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シリーズ:スタートアップと大企業

シリーズ:スタートアップと大企業

大企業はスタートアップとどう向き合うべきか。スタートアップという起業のカタチが始まってから約10年、オープンイノベーションを考える企業も増えてきた。一方でその考え方・温度感は各社様々だ。次の10年、企業はいかにして新しいアイデアを事業に、そして産業へと押し進めることができるのか

MUGENLABO Magazine

シリーズ:スタートアップと大企業の話題

「バーチャル渋谷」50社が連携した街づくりの物語:ミラーワールドの未来 Vol.4

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 バーチャル渋谷を話題にすると人々の反応が割れる。ある人はこのミラーワールドの未来を楽しそうに語るし、ある人は自分のものではないと食わず嫌いをする。 なぜ、街をデジタル化しなければならなかったのか、その背景にあるストーリーを3人のキーマンの視点と共に辿ってきた。街が持っている課題、感染症拡大というきっか…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

バーチャル渋谷を話題にすると人々の反応が割れる。ある人はこのミラーワールドの未来を楽しそうに語るし、ある人は自分のものではないと食わず嫌いをする。

なぜ、街をデジタル化しなければならなかったのか、その背景にあるストーリーを3人のキーマンの視点と共に辿ってきた。街が持っている課題、感染症拡大というきっかけ、共創の力。いろいろなものが絡み合って、一見するとやや奇想天外なこのプロジェクトは一気に進むことになった。ではこの先、街をデジタル化することで何が起こるのだろうか。キーマンたちの言葉をガイドに、番外編としてその未来像を想像してみることにする。

6歳から80歳まで楽しめる理由

ミラーワールドやデジタルツインにパラレルワールド。今、世の中には「もう一つの世界(仮想世界:メタバース)」を求めて技術開発を進めている人や企業が存在している。そのコンセプトの元祖とも言えるのはやはりLinden Lab(リンデン・ラボ)が開発した Second Life(セカンドライフ)だろう。

3DCGで構成されたもう一人の自分をアバターとしてコピーし、現実世界のようなコミュニケーションを可能とした。最近の大きな話題としてはEpic GamesのFortnite(フォートナイト)も特徴的だ。バトル・ロワイアルとしての世界的なヒットゲームに留まらず、トラヴィス・スコットのライブイベントに1200万人以上を接続させるという伝説的な話題も打ち立てた。これもまたメタバースのひとつに数えられる。

では、現実世界をコピーすることになった「バーチャル渋谷」はどのような世界観を目指すのだろうか。KDDIサイドでこのプロジェクトに参加している三浦(伊知郎、KDDI 5G・xRサービス戦略部 革新担当部長)氏は、実際に立ち上がった仮想の渋谷に入って感じたことをこう語る。

ほぼ完コピっていうのですかね、忠実に作った空間があると全然やっぱり違うなって思いました。私、実は実家が文化村通りにあって母親が80歳ぐらいなんですが、バーチャル渋谷に入って『どこそこにあの家がある』、なんてもう自分ゴトとしてここを見てるんですよね。6歳の甥っ子から80歳の母親まで同じ空間を違和感なく共有できてることがすごく衝撃的で。それってやっぱり渋谷がそのままできてる、ってことがポイントなんだろうなと(KDDI 三浦氏)

三浦氏はプロジェクトに参加してくれた50社もここで色々やりたいと言ってくれてるのは、やはりこのリアリティがあるからだと言及していた。

実はメタバースにはもう一つの流れとしてデフォルメされた世界観がある。先日、Oculus Quest2が発表されたステージで披露されたFacebookのHorizonもそのひとつだ。しかし、このように単純化された世界観には、それが何であるかを言語化する必要が出てきてしまう。結果、説明コストのことを考えると、バーチャル渋谷のようにリアルにコピーしてしまった方が障壁は低くなる。当然だ。

ただ、ここにはやはり技術的なハードルが同時に出てきてしまう。クラスターの加藤氏も現時点での限界をこのように話していた。

これはまだまだサイエンスフィクションな話ではあるんですが、やはりAR(拡張現実)・VR(バーチャルリアリティ)の区別がつかない状態が、あるべき最終形態だと思っています。つまり、フィジカルを伴った体験すべてがデジタル化されてインターネットに乗っかっているという状態ですね。バーチャルに行ってるのかリアルに行ってるのか区別がつかないし、区別する必要がない。これが最終形態です。

なので、clusterは別に、デフォルメされた世界観を目指しているわけではないんですよ。デフォルメされた世界観からスタートしているのは、単純にリソースの問題ですね。例えばフォートナイトも、制作が始まった2011年頃からずっとソフトウェアを積み上げて今の体験になってますよね。われわれの目指しているものは、相当に巨大なソフトウェアです。当然、実装の優先順位というものがありますから、コミュニケーションやイベントといった機能および世界観は、デフォルメされた状態からスタートせざるを得なかったし、そうするのが当然のアプローチです。

フィジカルを伴ったコミュニケーションとして、バーチャルな世界に友だちと一緒に入り、音楽ライブに参加し熱狂する。こういった体験が、コンピューターグラフィックス技術の発展にともなってリッチ化していくというのは絶対にそうなる未来だし、clusterとしてもその大きな流れに乗っかっていますよ(クラスター 加藤氏)

加藤氏の話によれば特に難しいのがデバイスの対応問題で、貧弱なスマートフォンからパワフルなPCまで幅広いユーザーに入ってもらおうとすると、期待値を一定に揃える必要が出てくる。さらにバーチャル渋谷のような企画であれば、対象が普段からclusterを利用しているアーリーアダプターなどの層から離れるため複雑な説明もしづらい。

まさにこれから、といった部分なのだ。

「もう一人の自分」を作る意味

バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェスの様子

バーチャル渋谷のようなメタバースを考える上で、街とは別にもうひとつ考える要素がある。「自分」だ。渋谷未来デザインの長田さんも前回のインタビューでこう語っていた。

意外だったのは区外、海外からも反響があったことですね。そもそもこういうことがなければ、まさかバーチャル空間に人を集めようとか、イベントするという考え方はなかったと思うんです。結果的に頭を切り替えることでプロジェクトは逆に加速しました。私だってまさかバーチャル空間で遊ぶとは思ってませんでしたし、多くの方も同じじゃないでしょうか(渋谷未来デザイン 長田氏)

彼女の言う通り、日常生活において自分がもう一つの世界に入って自分の分身を作る必要性はない。ではなぜ、デジタルツインやメタバースのような考え方は世界的に広まっているのだろうか。やや思想的で個人的な見解と断りつつ、三浦氏はアバターとして作る「もう一人の自分」についてこのような考え方を話してくれた。

(アバターをどのような自分にするのかを考える上で)自分の内面と向き合ういい機会だなと思ったんです。人と接触できない状況で渋谷にもう一人の自分を降り立たせて、じゃあ彼には英語ペラペラになってもらおうか、みたいな『自分を見直す作業』が出てきたんですね。自分に足りてるものや足りてないものをミラーリングして、自分がここまで生きてきて正しかったのか、そういった問いが生まれてきたことは気付きでした(KDDI 三浦氏)

仮想空間におけるもう一人の自分、という考え方はアバターよりもバーチャルYouTuberというアイデアの方が分かりやすいかもしれない。あのキャラクターの裏にはもう一人の自分が存在していて、もしかしたら性別も年齢も全く違うものかもしれない。現実世界とは異なる性格の自分を作り出すことで、もう一つの人生を歩む。デジタル世界に現実世界と全く切り離されたもう一人の自分を作る場合、誰もが通る道になるのだ。

普段からVRゴーグル付けるような人たちは専門的にそういったことを考えていたのかもしれないんですが、バーチャル渋谷という渋谷区が公認した、誰もが入っていける街を作ったことで、同じような現象が一般の人たちにも起こると思ったんですよ。僕自身、フルスペックのもう一人を作れるとしたらどうするんだ、って。もちろん答えを出す必要のあるものじゃないですけどね(KDDI 三浦氏)

リアルタイムであることの大切さ

バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェスの様子

加藤氏との話の中で時間の概念について面白いエピソードがあったので共有したい。

インターネットを表現する際、「時空を越える」という言葉を使うことがある。確かに今回の感染症拡大で、私たちは離れた場所でのコミュニケーションを余儀なくされた。バーチャル渋谷は空間の問題を超えた最たる例と言えるだろう。では時間はどうか。加藤氏は以前クラスターとして実験したタイムトラベルの話をしてくれた。

