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KDDI ∞ Labo

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事業共創プラットフォーム「KDDI ∞Labo(ムゲンラボ)」とコーポレートベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」はスタートアップ企業とのパートナーシップで事業創出を目指しています。スタートアップ企業のビジネスアイディアやテクノロジーと多様な業種の大手企業から成るパートナー連合の豊富なアセットやノウハウと連携をしています。

KDDI ∞ Laboの話題

KDDIは「事業共創」をどう積み上げた

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政権がひとつの区切りを迎えようとしている。 超低金利・株高という経済政策は、日本のスタートアップ・エコシステムにとっても大きな影響を与えることとなった。2012年末の発足時期に660億円程度だった国内投資額は2018年に1360億円と倍増しており、同時期のベンチャーキャピタルの資金調達額も500億円未満から3300億円と大きくジャンプアップしている。 同時にこの10年で変化したのが協業のスタイルだ…

写真:KDDI 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部 部長 中馬和彦氏

政権がひとつの区切りを迎えようとしている。

超低金利・株高という経済政策は、日本のスタートアップ・エコシステムにとっても大きな影響を与えることとなった。2012年末の発足時期に660億円程度だった国内投資額は2018年に1360億円と倍増しており、同時期のベンチャーキャピタルの資金調達額も500億円未満から3300億円と大きくジャンプアップしている。

同時にこの10年で変化したのが協業のスタイルだ。

オープンイノベーションと呼ばれる手法は従来のシナジー投資とはまた異なり、単なる「足し算」ではなく、大企業のアセットと新興サイドのテクノロジーを掛け合わせ、新しい市場を生み出す試みとして度々話題になった。

この手法における牽引役がKDDIだ。2011年からスタートアップのインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」を開始し、2017年にはIoTプラットフォームのソラコムを買収。そのテクノロジーを大きく躍進させ、KDDIの「共創」を次のステージに押し上げることに成功した。

9月4日には経済産業省などが主催する「イノベーティブ大企業ランキング2020」の投票でも3年連続1位を獲得するなど、国内企業連携の橋渡し役としての存在感を積み上げている。そこで本稿では、同社で共創事業「KDDI ∞ Labo」などをリードするKDDI 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部の中馬和彦部長にそのノウハウと裏側を伺うことにした。(太字の質問は全て筆者、回答は中馬氏)

失敗のない共創なんてない

KDDI ∞ Laboはスタートアップだけでなく大企業との連携も深めた/画像:KDDIプレスリリースより

中馬氏はINFOBARなどの端末をはじめ、J:COM(ジュピターテレコム)ではMVNO事業を立ち上げるなど所謂「0→1」の新規事業立ち上げを経験してきた人物だ。私はまず、共創における「すべからず」から聞いてみることにした。

ーー協業検討には何かフォーマットがあるわけではないが、特にこれはしない方がよい、という「すべからず」があれば教えて欲しい

中馬:とあるカンファレンスでお題に「失敗しないオープンイノベーション」について語って欲しいというものがありました。私はそれを「失敗を恐れない」に書き換えて臨んだんですね。失敗しないメソッドは教えられません。私は数多くの失敗を重ねてきました。なのでその分の成功体験の数も多いわけです。大企業では一度の失敗をもって「ほらみたことか」と言われることが多くみられる。成功の果実を得るためには、最低でも10回程度のチャレンジが必要なのです。

ーー経営サイドとして上手い失敗のさせ方は

中馬:やはり権限移譲でしょうね。私たちは時間をかけてしつつあります。社内コンセンサスも最低限にとどめ如何に報告しなくて済むか?のスキームを構築することが重要です。多くの企業を見た結果、個が「立った」担当者がいる会社は総じて上手くいっているようです。恐らく個人が責任をもって発言できているということは、権限移譲が進んでいると捉えてよいと考えます。

ーースタートアップも打席に何回立てるかが重要とよく言われる。大企業視点での失敗の質の違いは

中馬:国内企業は優秀な方々が多いので、似たようなことは大体やり切っています。なので、新しいことをやる際、必ずカニバリズムが発生します。こういったケースでは全く関係ない飛び地で失敗してくるのがコツですね。

共創の推進と撤退

失敗が前提になるのであれば、考えなければならないのが「撤退基準」だ。だらだらと続けては打席が減るし、かといって見誤れば投資が無駄に終わる。絶妙なタイミングはどこにあるのか。

ーー失敗を重ねる際に判断が難しいのが成果や撤退をどう考えるかだ。どういう基準を設ければよいか

中馬:やはり1年ぐらいで判断するのが大事でしょうね。というのも今、2〜3年変わらないマーケットってないんですよ。「昨日の自分を否定しろ」と表現することがあるのですが、従来「悪」とされてきた朝令暮改は今や勝利のための重要な戦略です。要求を常に捉え、マーケットが変われば計画は常にアップデートする。

ーー共創事業の場合、社内外含めステークホルダーは多岐に渡る。チームをある方向に導くためには分かりやすい計画がないと難しいが

中馬:フェーズフェーズでKPIは変えるべきです。確かに結果がでないとプロジェクトは沈みます。企画は一本足打法ではなく、2発・3発と用意する。そこから熱量の高い場所を探すんです。だからマイルストーン的なものも実は置きたくないんです。

信頼できるパートナーが共創を加速させる

少なくとも株式を公開している企業にとって、成長は社会的な義務だ。一方、あるドメインで10年・20年の成長を単独で続けるのはやはり困難が伴う。投資や協業・共創の考え方はある意味で当たり前であり、だからこそのユニークさ、難しさがある。中馬氏は共創のきっかけに、ある一つの共通点があることを教えてくれた。

ーー失敗についてお聞きしてきたが、それも全て成功のための過程だ。これはという要諦はどこにある

中馬:共創相手に、この人だけは信頼できる、というパートナーを見出すこと。私もそのようなパートナーに出会えた時は、一気に距離を詰めて勝負に出るようにしています。

企業はそもそもどこも新規事業、成長へのチャレンジをやっているのです。周辺領域は当然調べているし、温度感はそれぞれあったとして、ドメインを跨いだ飛地への投資も手掛けています。つまり、再現性はほぼないに等しい。そういった中で、プロジェクトに対して予算や評価、リソースの配分をやるわけです。確かに難しいので、各方面から相談を受けることはありますね。

ーー確かに各企業の経営陣がしっかりとした経験者に投資をし、権限移譲した上で、その人たち同氏が繋がって波長が合えば、それは十分に新しい事業を生み出す可能性が見えてくる

中馬:かつてガラケーからスマホにパラダイムが変わった時は、インターネット上で新しいサービスが定義されるブルーオーシャンで、スタートアップの成長支援はシンプルでした。ただし、現在は違います。リアル社会がデジタル化されるトレンドのため、イニシアティブはリアルアセットを抱える大企業側です。要は大企業がアセットを開放することが成長には不可欠なのです。

ーー産業構造自体変えようとするには、より大きな舞台装置が必要になる

中馬:例えば「まちづくり」がテーマの場合、特定のゼネコンが特定のスタートアップを支援するだけでは十分ではなく、複数の大企業が業界を越えてアライアンスを組むことで、新事業でなく「新産業」と呼べるレベルまで昇華させることができるようになります。また複数の業界が混ざり合うことでこれまでになかった産業の隙間が生まれ、そこがスタートアップの新たなビジネスチャンスとなるわけです。

共創の課題

ということで中馬氏に話を伺いながら、新事業・新産業創造における共創のあり方や落とし穴について辿ってみた。複数の企業が手を取り合って大きなステージを作り、その上でスタートアップが新たなテクノロジーやアイデアで生まれたスペースを埋めることができれば理想的だ。実際、KDDIが取り組む事業共創プログラム「∞の翼」はその思想でプロジェクトが組まれている。

一方、国内で毎月のようにスタートアップとの協業は報道されるも、大きなインパクトを残すものは数少ない。この課題について中馬氏はプレーヤーの少なさを指摘をしていた。実は先月に開始された「MUGENLABO支援プログラム 2020」はその課題解決を考える過程から生まれている。

前述した理屈で言えば、このプログラムは大企業とスタートアップが対になったケースで、穿った見方をすればやや受託のマッチングのように見えなくもない。しかし、実際はこのような機会を提供することで、熱量の高い企業や人が可視化されれば、全体としてはプラスだ。

この10年で事業共創に関わる環境は大きく変化した。何もなかった時期と異なり、ノウハウや失敗の情報は手に入りやすくなっている。つまり、成功の確率は上がっている、ということだ。KDDIや連携する企業群が向こう5年でどのような成果を出してくるのか、国内のオープンイノベーション環境は次のステージに入った印象がある。

KDDIが3年連続トップ、スタートアップと大企業の共創に貢献【ILS・イノベーティブ大企業ランキング】

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イノベーションリーダーズサミット(ILS)実行委員会と経済産業省は4日、新興企業が選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング」を公表した。 スタートアップからの投票でオープンイノベーションに積極的な企業を選出する。総合トップは3年連続でKDDIが獲得した。ILSのアドバイザリーボードの推薦を受けた国内スタートアップ約1200社の経営者が対象で、約620社が投票に参加している。2019年のランキングに続い…

