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特集:新・ソーシャルメディア

特集:新・ソーシャルメディア

FacebookやTwitterの次はどこになるのか。起業家のみならず、投資家は巨額の資金を基に探し続けている。これまで「Peach」や「Path」のようなプラットフォームが登場したが、どれも世界的なサービスにならなかった。ただ、彼らはコミュニケーションの形や、ビジネスチャンスのヒントをくれたことに間違いはない。ここでは次世代のソーシャルメディアの兆しを拾っていくとする。

MUGENLABO Magazine

特集:新・ソーシャルメディアの話題

実名と匿名の分かれ目は「22歳」、通話コミュ「Yay!(イェイ)」が目指す世界

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ニュースサマリ:通話コミュニティ「Yay!(イェイ)」を運営するナナメウエは2月12日、5.5億円の資金調達を公表している。第三者割当増資と融資を組み合わせたもので、増資を引き受けたのはシード向けファンドのNOWとTLM、および氏名非公開の個人投資家。融資は三井住友銀行、千葉銀行、群馬銀行、武蔵野銀行および金融政策公庫の各行が応じた。 Yay!はZ世代(1990年前後生まれ)を中心に同世代のユーザ…

ニュースサマリ:通話コミュニティ「Yay!(イェイ)」を運営するナナメウエは2月12日、5.5億円の資金調達を公表している。第三者割当増資と融資を組み合わせたもので、増資を引き受けたのはシード向けファンドのNOWとTLM、および氏名非公開の個人投資家。融資は三井住友銀行、千葉銀行、群馬銀行、武蔵野銀行および金融政策公庫の各行が応じた。

Yay!はZ世代(1990年前後生まれ)を中心に同世代のユーザーが趣味などを通じて知り合い、チャットやグループ通話を楽しめるソーシャルネットワーク。2020年1月に開始し、12月に登録ユーザー数は200万人を数える。ナナメウエの創業は2013年5月で、これに先立ち2015年から同様の同世代ソーシャルネットワーク「ひま部」を運営してきた実績がある。

話題のポイント:音声・常時接続ソーシャルネットワークであり、かつ、Z世代に支持されて急成長しているのがナナメウエのYay!です。Clubhouseの到来で一気にやってきたモメンタムについては、これまで00:00 Studioの古川健介(けんすう)さんStand.fmに出資しているYJキャピタルの堀新一郎さんMirrativの赤川準一さんにお話伺ってきました。

Yay!は確かにグループ通話が特徴であるのですが、他のラジオ的な配信とは異なり、あくまでコミュニケーションの一部として通話機能を位置付けています。なんというか、話題を見つけて繋がった友達と長電話する、そんなイメージです。ということで今回も公開取材で創業者の石濵嵩博さんと出資したTLM代表パートナーの木暮圭佑さんにこのソーシャルメディアの特徴についてお聞きしました。

22歳が境界線:実名と匿名の分かれ目

話をお聞きして特に面白かったのが「ソーシャルメディア22歳境界説」です。人はある一定の年代を超えるまでは話題の粒度が大きく、そこを境界により細分化したクラスタに分かれていく、という見方です。

Yay!にログインするとClubhouseなどと異なり、個別のコンテンツタイトルではなく大きめのカテゴリが目に入るようになっています。かつてのmixiコミュニティやFacebookのグループなどと同様で、ここに入ると興味範囲が似通った人たちが雑談をしています。ユーザーはそこから友達や、このコミュニティで知り合った人たちとグループ通話(雑談)を楽しむ、という導線です。

ちなみに安全性の確保からログイン後に個別のコミュニケーションを取る場合は免許証などの公的証明書を使った年齢確認が必要で、かつ、年代が明らかに離れた人同士についてはできるだけマッチングしないようなアルゴリズムが組まれているそうです。

話を戻します。石濱さんのお話によると、現在のYay!は8割近くが22歳未満のユーザーだそうです。ここで面白いのが匿名で、このユーザーたちはほとんどが現実世界のソーシャルグラフではなく、「バーチャルグラフ」としてここに繋がりを求めています。匿名でありながら会話がスムーズに進むのは、これらの年代の方々は属性が近く、前提となる話題や価値観が似通ったものになるからだそうです。結果、はやく仲良くなる傾向があるとのことでした。

一方、22歳を超えた人たちはどうでしょうか。人生のステージが変わると人にはいろいろなオプションが追加されていきます。家族や仕事、趣味や人間関係など価値観の多様化が始まると、話題の会う人を探すのが徐々に難しくなっていくわけです。石濱さんの見立てで、この点をうまく突いたのがClubhouseでした。一気にモメンタムを作ってリアルグラフを常時接続の世界に引き摺り込み、毎日、毎時間、多種多様な価値観をそこに表示させることで、こういった細かい興味関心のクラスタを局地的に作り出すことに成功しました。

パッと入って自分の友人繋がりが可視化され、さらにそこで興味関心が近い話題が繰り広げられていたら確かにルームに入って聞き耳を立てたくなります。年代や興味関心のフィルタはもうかかった状態ですので、壇上にあげられたとしても、楽しくおしゃべりできる、というわけです。石濱さんたちはソーシャルグラフを年代と興味関心の二軸で分類しているそうですが、この「22歳以降」のクラスタを異常なまでにうまく、そして一気に立ち上げたのがClubhouseなのかもしれません。