以前、clusterとして壮大な実験をやったのちクローズしたものがありまして。それがアーカイブの機能です。cluster上で起こってることはすべてサーバーを通しているので、全部データとして残っているんですね。なので、実施した音楽コンサートの演出や観客の様子だったりを、まるまる当時のまま復元しうる。ということで、いわゆるアーカイブ機能を作ってみたんです。その当時の状況の中を別の自分が歩き回るわけで、リリースしたときは「タイムトラベル機能ができた」なんてコメントをいただけたりもしました。ただ、出してみて分かったことがあって、それがリアルタイムの価値の重要性でした。もっと正確に言うと『リアルタイムと認識している』価値です。

アーカイブ機能があれば、イベントにいつでも入れるわけですから、便利ですよね。でも、盛り上がりも同じ体験のはずなのに、グッと利用者も満足度も減ったんです。一度限りの体験を、一度限りのタイミングに、友だちと一緒に体験する、ということ自体がものすごい価値を持っていたんだなと気付かされましたね。もっというと、人間というのは、「そういう状況にあるという認識」に価値を感じるんだと、実験的な機能提供を通して理解しました。つまり、われわれは利便性のために時空を越えたいのだけど、『時空を越えたと感じたくないのでは?』という根本的な課題にぶち当たったわけですね(クラスター 加藤氏)

すごく興味深い気付きで、加藤氏はリアルタイムの価値を再認識した上で、「リアルタイムと認識している状態」を再現したいと話していた。確かに自分がまさに「今」ここにいるという感覚を生み出すことができれば、時間の輪郭がぼやける。

タイムトラベルの話はさておき、バーチャル渋谷のような仮想の街づくりで、この「リアルタイム」という同時性、体験をどのように作っていくのかというのは面白いテーマであると思った。

現実世界と仮想世界が交わる日

現実と仮想の街。この二つは役割や機能も異なるし、ましてや単なるキャンペーン・コンテンツでもない。3人の言葉が示す通り、オーバーツーリズムや街を支える仕組みの問題を解決するための取り組みであり、現実と仮想の両方を持つことで可能性の幅をさらに広げることができる。

感覚的な話だと、ガラケーからスマホへの移行って何か大きな事件ではあるものの結構スムーズにいったじゃないですか。音楽ストリーミングとかもそう。このバーチャル渋谷もコロナ禍とセットのような形で見られてますけど、今年がデジタルツインの元年だとすると生活の中にバーチャルという概念が自然と入ってくると思うんですよね。例えば渋谷のスクランブル交差点にスマホやグラスをかざせばもう一つの渋谷が見えてくる。これは間もない未来でバーチャルだリアルだと言ってること自体、今だけだと思ってますよ(KDDI 三浦氏)

通信やグラフィックス、デバイスなど技術的な問題がこれから解決することを考えれば、この先数年でその境目はより曖昧になっていくはずだ。人々が自由に現実と仮想の渋谷を往来するようになった時、その当たり前の日常ではどのようなことが巻き起こっているのだろうか。近くやってくるであろうその日を楽しみに待ちたい。(了)

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JR東日本、スタートアップ協業プログラム第4期デモデイを開催——Suicaをビルゲートの鍵にするアイデアで「Akerun」が優勝

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JR 東日本スタートアップは26日、インキュベーション/アクセラレーション・プログラム「JR EAST STARTUP PROGRAM」の第4期デモデイを開催した。これは JR 東日本とスタートアップのオープンイノベーションを促進するためのプログラムだ。応募のあったスタートアップ242社のうち18社が採択され、約半年間におよぶプログラムに参加、この日のデモデイを迎えた。 今回は、「地方創生」「観光…

JR 東日本スタートアップは26日、インキュベーション/アクセラレーション・プログラム「JR EAST STARTUP PROGRAM」の第4期デモデイを開催した。これは JR 東日本とスタートアップのオープンイノベーションを促進するためのプログラムだ。応募のあったスタートアップ242社のうち18社が採択され、約半年間におよぶプログラムに参加、この日のデモデイを迎えた。

今回は、「地方創生」「観光・インバウンド」「スマートライフ」という3つの提案テーマが設定された。本稿ではデモデイでのピッチの結果、審査により入賞した5社を紹介する。

デモデイで審査員を務めたのは、以下の6人の皆さん。提案内容の「新規性」「ビジネス性」「JR 東日本のリソースをいかに活用しているか」の3つの指標によって評価された。

  • mediba 代表取締役社長 江幡智広氏
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 仮屋薗聡一氏
  • 守屋実事務所 代表 守屋実氏
  • コラボラボ(女性社長.net 運営)代表取締役 横田響子氏
  • JR 東日本 常務取締役 事業創造本部長 喜㔟陽一氏
  • JR 東日本 常務取締役 総合企画本部長 坂井究氏

(文中写真は、いずれも当日のライブ配信から)

【スタートアップ大賞】フォトシンス(スマートライフ)

副賞:100万円

スマートロック「Akerun」を開発・提供するフォトシンスは今年で設立6周年を迎えた。Akerun は累計5,000社の企業が利用しており、オフィスワーカーの7.4%が Akerun を日常的に使ってカギを開けている計算になるという。同社は今年8月に公表した新戦略「Akerun Access Intelligence」でビジネスからプライベートまで全ての鍵をクラウド化する構想を明らかにしている。

この構想では、ユーザが普段利用している交通系 IC カードやスマートフォン、社員証・入館証といった固有の ID をメールアドレスや電話番号といったデジタルの ID に組み合わせて「Akerun ID」として登録。これにより、オフィスやビル、自宅などさまざまな空間へのアクセスを可能になる。JR 東日本との協業により、フォトシンスは Suica ID と Akerun ID の連携を可能にする。

具体的には、東京・代々木にある JR 東日本の本社ビルのフラッパーゲートについて、現在はゲストに対して受付で個別に発行しているカギを Suica にリプレイスする。JR 東日本本社を訪れる関係会社社員を対象に、アポ登録時に Suica 番号を入力してもらい、Suica でゲートを通過できるようにする。Suica 開発元の JR 東日本メカトロニクスは、API 利用料で収入増を狙える。

【優秀賞】さとゆめ(観光・インバウンド)

副賞:50万円

さとゆめは、過疎に悩む人口700人の山梨県小菅村で「村まるごとホテル」なるコンセプトを展開。同村には100軒の空き家があるが、これらを客室に改修し現地村民にキャストとして働いてもらうことで、分散型のホテルを実現するというものだ。既に4棟6客室と22席あるレストランが営業しており、客単価3万円・稼働率4割が損益分岐点とされる同事業で、12月末までほぼ満室となっている。

既にある資産を活用し、現地に現金収入や事業創生をもたらす効果があることから、さとゆめではまず、乗降客が減少しながらもマイクロツーリズムで注目を集めつつある青梅線で、「沿線まるごとホテル」事業に着手。駅を降りてすぐに本格的な自然やアウトドアを楽しめる「アドベンチャーライン」と JR が名付けた青梅駅〜奥多摩駅間で実証実験を開始し、将来は全国展開も視野に入れる。

これらの区間では集落の中に佇むように駅が存在しているため、無人駅をフロントに、古民家を客室に、現地住民をキャストとすることで、駅を始発点とした体験を観光客に提供できるようになる。駅でチェックイン時にウェルカムドリンクを提供し、付近を案内し、客室では沿線食材を利用した飲食体験も提供可能。青梅線全体で、年間5万人分の乗降客数を底上げできる可能性があると見積もる。

【優秀賞】ソナス(スマートライフ)

副賞:50万円

高度成長期に全国で建設された鉄道や交通のインフラは劣化が激しく、近年は労働人口の低下から無線 IoT などを使った高効率なメンテナンスが注目を集めている。無線はケーブル敷設を必要としないので実装が容易である一方、電波障害や干渉などで通信が不安定になることがあり、信頼性が求められるインフラの監視やメンテナンス現場では、無線が信用できないとの声もしばしば聴かれる。

ソナスは、IoT 向けの省電力マルチホップ無線通信技術「UNISONet」を開発している。技術の詳細は以前書いた拙稿に委ねるが、複数のユニットから同時に電波をぶつけることで意図的に干渉を起こし、利用可能なあらゆるルートを使って確実な通信を確立できる独自の通信技術だ。通信ロスのないデータ収集や多種多様なトラフィックを同一ネットワーク上に収容できるのが特徴。

