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シリーズ:リープフロッグ

シリーズ:リープフロッグ

ここ数年、アフリカなどで発生しているテクノロジーの「リープフロッグ」現象。いわゆるタイムマシンモデルで、各国で発生したインターネット・テクノロジーが一気に新興市場で花開く状況を指す。カーシェアやEC、フィンテックなど、一足飛びに進化したモデルはどのような市場を生み出すのか。関連するケーススタディをお届けする

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シリーズ:リープフロッグの話題

東南アジア版「価格コム」iPrice、EC急成長中のフィリピンで拡大目指すーーLINE Venturesなどが出資

ピックアップ:PH-based JG Digital invests in e-commerce aggregator iPrice Group ニュースサマリ:東南アジア7カ国で事業を展開するeコマースアグリゲーターiPriceグループは9月、今年3月に実施したシリーズBの追加ラウンドとして新たに資金調達を実施したと発表した。具体的な調達額は発表されていない。リード投資家にはJG Summit …

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ピックアップ:PH-based JG Digital invests in e-commerce aggregator iPrice Group

ニュースサマリ:東南アジア7カ国で事業を展開するeコマースアグリゲーターiPriceグループは9月、今年3月に実施したシリーズBの追加ラウンドとして新たに資金調達を実施したと発表した。具体的な調達額は発表されていない。リード投資家にはJG Summit Holdings, Inc. 傘下のベンチャーキャピタル JGDEV(JG Digital Equity Ventures)が参加している。

前回のACA Investmentsがリードした調達ではLINE Venturesや大和PIパートナーズが参加しており、1,000万ドル規模の資金を調達していた。同社の資金調達総額は、前回のシリーズBラウンドまでで約1,980万ドルに達している。同社は調達した資金を用いてキャッシュレス決済とともにeコマース利用が急速に普及するフィリピンでの事業拡大を目指す。

詳細な情報:2014年にマレーシアのクアラルンプールを拠点に設立されたiPriceの主要なサービスとなっているのはeコマース向け価格比較プラットフォームだ。欲しい商品を検索すると国内の提携ECサイトそれぞれでの販売価格を一覧で確認することが可能。その後ユーザーがiPriceから各サイトに飛び決済を完了することで当該サイトから収益を得る仕組みとなっている。

  • これまで、フィリピンにおけるEC利用率は2%程度に過ぎず、東南アジア諸国の中でも普及率は下位の方に位置していた。しかし、新型コロナウイルスの流行により同国政府が長期間に及ぶ厳格なロックダウン政策を実施したことで、キャッシュレス決済の急速な普及が進むとともにECの利用者も急増した。
  • BusinessWorldによれば、フィリピンのインターネットユーザーの91%がロックダウン期間中にオンラインで販売されている商品やサービスを検索し、そのうちの76%が実際に購入に至ったとしている。
  • 今回の資金調達によりiPriceはJGDEVの支援を受け、Robinsons Rewards(フィリピンでチェーン展開を行なうスーパーマーケットのRobinsonグループが提供するポイントカードアプリ)や同グループのウェブメディアPEP.ph といった地元企業とのパートナーシップをすでに締結済み。 今後もJG Summitグループのエコシステムとのさらなるパートナーシップ締結の機会を模索していく予定。

背景:iPriceは現在マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、香港で事業を展開している。プラットフォーム全体には、50億点にものぼる商品が登録され、毎月約3,000万人以上のユーザーが利用、新型コロナウイルスの流行以降には利用者が急増し、トラフィックは最大で60%増加した。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

トゥクトゥクがラストワンマイルのキー、ケニアで拡大する小売向けEC「Sokowatch」

ピックアップ:The BackEnd: How Sokowatch uses tricycles as warehouses for its African Amazon ニュースサマリー:シリーズAラウンドにて1,400万ドルを調達したケニアのSokowatchは、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダの4カ国9都市の1万6,000を超えるインフォーマルセクターの小売業者に米や石鹸などの生活必需…

Image Credit :Sokowatch

ピックアップ:The BackEnd: How Sokowatch uses tricycles as warehouses for its African Amazon

ニュースサマリー:シリーズAラウンドにて1,400万ドルを調達したケニアのSokowatchは、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダの4カ国9都市の1万6,000を超えるインフォーマルセクターの小売業者に米や石鹸などの生活必需品を届けている。

詳細な情報:ケニアのナイロビを拠点とするSokowatchは、低コストなトゥクトゥクを用いた配送を特徴とするB2B ECスタートアップ。運転資金不足に困る小売業者には支払いの後払いに対応するなど、インフォーマルセクターの小規模小売業者を対象とし、4カ国9都市で展開している。

