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特集:ローコードかノーコードか

特集:ローコードかノーコードか

コロナ禍で業界のデジタル化(DX)が加速している。一方、コードをかける人の人口は圧倒的に少ない。この課題をクリアにする方法が「ノーコード・ローコード」だ。コードをできるだけ書かずに業務特化の効率化アプリを生み出せるAirtableは2700億円規模の評価を得た

MUGENLABO Magazine

特集:ローコードかノーコードかの話題

今更聞けないノーコードの基本:ノーコードとはなにか(1/4)

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本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です ヤプリ・コネクト部(アプリプラットフォームYappliとクライアント様のシステムをつなぐ設計等)に所属している北村康裕(きたむら やすひろ)と申します。今回は、私の本業であり趣味でもあるノーコードについての基本をお伝えしていきたいと思います。 最近、GAFAをはじめとするノーコードプロダクトのM&A、大型調達が目立ってきて…

本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です

ヤプリ・コネクト部(アプリプラットフォームYappliとクライアント様のシステムをつなぐ設計等)に所属している北村康裕(きたむら やすひろ)と申します。今回は、私の本業であり趣味でもあるノーコードについての基本をお伝えしていきたいと思います。

最近、GAFAをはじめとするノーコードプロダクトのM&A、大型調達が目立ってきており、実際多くの企業・個人がノーコードプロダクトを利用してウェブアプリやモバイルアプリを開発しています。海外では、ノーコードが流行から新たな常識として浸透しつつある中、国内でも様々な産業領域でノーコード系スタートアップが勢いを増しており、ノーコードプロダクトを用いてMVP検証をするスタートアップも登場してきました。

ただ一方で、毎日のように各メディアで取り上げられるようになった結果、情報が散在し、体系的な理解が追いついていない方も多いかと思います。ノーコードという大きなトレンドを正しく理解するためにも、本連載では、ノーコードにまつわる各種情報の整理を行い、ポイントとなる部分を理解いただきつつ、実際の利用イメージ、留意点について知って頂ければと思っています。また、今回はアプリを作成するプロダクトに絞って紹介をさせていただきます。

ノーコードとは?

Yappliはコードを書くことなくアプリを開発・運用できる(画像:ウェブサイトより)

本連載では、様々なノーコードにおける基礎知識を紹介していくのですが、まずは、そもそものノーコードの定義付けをしておこうと思います。私の中では、(基本的には)プログラミングを一切行わずサービス開発ができることがノーコードだと考えています。一方でローコードという概念は、ノーコードと比較してプログラミングを伴う作業が多いものを指します。

ちなみに、(基本的には)という注釈を加えたのは、一般的にノーコードと呼ばれるプロダクトであったとしても、ユーザーがプログラミングによりカスタマイズすることができたり、運営元が特注でカスタマイズすることがあるからです。ややこしい説明になってしまいましたが、場合によってはプログラミングを伴うものもノーコードに含まれます。

ただしノーコード=全くの素人でも完成度の高いアプリができる、ということではなく、ある程度のIT、デザイン知識は必要となります。プロダクトによってその程度は全く異なりますが、データを扱う際に多少データベースの知識を求められるものもあります。また、作ってみて初めて気づくのですがデザインは非常に難易度が高い部類に入り、色味やボタンの大きさ、クリエイティブの作成など、独自性を持たせた上で美しい見た目を整えるにはある程度ノウハウが必要となります。

個人使いのアプリを作成する程度であればこういった観点は問題になりませんが、ビジネスのツールとしてノーコードを選択する場合は、複数のノウハウが必須と言えます。また、ノーコードプロダクトはそれぞれ癖があるため、その点も多少のハードルにはなってきます。(代表的なプロダクトたちへつづく)

ラクスルはペライチをどう評価したーーノーコードとスモールビジネス、その課題(2/2)

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(前回からのつづき)サポーター制度の中心となる「ペラナビ」はユニークで、パッと見た感じだとビザスクやココナラのようなクラウドコンサルプラットフォームのような形式を取っていて、相談を受ける側は直接、相談相手に掲載されている費用を払ってレクチャーを受けることができる。 サイトのコンサルから一見すると関係なさそうなZoom講座まで様々で、基本的に彼らが対象するユーザーのお困りごとを支援している内容であれ…

ペラナビはスモールビジネスの課題を教え合う互助の仕組み

(前回からのつづき)サポーター制度の中心となる「ペラナビ」はユニークで、パッと見た感じだとビザスクやココナラのようなクラウドコンサルプラットフォームのような形式を取っていて、相談を受ける側は直接、相談相手に掲載されている費用を払ってレクチャーを受けることができる。

サイトのコンサルから一見すると関係なさそうなZoom講座まで様々で、基本的に彼らが対象するユーザーのお困りごとを支援している内容であればOKで、現時点でペライチはここで手数料などの徴収はしていない。

中小企業で360万、彼らが対象にする個人事業なども含めると桁がまた一つ上がる。こういった方々の細かい課題解決は確かにコミュニティモデルでなければ対応は難しい。

ノーコードであっても操作というよりデジタルマーケティングに対する知識や考え方、こういったサポートがなければ生きた施策にならない。この点でもうひとつ課題になるのが「予算」だろう。小さな飲食店であればこれを使うことでいくら儲かるのか、そのことを考えるはずだ。

中小企業ではマーケティングなどの知識・経験も乏しく、予算をうまく立てられないケースもあると思います。費用対効果をどう考えるか、また、用途によってバラバラの中、どのようにして価格を決めましたか

橋田:まずはウェブサイトを作るという点であれば、個人・中小の価格でも払っていただきやすいような価格感(1000〜2000円程度)と考えていました。その後、機能の増加に伴い用途がバラバラの中でも、基本的なウェブサイトを作って集客するなどのマーケティング行動は最大公約数的な共通項があるとは思っています。

これまではノーコードでウェブサイトを作れる、という価値提供が主だったと想像しています。価格の件にも関係していきますが、この先、ペライチはどのような提供価値を考え、ノーコードサービスのポジションをどこに置こうと考えていますか

橋田:ペライチでは作れるのその先へ、というビジョンを掲げておりその先、具体的にはユーザーさんに成果を出していただく部分、例えば決済や申し込み、予約といった箇所に力を入れていこうと思っています。