Yay!としてはこの22歳以降のユーザーをどのように現在のソーシャルネットワークに組み込むか、これらの考察を元にリアルグラフ(実名)の扱いについても鋭意検討中というお話でした。

データとアルゴリズムでよい出会いを創造したい

「自分たちのビジョン的な考え方なんですが、人生って環境で決まる部分が大きいと思っています。成功している要因も、失敗したり、悪い方向に向かう要因も環境に寄るものが大きい。いい人に囲まれたら自然といい人になる確率は高まるし、犯罪をやっていたら巻き込まれる可能性もある。

でもね、この環境が運で決まってるんです。例えばある世代に生まれて、近所の300人や400人が学校に集まってクラス分けしてハイ、スタートとなる。コントローラブルになりにくいこの部分をデータとアルゴリズムで変えたい。だって人間のマッチングをプラットフォーム化できたら社会的にみても価値があるじゃないですか」(石濱さん)。

石濱さんはこういう考え方でテクノロジーの力を使い、Yay!の前身である「ひま部」を2015年に立ち上げます。Yay!と同様にZ世代中心の雑談コミュニティとして数百万人を集めるまでに成長しました。しかし一気に拡大した結果、よくないユーザーの流入が相次ぎ、事件や事故に発展します。

「2019年から事故や事件が多くなりました。一方、国内の大手ソーシャルネットワークはタイムラインに不適切な話題が出てくると都度削除して厳格に対処していたんです。いわゆる『出会い系』というサービスには法律があって、異性交際を認めるような場合はユーザーに届出を義務付けていて、18歳以上でないと使えないようにしていたんですね」(石濱さん)。

よい出会いが人を正しい方向に導くはず、そう考えて立ち上げたはずのソーシャルネットワークが犯罪の温床になっている。そう考えた石濱さんは社会性のあるプラットフォームにしたいとひま部を閉じる決意をします。そうしてできたのがYay!でした。しかし、リニューアルではなく完全に新しく作り替えたためアクティブユーザー数は激減し、一時期の4分の1になったそうです。

「起業家としての怠慢があったと思ったんです。焼き鳥屋で落ち込んでいたら木暮さんに励ましてもらって。第二創業の気持ちでスイッチを入れ替えるので一緒に戦ってくれと相談していました。Yay!はまだまだバージョン1の状態です。これをバージョン2、3と進化させていきます」(石濱さん)。

現在、ナナメウエではこれらの経験を元にしたソーシャルネットワークの監視サービスも提供しています。石濱さんによると、ソーシャルネットワークで不適切なコンテンツを人手で24時間チェックしようとすると、少なくとも数百万円のコストがかかるそうです。これをAI化して20分の1にまで効率化し、自社でのサービス監視はもちろん、他社に対してもここ1年ぐらい提供をしているというお話でした。

現在、日本とタイに総勢75名ほどのチームを展開するナナメウエ。音声常時接続の国産ソーシャルネットワークの注目株としてバージョン2の展開が楽しみになってきました。

※本稿はClubhouseでの公開取材を元に、ご本人の合意を得て記事化しています。

「Clubhouseは違う文脈からやってきた」ーーゲーム配信SNS「Mirrativ」配信者数が300万人突破【赤川氏インタビュー】

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ニュースサマリ:ゲーム配信SNS「Mirrativ」を提供するミラティブは2月5日、ゲーム実況をする配信者の数が300万人を突破したことを伝えている。また、配信者間でのフォロー数は1億回以上となり、配信者同士のコメント数は年間25億以上に上っていることから、同社では常時接続ソーシャルネットワークとしての存在感が増しているとしている。 Mirrativはスマートフォンの画面をミラーリングし、自分で楽…

ニュースサマリ:ゲーム配信SNS「Mirrativ」を提供するミラティブは2月5日、ゲーム実況をする配信者の数が300万人を突破したことを伝えている。また、配信者間でのフォロー数は1億回以上となり、配信者同士のコメント数は年間25億以上に上っていることから、同社では常時接続ソーシャルネットワークとしての存在感が増しているとしている。

Mirrativはスマートフォンの画面をミラーリングし、自分で楽しんでいるゲームプレイの様子をそのまま配信ができるソーシャルネットワーク。手軽に配信ができることからアクティブなユーザーにおける配信者の比率は2割となっている。また、ゲーム配信だけでなく、ゆるく会話をしたい常時接続型のコミュニケーションの場として利用するユーザーも集まっており、ゲームを仲介としたコミュニティの構築が進んでいる。

話題のポイント:現代のサードプレイスMirrativが久しぶりに数字を公開しました。2019年8月に公開4年で登録者数1,000万人、配信者数160万人を公表しているので、そこから約1年半ほどで倍弱の拡大になっています。

さて、これまでMirrativを伝える時、あまりソーシャルネットワークという言葉は使っていませんでした。どちらかというとライブ配信、アバター(バーチャルキャラクター)による仮想空間、サードプレイス、こういった「もう一つの世界、もう一人の自分」が新しいコミュニティでゲームしながら会話し、楽しむというイメージが強かったように思います。