写真左から:プロジェクトニッポン 代表取締役の松谷卓也氏、KDDI 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部 部長 中馬和彦氏(写真素材はKDDIプレスリリースより)

イノベーションリーダーズサミット(ILS)実行委員会と経済産業省は4日、新興企業が選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング」を公表した。

スタートアップからの投票でオープンイノベーションに積極的な企業を選出する。総合トップは3年連続でKDDIが獲得した。ILSのアドバイザリーボードの推薦を受けた国内スタートアップ約1200社の経営者が対象で、約620社が投票に参加している。2019年のランキングに続いてスタートアップとの協業や出資に積極的なKDDI、ソフトバンク、トヨタ自動車が総合上位に並んだ。凸版印刷と三井不動産は昨年の順位から大きく評価を上げ、トップ10位内に顔を並べた。

また、領域毎の注目度についてもKDDIが力を見せている。AIやデジタルヘルス、ロボット、PaaSなど7テーマ中4項目で最も高い注目を集めることとなった。

総合でトップとなったKDDIがスタートアップとの連携を始めたのは2011年。インキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」は2017年から大企業との協業を狙った「共創」事業に変化し、46社のパートナー連合企業と300社以上のスタートアップのマッチングを手掛けている。また、同社の運営するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)である「KDDI Open Innovation Fund(KOIF)」は3号まで300億円を運用しており、これまで75社への出資を完了している。

大企業の課題をスタートアップの好機に、46社100アセット提供で「事業共創」拡大狙うKDDI∞Labo

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ニュースサマリ:KDDIは18日、MUGENLABO支援プログラム2020に採択された共創事例を公表した。同社プログラムは同社の大企業パートナー(KDDI∞Laboパートナー連合プログラム)とスタートアップをマッチングさせる事業共創プログラム。採択スタートアップとパートナー企業のアセット提供をきっかけに、新規事業創出を目指す。参加するパートナー企業は46社で、計101種類のアセット提供が特徴だ。 …

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MUGENLABO支援プログラム認定マークも発行

ニュースサマリ:KDDIは18日、MUGENLABO支援プログラム2020に採択された共創事例を公表した。同社プログラムは同社の大企業パートナー(KDDI∞Laboパートナー連合プログラム)とスタートアップをマッチングさせる事業共創プログラム。採択スタートアップとパートナー企業のアセット提供をきっかけに、新規事業創出を目指す。参加するパートナー企業は46社で、計101種類のアセット提供が特徴だ。

今回、大企業側で共創事例を披露したのはKDDIとJOYSOUNDを展開するエクシングの2社。KDDIは直営するau IKEBUKUROをソリューション実証店舗として提供し、エクシングは子会社が運営するJOYSOUND池袋西口公園前店にスタートアップと協業して開発したソリューションを導入する。それぞれの店舗で導入したソリューションは次の通り。(カッコの中は導入店舗)

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KDDI∞Laboパートナー連合参加企業(大企業側)

AWL:同社は店舗に対し混雑度や展示商品の接触検知が可能なプロダクトを展開している。混雑度測定では店舗入り口にエッジAIカメラを設置し人通りに応じて店舗の込み具合を測定することが可能。目視せずとも遠隔から込み具合を知ることができる。加えて、展示商品の端末接触検知機能も提供し、除菌清掃が必要な端末を適時教えてくれる(au IKEBUKURO)

GREEN UTILITY:同社は紫外線をベースとした除菌ケースをカラオケ店などに提供。スマートフォンやマイクの除菌を約1分間で実施できる(au IKEBUKURO・JOYSOUND池袋西口公園前店)

FARMROID:同社はウイルス対策を目的としたUV照射ロボット「UVバスター」を病院や大学機関に向けて提供。利用施設は予感の除菌清掃の自動化も図ることができる。特にウイルスが残り続けると言われる「床」の除菌清掃にも対応している(au IKEBUKURO)

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実際の店舗での実証が素早くできる点がプログラムのメリットと語るIdein

Idein:同社は店舗入り口に画像認識技術を活用した体温測定器を設置し、入店時の検温を自動で実施する。検知した体温やその他個人情報はクラウドなどに保存されず、カメラに付属するソフトウェア内で暗号化され必要に応じて活用される仕組み(au IKEBUKURO)

PLACEHOLDER:同社は最新のデジタル技術を駆使し、カーディーラーなどのキッズルームを必要とする施設へ知育教育ツールを提供。紙に書いたぬりえが3D化しゲーム画面に登場する設計などを特徴とする。導入企業はキッズスペースの除菌消毒を限りなく最小限に抑えることが可能(au IKEBUKURO)

ネツミル:画像認識技術を用いた体温測定器「ネツミル」で入店時の検温を自動化(JOYSOUND池袋西口公園前店)

QBIT Robotics:コミュニケーションロボ「Kebbi Air」をエントランスに設置し、感染症拡大防止の取り組みや設備・サービスに関する質問を人を介さず自動応答(JOYSOUND池袋西口公園前店)

新規事業「共創」装置としての役割「繋げるチカラ」

話題のポイント:2011年にインキュベーションプログラムとしてスタートしたKDDI∞Laboもそろそろ10年が過ぎようとしています。実は、彼らのプログラムにはもう「インキュベーション」という考え方はなくなっていて、2014年あたりから連合パートナーが立ち上がり、大企業・スタートアップの連携による具体的なグロースや新規事業創造のステージに移っていってます。さすがに10年近く運営しているので蓄積されているノウハウも相当なものです。

新規事業で重要なのが「課題」と「マッチング」です。今回の協業事例で私が特に注目したのは、どうやってこの二つの要素を双方が見つけたのかという点でした。10年前と違い、スタートアップは数多くなりました。大企業側もオープンイノベーションの考え方に一定の理解を示しています。近づいてきた両社をどうやって適切に紐づけるのか。

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AWLも協業までのスピード感をメリットのひとつと語っていた

今回、au IKEBUKUROに混雑や接触検知のAIソリューションを開発・導入したAWL代表取締役の北出宗治さんにきっかけをお聞きしたところ、KDDI∞Labo主催のイベントに登壇したことからこのお話が始まったということでした。

感心したのはそこから導入までのスピードです。協業を進める支援プログラムがあるということを知った北出さんは、同時に感染症拡大の問題でauショップが課題を抱えていることを知ります。AWLでは店舗のカメラを使ったAI検知ソリューションを提供していたので、そのノウハウをこれらの課題に活かせると考え、早速いくつかのソリューションを考案。

例えば今回導入した接触検知のソリューションでは、通常、店舗で来店者が触ったスマートフォンなどの展示物を毎回、全て綺麗に掃除する必要があったのですが、これを触ったものだけ検知して知らせることで効率化を実現しています。これを自社で持っているノウハウをベースに、店舗の課題に合わせて開発し、数週間での導入を実現しました。話のきっかけから導入まで全て含めても2カ月程度、という協業スピードです。

ここには幾つかの要素があります。まず、KDDI側が窓口を用意していること、協業側が明確な課題を持っていること、そして担当者レベルで共創のノウハウを持って「目利き」の機能を働かせていること、です。

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エクシングでも導入されるGREEN UTILITYの除菌ボックスはauショップにも設置

中でも重要なのが目利き機能で、やはりこれはデータベースをひとつ置いておいて検索してどうぞ、ではなかなかうまくマッチングしません。実際、JOYSOUNDさんの事例では、KDDI∞Laboのメンバーが企画の中に入り、難しい調整をしたようです。

通常、経営企画的な視点で新規事業を考えようとすると、当然、新しい売上、成長に寄与するものを志向します。一方、今回、エクシングは店舗を提供アセットに指定していたので、導入されるソリューションを利用するのは現場です。感染症拡大で大きな影響を受けている店舗で「即効性のない」新規事業を展示されても困るだけになります。

その点、JOYSOUNDが協業ソリューションとして選んだのはGREEN UTILITYのマイク除菌ボックスでした。店舗側でも当然、マイクを清掃する手間が省けますし、同時に、新しい商品としてエクシングはこれを共同開発・販売する新規事業としても捉えることが可能です。

もちろん、どこまでこれが売上に貢献するのかは未知数ですが、外部の企業を巻き込んで新規事業を生み出す流れとしてはよいケーススタディです。こういったケースを積み上げることで共創の打席を増やし、いつかのヒットに繋げるのがやはり正しい戦法なのではないでしょうか。

私たちのような専業系のメディアもその一部ですが、こういった要素を長年かけて積み上げ、目に見えないネットワークのようなものを作ってきたのがKDDI∞Laboです。確かにぱっと見は「人づて」という超アナログに思えるかもしれませんが、それを含めて大きな組織に属する人々が自律的に新規事業の創造に動く、というのは仕組みあってのものだと思います。

現在、KDDI∞Laboでは具体的なテーマを盛り込んだ「∞の翼」と今回紹介した「MUGENLABO支援プログラム2020」の2本の共創プログラムを走らせています。支援プログラムについては、参加するにあたって軽いコミュニケーションが欲しいという人向けに、参加する企業と直接話ができるカフェ企画も実施するというお話でした。

