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シリーズ:メンタルヘルス

シリーズ:メンタルヘルス

情報化が加速する中、日々の生活で精神的なゆとりや心の健康を守る必要性が高まっている。また、世界的に発生したパンデミックはさらにその問題を深刻化させ、NAMI(National Alliance on Mental Illness)によると、米国では5人に1人が精神的不調を抱える状況になっているそうだ。この課題にテクノロジーはどのような役割を果たすのか。シリーズでその最新情報をお届けする

シリーズ:メンタルヘルスの話題

広がりつつある「ココロとカラダ」の危機、私たちはどう備えるべきか

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ニュースサマリ:新型コロナウィルスに端を発した急激な環境の変化で、心と体のバランスを崩すケースが増えてきた。 オンラインカウンセリングを手掛ける「cotree(コトリー)」によれば、3月頃から相談件数が増加し、前月比で3割ほどの相談増となっているそうだ。これを受けて同社は、4月16日からメンタルヘルスに課題を抱える個人や企業を対象とした無償提供プログラムの開始を伝えている。 このプログラムにはBA…

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ニュースサマリ:新型コロナウィルスに端を発した急激な環境の変化で、心と体のバランスを崩すケースが増えてきた。

オンラインカウンセリングを手掛ける「cotree(コトリー)」によれば、3月頃から相談件数が増加し、前月比で3割ほどの相談増となっているそうだ。これを受けて同社は、4月16日からメンタルヘルスに課題を抱える個人や企業を対象とした無償提供プログラムの開始を伝えている。

このプログラムにはBASEやSHIFTなどの賛同企業が、自社の社員やユーザーなどを対象に無償でカウンセリングが受けられるクーポンを発行する。個人としてCAMPFIREの家入一真氏やキッズラインの経沢香保子さんらも支援を表明し、最大1万人までのカウンセリングの無償提供を約束している。

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cotreeのメンタルサポートプログラムの仕組み

また、コーチングサービス「mento」を提供するウゴク社では、医療従事者やその関係者を対象にした無償プログラムを今月10日に開始した。同社代表取締役の木村憲仁氏によれば、数十名ほどの医師や看護師の依頼があり、今週末から順次コーチングを開始するという。

話題のポイント:7日に発令された非常事態宣言から約1週間、それ以前から外出自粛に協力し、例えばリモートワークなどに移行した方であれば数週間が経過した頃だと思います。慣れない環境に加えて先行きが見えない不安から、次に心配されるのがココロとカラダの問題です。

<参考記事>

ウゴクの木村さんのお話では、医療従事者のみなさんが抱える直接的な新型コロナに関する不安やストレスの相談に加え、企業についてはこの有事における組織の不安を相談するケースもあるというお話でした。リモートで働くことを余儀なくされた結果、見えなかった不和が顕在化したということですね。加えてつながりのある保健師さんのお話として、家庭内不和が浮き彫りとなってDVや虐待に繋がるケースが増加していることも教えてくれました。

一方でココロのケアというのは非常に難しいです。私も一人の事業者としてこの状況を考えると、不安がないと言えば嘘になります。相談するにしてもどこに話せばよいかわからないし、また、こういったプライベートな話題を見ず知らずの人に共有する不安もあります。

その点で今回の2社の無償化の取り組みはひとつのきっかけになると思います。特にcotreeが実施する、企業や個人と連携した方法はアイデアです。私のような不安を持っていても、間に企業や代表、もしくは知っている個人が「無償クーポン」という形で介在することで、第三者に相談するハードルは随分と下がります。

また、cotreeで代表を務める、櫻本真理さんも指摘されていましたが、親しい人にプライベートを相談することよりも、第三者だから思い切った話ができるメリットもあります。特に今回のような状況では、親しい人であってもその人がダメージを受けている場合もありますから、専業の受け入れ機関がある方が全体として安全です。

カラダの問題も

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NAKEDではBASEにてパーソナルトレーニングの販売をしている

ココロの不安と併せて気になるのがカラダの問題です。一部で「コロナ太り」というワードも囁かれてますが、ストレス発散という点ではこの2つはセットと考えるべきでしょう。一方、ジム通いや通勤は感染拡大防止の観点からしばらくは難しくなります。

都内でパーソナルトレーニングを手掛ける「NAKD」では、こういった問題を解決するため、自宅などでもできるオンライントレーニングの販売を開始しています。必要な器具は自宅に送付し、事前に決めた日時でトレーナーとZoomなどのオンラインをつないでトレーニングを提供する、という方法です。同社では、今後、トレーニング用のアプリ公開も予定しており、パーソナルトレーナーが指導する栄養管理やトレーニングメニューの情報を確認しながら自主トレができるようになるそうです。

本来はパーソナルジムを受けた方が、自分で24H系のジムに行ったときにパーソナルで学んだことの復習をして、よりパーソナルトレーニングの効率アップに繋げることが目的でした。今回のコロナを受けて自宅でもトレーニングができるように両軸で進めていきます(同社代表取締役の大久保光佑さん)。

現在、フリーランスのトレーナーの方々が売上を大きく落としているので、新たな収入源になるような道筋も考えているとのことでした。

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RepFitが提供するZoomトレーニング

では、こういう状況下で私たちはどのような健康管理を心がけるべきでしょうか。同じくパーソナルトレーニングを福利厚生として企業向けに提供する、RepFit代表取締役の土屋卓也さんによると、次のようなポイントがあるそうです。

現在コロナの影響により、下記の3つが人に与えるストレスが高いと考えています。

  • 今までに経験した事の無い事態
  • デスクやチェア等、作業環境が整っていない中での在宅ワーク
  • 外出自粛要請による運動機会の半強制的な減少

普段と違うリズムかつ家に閉じている生活をするために、自律神経の乱れに繋がりやすく、働く事を想定としていないテーブルなどで長時間の作業をすると、姿勢もどんどん悪化していく恐れがあります。

現状への対応策として、5分など短い時間でもいいので毎日必ず一日のどこかでストレッチをして、少しでもいいので自ら運動機会を家の中に作ることが今、できる健康管理として重要なポイントだと考えています(土屋さん)。

ココロとカラダに時間を

今回、メンタルヘルスの取り組みで個人としても賛同し、cotreeを通じて最大1000名分のカウンセリング(300万円相当)を個人として提供したのが家入一真さんです。本誌でも度々、起業家に向けたメッセージを取り上げています。