例えば同じくノーコードでアプリを作ることができるYappliは創業当初、価格を安く抑えて多くの企業が利用できる戦略を持っていた。しかし、実態は企業がプラットフォームを使って自由自在にアプリを作れる、とはならず、価格を大きく引き揚げてサポートを手厚くする戦略に切り替えて大躍進を果たしている。

橋田氏の話では今後、10名以内のスモールビジネス事業者という基本的なユーザー像は変えないものの、上位プランとなる価格設定や、前述の決済などのオプションで次の展開を作っていくということだった。

確かに数年前と違って競合も多い分野だが、ペライチの展開を見ていると、とにかくスモールビジネスの事業者にターゲットを絞り込んで、ユーザーサポートに正面から取り組んでいる様子がわかる。ノーコードの部分では使いやすさ等ももちろんあるが、それ以上にこれらユーザーの経営課題にどこまで寄り添えるか、そこが拡大の鍵になりそうだ。

ラクスルはペライチをどう評価したーーノーコードとスモールビジネス、その課題(1/2)

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コロナ禍によってスモールビジネス、特に飲食や観光といった分野が大きな転換点を迎えている。 日本の中小企業は 約360万社と言われるのだが、 感染症拡大の問題で大きく動いたのがデジタル化の波だ。コマースプラットフォーム「BASE」では、GMVが前年同四半期比で196%増(2020年第2四半期)と大きく跳ね上がるなど、急な売上の落ち込みをECでカバーしようとした結果は如実に数字として現れるようになった…

ペライチチームとラクスル取締役CFO、永見世央氏(上段中央)・写真提供:ペライチ

コロナ禍によってスモールビジネス、特に飲食や観光といった分野が大きな転換点を迎えている。

日本の中小企業は 約360万社と言われるのだが、 感染症拡大の問題で大きく動いたのがデジタル化の波だ。コマースプラットフォーム「BASE」では、GMVが前年同四半期比で196%増(2020年第2四半期)と大きく跳ね上がるなど、急な売上の落ち込みをECでカバーしようとした結果は如実に数字として現れるようになった。

一気に動き始めたデジタル化の波だが、10年前であればもしかしたらここまでスピーディーにコトは進まなかったかもしれない。なぜか。開発が必要だったからだ。ホームページひとつ作るにも要件を決め、受託できる開発会社に依頼し、馬鹿高い費用に怯えながら仕上がりを待つ、なんてことは日常茶飯事だった。

この状況をゆっくりと、しかし確実に変えていった概念がある。それがノーコードだ。コロナ禍における業務効率化、リモート環境へのスムーズな移行の救世主として数多くのサービスが今、注目を浴びることになった。本誌でも特集として話題をまとめている。

ペライチも国内ノーコードサービスのひとつだ。極めて小規模の事業者が開発なしに手軽にホームページを簡単に持てる体験が支持され、2015年のリリース以降、40代から50代のユーザーを中心に中小企業や個人事業主が利用しており、現時点で会員登録数は26万件となっている。そして先月10日にはラクスルとの資本業務提携を発表し、49%の株式と引き換えとする4億9,000万円の増資を公表した。ペライチによれば無事、このディールは成立したそうだ。

ラクスルはペライチをどう評価したのか。同社代表取締役の橋田一秀氏にその裏側を聞いた。(太字の質問は全て筆者、回答は橋田氏)

創業から約6年ほど、中小企業向けのウェブサービス(ノーコード系)は増えました。中でもペライチが中小企業に支持されて、またラクスルが他のサービスと違って御社を評価した点はどこにありますか

橋田:やはりページ公開までの手数が早いこととサポーター制度などで、ユーザーさんが躓くところを一緒に解消してきたからではないでしょうか?ラクスルさんの評価でいうと、具体的なユーザー像が近かったことや、ペライチに足りないマーケティングやプロダクトの両面が見えていて、そこを補完できるチーム体制のイメージがあったということだと思います。

ラクスルの永見世央氏と橋田氏は数年前に出会い、ラクスルの得意とするローカルビジネスにおける「印刷」というリアルなマーケティング手法と、ペライチが目指すウェブ・デジタルマーケティングはターゲット層が近く、ただ、山の登り方が異なるという認識を持っていたそうだ。当時から出資の話はあったものの、ラクスルは上場したばかりということもあり、企業としては出資できなかったが、変わりに永見氏が個人としてエンジェル投資することになった。これが一昨年の話だ。

具体的なシナジーに向けての取り組みについてはまだ検討中ということだったが、例えばユーザー基盤を共通させることで、双方の顧客に適切なアナログ・デジタル両面のマーケティング施策を提案することができるようになる。

可能性が広がる一方、彼らがターゲットとする小さな事業者は常にリテラシの課題を抱える。橋田氏は現状としてまだまだ問題がなくなる様子はないものの、解決方法としてコミュニティを活用する方向性を考えているという。

特に非情報系の中小企業が問題とするリテラシ問題は、この10年でスマートフォンの進化と浸透により改善されたケースをよく聞くようになりました。ペライチが提供する中小企業の現場でこの問題はどのように乗り越えようとしていますか

橋田:リテラシの問題はいつでもついて回りますが、ペライチではサポーター制度で解決しています。これはペライチに詳しい方にサポーターになって頂き、直接対面で支援する方法です。現在26万人の方々にご利用いただいていますが、これをマス層に広げようとすると、チャットやコールなどのサポートでは不足します。ひとり一人に向き合おうとすると、SEOどうしたらよいかといった一般的なものならまだしも、渋谷で10人ほどの飲食店をやっているけどどうしたらよいか、というような個別案件の相談はやはり難しいです。

(次につづく)

ノーコードは何をもたらす:誰もがクリエイターになれる世界(2/2)

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(前回からのつづき)Process Streetが目指すのは「ビジネスオペレーションの自動化」ですが、特に特徴的なのが「他社のマニュアルをトレースすることも可能」という点です。 例えばInstagramでマーケティングするマニュアルでは、30以上に渡り、こと細かに手順が書いてあります。また、ウェブサイトをリリースするためのものや、コンテンツプロモーションのチェックリストまで、様々なマニュアルが公開…

Image Credit : Joshua Reddekopp

(前回からのつづき)Process Streetが目指すのは「ビジネスオペレーションの自動化」ですが、特に特徴的なのが「他社のマニュアルをトレースすることも可能」という点です。

例えばInstagramでマーケティングするマニュアルでは、30以上に渡り、こと細かに手順が書いてあります。また、ウェブサイトをリリースするためのものや、コンテンツプロモーションのチェックリストまで、様々なマニュアルが公開されています。コードを書かなくてよいだけでなく、オペレーションそのものをテンプレート化することでさらなる省略化を目指しているのです。