しかし、今回、改めてリリースには「常時接続ソーシャル」というワードを入れてきています。当然、Clubhouseを発端とする新しいソーシャルネットワークの存在を意識したものであるのは間違いありません。まあ、楽しいですからね。ということで今回もClubhouseで同社代表の赤川隼一さんに公開インタビューをしてきました。

違う文脈からやってきたClubhouse

「音声中心の常時接続ソーシャル」。このモメンタムが日本で大きく膨らむかどうかと言われると私は正直懐疑的でした。特に先行しているポッドキャスト文化がどうにも日本では定着しているように思えず、もし世代によるものであれば浸透までに時間がかかるかもと予想するぐらいでした。

しかし、ここに異常なまでの障壁の低さと「聞いてる人や友達を会話に参加させる」「聞いてる人にリアクションさせない」というちょっとしたアイデアで斜め上から一気に広がったのがClubhouseという現象です。赤川さんはこの状況を「全く別の文脈からやってきたもの」と分析します。

「大局的な話でいくと、日本のほぼ全てのライブ配信は中国を先端とするケースが多いんです。確かにニコニコ動画のように中国で拡大再生産されたbilibiliのような例もありますが、おおよそこれらは中国発の流れとしてみていました」。

特に機能面で中国の流れを汲むライブ配信関連サービスは「足し算」のものが多いと指摘します。TikTok(と、その前身であるMusica.ly)はその昔、ショートムービーに音楽を乗せるというアイデアでリップシンクというカルチャーを作りましたし、同様にライブ配信にはアイテム課金、コマース、コミュニケーション、アバターなどなど常に「コンテンツ+α」の考え方がベースになっています。

一方、Clubhouseは究極にまで機能を削ぎ落としてデビューしました。いかにして気軽に会話が始まるか、という点を究極に求めた結果でしょうか、特にオーディエンスにリアクションさせないという決断は、確かに足し算文化でコメントや絵文字が当たり前になっている現状からすると、かなり新鮮に映りました。

MIrrativはどうなるのか

では、このモメンタムを受けてMirrativに何か動きがあるのでしょうか。そもそもMirrativは立ち上がった当時からゆるくいつでもトモダチとつながるコミュニケーションサービスとして進化してきています。

「サービス開始当初から言ってるんですが、Mirrativは実況というよりも配信、メディアではなくコミュニケーションサービスです。トモダチの家でドラクエやってる感じとお話してきましたが、eSpotsとかでも誰かに見てもらうと燃えるじゃないですか。ライブ配信っていうのもなんだかステージに上げられてる感じがしていて違うんですよね。トモダチと何時に家に集合ねっていって、来てるかどうかも分かんないけどゲームははじまってる。そういう空気感みたい部分です。

はじめてしばらくは自分たちもソーシャルネットワークだと言ってたこともあったのですが、これがClubhouseがやってきたことで一気に認知が広がった。Mirrativは最初から常時接続ソーシャルネットワークで、例えば今、ゲームでガチャ回すのに一人でやるなんてありえないっていう配信者の方もいます。コミュニケーションって圧倒的に面白いエンターテインメントなんですよ」。

300万人という配信者が日々、ゲームをきっかけにやってくるフォロワーの人たちとコミュニケーションを楽しむのがMirrativです。実際に入ってみると、ゲームだけでなく雑談だけのチャンネルもあり、以前に比べて多様性は増しています。一方、入ると必ずと言っていいほど「◎◎さんこんにちはー」と配信者から挨拶があったりするなど、オーディエンスとの「距離感」はClubhouseとは全く異なるものです。

特にClubhouseで配信すると分かるのですが、お話の上手な人がどうしてもコンテンツとしては面白くなります。また、そのように誰かに聞かせる「配信」を意識した場合、会話が途切れることにどうしても躊躇が生まれるのも確かです。そういう点でMirrativやTwitchなどのゲーム配信やHousePartyのように何かコンテンツを間に入れるという手法は引き続き強さを保つと思います。赤川さんも言及していましたが、これらは全く違うものとしてこれからも並行して進化していくのではないでしょうか。

ではその上で、赤川さんにClubhouseで得た経験から参考にしたい体験をお聞きしたところ、やはりユーザーを引き込む仕組みについてはもっと研究を進めたいと話していました。

「Clubhouseで配信すると配信側に呼ばれてデビューしちゃった、みたいな体験ありますよね。終わったら楽しくなってじゃあ自分も部屋立てていいっすか?みたいな。あれ、Mirrativでもあるんですが、Twitterを通じて発生していたんですよね」。

これは確かにClubhouseが一気に立ち上がった要因のひとつでもあります。もしMirrativにふらりとやってきたトモダチを家にあげる、そういう要素が加わるととても楽しくなりそうです。

現在、60名体制で開発を続けるMirrativ。Clubhouseという黒船によって全く違う角度から音声による常時接続ソーシャルネットワークの扉がこじ開けられることになりました。もちろん、まだマス層に広がるにはしばらく時間がかかると思いますし、Twitterが開発するSpacesや国産の00:00Studio、Stand.fmなど、音声や常時接続にチャレンジしているスタートアップにとっては10年に一度の絶好のチャンスが到来したと言って過言ではないと思います。