  • Sokowatchがターゲットにしている1日あたり25ドルから100ドルの収益を上げる小売業者。多くは資金面や店舗面積の問題で卸売業者から商品を一度に大量に仕入れ届けてもらうことができない問題を抱えている。そのため、自ら卸売業者の倉庫や市場に出向いて商品を仕入れる必要があるため、交通費がかかったり一度店舗を閉めたりと、売り上げや収益を上げるのを阻害する要因となっている。
  • Sokowatchのグローバルイノベーション責任者であるKagichiri氏によると、同社のビジネスモデルのコアはトゥクトゥクで、オートバイとは異なりトゥクトゥクには商品を置ける十分なスペースがあり、バンやピックアップトラックに比べて調達や保守費用が安価。
  • Sokowatchはトゥクトゥクを倉庫とロジスティクスの融合と捉え、モバイルデポとして活用することで注文したその日の配送に対応する。同社は大量買付した商品を小売業者に小分けにして売り、その差額で収益を得ているため、トゥクトゥクによる各店舗への配送は無料で実施する。これにより小売業者はこれまで市場に行くためにかかっていた時間とコストをゼロにすることが可能となった。
  • モバイルデポであるトゥクトゥクに商品のストックがなくなってしまった場合には、メイン倉庫からライダーが派遣され対象のトゥクトゥクの元へと商品の補充に向かう。Sokowatchでは、リアルタイムでの注文情報と商品のトラッキング情報や過去のデータも活用する。これまでの取引データとリアルタイムな注文情報を活用し、それぞれの小売業者向けにパーソナライズされたプロモーションとビジネスインサイトの提供を行う。
  • 過去の取引データをもとに小売業者のニーズを予測できる「スマートコールリスト」を開発。在庫のなくなりそうな顧客に事前に連絡して在庫状況の確認や配送日の予定を立てることで、トゥクトゥクはより効率的に配送が行なえる。
  • 資金繰りに悩む小売業者向けには、これまでの取引データをもとにした審査によるファイナンスサービスも行う。現金で取引を行なう場合には支払いを後払いとし、配送当日の営業終了時または最大1週間程度後までの期間で支払い期日を設定出来る。これにより小売業者は仕入れた商品を販売し売り上げを得てからSokowatchへの支払いをすることができるため、運転資金不足の回避につながる。
  • 店舗運営や商品の注文・支払いなどに利用することを想定したスマートフォン購入のためのローンなど、特定の物資購入のための融資も行なっている。同社のサービスはスマートフォン以外にもSMSでの商品注文にも対応しているため、スマートフォンを持っていなくても利用できる。

背景:CEOで創業者のDaniel Yu氏は2012年エジプトに住んでいた際、地方の医療センターと医薬品の供給源を繋ぐデジタル在庫管理システムのアイデアを発案。その後、アフリカと中央アメリカ5カ国で成功を収めるプロジェクトとなったが、NGOの多国籍ヘルスセンター向けシステムであったため営利事業への転換は不可能であった。そこで同システムを利用したビジネスとして、ケニアの小規模な小売業者が抱える問題と流通市場の抱える問題に着目しSokowatchを立ち上げた。Yu氏によれば、東アフリカだけでもインフォーマルセクターの生活必需品市場の規模は約1,800億ドルあり、アフリカの他の地域も含めた全体では6,000億ドル程度で、現在増加傾向にあるという。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

西アフリカのGrab・Gojekを目指すGozem

ピックアップ:How Gozem transitioned from a motorcycle-hailing platform into a super app in two years ニュースサマリー:西アフリカ・トーゴ発のスタートアップGozemは今年3月、プレシードラウンドにてPlug and Playより資金調達を実施したと発表している。2018年11月にトーゴで配車サービスを提供する…

Image Credit:Gozem

ピックアップ:How Gozem transitioned from a motorcycle-hailing platform into a super app in two years

ニュースサマリー:西アフリカ・トーゴ発のスタートアップGozemは今年3月、プレシードラウンドにてPlug and Playより資金調達を実施したと発表している。2018年11月にトーゴで配車サービスを提供する会社として始まったGozemは徐々に提供エリアとサービスを増やし、当初からモデルとしているGrabやGojekのようなSuper Appへと徐々に成長を重ねている。

将来は西アフリカ版のGrabやGojekとなることを目指し、提供国や提供サービスを徐々に追加している。同社によれば、Gozemのアプリは既にサービス開始以来50万以上のユーザーに利用されている。

詳細な情報:今年7月にeコマースサービスと配送サービスを開始するタイミングでアプリインターフェースを刷新、これまでの配車サービスがメインだったアプリから、統一されたプラットフォーム上で複数のサービスが利用できるSuper Appへと生まれ変わった。

  • 同社によれば、10年前の東南アジアと現在の旧フランス領西アフリカ地域の交通機関網にはバイクタクシーの多さや組織化されていない交通機関網など共通点が多いことに気づいたという。また創業者の1人であるRaphael Dana氏は実際に東南アジアで配車サービスを体験していたこともあったため、当初からGrabとGojekをモデルとして事業を開始した。
  • 2019年に新たにベナンでもサービスの提供を開始、当初はバイクだけだった配車サービスにはトゥクトゥクとタクシーが加わる。
  • 今年5月には、当該地域でサービスを提供するモバイル通信会社Etisalatグループと提携。Gozemのユーザーはアプリ内ウォレットから同社のモバイルマネーMoov Moneyを使用したキャッシュレス決済が可能に。
  • さらに7月には、トーゴのロメとベナンのコトヌーでeコマースと配送サービスを開始。本来、eコマースサービスの開始はもう少し先を予定していたが、新型コロナウイルスの影響でオンラインショッピングの需要が増大したため時期を早めてのリリースとなった。
  • 現在までにサービス提供エリアはトーゴとベナンの首都を含む両国7つの都市に拡大。次はカメルーンとガボンへの参入を予定し、既に両国でドライバー志望者を募り6,000人以上がウェイティングリストに入っている。
  • 今後はコンゴ民主共和国、マリ、ブルキナファソ、セネガル、コートジボワールへでの事業展開も計画しているという。また、配車サービスの乗車記録数は2019年の第4四半期は35万回、2020年第一四半期は50万回と今年に入り利用が増加している。