<参考記事>

今回、CAMPFIREとしてもメンタルの問題に取り組んでいる彼に、コメントをもらったのでこの記事の最後に掲載しておきたいと思います。資金繰りなどで頭がいっぱいになる時期だからこそ、自分のココロとカラダにぜひ時間を取っていただきたいと思います。

起業家のメンタルヘルスについて、この数年課題意識を持って声を上げてきましたが、コロナにより繋がりが分断され、不安な中でこれからの生き方や働き方を自らの意思で決め、選び取っていかねばならない「誰もが起業家たりうる時代」に、改めてオンラインカウンセリングが必要であると、強く感じます。長期化も予想されるこの状況の中で、一人でも多くの方の心に向き合おうとするこの取り組みに、心から賛同します。

僕からは、コロナによる不安の中で子育てをされている方々に向けて、最大500名分のカウンセリングを無償で提供します。慣れないリモートワークの中で、学校も休止になり親子共々ストレスのたまりがちな環境の中、誰かに話を聞いてもらえるだけでも救われることはあるのではないでしょうか。

また、CAMPFIREではコロナによりダメージを受けているアーティストやイベント事業者、飲食店や宿泊施設、ライブハウスやクラブなどにクラウドファンディング を通じたサポートプログラムを提供していますが、このサポートを受けられる方々に向けて、同じく最大500名のカウンセリングを提供します。不安な中で資金繰りも考えなければならない皆さんの心もケアしていけたらと思います。

世界中で誰しもが困難を強いられている時代の中で、僕たちスタートアップやプラットフォームが今、何をすべきなのか。改めて問われていると、強く感じます。この課題に向き合おうとするcotreeをはじめとして全てのスタートアップに、心から感謝と、賛辞と、応援を。共に生き抜いていきましょう(家入一真さん)。

新型コロナとメンタルヘルス:オンラインカウンセリングの現場から

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本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です 日本での新型コロナウィルスの影響やWFH(ワークフロム・ホーム)が本格化し始めた2020年3月、私たちが運営するオンラインカウンセリング「cotree」への相談件数は、前月比30%増となりました。 「コロナにかかってしまうのでは」「家族のことが心配」などコロナ自体への不安はもちろんですが、それよりも多くの人にとっては、コロナをきっ…

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本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です

日本での新型コロナウィルスの影響やWFH(ワークフロム・ホーム)が本格化し始めた2020年3月、私たちが運営するオンラインカウンセリング「cotree」への相談件数は、前月比30%増となりました。

「コロナにかかってしまうのでは」「家族のことが心配」などコロナ自体への不安はもちろんですが、それよりも多くの人にとっては、コロナをきっかけに「家にいる時間が増えて、家族との問題が悪化した」「家族から逃げられなくなった」「病院に通えなくなってしまった」「解雇された」「収入が減った」など、生活における重要な範囲に幅広く相談が増えています。

仕事上の課題
リモートワークをしている人にとっては、業務と人間関係の両方がストレス源になりうる。在宅のため、今までオフィスであれば簡単にできていた業務がやりづらくなる。また、温度感の伝わりづらいチャットなどのやりとりに変わることで、「自分の言葉遣いは問題なかっただろうか」などと不安になる人や、変化する状況に最適に対応できない会社に対して不信感を持つ人も出てくる。

孤独感
特に友達づきあいが重要な若者にとって、自粛要請は孤独感に繋がりやすい。オランダでは18~24歳の若者の約半数が孤独感を感じており(老人では22%と相対的に低い)、仲間とのつながりから多くの活力を得ていた人にとっては寂しさや不安が高まりやすいことがわかる。

家族との関係性の課題
家族がいる人にとっては、逆に親密性の中での課題が顕在化しやすい。例えば、中国では2月の段階で、ドメスティックバイオレンス(DV)関連の相談が3〜4倍に。フランスではコロナによる外出規制が始まって1週間で、DVの通報が3割増えた。これまでは家族で課題を抱えていたとしても、職場や学校などの逃げ場があったところが、家族で過ごす割合が増えることで逃げ場がなくなってしまうのである。子育てにおいても、親のストレスを子供にぶつけてしまったり、教育に影響が出てしまう不安なども生じる。

経済的不安
非正規雇用のケースではすでに解雇が始まっていたり、勤務ができなくなることで収入が減っているケースも多く、自営の場合には事業継続に不安を抱えているケースもある。今後回復の見通しが立たない中、将来に希望を持てなくなり、抑うつ感を抱えるケースも散見される。

生活リズムの変化
在宅で今までと違う生活になると、主に①運動量が減る、②睡眠サイクルが変化する、などの変化を通じて、自律神経の乱れが起こり、メンタルにも影響を及ぼしやすい。

自分たち自身でできること

このように、新型コロナウィルスによる社会の変化には、身体的・精神的・社会的なあらゆる側面で、メンタルにネガティブな影響を及ぼす条件が揃っていると言っても過言ではありません。また、自分は大丈夫でも身近な人がストレスを抱えている可能性も高くなります。

この状況で重要なことは、影響を受けている全ての人が、自分自身や周囲のためにストレス対処のための知識を身につけていることです。

①不安を抱えて当然と考える
現在のように大きな変化の中にいるとき、メンタルの不安定さは生じて当然です。不安なことを悩みすぎずに「落ち込んで当たり前」と自分をいたわる姿勢が大切です。

②情報集めに時間を使いすぎない
SNSなどのネガティブな情報に触れすぎることは、不安感を増幅させます。信頼できる情報源に絞って、時間を限って収集しましょう。

③積極的にオンラインでのコミュニケーションをとる
孤独感やコミュニケーション不足による人間関係の課題は、自分でも気づかないうちに抱え込んでいることも多いです。小さなことでも、オンラインで積極的にコミュニケーションをとりましょう。雑談やお互いへの気遣いのための一見無駄に見えるコミュニケーションも重要なのです。

④運動する、よく眠る(けど眠りすぎずに)
ジムに行かなくても、運動はできます。家の近くを30分散歩するだけでもいいので、運動の習慣をつけましょう。メンタルの不調は睡眠に現れやすいので、自分の睡眠に自覚的になり、不眠にも過眠にも気をつけるとよいです。