赤川さんも今回のリリースに合わせて採用の手紙を更新し、さらなる体制強化を進めてこれからやってくる新しいソーシャルネットワークの時代に向け闘志を燃やしていました。

※本稿はClubhouseで公開インタビューした内容をご本人の合意を得て記事化しております

黒船 “Clubhouse” に音声国内組はどう対抗する?ーーStand.fm投資家が語る「次に起こること」

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10年ぶりぐらいでしょうか。Clubhouseという新しいソーシャルメディアの到来に(スタートアップ村界隈が)湧いています。一方、今のこの異常なまでの加熱を「ボーナスタイム」と見る向きも多いです。 個人的にもTwitterが過去に辿ってきた10年間を数年でトレースするような「走馬灯感」を感じているので、このモメンタムが今後どのように収束し、そして何が残り、どういった変化をもたらすのか注目しています…

世界を強襲している黒船のトップページはまだこんな状態

10年ぶりぐらいでしょうか。Clubhouseという新しいソーシャルメディアの到来に(スタートアップ村界隈が)湧いています。一方、今のこの異常なまでの加熱を「ボーナスタイム」と見る向きも多いです。

個人的にもTwitterが過去に辿ってきた10年間を数年でトレースするような「走馬灯感」を感じているので、このモメンタムが今後どのように収束し、そして何が残り、どういった変化をもたらすのか注目しています。ちなみにTwitterが生まれたのち、多くのインターフェースにはタイムラインの概念や非対称フォロー(それ以前は相互に承認するフォローが一般的)が採用されるなど、多方面に影響を与えたのはご存知の通りです。

音声への関心は昨日・今日始まったわけではなく、ここ2、3年のトレンドではありました。特にAirPodsの登場で「耳が常に繋がる」という環境が生まれ、国内でも「Voicy」や「 Yay!(イェイ) 」、井口尊仁さんが開発している「 Dabel 」などが生まれています。ちょっとジャンルは異なりますが、ゲーム配信の「 Mirrativ 」やバーチャルライブ配信の「 REALITY 」、プロセス配信の 「00:00 Studio(フォーゼロ・スタジオ)」 なども音声を組み合わせたソーシャルメディアを模索している例です。

Clubhouseというよりはポッドキャストに近いStand.fm

そしてこの強烈な黒船に立ち向かう国産にあって、Clubhouseど真ん中なのはやはり「Stand.fm」でしょう。ワンタップでライブ配信ができる手軽さや、複数人での配信など、機能的にもコンセプト的にも近い存在です。Clubhouseが2020年のリリースなので、2018年12月からステルスで配信を開始していたStand.fmの方がやや先行しています。2012年からHighlightという 位置ソーシャルで頭角を表した連続起業家という点 でもStand.fm創業者の中川綾太郎さんと被ります。ライバルです。

ということでStand.fmがこのモメンタムをどう捉えるのか聞いてみたいと思ったところ、同社に昨年出資したYJキャピタルの堀新一郎さんにお話を伺うことができました。昨年8月にシード期としては 破格の5億円を出資したことで話題になっています。 

いずれ飽きる

古川健介(けんすう)さんも驚愕していた音声モメンタムをどう分析しているのか堀さんに尋ねたところ、素直に驚いてるとした上で「わくわく半分、悔しさ半分」と語っていました。

「海外のルームとか見てるとピッチとかやってるんですね。音声だけでこういう遊び方するんだ、と。その上で改めて思ったのはアーカイブの強さ。ライブは今しか聞けないし、同じような人が同じような話をすることはないので、今しか聞けないイイ話とかはやはりアーカイブとして再生された方がいい。結果、Clubhouse的な使い方とその他、という形でプラットフォームの使い分けが進むと予想してます。実際、インスタも告知して自分のファンクラブへ誘導するような導線になっています。いつかはClubhouseもワンプラットフォームで課金や場合によってアーカイブなどの機能を実装し色々なことができるようになるとは思うけど、現時点では機能を実装されているプラットフォームへ移動が進むのではないでしょうか」。

確かに今は一気に人が入ってきて、かつ、コロナ禍の影響もあり、一部のインフルエンサー(特にテック界隈)にとっては懐かしい同窓会のような雰囲気がある場合もあります。ここで話されている内容は過去の貯金みたいなものであり、そこに乗っかる形でやってきた芸能人たちも「ノーギャラ」でお話をしている状況です。強烈なアテンションは集められるけど、課金や広告がない状況で続くわけがない、というのが堀さんの見立てでした。

実際、堀さんも言っていた変わった使い方にClubhouseで開催されるピッチ・ショーというのがあります。スタートアップが投資家やエンジェルにピッチして売り込むルームなんですが、Zoomなどと異なりスライドが使えません。サービスを想像させるのは「声」だけなんですね。まあ、普通はこんな企画やろうとは思わないんですが、Clubhouseでは実際にいくつも実施されています。私も数回聞きましたが、確かに完璧とは言わないまでも、リードを取るという意味では成立していました。

同様にユーザーによって音声(声だけのソーシャル)の使い方が発明されている様子は、Twitterで「ReTweet」が生まれていった過程を彷彿とさせます。最終的に文化として定着したReTweetはRT機能としてTwitterに 実装されていきました。 