背景:2017年の時点でアフリカ大陸には21の国に60を超える配車サービスが存在していた。しかし、旧フランス領西アフリカ地域には同様のサービスがなく、当地でのビジネスを始める機会を模索しながらシンガポールなどの東南アジアに滞在していたRaphael Dana氏と、以前にナイジェリアのUberで働いていた経歴を持つEmeka Ajene氏が出会いGozemが創設された。

旧フランス領西アフリカ地域はかつてフランス領だったモーリタニア、セネガル、フランス領スーダン(現在のマリ共和国)、フランス領ギニア(現在のギニア)、コートジボワール、ニジェール、オートボルタ(上ボルタ、現在のブルキナファソ)とフランス領ダホメ(現在のベナン)の8地域を指す。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

医師不足の南アフリカで医療ネットワークを構築する「Vula Mobile」

重要なポイント:アフリカの多くの国と同じく医師不足が深刻な南アフリカでは、周囲に専門的な知識を持つ医師のいない状態でコミュニティヘルスワーカーと呼ばれる人達が病人のケアや簡単な治療を行なうケースが多くある。医療従事者向けアプリVula Mobileはこういった人達の抱える問題を解決し、南アフリカ全体での効率的な医療ネットワークを構築、同国の医療問題解決に貢献している。 詳細な情報:2019年度に南…

Image Credit : Vula Mobile

重要なポイント:アフリカの多くの国と同じく医師不足が深刻な南アフリカでは、周囲に専門的な知識を持つ医師のいない状態でコミュニティヘルスワーカーと呼ばれる人達が病人のケアや簡単な治療を行なうケースが多くある。医療従事者向けアプリVula Mobileはこういった人達の抱える問題を解決し、南アフリカ全体での効率的な医療ネットワークを構築、同国の医療問題解決に貢献している。

詳細な情報:2019年度に南アフリカのアプリアワード MTN Business App of the Year Awards のベストヘルスアプリ賞を受賞した医療従事者向けアプリVula Mobileは今年、新型コロナウィルスの感染の広がる南アフリカで全国的な「Doctors-on-call hotline」として治療にあたる医療従事者を支援、改めてその価値を証明した。

  • 医師不足の南アフリカでは、人口10万人あたりの医師の数が都市部で53.3人、それ以外では39.8人程度となっている。日本は206.3人
  • 都市部以外に住む多くの人は簡単にアクセス出来る場所に病院が存在せず、代わりにトレーニングなどを経て、限られた医療行為のみ許可されたコミュニティヘルスワーカーと呼ばれる人々が中心となって各地での病人のケアや薬の処方などにあたる。そのほか、地方の病院には医師であっても経験の浅い医師が1人だけで診療・治療の対応にあたっている施設もある。
  • Vula Mobileは主にこのような医療従事者を対象としたアプリで、53以上の診療科目で必要とする時に医師の専門的な意見やアドバイスをもらうことができる。医療従事者が症状などを元に照会をかけると、条件に合致した症状のある患者の匿名化された診療記録や当時の診断画像を含むフィードバックが15分以内に受け取れる。必要に応じて専用のチャットラインを使用した1対1の相談も可能。
  • 対象となる分野には、眼科、心臓、耳鼻咽喉、やけど、常備薬、HIV/エイズ、整形外科などが含まれ、現在4,000人を超える医師が月に1万9,000人を超える患者のサポートにあたっている。
  • また、これまで医療施設間で重病患者の他院への紹介はそれぞれの判断によって行われていたため、数の少ない高度な設備を持つ医療施設に他の医療施設でも治療可能だった患者が集中してしまい、診療までの待ち時間が長くなってしまうという問題も起こっていたが、Vula Mobileはこの問題も解決する。
  • 2019年のSouth African MedicalJournalの論文 で行われたVula Mobileを利用した本機能の調査によると、約7ヶ月の期間に39の施設238人のユーザーから2,275人の患者の紹介に関しての相談を受け、患者の3分の1はアドバイスを受けて当初の病院で治療が行われた。

背景:Vula Mobile創業者であるWilliam Mapham博士は、エスワティニ(旧スワジランド)の地方にある同国唯一の眼科で働いている時に、地方のコミュニティヘルスワーカーが困難な問題に直面した際に医師からのアドバイスをもらうことの困難さを知り、この問題を解決しようとVula Mobileの開発を始めたバックグラウンドを持つ。