さて、コロナの影響もあり世界的にリモートチームの価値が認識されています。しかし、世界各地にチームメンバーを持つ分散型組織の運営体制を0から作るのは大変です。そこでProcess Streetのようなノーコード・ツールを使えば、直感的に使えるワークフローやチェックリストを用いて、どんな企業でも同社プラットフォームだけで指示できるオペレーション構築が可能となります。

マニュアル作成プロセスもSaaS化され、自動運用できる世の中になりました。ユーザーである私たちは、より創造性を求められる作業に集中できる環境を手にできます。最低限の組織運営の自動化をProcess Streetはもたらしたと言っても過言ではないでしょう。

機械が作業内容を削ぎ落とし徹底的に効率化させる世界観は、まさにインターネットが目指した真価の1つです。誰もが手軽に繋がり、年齢や国籍・能力を問わず、創造的な活動ができる世界に繋がります。

その上で、今後はAI技術の活用でさらなる発展が見込まれます。

AIがユーザーの利用状況を観察しながら、常に先回りをして最適なアクションを提案してくれる未来の到来です。例えばProcess Streetでは、マニュアルの要素で抜けている点などがあれば、AIが補足点を修正して完璧なオペレーションを構築できるようになるはずです。

AIと人が共同で物作りをするような関係のもと、現在のノーコード・トレンドが2D世界で進んでいると捉えていると考えて良いでしょう。ちなみに3D世界におけるAIとの共創活動は、「デジタルツイン」や「ミラーワールド」の考えに繋がります。

ノーコードはこれから到来するAI事前予測による自動化社会や、AR・VRを活用した3Dクリエイティブな世界へ踏み出す、ベースとなる最初の一歩の位置付けとなります。単なる作業効率化のトレンドとだけ見るべきではないかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

ノーコードは何をもたらす:数々のサービスたち(1/2)

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ウェブサイトを手軽に作成できる「Wix」や「Strkingly」、ECサイトを構築できる「Shopify」に始まり、最近ノーコードサービスの活躍がこれまで以上に目立つようになりました。ざっと思いつくだけで下記のようなサービスが挙げられます。 「Scapic」:ARコマース機能実装サービス。3D化した商品を掲載でき、ユーザーはその場で商品の大きさや大凡の質感などを確認できる。商品の返品率を29%ほど…

Image Credit : Kevin Ku

ウェブサイトを手軽に作成できる「Wix」や「Strkingly」、ECサイトを構築できる「Shopify」に始まり、最近ノーコードサービスの活躍がこれまで以上に目立つようになりました。ざっと思いつくだけで下記のようなサービスが挙げられます。

  • Scapic」:ARコマース機能実装サービス。3D化した商品を掲載でき、ユーザーはその場で商品の大きさや大凡の質感などを確認できる。商品の返品率を29%ほど減らせるという。
  • Voiceflow」:音声チャットボットを手軽に作成できるサービス。AlexaツールやGoogleの音声アクションアプリ開発を行える。ドラッグ&ドロップのシンプルな操作性で音声アプリ開発ができる。
  • Coda」:Google SpreadsheetやDocを統合させた、オールインワン・プロジェクト管理ツールを提供。1つ1つ分けられたサービス機能を1つにまとめる動きもノーコード領域に入ってくる。

他にもアプリ開発の「thunkable」やメールマガジン「Substack」、チャットボット開発「Landbot」、クリエイターECプラットフォーム「Gumroad」など、枚挙にいとまがありません。

ノーコードがもたらす本質的な価値は、「誰でもクリエイター」にさせる点にあります。代表的な動きを挙げます。

ほとんどの会社で、いつも同じような仕事手順が必ずと言っていいほどあります。このプロセスを手軽に、かつ非常に綺麗な形でマニュアル化できるサービスが「Process Street」です。同社は著名アクセレータであるAngelPadの第8回目のプログラムを卒業。2020年2月には1,200万ドルの調達に成功しています。

従業員のオンボーディング、書類確認・承認に至るまで、ほぼすべてのタイプのビジネスプロセスを処理できる使いやすいインターフェイスを備えたノーコードのワークフロービルダーがProcess Streetです。企業がコードを書かなくてもワークフローを作成できます。顧客はほとんどが中小企業で、10~20%が大企業とのこと(次につづく)

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

ローコード市場は520億米ドル規模へ、2700億円評価のAirtableとは何者か(2/2)

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(前回からのつづき)Airtableと連携できるサービスやアプリは1,000を超える。たとえばAsana、Dropbox、Box、Facebook、GitHub、LinkedIn、Slack、Stripe、SoundCloudなどだ。ZapierやIFTTTのようなワークフロー自動化サービスはつなぎの役割を果たし、SlackのメッセージやSMS、eメールをトリガーとしてAirtableのデータベー…

(前回からのつづき)Airtableと連携できるサービスやアプリは1,000を超える。たとえばAsana、Dropbox、Box、Facebook、GitHub、LinkedIn、Slack、Stripe、SoundCloudなどだ。ZapierやIFTTTのようなワークフロー自動化サービスはつなぎの役割を果たし、SlackのメッセージやSMS、eメールをトリガーとしてAirtableのデータベースに入力することを可能にする。

Airtableプラットフォームの新機能「Marketplace」では、コミュニティによって構築されたJavaScriptベースのアプリをインストールしたり、独自の機能を作成したりすることができる。9月第3週にリリースされた「Automations」では、eメール、メッセージアラート、レポート、およびタスク作成のトリガーを設定することにより、反復プロセスを自動化できる(AutomationsはG Suite、Microsoft Teams、Facebook、Twitter、Slack、Jiraなどと連携可能)。

最後に、「Sync」を使用すると、Airtableに保存されているカスタマイズされたビューとデータフィールドの一部(またはすべて)を他のチームや組織と共有できる。

「Marketplaceでは、コミュニティの開発者らが作成したアプリを共有できます。AIや機械学習に対応したツールが人気となるのではないかと期待しています。たとえば、GoogleのCloud Vision APIを活用するカスタムアプリを顧客企業のAirtable内に直接インストールしてAIや機械学習の機能を提供できます。

顧客はそのアプリを使用して、画像を数千のカテゴリにすばやく分類し、画像内の個々の顔やオブジェクトを検出し、画像カタログにメタデータを構築して、不快なコンテンツのモデレーションから画像の感情分析による新しいマーケティングシナリオの有効化まで、すべてを行うことができます(Liu氏)」。