JR 東日本とは、熊谷駅と新潟駅周辺の2カ所で PoC を展開中だ。熊谷駅周辺では、既存システムと並列して電化柱の傾き監視システムに UNISONet を導入。従来は360人分かかっていたシステムが20人分で導入でき、3ヶ月間にわたりデータロスは確認されていない。新潟駅周辺では駅建設工事現場の列車停止システムに無線ユニットを設置し実験を行なっている。

【審査員特別賞】グリーンインパクト(地方創生)

副賞:10万円

健康ブームや和食ブームから世界的にわさびの需要は伸びる兆しを見せているが、一方で、わさびの生産量はこの十年間で半減している。生産量が減っているのは、生産者減少や自然災害によるもの以外に、耕作放棄水田が増えたことで、水源涵養(水田の水が地下に浸透して、地下水の涵養源になること)されたわさび田の水源が減少していることも関係している。

一方、鉄道の歴史は排水の歴史でもある。トンネルを掘れば水が湧き出し、JR 東日本をはじめ鉄道会社各社はその排水に頭を悩ましてきた。上越新幹線の中山トンネルでは1分間に50トンの水が湧き出し、100万人都市の全住民の消費量に相当する上質な水は、現在はその使い道もなく排水されている。グリーンインパクトは、このトンネル湧水を使ってわさび生産を展開する。

同社では、わさびは選んだ理由として、収益性が高いこと(上質なものはメロン並みの高い値がつく)、12毛作が可能(1年を通して収穫が可能)、増産がしやすい(分根により1株→5株程度への種苗増殖が可能)を挙げた。新潟の GALA 湯沢、千葉・久留里の円覚寺、群馬の土合駅で実証実験を行っており、それぞれ、施設内のレストランやホテル、グランピング客に料理で提供される予定。

【オーディエンス賞】SD C(スマートライフ)

副賞:10万円

SD C は、処方箋が無くても病院薬が購入できる「セルフ薬局」を展開している。病院で処方される薬のうち約半数については、医師の処方箋が無くても薬剤師による対面であれば販売が可能であることから、薬を処方してもらうだけのために病院やクリニックに出向くことなく、短い待ち時間で薬を購入できる施設として注目を集めている。

新型コロナウイルスの感染拡大により、鉄道駅には乗降客が減り新たな活路が求められているが、SD C では、移動手段の通過点でしかなかった鉄道駅を「スマート健康ステーション」として、ヘルスケアのワンストッププラットフォームの入口に変化することを提案。東京駅は構内既設ドラッグストア「Eki RESQ」との連携、西国分寺駅で空きテナントを活用した自前店舗の実証実験を行う。

東京駅と西国分寺駅構内で期間限定で展開する店舗では、SD C が市中で営業するセルフ薬局の1.5倍の来店客数を想定(実際に何人かは開示されていない)。また、東京駅店舗では月坪売上28万円(月照190万円)、西国分寺店舗では月坪売上22万円(月照250万円)を目指す。オンライン事前問診で薬引渡し時の待ち時間をさらに短縮し、将来はフィットネスや病院との連携も図る。

労働が拡張する世界:遠隔操作ロボットがコンビニで働き出すまで/Telexistence 富岡仁氏 Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はテレイグジスタンス(遠隔存在)の研究を具体化し、社会実装を進めるTelexistence代表取締役CEO、富岡仁さんにお話を伺います。 東京大学名誉教授、舘暲教授によるテレイグジスタンス(遠隔存在)の研究をもとに、富岡CEO…

テレイグジスタンス代表取締役CEO、富岡仁氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はテレイグジスタンス(遠隔存在)の研究を具体化し、社会実装を進めるTelexistence代表取締役CEO、富岡仁さんにお話を伺います。

東京大学名誉教授、舘暲教授によるテレイグジスタンス(遠隔存在)の研究をもとに、富岡CEOが共同創業者として2017年に創業したのがTelexistenceです。2018年5月には量産型プロトタイプ「Model H」の開発に成功。遠隔操作ロボットによる旅行や購買・小売業に事業機会を見出し、今年8月からはファミリーマートやローソンなどのコンビニエンス・ストアでの試用運転を開始しました。

今年8月に発表されたTelexistenceとファミリーマートによる協業では、新たな店舗オペレーション基盤の構築を目的とした遠隔操作ロボット技術の試用運転を開始しています。店舗の飲料売場にて遠隔操作によるペットボトル飲料の陳列から業務を開始し、今後は、おにぎりやお弁当など作業対象を随時拡大していくそうです。遠隔操作が可能なModel-Tの導入によって、遠隔地から一人で複数店舗の作業が可能になるため、人手不足の軽減や現在拡大している感染症拡大防止にも繋がると期待されています。

大学での研究を形にし、そしてそれらを社会実装するまでにはどのような困難があったのでしょうか。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答はTelexistence代表取締役CEOの富岡仁氏、文中敬称略)

スピーディーに社会実装を進めるための逆転の発想

遠隔操作の様子

遠隔操作というアプローチでロボットの社会実装に取り組むのですが、ローソンやファミリーマートへの導入はどういう経緯で実現したのですか

富岡:小売、その中でもコンビニエンスストアというのは最初から狙っていたマーケットでした。

世の中にない技術や仕組みを社会に実装する場合、まずはプロトタイプを作って実証実験(Proof of Concept・POC)を行い、効果検証などをするわけですが、ロボティクスやハードウェア系のスタートアップは、このPOCをやるやらないの交渉で1年使ってしまう。そして、仮にPOCを行っても結局次に進まず、また違う顧客候補と実証実験を行う、というのを繰り返す『POC屋さん』になってるケースが多くあります。

ジェフリームーアのキャズム的に言うと、ロボティクススタートアップはPOCでぐずぐずしていると、キャズムのベルカーブにできた最初の裂け目、クラックに躓き、転んでしまうことが多いと思います。これはある意味しょうがないところもあります。産業用ロボット以外のロボティクスは導入したい側も何ができるのか分からないし、ロボット屋さんも作るのは得意だけど、相手のオペレーションがわからないのでニーズに最適化されたロボットを作れない。この情報の非対称性とギャップを短期間の実証実験で埋められる訳がない。

多くのB2Bハードウェア・スタートアップのハードルです

富岡:だから自分たちの場合、既存のコンビニオーナーさんにお願いして2カ月店舗にロボット置かせてください、と交渉したら時間がかかるだろうなということは当初から予想していました。であれば自分たちでコンビニ店舗を運営する中でロボットを稼働させ、製品化する、という打ち手でPOCの壁を、ベルカーブのクラックを、最小抵抗経路で超えていくことにしました。

そしてもう一つ、自社店舗を運営する狙いは、自らキャズム上のイノベーターやアーリーアダプターになることで、次の段階の顧客グループであるアーリーマジョリティ層にイノベーターの利用事例を説得材料にすることにあります。ただ、これも言うは易しで、創業2年のロボット会社が突然フランチャイズオーナーとして店舗運営の許可をコンビニブランドの本部の方々から頂く交渉は相当難しかったのですが。

逆転の発想ですね

富岡:ロボット開発以外に小売の店舗運営をしないと行けないので大変ですけどね。ただ、商品の入荷時間がいつでその為にはロボットがどういうスループットで動かなければいけないかなど、ロボット導入に興味を持つ企業のオペレーションを細かいレベルで理解できています。するとこれまで印象論でしか分からなかったことが見えてくるんですよね。だから正直、他社のロボット会社が小売や物流向けに我々と同じレベルの製品はなかなか作れないと思います。

実際に導入して検証している様子を拝見したのですが、店舗が案外普通の様子でした。例えばAmazonではDash Cart用に店舗を最適化したり、TRIのロボットでは天井にぶら下げるようなパターンもあります。オーナーであるなら店舗を最適化させるということは考えなかったのでしょうか

富岡:ないですね。産業用ロボットの市場ってどれぐらいだと思いますか?グローバルで何台ぐらい売れてると思います?なんとなくすごく沢山売れてて巨大なマーケットっぽい印象があるじゃないですか。でも実際は世界で37万台です。ファナックや安川などグローバルで主要な4ロボットメーカーがありますが、それを全て合わせてもそれぐらい。車が世界で年間9,000万台販売されていることを考えるとまあ、小さい市場ですよね。

