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Global Brain

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グローバル・ブレインは、グローバル規模でベンチャー支援を行う独立系ベンチャーキャピタルです。徹底したハンズオン支援、グローバルなエコシステム、ベンチャー企業と大企業のオープンイノベーションを通して、ベンチャー企業を支援するとともに、新たな産業の創出を目指しています。

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VCがSDGsと社会貢献に取り組むワケーー鍵はソーシャルスタートアップとの“繋がり”に

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事(前半、後半)からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび社会貢献活動チームが共同執筆した。 グローバル・ブレイン(以下、GB)はSDGs達成・社会貢献に取り組むべく、本格的な活動を開始しました。なぜ我々ベンチャーキャピタルが取り組むのか、そしてどのように社会に貢献してい…

画像提供:ヘラルボニー・写真左から共に代表取締役の松田崇弥氏(CEO)、松田文登氏(COO)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事(前半後半)からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび社会貢献活動チームが共同執筆した。

グローバル・ブレイン(以下、GB)はSDGs達成・社会貢献に取り組むべく、本格的な活動を開始しました。なぜ我々ベンチャーキャピタルが取り組むのか、そしてどのように社会に貢献していくのか、これまでの活動を振り返りながら未来を語ってみたいと思います。

ヘラルボニーをご存知ですか?

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、福祉を起点に新たな文化を作ることを目指すソーシャルスタートアップです。

自閉症という先天性の障害のある兄を持つ双子の経営者が2018年に創業しました。経営者の二人は幼いころから兄に対する社会からの目線に疑問を抱いており、障害を敢えて個性と言い切ることで、違う視界から、違う世界を、社会に向けてプレゼンテーションするために事業を営んでいます。社会のために障害のある方を順応させるのではなく、彼等の個性のために社会が順応していく世界を目指すのがヘラルボニーの使命です。

画像提供:ヘラルボニー

現在、ヘラルボニーは約1,000点以上の知的障害のあるアーティストが描く作品と消費者を繋ぐキュレーター事業を行っています。慈善活動ではなくビジネスを通して、事業パートナーである福祉施設やアーティストの方へ対価をお支払し、互いにサステナブルな関係を構築しています。

GBの取組み

GBがソーシャル・スタートアップの支援活動を本格的に開始し始めたのは2018年からです。

当時、ソーシャルスタートアップへの面会を開始し、2019年2月にはソーシャルスタートアップや彼らを支援する方を集めたイベントを開催し、約140名の皆様にご参加いただきました。それを皮切りに、社内でも社会課題に対する認識を高めるためLGBTQに関する研修を開催するなどしていましたが、その経緯の中でヘラルボニーのみなさんともお会いしています。

ヘラルボニーの活動をお手伝いするため、昨年主催したGBAF(※)の会場でヘラルボニーの展示会を開催し、ご来場者の皆様に作品をご覧いただいたり、一部の絵画はGBでも購入しました。今後はオフィスでもお越しいただく皆様に作品をご覧いただけるよう展示する予定です(※年次開催のイベント「グローバル・ブレイン・アライアンスフォーラム」)。

ヘラルボニーの展示会の様子

社会課題を解決する「繋がりを生み出すハブ」

これまでのソーシャルスタートアップの支援活動を通じて、具体的にこの領域で必要とされていると感じるのはやはり「繋がり」です。

端的に言えば、ソーシャルスタートアップを大企業の方にご紹介して、そこで生まれる協業をひとつずつ丁寧に積み重ねていく。ステージが早いソーシャルスタートアップは信用や成長支援を必要とされています。GBはスタートアップへの投資と大企業とのオープンイノベーションの推進を長年実施してきた強みがあります。

例えば福祉施設への支援という観点では直接福祉施設に寄付をする方法もあります。しかし、GBが敢えてヘラルボニーが実施されているビジネスに沿って協業支援を行ったのは、彼らのようなスタートアップが成長し、より多くの福祉施設とのお取引が増えることこそ、エコシステム全体を持続的な活動にし得ると考えたからです。

このように今後もイベント等を通じてソーシャルスタートアップの方を支援していきたいと考えています。

私たちのネットワークやノウハウを活かし、かつ大企業のお力をお借りしながらステージの早いソーシャルスタートアップの認知度や信用度の向上、そしてソーシャルスタートアップが大企業との協業の機会を得ることが、このエコシステムを正しく継続的に維持することに繋がると考えています。

画像提供:ヘラルボニー

また、GBの社内では定期的にSDGsやそれぞれの社会課題について学ぶ機会を今後設けることで、社内でのより活発な啓蒙活動を実施していきます。その活動の中では、日々接しているスタートアップの方々のうち社会課題の解決に取り組んでいる方をお呼びし、知見の共有をしていただくことで社員の視野を広げることも計画中です。

日本のいま

世界の社会起業家900人に聞いた「社会起業家にとって最も良い国」調査(2016年)では日本は第40位です。評価項目は「政府支援」「人材確保」「事業投資の機会」「社会起業家の生活力の確保」の4点ですが、世界のGDPランキングから考えるとやはり低水準と言わざるを得ません。

GBだからできることをやる。

投資という新たなアイデアと資本をつなぎ、事業を生み出すことを手掛けてきたGBだからこそ、社会と企業、消費者、関心、こういったものをつなぎ合わせる「ハブ的役割」を担えるのではないかと考えています。次回は企業がSDGsにどう向き合うべきか、その基本的な考え方と、GBの役割をもう少し掘り下げてお伝えしたいと思います。

企業がSDGsに取り組むべき理由

池田 真隆氏:株式会社オルタナ取締役 オルタナS編集長

ベンチャーキャピタルがSDGsの達成や社会貢献を目指すとどうなるのでしょうか。その活動の方向性を語るために、先日開催したGB社内でのワークショップの様子を紹介させていただきます。

今回ご講演いただいたのは、若者による社会変革を応援するソーシャルメディア「オルタナS」池田編集長です。池田編集長の講演内容を元に、企業の社会貢献やSDGsの取り組みの潮流・将来について本記事でお伝えします。

そもそもの企業における社会貢献活動は主にCSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)として位置付けられてきました。最近では国連の提唱するSDGsとも結びつけられているケースも多いですが、その違いは何でしょうか。

まず、企業のCSRの歴史は古く、1920年頃に遡ります。経営管理の哲学を提唱したオリバー・シェルドン氏によりCSRの概念が生まれ、公害や労働など問題を抱えることもある企業が社会とどう向き合うべきなのか、というコンプライアンス遵守、企業活動の「ガバナンス(企業統治)」強化の一環として広がっていきました。これらはネガティブ・インパクトの最小化が目的です。また、社会貢献活動やフィランソロピーなどのポジティブ・インパクトの最大化を目的とした企業活動も行われてきました。