Gartnerの予測によると今後3年間でプロの開発者の4倍もの「市民開発者」が誕生し、5億種ものビジネス用アプリやサービスが生み出されるだろう。ローコード市場は520億米ドルに急成長すると見込まれている。Airtableの競合にはGoogle、Microsoft、Amazonは言うまでもなく、Zoho、Smartsheet、そしてTablePlusやRetoolといったスタートアップがいる。サンフランシスコを拠点とする同社はカリフォルニア州マウンテンビューおよびテキサス州オースティンに新オフィスを構え、162名を新規採用し、トータルで280名の従業員をかかえている。

シリーズDラウンドはThriveがリードし、既存投資家のBenchmark、Coatue、Caffeinated Capital、CRV、および新規投資家のD1 Capitalが参加した。このラウンドにより、Airtableの調達総額は3億5,000万米ドル超となった。

※本稿は提携するVentureBeat記事の抄訳です

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

「ローコード」の衝撃、2700億円評価のAirtableとは何者か(1/2)

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噂通り、Airtableは本日(9月14日)1億8,500万米ドルの資金調達を発表した。評価額は前回の評価額11億米ドルの2倍以上、25億8,500万米ドルとなった。同社の成長は加速中だ。Netflix、HBO、Condé Nast、Time、IBM、Robinhood、Equinoxが名を連ねる顧客ベースは2018年11月には8万人だったのが20万人にまで増加している。 IDCの推計によると、コ…

Airtableのサンフランシスコオフィス
Image Credit: Airtable

通り、Airtableは本日(9月14日)1億8,500万米ドルの資金調達を発表した。評価額は前回の評価額11億米ドルの2倍以上、25億8,500万米ドルとなった。同社の成長は加速中だ。Netflix、HBO、Condé Nast、Time、IBM、Robinhood、Equinoxが名を連ねる顧客ベースは2018年11月には8万人だったのが20万人にまで増加している。

IDCの推計によると、コーディングの方法を知っている人口は世界全体の0.5%にすぎない。一方、業界はパンデミックによって引き起こされた問題を解決してくれる「特化型ソフトウェア」へとシフトしようとしている。Airtableはこのニーズを満たすプラットフォームを提供し、ユーザ自身が職場で使うアプリをほぼコーディングせずに開発できるよう支援することを目指している。いわゆる「ローコード」だ。

CEOのHowie Liu氏はVentureBeat宛のeメールでこう述べた。

「Airtableは、誰でも自分に必要な特製のアプリを作り上げられるようにします。自分で自分のアプリを作るというアプローチによって、既製品のツールやプロジェクト管理サービスを使うよりも自由にカスタマイズできるようになります」。

同社の共同設立者たちがプロダクトを世に出す前の2015年、元Stack OverflowのエンジニアのEmmett Nicholas氏、Google MapsのマネージャーのAndrew Ofstad氏、シリアルアントレプレナーのLiu氏が大事にしていたモットーは「すべてをオーガナイズする」ことだった。Excelのスプレッドシートに似たインターフェイスはドラッグ・アンド・ドロップで操作でき、付属のSDK(ソフトウェア開発キット)でプラットフォーム上にアプリを構築することができる。

Airtableに行や列を挿入・削除する際はほぼジェスチャーで操作することができる。またシェアリングツールも組み込まれており、互いにカレンダー、ギャラリー、カンバンといったビューを共有して共同作業することも可能になる。

Airtableには添付ファイル、テキスト、チェックボックス、バーコード、アルゴリズムなどさまざまなものを埋め込んだり、テーブル間のレコードを自動的にリンクさせてグラフ表示させたりすることもできる。また、「ブロック」やテーマ、カテゴリー、ユースケース別に分類されたテンプレートを使って容易に取り組むことができる。

ブロックは約30〜40個の「ミニアプリ」の集まりで、コンピュータービジョンを使って画像の中から自動的に対象物を検出するクラウドビジョンのようなものから、サードパーティ製のAdobe XD用ブロックに似たものまであり、Airtableの機能を拡張してくれる。

Airtableによると、第一線で働く医療従事者に食事を提供するFrontline Foodsは、病院などの施設と地元レストランをマッチングするカスタムアプリを構築した。このアプリは食事が最も求められている地域をリアルタイムで表示し、移動時間やコストを削減するのに役立っている。そして、より新鮮な食物を配達することでコミュニティを支えている。(次につづく)

※本稿は提携するVentureBeat記事の抄訳です

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ノーコードで世界は変わる

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本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です ノーコードという言葉をご存知でしょうか。 言葉の通り、ノーコード(プログラミング不要)でアプリケーション開発のハードルを下げることを指します。今、このノーコードが様々な業界のビジネスや仕組みに影響を与えはじめています。私たちヤプリもまた、数多くの事例を手がけることでその効果を企業のみなさんと分かち合ってきた一社です。 見えてきた世…

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ヤプリCTO 佐野将史

本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です

ノーコードという言葉をご存知でしょうか。

言葉の通り、ノーコード(プログラミング不要)でアプリケーション開発のハードルを下げることを指します。今、このノーコードが様々な業界のビジネスや仕組みに影響を与えはじめています。私たちヤプリもまた、数多くの事例を手がけることでその効果を企業のみなさんと分かち合ってきた一社です。

見えてきた世界観は次のようなものです。

  • 非エンジニアの能力を拡張し、想像力を高め、アイデアを実現させることができる
  • 組織にスピードを与え、ユーザードリブンなプロジェクト推進を可能にする

本稿ではノーコードがもたらす変化、この先にある世界についてみなさんと共有できればと思っています。

広がるノーコードの世界

※動画は2015年当時のYappli

改めて、ヤプリで開発を担当している佐野将史と申します。創業からずっとアプリプラットフォーム「Yappli」の開発に携わってきました。7年近く経過した今、大手ブランド中心に導入社数は400社を超えて今も伸びています。

現状では「マーケティング支援」と我々が呼んでいるジャンルが顧客の大半を占めている状況です。背景としては、企業のモバイルマーケティング強化の文脈で自社アプリ利用が進んでおり、具体的にはアパレルや通販、商業施設、飲食などの業界(インダストリー)がアプリを通じて集客強化をしているケースが多いです。

ポイントカードやスタンプ、クーポン、ECがよく使われる機能で、オンラインのみならず、オフライン店舗への誘導などにも貢献し、利用企業の売上や集客に一定の効果が認められるようになりました。顧客の成長がそのまま私たちの成長につながっています。

一方、利用シーンにも広がりがあります。

例えば商品カタログや研修動画です。社内や取引先に配布するB2Bアプリで大手のメーカーさんに採用いただいてます。また、ユニークな例では青山学院大学さんが大学と学生間でのコミュニケーションを目的に利用されているケースもあります。

従来のオフライン(紙媒体など)や、ウェブで管理や共有していたものが、より接点の近いアプリに置き換わっているわけです。このようにインダストリーを問わない形で企業のモバイル投資が進んでおり、大きなチャンスが広がっているのがこの、ノーコードの市場になります。

ノーコードで社会はどう変わるのか?