⑤今までとは違うストレス解消策を見つける
今までやっていたストレス解消(カラオケ、娯楽など)がなくなって落ち込んでいる人もいるかもしれません。今までとは違う環境だからこそできる娯楽や新しい楽しみを見つけてみましょう。

⑥誰かのためにできることを見つける
自分の苦しみに焦点を当てていると、苦しみが増大しがちですが、もしかしたら周囲にもっと苦しんでいる人がいるかもしれません。自分のケアをした後は、家族や仲間や社会のためにできることがないか、考えてみましょう。

それでも改善が見られない時は、外部の専門家に頼るのも一つの方法です。自治体や会社など、それぞれに相談窓口がある場合があるので、探してみてください。私たちcotreeで提供しているオンラインカウンセリングでは、ビデオあるいはテキストメッセージを通じて、専門のカウンセラーが身近な人には言いづらい不安を受け止めて、課題を整理したり解決したりすることをサポートしています。

このような時期だからこそオンラインカウンセリングが必要な人に届くことを願っている一方、不安が長期化し、環境が大きく変化する中、まずは一人一人が自分や身近な人を大切にする力を身につけていくことが何よりも重要なことと考えています。

本稿はオンラインカウンセリング「cotree」を開発・運営する株式会社cotree代表取締役、 櫻本真理氏によるもの。Twitterアカウントは@marisakura。彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はこちらからコンタクトされたい。従業員やユーザーに対してオンラインカウンセリングを提供するサポートプログラムに賛同・協賛する企業も募集している

 

従業員向けメンタル分析&トレーニングの「emol work」がβローンチ、2,000万円をシード調達——F Ventures、MIRAISE、個人投資家3名から

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ウェルビーイングを実現するメンタルトレーニングサービスを提供するエモルは2日、シードラウンドで2,000万円を資金調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、F Ventures、MIRAISE、山本敏行氏(Chatwork 創業者、現 MyCSO)、松村映子氏(バスケット創業者)、海野弘成氏(Increments 創業者)。調達した資金は後述する emol work の開発・マーケティング強…

emol のチーム。最左が CEO の千頭沙織氏
Image credit: Emol

ウェルビーイングを実現するメンタルトレーニングサービスを提供するエモルは2日、シードラウンドで2,000万円を資金調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、F Ventures、MIRAISE、山本敏行氏(Chatwork 創業者、現 MyCSO)、松村映子氏(バスケット創業者)、海野弘成氏(Increments 創業者)。調達した資金は後述する emol work の開発・マーケティング強化に充てる。

同社は2014年、現 CEO の千頭沙織氏により創業(創業当時の社名はエアゼ)。喜怒哀楽など感情を記録し、AI ロボットと記録し、過去の感情を振り返ることで、よりポジティブなメンタル状態を支援するアプリ「AI 感情日記 emol(エモル)」を昨年4月にローンチ。このアプリはノンプロモーションながらダウンロード回数は15万回、AI ロボットへのメッセージ送信は700万回に達しているという。

Image credit: Emol

AI 感情日記 emol は C 向けの無料サービスとして提供されているが、このアプリを通じて得られた統計情報によれば、ユーザ全体の56%が社会人であり(他は主婦やが学生など)、やりとり内容の会話属性の61%がメンタルに関するものであり、さらにそのうち40%が具体的な対応策に関する情報が欲するものだった。この結果をもとに、B 向け(B2B2E)の福利厚生プログラムとして編み出したのが、今日βローンチを迎えた「emol work(エモルワーク)」だ。

emol work は、エモルの VP of Psychology である大江清香氏を中心に開発された、心理学に基づいたデジタルを使ったメンタルトレーニングのメニューで構成されている。これまでにも従業員のメンタル状態を把握・分析したり、予防したりするアプリやプラットフォームはいくつか存在するが、emol work は定量的分析と自発的施策の両方を提供できるのが特徴だ。定量的分析を提供するサードパーティーと提携して、emol work が自発的施策のサービスのみを提供する可能性もあるという。

Image credit: Emol

エモルでは今後、従来からいる従業員への福利厚生プログラムのほか、新入社員のメンタル面でのケアに役立ててもらうアプローチで企業に導入を図っていく方針。来年2月、3月くらいから新入社員の研修が始まる企業も多いため、このタイミングでのβローンチに漕ぎ着けた。今年末からは、東京に拠点を置く大企業との協業を狙うアクセラレータへの参加も内定しているようだ。将来は蓄積したデータをもとに HR 領域にも進出し、「感情の Google を目指す」としている。

慈善団体のSafe in Our World、テレビゲーム界のメンタルヘルス問題に取り組む活動を開始

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慈善団体 Safe in Our World は10日、テレビゲーム界のメンタルヘルス問題に取り組む活動を開始した。世界メンタルヘルスデーに活動を開始した同団体は、ゲームプレイヤーとゲーム開発者双方のメンタルヘルス問題に対する認識を高めることを目的とした非営利団体だ。 Safe in Our World の発表は、トロントで同日閉幕する International Games Summit on …

Fractured Minds
Image Credit: Wired Productions/Fractured Minds

慈善団体 Safe in Our World は10日、テレビゲーム界のメンタルヘルス問題に取り組む活動を開始した。世界メンタルヘルスデーに活動を開始した同団体は、ゲームプレイヤーとゲーム開発者双方のメンタルヘルス問題に対する認識を高めることを目的とした非営利団体だ。

Safe in Our World の発表は、トロントで同日閉幕する International Games Summit on Mental Health の2日目と同じタイミングで行われた。

地球上の半数以上の人間がテレビゲームで遊んでおり、そのうち4分の1がテレビゲームを原因とするメンタルヘルスの問題を抱えている。Safe In Our World を待ち構える課題は困難なものだが、世界中のゲームプレイヤーをサポートすべく様々な活動を行っていく。

Safe in Our World は世界中の業界インフルエンサーやベテラン、アンバサダーのサポートを受ける、正式に認可を受けた慈善団体だ。同団体の目的は、オンライン上で人々が助けを求められる場所を作り、必要なリソースと情報を提供し、ゲーム界内外の人間のストーリーを紹介することだ。

Fractured Minds
Image Credit: Fractured Minds/Wired Productions

同団体が目指すのは、メンタルヘルスの状況を明かすことは恥ずかしいことではないと啓蒙し、活発な議論を促すことだ。また、新たなクリエイターやプロゲーマー、ユーザ層の育成、サポートも行っていく。International Games Summit on Mental Health の主催者 Mark Chandler 氏は第1回目のサミット参加者がどれほど少なかったかについて発言している。