音声ソーシャルの体験をどう表現する

最終的に使い分けが進むという想定をしつつ、Stand.fmとしてこのモメンタムをどう陣営に引き込むのか、という質問については「(綾太郎さんは)何かを考えている様子」とはぐらかされてしまいました。ただ、ひとつヒントとして堀さんもClubhouseに表示される「オーディエンスアイコン」については気になる、という発言があったんですね。

実際、話す側として公開取材を実施すると、このコメントもしないし発言もしない「オーディエンス」の存在をふんわりと感じることができます。知ってる顔は繋がりがあれば前席に表示されますし、微妙に話す内容にも影響を受けることがあります。例えば人数が少ないとややくだけた話ぶりになることもありますし、知ってる顔が多いと関連する話題を振ってみたり、ということが自然と生まれるのです。オーディエンスに発言やスタンプがなくとも現実世界と繋がるとこういう影響があるのかと個人的には認識しました。

Stand.fmに並ぶチャンネルはラジオ的

ポイントはオーディエンスとの距離感です。現在のStand.fmは見ての通り、プチインフルエンサーから芸能人が並ぶ「コメントできるラジオ」です。体験としては人の話を聞く、という部分が中心で、Clubhouseのようにそこにいる友人や知ってそうな人と繋がるというイメージはあまりありません(機能としてはフォローがあります)。Stand.fmが現在の体験を保ちつつ、新たにやってきた音声+ソーシャルという「ライブイベント的な」体験をどのように表現するのか、がぜん興味が湧いてきました。

堀さんによれば、昨年の年末からStand.fmはDAU、MAU共に順調に成長しているそうです。国内ではシード期に5億円という破格の資金調達に成功していますが、一方のClubhouseは昨年創業ながら、先日、1億ドル(※今日のレートで約105億円)の調達に 成功していると言われています。 同時多発的に発生した各国でのClubhouseブームは中国でも発生しており、招待枠の個人間売買が 横行しているという話もあります。 あまりにも強すぎる黒船に対し、国内勢は次をどう読んでどのように対抗するのでしょうか。

※本稿はClubhouseでYJキャピタルの堀新一郎さんに公開インタビューした内容をご本人の同意の上、記載しております

00:00 Studio(フォーゼロ・スタジオ)が国産「次期」ソーシャルになるために必要なコト【古川健介氏・Clubhouse公開取材/500人参加】

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わかりやすく流行ってますね、Clubhouse。本誌BRIDGEでも「次期ソーシャル」として音声や常時接続体験についてはいろいろ情報を整理しておりましたが、ここ数日で一気にきた感じです。きっかけはいろいろあるようですが、Andressen Horowitzによる出資が開示されたタイミング(1月25日)と被っているので、その辺りに何かあったのでしょう。Axiosの記事によれば今回ラウンドはポスト評価…

Clubhouseを使って公開取材しました。500人ほど参加いただいたようです

わかりやすく流行ってますね、Clubhouse。本誌BRIDGEでも「次期ソーシャル」として音声や常時接続体験についてはいろいろ情報を整理しておりましたが、ここ数日で一気にきた感じです。きっかけはいろいろあるようですが、Andressen Horowitzによる出資が開示されたタイミング(1月25日)と被っているので、その辺りに何かあったのでしょう。Axiosの記事によれば今回ラウンドはポスト評価で10億ドル、1億ドルの資金調達を実施したそうです。

a16zの記事に創業者のPaul Davison氏と共同創業したRohan Seth氏のエピソードが記述されていますが、特にDavison氏、なんとあのHightlightを作った人だったんですね。a16zの出資記事にこう記されています。

「その会社(Hightlight)は最終的にPinterestに売却され、Paulは時間をかけてビジュアル・キュレーションという文脈の中でソーシャル・プロダクトを深く掘り下げていきました。昨年、彼が何か新しいことに取り組んでいると聞いた時、彼に再会できて嬉しかった。それまでに、彼は共同創業者であり友人でもあるRohan Sethとチームを組んでいました。二人は、人々が話したり聞いたりすることがもっと簡単になるよう、音声を使って人々を結びつける新しいプロダクトを開発していたのです。Talkshowと呼ばれるこのサービスは、ユーザーが他のスピーカーを見つけやすくする仕掛けを持っていて、ツールを合理化することでポッドキャスティングをより簡単にすることを目的としていました」(引用要約:Investing in Clubhouse・a16z)。

インターネット老人会な方であれば「FoursquareやGowalla」と聞いてピンとくるはずです。そう、一時期すごく流行った(今もかな)位置ソーシャルの一人でした。残念ながらそれはPinterestにチームとして統合されましたが、その後、再登板を果たしたというわけです。アツい。

国産で常時接続ソーシャルは何がある

00:00 Studioは次のソーシャルの座を射止めるか

前置きが長くなりました。

これだけ一気に広がると冷めるのも早そうな気もしますが、もちろん国産も頑張っています。ちなみに大きなソーシャルの流れとしては(分類は色々ありますが)Facebookなどにある「相互フォロー」からTwitterの「非対称フォロー」、そして現在、DiscordやこのClubhouseにあるような「常時接続」というトレンドがひとつあるかなと思っています。コンテンツもテキストから画像、動画、そして音声、ライブへと変遷するなど、リッチ化が進みました。

