができる。

日本版チャレンジャーバンクは、非接触型経済社会の目玉となり個人の生活は一変する。そういう世界が日本でも間近に迫っているのだ。

確かに商習慣では現金がまだまだ強いが、経済合理性の面ではデジタル通貨の方が管理コストも安く、いつかはシフトしていくことになるだろう。資産管理の面でも老後2000万円問題が指摘されたのは記憶に新しいが、では、どうやってその資産形成をする?という点で明確な答えはまだない。暗号資産や投資を促すソリューションには十分なチャンスがあるだろう。

1:eKYC: electronic Know Your Customer…電子的に本人確認を実施すること

銀行機能をモジュール化、BaaS企業「solarisBank」が大型調達ーーグローバル・ブレインらも支援

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ピックアップ:Banking platform solarisBank raises $67.5 million at $360 million valuation ニュースサマリー:ドイツ・ベルリン発のBanking as a Service(BaaS)企業「solarisBank」がシリーズCで6,750万ドルを調達した。投資家はHV Holtzbrinck Venturesをリードに、Sto…

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Image Credit : solarisBank

ピックアップBanking platform solarisBank raises $67.5 million at $360 million valuation

ニュースサマリー:ドイツ・ベルリン発のBanking as a Service(BaaS)企業「solarisBank」がシリーズCで6,750万ドルを調達した。投資家はHV Holtzbrinck Venturesをリードに、Storm Ventures、Samsung Catalyst Fund、Yabeo Capital、Vulcan Capitalの5つが参加している。既存投資家にはグローバル・ブレインやSBI Groupなどの日本企業も名を連ねている。

solarisBankがエンタープライズ向けに提供するBaaSとは、銀行サービスをオンデマンドで機能別に提供するビジネスモデル。同社は主に欧州圏のフィンテック企業に対し、決済や送金、KYC、カード、レンディングなどの銀行機能をモジュール化し提供している。

当初、solarisBankは4,000万ドル程度の資金調達を予定していたそうだが、投資家サイドからの需要が予想を上回り、結果6,750万ドルという大型の資金を手にする形となった。本資金は、さらなる機能拡張に使われていくという。

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Image Credit : solarisBank

話題のポイント:BaaSは現在のフィンテック業界では比較的大きなムーブメントとして認識されています。米国のVCであるa16zも、BaaSの充実によって「全ての企業はフィンテック企業になる」とアピールしています。

世の中には様々なタイプのBaaS企業が存在していますが、solarisBankはその代名詞と言っても過言ではありません。以下は同社が提供するモジュールリストですが、全ての銀行サービスを網羅していることが分かります。

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Image Credit : solarisBank

さて、具体的にsolarisBankが提供している商品は何なのでしょうか。それは「ライセンス」と「APIモジュール」の2つです。

まず同社自体が銀行免許を保有しているため、solarisBankをインフラにするクライアント企業は銀行ライセンスを取得する必要がありません。加えて、上図にリストされている銀行機能(モジュール)に簡易的にアクセスできるAPIのおかげで、クライアント企業は開発コストを格段に下げることができます。

solarisBankは現在70以上のクライアント企業を抱えており、そのほとんどは欧州ないしドイツのフィンテック企業です。例えば、チャレンジャーバンクの「Tomorrow」や「Insha」、ビジネスバンキングを提供する「Penta」や「Kontist」、株式トレードアプリ「Trade Republic」、暗号資産アプリ「Bison」や「Bitwala」などが挙げられます。

欧州地域は日本同様に、現在でも未だ人々の外出をする要請及び規制が敷かれています。現在、筆者が在住しているドイツでも銀行支店やショッピングモールのオープン時間は制限されており、人々がオンラインの銀行アプリ及びEコマース(オンライン決済)にアクセスする機会は増加しています。

<参考記事>

以上の背景を踏まえると、solarisBankのクライアント企業のほとんどが急成長中であり、増益を記録していると考えることができます。したがって、それらのクライアント企業のサービスの機能拡張に伴う同社のAPIへの需要増加や、クライアント企業数の増加は容易に想像/期待できるでしょう。

solarisBankの収益は、モジュールへのアクセスや決済/送金から徴収される手数料から成り立っています。つまり、同社のビジネス自体も現在大きな成長を見せているはずで、投資家が目を光らせるのも当然です。

最近、同社はAmerican Expressと連携しSplitpayという分割払いサービスの提供を始めました。このモジュールを組み込むことで、ドイツのEコマースプラットフォームは、American Expressで買い物を行うユーザーに簡単に分割払いオプションを提供できるようになりました。

ドイツ国内及び欧州のいくつかの地域では、solarisBankの存在感は既に非常に大きいものです。ですが今後数年で、BaaS企業として実績を積んでいくことで、欧州全土及び世界全体へ拡大していくシナリオも考えられるのではないでしょうか。

チャレンジャーバンクから正式な「銀行」へーー米Varoが国法銀行認可を取得

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  ピックアップ:Varo raises $241 million as it aspires to become the first fintech to become a national bank ニュースサマリー:6月3日、米国サンフランシスコ発のチャレンジャーバンク「Varo」は、シリーズDラウンドにて2億3,000万ドルの資金調達を実施した。かつ同社は米国のフィンテック企業で…

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Image Credit : Varo

 

ピックアップVaro raises $241 million as it aspires to become the first fintech to become a national bank

ニュースサマリー:6月3日、米国サンフランシスコ発のチャレンジャーバンク「Varo」は、シリーズDラウンドにて2億3,000万ドルの資金調達を実施した。かつ同社は米国のフィンテック企業では初の、連邦政府の米通貨監督庁(OCC)を受けた国法銀行になろうとしている。