理由は現状、自動車や総合電気の工場の中でしかロボットが使われてないからです。工場の中であれば完全にコントロールできる環境なのでロボットが稼働しやすいように周辺環境を構造化出来ます。一方、我々が狙っているのはあくまでその工場の外のリアルな世界、非構造な環境です。

工場外に出ないと確かに市場は限定的になりそうです

富岡:リアルな世界を工場のように全てロボットに最適化された環境に変えていくのは我々の仕事ではないと考えてます。例えば、馬車から車に移った時、馬車と車が通る道を分けて、自動車専用の道路を整備したのは国です。スタートアップや企業がやれるものじゃない。もしかしたらいつかはロボットが動きやすい環境を整えてくれるのかもしれないけど、タイミングですよね。そのタイミングが来るまではなるべく周辺環境を変えなくてもロボットが使えるようにしなければいけない。そうしないと勝ち筋ってちょっと見えないと思います。

足を使い外で動くロボットと言えばBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボットがやはり印象的です。一方で、自由に動き回れるロボットにはまだ社会実装までのリードタイムがありそうですが

富岡:機械工学的な我々の強みはマニピュレーション(手による操作)にあり、世界に存在するマニピュレーションに関わる問題を解きたいと思ってます。

ロボットが完全に自動で物体を把持するには「目」が必要で、これがコンピュータービジョンにあたります。ただ、現在の機械学習ベースの物体認識は所謂フレーム問題をまだ超えられていません。フレーム問題が解決されるリードタイムは諸説ありますが最低でも10年、という共通認識があるので、それを待っていたら時間との勝負であるスタートアップは死んでしまいます。

だからロボットの社会実装の最適解として、視覚能力も含めた人間の知覚能力をインターネット経由、遠隔のロボットに組み合わせ、フレーム問題の解決を待たずにロボットを社会に実装していくのがTelexistenceです。

人間と機械による完全なオートメーションの間にTelexistenceの価値がある

富岡:人間が自分の知覚能力や身体能力をインターネットで伝送し、ロボットを遠隔制御することは、遠隔から自動化に移行する為に必要なプロセスだと考えてます。今、工場で稼働している産業用ロボットは人間が一つ一つロボットにやってほしい動きを教えています。XYZ軸の空間座標を専用の端末に打ち込み、プログラミングもしないとロボットは動きません。これはティーチングという作業ですが、この方法は産業用ロボットが実用化されてから約60年間、何も本質的なイノベーションが起こってないです。

今、ニューラルネットを使ってこのティーチングの作業をティーチレスにする技術開発が欧米を中心に始まっていますが、人間が遠隔操作したロボットの制御データをもとにロボットの軌道計画を自動生成するという我々の自動化アプローチもこの技術革新の一つだと考えてます。(次回につづく)

東急がCVCを開始、初案件で「FUNDINNO」運営に出資——投資型クラファンとの連携で、協調投資・相互送客も視野に

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東急(東証:9005)は25日、スタートアップへの出資を行う CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業を開始することを明らかにした。特別目的会社やファンドなどのビークルを設立はせず、東急本体の事業会計から出資を行う。投資判断は東急の経営陣が参加する委員会で実施されるとみられるが、全体予算規模や投資先一社あたりの出資額(チケットサイズ)などは現時点で設定していない模様。 なお、同社は CVC …

東急(東証:9005)は25日、スタートアップへの出資を行う CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業を開始することを明らかにした。特別目的会社やファンドなどのビークルを設立はせず、東急本体の事業会計から出資を行う。投資判断は東急の経営陣が参加する委員会で実施されるとみられるが、全体予算規模や投資先一社あたりの出資額(チケットサイズ)などは現時点で設定していない模様。

なお、同社は CVC の第1号案件として投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」を運営する日本クラウドキャピタルに出資し業務提携したことも明らかにした。出資金額や持分は明らかにされていない。東急と日本クラウドキャピタルは業務提携を通じて、投資案件への協調投資と相互送客を行うとしている。

東急は以前から、グループ各社や各部門とスタートアップの協業を促すオープンイノベーションプログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」を運営している。TAP では、グループ各社や各部門が持つ「既存の事業」の DX を主眼に置いているため、東急とって「未来の事業(東急の資産を活用しながらも、例えば、鉄道や不動産などに直接関係しない事業)」の創出には限界があった。

こうしたことから、東急では未来事業を創出する社内組織としてフューチャー・デザイン・ラボを開設、TOKYU2050VISION「東急ならではの社会価値提供による世界が憧れる街づくり」を発表していた。今回の CVC 事業開始は、この TOKYU2050VISION の実現、つまり未来事業の創出に特化したものとなるため、既存の TAP とは投資対象となるスタートアップやスコープも異なるものとなる。

福井崇博氏

これまでオープンイノベーションをやってきたので、スタートアップ界隈でも東急の名前を知ってもらえている。ただ、将来に対する投資、長期的な連携強化に向けた手段として、CVC の活動が必要なのではないかと1年ほど前から準備に着手していた。

TAP の活動はグループの各社や各部門が対応するため、オープンイノベーションの案件ごとに主体が異なる。既存事業の改善や周辺事業が中心となっていた活動から、東急グループが組織として出資ノウハウを貯めるための活動も必要なのでは、ということになった。

TAP に採択されたスタートアップが CVC の投資対象になるとは限らないし、CVC から出資したスタートアップが TAP に採択されるとも限らない。(東急 フューチャー・デザイン・ラボ イノベーション推進担当 課長補佐 福井崇博氏)

<参考文献>

東急 CVC と日本クラウドキャピタルとの協業イメージ
Image credit: Tokyu / JCC

一方、日本クラウドキャピタルは FUNDINNO に参加する投資家の裾野の拡大や、投資型クラウドファンディングで資金を得たスタートアップのその後の事業展開支援の一環として、以前から東急と協業の可能性を模索していたという。

柴原祐喜氏

東急沿線の特色を生かしたクラウドファンディングの実施や、東急沿線地域の方々から投資家を集めるということも可能だろう。

また、FUNDINNO で調達を終えたスタートアップの中から、東急グループ各社の事業と連携したい、というところもあるはず。投資型クラウドファンディング → CVC 調達という「協調投資」のケースも生まれてくるだろう。

こういった協調投資が実現できれば、対象社はファンを取り込んだ上で、東急グループの事業会社のアセットを使って実証実験できるので、プロジェクトの成功確度もより高まる。(日本クラウドキャピタル 代表取締役 CEO 柴原祐喜氏)

前出した東急の CVC 活動では、TOKYU2050VISION における「City as a Service(CaaS)」構想に基づいて、出資検討対象となるテーマがヘルスケア、住む・働く・移動、ソーシャルファイナンス(金銭的リターンだけではなく社会的リターンも追求する金融)の3つに設定されている。日本クラウドキャピタルは、ソーシャルファイナンスの文脈から出資を受けることが決まったそうだ。


CVC 活動とは別に、東急はこれまでに TAP の枠組みでスタートアップとの事業提携や資本提携を6社と結んでおり、東急グループからスタートアップへの出資総額は10数億円に上っていることを明らかにしている(今年3月現在)。

一方、2017年4月に FUNDINNO をローンチした日本クラウドキャピタルは、サービス開始後3年目を迎えた今年4月、投資型クラウドファンディングへの参加者登録が2.7万人を超えたことを明らかにしている。今年9月には約8.5億円を調達し、累計調達額が約14億円、株主数が83(機関投資家、個人投資家を含む)となったことを発表していた

文化芸術を“デジタル化”する方法ーー「augART」で共創するTCMとKDDI Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。文化芸術のデジタル化とはどのようなものでしょうか。今回取り上げる共創事例は、伝統芸能やアートの世界をデジタル・テクノロジーを通じて現実社会に繋ぎ込む、そんな取り組みについてご紹介します。 芸術を技…

写真左:The Chain Museum 取締役COOの田中潤さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。文化芸術のデジタル化とはどのようなものでしょうか。今回取り上げる共創事例は、伝統芸能やアートの世界をデジタル・テクノロジーを通じて現実社会に繋ぎ込む、そんな取り組みについてご紹介します。

芸術を技術で拡張する「augART」プロジェクト

アートのコミュニケーション・プラットフォームなどを手がけるThe Chain MuseumとKDDIは11月24日、先端技術により日本の文化芸術体験を拡張するau Design project(ARTS & CULTURE PROGRAM)の取り組みを公表しています。また、その第一弾として世界的に注目を集める彫刻家・名和晃平さんとのコラボレーションプロジェクトを発表しました。