古川さん(以降、けんすうと記載します)は例えばClubhouse的な「Yay!(イェイ」であったり、井口尊仁さんが開発している「Dabel」、音声ライブ配信の「Spoon」、ゲーム配信の「Mirrativ」やバーチャルライブ配信の「REALITY」あたりを挙げられてました。

中でも異彩を放つのがアルの「00:00 Studio(フォーゼロ・スタジオ)」です。彼独自のプロセスエコノミーという考えに基づいて、クリエイターの作ってる間の時間も有効活用しようという常時接続ソーシャルのひとつです。

「(マンガ発見アプリの)アルは漫画界をテクノロジーで良くしたいな、という思いではじめました。実は私がマンガ大好きで、いい作品が増えると自分の人生が豊かになるし、才能あるクリエイターの方々が(経済的な理由から)他の職種に移るのは損失ではないかなと。ということで新人作家さんたちが発見しやすい、そういう場所を作りたいとプロジェクトを開始したのがはじまりです」(けんすうさん)。

新人作家の作品発掘からはじまったプロジェクトは徐々にクリエイターの課題を解決したいという想いに拡大し、「00:00 Studio」の開発に繋がります。けんすうさんはクリエイターが抱える課題として「お金、孤独、ファン獲得」の3つがあると指摘していました。その解決方法として至った考えが「プロセスエコノミー」です。この考え方は以前にも記事にしているのでそちらを参照ください。

実際、00:00 Studioを覗いてみると、記事を書いているクリエイター(けんすうさん)は画面の向こうで淡々と記事を書いる様子が生配信されています。ただ、別にその画面をじっと見てるわけではなく、適当に「おはようー」などと声かけをしてくれたり、視聴しているユーザーがコメント蘭にスタンプしたりしてゆるやかにつながる、そういう体験になっています。非常にゆるいです。この辺りは常時接続系のソーシャル特有の雰囲気かもしれません。(テキストでは限界あるので実際に見てみることをおすすめします)。

さて、本題です。常時接続の黒船、Clubhouseが一気に爆発している様子を見て、けんすうさんは何を感じたのでしょうか。特に言及していたのが「モメンタムの作り方」と「編集要素の割り切り」です。

モメンタムについてはもう言うまでもなく、後述しますが、数時間で準備した本記事の公開取材に500人も聴衆が集まるのですから見事としか言いようがありません。これは一度味わうと、次、めんどくさいポッドキャストやろうという気にはなりません。

もう一つが編集の割り切りです。こちらについてはLoco Partners創業者で現在はYouTuberとして活躍されている篠塚孝哉さんのnoteにある記述を引用して説明されてました。

「日本のサービスは編集をしすぎるきらいがある。これは中期には人々を楽しませることができるし、そもそも私もそんな編集が好きなサービスを選びがちだったりする上に大好きである。しかしそれこそがスケールする上での罠である」(引用:日本とアメリカのサービスのスケーラビリティはなんでこんなに違うのか)

MirrativやREARITYは確かに一部に熱狂的なファンがいることで有名です。しかしこのClubhouseはその「カスタマイズ性」みたいなのを極限にまで削ぎ落として余計なことをさせません。けんすうさんはClubhouseをして、REARTY代表の荒木英士さんの言葉を引用しつつ常時接続ソーシャル界の「らくらくフォン」と表現していました。若者たちしか使えない機能はなく、かつ、インターネット最先端的な雰囲気も味わえる。確かにそうです。老人の私も使えました。

では何が必要か

常時接続ソーシャルが次のトレンドに入るのはもう間違いないと思います。けんすうさんの指摘で気がついたのですが、常時接続の体験に必要な要素に「沈黙」があります。やってみると分かるのですが、間が空くとやや気持ち悪い感じになるんですね。結果、ラジオ的な体験を求めるとずっと喋ってる感じになります。

この黙る、という部分をうまく体験にできかけているのが00:00 Studioではないかと話していました。ちなみに本人もまだ確証があるわけじゃないそうです。実際、お絵描きしている作業の画面をずっと見ているわけでも、コメントし続けるのでもなく、また、配信者は喋り続ける必要もありません。そこにいる人たちが「ただいるだけ」という環境を作り出しているのです。

00:00 StudioはモメンタムこそClubhouseほどではなかったようですが、それでも体験としては非常に独特です。私もできることならこの記事を書いている様子をライブで配信してみたかったです。ちなみにこの記事はClubhouseで公開インタビューしたものを元に作成しました。タイムライン的には次のような感じです。

公開インタビューをしようと思いついてTwitterで呼びかけたところ、アルを創業した古川健介さんから「いいよ〜」と快諾いただいたのが午前10時半ぐらい。その後に下記のTwitterを流して、メッセで時間調整、2時半にイベント公開して3時から30分取材という感じでした。

このスピード感は確かにらくらくフォンです。新しいフェーズに入った感のあるソーシャル戦争、楽しくなってきました。

訂正:記事初出時にClubhouseの株価について記載しましたが一部修正しておりおます

Walmartがライブストリーミング参戦、加熱するソーシャルコマース市場

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ピックアップ:Walmart to pilot test livestreamed video shopping on TikTOk ニュースサマリー:WalmartとTikTokはライブストリーミングによるショッピングサービスでパートナーシップを結んだことを発表している。同社はTikTok米国事業買収時にも名前が挙がるなど、自社事業とショートムービーに対して大きな興味を以前から示していた。 話題…