本ラウンドに参加したのは、Gallatin Point CapitalやThe Rise Fundを含む6つの投資家。同社の累計調達額は今回を含めると約4億2,000万ドルに及ぶ。また本調達資金は、新プロダクトの開発及びサービス拡大に投下されるという。

TechCrunchによれば、Varoの口座開設数は現時点で約200万アカウントで、2020年初めと比較して60%の上昇を見せているという。さらに昨年同時期と比較し、Varoを通した消費は1.5倍に、預金額は3.5倍に上昇している。

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Image Credit : Varo

話題のポイント:米国には2種類の商業銀行があります。一つは州政府からの認可を受けた州法銀行で、もう一方には連邦政府からの認可を取得した比較的少数の国法銀行と呼ばれる銀行が存在しています。

大きな違いは連邦準備制度の加盟義務の有無で、国法銀行はより厳格な監督を強いられる代わりに、より様々な業務を提供可能です。したがって、同社が認可を取得すれば、米国史上初の「オール・モバイル銀行」として、預金や貸付、クレジットカード業務など事業の多角化を進めていくことができるようになります。

Varoはフィンテック企業では初めての、FDIC(連邦預金保険公社)の認可を取得した企業です。もし今回の認可をも取得することができれば、Varoは米国チャレンジャーバンク市場の中でさらに有利かつ特権的ポジションにつくことができるでしょう。

米国で勢いを増すChimeやMonzo、N26などを代表とする他のチャレンジャーバンクは、Varoとは異なり米国の銀行がスポンサーとすることでサービスを提供しています。言い換えれば仲介業であり、コンプライアンス遵守業務などを既存銀行に外注し、ライセンス取得を回避しているのです。そのため提供可能なサービスの種類も限られています。

Varoへの認可が降りるのは今年の夏頃になる予定だといいます。新型コロナウイルスを要因としたロックダウンが未だ影響を及ぼしている社会状況で、モバイルバンクには追い風が吹いています。

<参考記事>

コロナ危機が変えた、今知っておくべきフィンテック6大トレンド

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ピックアップ:Crisis Innovation: 6 big trends that financial services can take advantage of right now ※こちらの記事の内容は PodcastとしてStand.fm又はSportify(以下埋め込みリンク)で聞くことも可能です。 21世紀に入って以降、我々は今回の新型コロナ危機を含め計3回に及び、金融市場のクラッ…

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Image Credit : Pixabay

ピックアップ:Crisis Innovation: 6 big trends that financial services can take advantage of right now

※こちらの記事の内容は PodcastとしてStand.fm又はSportify(以下埋め込みリンク)で聞くことも可能です。

21世紀に入って以降、我々は今回の新型コロナ危機を含め計3回に及び、金融市場のクラッシュを経験しています。記憶に新しいですが、一度目はドットコムバブルで、二度目がリーマンショックです。しかし今回のパンデミックによる経済危機には、過去二回の危機と決定的に異なる点があります。

それは、危機の要因が金融市場を発端としていない点です。思い返せば、ドットコムバブルは新興テック企業に対する過剰な投資、リーマンショックは金融システムの根本的な失敗を要因としていました。

以上を踏まえると、「今回のパンデミックでは、過去二回の危機に比べ金融産業に対する人々の不信はさほど低下してはいない」と考えることできます。つまり、今回のクラッシュを過去の暴落時と同じように悲観する必要はないということです。

見方を変えれば、むしろ今起きているロックダウンなどの環境は、特にフィンテック・スタートアップなどにとって大きな成長チャンスだと捉えることもできます。実際にここ数週間、オンライン決済やモバイル金融アプリの利用増加は至る所で観測可能です。

<参考記事>

改めて整理しておきたいのは、今この状況下でフィンテックはどのような環境にあり、どのような変化を問われているのかという点です。そこで以下では、現在進行形で進んでいるフィンテック領域のビッグ・トレンド6つを紹介します。

これらのトレンドを把握することで、フィンテック関連企業は今後の戦略を考える上でのヒントを得られるでしょう。

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1:レガシー金融産業の衰退

伝統的な金融機関のシステムは、我々の想像を超えるほど時代遅れな状態にあります。ある調査では、金融機関は他産業と比較して圧倒的にデジタル化率が低く、55%の銀行が十分なデジタル化を達成することができていないといわれています。

2017年にAccentureやIBMが実施した調査によれば、43%の銀行システムは未だ1959年に誕生した言語COBOLで構築されています。現在米国では失業申請が急増していますが、COBOLエンジニアの不足が現場対応の遅延を招いているとの報道もあります。

外出自粛を要因にモバイルバンクが台頭する一方、支店サービス及びATM利用は激減し、既存銀行は苦しい状況に立たされています。今となっては、ほぼ全ての銀行がオンラインでサービスを届ける手段を模索していることでしょう。

フィンテック企業は、レガシーな銀行向けに新しいデジタルシステムを提供することができます。例えばOpenLegacy社は、API接続を容易にすることで、古びた銀行コアシステムをウェブやモバイル、クラウド世界に拡張させることが可能です。

2:リモートワークによるセキュリティリスクの拡大

今となっては日常と化してきているリモートワークですが、金融機関がリモート移行に関して最も懸念しているのは、生産性云々ではなくセキュリティリスクの増大です。VPN(仮想プライベートネットワーク)を活用し安全な通信の確保に務めるのは不可欠ですが、そのような処置だけで十分だという保証はどこにもありません。

<参考記事>

上記記事のように、在宅勤務が狙い目となりサイバー攻撃を許してしまうケースが発生しています。つまり、金融及びフィンテックセクター向けのセキュリティ企業の出番ということです。