南アフリカ保健省のPillay博士によると、「アプリにより不要な(医療機関から別医療機関への患者の)紹介が最大31%削減されたほか、臨床部門の責任者は同アプリのオンラインダッシュボードを使用して、リアルタイムの臨床ガバナンス、月次レポートの生成、調査などに利用していることが明らかになった」とのことで、効率的な医療ネットワークの構築だけでなく、Vula Mobileを基軸とするデータは副次的にも南アフリカの医療に役立っている。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

キャッシュレス経済への移行を進めるカンボジアフィンテック市場

ピックアップ:Financial Technology in Cambodia ニュースサマリー:カンボジア国立銀行(NBC)が2020年に発表したデータによれば、カンボジアにおけるフィンテックサービスのニーズと実際の供給には約240億ドルのギャップが生じているそうだ。また、総人口1,600万人の内450万人はFacebookアカウントを所持しているとのデータも明らかにしており、テクノロジーを活用…

Image Credit: Cambodia Central Bank

ピックアップ:Financial Technology in Cambodia

ニュースサマリー:カンボジア国立銀行(NBC)が2020年に発表したデータによれば、カンボジアにおけるフィンテックサービスのニーズと実際の供給には約240億ドルのギャップが生じているそうだ。また、総人口1,600万人の内450万人はFacebookアカウントを所持しているとのデータも明らかにしており、テクノロジーを活用したサービスの利用が期待されている。

重要なポイント:カンボジアでは2018年頃からキャッシュレス決済の利用が増え始め、現在では50社以上の決済会社がキャッシュレスサービスを展開しているといわれているが、未だトッププレーヤーと呼ばれるほどに成長した企業は出てきていない。 そんな中、現在のカンボジア市場に注目し参入に意欲を見せる新興フィンテック企業もあれば、NBCが推進するプロジェクトが前進するなど、今年に入り新たな動きが出てきている。

詳細な情報:カンボジア市場は2019年半ばまでで既に50社以上のキャッシュレス決済サービスが存在しているといわれている。2017年からの約2年で5~10倍に増加した。

  • 代表的なサービスとしては Pi PayTrue MoneySmartLuy Mobile MoneyWing MoneyBongloySabay Wallet などが挙げられるが、ユーザー数やサービス内容で突出した企業はまだ出てきていない。そのためカンボジアのキャッシュレス決済市場に注目する企業もまだ多い。今年だけを見ても、海外から参入した2社が直近3カ月以内に資金調達を行っている。
  • Fincyシンガポールを拠点とする同社はブロックチェーンを利用した支払い、振替、給与計算などを行える高機能デジタルウォレットの提供を実施する。2020年1月にカンボジア市場へ参入し、直後に新型コロナウイルスの影響を受けることとなったが、既にプノンペンだけでも600以上の加盟店を獲得し同社の予想を上回るペースでの成長を遂げている。現在は同社が「長引くバンデミック下でもビジネスと投資環境は依然として活気がある」と評価するカンボジア南部の都市シアヌークビルでの事業展開に注力している。 2020年6月12日にカンボジアを始めとする東南アジアでの事業拡大のために、親会社であるGBCI Ventures Pte Ltdから1,100万ドルの資金調達を行った。
  • Clikカンボジアのキャッシュレス決済市場に注目するMatthew Tippetts氏が、他2名と共同創業したスタートアップ。今年8月にシードラウンドで370万ドルの資金調達を行い、2020年末までにカンボジア国内でのサービスローンチを予定。銀行口座と紐付けた決済アプリを利用し、シームレスなタッチ決済サービスの展開を予定している。しかし、カンボジアの銀行ではKYCは対面で行なう事が前提になっているという問題に直面し、サービスローンチに先立ちe-KYCの導入・構築にも力を入れている。
  • 参考記事:東南アジアのモバイル決済新星「Clik」、370万米ドルをシード調達——パイロット運用の地にカンボジアを選んだ理由とは
  • また、NBCもデジタル決済プロジェクトを推進している。Project Bakong:NBCによって2017年に始動したブロックチェーン基盤のP2Pデジタル決済システムProject Bakong。今年6月18日にホワイトペーパーを発行している。CBDC(中央銀行デジタル通貨)の準形式であり、QRコードとモバイルアプリを使用した決済システムによって金融包摂の推進を目指している。また、非効率的な決済システムを改善、銀行サービス利用への道を開くことで貧困を緩和するといった、プロジェクトの目的がホワイトペーパーに記載されている。 ※本プロジェクトの開発には日本のブロックチェーン企業ソラミツが参加している。

背景:カンボジアは人口に対するインターネットカバー率が既に80%近くに達し、データ通信量は10GBで7〜8ドル程度と比較的安価な現状だ。そのため、 スマートフォン所持率は2016年時点で95%と言われている。VISAが公開したデータによれば、国民の約3割がキャッシュレス決済の普及に期待していると回答し、キャッシュレス経済へと移行する環境は既に整いつつあるように思える。また、NBCが6月に発表したデータによると、昨年カンボジア国内でアクティブな電子決済アカウントの数は522万件に達し2018年から64%増加していることが分かる。銀行と決済サービス機関を介したモバイル決済取引額は、2019年のGDPにおける22.9%に相当したとする。