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Photo by Simon Matzinger on Pexels.com

では、本題です。ノーコードは世界をどう変えるのでしょうか。アプリが簡単に作れるだけ、今までのコストが圧縮できて利益が出るようになったーー。もちろん即時的な効果は前述した通りです。

しかし、私たちはもっと幅広い可能性があることに気がつきました。

例えばノーコードの世界観ではエンジニアや外注するベンダーのスキルは各社平等になります。各社(特に非情報産業系の企業)エンジニアリングのレベルは極めて平坦になります。一方、特色が出るのがデータです。価値のあるコンテンツやデータはそれぞれの企業の特色を表現し、よりこれら魅力的なデータをどうやって集めるか、という点が重要になってきます。

これまでは腕のよいエンジニアを雇い、より良い見せ方、より個性的な表現に高いコストを支払っていたわけですが、ノーコードの世界ではより企業のブランドの保有する資産(データ)という、本質的な競争環境が生まれると予想されます。

ではエンジニアは不要かというともちろんそんなことはありません。

ノーコードの世界では、量産可能なアプリを作る技術はどんどん不要とされていきます。反面、オリジナリティ(尖った・面白いもの)のあるエンジニアはより高い評価を受けることになります。言い換えれば、量産っぽいつまらない仕事が減り、クリエイティブな仕事ができるので優秀な人はどんどん活躍できるわけです。もちろんですが、エンジニアの知識があれば、ノーコードツールを活用する方法も、そして企業がどのようなデータを集めればより競争力が付くかも想像しやすくなります。

つまり、企業はより資産となるデータやコンテンツの独創性が競争力となり、かつ、エンジニアもより高い次元で企業と仕事ができるようになる。そんな世界観が今、実際にやってきていると考えています。

ノーコードの思想

yappli_001
現在提供しているYappliは今年7月にCMS刷新した

当然ですが、まだまだ道は半ばです。

エンジニアの方であれば理解いただけると思うのですが、400以上の様々な活用をされるアプリが、同じ言語で作られていて、同じプラットフォーム上で動いていることは、非エンジニアが想像する100倍くらいとんでもないことです。ある特定のアプリに対して、誰でも運用できるCMS(管理画面)があるのとは訳が違います。だから当初から「Yappli」を「アプリのCMS」とは言いたくありませんでした。

本当にこの世界を創るには強い信念と思想が必要です。便利なものを作ればいい、儲かるものを用意すればよい、投資が集まる聞こえの良い美辞麗句を並べれば良い、ではすぐに挫折します。

例えば、アプリ開発だけでよければ、カスタマイズをした方がいろんなアプリを作れるし、販促アプリ開発ツール、社内共有アプリ開発ツール、など、使用用途によってCMSを分けた方が売りやすいかもしれません。

しかし、1つの課題に対して1つのピースで解決していては絶対に生まれないアイデアや発見があるはずです。この7年間でどんどん変わっていく世界はそれを教えてくれました。なので、ヤプリとして活用方法を提案することはあっても、使用用途を決めることはしません。余白を残していることは重要なのです。

そして何よりノーコードが果たす役割として大切なのが「人の成長」です。

実際にYappliを最大に活用しているデザイナーさんや、導入担当者と近いCS(カスタマーサクセス)の担当者さんの言葉にヒントがありました。

そこにどんな人でも運用可能な管理画面があり、MAのようなプッシュ通知を打つことができたり、誰がみてもわかるダッシュボードがあったり、CDPと連携しデータを活用したり。サイロ化された組織を横断し、いくつものツールを連携することで実現可能だったことが、プラットフォーム上で実現できるようになれば、担当者の能力の拡張につながるはずです。

短期間でPDCAが回せる環境があれば、そこでの発見や経験は確実に人の成長に寄与します。またさらにそれを横に展開することで、その成長は加速されるはずです。私たちも導入企業の担当者さんと一緒に、アプリの運用についてワークをするようなミートアップも開催してます。ノーコードを合言葉に、業界や職種を超えて、人と人との交流を促進させるきっかけになれば、よりよい世界が広がると信じています。

本稿はノーコードのアプリプラットフォーム「Yappli」を開発・提供する株式会社ヤプリCTO、佐野将史氏によるもの。Facebookアカウントはmasafumi.sano。彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はこちらからコンタクトください。

狙うは日本企業のモバイル化ーー創業6年・30億円調達のヤプリ、解約率1%未満の“勝ち筋”を聞いた【庵原氏インタビュー】

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注目の国内SaaS企業が大型調達を発表した。 マンションの一室で始まった「プログラミング不要のアプリプラットフォーム」は幾多の困難を乗り越え、大手企業を中心に300社が利用、全ての利用企業の総ダウンロード数は3500万件、さらに解約率1%未満という結果を叩き出すまでに成長している。 <参考記事> SaaSは年商10億円の壁をどう超えるーーRepro、Yappliの創業者が語る「PMFま…

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左から経営陣で取締役の佐野将史氏、代表取締役の庵原保文氏、取締役の黒田真澄氏

注目の国内SaaS企業が大型調達を発表した。

マンションの一室で始まった「プログラミング不要のアプリプラットフォーム」は幾多の困難を乗り越え、大手企業を中心に300社が利用、全ての利用企業の総ダウンロード数は3500万件、さらに解約率1%未満という結果を叩き出すまでに成長している。

<参考記事>

一方、創業した当時からテンプレート形式のアプリ運用プラットフォームのアイデアそのものは目新しいものではなかった。実際、彼らもスモールビジネスを対象にした初期の事業では戦略の変更を余儀なくされている。

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2015年9月、マンションの一室で撮影した創業当時の経営陣(筆者撮影)