最初の活動は、ゲームを通じた生き生きとした体験を通じてメンタルヘルスの問題を紹介することだ。まず初めに紹介するのが、2017年の BAFTA(イギリスアカデミー賞)のヤングゲームデザイナー賞を受賞した『Fractured Minds』を開発した Emily Mitchell 氏だ。彼女が17歳のとき、ゲーム開発を通じて自身が癒やしを得られていることに気づいた。Safe In Our World は今後数週間、同団体のミッションをサポートする様々なプロジェクトを発表していく。

Fractured Minds では、メンタルヘルスの問題に関する Emily 氏の個人的な体験が描かれている。また、テレビゲームが現実のプレイヤーにポジティブな影響を与えられるという側面も表現されている。Fractured Minds は Wired Productions からリリースされ、利益の80%は Emily 氏の将来のための資金と、Safe In Our World の活動を支援するための資金に均等に分けられる。

PC、Xbox One、PlayStation 4、および Switch 向けにリリースされる Fractured Minds の価格は2米ドルだ。リリース元の Wired Productions は、世界中のインディーズゲーム開発者を支援する独立系グローバルパブリッシャーだ。

Fractured Minds
Image Credit: Fractured Minds/Wired Productions

Safe In Our World を立ち上げたのはゲーム界に長らく携わっている Gareth Williams 氏、Leo Zullo 氏、Neil Broadhead 氏で、Aaron Cooper 氏と Al Hibberd 氏も設立に関わっている。彼らがゲームプレイヤーたちの駆け込み寺となる同団体の設立を思い立ったのは2017年のことだ。

代表兼理事の Zullo 氏は言う。

テレビゲーム界には傷つきやすい人がたくさんいます。彼らをサポートするのが私たちの使命なのです。私たちが共に協力すれば助けを必要とする人たちに救いの手を差し伸べて、私たちのメッセージを伝え、これまでできなかったこともできるようになります。Safe In Our World はこうした取り組みの第一歩となるものです。今回の活動に賛同してくれた業界関係者やパートナー、個人の方がいることを嬉しく思っています。

メンバーは団体を立ち上げるにあたって必要な手順を慎重に調べてきた。そして、助けを必要とする人をサポートするための取り組みや情熱について同じ考えを持つ様々な国際的企業や個人が集まった。Safe In Our World に関わっている団体や個人についてはオンラインで確認することができる。

また、テレビゲーム開発者やパブリッシャー、サービスプロバイダ、コンテンツ作成者が同団体をサポートする姿勢を歓迎している。Safe In Our World はイングランドおよびウェールズで認可を受けているが、目標とするのは世界規模の活動だ。

理事 Gina Jackson 氏は声明で次のように語っている。

ゲーム界や、私たちが作り出して活動しているコミュニティの認識と態度を変えていくうえでやるべきことはたくさんあります。Safe In Our World は今日、最初の一歩を踏み出しました。Emily 氏が Fractured Minds による支援を申し出てくれたことを嬉しく思っています。これはとても感動的な出来事であり、彼女が Safe In Our World を支援するためにしてくれたことには頭が下がる思いです。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

従業員の欠勤など生産性の低下に対する研修アプローチ「レジリエンス」ーーheadversityがシード資金を獲得

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ピックアップ:Edtech startup headversity secures $1 million in seed funding to evolve its workplace resilience training platform ニュースサマリ:7月22日企業のレジリエンスをトレーニングするアプリを開発するheadversityはシードラウンドにて個人投資家から100万ドルを調達した…

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ピックアップ:Edtech startup headversity secures $1 million in seed funding to evolve its workplace resilience training platform

ニュースサマリ:7月22日企業のレジリエンスをトレーニングするアプリを開発するheadversityはシードラウンドにて個人投資家から100万ドルを調達した。

同社はカナダのアルバータ州にて2016年に設立されたスタートアップで、メンタルヘルスの専門家や心理学者、学習やマーケティングの専門家を中心に、人々がチャレンジをしたり精神的な健康を維持するためのプラットフォームを開発している。

レジリエンスは経営学や組織論で注目が集まっている概念で、ストレスが一定以上かかったときに元の状態に戻る力のことを指す。同社はオフライン、オンラインのプログラムやゲーミフィケーションを組み合わせたプログラムを提供し、組織的にレジリエンスを鍛え、メンタルヘルスや組織力へのアプローチを可能にしている。

ATB FinancialやCopeman Healthcare、カナダのオリンピック委員会などの組織がパイロット版のプログラムを提供しており、今回調達した資金を用いてプロダクト開発やサポート、マーケティングの強化に取り組むという。

話題のポイント:今回取り上げたスタートアップが重視するのは「レジリエンス」という概念です。もともと2013年にダボス会議で取り上げられた考え方で、テクノロジーやグローバル化など様々な側面で不確実性が増す中、人々の変化によるダメージを抑え、創造的に飛躍するための力として活用が期待されています。

この概念の経営の文脈での論考としてリンダ・グラットンの「未来政府」があります。同書では企業のレジリエンスを考えるフレームとして以下の3つを紹介しています。

  1. 感情面:クリエイティビティを発揮できるような、ポジティブな感情が働くか
  2. 知識・知恵面:素早くアイディア・考えを集約し、統合することができるか
  3. 内外の人間関係面:社内外の相互作用が活発に発生し、発揮されているか

やや抽象的ですが同書の中では、個人で実践できるレベルで、十分な休息をとる、仕事とプライベートのポジティブサイクルを作る、自分の仕事を見直すなどの具体的なアクションが挙げれらています。

headversityはこのレジリエンス強化を企業にソリューションとして提供しています。精神疾患の治療や予防といった類のメンタルケアの枠を超えて、マインドフルネスや自己分析などを用いたアプローチも提供し、より社員が積極的に参加できる研修と言えるかもしれません。

同社のCEOで精神科医のRyan Todd氏は、多くの企業が取り組んでいる精神疾患で働けない人へのアプローチはどうしてもハードルが高くなる傾向があり、それ以上にその他95%の人に対して逆境を乗り越えるための手段を提供したいと語っています。

個人向けのサービスが中心であったメンタルヘルステック領域ですが、個人でケアを続けることのハードルは高く、企業向けのサービスであることのメリットは大きいと思われます。