KDDI「200億円買収」のソラコムが急成長、IPOも視野にーーグローバル展開の秘策を語る #discovery2020

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買収から3年、創業5年のソラコムが新たな成長への歩みを始めるようだ。 今日、オンライン開催となったソラコムの年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2020」の壇上で発表された成長戦略の中には明確に「IPO」の文字が刻まれていた。創業から2年、200億円という高評価でKDDIグループ入りしたIoTプラットフォームのソラコムが3年という時間でどのように成長し、そして次にどこに向かおう…

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ソラコム共同創業者、玉川憲氏と安川健太氏(写真提供:ソラコム)

買収から3年、創業5年のソラコムが新たな成長への歩みを始めるようだ。

今日、オンライン開催となったソラコムの年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2020」の壇上で発表された成長戦略の中には明確に「IPO」の文字が刻まれていた。創業から2年、200億円という高評価でKDDIグループ入りしたIoTプラットフォームのソラコムが3年という時間でどのように成長し、そして次にどこに向かおうとしているのか。

イベントに先立って、ソラコム創業者で代表取締役の玉川憲氏に話を伺った。彼らが創業から目指し続けた「グローバル・プラットフォーム」への一つの「解」と共にご紹介したい。

200万回線

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買収時に8万回線だったSORACOM、3年で200万回線へ(資料提供:ソラコム)

Internet of Things、モノのインターネット化に必要不可欠な通信環境をクラウドでコントロール可能にし、あらゆる機器のサービス化を実現したのがソラコムの提供する「SORACOM Air」だった。衝撃的なデビューから約5年、今年の6月末には200万回線の契約を公表している。

この数字、実は3年前にKDDIが高評価で買収した際には8万回線と多くなかった。契約しているアカウント数(※法人と個人を含む契約者数で回線数とは別)は7000アカウント(現在は1万5000アカウント)とある程度のボリューム感があるものの、ビジネスとしてまだ各社が手探りの状態だったからだ。ユースケースとしても自動販売機のメンテナンスやスタートアップのIoT機器(まごチャンネルやWHILLは良い事例)への利用などバラエティに富むものの、数字という面ではインパクトに欠ける。

これを大きく変えたのが日本瓦斯(ニチガス)とソースネクストの事例だ。ニチガスではLPガスのスマートメーター化を進め、2020年度中の85万回線を見込む。一方、ソースネクストは翻訳機「ポケトーク」が大ヒットし、こちらも2020年2月時点で70万台を記録している。ここにはソラコムの「eSIM」技術が採用され、ユーザーはわざわざモバイル通信契約を意識することなく翻訳サービスを利用することができるようになっている。

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ニチガスのスマートメーター事例(資料提供:ソラコム)

結果、KDDIグループ入りしてから1年後の2019年6月には100万回線、そしてその1年後に200万回線をマークするようになった。KDDIもまた別口で法人向けIoT回線契約を2000年頃から提供しており、グラフの通り綺麗な成長曲線を描き始めている。

もちろん、ソラコムについてはその数字の大半は大口2社の契約であることは確かだが、それでもその可能性のある企業が彼らのネットワークに1万5000アカウント以上が存在している。具体的な事例は明かせないとしつつも、決済関連は非常に有望だそうで次のヒットの可能性は充分すぎるぐらいにあるだろう。

グローバル化への壁:ローミング問題を超える

今日の発表で最も(関係者にとっては)インパクトのある内容が「サブスクリプションコンテナ」だったのではないだろうか。国境を超えた通信価格がエリアによって7割以上も安くなる、IoT関連サービスを世界展開する際のローミング問題を解決する技術だ。

簡単に説明しよう。通常、モバイル通信(私たちが普段使ってるスマホも含め)を海外で利用する場合、現地のSIMを買うか、ローミングして日本のキャリアから海外キャリアへ再接続して利用することになる。

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サブスクリプションコンテナを使えば現地価格の通信がSORACOMの体験を通じて利用可能に(資料提供:ソラコム)

現地SIMは現地キャリアの価格で利用できるものの、購入したり、プリペイドの契約、追加チャージなどがめんどくさい。ローミングはそのまま国内キャリアが使えて便利な反面、価格に反映されてしまう。

IoT機器でも同じことが発生していた。ソラコムのIoT回線サービスを海外で使う場合、提携する海外キャリアにローミングして使う以外に方法がなく、例えば可愛らしいロボットにSIMを入れて日本から海外販売する場合、ローミングした通信費がサービスに乗っかってしまう。一方、現地の回線をロボット事業者が独自に入れようとすれば、各国でキャリアと交渉・契約し、さらにSORACOMのような管理ツールなしにユーザーとの契約を管理する必要が発生する。

もちろんほぼ不可能な話だ。

これを仮想的に実現したのが今回発表されたサブリプションコンテナの考え方だ。イメージとしてはeSIMに近く、SORACOMのプラットフォーム上で事業者サイドが各国の回線契約自体を切り替えることができるので、ローミングと異なり契約そのものが現地キャリアのものになる。結果、前述したような7割〜最大9割という大きな値下げが期待できるようになる、というわけだ。

実はこれまでもSORACOMはカバレッジとしてグローバル(ローミング)と特定地域を分けて提供していたのだが、今回発表されたサブスクリプションコンテナの機能を使えば利用できるエリアの範囲はGSM/3Gで148カ国・296キャリア、LTEで76カ国・148キャリアに拡大する。

実際に国を切り替えるデモを見せてもらったがワンクリックで終了とあまりにもあっけない。これで事業者は出荷する先の国を世界主要都市から選ぶことができるようになるのだ。

取材時、玉川氏が「これでようやく真のグローバル化が見えてきた」と感慨深そうに呟いていたのが印象的だった。

IPOも視野「スウィング・バイ」オープンイノベーション

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ソラコムとKDDIの取り組み(資料提供:ソラコム)

ソラコムの創業は2014年11月。翌年3月から玉川氏が前職(Amazon Web Service)を離れて本格的に事業を開始し、2015年6月にはInfinity Venture PartnersおよびWorld Innovation Lab(WiL)から7.3億円を調達。第一弾となるサービス「SORACOM Air」を公開した。

サービスインから約半年の翌年2016年5月には シリーズBラウンドでやはりIVPとWiLから24億円を調達。そして2017年8月にKDDIが過半数を200億円で取得するという「ザ・スタートアップ」の物語だった。

ただこの買収劇の時、なぜ全株ではなく過半数だったのかやや不思議な気持ちがあったのも事実だ。しかしこうやって振り返ると、当時の回線契約はたった8万回線。玉川氏がよく話していた「グローバル」の規模感からはほと遠い位置だったことがよくわかる。まだ何も成し遂げていない状態だったのだ。

連結の営業利益1兆円を超えるメガ企業にスタートアップがどこまでインパクトを残せるのか。

ここまでの3年間は両社合わせて1400万回線というIoT市場の拡大・牽引が分かりやすい結果として残った。この市場をグローバルサイズにするために、両社が取った決断はソラコムの株式上場も含めた独立的な成長路線になる。

今後、グローバル展開を本格化させようとすると、場合によって各国のキャリアやキープレーヤーとの資本を含めたパートナーシップ戦略が必要になってくる。また、優秀な人材も集めなければならない。こういった機動力のある、資本も含めた経営戦略は独立も視野に入れた方がやりやすいと考えたのだろう。

具体的な計画は(上場するかも含めて)まだこれからの話だが、これだけの成長株が公開されることになれば話題になるのは間違いない。ちなみにKDDIはもうひとつのオープンイノベーション施策として「非通信業」のスタートアップを買収したマーケティング・グループ「Supershipホールディングス」を形成し、こちらも上場を目指すとしている。

玉川氏は今回の成長に向けた戦略を「スウィングバイ」と表現していた。巨大な惑星の引力を活用してより遠くに飛ぼうとする飛行方法だ。大企業が新たな成長を目指す上で新しい概念や技術をいち早く取り入れ、市場を開拓するオープンイノベーションの新たな展開としてもソラコムの事例は引き続き注目に値するのではないだろうか。

未来を創るCVCーーエコシステムの拡大、仮想化に挑戦したKDDI∞Laboの「今」

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\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回・2回目・3回目・4回目・5回目・6回目) ソラコムの買収 3年前の夏、朝一番にあるニュースが飛び込んできた。KDDIによるソラコムの子会社化だ。発行済み株式の過半数を取得するため、KDDIが支払った金額は約200億円。2010年…

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ソラコム代表取締役の玉川憲氏(2017年・筆写撮影)

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回2回目3回目4回目5回目6回目

ソラコムの買収

3年前の夏、朝一番にあるニュースが飛び込んできた。KDDIによるソラコムの子会社化だ。発行済み株式の過半数を取得するため、KDDIが支払った金額は約200億円。2010年以降のインターネット系企業の買収案件としてはポケラボ(グリー、2012年・138億円)とチケットキャンプを運営するフンザ(ミクシィ、2015年3月・115億円)を大きく超える評価となった。