発表されたアプリ「AR x ART(エーアールアート)」では、AR技術で目の前のオブジェクトや人物をリアルタイムに彫刻化する「PixCell_AR」や、リアルとバーチャルが交錯するパブリックアートを出現させる「White Deer_AR」などが提供され、これまでの彫刻の概念をテクノロジーで拡張させるものとして新たな体験の提供が期待されています。

アートを社会とデジタルで繋ぐこの取り組みの意義について、スタートアップサイドでプロジェクトに参加するThe Chain Museumの取締役COO、田中潤さんはこのようにお話されていました。

「我々が提供しているArtStickerは現代美術(コンテポラリー・アート)が中心のサービスですが、例えば『歌舞伎』を鑑賞して、その感動をSticker(投げ銭のようなもの)とともに、感想を役者に伝えられたら、そこでコミュニケーションが生まれますよね。一方的な鑑賞から、双方的な体験に変わるというか。また、実はそんなStickerは、昔からある『おひねり』という文化をDX(※)したものと捉えることもできると思います。あとは、チケットや音声ガイドのDXも、すでにArtStickerの機能としてはありますので、withコロナ時代において、そのようなDXを文化芸術全般に広げていくことは必要であり、The Chain Museumがお手伝いできることだと思っています」(The Chain Museum取締役COO 田中潤さん)。

The Chain Museumはアーティストと鑑賞者の新しい関係性を生み出すことを目的としたアート・コミュニケーションプラットフォーム「ArtSticker(アートスティッカー)」を開発する、2018年7月創業のスタートアップです。今回、KDDIはKDDI Open Innovation Fundを通じて同社に出資し、5GやXRなどの最先端技術を活用した文化芸術体験のデジタル化を共に推進するとしています。

現在、「ArtSticker」の登録アーティストは1,000組を越えるそうです。プラットフォームでは、アーティストに直接支援と感想を送ることができる「Sticker機能」のほかにも、気になった作品やイベントチケットを購入したり、美術館や芸術祭などで、鑑賞者のスマホで作品の情報を聞くことができる「音声ガイド機能」も提供しています。

なお、両社の取り組みは芸術を技術で拡張する「augART」プロジェクトとして推進されます。

このプロジェクトは文化芸術の幅広いジャンルを対象に、KDDIの最先端技術とThe Chain Museumのアートナレッジを組み合わせ、文化芸術領域でのビジネス創出を推進するものです。今後はこういった文化芸術に関心を持つ企業や教育・研究機関などとの協働も検討するそうです。

彫刻家・名和晃平氏とのコラボレーション

今回のプロジェクト発表の目玉はやはり、彫刻家・名和晃平さんとのコラボレーションにあります。

名和さんの作品の特徴は彫刻の「表皮」に着目した、セル(細胞・粒)という概念にあります。2002年に発表した情報化時代を象徴する「PixCell」や、生命と宇宙、感性とテクノロジーの関係をテーマに、重力で描くペインティング「Direction」など、彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた、国内現代アートを牽引する一人です。

augARTでは、名和さんとのコラボレーション作品として、「AR x ART KOHEI NAWA」を展開します。アプリとして提供されるこの作品では、例えば最新のiPhoneなどに搭載されているLiDARスキャナにより、目の前のオブジェクトや人物がリアルタイムに名和さんの代表作「PixCell」に変化したり、作品をARでコレクションする、といった体験を共有することができます。

「White Deer_AR」では、au 5Gエリアにて作品「White Deer」を探す旅を楽しむことができる

田中さんはこのようなコラボレーション活動により、アートがテクノロジーによって社会実装されることで新たな場づくりにつながり、そしてそれがアーティストたちにとって新たな活躍のきっかけになると語ります。

「The Chain Museumでは『デジタルの場』だけではなく、ArtStickerの登録アーティストと共に、ホテルや商業施設にアートをインストールして『リアルな場』も作っています。リアルの場の中で、5GやxRといった最先端技術を使うことでDX=便利になる、だけでない、これまでにない新たな体験も一緒に企んでいます。また、プラットフォームづくりだけでなく、ArtStickerには1,000組を超えるアーティストに登録いただいているので、彼等に5GやxRという新しいメディウムを提供することで、どのような作品ができるのか、そんなコラボレーションもできると思います」(The Chain Museum 田中さん)。

次回はKDDIサイドでこの共創事例に取り組んだチームの話題をお届けします。

※編集部註:DX・・デジタルトランスフォーメーション、デジタル化、業界のデジタルシフトを指す

子供たちの遊び場をデジタルで救えーー連続起業家が活用した「au IKEBUKURO」の共創チャンス Vol.3

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 コロナ禍で急浮上したau IKEBUKURO店での端末除菌問題。前回の記事ではここに挑戦したスタートアップの共創ストーリーをお届けしました。最終回となる今回は、やはり感染症拡大で打撃を受けたキッ…

プレースホルダ代表取締役 後藤貴史さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

コロナ禍で急浮上したau IKEBUKURO店での端末除菌問題。前回の記事ではここに挑戦したスタートアップの共創ストーリーをお届けしました。最終回となる今回は、やはり感染症拡大で打撃を受けたキッズスペースを手助けするソリューションの共創事例です。子供たちの遊び場はデジタル技術でどのように変わり、新たなビジネスとなるのでしょうか。

子供たちの遊び場をデジタルで救え

「2017年からリトルプラネットというファミリー向けデジタルテーマパークを全国で運営していたのですが、 今年発生した感染症拡大でテーマパークが長期休業を強いられることになったんです」ーー。こう語るのはリトルプラネットを運営するプレースホルダ代表取締役CEOの後藤貴史さんです。

常設展示で全国11箇所に展開しているテーマパークは、子供たちが集まって遊ぶということもあって営業の休止を余儀なくされます。6月から営業再開に漕ぎつけるものの、先行きは不透明なままです。

「ただ今回の問題が発生する以前から、リトルプラネットのアトラクション(体験コンテンツ)を導入したいという企業さんからの問い合わせが定期的にあったので、コンテンツを切り出して販売する準備自体は進めていました。そこでこれをきっかけに全社的なB2B事業を一気に立ち上げることになった、というのが背景にあります。ただ、社員のマインドも急に転換することになり一時期は戸惑いも見られました」(プレースホルダ代表取締役 後藤貴史さん)。

こういった経緯で開発されたのが、今回の共創事例となる小型デジタル遊具「スマイルパッケージ」です。子供たちが描いたお絵かきをスキャンするだけで、画面の中に3Dとなって登場するという体験ができるもので、これを安価、かつ短期間で導入できるように、スキャナと一体化したツールを独自に開発してサービス化しました。これがMUGENLABO支援プログラム 2020に採用されたことで、KDDIの直営店であるau IKEBUKUROとGINZA456の両店舗で展示され、GINZA456では実際にご家族で体験することができるようになっています。

「主なターゲットは店舗や商業施設などのキッズスペースです。近年、多くの店舗でキッズスペースを設置していますが、あくまで”保護者の用事が済むまで子どもたちが遊んで待っている場所”という位置づけであることが多く、実はマーケティングやブランディング、顧客満足のために活用できている店舗はそう多くないんです。一方でキッズスペースにも賃料は発生していますよね。ここに注目して私たちの技術でこのスペースを店舗と消費者(来店者)の双方にメリットがある空間に生まれ変わらせたいと考えていました」(プレースホルダ 後藤さん)。

後藤さんのお話によれば、従来型のキッズスペースではマットや遊具などアナログな体験が多く、一方でデジタル化しようにもコストや運営の問題が大きくのしかかるそうです。壮大なコンテンツを制作すれば当然費用はかかりますし、難しい操作が必要なデバイスを用意してもスタッフが対応できないケースが出てきます。これを月額5万円という低価格に抑えつつ解決しようというのが後藤さんたちの取り組みでした。

「コンセントにつなぐだけですぐ使えるデザイン、新たなコンテンツを追加していける更新性を大切にしました。現在は3種のコンテンツを体験することができますが、これによって『来店するたびに変化する遊具』として提供することが可能になります。また最近の動向として、一般的な絵本やオモチャだと消毒や清掃が難しく、キッズスペースを閉鎖する店舗が多いんです。この点、デジタルは接触を最低限に減らして遊ぶことができるため、そこを期待される声も多いですね」(プレースホルダ 後藤さん)。