例えば、ITsMine社は、企業のコンプライアンス遵守を妥協しない、予測的な組織データ保護ソリューションを提供しています。PerceptionPoint社が提供するような、マルウェア攻撃の検知システムなどの需要も高まっていくでしょう。

3:完全オンラインのカスタマー対応ツール需要

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現在の金融及びフィンテック企業は、顧客を支店に招いて相談やセールスを実施することが厳しい状況にあります。そこで必要となるのが、完全オンラインで顧客とコミュニケーションを取る新しい手段です。

一般的にはコールセンターの拡充やZoomを利用するなどのアイディアが考えられますが、よりテクノロジカルな方法として、AIチャットボットの導入が増加しています。

インシュアテックのユニコーンLemonadeやその他いくつかの先進的なフィンテック企業は、既にAIチャットボットを実装済みです。これに続く形で、今後はよりレガシーな金融機関もAIチャットボットの導入に踏み切ると予想されます。

<参考記事>

4:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

RPAはAIを搭載したソフトウェアによって、従来ホワイトカラーが行っていた作業を代行・自動化する概念です。以前からも注目を浴びていたコンセプトではあったものの、新型コロナ危機によって企業は一層の自動化及び作業効率化を必要としており、RPAへの需要も増加しています。

<参考記事>

Blue Prism社は既にRPA領域の大手ですが、つい先日1億ドルの調達を実施しました。最近では、Kryon社のRPAのように、「何のタスクを自動化すれば良いか」という判断を自動的に決定し、その上で自動化プロセスを実行するソフトウェアもあるといいます。

5:デジタル・アイデンティティ

銀行情報や医療情報、位置情報など、自分自身に関する全ての情報をデジタルIDに紐付け可能だとしたら、なにが可能になるでしょうか。おそらく、新型コロナウイルス感染拡大を抑制するトラッキングアプリの実装がより簡易化することでしょう。

例えば、完全オンラインでビザ申請を済ませ、デジタルIDにビザ取得証明データを紐付けることで、渡航をスムーズに行うことができます。現在は役所も閉まっていますし、ソーシャルディスタンス実現の観点でも有効なアイディアでしょう。医療情報と位置情報を紐付け可能であれば、認証一つで自分が非感染者であることを簡単に証明できるかもしれません。

<参考記事>

フィンテック産業は、本人確認手続き(KYC)の簡易化やデータの利活用の観点で、デジタルIDの実現を長年に渡って求め続けてきました。課題としては、セキュリティはもちろん、プライバシーに対する懸念や標準化不足などがあります。そのため先進国においても、完全なデジタルID社会の到来はまだ先の話になると考えられるでしょう。

しかし先ほどの例を踏まえると、今回を機にデジタルIDの実装は加速する可能性があると考えられます。生体認証や認証などのセキュリティ技術も発展してきているため、今後のフィンテック産業は、デジタルID社会を見据えた方向へシフトしていくと予想されます。

6:キャッシュレス

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キャッシュレス化が加速する、あるいは叫ばれる要因は二つあります。一つ目は非接触型決済の増加。二つ目は中央銀行が発行するデジタルマネーの需要です。一つずつ見ていきましょう。

大袈裟な主張かもしれませんが、キャッシュ(紙幣及び硬貨)は、デジタルマネーと比較し、人間同士の直接的な接触を引き起こしやすい取引形態です。加えて、現在は外出自粛下ですから、ECやフードデリバリーの注文に際したカードや電子マネーの利用機会が増えています。

そして現在注目すべきは、今回の危機に対する経済刺激対策の一環として、中央銀行デジタル通貨(CBDC: Central Bank Digital Currency)の必要性が叫ばれている点です。これは中国のデジタル人民元のことではなく、米国の下院金融サービス委員会が提案した、米国の経済刺激策の手段としての”デジタル・ドル”の話です。

完結に話すと彼らはデジタル・ドル及びデジタル・ドル・ウォレットを実装することで、経済援助、すなわち現金給付を効率化できると主張しているのです。これは、銀行口座への送金よりも、ウォレットへのデジタルドル送金の方が業務上低コストだという理屈に基づきます。(※詳細

上記法案は結果的に否決されるに至りましたが、もし米国が中央銀行デジタル通貨が実現する未来があるとすれば、フィンテック業界に与える影響はさぞ大きなものになることでしょう。

チャレンジャーバンク vs 既存銀行のリテール勝負に決着?

ここまでも述べてきたように、現在のような状況下では人々は銀行支店営業は難しく、かつユーザーも同様に支店へ足を運日ません。そこで代替策として利用されるのが、チャレンジャーバンクなどと呼ばれる金融モバイルアプリです。

<参考記事>

つい先日、ドイツ発のチャレンジャーバンク「N26」が1億ドルの資金調達を完了し、同時に500万ユーザーの突破を発表しました。昨年4月時点の250万人から2倍増と、勢いは止まりません。

<参考記事>

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Image Credit : N26

CNNによれば、N26の各地はATM利用は半減しましたが、65歳以上のユーザーによるオンライン決済利用が激増しているといいます。今回の危機をきっかけに、ついに高齢層もモバイルバンクを利用する時代に突入したのです。

今回の危機は、チャレンジャーバンクには追い風以外の何者でもありません。未だ確立されたビジネスモデルを作り出していない点が懸念されていることは事実ですが、既存金融と比較して圧倒的に有利な状況下にいることは明白です。

さて、6つのフィンテックトレンドを紹介することで、新型コロナ危機によって生じているフィンテック市場の変化を整理しました。インターネット上での決済及び金融サービスの利用を可能にするフィンテックは、まさにこの時のためにあったのかもしれません。今後のフィンテック市場の成長にも一層期待が高まります。