まさに、2010年以降の国内スタートアップシーンで最大規模となる買収劇は当時、多くの関係者を驚かせた。

KDDIのオープンイノベーション戦略でこれまで紐解いてきたKDDI∞LaboやKDDI Open Innovation Fund(以下、KOIF)はいずれも主なターゲットを「非通信事業」、つまりKDDI本体の主力事業とは異なる分野をターゲットにしていた。当たり前だが年間数千億円規模の利益を稼ぎ出す「本業」は鉄板であり、そこを補完するベンチャーなどそう簡単には出てこない。

しかしソラコムは全く違うアプローチで新たな市場にチャレンジしていた。それがInternet of Things(通称:IoT・モノのインターネット)分野だったからだ。彼らは通信キャリアから回線を借受けるMVNOの方式で独自のSIMカードを発行し、さらにモバイル通信をまるでクラウドサーバーのように必要なだけ利用できる「SORACOMプラットフォーム」を構築した。

KDDIとの協業は買収の約1年前、2016年10月に遡る。KDDIにソラコムの保有するコア部分を開放し、「KDDI IoT コネクトAir」の提供を開始したのが始まりだ。元々Amazon Web Serviceの日本開発担当だったチームが手掛けたサービスなだけに技術的な信頼度も高い。結果、法人向けの利用を中心に7000件もの利用社(2017年8月の買収時点)を獲得するまでに成長し、グループ入りを果たすことになる。その後も利用社はさらに拡大し(2020年3月時点で1.5万社)紛れもない国内IoTのトッププラットフォームとなった。

買収「後」から始まるオープンイノベーションとエコシステムの拡大

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KOIF3号のスキーム

そしてKDDIとソラコムはもうひとつの注目すべき仕掛けを用意していた。それが「ソラコムファンド」の存在だ。

2018年4月に発表された「KDDI Open Innovation Fund 3号」には特徴的なテーマが設定されていた。それが5G時代に向けた共創戦略である。これまでの1号・2号の4倍となる200億円の組成となった3号ファンドにはAI(ARISE analytics AI Fund Program)、IoT(SORACOM IoT Fund Program)、マーケティング(Supership DataMarketing Fund Program)が明確なテーマとして組み込まれた。

買収したソラコムは事業拡大だけでなく、IoT分野で5Gプラットフォームを活用したアイデアを共創する、新たなパートナーを探し出すための「顔役」にもなったのだ。同社は早速6月にIoTデバイスソフトウェアマネジメントプラットフォーム「Resin.io」や、8月にはシンガポールや台湾でsigfox通信ネットワークを提供するUnaBizへの出資を決め、ソラコムとの戦略的業務提携を実現させている。

KOIFの始まりは初代ラボ長、塚田俊文氏(現・KDDI理事)のある提案からだったそうだ。ファンド組成のきっかけをグローバル・ブレイン(以下、GB)の熊倉次郎氏はこう振り返る。

「2005年あたりですかね、当時、私たちはニフティさんと一緒にファンドの運営をしていて、その支援先の協業提案でKDDIさんにも出入りをしていたんです。そこで出会ったのが塚田さんでした。ちょうど、KDDIでコーポレートベンチャーキャピタルの新たな組成が話題として上がっていた頃です」。

それから10年。インキュベーションの企画として始まったKDDI∞Laboは、年数を重ねてKDDIがスタートアップのみならず、他業種の企業と協業・共創するプラットフォームに成長した。50億円で始まったKOIFは運用総額を300億円にまで拡大し、AI、IoT、マーケティングまでもテーマとした戦略敵投資ファンドとして存在感を発揮している。

KDDI∞LaboとKOIFが狙う協業とファイナンシャル・リターンのバランス、そしてそこから生まれる新たな事業チャンスとの出会い。その可能性はグループ全体の戦略にも影響を与えつつある。

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バーチャルイベント「MUGENLABO DAY 2020」に登壇する高橋誠社長

ウィルスとの戦いで幕を開けた2020年

今、この原稿を執筆している2020年3月というタイミングは、あらゆる常識を疑う日々に包まれているように思う。突如として現れた「COVID-19」というウィルスが、人々を社会から完全に隔離してしまったからだ。

一方、こういった社会の否応のない変化は、新たな価値・体験のきっかけにもなる。先の不況を引き起こしたリーマンショックは、シェアやオンデマンド、クラウドのような「持たざる」新しい経済インフラ、テクノロジーを促進させることに繋がった。

KDDI∞Laboも例外ではない。3月24日、例年であれば大型のカンファレンス・ホールで1000名規模を集めて開催されるはずだったイベント「MUGENLABO DAY 2020」は、人との接触を防ぐため異例のオンライン開催を余儀なくされる。しかし転んでもタダでは起きないのがこのプログラム。単なる無観客イベントをストリーミング放送するのではなく、空間自体を仮想化するという道を選んだのだ。

バーチャル・リアリティ空間での大型カンファレンス

クラスターがスタートアップしたのは2015年7月。α版などの提供を経て、約2年後にバーチャル・リアリティ(VR)空間を自由に生み出せるソーシャルネットワーク「Cluster」を正式公開した。Cluster上には現実とは異なるオルタナティブ世界が広がり、ユーザーはそこでもう一人の自分としてアバターをまとい、様々な活動を楽しむ。

当然ながらこの世界にはウィルスは無関係だ。KDDIはリアル世界での開催が難しいと判断するや否や、Clusterを新たな会場に指定した。クラスターにKDDIが投資したのは2018年9月。シリーズBラウンド(総額4億円)で出資をした後、今年1月のシリーズCラウンド(総額8.3億円)にも続いて参加している。現在、KDDI∞Laboのラボ長を務める中馬和彦氏も社外取締役として経営に参加している。

VRならではの体験といえば一人称視点と没入感だ。OculusなどのVRヘッドセットを装着すれば、まるでそこにいるかのような体験も可能になる。ライブストリーミングだけでは不可能と言われる、リアルイベントならではのネットワーキングについても可能性が見えてくる。ただ今回は残念ながら取材という仕事があるため断念した。どうしてもヘッドマウントディスプレイを付けながら現実世界のキーボードを叩くのは難しい。

私の都合でリアルカンファレンスの体験を完全に再現するまでには至らなかったが、十分未来を感じることのできる取り組みだった。

披露された4つの事業共創プログラム

では、2011年の開始から10年目を迎えることとなった共創のプログラムはどのようなものになっているのだろうか。大枠として走るのは、5GをテーマにKDDI ∞ Laboがネットワークするパートナー連合46社とスタートアップが協業を目指す「5G for Startups」と、より具体的なテーマを盛り込んだ共創プログラムの「∞の翼」の二つだ。

共にPoC(実証実験)ではなく、企業に予算がついた事業にスタートアップの技術・アイデアが加わることで、具体的な事業化を目指すものになっている。「5G for Startups」は通年での応募が可能で、「∞の翼」については第一弾となる取り組み内容と参加スタートアップを含むチームが公開された。

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KDDI ∞ Labo パートナー連合46社:リリースより引用

例えばスタジアムと5Gをテーマにした共創プロジェクトには、KDDIとサッカーチーム、名古屋グランパスエイトがタッグを組んだ。利用可能なアセットとして名古屋グランパスのホーム「豊田スタジアム」が利用可能で、5G時代における新たなスポーツ観戦の体験を生み出すのが狙いだ。ここに採択されたのが2017年創業の「ENDROLL」。昨年には東京急行電鉄と協力し、渋谷の街を謎解きゲームの舞台にした「渋谷パラレルパラドックス」を発表するなど、現実世界をテクノロジーで拡張する新進気鋭のAR(拡張現実)スタートアップだ。

KDDIの持つ5Gインフラと技術、グランパスの持つファンベースとスタジアム、ENDROLLが仕掛けるARエンターテインメント・テクノロジー。これらを掛け合わせることで、来場するサッカーファンたちにゲームだけでない、新たなテーマパーク的体験を提供するのが狙いだそうだ。3社はこれから年末の本格導入に向けて開発・テストを開始する。その他にもコミュニケーションや商業施設、テレビの合計4つの共創テーマが発表され、それぞれ取り組みを開始している。

企業のオープンイノベーションに必要とされるもの

これまで6回に渡ってKDDIのオープンイノベーション戦略を紐解いてきた。戦後復興の昭和に始まった成長神話は絶頂バブルを生み、ゆるやかに下り坂に入った平成を経て令和の今、企業には自前主義ではなし得ない新たな成長戦略が求められるようになった。その焦燥感にも似たうねりが、2010年から始まった企業によるスタートアップ投資や協業・オープンイノベーションという文脈なのだろうと思う。

各社は先行する企業を見様見真似でファンドを立ち上げ、筆者も数多くの取り組みを取材してきた。しかしそこには残ったものと消えたものという、明確な差が生まれたのも事実だ。何が異なっていたのか。

ひとつ明確に言えることはリーダーシップと覚悟だ。

成長戦略におけるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)やアクセラレーション・プログラムは、手段であって目的にはなり得ない。さらにその変数の多い道のりには不確定な協業シナジーと、必要に迫られるファイナンシャル・リターンが待ち受ける。実施をすれば矛盾も起こる。企業トップが明確に「変わらねば」という意思表示しなければ、現場はこの矛盾と葛藤に飲み込まれてしまう。