カンボジアでデジタル決済が推進される背景には、他の新興国同様の金融包摂の推進という目的以外にも、長年の米ドル経済から脱却し現地通貨リエルの流通を促進させる狙いもある。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

アフリカ大陸金融包括、カギは「音声メッセージ」

ピックアップ:Ecobank Fintech Challenge 2020 ニュースサマリー:ガーナとアフリカ全土にフィンテックとAIソリューションを提供するNokwaryは、アフリカにおけるフィンテックスタートアップの登竜門「Ecobank Fintech Challenge 2020」で優勝したことを発表した。同社は現在、メッセージングアプリWhatsAppを利用したバンキングソリューションを…

Image Credit:Ecobank Fintech Challenge 2020

ピックアップEcobank Fintech Challenge 2020

ニュースサマリー:ガーナとアフリカ全土にフィンテックとAIソリューションを提供するNokwaryは、アフリカにおけるフィンテックスタートアップの登竜門「Ecobank Fintech Challenge 2020」で優勝したことを発表した。同社は現在、メッセージングアプリWhatsAppを利用したバンキングソリューションを軸に事業展開をしている。

詳細な情報:Ecobank Fintech Challengeは、アフリカの金融コングロマリットEcobankが毎年主催するもの。今年は、アフリカ全土600社以上のフィンテックスタートアップから応募があった。

  • Ecobank Fintech Challengeはアフリカ大陸の全てのフィンテック企業に応募資格がある。上位3位に選ばれた企業には5,000ドル〜1万ドルの賞金のほか、Ecobankフェローシップへの参加やグループとの戦略的パートナーシップの検討、Ecobankの展開する33カ国のアフリカ市場参入時のサポートといった権利が与えられる。急成長中の注目企業や有名企業も複数最終選考に残る中、最終的にはまだサービスのローンチにも至っていないほぼ無名のガーナ発Nokwaryが優勝を納めた。
  • 同社のサービスはボットに対して普段通りに自然な要求を伝えるだけで、対話形式でスムーズかつ効率的に送金・決済処理を行う。Whatsappユーザーは既に各金融サービスの提供するボットを利用してWhatsapp上から取引などを行っている。表示されるメニューの中から自分の要望に該当する番号を入力し、1ステップずつ処理を進める形式を取る。
  • 現在はガーナの公用語でもある英語でサービス開発が行われている。今後、ガーナのローカル言語(※ガーナには公用語と別に政府公認言語が9つ存在している)やその他アフリカ各国の諸言語にも対応していく予定。
  • サービスはテキストメッセージだけでなく、音声メッセージにも対応。 全ての国民が水準の高い教育を受けられるわけではないガーナや、その他アフリカ諸国で、文字の読み書きが不得意な人たちも日ごろから音声メッセージを多用し、Whatsappでのコミュニケーションを取っていることに対応したもの。金融包摂やアフリカでの事業展開という点から、音声メッセージにも対応することは非常に重要といえる。
  • サービスローンチ前であるものの、アフリカ全土へのサービス展開が現実的なものとなったNokwaryのサービスはEcobankの支援を受け、今後数カ月以内でのローンチを目指している。

背景:主催するEcobankはサブサハラ以南を中心に、アフリカ33ヵ国で営業するトーゴの首都ロメに本部を置く金融コングロマリット。西アフリカ・中央アフリカでは独立した銀行として確固たる地位を築いている。WhatsAppは180か国15億人のユーザーがいる世界で最もユーザー数の多いメッセージングアプリ。アフリカ・中南米・ヨーロッパの多くの国では最もポピュラーなメッセージングアプリとして使用されている。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

ブロックチェーンで世界の「偽造医薬品」問題に挑むナイジェリアのChekkit

ピックアップ:Nigerian blockchain startup, Chekkit, pilots its drug verification tech in Afghanistan ニュースサマリー:ナイジェリア発のスタートアップ「Chekkit Technologies」は9月、アフガニスタンにおける同社事業展開へのパートナーシップを当局保健省と締結したと発表した。同社はブロックチェーンを…

Image Credit:Checkit

ピックアップ:Nigerian blockchain startup, Chekkit, pilots its drug verification tech in Afghanistan

ニュースサマリー:ナイジェリア発のスタートアップ「Chekkit Technologies」は9月、アフガニスタンにおける同社事業展開へのパートナーシップを当局保健省と締結したと発表した。同社はブロックチェーンを利用した追跡可能なスマートラベルを使用し、新興国で毎年多くの死者を出している「偽造医薬品」問題の解決に取り組んでいるスタートアップ。2018年にナイジェリアで創業した同社は、現在同国ならびに米国にもオフィスを構えている。

重要なポイント:同社の技術は主に、サブサハラ(アフリカ全土のうち北アフリカを除いたサハラ砂漠より南の地域)全域を中心に新興国で毎年多くの死者を出している「偽食料品」・「偽造医薬品」問題の解決に取り組んでいることで知られている。