Banking-from-homeが追い風、チャレンジャーバンクN26が倍増の500万ユーザー獲得

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ピックアップ:N26 raises more than $100 million in extension of its Series D funding ニュースサマリー:ベルリンを拠点とするチャレンジャーバンク「N26」は5日、シリーズDのエクステンションラウンドにて1億ドルの資金調達を実施したと発表した。昨年から続く同ラウンドで同社は5億7000万ドルの調達を目指しており、評価額は変わらず3…

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ピックアップ:N26 raises more than $100 million in extension of its Series D funding

ニュースサマリー:ベルリンを拠点とするチャレンジャーバンク「N26」は5日、シリーズDのエクステンションラウンドにて1億ドルの資金調達を実施したと発表した。昨年から続く同ラウンドで同社は5億7000万ドルの調達を目指しており、評価額は変わらず35億ドルとなる。

話題のポイント:たった8分で新規口座開設を売りにした「N26」は、欧州を中心にモバイルファーストなFintechスタートアップとして躍進を遂げていました。今回のリリース時点で、ユーザー数は500万人を突破したとしています。これは、なんと昨年4月時点のユーザー数250万人から2倍の成長を記録していることになります。

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また、米国におけるユーザー数も着々と増加しており、今年2月の時点で約25万人のユーザーを獲得したそうです。ユーザー数の面においては順調な成長を遂げているN26ですが、同社の最終的な目標となる世界を股にかけたデジタルバンクという面では、UKのBrexitにより撤退を余儀なくされるなど、真のチャレンジャーバンクを目指すからこその課題が浮き彫りとなりつつある状況でした。

そうしたマイナス面や、COVID-19ショックと調達タイミングが重なったこともありキャッシュフローに不安要素があるのではといった指摘もあったようです。しかし、同社ブログで「Banking-from-home」と表現されているように、コロナによりより一層デジタルバンクの需要と存在意義が向上したことは間違いないでしょう。

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CNBCによれば、COVID-19以降においてN26の主要都市のATM利用率は半減しているが、65歳以上のユーザーによるN26を通したEコマース利用が劇的に増加していると報じています。また、以前筆者のドイツ滞在記でお伝えしたように、N26の本社があるドイツ・ベルリンはチップ文化が伝統的に根付いているため、日本のキャッシュレス決済率(18.4%)より低い数字(14/9%)を記録していました。

しかし、COVID-19感染防止の観点からキャッシュによる支払いが「好ましくない」といった世界的トレンドに移行しつつあります。これは、今までその国の文化からキャッシュレスへと抜け出せなくなっていたものを、半強制的にキャッシュレスへと導く可能性が高いことを示唆しています。

N26の目指す世界的なデジタルバンクの世界観はいずれくるだろうと言われていましたが、COVID-19が生じたことによりその世界観が訪れるまでのスピードは格段に早まったように感じます。

ロンドン発〝銀行版Stripe〟のRailsbank、シリーズA+ラウンドでグローバル・ブレインから資金調達——2020年4Qにも日本市場に参入へ

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ロンドンを拠点にオープンバンキング API などを提供する BaaS(Banking as a Service)スタートアップの Railsbank は7日、グローバル・ブレインから資金調達を受けたことを明らかにした。調達ステージはシリーズ A+ ラウンドで、昨年9月に1,000万米ドルを調達したシリーズ A ラウンドのエクステンションラウンドとなる。グローバル・ブレインからの調達額は明らかになっ…

Image credit: Railsbank

ロンドンを拠点にオープンバンキング API などを提供する BaaS(Banking as a Service)スタートアップの Railsbank は7日、グローバル・ブレインから資金調達を受けたことを明らかにした。調達ステージはシリーズ A+ ラウンドで、昨年9月に1,000万米ドルを調達したシリーズ A ラウンドのエクステンションラウンドとなる。グローバル・ブレインからの調達額は明らかになっていない。Crunchbase によれば、Railsbank の累積調達金額は1,440万米ドル。

Railsbank は、Nigel Verdon 氏(現 CEO)により2015年に設立。Verdon 氏は2008年に設立された国際送金 API を開発する Currencycloud の創業者で元 CEO だ(ちなみに、Verdon 氏は Railsbank の業務に集中すべく Currencycloud の CEO を2017年に退任した。Currencycloud は今年1月、シリーズ E ラウンドで日本の SBI や Visa から8,000万米ドルを調達している)。

クレジットカードの決済の分野で言えば、Stripe が導入した RESTful API を使った決済インターフェイスにより、この分野の事業形態がかなり民主化されたと言える。モバイルアプリや Web アプリの中にクレジットカード決済の仕組みを包含できるようになったからだ。Railsbank が実現しようとしているのはバンキング(銀行業務)におけるそれであり、さまざまなアプリに Railsbank の API が連携されることで、ユーザは銀行アプリや銀行や銀行インターフェイスを介さずに、送金・入金・出金などが可能になる。

新型コロナウイルスの影響でフランス国内に足止めを食らっているという Verdon 氏は、BRIDGE のインタビューに対し、具体的なユースケースを次のように教えてくれた。

銀行サービスは銀行から離れていき(銀行サービスのアンバンドル化)、一方で、(スーパーアプリをはじめとする)テック企業が金融プラットフォームやブランドへと移行するだろう、というビジョンを持っている。

ユースケースとしては、ギグエコノミー(ギグワーカーへのアプリ経由の報酬支払など)、フィンテック企業、それに、スーパーマーケットが自社ブランドで銀行サービスを提供するような事例に用いられるようになるだろう。(Verdon 氏)