連続起業家は共創をどう活用する

プレースホルダを語る上でもうひとつの注目点、それが代表の後藤さんについてです。

後藤さんは大学在学中の2007年にゲーム事業を手掛けるポケラボを創業した人物で、300名規模にまで企業を成長させた後の2012年、グリーによる子会社化を経験した連続起業家でもあります。プレースホルダは東京放送ホールディングスやKDDI Open Innovation Fundなどから出資を受けているのですが、こういった事業会社との資本関係の重要性についてこのようなエピソードを教えてくれました。

「(リトルプラネットが入っている)ららぽーとさんなどのような大手デベロッパーさんとの取引は創業当時、やはり信頼してもらうのは難しかったですね。いくら(過去の事業で)実績があっても最初の店舗って本当に決まらなかったです。個人で保証に入ろうがどうやっても無理で。信頼あるブランドが優先されるのは当たり前でした。だからこういった不動産会社さんとおつき合いする上で、信頼ある事業会社さんからしっかりフォローしてもらえるだけで導入が進むというケースもありましたね」(プレースホルダ 後藤さん)。

共創をなぜやるのか、という問いに対する答えの一つがスピードです。プレースホルダの創業は2016年。連続起業家で、事業経験も豊富にあった後藤さんにとって、ヒットするコンテンツや仕組みを作り出すことは確度の高い仕事だったと思います。一方、積み上げが必要なブランドや信頼はどうしても時間がかかります。プレースホルダの事例はそこをショートカットしたケースでしょう。

今回のB2Bモデルへのシフトチェンジにも共創がうまく寄与しているようです。

「(GINZA456設置のきっかけは)今年8月にau IKEBUKUROで「スタートアップのコロナ対策」というテーマのプレスイベントがあったんです。そこでスマイルパッケージを採用いただきました。その際はまだイベント当日の展示のみだったんですが、それがきっかけでどこかの直営店舗に設置したいという声をいただき、結果、GINZA456の『au 5Gや先端テクノロジーを活用しお客さまの想像を体験に変え「おもしろいほうの未来へ」が体感できる』というコンセプトがスマイルパッケージの体験と合ってるよねということで設置に至りました」(プレースホルダ 後藤さん)。

また、今回のコラボレーションは社内でも反響があったそうです。検討してきたとはいえ、突然の店舗休業やB2Bモデルへのシフトチェンジに戸惑っていた社内メンバーも、自分たちの開発した技術がKDDIの代表的な旗艦店舗に展示されることで大きな自信につながったと言います。

後藤さんは今後もこのサービスのブラッシュアップを続け、共創によって掴んだきっかけをさらに拡大し「ファミリー体験をトータルにデザインできる連合団」を作っていきたいとお話されていました。

「今後、スマイルパッケージ以外にもさまざまなB2Bプロダクトを開発していく考えですが、我々だけでは足りない部分も沢山あります。さまざまな会社と協業し、プロダクトやパッケージの共同開発をしていきたいですね。例えば施工・設計会社さん、デベロッパーさん、広告代理店さん、機材メーカーさんなどです。我々の技術を広く展開していくためにパートナーの存在は不可欠です。すでにさまざまな企業と話を進めていますが、ご興味のある企業の方はぜひ声をかけていただきたいです」(プレースホルダ 後藤さん)。

85億円“新ファンド”は注目領域を15に拡大、三井不動産「31 VENTURES」

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的にご紹介するコーナー、前回ご紹介した凸版印刷の共創事業を展開するトッパンCVCに続くのは三井不動産のベンチャー共創事業「31VENTURES(以下、31V)」です。 三井不動産の本業強化と事業領域の拡大を目指し、2015年に設立した50億円規模のファンド「31VENTURES …

写真左から:三井不動産の上窪洋平さん、山下千恵さん、江尻修平さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的にご紹介するコーナー、前回ご紹介した凸版印刷の共創事業を展開するトッパンCVCに続くのは三井不動産のベンチャー共創事業「31VENTURES(以下、31V)」です。

三井不動産の本業強化と事業領域の拡大を目指し、2015年に設立した50億円規模のファンド「31VENTURES Global Innovation Fund 1号(以下、CVC1号)」を皮切りに、これまでアーリー期からレイタ―期の国内外のスタートアップ、約40社への投資を実行されています。

また、今年9月には85億円規模のCVC2号を発表し、2017年に設立した300億円の投資事業「31 VENTURES—グローバル・ブレインーグロースI」と合わせることで、その後の成長投資もできる構成を実現されました。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答は三井不動産ベンチャー共創事業部で31VENTURESを担当する上窪さん・江尻さん、山下さん)

31VENTURESの活動の経緯について教えてください

31V:長期の視点で国内の人口が減少していく中、将来的な不動産業の在り方に対して課題意識があり、オープンイノベーションの必要性は会社全体として感じていたのがそもそもの背景です。CVC発足以前よりオフィスの提供という形でスタートアップを支援していましたので、その接点の中で彼らとの共創には大きな可能性を感じ、本業の強化や事業領域の拡大を実現すべくCVC活動を開始した、というのが経緯です。

現在、3つの投資事業を運用されています

31V:はい、CVC1号ファンド(50億円)、CVC2号ファンド(85億円)と総額300億円の投資事業「31 VENTURES—グローバル・ブレインーグロースI」です。CVC1号・2号で協業可能性のあるスタートアップに投資をし、その後のグロースについても検討できる構成になっています。

CVC1号ではシードも対象にしていましたが、CVC2号ではこれまで以上に共創を生み出すことにフォーカスを当て、もう少し進んだアーリー期からミドルステージのスタートアップを対象にしているのが特徴です。これまでの活動を振り返り、三井不動産との共創を前提に考えるとプロダクトがある状態がやはりスムーズなのです。

領域として注目している分野は

31V:これまでは不動産テック、IoT、サイバーセキュリティ、シェアリングエコノミー、E コマース、フィンテック、環境・エネルギー、ロボティクス、AI・ビッグデータ、ヘルスケアの10領域でしたが、CVC2号ではこれに加えて、モビリティ(MaaS、自動運転、フリートマネージメントなど)、宇宙商用化、食品(フードテック)、農業(アグリテック)、エンターテイメントの5つを追加しています。

フォーカスするテーマについては(1)Real Estate as a Service(2)DX/デジタルトランスフォーメーション(3)スマートシティ(4)新産業発掘の4つに重点を置くのが特徴です。

かなり幅広い領域テーマですね。代表的な投資事例と共創の取り組みを教えていただけますか

31V:確かに2号から領域を増やしましたが、ジャンルについては濃淡が付くことになると思います。例えば幅広く全領域のスタートアップに投資をするようなことはあまり考えていません。共創事例として出資先にクラスターやSynamonがいるのですが、「オフィスのバーチャル化」といったような本業に近いところに回帰している傾向はあるかもしれません。

Synamonについては10月に追加投資を発表させていただきました。ワークスタイリングでのデモ体験の実施や、インターン生向けVRコンテンツ製作など、少しずつVR領域への理解を進め、連携への準備を進めているところです。

ファンドをグローバル・ブレインと共同で設立していますが、意思決定のプロセスはどのようなものですか

31V:ソーシングは両社で実施していますが、技術的な目利きや収益性のスクリーニングについては、グローバルブレインが主導し、現在および将来の協業可能性といった戦略リターンは当社が主導して判断する、という流れになっています。協業可能性はもちろんですが、財務的なリターンについてもしっかりと見ているのが特徴です。

三井不動産の場合、CVCとして明確にポジションを分けています。本体出資や買収とどのような分担をされているのでしょうか

31V:スタートアップへの出資はCVC、またはグロースⅠ事業にて実施するのが基本的な考え方です。一方、当社との事業連携の位置付けが強い場合には直接投資をしています。ただ、本体から直接投資をする場合もベンチャー部で適宜相談に乗っていますので、全社目線であらゆるケースについて最適な投資方法を選択する、ということになると思います。

31VENTURESでは日本橋にスタートアップを集約しようという構想など、やはり働く場所についての支援や活動が特徴的です。コロナ禍でスタートアップにおけるオフィスの位置付け、役割は変わりましたか