しかし、現在では深刻化する社会課題の解決や企業の社会責任はますます重要になり、金融庁と東証の定める「コーポレート・ガバナンス・コード」に社会・環境問題に関する持続的な活動が盛り込まれるなど、多くの企業が対応が求められるようになっています。

そこで、これからの企業のCSRは、企業価値創造を目的としたサプライチェーンを含むリスクマネジメントや行動規範などのコンプライアンス遵守の拡大や、価値創造型CSRあるいはCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)と呼ばれる経営手法が注目されています。

資料提供:株式会社オルタナ

さて、企業への社会要請から広まったのがCSRであるのに対して、産業革命以降急激に活発化した人間活動によりリスクが増した地球環境の持続可能性のために、国際目標として生まれたのがSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)です。

SDGsは2001年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における2016年から2030年までの国際目標であり、17の目標と169のターゲットで構成されています。

資料提供:株式会社オルタナ

それでは、企業は具体的にどのようにCSRやSDGsに取り掛かればよいでしょうか。近年注目を集めているのは、先ほどの価値創造型CSRに位置付けられている「アウトサイド・イン(社会課題の解決を起点にしたビジネス創出)」と呼ばれるアプローチです。つまり、今までの顧客ニーズからのマーケットインや技術シーズからのプロダクトアウト型の開発ではなく、視座をあげて社会課題やニーズから新規ビジネスを作る、という開発手法です。

資料提供:株式会社オルタナ

では、例えば環境問題に対して企業がアウトサイド・イン・アプローチを取り入れるとどのようになるのでしょうか。

近年、海をはじめとする自然環境にプラスチックが悪影響を及ぼすというニュースをしばしば目にするようになりました。私たちの身近でもゴミ袋の有料化や、ストローが再生利用可能な素材に変化するなど、社会的課題としてプラスチックの利用方法が急速に見直されています。

例えば、この領域でも先導的な活動をしているユニリーバは、2025年までにプラスチックパッケージを100%再利用可能・リサイクル可能・堆肥化可能にすることなどを含んだ「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を宣言しています。

アウトサイド・イン・アプローチを通じて、パッケージ原材料を持続可能なものに切り替えるための新たな素材開発やより環境にやさしい製造工程、販売網が構築されるなど、社会課題解決そのものが新規ビジネスに繋がる可能性があります。

未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していく・・・こうした姿勢が「未来の顧客」に対する新しい商品・サービスの提供を可能にし、結果的に企業の持続的な成長に結びつくのではないでしょうか。

最後に、金融の世界でもESG投資の普及が進んでいます。ESG投資とは、財務指標に偏らず、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮した投資活動を指し、投資先である企業に対してより一層社会との対話を求める取り組みです。国内外で浸透に向けた官民の活動が加速しています。

ここまでオルタナS池田編集長のご講演を参考に、SDGsやCSR・企業の社会貢献についてまとめてきました。事業開発に取り組む大企業やスタートアップの皆さんも、未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していくことができるかもしれません。こうした姿勢を取り入れることで未来の顧客や将来世代に対する新しい商品・サービスの提供が可能となり、結果的に企業の持続的な成長や社会的インパクトにも結びつくのではないでしょうか。

GBが取り組むSDGs達成と社会貢献の考え方

最後にGBの具体的な活動内容についてご紹介します。

ベンチャーキャピタルであるGBは、起業家支援とイノベーション促進を通して、社会課題の解決と社会の発展に貢献できるよう努めてきました。ソーシャルスタートアップであるヘラルボニーとの協業では、主催イベントでの情報発信、同社の事業拡大に向けた大企業ネットワークのご紹介、GB主催のヘラルボニ―作品展示会開催等を通じて、ご支援に努めてきました。

そしてこの度、新たに「SDGs・社会貢献方針」を策定し、下記3つのテーマに関する活動を通して、SDGsの達成と社会の持続可能な成長に貢献していくことを目指していきます。

  • 社会福祉・コミュニティ支援:地域や世界が抱える問題を当事者として直視し、社会課題の解決とコミュニティの繁栄に繋がる活動を推進します。
  • 次世代育成:多様性のある将来を切り開くために、次世代を担う青少年たちのスタートアップマインド育成と成長に貢献する活動を推進します。
  • 地球環境保全:持続可能な社会実現のため、事業活動と経済活動の両立を目指し、自然環境や生物多様性の保全を支援する活動を推進します。

GBは投資家、金融エコシステムの一部という立場を活かしつつ、SDGsの視点で社会課題の解決・発展に寄与する活動を推進しています。最近では、活動を推進する社内チームも発足させ、より一層効果的に活動できるよう日々取り組んでいます。

今後は、オープンイノベーションを通じたソーシャルスタートアップ支援、次世代育成プロジェクト、環境関連の社内活動、SDGsに関わる情報発信や啓蒙活動を予定しています。こうした様々な活動を通して持続可能な社会と企業の成長の両立を目指し、一歩一歩着実に前進していきたいと思っています。

今後も引き続き、具体的な活動をお伝えしていきますので、ご覧いただければ幸いです。

ソニーがスタートアップのデザイン支援をする理由

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の重富渚氏、木塚健太氏が共同執筆した。 テクノロジー系スタートアップにとって、ブランドやPR活動の重要性は年々高まっています。例えば日経BPコンサルティングが毎年実施している一般消費者6万人を対象にしたブランド価値調査「ブランド・ジャパン」の最新結…

左からソニーデザインコンサルティング福原寛重氏とグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の重富渚氏、木塚健太氏が共同執筆した。

テクノロジー系スタートアップにとって、ブランドやPR活動の重要性は年々高まっています。例えば日経BPコンサルティングが毎年実施している一般消費者6万人を対象にしたブランド価値調査「ブランド・ジャパン」の最新結果によると、総合でトップを取ったのは「YouTube」、次点が「LINE」(※昨年トップはAmazon)で、インターネット・サービスが消費者の脳裏に深く焼き付いていることがわかります。

ブランドに期待される効果のひとつに「第一想起」というものがあります。ある分野のサービスを使おうとした時、消費者が真っ先に思い浮かべる認知順位のことです。PRの手法では「ソートリーダーシップ」などと呼ばれ、各社の露出戦略やストーリーづくりなどに大きく影響を与えています。

グローバル・ブレインでは、先日公表させていただいたValue Up Teamと連携した形で、スタートアップのデザインやPRを支援するプロジェクトが進んでいます。今回は2回に渡り、この活動にフォーカスしてご紹介させていただきます。