出勤している社員の健康問題による業務遂行能力低下を測定するものとして、プレゼンティーイズム(出社してるけど業務に支障がある状態)が注目されています。ある米国の労働者のデータでは健康問題による労働者一人あたりの損失額を比較した際、医療費が2778ドル、休業による損失が661ドル、プレゼンティーイズムはなんと6721ドルとなっています。

欠勤や休職など目に見える形ではない生産性の低下に対するアプローチとして、headversityはこのプレゼンティーイズムへのソリューションとなり得るのではないでしょうか。(執筆:矢部立也

メンタルヘルスをアプリで改善ーー認知行動療法実践アプリ「UpLift」がシード資金獲得

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ピックアップ: A SCIENCE-BACKED APP FOR DEPRESSION SUFFERERS, RAISES $1M SEED ニュースサマリ:メンタルヘルススタートアップであるUpLiftは7月22日、シードラウンドでthe Laidir Foundationから100万ドルの資金を調達した。the Laidir Foundationはワシントン州にある非営利団体で、世界に良い影響…

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ピックアップ: A SCIENCE-BACKED APP FOR DEPRESSION SUFFERERS, RAISES $1M SEED

ニュースサマリ:メンタルヘルススタートアップであるUpLiftは7月22日、シードラウンドでthe Laidir Foundationから100万ドルの資金を調達した。the Laidir Foundationはワシントン州にある非営利団体で、世界に良い影響を与えることを志向している。

同社はノースカロライナ大学医学部にてコンピューターによる認知行動療法(CCBT)を学んでいた学生により設立され、消費者向けにCCBTを実践するアプリを開発している。アプリでは、ユーザーに合った認知行動療法のボットによるセッションが提供される。最初のセッションは無料で、次のセッションからは月に29.99ドルのサブスクリプションプランが利用可能。

アプリは2018年に公開後、1万ダウンロードおよび1000人の有料会員を抱えている。同社が120人のうつ病患者を対象に行なったテストでは、標準的なうつ病スコアが1カ月で50%下がったという。同社は調達した資金を用いてプロダクトとチームを強化し、うつ病に苦しむ100万人にリーチすることを目指している。

話題のポイント:日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、メンタルヘルスに対して投薬ではなく「現実の受け取り方」や「ものの見方」といった認知にアプローチする方法論を認知行動療法といいます。

近年では今回取り上げた企業のように、コンピューターを用いてこの認知行動療法を実践するアプリケーションが多くリリースされています。以下の米国のVCであるWHITE STAR CAPITALによるマッピングでも、この認知行動療法が一つの分野として掲載されておりメンタルヘルス関連のスタートアップのうち33%がこの分野に該当しています。

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(Mapping out the Mental Health startup ecosystemより)

この分野ではセラピストとの対面セッションが高価格であること、また自分の精神上の問題を他人に公開することの心理的障壁があることを考えればコンピューターやAIが介在することの価値は高いでしょう。しかしながら対面ではなくセルフケアになるからこそ、顧客に継続的に使ってもらうことの難易度は高く、サブスクリプション型のビジネスモデルである認知行動療法アプリケーションの持続性には疑問符も付きます。

こうした背景を受けて最近は遠隔医療技術を用いて、ボットではなく実際のセラピストによるセッションを組み込んだシステムでの療法が実践されているようです。この場合、アプリケーションの使用から取得できる定量的なデータは、セラピストが対話の中から得る定性的な情報と合わせてよりパーソナライズされた治療が可能になります。

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Lyraウェブサイト

例えばメンタルヘルススタートアップのLyraではユーザーデータを用いて対面カウンセリング、オンラインカウンセリング、セルフケアアプリなどから適切な治療方法を提供しています。

また認知行動療法に関する新たな潮流としては、疾患予防やメンタルウェルネスといった治療ではない形のアプリケーションが多くリリースされています。この領域では瞑想アプリのCalmはユニコーンの仲間入りを果たしており、アメリカでは非常にポピュラーなアプリケーションになっています。ポジティブ心理学など疾患の治療ではなく人生をより充実させるための手段が充実してくる中で多様なアプリケーションが期待されます。

日本人は日常的なメンタルケアへの関心はあまり高くないように感じますが、アメリカほど対面のカウンセリングが普及していないからこそ、テクノロジーを用いたメンタルケアが普及する素地はあるかもしれません。(執筆:矢部立也

「Holoash」の岸慶紀氏、Collision 2019に〝駆け出しスタートアップ枠〟で選ばれ出展——AIの都で投資家やメディアからの評判も上々 #CollisionConf

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本稿は、Collision 2019 の取材の一部である。 トロントで開催中の Collision 2019 に、日本から「Holoash」の岸慶紀氏が参加しているのを発見した。Collision が駆け出しのスタートアップに出展枠を提供する「ALPHA」に選ばれたそうだ。 Holoash は、ADHD (注意欠陥・多動性障害)を持つ人を対象として、キャラクタとの会話を通じて自己肯定感が上がること…

Collision 2019 にブース出展中の Holoash 岸慶紀氏
Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、Collision 2019 の取材の一部である。

トロントで開催中の Collision 2019 に、日本から「Holoash」の岸慶紀氏が参加しているのを発見した。Collision が駆け出しのスタートアップに出展枠を提供する「ALPHA」に選ばれたそうだ。

Holoash は、ADHD (注意欠陥・多動性障害)を持つ人を対象として、キャラクタとの会話を通じて自己肯定感が上がることを狙う「モチベーション・インタビューイング」あるいは「セラピューティックコミュニケーション」というアプローチで、問題解決を試みるスタートアップ。

同社は認知科学に基づいたホログラフィックインタフェイス「Holoash」の開発を進めているが、その一つ手前のステップとして、キャラクタとのやりとりのみをメッセンジャーを使って行えるアプリ「Nao.(ナオ)」を iOSAndroid 用にローンチしている。ハードウェアを量産するまでは道のりが長いので、Nao. を足がかりに共感してくれる投資家や協力者を集め、Holoash につなげる狙いだ。

Collision への出展、国内より世界展開を優先したことから(岸氏曰く、この分野へは日本よりも欧米からの反響の方が高いそうだ)、Nao. が対応できるのは英語でのやりとりのみ。日本語の追加実装は、今後、1ヶ月程度を目途に進めるようだ。