創業メンバー。前列右が CEO Nigel Verdon 氏、前列中央が COO Clive Mitchell 氏。
Image credit: Railsbank

Railsbank はこれまでヨーロッパを中心に展開してきたが、昨秋、Visa とのパートナーシップを発表、シンガポールをはじめとする東南アジア市場への進出を果たした。今後、日本とオーストラリアへの進出を目論でおり、今回のグローバル・ブレインからの資金調達はそれを念頭に置いたものだ。Verdon 氏はグローバル・ブレインの知見を得て適切なパートナーを獲得し、今年第4四半期に Railsbank 日本市場進出を目指したいと語った。

Verdon 氏が語った Railsbank のユーザとなり得るフィンテック企業にはチャレンジャーバンクが含まれる。日本では、先頃シリーズ C ラウンドで47億円を調達した Kyash や、元ベリトランス沖田貴史氏を迎えた WED がチャレンジャーバンクに参入することを表明している。東南アジアでは、SingTel と Grab、LazerSea などがシンガポールのデジタルバンク免許を申請した。

一方 BaaS の分野では、アメリカでは Green Dot や Plaid、イギリスでは Dozens、ドイツでは SBI も出資する solarisBank といったスタートアップが頭角を表しているほか、Standard & Chartered Bank も先月、「nexus」という BaaS プラットフォームをインドネシア向けにローンチした。日本ではインフキュリオン・グループが先月、新生銀行グループの「BANKIT」に BaaS プラットフォームの提供を明らかにしている

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実は日本よりキャッシュレス後進国、滞在でみえた「お金体験アップデートのチャンス」とは

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2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。 ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。 今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば…

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2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。

ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。

今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば、日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18.4%となっています。キャッシュレスの首位を独走する韓国が89.1%、その次を行く中国が60%と、日本社会のキャッシュレス比率が同じアジア圏でも大きく差が出ていることが分かります。

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キャッシュレスビジョン2019

ではドイツはというと、日本の更に下、キャッシュレス決済比率14.9%を記録し、現金至上主義な社会であることが示されています。

理由として、財務省のレポートにもあるように、同国の歴史的背景に由来する、キャッシュが持つ「匿名性」の影響が挙げられます。レポートでは、第二次世界大戦時に中央政府による市民の監視が影響しているのではと述べられています。

「ベルリンの壁が崩壊したのは1989年であり、30年余が経過したものの、東西分断の痕跡は現在のベルリンにも少なからず見て取れる。当然、都市を分断した「中央監視」に関連して刻まれた記憶と感情は消えておらず、匿名性の価値が、インターネットの時代に改めて想起されたとしても不思議ではないであろう」ー財務省発表、スウェーデンのキャッシュレス化・ドイツのキャッシュレス化(下)ドイツ編より引用

以上より、中央管理を避ける風潮が国民文化としてのキャッシュを好むカルチャーを作っている一つの大きな要因だと考えられます。例えばドイツ銀行が公開したデータのように、ドイツにおけるデビットカードの保有率が大変高い状態にあるのもその裏付けのひとつと言えます。

Captureさて、話をベルリン拠点のチャレンジャーバンク「N26」に戻しましょう。同社のユーザー数は2019年4月時点で約250万人(※)とBusiness Insider Intelligenceに報じられています。N26はドイツ拠点というだけで、EU圏の対応国に住所を持っていれば誰でも口座開設可能です。

※補足修正:記事初出時に25万人と誤記しておりました。正しくは250万人が引用元記事の情報です。ご指摘いただきありがとうございます。

ドイツの人口は2018年時点で約820万人。同社からユーザーの居住国は公開されていませんが、ドイツ人ユーザー数はそこまで多くないのではと感じています。というのも前述の通り、キャッシュを好む傾向から、キャッシュレス決済といったチャレンジャーバンクならではの価値提供が見込めないからです。

実際、筆者は昨年末にドイツ・フランクフルトに滞在していたのですが、到着するまではいくら現金を好むといえ、フランクフルトのような大都市であれば生活に困らない程度でクレジットカード決済可能だろう、そう思っていました。

しかし、たとえばローカルのコーヒーショップやレストランなどは基本入り口に大々的に「CASH ONLY」と貼られており、大通りを歩いていてもカード決済可能な店舗を探すのに一苦労といったレベルです。カード支払いがほとんどできない有様でした。

改めてドイツ銀行が公開したデータを見ると、2017年におけるドイツ人のキャッシュ利用率は全体の74.3%。次いでデビットカードが18.9%を占めており、クレジットカードはたったの1.6%しかありません。ここで着目すべきなのは2008年からの変動率の少なさでしょう。

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Payment behavior in Germany 2017

2008年においてキャッシュ利用率は全体の82.5%で、実際に年々下降してるとはいえ約10年間で8%ほどのみがキャッシュレスへ動くのみとなっており、これは非常に小さな割合だと言えます。つまり、ドイツにおいて「銀行」に求められているのは昔ながらといえる「お金の安全な保管」だけなのです。

極端な比較となりますが、UBSのデータによれば、中国では2010年時点での現金決済比率が全体の約65%を占めていたのが、2020年には約半分となる30%程度に収束するだろうといったレポートを算出しています。

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UBS

中国ではAlipayやWeChat PayなどのQR決済がこのトレンドの要因となっているのは明確です。ドイツでも多くのフィンテック・スタートアップが本拠地を置いてあることを考慮すれば、本来はキャッシュレスのムーブメントが起きていてもおかしくありません。しかし、現実はその逆でした。