デザイン視点での経営戦略

グローバル・ブレインではソニーデザインコンサルティングと協業し、デザイン視点での経営戦略の可視化からデザイン組織のマネジメント、量産に耐えられる製品デザインまで幅広い範囲を支援する体制を構築しています。内部だけでは支援が難しい場合、外部のスペシャリストや企業と連携して事業の価値向上に貢献するケースとなります。

ブランディングやクリエイティブは会社や製品の価値を正しく伝えるための重要な手段です。具体的には(1) デザインコンサルティング、(2) デザインマネジメント、(3) デザインサービスの3テーマで支援を実施します。

まず、デザインコンサルティングです。これはデザイン視点で経営戦略の可視化を行い、デザインによる事業課題の解決・価値創造を狙うアプローチになります。目的や目標を共有可能なものとして可視化し、事業効率や意思決定を効率化させるために、ブランドコミュニケーションやクリエイティブディレクションなどを支援します。

次のデザインマネジメントでは、デザイン組織のマネジメント、デザイン評価やKPIなどのツール提供やコンサルティング、クリエイティブ人材の教育といった点を手がけます。

最後のデザインサービスはより制作現場に近いプロダクトデザインやユーザーインターフェイス、コミュニケーションデザインやグラフィックデザイン、その他デザイン業務に携わります。デザイン支援と聞くと最後の「デザインサービス」をイメージされるかもしれませんが、実際はより根源的な経営課題の解決まで伴走するのが特徴です。

ソニーデザインコンサルティングのクリエイティブディレクター福原さんは、なぜソニーがスタートアップを支援する理由について下記のように語っています。

弊社がスタートアップ支援する理由は様々ですが、事業の早い段階で『デザイン』というものが事業に対して提供できる『効用』を理解いただくことが最も重要だと考えています。デザインとは単なる表現やお絵かきではありません。ある意味では事業そのものもデザインとも言えるものだと思います。そのような視点からデザインを改めて考察いただいたり、クリエイティブに関する理解、表現の整理、こだわるべき点と力を抜くポイントなどを議論することで、事業にとってデザインが有益な効果を発揮すると考えているからです。

ファーメンステーションのケース

プログラムで手掛けた除菌ウェットティッシュのパッケージ

具体的にこの支援プログラムを受けたケースをご紹介します。ファーメンステーションは独自の発酵技術を使って未利用資源からエタノールを精製し持続可能なプロダクトを企画・開発するスタートアップです。グローバル・ブレインは2018年に投資を実行し、彼らの事業成長を支援しています。

昨今、社会におけるSDGsの気運が高まり、循環型事業を手掛けるファーメンステーションの注目度も増してきました。

そのような背景も後押しし、大手企業とのコラボレーション製品(除菌ウェットティッシュ)の開発が計画として持ち上がりました。この製品には非食用米やリンゴの搾りかすといった本来であれば捨てられてしまう「未利用資源」を活用して精製したエタノールを使用していることが特徴です。

ラボでの製造の様子

また、昨今の感染症対策の流れもあり、アルコール消毒関連製品が一般消費者にも身近な存在となっている中、事業会社などがノベルティとして除菌ウェットティッシュを配布する場面も増えてきました。そこで今回の製品にはノベルティとして配布する際に、メッセージを沿えて提供できるアイデアを盛り込むことになりました。

リンゴの搾りかす

単なる「無料の配布物」ではなく、これを企業が消費者とのコミュニケーション手段として使うことで、感染症拡大への対策であると同時に、持続可能な社会を目指すというメッセージも込めることが可能になりました。

コーポレートカルチャーにまで遡る

デザイン・プロジェクトは開始から約2カ月で成果となりました。

今回、ファーメンステーションにとっては初めてのマス向け製品のためデザインにも力を入れたく、グローバル・ブレインに相談を持ち込まれたのがはじまりです。

最初に取り組んだのはメッセージの整理です。除菌ウェットティッシュのデザインを作るにあたり、コンセプトや伝えたいことなど製品が生まれるまでの経緯をソニーデザインコンサルティングチームに共有します。

製品のデザインは会社のミッションと関連するため、会社全体のミッション、ビジョン、バリューの整理と言語化から各事業を通して伝えたいことの整理・言語化までサポートを行っていただきました。ファーメンステーションではこれらの一連のサポートをコーポレートカルチャーを見直すよい機会として取り組まれました。

ファーメンステーションでプロジェクトに参加した酒井里奈さんは今回の取り組みをこう振り返ります。

「ファーメンステーションにとって初のマス向け製品でした。未利用資源から生まれた製品、という背景をどこまで積極的に伝えるパッケージにするか、何度も議論を繰り返し、デザイン案を複数いただき完成しました。こういったコンセプトの製品がこれからの時代の常識になるといいなと思っていますし、この製品が、そのきっかけになることを願っています。販売も予定しているので、是非多くの方に長く使っていただける製品にしたいと思います」。

次回はグローバル・ブレインで実施しているもうひとつのコミュニケーション戦略支援、「PR」についてお伝えします。

コロナ禍で変わる採用テクノロジー、注目は「採用の分散化」と「リモート福利厚生」

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の坂本祥子氏が共同執筆した。 お知らせ:11月21日にグローバル・ブレインでは支援先40社を集めたオンライン採用イベントを開催。詳細はこちらから 感染症拡大防止を受け、企業における採用活動も大きな岐路に立っている。 例えばオンライン面接の拡大はその…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の坂本祥子氏が共同執筆した。

お知らせ:11月21日にグローバル・ブレインでは支援先40社を集めたオンライン採用イベントを開催。詳細はこちらから

感染症拡大防止を受け、企業における採用活動も大きな岐路に立っている。

例えばオンライン面接の拡大はその影響のひとつだ。グローバル・ブレインでは先頃、採用ソリューションを手掛けるmanebi(マネビ)に出資したが、彼らもまた提供するオンライン採用・研修ソリューション「playse.」を大きく伸ばしている。昨年11月公開したウェブ面接ツールは、公開後8カ月で1,100社が導入した。

この大きな変化の時期、何が課題となり、どこに余白が生まれるのか。本稿では特に採用の前後で発生する変化に注目してトレンドを探ってみたいと思う。

オンライン面談は何を変える

オンラインでの面談を経験した方であれば、多少なりとも対面と異なる部分を感じただろう。候補者の雰囲気や性格など定性的な情報収集がやや難しくなった一方、多くのデータを収集できるようになったのは進歩と言える。