市場は彼らのどこに注目し、何に期待したのか。本誌ではヤプリ創業者で、同社代表取締役の庵原保文氏に彼らのビジネスの状況と今後の事業成長について聞いた(太字の質問は全て筆者、回答は庵原氏)。

オフィスを移転して一気に拡大した。インテリアもビジネス向けのSaaS企業としては明るい雰囲気になっている

庵原:部門を問わずイベントごとが大好きなカルチャーなんです。元々、顧客とのユーザー会はもちろん、ミートアップや勉強会など多数開催していました。他の会場を利用するだけでもコストはかかりますから、自社の中に作ってしまおうと。このオープンスペースで毎日のように開催される予定ですよ。

今回の取材では昨日公表した大型の調達についてその展望などを聞きたい。まず、現状のビジネス状況について教えてほしい。リリースでは300社が有料での利用ということだが、国内の上場約4000社、売り上げ好調の未公開企業合わせて数万社がターゲットと考えて、この数字をどうみている

庵原:社数として伸びしろが非常に大きいと感じています。SMB(中小規模の企業)中心だった創業期と異なり、エンタープライズのクライアントが中心になりますので、SMBのように数万社を事業目標にはしておらず、スケール感で表現すると、1000社導入でもユニコーン(評価額で10億ドル規模の企業)を狙えるサイズ感になってくると考えています。

どういった業界の利用が進んでいる

庵原:現状では「マーケティング支援」と我々が呼んでいるジャンルが顧客の大半を占めています。これは企業のモバイルマーケティング強化の文脈で、自社でのアプリ利用が進んでいるような方々です。

具体的には

庵原:アパレルや通販、商業施設、飲食などの業界(インダストリー)がアプリを利用して集客強化を行っているような事例です。ポイントカードやスタンプ、クーポン、EC機能等によるオンライン・オフラインの両方の集客や売上の増加に大きく貢献しており、引き続きこの市場を盤石にするのが当面の動きになります。

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ヤプリは2019年6月に六本木のSmartHRなど新興企業が集まるビルに移転した

次のターゲットは。特徴的な利用が進みそうな業界など可能性は

庵原:並行して、業界を問わないビジネス全般における用途でも需要が高まっています。例えば商品カタログや研修動画を社内や取引先に配布するBtoBアプリで、大手のメーカーの導入が進み始めています。

法人の営業支援などの利用は電子カタログなどのビジネスで聞いたことがある

庵原:またユニークな例では青山学院大学が導入しており、校内の掲示板のリプレイスとなる、大学と学生間でのコミュニケーションに使われていたりします。従来のオフライン(紙媒体など)や、ウェブで管理や共有していたものが、より接点の近いアプリに置き換わっている例ですね。

ーーなるほど。少し補足しておくと、ヤプリはもう以前に取材をしていた頃の「テンプレートアプリメーカー」ではなくなっているようだ。庵原氏の話によれば、企業の情報戦略上で必要に迫られる「モバイル化」の流れを受け、かなり上流の工程からコンサルティング的に現場に入っているということだった。

つまりこれは従来、コンサルや大手広告代理などの手がけていた分野に近い。企業はマーケティング活動だけでなく、法人営業、組織内情報流通など、あらゆるシーンでモバイルを活用した効率化(庵原氏が表現するところの「モバイル投資」)を求められている。スクラッチで独自開発することができる大手IT系や、大型の予算が組める事業体は別として、多くの事業者はリーズナブルな選択肢を探しているはずだ。

ヤプリはそこにハマった。しかも彼らはコンサルフィーをビジネスにしない。それがチャーン(解約率)1%の秘密なのだろう。話を庵原氏のインタビューに戻そう。

 

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ヤプリのケーススタディは冊子になってオフィスに並ぶ

話を変えてチーム状況を教えてほしい。(経営陣含め)社員数や開発メンバーの比率、オフィス移転に伴って今後どのような運営体制を構築する

庵原:社員数は150名程度に拡大しました。プロダクト本部(=開発本部)としては全社の約1/3で、プロダクト開発に重きを置く体制になっています。移転に伴いエンジニアが働きやすい環境に対しては大きく投資をしているので、今後は更に採用を強化し、開発タレントの比率を全体の5割ぐらいまでにしようと計画しています。また人数の増加に伴い、開発系の人材には経営への関与も強めてもらいたいと思っています。

ヤプリの利用ニーズから考えて、開発と同じく重要なキーを握るのがオンボーディング箇所

庵原:それがカスタマーサクセスのチームです。プロダクト本部がベストな製品を作り、それを顧客が使いこなして各社を成功へ導く必要があります。製品の導入支援はもちろん、継続的な顧客の課題解決と成功のために伴走し、支援する専門チームがカスタマーサクセスになります。

組織強化の課題と対策は

庵原:内部登用と新規採用の両面ですね。強化していきたい。その他の部署としてもミドルマネジメントの強化やCxOの採用・登用を含めて組織強化は重要課題に設定しています。

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オフィスフロアに大きく間取りされたオープンスペース

近年スタートアップの人材獲得競争、特に優秀なマネジメント層を引き入れるための工夫を各所で聞くようになった。特にカルチャーづくりは各社力を入れていると聞く

庵原:そうですね、ヤプリとしては会社に来たくなるようなカルチャーを作りたい、というのはあります。そのための施策のひとつとして、オフィスの1/3をオープンスペースにしカフェを作ったりしています。前述した通り内部・外部を招いて各種イベントを開催しますし、夜はアルコールも提供して社員の交流を促進できるような仕掛けにしています。あと、社員のSNSでの情報発信はSaaS系の会社としてはかなり活発な会社だと思いますよ。

企業成長について聞く。今回の大型調達を経て、株式公開やその後のストーリーでどのようなイメージを持っている

庵原:当初は最短でのIPOを考えていました。

なるほど

庵原:ただ、スマホが行き渡たるにつれ「企業の本格的なモバイル投資が始まる」という市場拡大のチャンスに気がついたのです。この余地は非常に大きい。それでプライベートでの増資に切り替え、腰を据えて上場の経営判断をしたいと考えるようになったんです。

時期は

庵原:予定としては数年内にと考えていますが、オリンピックなどのイベントは市況の潮目を変えるきっかけになるので一定の意識はしています。また規模としても、今回の調達により市場の期待を強く感じています。今回のラウンドで参加された新規投資家の方々も十分に納得できる内容を実現できると考えています。