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Photo by Lisa Fotios on Pexels.com

ピックアップ:Walmart to pilot test livestreamed video shopping on TikTOk

ニュースサマリー:WalmartとTikTokはライブストリーミングによるショッピングサービスでパートナーシップを結んだことを発表している。同社はTikTok米国事業買収時にも名前が挙がるなど、自社事業とショートムービーに対して大きな興味を以前から示していた。

話題のポイント:Walmart vs Amazonがさらに過熱しそうな動きを見せています。今回のTikTokとの提携は、既にライブストリーミング型でショッピング体験を提供しているAmazonを大きく意識しているものです。また、Walmartは2〜3年前より、サブスク会員制を導入することで、デリバリー前提の体験でプライム会員と競合しています。

このように以前からZ世代やミレニアル世代向けの小売ブランドを買収したりと、次世代顧客との接点を持つことにWalmartは力を入れてきました。その中で、Amazonが手を出し切れていないエンタメ動画領域へと進出したい意向だと考えられます。

特に米国においては、今後も動画コマース + SNS市場は成長領域になる可能性を多く秘めています。例えばInstagramが昨年10月にリリースしたTikTokライクなショートムービー機能「Reels」にショッピング機能が追加されており、Instagram内においても存在感が高まっています。また、。Twitterも類似機能Fleetを投入、そしてライブショッピング動画領域では「Popshop Live」のような小さな競合が出てきている状況です。

Walmartは単なるリテールではなく、あらゆる技術分野によく登場し新しい取り組みを行っていることをよく目にします。GM傘下のCruiseと自動運転による配達パイロットプラグラムや、IBMのHyperldgerを利用したサプライチェーンの可視化などが挙げられます。

Walamrtを観察すると、幅広くテクノロジーの未来感を知ることができるのでおすすめです。

共同執筆:「.HUMANS」代表取締役、福家隆

ソーシャルメディアの「顔情報」:顔認識はプライバシーや市民の自由を脅かす大きなリスク(4/4)

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倫理的な問題 (前回からのつづき)Kosinski氏が行った人格特性とFacebookでのアクティビティの関係を分析した研究は、選挙コンサルティング会社のCambridge Analyticaの創設に影響を与えたほどなので異論の余地はない。彼とスタンフォードのコンピューターサイエンティストのYilun Wang氏が2017年に発表した論文では、既製のAIシステムが同性愛・異性愛の人々の写真を高い精…

Photo by Mati Mango from Pexels

倫理的な問題

前回からのつづき)Kosinski氏が行った人格特性とFacebookでのアクティビティの関係を分析した研究は、選挙コンサルティング会社のCambridge Analyticaの創設に影響を与えたほどなので異論の余地はない。彼とスタンフォードのコンピューターサイエンティストのYilun Wang氏が2017年に発表した論文では、既製のAIシステムが同性愛・異性愛の人々の写真を高い精度で区別できたと報告した。

Gay & Lesbian Alliance Against Defamation(GLAAD)やHuman Rights Campaignといった擁護団体は、この研究が「LGBTQと非LGBTQの両者にとって、安全とプライバシーを脅かす」と述べ、性的指向において議論となっている胎児期のホルモン理論に根拠を見出したと指摘している。これは、顔の外見と性的指向は初期のホルモン暴露によって決定づけられ、両者には関連性があると予測するものだ。

Todorov氏によると、Kosinski氏の研究はそのような技術を使用したいと考える政府や企業に信憑性を与える可能性があるため、「倫理的に非常に問題がある」という。彼と認知科学者のAbeba Birhane氏は、AIモデルを作成するのなら社会的、政治的、歴史的な文脈を考慮しなければならないと論じている。NeurIPS 2019の最優秀論文章を受賞した論文「Algorithmic Injustices: Towards a Relational Ethics」の中でBirhane氏は「アルゴリズムによる意思決定とアルゴリズムによる不正を取り巻く懸念には、技術的なソリューションを超えた根本的な再考が必要です」と書いている。

2018年のVoxのインタビューでは、Kosinski氏は包括的な目標が「デジタルフットプリント」を通して人々、社会的プロセス、行動を理解しようとすることだと主張した。業界や政府はすでに、彼らが開発したのと同様の顔認識アルゴリズムを使用していると述べ、プライバシーの消失について利害関係者らに警告する必要があると強調している。

Kosinski氏と共同著者らは今回の研究で次のように述べている。

「顔認識を幅広く利用することによって、プライバシーや市民の自由を脅かす大きなリスクが生まれます。他のデジタルフットプリントの多くが政治的志向や他の特性を明らかにしていますが、顔認識は対象者の同意や認識なしに使用可能です。顔の画像はたやすく(そして秘密裏に)法執行機関に撮影されたり、あるいはソーシャルネットワーク、出会い系プラットフォーム、写真共有サイト、政府のデータベースなどのデジタルまた従来のアーカイブから入手できます。たとえばFacebookやLinkedInのプロフィール画像は誰でも簡単に、同意を得たり、知らせたりしなくてもアクセスできてしまいます。顔認識技術によって、多くの点で前例のないほど脅威的なプライバシーの侵害が生まれます」。