ここで注目したいのが面接プロセスの分散化というアイデアだ。

オフライン面接の場合は「場所」と「面接官」の2要素が必要となる。一方、オンライン面接の場合「面接官」だけでできるので、例えば採用スクリーニングのプロセスを外部委託することも考えられる。

シアトル拠点の「Karat」は、企業に代わってエンジニア候補者の面接を担当してくれる。顧客企業の方で予め選定した候補者たちを、彼ら独自の質問とスコアに当てはめて評価する。その結果得たフィードバックから企業は面接プロセスを先に進めるのだ。利用企業は第三者によってフェアに候補者を判断できる点も買われている。

なによりこの事例で理解できるのは「データ」の重要性だ。様々な企業のオンライン面接を請け負うことで、的確な質問やコーディングディスカッションの手順をノウハウとして蓄積することができる。結果、評価する際のスコアの精度はどんどん上がっていくことになるだろう。

ROXXが展開する「back check」

履歴の評価(リファレンス・チェック)も重要なポイントだ。バックグラウンドチェックは欧米のギグ・ワーカーの台頭によって市場を大きく拡大したサービスで、米国では「Checkr」が一番手として有名だが、日本ではROXXが展開する「back check」が拡大中だ。昨年10月に正式リリースしたばかりだが、既に累計導入社数は500社を突破1している。

例えばROXXのような企業がKaratが手掛ける採用スクリーニングを開始すれば、リファレンスまで含めた採用候補のスコアリング・ポートフォリオが一気通貫に提供できることになる。

オンライン面談の課題

しかし当然ながら課題もある。現在、採用担当は会えない分をなんとかしようと、コミュニケーション接点作ることにリソースをかけている。手間も大きく、応募者側も継続的にコンタクトが欲しいわけではない。オンラインになった結果、辞退しやすくなったことも要因としてある。いわゆる「ドタキャン」だ。

この効率化を進めているのがmanebiのソリューションになる。現在、playse.ブランドウェブ面接eラーニングを展開しており、9月から選考辞退などを防止するエンゲージメントソリューションを開始した。特に重要なツールが動画で、オンライン就職活動における動画情報提供は、7割以上が志望動機向上につながるという調査結果もある

mabebiの展開する「playse.エンゲージメント」

playse.エンゲージメント」は動画で採用候補者・新入社員に会社の文化やルールを浸透させるツールで、二次面接の後に動画A、オファー後に動画Bのように視聴状況を確認しながら選考プロセスと動画を紐づけ、また、各動画の視聴後にテストをすることで浸透度を測ることも可能になっている。建設関連の利用企業はこれにより面接辞退の率が昨年比で50%も改善した。

さらにデータを活用することで、将来的には採用目標数や達成度を求職者の志望度(情報取得の度合いで計測)、選考状況、プロセス途中のアンケートなどから可視化・予測することも可能になる。

定着支援に必要な福利厚生の考え方

こうやって採用後にやってくるのが「定着」だ。いわゆる離職率を下げる一連の施策を、企業から離れた場所にいる従業員に対して的確に実施しなければいけない。

ここで考えておきたいアイデアがリモート環境でも使える福利厚生だ。「Zestful」は従業員が自分で福利厚生内容を選べるサービスで、NetflixやStarbucks、Spotifyといった私たちが日常的に使うようになったサービスを従業員が自由に選び、与えられた福利厚生予算を自分の裁量でパッケージングすることができる。

Zestfulの利用企業は、同社が提携するベンダーの中から従業員に提供したいサービスを選び、プログラム名を付ける。たとえば月最大50ドルまで補助される「Healthy&Happy」と名付けたプログラムから、自由にClassPassやCalm、Headspaceといった運動・ウェルネス系サービスを従業員が選べたりする。従業員が通わないような指定ジムでしか提供されない福利厚生より柔軟性を持つのだ。こうしたプログラムは複数持つことができ、仮に企業側が従業員の健康を推進したいのならば、Healthy&Happyに対する予算割合を増やす設計にもできる。

たとえば企業がリモート環境下でも健康的な生活を送って欲しいと思い、東京に多く拠点を持つジム費用を浮かせる福利厚生パッケージを提供したとしても、同じ系列ジムを持たない遠方のリモート社員は使えない。このギャップを埋める柔軟性が必要となる。そのソリューションの1つがZestfulにある。

HRWinsによると、ベンチャーファームは2019年の第1四半期だけでHRテック企業に17億ドルを投資しているというデータもある。また別のレポートによると、2019年の投資額は238件で53.3億ドルに達し、2018年の投資総額40億ドルから20%以上増加している。感染症拡大という未曾有の出来事で、HR市場も大きく動くことが予想される。新たな課題をいち早くキャッチすることが求められるだろう。

スタートアップ40社を集めたオンライン採用イベント、11月にグローバル・ブレインら開催

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独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは10月22日、スタートアップの採用に特化したオンラインイベントを開催すると発表している。支援先スタートアップ約40社と有望な人材のマッチング機会を提供し、採用強化に繋げる狙い。開催日は11月21日で当日は「パラダイムシフトで世界が変わる」をテーマにグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏や、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏らのなどによ…

独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは10月22日、スタートアップの採用に特化したオンラインイベントを開催すると発表している。支援先スタートアップ約40社と有望な人材のマッチング機会を提供し、採用強化に繋げる狙い。開催日は11月21日で当日は「パラダイムシフトで世界が変わる」をテーマにグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏や、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏らのなどによるウェビナーコンテンツも提供される。なおイベント自体の主催は日経ビジネスで参加は無料。

オンラインマッチングに参加するスタートアップ一覧

また、当日はEventHubを活用したオンラインマッチング面談が実施される。当日出展を予定しているスタートアップ40社の採用担当者とオンラインでの面談ができるもので、各社の情報を参考に事前申込が必要。時間に余裕があれば当日の参加も可能となっている。グローバル・ブレインの百合本氏はイベントの開催にあたり「不確実性の時代といわれる今だからこそ、スタートアップにも転職希望者にもチャンスが到来している」と参加を呼び掛けた。

via PR TIMES

期待高まる「スマート農業」の要諦と「新たなビジネスチャンス」

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の鈴木祐介氏・松尾壮昌氏が共同執筆した。 一次産業のデジタル化は市場も大きい分、取り組みの範囲も広い。 例えば「屋内農業」に絞って紐解くと、2017年のグローバル市場は1,066億ドルであったとのデータがある。2026年には1,700億ドル規模と予…