31V:そうですね、この件についてはスタートアップ経営者にアンケートを取りました。シードやアーリー期のスタートアップにおいては企業文化を作るためにオフィスという場が大切だという回答が半数を占める結果でした。執務スペースというよりはディスカッションし、経営者の理念を浸透させ、そして熱量を一定に保つ場所としてのオフィスの重要性があると認識しています。

ありがとうございました。

ということで三井不動産の投資事業31VENTURESについてお届けしました。次回は今年新たにCVCファンドを設立されたヤマトホールディングスさんの取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。

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SORACOMがグローバルに挑戦する意味 – ソラコム 玉川憲氏 Vol.4

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 Internet of Thingsを自由にするーー。クラウド技術をフル活用してIoTを民主化する。これに成功したソラコムのメンバーは、KDDIグループに入った後も大きく事業成長し、スウィングバイ・IPOという次への飛躍を宣言するに至りました。 成長の鍵となるのはコミュニティです。開発者たちがパッショ…

ソラコム 代表取締役社長 兼 共同創業者 玉川 憲氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

Internet of Thingsを自由にするーー。クラウド技術をフル活用してIoTを民主化する。これに成功したソラコムのメンバーは、KDDIグループに入った後も大きく事業成長し、スウィングバイ・IPOという次への飛躍を宣言するに至りました。

成長の鍵となるのはコミュニティです。開発者たちがパッションを持ってアイデアに取り組もうとした時、助けになる情報や協業パートナーが探せる、アイデアを累乗に育てることのできる環境をソラコムのチームは作ってきました。彼らが作ってきたプラットフォームの正体、それはクラウドサービスと密接に紐づいた、人や企業が集う共創環境そのものだったのです。

インタビューの最後は、ソラコムがこの先に見据える世界戦についてお伺いします。(太字の質問はMUGENLABO Magazine編集部、回答はソラコム代表取締役の玉川憲氏)

グローバルに挑戦する意味

ここまで「SORACOM」共創環境を自らも生み出し、また、KDDIとの共創関係で事業を大きく成長させ、その先を見据える準備段階に入った、というストーリーをお聞きしてきました。最後に世界への挑戦についてです。実際に今、グローバルでも展開されていますが、改めてその視点について玉川さんの考え方を教えてください

玉川:ここ2年ぐらいグローバルに対して、自分たちのプラットフォームを世界でより使ってもらえるようにしていこうというチャレンジをしてきました。コロナ禍もあってより、グローバルに対する理解が深まったと思っています。

特に国による違いですね。例えば電波って2Gや3G、4Gと規格が標準化されています。でも一方で、国によって2Gがあるとか3Gがないとか、普及している仕組み自体が違っていたりする。こういうことってグローバルなんだけど、結局、一個一個のローカルをしっかりと丁寧に見ていかなければ分からない。

現在、SORACOMは140カ国で使えるようになったんですが、じゃあ実際にアメリカで使ってもらえるようにしようと思ったら、よりローカルのお客様の視点になって考えていかないと結局使ってもらえない。これこそ、昔、ホンダさんやソニーさんといった偉人たちがやってきたことであり、我々はそれを追体験しているんだろうなと。

ソラコム USチーム

国内サービスが海外で受け入れられない理由のひとつがカルチャーギャップ、つまり日本ローカルに最適化されすぎていることの弊害、という意見はよく耳にしますね

玉川:その上で「WHYグローバル」って言うと3つくらい視点があると思っています。

ひとつは我々が提供しているIoTのインフラに、お客さんがグローバルを求めてると思うんです。今までのサービスっていうのはドメスティックに国の中に閉じたものが売れていて、これだったら従来型の通信や仕組みでいいと思うんです。

ただし、世界中のモノは繋がりたがっている。コロナ禍で如実だと思うんですけど「出張」って難しいですよね。移動も難しいと。そうなったら遠隔監視とかリモートコントロールとか、空間を超越する仕組みが必要になる。ここを補うような位置付けで、IoT通信のプラットフォームそのものもグローバルでなければいけない。

もう一つはこれは中馬(和彦氏・KDDIビジネスインキュベーション推進部長)さんの思いに近いんですけど、やっぱり僕も76世代のひとつ上で、なんかもうこの世代って日本の宿命みたいなものを背負ってるじゃないですか。僕らの前の世代はハードウェアであったりものづくりで世界を席巻し、自分たちの世代に出現したインターネットでは世界で戦えてないじゃないか!みたいな。

だからこそ、日本発でインターネット・テクノロジーを使ったプラットフォームビジネスっていうのがやっぱり誰かに成功して欲しいじゃないですか。もちろん僕らもその一員なので、自分たちも頑張りたい。

あとソフトウェアってやっぱりハードウェアとかと経済原理が違うと思ってるんですね。ハードウェアは毎回新しいところにお金がかかる。でもソフトウェアを主体としたサービスっていうのは一回作っちゃうと新たなお金はかからなくなる。

国内ってある程度市場があるので、安心してしまうわけです。けど、海外に視野を広げると、マーケットのサイズだけで売り上げが二十倍違うんです。同じコストだけど、マーケットサイズの理由で売上に二十倍も差があると、どんどん差がついていきます。

国内では5年は生きられるかもしれないけど、もし僕らがある単一のマーケットだけ見てると多分、10年は難しくなる。

人生短いのでいい仕事をしたいじゃないですか。確かに難しいチャレンジなんですけれども、ちょっと先を見ればある程度予想はつきます。だとしたら「やらない理由」はないんです。(了)

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新・企業共創時代:共創が真の産業を生み出すためには – KDDI 中馬和彦 Vol.4

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 長期に渡る連載も最終回です。中馬さんと語ってきたこれまでは、共創という仕組みをどうやって作り、運営し、そしてそこに携わる人たちにどのような覚悟が必要なのか、それを問い直す時間でした。最終回はこの共創という方法が狭い意味での「協業」に終わらず、産業というステージに向かうためにどのようなアイデアが必要にな…

KDDI 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長/KDDI ∞ Labo長 中馬和彦氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

長期に渡る連載も最終回です。中馬さんと語ってきたこれまでは、共創という仕組みをどうやって作り、運営し、そしてそこに携わる人たちにどのような覚悟が必要なのか、それを問い直す時間でした。最終回はこの共創という方法が狭い意味での「協業」に終わらず、産業というステージに向かうためにどのようなアイデアが必要になるのか、それをインタビューの締め括りとしてお送りしたいと思います。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答はKDDIビジネスインキュベーション推進部長 中馬和彦、文中敬称略)

共創が真の産業を生み出すためには

2011年から始まったKDDIの共創への取り組みは2020年に5Gという新しいキーワードを携えて、次のステージに移ろうとしています。思えばこの10年はスマートフォンによるモバイルインターネットへのシフトでした。次のシフトは全産業のデジタル化ということでしたが、これはどのタイミングで実社会に実装されるとお考えですか

中馬:僕はコロナ前、2020年から5Gが始まり、最初の5年と最後の5年って言っていて、最後のゴールは2030年ごろまでかかるんじゃないかと言っていました。やっぱりリアルを絡めなきゃいけないし、確かに自動運転とか言っても時間もかかるから前半の5年で色んなアイディアを仕込んで、後半の5年に大きくダイナミックに反映されてくる。という予想で「2030年」が鍵になると言っていたんです。

ただ、コロナによって社会は変わってしまいました。

リアルの価値は早くも落ち始めていて、よりバーチャルとかデジタルドリブンで物事を進めざるを得なくなっています。そう考えるとやっぱ5年ぐらい短縮したなと思ってるので2025年あたりがターゲットですね。5年で社会は完成すると思いますよ。だから、ここ一年が勝負だと思います。本当にこの一年。

このシフト、波を自分たちの力にするために必要なことを改めて教えてください

中馬:2つポイントがあると思っていて、まず一つは人ですね。やっぱり最後は人に帰着するので、これは今の大企業にいる優秀な中間層をどのくらい流動化させられるか。ここがやっぱり一番大きいと思います。企業っていう形を維持した状態のままで業務提携してやっていくんですけど、KDDIから見える景色と例えばトヨタ自動車から見える景色は全く違っていて、だから僕らがどれだけ頭使ってトヨタ自動車を考えても、僕たちはトヨタにはなれないんですよ。

その点で言うとやっぱりその双方にそれぞれのことを理解する人たちをもっと増やさないといけない。本当の意味でのダイナミックで新しい産業革命を日本から興そうと思うと、人が必要なんです。