KDDI∞LaboやKOIFのようなエコシステムは他の企業にも生まれるのか。先行き不透明感が増す中、次の10年が終わったあとの振り返りを楽しみにしたい。(了)

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筆者:平野武士・・ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにてシニアエディターとして取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

イスラエル発パスワードレス認証技術開発Secret Double Octopus、シリーズBで1,500万米ドル調達——日本進出で、ソニーFV、KDDI、GBらから

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企業に対し、職場でのパスワード排除を支援するイスラエルのスタートアップ Secret Double Octopus は、シリーズ B ラウンドで1,500万米ドルを調達した。この投資は、企業が新型コロナウイルスの影響でリモートワークの導入を余儀なくされる中、セキュリティ侵害のリスクが高まるシナリオを想定してのものだ。 2015年に設立された Secret Double Octopus は、パスワー…

Image credit: Secret Double Octopus

企業に対し、職場でのパスワード排除を支援するイスラエルのスタートアップ Secret Double Octopus は、シリーズ B ラウンドで1,500万米ドルを調達した。この投資は、企業が新型コロナウイルスの影響でリモートワークの導入を余儀なくされる中、セキュリティ侵害のリスクが高まるシナリオを想定してのものだ。

2015年に設立された Secret Double Octopus は、パスワード管理が甘いという以前からの問題を解決することを目指している。実際のところ、すべてのビジネスデータ被害の81%はパスワードの漏洩が原因で、2019年のデータ被害1件あたりの平均コストは約400万米ドルと報告されている。このリスクに対処するために、Secret Double Octopus は企業がパスワードを完全にバイパスすることを支援し、従業員がアプリや他のプラットフォームへのログインを「touch and go」というシンプルなプロセスで認証できるようにする。

同社のそう呼ぶ「Octopus Authenticator」という製品は、Office 365、AWS、G Suite、Salesforce、WordPress、Box、HubSpot、SAP など主要なエンタープライズアプリケーションのほとんどに連携可能な多要素認証システムだ。オンラインとオフラインの両方で動作するこの単一の認証機能は、ワークステーション、ネットワーク、VPN へのアクセスにも使用できる。

ユーザはモバイルデバイスでプッシュ通知を受け取り、それをタップしてログイン開始を確認、指紋など生体認証で最終確認できる。

新型コロナウイルス流行前から、従業員が複数の複雑なパスワードを覚える能力に頼らず、セキュリティを強化する方法を模索していた企業は少なくない。パスワード管理アプリ「1Password」は昨年11月、エンタープライズ特化事業の拡大でより強固な立場となるべく、同社の14年の歴史上初となる資金調達で2億米ドルを調達した。今年初めには、1Password の競合 Dashlane が1億1,000万米ドルを調達、ビジネス市場も視野に入れている。

Secret Double Octopus 競合の Trusona は数ヶ月前、Microsoft の投資部門 M12 や Kleiner Perkins などの大物投資家から2,000万米ドルを資金調達した。当時、Trusona は、パスワードレスログイン技術を求める企業からの「前例のない需要」を資金調達の主な理由として挙げていた。

Secret Double Octopus の CEO 兼共同設立者である Raz Rafaeli 氏は、セキュリティ強化と従業員の生産性向上を同時に実現したいと考えている企業にとって、「パスワード管理に関連する手間とコストをなくすこと」がこれまで以上に重要であると述べている。

同社はこれまでに750万米ドルの資金調達を行っており、セキュリティに対する意識が高まっている現在の状況をうまく活用できるよう、今回の資金調達では、ソニーフィナンシャルベンチャーズ、KDDI、グローバル・ブレインを新たな投資家として迎えた。

最近、アメリカとイギリスのサイバーセキュリティ当局者は、何百万人もの人々が自分のデバイスを安全でないネットワーク上で使用しクラウドベースの企業ネットワークに接続していることから、国家の支援を受けたハッカーやオンライン犯罪者が新型コロナウイルスによる混乱を利用していると警告した。脆弱なパスワードが認証プロセスで以前から重要な役割を果たしてきたことを考えれば、この連鎖からこのような問題を取り除くことで、クレデンシャル盗難、フィッシング詐欺、ID 窃用、中間者攻撃などの悪質なスキームから、(企業の)外部や内部の脅威を最小限に抑えることができるだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

未来を創るCVCーー3世代で紡ぐオープンイノベーションの礎と「トップの覚悟」

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回・2回目・3回目・4回目・5回目・6回目) オープンイノベーションのDNA 主力事業である通信とは異なる周辺の「非通信」事業でいかに未来を描くか。そのために自社だけでなく、積極的な協業の戦略を打ったのが2000年代のKDDIだった…

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KDDI∞Labo一期生のギフティは2019年にマザーズ上場を果たした

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回2回目3回目4回目5回目6回目

オープンイノベーションのDNA

主力事業である通信とは異なる周辺の「非通信」事業でいかに未来を描くか。そのために自社だけでなく、積極的な協業の戦略を打ったのが2000年代のKDDIだった。Googleとは検索で手を組み、グリー、コロプラとはエンターテインメント領域でサービスを展開した。2012年にレコチョクと共同で開発した音楽サービス「LISMO」は、モバイルストリーミング音楽サービスの先駆け的存在となった。

異なる分野を拡大させることで事業成長を促すーー協業の可能性のある新興企業に出資して株式公開を支援するプログラム、本体で大きくシェアを取ってグループ化するプラン、そして多くの可能性を引き寄せるオープンな場所を作り出す、という「三段重ねの舞台装置」がそれだ。

遅れてやってきたKDDI Open Innovation Fund

「KDDI Open Innovation Fund(通称:KOIF)の組成は2012年ですね。評価額1億円のスタートアップに1000万円出資するため、年間で数千億円の利益を出す企業の役員たちがずらりと並んで、本格的なデューデリジェンスしてました。現場はすごい緊張感でしたよ(笑」。

当時をそう振り返るのはファンド組成を裏方として支えたグローバル・ブレインの熊倉次郎氏。KOIFが最初に立ち上がったのは2012年2月、KDDI∞Laboが開始された2011年8月から約半年遅れのスタートだった。グローバル・ブレインがKDDIと共同で企画したファンドで、記念すべき第一号出資案件はKDDI∞Laboの一期生ギフティだった(※正確にはタイミングが合わず、一時的にKDDI本体からの出資を後に株式交換している)。

シード期のインキュベーションに出資を一体化し、3カ月という極めて短期の期間にスタートアップさせるスタイルは当時のモデルケースとして多くのコピーが生まれた。ところがKDDIはやや違っていた。なんと、アクセラレーションプログラムに採択されても出資はしない、としたのだ。ではなぜファンドを作ったのか。ここに彼らのオープンイノベーション・プログラムの妙味というか、大企業ならではの理由が隠されている。

2つの取り組みに求められた「成果」

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KDDI∞Labo第6期デモデイの発表会

協業を軸とした成長戦略を考えるにあたり、KDDI∞LaboとOpen Innovation Fundにはそれぞれ目的が設定されていた。2012年からKDDI∞Laboの責任者「ラボ長」として、プログラムの立ち上げを支えた江幡智広氏(現・mediba代表取締役)はこう振り返る。

「いわゆる目標設定をするわけなんですが、ほぼ毎年、同じように書いていたのが『ベンチャーから一番信頼される相談相手になる』という項目です。一方、ファンドはもう少しミッションが具体的で、『次世代のベンチャーと一緒に新しい事業創造する』と『ベンチャーとの関わりを通じて彼らの事業を加速成長させる』というものでした」。

オープンイノベーションを企業が掲げる場合、各社が最初に遭遇する課題が「窓口問題」だ。つまり「KDDI∞Labo」というプログラムはそれ自体がこの最初の課題をクリアするための答えでもあったのだ。当然ながら窓口の扉は叩きやすいことに越したことはない。江幡氏がラボ長のバトンを次に渡す最後の年、経済産業省が主催する調査ランキング「イノベーティブ大企業ランキング」でKDDIはトップを取ることになる。

一方、ファンドは「リターン」という唯一無二の結果が伴う。目標にあるベンチャーの成長を加速させる、という意味は「買った株価が上がること」に他ならない。窓口としてのKDDI∞Labo、結果としてのKOIF。一見すると補完性のあるこの2つの取り組みは、なぜ一体化されなかったのか。そこにはある、大企業ならではのコンフリクトが存在していた。

幅広い可能性とリターンという矛盾

当時、彼らがモデルにしたY Combinatorのスタイルは、おおよそ3カ月のプログラムで日本円にして数百万円を出資し、市場に受け入れられるかどうかギリギリのラインのプロダクトを世に問う、というスタイルだった。

Y Combinatorは多産多死の戦略で正解だった。決済のStripe、バケーションレンタルのAirbnb、オンデマンドデリバリのDoorDash。彼らが掲げるトップ100社の合計価値は1550億ドル、5万人以上の雇用を生み出した(※2019年時点)。しかしこれは逆に言えば「不確実性の塊」とも言える。

明日潰れるかもしれないし数年後大きく羽ばたくかもしれない。KDDI∞Laboで集めていた若き起業家たちもご多分にもれずそういった顔ぶれだった。当然だが、ここにファンドとしてのKOIFに求められる「リターン」とは完全には一致しない。