Photo by freestocks.org from Pexels

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の鈴木祐介氏・松尾壮昌氏が共同執筆した。

一次産業のデジタル化は市場も大きい分、取り組みの範囲も広い。

例えば「屋内農業」に絞って紐解くと、2017年のグローバル市場は1,066億ドルであったとのデータがある。2026年には1,700億ドル規模と予測されおり、年平均成長率でみれば5%以上だそうだ。この屋内農業市場は栽培品種の生育メカニズム最適化や、ロボットやAI画像認識を活用した技術革新が起こっているため注目が集まっている、いわゆる「スマート農業」の領域だ。高額な初期投資や作目品種が限られる一方、収穫不足や気候変動問題に対処できることから、近い将来の成長機会が期待されている。

では、国内ではどういうステップになるのだろうか。

グローバル・ブレインでは農林中央金庫と共同で農林中金イノベーション投資事業有限責任組合(以下、NCIF)を運営しており、直近だと7月には農業用機械の運転支援アプリ「AgriBus-Navi」を運営する農業情報設計社への出資も実施している。本稿では、それら知見から国内におけるアグリテック・スマート農業の俯瞰を試みたい。

農業の課題とスマート農業が目指す世界

この領域における主要な課題は大きく「人手不足」と「効率性」の2つに集約される。

農林水産省が公表した資料によると、1995年に414万人いた農業就業人口は20年経過した2015年には210万人と激減している。技術革新による課題解決が待ったなしの状況で期待されるのが「スマート農業」なのだ。

スマート農業では生産の自動化、生産から販売までのサプライチェーンに関わるデータ活用などがテーマとしてある。例えば生産に関するデータが細かく揃っていれば、熟練した生産者と同様に誰でも農作物を作ることができるようになる。さらにこの世界が一歩進んで生産の予測ができれば、保険や融資など金融商品の展開も広がる。革新のポイントはデータとデバイス、そしてギグワーカーなど社会的な経済構造の変化にある。では、それぞれケーススタディを元に紐解いてみたい。

農業を自動化する「次の狙い」

農業は耕うん整地や種まきから始まり耕作、生育、収穫とワークフローが流れていく。その後、出荷、消費と繋がるわけだが、それぞれに効率化できるポイントがある。例えば生育管理のところで言うとIoTデバイスを使って日照条件や温度、土壌の水分条件などの外部条件を取得する事例が増えている。また、テラスマイル社のように、異なるデバイスから取得したデータを統合的・横断的に見える化することで、営農・経営に役立てるサービスも登場している。

農薬の散布も重要だ。

出資先の農業情報設計社ではAgriBusシリーズを展開

トラクターの自動操舵を開発する農業情報設計社はGPS/GNSSを活用して耕うん、播種や農薬の散布を効率化する。汎用的なAndroidアプリとトラクターに後付けできるGPS/GNSS装置により、精度高く運転経路を記録できるため重複なく耕うん、播種や農薬の散布ができる。また、当社の自動操舵機器を組み合わせることで指定した運転経路通りに運転する自動操舵も可能となる。

収穫も自動化の波がやってきている。

「Root AI」が開発する農作物のピッキングロボット「Virgo」は、様々な種類の農作物を認識して収穫するため汎用性が高く、人手不足解消が期待されている。それ以外にも、国内外で汎用性を狙った野菜や果樹の自動収穫の試みが進み、注目を集めている。このように生産のワークフローが自動化されると、課題であった人手不足と効率性の問題が解決に向かうと同時に副次的な効果が生まれてくる。

それがデータだ。

耕作・生育・収穫までの一連の流れがスマート化すれば、出荷タイミングや、収益量や生産物の品質の予測が現実味を帯びてくる。農作物の量や品質の予測ができれば、農作物に対する保険の在り方が変わる可能性もはらむ。また、より良い質や量をもたらす土地の傾向が見えれば、農地としての担保価値算定にも影響が出るかもしれない。農業を取り巻く事業環境を大きく変える余地を内包するデータの取得に、各企業が取り組み出している。

都市型農業の可能性と壁

農業をデジタル化することで、生産販売だけでなく金融など別のビジネスモデルの可能性が見えてくることについて整理してみた。そこでもう一つ、やや消費に近い観点で「都市型農業」の件についても少しだけ触れてみたい。

そもそも海外ではスマート農業は都市部で行われることが多い。先述したロボットやAI技術の確立により、都市部の限られたスペースと水資源を最大限活用できるためだ。無農薬作物を計画的に栽培できる。

例えば4億ドル以上を調達している「Plenty」は、一度に大量の農作物を栽培できる垂直農業を展開している。高層建築物内での栽培が可能で、土地の少ない都市部での農業を提案している。他にも「AeroFarms」「Bowery」「infarm」などが代表的だ。

都市部でのスマート農業は、生鮮食品配達市場と密接な関連性を持つ。従来の宅配網で配達される食料品は新鮮さに欠けるが、都市部で効率的に農作物を栽培・出荷できるのならば、鮮度を維持したまま配達できる。生鮮食品のECは感染症拡大の問題もあって大きく進んだトレンドのひとつだ。

フードマイレージの削減や環境負荷軽減といった文脈でも、こうした都市型農業への期待は広がっている。しかし日本では、フードマイレージ等への意識は欧州と比べ、まだ醸成途上にあるのではないか。更に都市型農業には、別の大きな壁も存在している。それが土地の価格だ。そのため、都市部の事例では企業保有遊休地の活用などが主流だろう。更に、施設への初期費用と運営コストが、最終の消費価格に転嫁される。コスト抑制、品質と売価確保のバランスが、ビジネス上は非常に重要となる。

昨今の野菜の価格高騰などをみていると、環境に影響されない安定供給性には魅力がある一方、都市型農業や植物工場を考える際は、QCD、すなわち品質、コスト(売価)、安定供給の問題をどう解決するか、そこにかかっている。

少人数でも生産を可能にし、新たなデータという武器を与えてくれるのがスマート農業の強みだ。AIの進化によりデータ活用のユースケースが増えてきたのも追い風に感じる。農業に関わる方々のデジタル理解度も進む中、ゆっくりとキャズム超えのタイミングを待っているのが今の国内状況ではないだろうか。

グローバル・ブレインが出資先グロースを支援「Value Up Team」を新設、元ピンタレスト定国氏ら牽引

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ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは9月28日、支援先のグロースを目的とした支援チーム「Valu Up Team」の新設を伝えている。出資先の企業に対して、支援先のニーズに合わせる形で戦略立案・実行を手掛けるもの。テーマとしてはBiz Dev、HR、知財、PRなどの領域で支援する。支援チームには以前、ピンタレスト・ジャパンの代表取締役を努めた定国直樹氏や、メルカリでマーケティング戦略を手掛…