Nao.
Image credit: Holoash

先の記事でも書いたように、トロント、ウォータールー、モントリオール周辺は人工知能や深層学習に強い土地柄で、この分野に強い投資家や分野特化型のメディアも多い。ブースを開設した今朝からは、データアナリティクスツールの MATLAB のメンバーが訪れたほか、投資家からの問い合わせやメディアからの取材が相次いでいるようだ。

岸氏はまた、Holoash がプレシードラウンドで Momentum の高頭博志氏から資金調達したことを明らかにしてくれた。高頭氏はクラウドファンディングサイト「Readyfor」の立ち上げメンバーとしても知られる人物だ。この資金を糧に、今年初めには、Amazon でエンジニアだった Shekhar Upadhaya 氏がデータサイエンティストとしてチームに加わっており、同社の技術開発の加速が期待される。

Holoash は昨年、Y Combinator の Startup School の参加対象に採択。また、Accenture HealthTech Innovation ChallengeHealth 2.0 Asia-Japan 2018 のピッチコンペティションMonozukuri Hardware Cup 2019 でファイナリストに選ばれた。これまでに、エンジェルラウンドで、INDEE Japan、曽我健氏(SGcapital)、芝山貴史氏(BLANQ)、小笠原治氏(ABBALab)から資金調達している。

Collision 2019 のブースエリア
Image credit: Masaru Ikeda

2019年に注目したい「ヘルスケア市場9社」と「3つのトレンド」まとめ

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本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。いち早くニュースをチェックしたい人はこちらを参照してください。 今回は2018年にFreaks.iDで紹介したヘルスケアスタートアップを紐解き、大きく3つのトレンドを簡単に紹介していこうと思います。 1.医薬品市場におけるパーソナライズ化とPBブランド パーソナライズ・サプリメント企業「CARE / O…

本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。いち早くニュースをチェックしたい人はこちらを参照してください。

今回は2018年にFreaks.iDで紹介したヘルスケアスタートアップを紐解き、大きく3つのトレンドを簡単に紹介していこうと思います。

1.医薬品市場におけるパーソナライズ化とPBブランド

Image Credit by Care/of

最初に取り上げたい点はパーソナライズです。なかでもビタミン・サプリメント分野でのパーソナライズ化が顕著と言えるでしょう。

2018年8月には「Care/of」が2,900万ドルの資金調達に成功しています。顧客はライフスタイルに関する簡単な質問に答えるだけでパーソナライズ化されたサプリメントが定期的に送られてくる仕組みです。

同様のトレンドはヘアケア製品でも登場しており、「Prose」が12月に1,800万ドルの資金調達を行っています。Proseの場合、膨大な医学研究ビックデータをもとに最適な調合を行うデータドリブンな製造過程を経ており、投資家からより大きな注目を受けている印象です。

日本でも注目を受けそうなスタートアップには「Lemon Box」が挙げられるでしょう。12月に200万ドルの資金調達を果たしています。Lemon Boxは米国のサプリメントを中国市場向けにパーソナライズ化して海外輸出するサービスを展開しています。さながら「サプリメント版Buyma」とも言えるかもしれません。

確かに日本のドラッグストアで中国人が日本の医薬品を爆買いしている点を見ると、巨大な市場がすでに存在しているはずです。『TechCrunch』の記事では既存製品をキュレートして中国市場に届けながらも、売れ筋商品を自社ブランドとして開発して利益率を上げていく戦略に触れています。AmazonやZOZOがやっているようなパーソナライズによるデータ収集からプライベードブランド拡大への戦略に舵を切ろうとしている思惑が伺えます。こうした戦略は日本市場でも十分に参考となるはずです。

2.音声AI/医療機関向けメッセンジャーによる効率化

Image Credit by Notable Health

米国では日本と比較して規制が緩いこともあり、電子カルテ入力を効率化させる音声AIスタートアップが多々登場している印象があります。

9月には「Notable Health」が1,350万ドルの資金調達を行いました。専用アプリをインストールしたApple Watchを医師に付けてもらい、診察中に発生した会話を分析してカルテの必須項目事項を自動記入。従来の入力時間を約70分削減させます。

同じく9月に電子カルテ自動入力サービス「Saykara」が500万ドルを調達しています。同社の場合はスマートフォンを診察室に立てかけて音声入力していく形ですが、サービス内容はNotable Healthと変わりません。

こうしたAIを通じた音声分析・カルテ自動作成の流れはいづれ日本の医療規制が緩和され次第進んでいくと思われるため、今のうちから注目しておくと良いかもしれません。Amazon EchoやGoogle Homeが医療分野に本格的に進出してくれば、上記で紹介した2社の買収も考えられますし、大手IT企業の参入も十分に想像できます。

さて、医療機関のコミュニケーションツール分野も盛り上がりを見せています。同分野では「TigarConnect」が大手ですが、10月には「Forward Health」が390万ドル、「Siilo」が450万ユーロを調達しています。

筆者が時折通う内科は受付とLINEを使って随時コミュニケーションを図っているようですが、やはり機密性に欠ける印象。この点、医療市場の情報機密性を汲み取ったツールの登場が日本では待望されるでしょう。「医療機関向けSlack/Messenger」の位置づけで日本のベンチャー企業が活躍するのりしろがあるように思えます。医療コミュニケーション分野は日本でも大いにスタートアップが参入する余地があると思われ、今のうちから参考にすると良いかもしれません。

3.メンタルヘルスケア市場の継続成長

Image Credit by Wisdo

スタートアップデータベース「Pitchbook」の記事によると、2017年度のメンタルヘルス企業の合計調達額は歴代最高額に並ぶ5億ドルに至っています。2018年度は同年額を凌いでいると想定されます。

瞑想アプリ「Simple Habit」は11月に1,000万ドルの資金調達に成功しています。約5分間で聴き終えられる瞑想オーディオコンテンツを提供する「瞑想コンテンツ版Netflix」サービスを展開。同じく瞑想オーディオ分野では「Aura Health」が270万ドルを調達しています。

こうして俯瞰して見ると、前述した音声AIを通じた電子カルテ入力サービスに代表されるように「声」のメディアに注目が集まっている印象です。

SNS分野ではメンタルヘルス特化のコミュニティアプリが登場。「Wisdo」も11月に1,100万ドルを調達。ユーザーの抱えるメンタルの課題と適するコミュニティーに属することで、同じ問題を抱えたユーザーとやり取りができます。ノウハウや克服経験を共有することができます。

日本でも音声コンテンツやSNSアプリにメンタルヘルスケア志向を組み合わせるサービスが登場する予感がしています。2019年以降は米国のメンタルヘルスケア市場の波がやってくるかもしれません。

発達障害課題にテクノロジーで挑む起業家・岸慶紀氏、開発プロダクト「Holoash」は現代人の救世主となるか?