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mediba代表取締役の江幡智広氏(筆写撮影)

三段重ねの舞台装置

KDDIのオープンイノベーションを語る上で注目すべき出来事が3つほどある。ひとつはKOIFが出資したカジュアルギフトを提要する「ギフティ」の上場、もうひとつがIoTプラットフォーム「ソラコム」の本体買収、そして最後のひとつが前述した「イノベーティブ大企業ランキング」でトップを獲ったことだ。

一見するとバラバラのこれら活動、実はゆるく根底でつながっていた。熊倉氏はこう明かす。

「連携のシナリオは立ち上げ当初からありましたよ。(KOIFは)事業をつくるのを目的にしたファンドだったので、事業に寄与する独占的な買収、協業の可能性を残した上でのIPO。この組み合わせがいいよねって。実際、上場したギフティさんも恐らく、auからやってきたユーザーさんが多いはずです。協業連携がどこよりも強いファンドを作るぞと、こういう状況下で株式公開を支援するし、独占した方がよいケースであればファンドではなく、本体として買収を仕掛ける。一番広い窓口としてKDDI∞Laboがあって、ちょっと斜め上にKOIF、そして(当時の)企業戦略部での本体投資がある。そういう三段重ねの構造だったんです」。

面白いのはこの構造がキレイに三段重なっていない点だ。つまり、KDDI∞Laboを第一関門、その次にKOIFからの出資、最後はKDDIの買収、というようなファネルがあれば、当然、スタートアップ側は買収をゴール設定にしてしまう。

もちろん、そういう期待や結果がなかったわけではないが、KDDI∞LaboをKOIFと切り離すこと(出資を前提としない)ことで、ここの舞台には数多くのアイデアが集まることになった。

KDDI∞Laboにのしかかったプレッシャー

理想的な役割分担とシナリオが見えてきたKDDIのオープンイノベーション戦略。しかし一点、外から見ても大きくストレスがかかっているのではないかと心配する部分があった。それが「KDDI∞Laboとしての結果」だ。アクセラレーションプログラムは通常、育成した企業がその後成長してくれれば結果となる。なぜなら出資がセットになっているからだ。

しかしKDDIは前述した背景からそれを切り離してしまった。当時の苦悩と葛藤を江幡氏はこう振り返る。

「高橋(誠氏・現社長)とは結構やり合いましたね(笑。お前は流暢な理屈で意義のある活動だって言うけど、じゃあ実際いくら売上・利益をつくったんだってね。当然企業として最終的な垂れ流しはありえないわけで、立ち上げ当初の11年や12年はよりそれが強かった。ただ、彼は現場に来てくれるし、支援先とも直接話をしてくれる。絵空事、とは言わないまでも、大きなビジョンに向かうことと短期的な実際の利益は噛み合わないし、大企業の事業計画やIRとはワケが違う。この辺りは高橋も理解してくれていたのではないですかね。ゆるいというか足が長いことを。2015年あたりからかな、もう少し先を見通した投資でもいいよ、という雰囲気が徐々に作られていきました」。

確かに第一期生のギフティや、出資にまで繋がって、その後売却したソーシャルランチのように経済的な結果をもたらすケースもあったが、1兆円規模の利益を生み出すKDDIグループ全体から言えばやはりインパクトは薄い。

そんな状況を変えたのが日本全体における「オープンイノベーション」文脈の盛り上がりだった。大企業がスタートアップなど他の企業と手を組んで新たなイノベーションを興すこの仕組みは、経済産業省の「第4次産業革命」や、内閣府の「Society5.0」といったイノベーション指針を実現するための手法として注目を集めることになる。

結果、KDDI∞Laboは「共創」というキーワードの下、スタートアップだけでなく、他の大企業を含めた企業連合という考え方をスタートさせた。それまでの「スタートアップとKDDI」という構造を「スタートアップと企業、それを支えるKDDI」という図式に描き直したのだ。そしてこの流れは更に進み、KDDI∞Laboの上で企業同士がつながり、5Gという新たなインフラでビジネスを生み出そうというプラットフォームに進化している。

トップの覚悟

2011年の終わりに始まって、2020年の今もなお、成長を続けているKDDI∞LaboとKOIF。

オープンイノベーションの取り組みとしては理想的だ。これまで積み上げてきたネットワークもあるので、VC各社が投資する質の高いスタートアップや、ケースによってはマザーズ上場レベルの企業と手を組むこともあるだろう。

しかし、ここまで書いてきた通り、道のりは決して楽なものとは言えなかった。辞めようという選択肢はなかったのだろうか。この点について江幡氏、熊倉氏の二人とも口を揃えたことがある。それがリーダーシップ、トップの決意というものだった。

「(プログラムを辞める話は)なかったと思いますよ。やり切るというか、高橋もちゃんとこの事業を見てくれてるという安心感はありました。そんなにすぐ投げることはないだろうという。テスト的にピッチイベントやってすぐ終わる、そういう他社のケースも情報としては耳に入れていました。そういう話が増えれば参加するベンチャーも心配になるだろうし、時間はかかるけど長くやることに価値がある、とね」(江幡氏)。

一方、∞Laboと異なり確実な「リターン」という成果を求められるKOIF。ファンド組成にあたり、KDDIチームと密に連携していた熊倉氏は当時のリーダーシップをこう表現していた。

「(当時社長の)田中(孝司氏・現会長)さん、高橋さんラインがこのプロジェクトのオーナーシップだったのですが、圧倒的に高橋さんのコミット、リーダーシップが強かったですね。その他にも専務・役員クラスの方々がいらっしゃってそれぞれの役割においてチャンピオンが必ず決まってる。そしてそれらをしっかりと連携させているのが印象的でした。KDDI∞LaboもKOIFも舞台装置です。特にこの上で踊る人たちは本体事業と違ってボラティリティが遥かに大きい。だからこそ最初に決めたことをやり切る体制、全体を仕切るリーダーシップが重要だったんです」(熊倉氏)。

次回はKDDI∞Labo、KOIFと並んでKDDIオープンイノベーション戦略を語る上で重要なソラコム買収とグループ間連携について紐解く

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筆者:平野武士・・ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにてシニアエディターとして取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

未来を創るCVCーー5Gは「移動」の概念を変える・Synamonの挑戦とKDDI∞Labo

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\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回・2回目・3回目・4回目・5回目・6回目) 2020年は間違いなく「5G元年」として振り返る年になるだろう。 各通信キャリアは高速大容量通信によって社会がどう変わるか、様々なケーススタディを交えた特設ページを揃って開設している。そ…

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\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回2回目3回目4回目5回目6回目

2020年は間違いなく「5G元年」として振り返る年になるだろう。

各通信キャリアは高速大容量通信によって社会がどう変わるか、様々なケーススタディを交えた特設ページを揃って開設している。そしてコンテンツとしては最高の東京オリンピックがやってくる。ここまでお膳立てが揃っているタイミングもそう多くない。

一方で5Gの活用はややスッキリしない。確かに大容量のモバイルデータ通信は、映像のようなリッチコンテンツを数秒で配信するといった体験の向上には役立つ。ロボットの遠隔操作もビジネスを変えてくれそうだ。しかし、それはあくまで有線や4Gの延長線上でも「想像」できる。

スマートフォンで発生したパラダイム・シフトの価値は、単なる通話しかできなかった「電話」をあらゆる生活サービスにアクセスできる「コンシェルジュ」に変化させたことにある。できれば5Gがダイナミックに生活を変える変化に直結して欲しい、と思うのはいささか期待し過ぎだろうか?

私にはひとつ、注目している体験がある。それが「移動」だ。

XR空間とテレビ電話会議は何が違う

「XR空間では、狭い会議室の中に3キロメートル×3キロメートルの広大な屋外空間を展開できるので、ここで例えば実寸大の橋や建物を関係者集めて確認することもできるんです」(Synamon武井勇樹氏)。

東京五反田の一角、スタートアップが集積している商業施設がある。その一室にスタジオを構えるのがSynamon(シナモン)だ。「XRコミュニケーション」を手掛ける彼らの技術はまさに移動体験を変えるものになる。

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「NEUTRANS BIZ」実物大の仮想空間でのミーティングを可能にする

例えばイベントの会場レイアウトを確認するとしよう。ミーティングルームに図面を持ち込んで計画するより、実際の会場に足を運んでみたほうがイメージが湧く。当然だが、実際の見学は様々な調整が付きまとう。

先ごろ公開された新バージョンの「NEUTRANS BIZ」は、目の前のXR空間に、巨大な空間や展示ホール、会議室のようなミーティングルームを出現させる。人々はどこにいてもよい。現実世界の会議室、協業するパートナーのオフィス、時差のある外国。時空を超えて人が集まり、実際のサイズの展示ホールで次のイベントのレイアウトを確かめることができる。

彼らが目指す先に感じるのは、人の発想を刺激する仕掛けづくりだ。図面をデータで共有してテレビ電話会議したとしても、おそらく会場を「感じる」ことはできない。ステージの微妙な位置やサイズ感、人を入れた時の熱気。人はそこから感じる何かでアイデアを生み出すことができる。

空間の移動に必要な5Gと「何か」

4年前に鬼才、イーロン・マスク氏が発言した「私たちはビデオゲームの中で生活できる」という世界観を思い出す。現実と仮想が曖昧になる時代。

仮想空間に存在するために私たちが議論すべき最大のポイントはここなんだ:40年前、私たちは「Pong(※簡単なゲーム)」を手に入れた。2つの長方形とドットだ。そして今、40年後に私たちは仮想的に数百万人が遊んでいる写実的な3Dを手に入れている。仮に全てにおいてある一定の改善割合を想定したとしよう。たとえその割合が今の状況から1000以下に落ちたとしたとしても、おそらくゲームは現実と区別がつかないものになる。

人がそこに「それがある」と感じるためには、8Kほどの高精細映像が必要になるそうだ。有線は当然ながら、5G通信はモバイル環境での8Kデータ転送を可能にする。より広範囲の環境で仮想と現実の境界線は曖昧になっていく。

このパラダイムを現実にするには何が必要なのだろうか。2007年に登場したiPhoneによってもたらされた「タッチパネル」体験は、3G、4G回線を手にしてシェア・オンデマンド経済を生み出すことになる。5Gを「手触りある体験」にする技術は何か?