グローバル・ブレインが公表したValue Up Team

ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは9月28日、支援先のグロースを目的とした支援チーム「Valu Up Team」の新設を伝えている。出資先の企業に対して、支援先のニーズに合わせる形で戦略立案・実行を手掛けるもの。テーマとしてはBiz Dev、HR、知財、PRなどの領域で支援する。支援チームには以前、ピンタレスト・ジャパンの代表取締役を努めた定国直樹氏や、メルカリでマーケティング戦略を手掛けた伊藤暁央氏、三陽商会で執行役員として経営戦略に携わった慎正宗氏らが牽引する。

同社代表取締役の百合本安彦氏はコメントで、再現性のある成長支援への注力とスペシャリスト登用に力を入れると語っている。

「これまでもキャピタリストが個人の知見やネットワークを活用してサポートしてきた部分はありますが、キャピタリスト自身にも得意・不得意領域があり経験も異なるため、それぞれのスタートアップが持つ課題に対して的確なサポートが必要十分にしきれないケースもありました。グローバル・ブレインでは各領域の専門性と経験を持つスペシャリストを登用し、また必要に応じて外部パートナーを活用しチームとして支援先をサポートすることで、これまでのキャピタリスト個人の支援以上の成長支援ができるようになると考えています」。

属人的ではなくプロジェクトとしてハンズオン支援するモデル(画像:グローバル・ブレイン)

複数事業の立ち上げからその営業支援、デジタルマーケティング、採用、IPO戦略、法務、知財、ファイナンス、PR、バックオフィスなど、スタートアップの成長に必要なテーマを聞き出した上で伴走する。また、採用についてはGBHRという専門法人を立ち上げており、ここと連携して支援する。

具体的な支援ケースとして同社の出資先であるアクセルスペースがあり、同社が手掛ける衛星画像提供の展開可能性のある業界や企業の特定、拡販に向けたパートナー戦略立案から提携交渉、BtoB営業実行支援などが実行された。

ここ1、2年、ベンチャーキャピタル各社は個々のキャピタリストによる属人的なハンズオンから、チーム戦に移行を続けてきた。直近でもサイバーエージェント・キャピタルやYJキャピタルがそれぞれのグループ力を活かした支援の方向性を模索したり、協業促進させるイベントを開催するなどしているし、PKSHA Technology Capitalのように、自社が持つ技術に特化した支援を展開する例も出てきている。

グローバル・ブレインの現在の体制は70名ほどで、同社によれば、これらの支援体制強化をさらに進めるほか外部のパートナーとの連携も強化するという。

ライドシェア保険から紐解くインシュアテックの今(2/2)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group、Directorの皆川朋子氏が共同執筆した。 コラボレーションの必要性 (前回からのつづき)ではこういった業界の大きな変化は誰が担うべきなのだろうか。 事例で挙げたBuckleはライドシェアに目をつけ、大手プラッ…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group、Directorの皆川朋子氏が共同執筆した。

コラボレーションの必要性

「Insure as a Service」を展開するドイツのELEMENT

(前回からのつづき)ではこういった業界の大きな変化は誰が担うべきなのだろうか。

事例で挙げたBuckleはライドシェアに目をつけ、大手プラットフォームと保険企業も巻き込み事業拡大を目指している。大手はなぜここを総取りできなかったのか。

実は国内でも大手保険会社はすでにシェアリング向けのサービスを展開している。東京海上日動火災保険は2017年にいち早くシェアリング関連の自動車保険の販売を開始している。

他方、オンデマンドのような新しい業態の到来や、査定の自動化などにおけるビッグデータのリアルタイム活用には、従来の保険システムでは対応しきれない場合がほとんどだ。かといって重厚長大な既存システムを大幅に変更するには年単位の時間とコストがかかり、大手は機敏に動けない。例えば「スマホ対応」と言っても、簡単にできるようなものではないのだ。

こういった足回りの問題で単独での展開が難しい場合、やはり候補として挙がるのはコラボレーションの方向性になる。

例えば、グローバル・ブレインが支援するドイツの「ELEMENT」は保険サービスに必要な機能をモジュールのようにして提供する「Insure as a Service」を展開しているのだが、先頃、三井住友海上火災保険と提携したことを公表している。これにより今後、多様化する保険商品の開発を加速させる効果が期待されている。

今後を占うP2P保険

ライドシェア保険をきっかけに、インシュアテックにまつわる領域を説明してきた。最後にP2P保険についても言及しておきたい。

グローバルでは米Lemonade、中国アリババグループの相互宝、日本ではjustInCaseが展開している新しい保険のスキームだ。加入者の誰かが被保険者となった場合、加入者でそのリスクを分担する仕組みで、justInCaseのわりかん保険では、加入者の誰かががんになった時、契約者全員でその保険金を「わりかん」する。

justincaseの提供する「わりかん保険」

「わりかん保険」では、一般的な保険料の毎月・前払いではなく、前月にがんになった人の数で支払う金額がきまる仕組みで、対象者がいなければ保険料を支払う必要はない。今後もP2P保険のように、全く新しい形の保険サービスは増えてくるだろう。

ライドシェア保険から紐解くインシュアテックの今(1/2)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group、Directorの皆川朋子氏が共同執筆した。 2019年にMcKinseyが発表したレポートによると、2012年以降のインシュアテック(保険テクノロジー領域)への合計投資額は100億ドルに上るという。また、Acc…

Photo by Andrea Piacquadio from Pexels

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group、Directorの皆川朋子氏が共同執筆した。

2019年にMcKinseyが発表したレポートによると、2012年以降のインシュアテック(保険テクノロジー領域)への合計投資額は100億ドルに上るという。また、Accentureの別レポートでは、86%の保険会社が競争力を維持するためにイノベーションを加速させる必要があると答え、87%がもはや業界は直線的ではなく指数関数的な成長を見せていると回答している。

保険業界を大きく変えるインシュアテックで今、何が起こっているのか。グローバル・ブレインでは国内P2P保険を手掛けるjustInCaseに昨年投資をしているが、この領域での知見をいくつかのポイントに整理してみたいと思う。

オンデマンド経済が変えた保険のあり方

昨今の保険業界に大きな影響をもたらすキーワードとして「オンデマンド経済」と「ビッグデータ」が挙げられる。まずはオンデマンド経済と保険の関係性から紐解いていきたい。

日本でUberEatsのようなオンデマンド配達サービスが流行っているように、スポットで短時間だけ働ける環境が整いつつある。すると、従来の保険とは違うスキームが必要とされてくる。世界的にはライドシェアが最たる例であろう。