ありがとうございます。引き続き追いかけます。

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新たに移転したオフィスから創業当時のマンションがみえるそうだ

ーーということで庵原氏にヤプリビジネスの今を聞いた。印象的だったのは、彼らがアプリプラットフォームというSaaSモデルを選択しながら、盲目的に数を追いかけるスケール偏重の戦略を早い段階で変更していた、という点だ。対象となる企業の数、価格、チームバランス、役割などこの部分の変更はそう簡単ではない。創業から2年目までにこの舵取りをしたことが今の成長に繋がっている。

企業がモバイル対応を迫られる中、大手コンサルやSier、気軽に依頼できる小さな制作会社のいずれとも異なる独自のポジションを確立しつつあるヤプリ。現在の300社という数字が今回の大型調達を経て、どのような成長カーブを示すのか。また次の取材機会があればお伝えしたい。

SaaSは年商10億円の壁をどう超えるーーRepro、Yappliの創業者が語る「PMFまでの道のり、ARR成長の鍵」

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B2B SaaSビジネスが好調だ。 国内の事業者向けクラウドサービスの情報を集める「ボクシル」が公開しているカオスマップを紐解くと、2018年7月時点で4000件を超える事業者が登録されているという。 ビジネス的に法人をターゲットにした積み上げの営業スタイルは収益を安定させやすく、トレンド勝負、広告依存型の一般消費者向けサービスに比べて「生存確率が高い」ことも参入人気の理由だろう。その一方で頭打ち…

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写真左から:ヤプリ代表取締役の庵原保文氏、Repro代表取締役の平田祐介氏

B2B SaaSビジネスが好調だ。

国内の事業者向けクラウドサービスの情報を集める「ボクシル」が公開しているカオスマップを紐解くと、2018年7月時点で4000件を超える事業者が登録されているという。

ビジネス的に法人をターゲットにした積み上げの営業スタイルは収益を安定させやすく、トレンド勝負、広告依存型の一般消費者向けサービスに比べて「生存確率が高い」ことも参入人気の理由だろう。その一方で頭打ちもしやすいのだろうか、時価総額1000億円越えの「ユニコーン」リストを眺めると、やはりC向けサービスのスケール感が目立つ。

小さくまとまらず、かつ着実に事業を大きくするにはどのような経営戦略が必要になるのだろうか?

ということで本稿では、今月29日に提携を発表した国内B2B SaaSの成長株、Repro代表取締役の平田祐介氏と「Yappli」運営ヤプリ代表取締役の庵原保文氏にそのTipsをお伺いした。(太字の質問は全て筆者)

まずは今回の提携から。クラウド型アプリ開発プラットフォームのYappliと、マーケティングツールのReproの連携は相性が良さそうに感じる

平田:そうですね。Yappliを利用されているユーザーの方はReproを活用することでアプリチャンネルの収益(ROI)向上が期待できますから、結果的にYappliの満足度向上に繋がると思っています。また、Reproとしては当然ですが、Yappliでアプリを開発・運用されている事業者の方にも導入ができるようになったのが大きいです。

庵原:既に導入クライアントがいるので実効性あるものになるのではないでしょうか。アプリでもデータに基づくユーザー体験は求められてますから、Repro搭載による深いコミュニケーション(高度なターゲティング・プッシュなど)には期待しています。あと、我々のコアではない部分をReproのような専門的ツールがカバーできるので、SDKとのビジネスは相性いいんですよ。

一方でこういった発表で排他的になる可能性もある。わざわざ提携とまでして公表した理由は

庵原:平田さんとは創業時から意見交換していた仲なんです。当時はお互い社員はいなく、どう生き残るかの話をしてました(笑。あれから6年経って、双方全く違うリーダーシップ・カルチャーで経営し、生き残るばかりか100名規模までお互い成長できたことは驚きでもあります。今回の協業を通して、双方でモバイルアプリ、モバイルマーケティングの市場拡大に貢献したいですね。

平田:ヤプリに買収されるようなことがないよう全力で今後も伸ばしていきます(笑。

2社とも創業から5、6年経過したいわば「同級生」。数名でスタートアップして今ではそれぞれ100名規模に拡大している。事業拡大にあたって最初の壁はどこにあった

平田:PMF(プロダクト・マーケット・フィット)達成までですね。創業から1年半かかりました。ARR(Annual Recurring Revenue/年間経常収益)数十億以上のポテンシャルがあるPMFを見つけるのは大変です。

Reproの初期サービスってアプリの分析ツールでした。しかし販売はできても、ARR10億円にも到達しないことが分かったんです。そのため、試行錯誤しながら「アプリのマーケティングツール」へピボットし、かつ市場成長率以上に伸ばす必要がありました。IPOを目指すのであれば、ARR10億円以上を可能にするPMFを5年以内に見つけるのが重要な鍵になるんじゃないでしょうか。私たちはその決意(ピボット)が創業1年のタイミングでしたね。

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ヤプリは当時まだ「ファストメディア」という社名だった

庵原:社名変更が2017年4月なので4年ほどですね。いわゆる「0-1」に2年「1-10」には3年かかった感じです。特に1-10で四苦八苦したのがビジネスモデルやプロダクト、組織の確立でした。

ビジネスモデルについてはアプリ制作のプラットフォームということで、分かりやすい印象があったが

庵原:B2B SaaSの鉄板となっている「リード、商談、受注、解約防止」まで一連の流れを作るのが大変なんです。組織の細分化や、特にKPIとその実行施策については強固にしようと注力しました。優秀なマーケター、セールス、インサイドセールス、カスタマーサクセスと4つの職種を作って、有能なマネージャーの元に各チームがKPIを達成し、最終的に売上を作る。

パワポで描けても、採用や組織作り、KPIの設定・可視化、なんといってもその実行は大変でしたし、これからもアップデートし続ける必要があります。

またプロダクトについても導入企業が増えると「攻めの開発」だけでは立ち行かなくなります。「守りの開発」、つまり品質管理などの重要性を理解し、社員全員でその考え方を共有したり、手法を整理するのは大いに苦労しました。

Repro同様、PMFまで苦労した

庵原:例えばARR100億円を月額1万円で達成するか、月額100万円で達成するか。この視点で考えるのがいいかもしれません。自社のプロダクトの特性やターゲット市場の特性を考えた上で、販売手法や単価を考え、目標へどう登るのかを決めることが非常に重要、ということです。