キャッシュレスの壁「チップ文化」

ドイツが「匿名性」を理由にキャッシュを好んでいるのは事実でしょう。ただ、ドイツが国として世界のキャッシュレストレンドに感化されない要因は他にもありそうです。

ローカルカフェで働いている20代の男女バリスタに話を聞いてみたところ、揃って「金銭的に自立した職種として認められるためにキャッシュ(チップ)が必要なんだ」といった答えが返ってきました。ドイツ滞在で実際にカードで支払いをして気が付いたことは、クレジットカードのマシーンにそもそもチップを上乗せして会計するステップが用意されていません。

これはアメリカのようにクレジットカードを通したチップ付与であると店舗全体で総分配になる反面、キャッシュであればそのまま個人の収入へと繋がることを意味しています。

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こうした社会的問題とキャッシュレスを考えたとき、ふと思いついたのはコーヒースタートアップ「Bellwether Coffee」です。

<参考記事>

同スタートアップは、コーヒー購入者が直接コーヒー栽培農家に「投げ銭(チップと表現してもいいでしょう)」を送金できる焙煎機を開発し、途上国の違法児童労働問題の解消を目指しています。

ある意味では、キャッシュレスだからこそスムーズにエコシステムが形成されていると言えます。直接的に従業員へ現金をチップしたいという気持ちがあるならば、それをそのままデジタライズさせることも可能と考えます。

ということでドイツ滞在からみえた「キャッシュレス途上国」の課題を考えてみました。

現金で成り立っているチップ文化をわざわざ壊してまでデジタライズさせるためには、さらにクリティカルな価値提供が求められることは間違いありません。そういった意味でN26のようなフィンテック企業が、チップのような細かい体験を各国の文化に合わせてアップデートしていけば面白いことになるのではないでしょうか。

こういったキャッシュ至上主義国家におけるチャンレンジャーバンクには、お金にまつわる体験をアップデートする役割も期待されます。

今後もN26を始めとして欧州発のチャレンジャーバンクが勢力を増し、グローバルになっていくと思います。こうした流れを理解したうえで、フィンテック・ソリューションを開発できれば、日本でもお金に対する文化を根本的にアップデートしていけるのではないかなと思います。

欧州フィンテックの新潮流「チャレンジャー・バンク」とオープン・バンキング規制改革「PSD2」を紐解く

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「Revolut」が5億ドルを調達、「Monzo」が1億5000万ドル、「N26」は3億ドル、「Starling bank」2億ドル。以上は2019年内に報じられた、欧州発のデジタル銀行スタートアップによる資金調達(※または調達見込み)です。上記企業らは全てローンチからわずか5年以下で、凄まじい勢いで成長する「チャレンジャー・バンク」と呼ばれる新しい銀行ビジネスです。 「チャレンジャー・バンク」と…

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Revolut」が5億ドルを調達、「Monzo」が1億5000万ドル、「N26」は3億ドル、「Starling bank」2億ドル。以上は2019年内に報じられた、欧州発のデジタル銀行スタートアップによる資金調達(※または調達見込み)です。上記企業らは全てローンチからわずか5年以下で、凄まじい勢いで成長する「チャレンジャー・バンク」と呼ばれる新しい銀行ビジネスです。

「チャレンジャー・バンク」とは何なのでしょうか。初めて聞くという人も多いと思います。そこで本記事では、チャレンジャー・バンクと呼ばれる新興スタートアップらの概要・動向を紹介します。またそれを軸に、欧州のオープン・バンキングの歴史・最前線の現況についても解説します。

日本でも最近、オンライン・バンキングや銀行APIの制度化が叫ばれており、欧州の先行事例は、国内の業界関係者は必ず知っておくべき内容でしょう。

チャレンジャー・バンクとは

さて、第一にチャレンジャー・バンクとは何でしょうか。チャレンジャー・バンクとは欧州を中心に台頭する、銀行免許を保持したデジタル銀行スタートアップのことを指します。欧州の銀行ライセンス取得の簡易化・銀行APIの解放、すなわち「オープン・バンキング」というコンセプトを基に急成長した巨大フィンテック企業のことを指します。

起源としては、2008年の金融危機に関連して、2010年以降より英国政府が国内の主要大手銀行の寡占状態に終止符を打とうと、新規参入者へ銀行免許の付与を開始したことが始まりです。そのため今でも、英国発のチャレンジャー・バンクらが欧州市場をリードしている状況です。

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Image Credit : Challenger Banks in Europe. 2019 Overview

チャレンジャー・バンクのサービスをより具体的に噛み砕くと、銀行免許を所持し、かつスマホ・アプリから手軽に口座開設・入出金・送金・両替(外貨・暗号通貨対応)融資・資産運用・保険など、ほぼ全ジャンルの金融サービスを利用できるモバイルバンキング・ビジネスを指します。

端的に言い換えれば、金融機関の業務の中でも個人や中小企業などの顧客を対象とした小口の業務を行う「リテール業務」を全てスマホアプリに移行したものだと捉えることができ、それに加えてVisaやMasterなどの国際ブランドと連携することでオンライン・実店舗での決済用カードの提供まで行なっています。

これらのアプリは、欧州圏の銀行が提供するリテールサービスが元々利用しづらかったこともあり、デジタル・サービスの利用に抵抗の少ない若者やテッキー(テクノロジーに長けている人)を中心に急拡大していきました。

少し事例を紹介すると、イギリス発の「Revolut」や「Monzo」、ドイツ発の「N26」は中でも特に有名で、各社とも既にユニコーン企業となっており、現在では欧州市圏外にも目を向けています。Revolutは日本市場参入を決定し、N26はすでに米国市場でサービスを展開しています。