8月に3,100万ドルの調達を発表した「Buckle」というスタートアップは、ライドシェアを利用するドライバー向けに保険を提供している。従来の保険会社が年齢や運転歴などの要素を考慮するのに対し、Buckleはライドシェアの評価なども考慮に入れて柔軟な保険プランを提案しているのが特徴だ。

シェアリング市場は日本でも様々な領域で広がっている。多数拠点の居住サービスや留学生向けの民泊、キャンピングカーやヨットといったものまでシェアの考えは浸透し始めている。

これは何を意味するのか。シェアは所有に比較して稼働する時間が少ない。一方、不特定多数が利用することのリスクも高まる。また、シェアというのはオンデマンドとセットになっている。つまり「より細分化された柔軟な保険」に対するニーズが高まっていた、ということが市場背景として考えられる。

ちなみに国内では、2006年に施行された少額短期保険(いわゆるミニ保険)によって、こういった新しい経済圏に対して保険が対応しやすくなったことも付け加えておく。

ビッグデータで変わる保険業界

justInCaseの「スマホ保険」はセンサーデータからスコアを算出

もうひとつの視点で重要なのがビッグデータの存在だ。保険とデータは相性がよい。

自動運転車に対して保険サービスを提供する「Avinew」もこのトレンドに合致するだろう。自動運転技術はデータの宝庫だ。どの道をどんな天候で選ぶのかによって事故の発生率が事前予測しやすくなった現代では、データで保険料を変動させることができる。

スマートフォンの保険を展開するjustInCaseの場合、スマホの各種センサーを活用したデータスコアリング(安全スコア)を計測している。ユーザーがどのような使い方をしているのかをデータから割り出し、より個人に最適化されたカタチの保険提案を実現している例だ。

また、医療・ヘルスケアデータの活用も注目される領域だ。従来の医療保険では基礎疾患や過去の疾病履歴により加入できない場合があるが、例えばウェアラブルデバイスを装着することで生体データを取得したり、食事内容をモニタリング・記録するなど、疾患を予防できる日々のエビデンスを得ることにより加入対象を拡大できる可能性が広がる。

もう一点、ビッグデータの活用と並び、保険業務そのもののデジタル化の影響も大きい。

例えば昨今発生した感染症拡大の問題で、変わらざるをえなかったのが対面契約のあり方だ。非対面での営業活動が長期化する中、テレビ電話やLINEなどのチャットで保険の説明を完結させる流れが徐々に生まれつつある。

海外の事例では火災保険なども、書類提出プロセスがデジタル化されていたり、衛星写真から家の写真を撮影して、その場で保険料を自動計算できたりと効率化が進んでいる例もある。

こういったプロセス自体の効率化においても、スタートアップ参入の間口が広がることもインシュアテックを語る上で重要な視点になろう。(次につづく)

 

三井不動産「31 VENTURES」、85億円規模のCVC2号ファンド組成を発表——アーリー〜ミドル期出資注力へ

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ベンチャー共創事業「31 VENTURES」を展開する三井不動産(東証:8801)は16日、都内で戦略発表会を開催し、この席上、85億円規模となる新ファンド「CVC 2号」の組成を発表した。 2016年に発表した CVC 1号がシード〜アーリーステージを対象としていたのに対し、2号では—アーリー〜ミドルステージを対象とする。より成熟したスタートアップを対象とするため、必然的に1ショットのチケットサ…

左から:三井不動産 ベンチャー共創事業部 グループ長 小玉丈氏、三井不動産 執行役員ベンチャー共創事業部長 金谷篤実氏、ファンドを共同運用するグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏
Image credit: 31 Ventures

ベンチャー共創事業「31 VENTURES」を展開する三井不動産(東証:8801)は16日、都内で戦略発表会を開催し、この席上、85億円規模となる新ファンド「CVC 2号」の組成を発表した。

2016年に発表した CVC 1号がシード〜アーリーステージを対象としていたのに対し、2号では—アーリー〜ミドルステージを対象とする。より成熟したスタートアップを対象とするため、必然的に1ショットのチケットサイズも以前より大きくなる見込み。投資テーマは、Real Estate as a Service、デジタルトランスフォーメーション、スマートシティ、新事業領域のビジネスの発掘の4つで、三井不動産の本業との関係性をより意識したものに設定された。

Image credit: 31 Ventures

投資領域については、CVC 1号では不動産テック、IoT、サイバーセキュリティ、シェアリングエコノミー、E コマース、フィンテック、環境・エネルギー、ロボティクス、AI・ビッグデータ、ヘルスケアの10領域だったが、2号ではこれらに加え、モビリティ、宇宙商用化、食品、農業、エンターテイメントの5領域を追加。これまでの活動を通じて社内でもスタートアップとの共創に対する理解が高まり、ファンドを共同運用するグローバル・ブレインと国内外のネットワークを拡大できたと評価した。

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Image credit: 31 Ventures

三井不動産では、これまでに CVC 1号から39社に対して投資を実行、また、2017年に運用を開始したミドル〜レイターステージのスタートアップを対象とした300億円規模のファンド「31 VENTURES-グローバル・ブレインーグロースI」からは2社に対して投資を実行していたことを明らかにした。うち、リビングスタイル、CrediFi、Enlighted、マテリアルコンセプト、ライフロボティクス、SiteWare の6社はイグジットしている。

(クリックして拡大)
Image credit: 31 Ventures

31 VENTURES が本格始動した2015年以降、三井不動産では東京・日比谷ミッドタウン「BASE Q」の展開、プロトスターとの「“E.A.S.T.”構想」の発表、起業家育成コミュニティ「Swing-By」の運用を通じて、起業家やスタートアップとの連携が深まってきたと強調。戦略発表会では、三井不動産が持つ不動産や顧客アセットを活用したスタートアップとの共創事例も紹介された。同社では今後、これまで以上に三井不動産の新事業を創出を加速し、スタートアップの事業ブーストも共に支援強化させていくとしている。

パンデミックで激変する日本の医療、スタートアップはどう戦う?