詳細な情報:新興国では毎年多数の死者が出ている偽造医薬品市場は推定で年間2,000億ドルにもなるといわれている。その多くは中国産とされる偽造医薬品だ。本物と見分けがつかないほど精巧なパッケージのものも多く、医薬品の輸入に関する規定や制度、検閲体制などが整わない国では国内への流入を防ぎきることが難しいため、深刻な被害が出ている国が多くありながらも、現在まで根本的な解決が難しい状態が続いている。

  • Chekkit Technologies はこの問題を解決するために、倉庫から流通業者、最終消費者に至るまで、製品の動きが追跡可能なブロックチェーンベースのプラットフォームを構築した。
  • Checkitが提供するスマートラベルは、パッケージに貼付されたQRコードもしくは数値コードによる一意のIDによって流通の過程を管理・記録していく。輸入されてきた医薬品には、輸入された段階でその情報とともにパッケージにラベルが貼付される
  • 消費者や販売者は、Checkitのアプリからスマートラベル上のQRコードをスキャンもしくはIDを入力することで、パッケージ単位での流通経路や実際に医薬品として認可されている製品であるかどうかの確認が可能。誤って偽造医薬品を販売したり購入・服用したりすることを防止する。
  • ナイジェリアを始め新興国ではスマートフォンの普及率もまだ低いため、フィーチャーフォンからでも当該IDを使用したUSSDコードによる情報取得が可能。
  • 2018年に設立されたChekkitは昨年2つの大きな成果をあげた。2019年11月、アフガニスタン保健省と偽造医薬品問題について既に協議を行っていたFantom Foundationがスポンサーを務めるAfricArena SummitのブロックチェーンピッチコンペティションでChekkitが1位を獲得した。その後、今回発表に至ったアフガニスタン保健省とパートナーシップの締結に至る。
  • 今後アフガニスタン市場において、実際に販売される8万点の医薬品にChekkitのスマートラベルを貼付し3ヶ月のパイロット運用が行なわれる。
  • ナイジェリアとガーナのDeep Tech企業向けアクセラレータープログラム FbStart Accelerator にも参加。CEOのOdumade氏によれば、参加後の同社収益は1200%増加し、10万件を超える製品の認証確認が行われたとのこと。「2025年までに、アフリカと世界の数百万人の人たちを(偽造薬・偽造品などから)守りたい」という同社の信念に向け、精力的に事業を拡大している。

背景:アフリカ大陸の中でも特にサブサハラ以南の地域での偽造医薬品問題は非常に深刻であり、偽の抗マラリア薬により毎年10万人以上の死者が出ているほか、5歳未満の子どもの12万人以上が何らかの偽造医薬品を摂取した事が原因で亡くなっている。WHOによれば2013年から2017年の間に報告された偽造医薬品の42%がアフリカで押収されたものであった。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

新興国向け営業管理SaaSの「SENRI」、小売店向け受発注モバイルプラットフォームを正式ローンチ——アジア・アフリカ10ヶ国で事業展開へ

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<1日10時30分更新> 文中一部記述を訂正。 ケニア、ナイジェリア、インドネシアなどを拠点に、現地の製造・流通業向け営業マネジメントシステム「SENRI」を提供する SENRI は1日、新興国の小売店向け受発注モバイルプラットフォーム「SENRI Direct Order」を正式リリースした。また、同社は社名を以前のアフリカインキュベーター(Afri-inc)から SENRI に変更したことも発…

「SENRI Direct Order」
Image credit: Senri

<1日10時30分更新> 文中一部記述を訂正。

ケニア、ナイジェリア、インドネシアなどを拠点に、現地の製造・流通業向け営業マネジメントシステム「SENRI」を提供する SENRI は1日、新興国の小売店向け受発注モバイルプラットフォーム「SENRI Direct Order」を正式リリースした。また、同社は社名を以前のアフリカインキュベーター(Afri-inc)から SENRI に変更したことも発表した。SENRI Direct Order はアフリカのみならず、アジアの新興国にも展開する予定で、実情を踏まえて、社名からアフリカの文字を外すことを決めたと見られる。

アフリカインキュベーターは、JICA でアフリカのプロジェクトの立ち上げや運営を経験した後、外資系戦略コンサルティングファームでマネージャーをしていた永井健太郎氏が2015年に設立。消費財などを中心に製造・物流業企業100社ほどに SENRI を提供している。アフリカでは伝統的な小売店を通しての流通が主流のため、流通にかかるコストが大きく、受発注をはじめとする流通プロセスを SaaS 化することで業務を効率化、20%を上回る生産性向上を実現してきた。

永井健太郎氏
Image credit: Masaru Ikeda

SENRI Direct Order は、海外で広く利用されるモバイルメッセージングアプリ「Whatsapp」を活用し、小売店に対しブランドやメーカーからプロモーション情報が受け取れる発注サイトへ誘導。小売店は Whatsapp を通し発注業務が行え、チャットボットで配送状況の通知を受けられる。SENRI では既に事業展開しているケニア、ナイジェリア、インドネシアに加え、エジプト、ベトナム、フィリピンなどにも拡大し、2023年までにアジア・アフリカの10ヶ国で SENRI と SENRI Direct Order を提供する計画だ。