「デバイスのポイントはデバイス、チップ、ネットワークと多様です。しかしそれ以上に必要なのがコンテンツを作るハードル。XR空間では2Dの情報を3Dに変換する必要があります。ここの商用化にはもう少し時間がかかる」(武井氏)。

デバイスの普及もまだ時間がかかる。ニールセンが公開した2018年の推計で本命と言われるFacebookのOculus Questは、2019年5月の発売後1年で173万台近くを出荷するとしていた。しかし、実際は2019年11月の決算で示された数字は40万台程度に留まる。

「特にビジネスでの利用は『なんちゃって』では普及しません。例えば昨年に実験した防衛医大との5G・VRを活用したトリアージ(救援重要度判定)などの取り組みでは、絶対に行けない場所でリアルタイムに作業ができる、といった確実なベネフィットが必要です。リアルでできないことができるようになってはじめて普及期が訪れる」(KDDIライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部長の中馬和彦氏)。

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2010年という転換点

スタートアップ乱立の今、国内の支援事例を振り返ると明らかに大きな転換点となるポイントがあった。2010年初頭、日本に「アクセラレーション・プログラム」のトレンドが流れ込み、独立系VCやCVCがこぞって「Y Combinatorモデル」を採用したあの時期のことだ。

デジタル・ガレージにサイバーエージェント、孫泰蔵氏率いるモビーダ、メルカリ投資で一斉を風びしたEastVenturesにインキュベイト・ファンド。この中にあって異色の顔ぶれがKDDIの「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」だった。投資ファンドでもなく、事業シナジーを成果とする事業投資ともやや異なる、純粋にスタートアップを育成する、言わば「独自の起業エコシステム」のような存在に当時、疑問符が多く付いたのを記憶している。

KDDIは1兆円の利益を稼ぎ出す日本有数のインフラ企業だ。スタートアップエコシステムが成熟してからの参入でも遅くはない。なぜ10年近くも前だったのか。

そこにはこの企業が辿ったオープンイノベーションに対する「歴の長さ」が関係していた。

通信企業における「非通信」事業への投資

KDDIの最新決算(2020年第3四半期)をみると注目すべきポイントが2つある。ひとつは非通信領域の躍進だ。ローソン・Pontaポイントとau Payの連携にみられる「非通信」領域の営業利益は年次で約26%増の1360億円となった。また、通信領域でもここ数年力を入れているIoT領域で契約回線数が1000万件を突破。利用領域もスマートメーターやテレマティクスなどの既定路線から、2017年にグループ入りしたソラコムのように、新たな利用シーンを提供するケースも積み上がっている。

本業(通信)が盤石な間に周辺領域を成長させる。ポートフォリオとして当たり前の戦略も体が大きくなればそう簡単なことではない。この布石はおよそ15年前に遡る。

「そもそも(現社長の高橋誠氏は)フィーチャーフォンの立ち上げからEzweb、グーグル検索の導入だったりLISMOのようなエンターテインメントコンテンツなど、非通信の領域を中心に手掛けていました。それが2003年とかその辺りですね。それを大企業や中小、ベンチャー問わず、パートナーシップによって成長させてきた、という経緯があるんです」(中馬氏)。

大きく状況が変わるのが2007年のiPhone登場、いわゆる「スマホシフト」だ。フィーチャーフォンアプリで独自の課金エコシステムを構築してきた国内通信キャリアは、その市場をAppleやGoogleといったグローバル・マーケットに奪われていくことになる。

「KDDI ∞ Laboって当初は『スマホのアプリを探そうプロジェクト』みたいな感じだったんです。ちょうど当時、高橋もネットベンチャーが生まれていく様相を見ながら、Y Combinatorみたいな仕組みがスマホの世界には必要なんじゃないかって考えていて」(中馬氏)。

こうしてKDDIのオープンイノベーションの取り組みは次のステージに向かうこととなる。

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∞ Laboが拠点とする「KDDI DIGITAL GATE」(写真提供:KDDI)

手探りで積み上げた独自のエコシステム

∞ Laboが輩出した事業で大きく成長したのは、昨年上場を果たしたギフティだろう。第一期生としてプログラムに参加したソーシャルギフトのアイデアは、最終的にエンタープライズ向けのモデルが大きく成長し、IPOを果たすこととなった。プログラムも順調にスタートアップを集め、2014年には企業パートナーを取り込んだオープンイノベーションの形をつくることになった。

一方、2011年に開始したプログラムに迷いがなかったかというとそうとは言い切れない。筆者も現場で取材に当たっていたが、スタートアップ、連携する企業にそれぞれの温度感は異なっていたように記憶している。

「当初はやはり30代の若手社員が入って一緒に事業を作るような感じもありました。ただ、スタートアップ、事業会社共に成熟してきた結果、局面は変わってきたと感じてます。事業づくりのフェーズは引き続きやりますが、それ以上にやはりグロースです。私たちができることはこの成長局面を支援する」(中馬氏)。

きっかけはやはり2020年を元年とする5Gの開始だ。これまでのインターネットテクノロジーでは、書店や小売にしてもあくまでインターネットの中で完結してしまっていた。5G時代は大きくそこからシフトする。「ビルから信号機からクルマ、あらゆるモノがフルに通信する時代」(中馬氏)に大企業の存在は無視できなくなる。

スタートアップがアイデアを出し、面を押さえている企業と組み合わさることで大きな利益を生む。ちなみにここで言うスタートアップはアイデアだけの零細企業のことではない。この10年で大きく成長したネット企業も対象になりうる。

つまり次に重要な視点は「事業」になるかどうか、というわけだ。次回はKDDI∞ Laboを支えたもうひとつのエンジン、KDDI Open Innovation Fundについてその立ち上げの経緯をまとめる。

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筆者:平野武士・・ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにてシニアエディターとして取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

KDDI∞LaboがclusterでVRデモデイを開催、「5Gを接着剤に」大企業とスタートアップの協業を促す新体制を始動——協業4プロジェクトを披露

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KDDI は24日、第13期目となる KDDI ∞ Labo のデモデイを開催した。新型コロナウイルス対策のため、今回のデモデイは VR イベントプラットフォームの「cluster」を通じて実施され、その模様は YouTube Live、Facebook Live、Periscope で中継された。すべてのプラットフォームを通じての視聴者は、数百名程度に達したとみられる。KDDI ∞ LABO が…

KDDI は24日、第13期目となる KDDI ∞ Labo のデモデイを開催した。新型コロナウイルス対策のため、今回のデモデイは VR イベントプラットフォームの「cluster」を通じて実施され、その模様は YouTube Live、Facebook Live、Periscope で中継された。すべてのプラットフォームを通じての視聴者は、数百名程度に達したとみられる。KDDI ∞ LABO が cluster を使ってピッチイベントをオンライン・バーチャル開催するのは今回で2回目。

KDDI はこの日、スタートアップ向けの事業支援プログラム「5G for Startups」と事業共創プログラム「∞ の翼」を発表した。KDDI は今日3月26日から日本国内主要都市で 5G サービスをスタートさせるが、「5G を接着剤に」として、「KDDI ∞ Labo パートナー連合」に参加する大企業46社とスタートアップの協業を促す。

5G for Startups は、予算がついている大企業の商用プロジェクトにスタートアップを参加させることで、スタートアップによる 5G サービス創出を狙う。5G による既存事業のアップデートや、5Gを活用した革新的なビジネスモデル創出を目指すスタートアップを対象に公募を受け付け、選考されたスタートアップには、パートナー連合から事業支援アセットを提供する。

∞ の翼は、大企業各社で進行中の新規事業プロジェクトを公開し、各プロジェクトごとにスタートアップとの事業化を推進する共創プログラム。∞ の翼の第1弾として、「5G × コミュニケーション」「5G × 商業施設」「5G × テレビ番組」「5G×スタジアム」の4つの事業共創プロジェクトと、それに参加する大企業とスタートアップが紹介された。