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group、Principalの松尾壮昌氏、Directorの守口毅氏が共同執筆した。 パンデミックの影響もあり、医療分野のデジタル化が急務となっている。 Fierce Healthcareによると、2020年第1四半期にお…

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group、Principalの松尾壮昌氏、Directorの守口毅氏が共同執筆した。

パンデミックの影響もあり、医療分野のデジタル化が急務となっている。

Fierce Healthcareによると、2020年第1四半期における遠隔医療系スタートアップの資金調達額は7億8800万ドルで、実に前年同時期の2億2,000万ドルから3倍のジャンプアップを果たした。さらにデジタルヘルス全体の資金調達額でみると、過去最高の36億ドル(2020年第1四半期)をマークしている。

遠隔医療以外でデジタルヘルス分野の調達額トップ領域はデータ分析(5億7,300万ドル)、臨床意思決定支援(4億4,600万ドル)、mHealthアプリ(3億6,500万ドル)、ヘルスケア予約(3億600万ドル)、ウェアラブルセンサー(2億8,600万ドル)と続く(全て2020年第1四半期のデータ)。これらの領域が次のヘルスケア分野を牽引するとみられる。

さて、Accentureでは感染症拡大が医療分野にもたらした変化として次の5つを挙げた

  1. モバイルサービス向けのバーチャル労働力の組成
  2. バーチャルケア・在宅ケア・遠隔医療の3つのソリューション加速
  3. 福利厚生拡大と規制緩和促進
  4. 必須供給品の迅速な手配
  5. 手動コールセンターに代表される労働力の自動化と戦略的人員配置

バーチャルケアは、認知行動療法に基づくメンタルケアサービスを提供する「Big Health」が当てはまるだろう。在宅ケア分野では慢性的な筋骨格系疾患に特化したサービス「Hinge Health」が挙げられる。自宅で専用ベルトでトレーニングをさせながら、チャットベースの相談にも乗ってくれる。

遠隔医療「ならでは」の体験を作れ

では、遠隔医療分野はどのような状況だろうか。注目が集まっているのが動画診察などの「リアルタイム同期性」を持つ領域だ(非同期性のものはメール診察など)。

例えば今年7月に7,500万ドルの調達を果たした「Doctor On Demand」はこの領域で有名だ。同社はサンフランシスコを拠点に、医療従事者と患者をマッチングさせ、オンデマンド形式の診察サービスを提供する。現在は9800万人以上の生活をカバーしているという

また、最近では遠隔医療と小売の分野が融合し始めている。男性向けヘルスケア商品を扱う「Hims」がそれだ。同社は男性の脱毛薬や精力薬までをD2Cの業態で販売。遠隔医療による医師によるオンライン診察も受け付けており、自宅にいながらにして安心して処方箋を出してもらえる体験を提供する。

彼らの体験で重要なのがプライバシーの扱いだ。身体的なコンプレックスに関係しているからこそ、顧客体験は単に医療品購入では終わらない。専門医によるアドバイスと処方箋を通じたフォローアップまで提供することで顧客満足度を高め、成長してきた。7月には上場を目指しているという報道も出ている注目株だ

つまり、遠隔医療はコスト削減だけでなく顧客満足度を最大化させる、カスタマージャーニー上でも重要な要素なのである。今後、ヘルスケア用品を扱う小売ブランドは医療業界のオンライン化に伴い、Himsのような総合的なケアサービスを開発するまでに至るだろう。

遠隔医療におけるAI活用法

Accentureの別レポートではAIを医療トレンドの引き合いに出している。AIも遠隔医療分野には欠かせない要素だ。特定の疾患関連情報の内、適切なものをフィードバックしてくれる「キュレーター」であり、医師に寄り添って最善の治療法を患者に提案してくれる「アドバイザー」にもなり得ると指摘する。

例えばAIを活用したプライマリーケアコンサルタント「K Health」では、膨大な医療論文データが組み込まれており、簡単なQ&Aの回答から患者にとって適切な治療法を提案してくれる。月額9ドルのVIPプランでは、実際に医師による診察が入るが、事前にAIによる診察を経ているため基礎情報が揃っている形で通される。AIがスムーズに人力の遠隔医療チームへとバトンを引き継ぐ体制を構築している。

日本における遠隔医療の動きと課題

MEDLEYのオンライン診療システム「CLINICS」

ここまで米国における遠隔医療分野における最近の動きを紹介してきた。それでは国内ではどうなのであろうか。まず大きな動きとしては、日本政府は4月から初診対面診療の緩和を実施し、時限的ではあるものの、オンライン診療や服薬指導の幅を広げる動きを示している。

例えばグローバル・ブレインの出資先「MEDLEY」(2019年12月・東証マザーズ上場)は、2016年よりオンライン診療システム「CLINICS」を提供していたが、9月から調剤薬局向けオンライン服薬指導支援システム提供を開始する。スタートアップにも早速市場の動きが反映されている格好だ。

ただ、先行する米国とは大きく異なる部分がある。それが皆保険制度にまつわる「インセンティブ構造」の違いだ。米国では基本、医療費は自己負担が前提になるのでコストカットなどの課題が立てやすい。また、保険会社や政府、医療機関などステークホルダーが複数に渡ることで、医療ビジネスのバラエティが豊富になっている。

一方、医療費が皆保険によって安価に設定されている日本では、例えば予防医療などのテーマを立てても「医療機関に行けばよい」という力学が働き、成立しにくくなる。これは国内の医療系スタートアップを考える上で重要なポイントになる。

どこにペインがあるのか

では、そういった前提を踏まえた上で、どこにチャンスがあるのだろうか。「Bain & Company」ではアジアに住む患者のヘルスケアに対するニーズを紹介している。特徴的な意見を大きく3つ挙げる。

  1. パーソナライズ化した予防医療
  2. 病院での短い待ち時間
  3. 健康的なライフスタイルを送るためのインセンティブ付き保険

まず予防医療だ。医療費が高いから予防する、という課題設定が成立しにくいからこそ、違ったアプローチが必要になる。

例えばグローバル・ブレインの支援するPREVENTは、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の再発防止・重症化予防を、ライフログのモニタリングおよび電話面談で実施している。特徴的なのは、彼らが健康保険組合と積極的に取り組みをしている、という点だ。従業員の健康維持、医療費の軽減を目的としている保険組合だからこその動機付けが発生するケースだろう。

次に遠隔医療の可能性だ。そもそもオンライン診療だけだと差別化がしづらいという課題がある。ただ医師と話せる場だけを用意するのであれば、先行優位のプラットフォームが勝つ可能性が高い。ということはやはり「Hims」のように、患者にとって対面通院に課題感のある領域で活躍するスタートアップが成長するのではないだろうか。

また、オンライン化が図られることで取得できるデータ量は確実に増える。これらのモニタリングデータは保険料適正化に繋がるはずだ。

地方の問題も大きい。患者が疾患を認識(Awareness)、通院・診断して、後日モニタリングする。ここまでの流れは基本的に全てオンラインで完結すると考えている。地方の病院が減ってくる中で、オンライン診療との組み合わせは大きな可能性を秘めていると言えよう。

ということで、考察してきたように日本の医療ビジネス環境には特有の課題もありつつも、投資目線で言えば今は大いに好機とみている。この領域に取り組むスタートアップと共に課題解決を目指したい。