この大企業の人材がダイナミックに流動化する件については実はちょっと妄想していることがあって、極端に言うと大企業間で転職しても引き継がれていく仕組みについてです。大企業リパブリックというアイデアなんですが、大企業の企業年金とかいろんな福利厚生を全部統一して、大企業での評価制度を含めて色々なスキルが可視化できるようになると、それぞれの企業の知恵が流動化する。

日本ってセーフティーネットみたいなのがあるようでいて、会社を辞めた途端イチ個人になってしまうっていう怖さが、やっぱり人材の流動化を妨げているように思うんです。そういう人たちが自由に動けるような仕組みを小規模でも作っていかないと、日本はこのまま変われないんじゃないかと懸念しています。

もう一点はグローバルですね。

僕らの課題はやっぱり国内ではプラットフォーマーとしてアセット提供もできるし、新規事業の担い手としてまあ何かしらできると思うんですけどちょっと海外に出た瞬間、プラットフォーマーとしての軸足が非常に弱すぎる。モンゴルとかミャンマーでは事業をやってますけど、コンシューマー向けのプラットフォームビジネスを展開しているのはその2カ国しかないわけで、もっと規模を出していかないとグローバル競争の環境では勝ち抜くことができません。

だからこそ一社単独ではなく、大企業同士のアライアンスによって始めから大きな規模での事業を設計していくことが、これから日本企業がグローバルへシフトしていく上での鍵ではないかと思っています。

ありがとうございました。

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スタートアップとau IKEBUKUROが挑戦「スマホ除菌」共創の裏側 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 感染症拡大の問題はKDDIの販売店に幅広く混乱をもたらしました。訪問された方々が試した端末の清掃問題や来店時の体温チェック。これらを店舗スタッフが手動で対応するには限界があります。この課題をス…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

感染症拡大の問題はKDDIの販売店に幅広く混乱をもたらしました。訪問された方々が試した端末の清掃問題や来店時の体温チェック。これらを店舗スタッフが手動で対応するには限界があります。この課題をスタートアップとの協業で解決しようというのがau IKEBUKURO店で実現した、感染症拡大を防止するためのスタートアップ共創事例です。

前回はKDDIでのきっかけづくりと、Ideinのケーススタディをお届けしました。ここからは引き続き「MUGENLABO支援プログラム 2020」に参加したスタートアップ2社の話題をお送りします。

スマホを除菌せよ・・GREEN UTILITYの除菌ケース

ずらりと並ぶスマートフォンやフィーチャーフォンなどの端末の数々。特にタッチ操作の感度や反応が重要なスマホにとって、実機に触れることは購入の決め手になるだけに「端末の清掃問題」は店舗にとって大きな課題でした。清掃しようにも、いつどこでどれに触ったのかを正確に把握しなければ、店舗スタッフはずっと清掃し続けなければいけません。この課題にチャレンジしたのがGREEN UTILITYとAWLの2社です。

新型コロナ対策として、au店舗スタッフのみなさんはアルコールタオルでデモ機などの除菌をしていたそうなのですが、人気店や広い店舗ですと常に清掃対応に追われる事態になっていました。そこでアイデアとして出てきたのがUV紫外線による除菌です。紫外線の照射をすれば自動的に除菌可能となりますので、確実かつ除菌作業の効率化が可能になります(GREEN UTILITY代表取締役 李展飛さん)

GREEN UTILITYはmocha(モチャ)というモバイルバッテリーシェアリングサービスを2018年頃から展開しているスタートアップです。 以前、白馬村で実施された共創プロジェクトでKDDIと協業し、村内にモバイルバッテリーの充電ステーションを設置するという取り組みから継続的に交流が生まれ、今回のプログラム参加へとつながったそうです。きっかけは今年7月、今回の共創の橋渡し役となったKDDIビジネスインキュベーション推進部とのミーティングで店舗における除菌問題を知り、除菌ケース開発へと乗り出します。

除菌ケースの利用風景

驚くのはここからの開発スピードです。なんと1カ月という短期間で実際に店舗で使える品質と数量の除菌ケースを開発することに成功します。李さんは経緯をこう説明してくれました。

元々、モバイルバッテリーのシェアリングサービスをやっていたこともあって、多くの人が触れることから除菌については課題感を持っていた、というのがあります。また、弊社がこれまでバッテリー開発などで培ってきた技術ノウハウと中国・深圳を中心とするサプライチェーンのネットワークが短期間での納期を実現してくれています(GREEN UTILITY 李さん)

フラッグシップの店舗でショーケースとして展示されるだけでなく、実際に使われているという実用性もあって、現在このソリューションについては多くの問い合わせが集まっているそうです。注文という形での反響もさることながら、李さんたちが培ってきた技術とサプライチェーンの「価値」を改めて確認できたことが大きかったと語っていました。

どれに触ったのか?を探せ・・AWL(アウル)の接触検知ソリューション

接触検知ソリューションの写真

GREEN UTILITYが開発した除菌ケースを利用して、端末を自動的に、かつ効率的に清掃できるようになりました。しかし、もう一つの課題として幅広い店内に展示されている端末の「どれを綺麗にするのか」という問題が残っています。ここにAIを活用したカメラソリューションを提供したのがAWLです。

デモ端末の展示台に設置したAIカメラがお客様の手を検出し、触れた端末をモニター上に色を変えて示すことで、スタッフに該当端末の消毒を促すソリューションを提供しました。これまでは15分に一回程度、スタッフがすべての端末を消毒していたそうなのですが、これによって触れた端末のみを消毒することが可能となりました(AWL取締役CTO 土田安紘さん)

きっかけはKDDI ∞ Laboが主催したイベントに、AWL代表取締役の北出宗治さんが登壇したことから始まります。auショップで発生していた感染症拡大の防止策は急務で、この話を聞いた北出さんたちはAIカメラを使ったいくつかのソリューションを提案。今回の接触検知は、自社で持っているノウハウをベースに数週間で導入を実現しました。こちらもきっかけから導入まで2カ月程度というスピード感です。

AWLはこれまでも大企業との協業・連携で成長してきた背景があるそうです。元々、AI関連の受託開発を手がけていた企業からスタートし、その後、北海道で幅広く展開するドラッグストアチェーン「サツドラホールディングス」と資本提携を結びます。開発拠点を北海道大学内に開設するなどして、サツドラのグループ会社の位置付けで小売における画像解析などを活用した実証実験を続けていました。

こうして、AWLでは店舗にある既存の監視カメラなどのデバイスに、自社で開発したAIソリューションを組み合わせることで空間を分析するサービスを提供しています。例えば店舗の防犯であったり、レジ前の行列がどれぐらい続いているのか、陳列棚の前に立ち止まる人々の様子など、リアル空間を分析することで、その後の来店や需要の予測に役立てる、といった具合です。実際の店舗での実証実験を繰り返したことが同社の強みになっています。

こういった経緯から独自の技術と実績を積み上げることになったAWLに大企業との協業メリットを聞いたところ、やはりスピードを挙げられていました。また、AWLは今年2月に8.1億円の増資を実施して共同通信デジタルやサイバーエージェント、凸版印刷などの大手と資本提携を結んでいます。

恐らく大企業さんも一度は何かしら自分たちだけでやろうという方向性を検討されていると思います。ただ、自分たちだけでやっていくには(AI領域は)非常に難しい面があるということはよくお話に挙がりますね。そういう観点で検討された結果、私たちと一緒にやりましょうという判断をされるケースが多いと認識しています。私たちは応用範囲の広いリアル空間を分析するソリューション、アプリケーションを開発できるのですが、自分たちだけでは社会実装ってなかなか進まないんですよね。(今回の増資についても)大手の方々と組むことでここを加速させていきたい、という方向性を持っています(AWL 土田さん)

なお、AWLで今回、取材に対応してくれた土田さんは弁理士ということもあり、知財戦略もしっかりと対応されていたのは細かい点ですが注目ポイントでした。

スタートアップにとって知財はプライオリティの設定が難しく、早すぎては無駄なリソースを割くことになりますし、遅すぎるとどこで穴を突かれるかわかりません。特にAWLのような協業・提携戦略を進める上では重要な視点になるでしょう。

au IKEBUKUROを舞台としたスタートアップとKDDIの共創ストーリー、最後は連続起業家として次のチャレンジを仕掛けるプレースホルダの話題をお届けいたします。

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