永井氏の note によると、SENRI は昨年3月〜今年3月までの1年間でアクティブユーザ数が2.7倍に成長。新型コロナウイルス感染拡大に伴う営業活動の停滞で、アクティブユーザ数は一時期約3割程度にまで落ち込んだものの、新興国においてもコロナ禍は中間流通(卸)のデジタル化、EC 化の追い風となったため、SENRI Direct Order の開発を前倒しし5月にβローンチした。SENRI Direct Order の事業展開を受け、同社ではアフリカ・アジア各国で事業開発を担う人材の採用を強化する

SENRI は2015年にシードラウンドで実施した4,000万円、2018年9月にプレシリーズ A ラウンドで8,000万円、昨年10月にシリーズ A ラウンドで SBI インベストメントから2億円を調達している。

SENRI の現地スタッフの皆さん
Image credit: Senri

アフリカ・ケニアで進む金融包摂、キーワードは「ブロックチェーン」

ピックアップ:Pioneering Kenya eyes next stage of mobile money 重要なポイント:アフリカの金融でリープフロッグ(一足飛びにインフラが整う)現象が発生している。キーワードは「金融包摂」と「ブロックチェーン」だ。 ナイロビに拠点を置くCellurantはオールインワンの多機能決済プラットフォームTinggを2019年10月に公開し、現在ケニアを始めアフリ…

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Image Credit : cellulant

ピックアップPioneering Kenya eyes next stage of mobile money

重要なポイント:アフリカの金融でリープフロッグ(一足飛びにインフラが整う)現象が発生している。キーワードは「金融包摂」と「ブロックチェーン」だ。

ナイロビに拠点を置くCellurantはオールインワンの多機能決済プラットフォームTinggを2019年10月に公開し、現在ケニアを始めアフリカ8カ国(ケニア、ナイジェリア、ガーナ、ウガンダ、タンザニア、モザンビーク、ザンビア、ボツワナ)でサービスを提供している。

Tinggは決済機能だけでなく、サードパーティサービスの提供を強化しており、水道・電気などの公共料金の支払いやフードデリバリー、各家庭で利用するガスの配送などもTinggを通じて利用可能だ。また同社の農業プラットフォームでも利用することができ、多方面で金融包摂を推進している。

詳細情報:ケニアの中央銀行の調査によると、2019年にはケニア人の80%以上が銀行だけでなくマイクロファイナンスやモバイル決済サービスなどを含めた何らかしらの金融サービスにアクセスできるようになり(2006年時点では27%)、首都ナイロビに限れば金融包摂率は96%にもなると報告されている。

  • 一方、3分の2以上の人は自身の給与で生活費を常に十分に賄うことができておらず、60%以上のケニア人は友人・家族・非合法な高利貸しなどからお金を借りている。金融サービスにアカウントを持ち利便性がよくなることと、個々人の経済的問題の解決、貧困からの脱却は全く別問題であるということも浮き彫りとなっている。
  • 世界銀行のレポートによるとケニアの貧困率は減少傾向にあるものの、減少の主要な要因は農業によるもので、現在の貧困層のほとんどは北東部の農村地域に集中している。
  • ケニアでは現在国内総生産に占める農業の割合は増加傾向にあり、現在は約3割(35%前後)を農業が占めている。(10年前と比較して約10%増)。またアフリカ全体での農業市場は2030年までに1兆ドルに成長するといわれている。
  • Cellurantではアフリカでの真の金融包摂推進には農業分野をいかに取り込み各国に展開していくかが大事であると捉え、Tinggに続き、ブロックチェーンベースの農業用デジタルマーケットプレイスサービス「Agrikore」という農業用のプラットフォームをローンチしている。現在ケニアとナイジェリアで稼働している。
  • 目的は農業に関係する全ての人(農家・買付業者・物流会社・政府・金融機関など)が信頼できる環境でビジネスができるようにするため、Tinggと連携することで、融資や政府などから農家への助成金の送金をはじめとする必要な資金のやり取りや決済は全てオンライン上で完結する。
  • 例えば、買付業者が品物を注文すると、近接する農家に規模に応じてそれぞれの個数と価格のオファーを送信、農家がそのオファーを受けるとプラットフォーム上に登録されている輸送業者や品質検査員が割り当てられていくといった流れをたどり、その各者間での資金のやり取りはTinggを介して行われる。全てのログは記録され、Agrikore利用者は誰でも全てのログを確認することができる
  • これにより、中間業者やエージェントなどを介すことで不透明となっていた価格設定や資金の流れが明確かつ公正になり、小規模農家が苦慮していた販路確保の問題も解消される。
  • モバイルマネーは「最初のステップ」にすぎないと考えるCellurantでは、第二のステップはデジタル融資、最終的にはこれらを包括した市場全体の経済問題を解決することが重要だと考え、アフリカ全体での金融包摂の推進を視野に入れ今後もサービスを展開していく。

背景:人口5,139万人のケニアではモバイル決済のアクティブユーザーが3,160万人、そのうちの2,557万人がM-PESAを利用している。ケニア中央銀行によると、昨年のモバイル決済によるトランザクションは3.7兆ケニアシリング(385億ドル)に達し、国内総生産のほぼ半分に相当するまでになっている。 その一方でNetflix、Uberをはじめとする海外企業がケニア国内で提供するサービスなどでは決済手段として利用出来ないことも多く、ローカルな決済手段にすぎないという側面も持っている。