5G × コミュニケーション

  • テーマ: 新たなイベント観戦、コミュニケーション体験の創出
  • プロジェクトオーナー: ミクシィ、KDDI
  • 提供アセット:マーケットイン(ミクシィ)、5G 通信環境(KDDI)

取り組み内容:

  • リアルなアバターにて、現実世界とバーチャル世界を溶け込ませる新しいエンターテインメント体験
  • 観客と主催者・演者とが、双方向でコミュニケーションし、皆で盛り上がることができる演出
  • 自宅やお店、パブリックビューイングなど、遠隔地からでも会場とインタラクション可能になる仕組み

採択スタートアップ: VRC

SNS に始まり、現在はソーシャルゲームデベロッパとしてのポジションを色濃くするミクシィだが、ポストソーシャルゲーム時代の新たなキラーコンテンツ開発を加速すべく、スタートアップとの共創を狙った「CROSS ACCELERATOR」を先日公開した。同社では、このコンテンツ開発にリアルアバター、アバターを使ったデジタルとリアルを地続きにするデジタルツインが必須と考えているようだ。

VRC は、実在する人物の全身 3D モデリングを行い、わずか20秒でリアルアバターを作る技術を有する。実際に今回のデモデイで使われた登壇者のアバターも VRC の技術を使った作られた。コストパフォーマンスを重視しており、一度取得したアバターデータを複数アプリケーションで活用できる。バーチャルフィッティング、服装コーディネート、エンタメコンテンツなどへのの適用を狙う。

5G × 商業施設

  • テーマ: 商業施設の運営効率化や新たなお客さま体験の創出
  • プロジェクトオーナー: 三井不動産、KDDI
  • 提供アセット:ららぽーと他商業施設(三井不動産)、5G 通信環境(KDDI)

取り組み内容:

  • 自律移動型ロボットを活用した、商業施設の新たな警備システムの開発
  • 5G 通信環境を活用したサービス・ビジネスモデルの開発
  • その他、商業施設の運用効率化や新たなお客さま体験の創出

採択スタートアップ: SEQSENSE

三井不動産は、ららぽーとに代表される商業施設運用部が中心となり、警備・清掃・設備保守点検などの運営コスト低減につながる事業共創案、快適なショッピング体験の創出、5G を生かしたイベントの催事向けエンターテイメントなどの提案を求めた。

2016年に設立されたロボティクススタートアップの SEQSENSE は、スターウォーズの R2-D2 のような機能性を持ったドロイドロボットを開発しており、自律移動型警備ロボット「SQ-2」は、オフィスビルのほか羽田空港にも導入された。周辺環境や自己位置の把握技術で群を抜いており、ソフトウェア、ハードウェア、アルゴリズムを一気通貫で提供できることを強みとする。

3社では、テクノロジーを駆使した安心快適な商業施設の創造を目指す。2020年度は、三井不動産所有商業施設で 5G 環境を使ったロボット警備システムを開発、2021年度以降、異常検知と連動した動作の実現、警備ロボットの屋外展開、清掃や運搬など警備以外の領域への活用を目指す。

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5G × テレビ番組

  • テーマ: テレビ番組と連動した新たなビジネスの創出
  • プロジェクトオーナー: テレビ東京
  • 提供アセット:シナぷしゅ(テレビ東京)

取り組み内容:

  • 放送番組内容と連動し、放送局としての新たな商品やコンテンツの開発に結び付く事業共創

採択スタートアップ: トラーナ、ピースオブケイク

テレビ東京は、乳幼児向け子供番組「シナぷしゅ」を制作している。子供向け番組としては、NHK の E テレ(旧・教育テレビ)が先行するが、赤ちゃん目線を徹底することでオルタナティブな位置づけを目指しており、実際に子供を持つ複数のテレビ東京社員がプロデューサーを手掛けている。テレビ東京系列の全国ネットで昨年末にパイロット版を放送、今年4月からは月〜金に本放送が開始される予定だ(午前7時35分〜午前8時、現在「朝の! さんぽ道」が放送されている時間枠)。

一方、スタートアップであるトラーナは、おもちゃのレンタルサブスクリプションサービス「トイサブ!」を提供している。月額3,340円(税抜)で、2ヶ月毎に古いおもちゃを返却し、新しいおもちゃが送られてくることが特徴。子供にどんなおもちゃを選べばいいかわからない親のために、子供の成長や2ヶ月毎の親からのフィードバックに応じて、最適なおもちゃが提案される。

テレビ東京では、シナぷしゅの視聴者で構成されたオンラインサロンをピースオブケイクの「note」を使って構築し、トラーナの協力の元、シナぷしゅ視聴者の意見を取り入れた「令和の時代の新たな知育玩具」の創出を目指す。

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5G × スタジアム

  • テーマ: スタジアムにおける新たなスポーツ観戦体験の創出
  • プロジェクトオーナー: KDDI、名古屋グランパスエイト
  • 提供アセット: 豊田スタジアム(名古屋グランパスエイト)、5G 通信環境(KDDI)

取り組み内容:

  • 試合のスタッツや観客の盛り上がり具合などをリアルタイムに可視化
  • 会場外のスペースも使い、場内と同様の熱量で観戦できる仕組み
  • 試合前や試合中に、客席からでもスマホで操作できる、双方向型のイベント演出

採択スタートアップ: ENDROLL

プロサッカーグラブを運営する名古屋グランパスエイトは、一度のゲームでに数万人のファンが訪れるスタジアムで、これまでになかった興奮の提供を模索している。新たなスポーツ観戦体験の創出により、ファンエンゲージメントを高め、より多くの顧客により深くゲームを楽しんでもらうことを狙う。

このテーマに採択された AR スタートアップの ENDROLL は、イマーシブな(没入型の)AR エンターテイメントプラットフォームを開発している。世界最大の AR コミュニティ「AWE」の東京イベントのオーガナイザーを務めるほか、先月にはタイトーと協業し、新たな AR エンターテイメントを開発することを明らかにしている。

今回の協業で、ENDROLL は、ファンによる多人数同時参加型のイマーシブエンターテイメントを開発するとした。名古屋グランパスエイトのサッカー選手たちが、サッカー選手という道を選ばなかった時のストーリーをフィクション仕立ての AR 体験コンテンツの形で提供するようだ。観戦前コンテンツを充実さえ、豊田スタジアムをテーマパーク化したいと意気込む。

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位置情報分析のナイトレイ、KDDIと提携し地域活性化支援サービスを強化——モバイルから得られる高解像度の動態ビッグデータ活用で

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位置情報データのアナリティクス技術を開発するナイトレイは10日、KDDI と提携し同社の位置情報ビッグデータ活用サービス「KDDI Location Data」と連携することを明らかにした。これにより、観光分析ニーズ、MaaS、まちづくりなど地域活性化支援サービスを提供することが可能になるとしている。ナイトレイはこれまでに、南伊豆・西伊豆の MaaS プロジェクト、竹中工務店とまちづくり関連プロジ…

位置情報データのアナリティクス技術を開発するナイトレイは10日、KDDI と提携し同社の位置情報ビッグデータ活用サービス「KDDI Location Data」と連携することを明らかにした。これにより、観光分析ニーズ、MaaS、まちづくりなど地域活性化支援サービスを提供することが可能になるとしている。ナイトレイはこれまでに、南伊豆・西伊豆の MaaS プロジェクト竹中工務店とまちづくり関連プロジェクトなどに取り組んでいる。

ナイトレイはこれまで、ソーシャルメディア上に投稿された情報を解析し、ユーザ行動の位置情報解析を行っており、そうして生まれたのが2015年にローンチした訪日外国人観光客の動きを可視化する「inbound insight」だ。ただ、そうして拾えるのは自分から情報を発信した人の動きのみで、そうではない受動的な人の動き(地元住民を含む)をどう拾うかが課題となっていた。

KDDI Location Data は2019年に開始された新サービスで、同意を得た au スマートフォンユーザの端末から位置情報などを取得し、性別や年齢層といった属性情報を付し、匿名処理を施してビッグデータとして提供されるもの。1時間単位の移動滞在データを最も細かい粒度で125m単位で把握できるほか、15分ごとに1時間先の情報を未来予測データとして提供される。

KDDI Location Data の情報を取り入れることで、ナイトレイは訪日外国人観光客にとどまらず、地元住民や旅行者を含む日本人の動態を捕捉できるようになるため、日本人旅行者の観光課題分析、MaaS 導入プロジェクトのデータ活用支援、まちづくり関連プロジェクトのデータ活用支援が可能になるとしている。ターゲットユーザとしては、地方自治体、鉄道会社、観光関連、DMO(観光地経営組織)など。

ナイトレイはこれまでにも、NTT ドコモと提携し訪日客(ローミングインのユーザ)の匿名化された動向データ、経済産業省と交渉して国が持つ訪日客の動向データなどを集め解析し、サービスのバリエーションを増やしてきた。これまでに、SNS ビッグデータを利用してユーザと地域の飲食店を結ぶモバイルアプリ「ABC Lunch」、訪日旅行者向け観光サポートアプリ「ZouZou」、ポケモンGOの人気スポットを地図上に表示する「Pokémon GO Insight」などをリリースしている。