例えばエンジニア向けプロダクトの場合はツールリテラシーが高いためセルフサーブでも販売しやすいです。さらに、エンジニア一人一人にID課金できるようなプロダクトであれば、低単価のオンラインセールスも可能になります。

あと、バーティカルなSaaSなら狙うべき業界ってセットですよね。医療向けだったら医療ですし。一方で、うちやReproのようなホリゾンタルなSaaSの場合はちょっと難しくて、早期に試行錯誤を繰り返して継続率や効果、単価や市場の大きさ(社数や従業員数など)からトライ&エラーを続けてPMFするしか方法はありません。

想像以上に粘りが重要

庵原:創業者の諦めないマインドって意外と重要なんです。ここについてはスポーツと同じかもしれません。マインドファーストの精神です。

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スタートアップのPMFは各サービス個別最適とは言え、それぞれの視点が参考になる。もう少し深掘りして売り上げを伸ばすことへの試行錯誤は

平田:創業後約2年でARR1億円規模になるんですが、この段階における経営者(私の場合)は売れる状態になったこともあって、少し安心しちゃうというのが落とし穴かもしれません。当社もそうですが、こういった状況になると、調達した資金をまずセールス・マーケティングに投資することが多いと思います。

しかしSaaSの重要指標なKPIはCAC(顧客獲得コスト)、チャーンレートとLTVです。個人的にセールスやマーケティングを強化するのは、チャーンレートの改善を可能な限りやってからだと考えてます。一度発生した顧客の流出はリカバリーするのが困難だからです。これはC向けのサービスで水漏れが少ないバケツを作ってから広告費を投下しようという考え方と一緒ですね。特にB2B SaaSの場合は潜在顧客が少ないのでより慎重になるべきでしょう。

庵原:顧客のターゲットゾーンと業界についての理解が深ければ、もっと速く成長できた可能性はあります。そこが分からなくて2年ほど遠回りしましたが、その時に試行錯誤して作った機能たちが、今のメイン機能となっていることを考えると事業に正解はないとも思います。

当初のターゲットはオンラインセールス中心の低単価SMB(中小企業)でした。このターゲットをミッドマーケット・エンタープライズに変更し、手法を対面セールス(フィールドセールス)に変えてから事業は見違えましたね。僕らのプロダクトの場合はオンラインで大量に売るモデルではなく、大手企業にしっかりと商品価値を理解してもらった上で効果を出していくアプローチのほうが正解だったんです。

ーーここで少し、平田氏が解説してくれたCAC最適化の手法が参考になったので追記しておきたい。彼が言うには、成長フェーズに入ったSaaSでマーケティング効果、効率がよい手法はやはり既存客の評価なのだそうだ。例えばReproが今年1月に獲得した新規契約の4割はこういった口コミ経由になっている。当然のことながらここにかかるコストは大変低い。その上で、平田氏はここに至るステップを整理してくれた。

  1. そのサービスが「ARR10億円以上になるか」という視点でPMFを捉える(顧客数×単価でざっくり)
  2. 該当するサービスができたらまず、数十の顧客を獲得してチャーンレートの改善にチャレンジする(解約2%以下目安)
  3. 顧客満足度が高い(=解約が低い)状態を実現できたら、この満足度を拡散できるコミュニティをつくる
  4. 様々なマーケティング施策を試行錯誤してCACを最適化する

同時に平田氏は「2」のタイミングでオウンドメディアを通じて業界の人がまだ知らないような記事を発信し、専門家だというブランドを作ったり、「4」のタイミングでは施策別の売上貢献を定量的にモニタリングすることなどが重要と補足している。

インタビューに戻ろう。

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組織の問題も頭を悩ませる。100人の壁に代表されるハードルをどのように超えたのか。また採用については「地味」な印象のあるビジネスでどういったPR戦略を考えたのか

庵原:50名を超えるまで人事担当が空席だったので、社員のオンボーディングができてませんでした。今よりも離職率は高いのに、その一方でどんどんと採用する必要があってバランスが悪かった。人を増やすための攻めの採用と、従業員の満足度を増やす守りの人事、両輪で考えなければならないですね。

平田:少し視点は違いますが、Reproの場合はカスタマーサクセスが組織拡大に貢献してます。

というのも、現状のカスタマーサクセスはライトなコンサルティングも無償で提供しているんですが、ここがポイントで、顧客はツールが欲しいのではなく、ツールを活用したKPIの向上を求めています。なのでカスタマーサクセスのミッションとして、顧客がツールを使ってKPIを伸ばす体験をして頂くことを課しています。これを私たちはCCF(造語:Client CustomerSuccess Fit)と呼んでいます。

採用した人材がサービスを通じて顧客に最適化する、というイメージ

平田:優秀な人材が採用できた場合は必ずカスタマーサクセスに配属するんです。ベンチャーマインド旺盛なミドルに権限を委譲しつつ、、社長が完全にバックアップする。1年ほどでこの仕組み自体を最適化できました。

ヤプリは採用に関して具体的にどういった手法を取った

庵原:オーソドックスですが、wantedlyのブログ更新やSNSの活用、ミートアップ、社内紹介制度など打ち手をどんどん広げて言っています。全社員で採用広報に取り組むように奨励しています。採用になると全スタートアップからIT大手までが競合ですし、皆が資金調達しているため規模に関わらず優秀人材への争奪戦が激しいです。

現在も急ピッチで採用広報に力をいれています。一方で、業界的にSaaSが盛り上がってきているので、採用は数年前よりどんどん楽になっているという状況もあります。今後もそのトレンドが続くのではないでしょうか。

ありがとうございました。

いかがだっただろうか。彼ら創業者に共通した点があるとしたら「考え抜く」という姿勢ではないかなと思う。

これまでの取材を含め、振り返って2社とも創業からしばらくは伸び悩みの試行錯誤期があったように思う。しかし軸をぶらさず、信じるという行為を続けた結果、両社とも自然に「光明」のようなものを見いだすことができた。

取材者にとっても「ああ、このプロダクトはいいものだ」と思う瞬間でもある。

テンプレ的に教えてもらった経営戦略だけでない、製品に感じる「愛」のような定性的な表現は、実は顧客や社員、ステークホルダーに浸透する魔法のような役割をもたらしてくれる。今回、お二人が共有してくれたTipsはもちろんそれだけでも役に立つものだと思うが、個人的にはここに、彼らのプロダクトに対する真摯な姿勢も付け加えさせていただきたい。