執筆:椛澤かおり/編集:渡邉草太

サムライインキュベート、アフリカのスタートアップ向けに20億円規模の新ファンドを組成

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※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。 【9日18時更新】赤字部分を追記、訂正線部を削除。 東京を拠点とする VC であるサムライインキュベートは9日、ケニア・南アフリカ・ナイジェリアのスタートアップ向けのファンドを組成したと発表した。ファンド名は「Samurai Africa Fund 2号」で、ファンド規模は最終的に20億円を目指す。対象となるスタート…

左から:久保浩成氏(サムライインキュベート シニアマネージャー ファンドコントローラ)、米山怜奈氏(サムライインキュベート シニアマネージャー 兼 サムライインキュベートアフリカ マネージングパートナー)、 榊原健太郎氏(サムライインキュベート代表取締役社長 兼 サムライインキュベートアフリカ 代表取締役社長)、 小池直氏(サムライインキュベート マネージャー)、本間良広氏(サムライインキュベート執行役員 コーポレートグループ)
Image credit: Samurai Incubate

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。

【9日18時更新】赤字部分を追記、訂正線部を削除。

東京を拠点とする VC であるサムライインキュベートは9日、ケニア・南アフリカ・ナイジェリアのスタートアップ向けのファンドを組成したと発表した。ファンド名は「Samurai Africa Fund 2号」で、ファンド規模は最終的に20億円を目指す。対象となるスタートアップのステージはシードからシリーズ A ラウンドで、ワンショットのチケットサイズは500〜5,000万円。投資対象領域は、金融・保険、物流、医療・ヘルスケア、小売・EC、エネルギー、農業、交通・モビリティ、エンターテインメントに設定されている。

Samurai Africa Fund 2号 と名乗るからには、同ファンドの1号はいつ組成されたのか気になる読者もいるだろうが、サムライインキュベートと共同出資で同社出身の寺久保拓摩氏が2018年5月に設立した Leapfrog Ventures のファンド(5億円)を指しているようだ。なお、サムライインキュベートの沿革によれば、2019年6月に Leapfrog Ventures はサムライインキュベートアフリカとして社名を変更している。

サムライインキュベートアフリカの代表は、2019年6月の段階では寺久保氏が務めていたことが確認できるが、現在は、サムライインキュベート代表の榊原健太郎氏に変更されている。事実上、サムライインキュベートの完全子会社(またはアフリカ向け投資ビークル)になったと理解できる。寺久保氏は独自にアフリカ向けファンドを組成する準備に入っているとの消息筋の情報もあり、氏の動向については機会を改めて詳報をお伝えしたい。

2号ファンドの運用にあたっては、日本政策投資銀行や国際協力銀行出身で、JICA(国際協力機構)モロッコ事務所で駐在員アシスタント企画調査員、TECHFUND のディレクターなどを務めた米山怜奈氏がマネージングパートナーとして就任する。なお、サムライインキュベートアフリカは JICA から起業促進やスタートアップエコシステム形成に関する調査を受託している。なお、サムライインキュベートアフリカでは、「JICA 当該調査の委託は、いかなる意味においても本ファンドの評価を示すものではない」としている。

1号ファンドではルワンダ、ケニア、タンザニア、ウガンダ、南アフリカを投資対象地域に設定していたが、2号ファンドではルワンダ、ウガンダ、タンザニアは外され、ナイジェリアが追加された(サムライインキュベートアフリカでは、ルワンダ、ウガンダ、タンザニアを表記から外しただけで、運用上の投資対象地域からは外していないとのこと)。サブサハラ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)最大の市場を誇るナイジェリアは成長が著しいため、サムライインキュベートアフリカでは経営資源の選択と集中を図ったものとみられる。なお、1号ファンドは組成時に80社程度への出資を目標に掲げていたが、これまでに約4分の1に相当する18社への出資が完了したことが明らかになった。

1号ファンドからのこれまでの投資先には、アフリカで製造・流通業向け営業管理 SaaS「SENRI」を提供する アフリカインキュベーター(Afri-inc)、ケニアのソーシャルコマース/販売管理SaaS「BiasharaBot」を運営する Biashara Viral Gains、 非銀行層向け与信インフラを提供する EXUUS などがある。1号ファンドには投資枠は残存していると見られ、今後の1号ファンドの投資対象地域が従来のものを踏襲するか、2号ファンドに準拠するかは現時点で定かではない。

(「Samurai Africa Fund 1号」は、Leapfrog Ventures の当初組成額5億円に加え、「Samurai Incubate Fund 6号」(組成額34.5億円)の10%をファンド・オブ・ファンズ形式で組み入れており、投資枠は既に終了しているとのこと。投資したスタートアップ数は当初想定数の4分の1だが、1社あたりのチケットサイズが当初想定より大型化したと見られる。)

この分野では、アフリカでのコーポレートアドバイザリーやスタートアップ支援を提供する日本企業として、東京に拠点を置く Double Feather Partners などが存在する。

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