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Image Credit : 14 Hottest Digital-First Challenger Banks by Country in Europe

その他にも欧州各地からチャレンジャー・バンクが登場し、現在では既存のオフライン銀行を圧倒する大きなムーブメントとなっています。その勢いは海外にまで波及し、今や米国や南アメリカにも、各地域から急成長するチャレンジャー・バンクビジネスが登場しています。

<参考記事>

ただし、欧州のチャレンジャー・バンクの成長の土壌となったのは、何も各国が銀行免許の認可数を増加させたからというだけではありません。近年、銀行免許を取得したオンライン銀行らの後押しをするように、銀行APIの解放とその標準化といった、新たな規制改革が欧州全体で行われています。

欧州のオープン・バンキング規制改革「PSD2(Payment Service Directive 2)」

PSD2(決済サービス指令2)という法制度をご存知でしょうか。PSD2は、欧州が世界に先駆けてオープン・バンキングを推進するため、そしてセキュリティ・市場競争・消費者保護などの向上を目指し、2016年にEEA(欧州経済領域)各国に向け発行された法的枠組みです。

※EEA=欧州28ヶ国に加え、ノルウェー・アイルランド・リヒテンシュタインの3カ国を加えた地域共同体で、人・物・金・サービスの移動の自由を促すことを目的とする。

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青・緑の地域がEEA加盟国 Image Credit : Wikipedia

2018年にはメンバー各国がPSD2に準拠する形で各々で法整備を整え、その後各銀行によりAPI解放が実施されました。ちなみに同制度は、2007年に誕生した欧州内の決済標準化を推進するための枠組み「PSD」のバージョン2に当たります。

PSD2の施行によって、欧州の各銀行のAPI解放と、フィンテック事業者との接続が義務化され、各国規制当局に認可を受けた事業者らは顧客の同意の下、リクエストに応じて銀行から顧客データを自由に取得したり、決済処理を行えるようになりました。

具体的には、PSD2でAISP(Account Information Service Provider)とPISP(Payment Initiation Service Provider)という2つの免許があります。前者AISP事業者は、ユーザーの口座情報を取得する権限を持ち、後者PISP事業者は、銀行の資金移動APIを活用する権限を持つため、ユーザーに対し決済サービスを直接提供することができます。

※参考:英国のPSD2取得企業リスト

これらを日本の改正銀行法と比べると、以下の図のようになります。日本の場合は銀行のAPI解放が努力義務に止まり、かつフィンテック事業者は各行と個別契約を結ばなくてはならないなど、力強さに欠ける印象があります。

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Image Credit : インフキュリオン

話をPSD2に戻すと、前者AISP業者は、資産マネジメントや家計簿アプリなどをイメージすると分かり易く、後者PISP業者は、ECや送金など、決済全般に関わるサービスを提供するアプリを思い浮かべると良いでしょう。ちなみに両方のライセンスを有し、活用しているサービスも沢山存在しています。

事実、同枠組みの施行によって、欧州チャレンジャー・バンクの顧客数増加にさらに拍車がかかっています。というのも、PSD2によって同企業らがオンライン・バンキングサービスを構築することが非常に簡単になったからです。また、PSD2を活用して成長した便利な金融サービスがチャレンジャー・バンクのアプリへと組み込まれるなど、様々な面でプラスの効果を生んでいます。

さらに「Solaris Bank」などの、部分的にバンキング・サービスを運営するテック企業向けに、PSD2による銀行APIを活用したインフラサービスを提供するビジネスモデルも登場しています。このようなモデルは「Banking as a Service」と呼ばれ、チャレンジャー・バンクと肩を並べ勢いを増す、フィンテックの潮流の一つです。

<参考記事>

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Image Credit : Pixabay

欧州フィンテックを知る意義と、さらなるデジタル化

日本のフィンテック業界の起業家・投資家のリサーチ対象といえば、米国のシリコンバレーや大手銀行のデジタル化もそうですが、今は絶対的に「Ant Financial(螞蟻金融)」や「Tencent(騰訊)」が牽引する中国のフィンテック・エコシステムだと思います。

<参考記事>

ですが、欧州の動向も決して無視できるものではなく、むしろ日本人としては注視すべきだと思います。なぜなら国内の規制改革の動向を見るに、日本の銀行法は英国・欧州の改革を大いに参考にしているからです。その他の国に比べると、より似た規制制度を持ち、かつ少し先行する欧州のエコシステムから学べることは、決して少なくありません。

銀行法がさらにPSD2に類似していき、オープン・バンキングが進行すると考えると、現在の欧州のトレンドに追随する形で、日本国内からもチャレンジャー・バンクやBanking as a Serviceに類似したビジネスモデルのスタートアップが登場してくると予想できます。

そしてこうした視点を取っ払ったとしても、欧州のフィンテックの今後には大いに興味を惹かれます。というのも欧州連合、及びその周辺地域におけるPSD2や、その他の決済インフラの標準化政策は、世界でも前例のない超国家的な金融システムの構築を意味するためです。これは地球規模で考えて、地域・経済・通貨統合を検討する地域にとっての先行事例として、価値ある取り組みだと思います。

聞けば先日、ECB(欧州中央銀行)がステーブルコイン発行に向けた内部検討に着手したといいます。中国のデジタル通貨計画(DCEP)は、単一国家の法定通貨によるデジタル・マネーに過ぎませんが、ユーロ版ステーブルコインの場合は、ユーロが既に国家共同体による共通通貨であるため、アフリカ諸国などが検討する通貨統合と、そのデジタル化の先行事例にもなり得ます。