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ADHD という言葉をご存知だろうか。日本語では「注意欠陥・多動性障害」と訳されている。細かいことに注意がいかない、連続した仕事をやり遂げるのが難しく、時間管理や作業の順位づけが下手など、発達障害の疾患の一つだ。 ADHD 障害を持つ人にとっての課題の一つは、身の回りであれ、仕事であれ、本人の意思に反して、あらゆることがやりっぱなしになってしまうということ。その結果、周囲や職場などで叱責される対象…

Holoash 岸慶紀氏
Image credit: Masaru Ikeda

ADHD という言葉をご存知だろうか。日本語では「注意欠陥・多動性障害」と訳されている。細かいことに注意がいかない、連続した仕事をやり遂げるのが難しく、時間管理や作業の順位づけが下手など、発達障害の疾患の一つだ。

ADHD 障害を持つ人にとっての課題の一つは、身の回りであれ、仕事であれ、本人の意思に反して、あらゆることがやりっぱなしになってしまうということ。その結果、周囲や職場などで叱責される対象となってしまい、自己肯定感やモチベーションを失いがちだ。自身も ADHD 障害を持つ岸慶紀(Yoshua Kishi)氏は、テクノロジーを使って、この症状の緩和を試みようとしている。

Holoash のイメージ

彼が現在取り組むのは、認知科学に基づいたホログラフィックインターフェイスの「Holoash」。ホログラムで表現されたキャラクタが話しかけてくれ、ADHD 障害を持つ人がキャラクタとの会話を通じて自己肯定感が上がることを狙う「モチベーション・インタビューイング」あるいは「セラピューティックコミュニケーション」と表現されるアプローチをとっている。

Holoash の中で繰り広げられる対話は、映画「her/世界でひとつの彼女」に出てくる人工知能型 OS「サマンサ」で実現される世界観に近い。今年初めの CAMPFIRE でのクラウドファンディング成功を受け、現在はモバイルアプリ(本稿下のビデオ)を使った仮説検証と PMF(プロダクトマーケットフィット)を行なっているフェイズだ。最近では Y Combinator の Startup School の参加対象に採択されたり、Accenture HealthTech Innovation Challenge のファイナリストに選ばれたりするなど、海外で評価される機会が目立つ。

ホログラムを使って、障害の緩和を目指す手法を選んだ点について、岸氏は次のように説明してくれた。

注意力が散漫にならずに、目の前に集中するものがあるというのが大事。また、人間は平面的なモノを見るのは苦手なので、三次元でモノを見てもらい、そこに集中できる環境を作ることにこだわりたい。

最近では、ADHD 障害を持つ人だけでなく、スマートフォンや SNS の普及が〝健常者の ADHD 化〟さえ助長する傾向があるのだという。岸氏はこの事象を「Digital Dementia(デジタル認知症)」と呼んでいるが、スマートフォンなどでプッシュ通知が飛んできて、そちらに注意が向いてしまい、本来やるべきことの優先順位が下がったり、もともとやろうとしていたことを忘れてしまったり、ということは誰しも経験があるだろう。

シリコンバレーの TVLP(Technology Launch Venture Program)でピッチする岸氏
Image credit: TVLP

つまり、ADHD だと医師に診断された人のみならず、現代人であれば、程度の大小はともあれ、誰しも似たような課題を抱えている。Holoash の仮説検証が実証に漕ぎ着ければ、さまざまな可能性が広がるだろう。近い将来には(ADHD 障害の人が苦手とする)スケジューリング管理の機能も付される予定だが、Alexa などが搭載されれば、スマートスピーカー以上のユースケースも期待できる。

Holoash は今年、エンジェルラウンドで、INDEE Japan、曽我健氏(SGcapital)、芝山貴史氏(BLANQ)、小笠原治氏(ABBALab)から資金調達しており、Holoash のハードウェアプロトタイプ開発などに向けて、先ごろプレシードラウンドの資金調達を開始した。今月には、スタンフォード大学出身の客員研究員メディカルセラピストがアドバイザーに就任、保険・製薬業界との協業やアカデミアとの共同研究が期待されるところだ

<参考文献>

若者は孤独だーー新世代を襲うメンタルヘルス問題に挑むスタートアップたち

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年齢が若ければ若いほど孤独を強く感じているという統計結果が、健康保険会社Cignaが発表した調査データにより判明しました。 Cignaは18歳以上の全米2万人に対し、どのくらい孤独を感じているのか聞き取り調査を実施。72歳以上のグレイテストジェネレーション世代の38.6%が孤独を感じている一方、世代が若くなるについて割合が高くなる傾向にあることがわかりました。調査対象のなかで最も若いジェネレーショ…

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Image by David Dodge

年齢が若ければ若いほど孤独を強く感じているという統計結果が、健康保険会社Cignaが発表した調査データにより判明しました。

Cignaは18歳以上の全米2万人に対し、どのくらい孤独を感じているのか聞き取り調査を実施。72歳以上のグレイテストジェネレーション世代の38.6%が孤独を感じている一方、世代が若くなるについて割合が高くなる傾向にあることがわかりました。調査対象のなかで最も若いジェネレーションZ世代(18〜22歳)の48.3%が孤独を感じているといいます。

欧米各国でも同じ社会現象が発生。CBC Newsの記事によると、イギリスに住む17〜25歳の若者のうち43%が孤独の問題を抱えているそう。カナダのニュースサイトRCIは、各世代の25〜30%が慢性的な孤独を感じていると報じています。

孤独はストレス耐性を減少させたり燃え尽き症候群を加速させるなど、多くのメンタルヘルスの問題を誘発させます。そこで本記事では孤独を発端に、メンタルに問題を抱える若者が急増する現代の問題解決を目指すスタートアップを紹介していこうと思います。

疲れた若者を救う瞑想アプリ

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欧米のスタートアップは10〜20代を中心としたジェネレーションZ及びミレニアル世代の孤独を、大きな市場課題であると捉え動き始めています。

たとえば疲れた若者を勇気づけるメディア「Shine」が挙げられます。同社は2018年4月に500万ドルの資金調達を実施。TechCrunchの記事によると世界189カ国に展開し、200万ユーザーを獲得しているそう。ユーザーの88%が35歳以下、70%が女性であるとのこと。

SMS(ショートメッセージ)やFacebookメッセンジャー、専用アプリを通じて毎日モチベーションの上がる名言や瞑想Podcastコンテンツを配信。孤独にふさぎ込むユーザーのサポートを目指します。有料コンテンツへのアクセス権を得るには月額7.99ドルもしくは年間59.99ドルのプランに登録する必要があります。

PRNewsWireに掲載されているレポートによると、2017年のメンタルヘルス・ソフトウェア市場規模は11.5億ドル。今後年間成長率14.8%を以って2022年には倍増の23.1億ドルまで成長するとしています。

こうした市場成長や若い人ほど孤独の問題を抱えやすい背景を考えると、Shineのように消費のしやすい瞑想やモチベーションコンテンツを配信する有料メディアの登場は必然といえるでしょう。実際、筆者が体験した際にはチャットボットの使いやすさや、若者が受け入れやすい配色デザインに好印象を持ちました。

競合も出揃ってきています。最も注目を集めているのが瞑想コンテンツ版Netflixの「SimpleHabit」です。同社は創業者であるYunha氏が前職で経験した「燃え尽き症候群」に着想を得て立ち上がったサービス。忙しい若手ビジネスマンや大学生をターゲットに音声瞑想コンテンツを提供します。

ユーザーは5分以内に聴き終えられる音声コンテンツをスマートフォンアプリで手軽に楽しめます。各コンテンツは日常の特定シチュエーションに最適化されており、たとえば「緊張するプレゼン直前に聴くコンテンツ」と指定すれば該当するものを聴いて心を整えられます。

SimpleHabitは世界中の瞑想エキスパートから音声コンテンツを集め収益を分配。月額11.99ドルもしくは年間99ドルの有料プランで売上を立てます。TechCrunchの記事によると、2017年時点で1,000コンテンツ以上を提供し、250万ドルの資金調達に成功しています。

企業が支える、従業員の心のメンテナンス

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企業側も孤独やメンタルヘルスの問題を重要視している傾向にあり、福利厚生の一環として従業員の心のケアを実施しているところがあります。

しかし、福利厚生プログラムを0から立ち上げるのは非常にコストがかかりますし、十分なケアを提供できずに終わってしまう場合がほとんどです。また、従業員にとってメンタルヘルスの問題を同僚に打ち上げることは難しく、職場で孤独を感じていれば問題解決が難しくなるのは明らかです。

そこで登場したのが「Spring Health」です。2018年7月に600万ドルの資金調達に成功している同社が、ホームページに公表している統計データによると、平均79%の従業員が企業のメンタルヘルスケアが十分でないと回答しているそうです。こうした企業側のプログラム施行にかかるコスト削減と、従業員の満足度を上げるためメンタルヘルスケアサービスを提供するのがSpring Healthなのです。

同社は企業向けにSaaSを提供。従業員はオンラインダッシュボードに基本情報を入力します。するとAIが数千の臨床試験及び健康記録データに基づき各ユーザーに合わせたパーソナライズ診断を実施。治療オプションやおすすめの運動法、セルフケアのやり方までを提案。必要であればSpring Healthと提携する専属の臨床心理士や精神科医からの治療を受けられます。

顧客企業には全米トップ500の企業Fortune500や、ポケモンGoを開発するNitanticなどのスタートアップまで幅広く名を連ねます。

企業向け市場においても多数のスタートアップが参入しています。著名アクセレータYCombinatorを卒業した「Modern Health」は、企業向けに従業員が専属セラピストやコーチからケアを受けられるマッチングサービスを提供。同社は2018年6月に226万ドルの資金調達をおこなっています。TechCrunchの記事によると、利用企業である大手給与SaaS企業Gustoの従業員の43%が利用するほど需要があるとのこと。

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Image by sprout_creative

Spring HealthやModern Healthのようなスタートアップは、これから徐々に増えてくる新社会人のニーズを見越し、メンタルヘルス・インフラを企業に広めることを目指しているといえるでしょう。一方、精神科に通うのが億劫であったり、企業や大学に十分なケアサービスが整っていない若者はShineやSimpleHabitを使い、心のセルフマネージメントに努める傾向にある印象を受けます。

筆者の事業モデルに対しての見解としては、10〜20代の若者が毎月10ドル前後の料金を支払い続けてセルフメディテーションをおこなうのか疑問に思うところもあり、前者のB2B向けパッケージを提供するスタートアップの方が堅調に成長できると考えます。

さて、ここまではすでに大きく成長を遂げたメンタルヘルス関連のスタートアップを中心に説明をしてきましたが、今後はロボットの分野も見逃せないでしょう。

未だ若者向けのメンタルヘルス・ロボットで大型調達を果たした企業は見当たりませんが、老人の孤独を解消するソーシャルロボット「ELLIQ」は2,200万ドルの資金調達に成功しています。同ロボットはAIを搭載し、ユーザーの行動を認識した上で最適なアクションを提案します。こうした家庭ロボットの市場認知が進めば「若者向けELLIQ」のような、メンタルヘルス市場で大きく活躍するロボットの登場が考えられるかもしれません。

投資家も動きを見せます。ロンドン拠点の新興アクセレータ「ZINC」の第一回プログラムでは女性が抱えるメンタルヘルスや孤独をコンセプトにプログラムを展開しています。

このようにあらゆる分野でメンタルヘルス問題を解決する動きが出ています。一方、時代が進み、SNSのような媒体やテクノロジーの発展とは逆行する形で孤独の問題が拡大しているのも事実といえます。

皮肉なことにスタートアップが参入する将来性の高い市場としては申し分ないですが、社会にできた孤独というしわ寄せが限界に達する日も近々くることでしょう。たとえば #Metoo 運動のように、ある日を境に大きなムーブメントとなり、これまで従順に働いてた従業員が企業に反旗を翻すことも予想されます。いずれ来る大波を回避するために、今のうちから個人・企業が若者の孤独やメンタルヘルスに向き合う必要がありそうです。