欧州連合を一つの国家だと捉えると、そのGDPは18兆ドルと、アメリカを超えて世界で2番目の規模になると言われています。英国の離脱問題やドイツ銀行の破綻危機などネガティブなニュースも絶えませんが、今後もグローバルな経済を牽引する存在としての役割は変わらないでしょう。

話が若干それてしまいましたが、最初はチャレンジャー・バンクというホットな切り口から、最後は出来るだけ視点を広げる形で欧州のフィンテック概況を解説しました。日本がさらなるオープン・バンキング改革を実施し、チャレンジャー・バンクやBanking as a Serviceなどのサービスが台頭する日は必ず来ると思います。そのために、いま現在で既存銀行やフィンテック事業者らにどんな対策ができるのかが問われています。

スタートアップ専用銀行「Mercury」がa16zから2000万ドル調達、その人気の理由とは

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ピックアップ:Mercury banks $20M for its banking service aimed at startups ニュースサマリー:スタートアップ特化のオンライン銀行「Mercury」は26日、シリーズAにて2,000万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはCRVが参加し、既存投資家のAndreessen Horowitzも同ラウンドに参加した。また新たにWil…

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ピックアップMercury banks $20M for its banking service aimed at startups

ニュースサマリー:スタートアップ特化のオンライン銀行「Mercury」は26日、シリーズAにて2,000万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはCRVが参加し、既存投資家のAndreessen Horowitzも同ラウンドに参加した。また新たにWill Smith’s Dreamers Fundや複数の個人投資家も参加している。

Mercuryはスタートアップに特化したオンライン限定の銀行サービスを展開している。銀行業としての基本的な機能のほかに、スタートアップのニーズに特化したサービス設計やインターフェースの構築を施している。

TechCrunchによれば、同社が創業した2019年4月の初週にて1,500名の事前登録あり、月間40%の増加率を記録しているという。

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話題のポイント:Mercuryのようなオンライン展開の銀行は「チャレンジャーバンク」と呼ばれています。銀行業務ライセンスを取得し、既存銀行と同様のサービスを提供するオンライン銀行を指します。実店舗を持たずオンラインのみで金融業を完結させる近年のフィンテック市場にて急成長を遂げている事業エリアです。

著名なチャレンジャーバンクにはイギリス発の「OakNorth」「Monzo」「Revolt」、ドイツ発の「N26」が挙げられます。大半がヨーロッパを発祥であり、グローバル市場へ進出中だという印象です。

米国発のチャレンジャーバンクではミレニアル世代をターゲットした「Chime」などが台頭しつつありますが、ヨーロッパ市場の盛り上がりには劣る感じがします。

では、米国において需要がないのかというとそんなことはなく、たとえば上述したChimeは2018年時点で開設口座数が100万を突破しており、「チャレンジャーバンク」の概念がユーザーに浸透し始めている過渡期といえます。

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Chimeは完全オンライン型、デビットカードの発行も実施している

ChimeがB2Cモデルなのに対し、今回取り上げたMercuryはB2Bなため、上述したOakNorthと同様のビジネスモデル確立を目指しています。その上でスタートアップ領域に特化していると受け取れます。

スタートアップ向けに法人クレジットカードの提供をおこなう「Brex」は米国でも大変注目されているスタートアップですが、ビジネスモデル的にMercuryはBrexのデビットカード版ということになるでしょう。

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Mercuryの競合として「Silicon Valley Banks」や「Wells Fargo」など、老舗銀行の中でもスタートアップに対しも口座提供を行ってきていた銀行が挙げられるでしょう。ただ、上記2社は決してスタートアップに特化しているわけではありません。そのため、スタートアップのための銀行であるMercuryに創業初期の企業からの問い合わせが集まることが予想されます。

では、実際Mercuryの競合となるのはだれか。同社の競合はどちらかといえばテクノロジーベースで「銀行業」に踏み込む企業が当てはまるでしょう。たとえば「TransferWise」を将来的な競合と考えるべきではないでしょうか。

手数料を極限まで抑え国際送金を可能とするサービスとして著名なTransferWiseですが、新事業として「TransferWise Boarderless」を始めています。同サービスでは、海外にいながらもある特定の通貨を保有可能な銀行口座を開くことができ、現段階で40以上もの通貨を扱っています。

加えて特筆すべきなのは、米国において公共料金の支払いや給料の振り込みなどに必要なACHや銀行間送金に必要なWire Transferの番号が割り振られている点にあります。これは日本の銀行にはなく、米国独自のシステムなため、たとえば米国への留学生が大学側へ授業料支払いをする際などに非常に役立つことが想定されます。

海外にいながらもある特定の通貨を保有可能な銀行口座を開くことができ、現段階で40以上もの通貨を扱っています。TransferWise Boardlessは法人向けに同様サービス「TransferWise Boardless for Business」を提供しています。

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まさに利用面だけをみれば、Mercuryをグローバルな口座へ進化させた形といえるでしょう。しかし、一見「銀行業」的な枠割を果たしているように見えるボーダレスのサービスですが、一般的な「銀行」の定義とは少し違った形態で運営されています。

同社は銀行ライセンスを取得し銀行業を営んでいるのでなく、データ上の資金移動を行う電子マネー事業者として「銀行業」と同等のサービス提供に成功しているのです。

銀行ライセンスの有無では、Mercuryが目指しているスタートアップのための「銀行」とTransferWiseが提供するボーダレス「銀行」は直接競合とまで言い切れないかもしれません。

しかし事業内容で比較すると、現時点でTransferWiseがC向けであるという印象。これからB向けサービスの拡大も同時並行で進めるとなった際は、十分競合となりえると感じますし、既にC領域で地位を獲得しているアドバンテージは多くあることが想定できます。