確かに、Faceptionのような企業は顔認識を利用してテロリストや小児性愛者を見分けることができると主張している。そして中国政府は表向きは90%以上の精度で何百人もの犯罪容疑者の写真の識別に顔認識を導入している。

Os Keyes博士号候補者とワシントン大学のAI研究者は、顔認識の誤用や欠陥に注意することが大切だと認めている。その上でKeyes氏は、Kosinski氏の研究が進めているのは根本的にニセ科学だと論じている。

彼らはVentureBeat宛のeメールでこう書いている。

「同性愛の原因を(たとえば)胎児期のテストステロンが『多すぎた』あるいは『不足していた』からとする(率直に言って不気味な)進化生物学・性科学研究をあてにしすぎています。それらを論拠にしたり、彼らを支持する研究をすることは・・・どうしても戸惑いを感じます」。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ソーシャルメディアの「顔情報」:顔認識アルゴリズムにつきまとう偏見の疑い(3/4)

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(前回からのつづき)Kosinski氏はプロジェクトのソースコードとデータセットは公開したが、プライバシーを理由に実際の画像の提供は拒否した。そのため、この研究のバイアスや実験の不備に対する監査が不可能になってしまった。一般的に科学に再現性の問題はつきものだ。2016年に1,500人の科学者を対象に行った調査では、70%は他の科学者の実験を少なくとも1つ以上再現しようとしたが失敗したと報告されてお…

前回からのつづき)Kosinski氏はプロジェクトのソースコードとデータセットは公開したが、プライバシーを理由に実際の画像の提供は拒否した。そのため、この研究のバイアスや実験の不備に対する監査が不可能になってしまった。一般的に科学に再現性の問題はつきものだ。2016年に1,500人の科学者を対象に行った調査では、70%は他の科学者の実験を少なくとも1つ以上再現しようとしたが失敗したと報告されており、AIの分野では特に深刻だった。最近のレポートによると、自然言語処理モデルが出した回答の60〜70%がベンチマークトレーニングセットの中に埋め込まれており、モデルは単純に回答を丸暗記しているだけなことが多いとしている。

Joy Buolamwini氏、Timnit Gebru博士、Helen Raynham博士、Deborah Raji氏による画期的な研究「Gender Shades」を含めた数多くの研究およびVentureBeatの公開ベンチマークデータの独自分析からも、顔認識アルゴリズムにはさまざまな偏見の疑いがあることが示されている。混乱をまねく最たるものは、明るい色の肌を好むテクノロジーとテクニックだ。これにはセピア調フィルムから低コントラストのデジタルカメラまであらゆるものが含まれている。こうした偏見から、肌の明るい人よりも暗い人に対してアルゴリズムの処理能力が下回ることになりかねない。

顔認識システムを支える技術以上に、機械学習アルゴリズムには至るところにバイアスが浸透している。ProPublicaの調査によると、犯罪予測に使われるソフトウェアは黒人へのバイアスを示す傾向がある。別の調査によると、女性には給与の高い仕事のオンライン広告が表示されることが少ないAIによる美容コンテスト白人を好む傾向がある。タイムライン上に表示される画像を自動的にトリミングするためにTwitterが使用していたアルゴリズムでは、肌色の暗い人よりも白人の顔を表示することが選ばれた。(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ソーシャルメディアの「顔情報」:トンデモ科学の応戦(2/4)

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トンデモ科学の応戦 (前回からのつづき)Kosinski氏と共同著者らは批判に先制攻撃をかけ、自分たちの研究が骨相学や人相学とは一線を画すものだと主張しているが、それらのすべてを否定してはいない。彼らは論文の注釈に次のように書いている。 「人相学は非科学的な研究や迷信に基づいていて、証拠の裏付けに乏しく、人種差別的なインチキ理論だとして支持されてこなかったからと言って、すべてが間違っているとは言え…

トンデモ科学の応戦

前回からのつづき)Kosinski氏と共同著者らは批判に先制攻撃をかけ、自分たちの研究が骨相学や人相学とは一線を画すものだと主張しているが、それらのすべてを否定してはいない。彼らは論文の注釈に次のように書いている。

「人相学は非科学的な研究や迷信に基づいていて、証拠の裏付けに乏しく、人種差別的なインチキ理論だとして支持されてこなかったからと言って、すべてが間違っているとは言えません。人相学者の主張の中には、偶発的に正しいものもあるかもしれません」。

Kosinski氏によるとすべてではないにしろ、頭の向き、感情の表出、年齢、性別、人種など多くの顔の特徴から政治的姿勢が明らかになるという。ヒゲやメガネから支持政党を予測する精度は「非常に低い」ものの、自由主義者は顔をカメラにまっすぐ向ける傾向があり、驚きの表情をする可能性が高い(そして、嫌悪感を見せることは少ない)と彼らは述べている。

研究者らはこう書いている。

「顔の特徴は比較的固定していると思いがちですが、短期的・長期的の両面で顔の特徴に影響を与える要因はたくさんあります。たとえば自由主義者は、より強く、心から笑う傾向があり、笑いジワができやすくなります。保守主義者は健康志向が強く、アルコールやタバコの摂取が少ない代わりに健康食を好みます。これも時間の経過とともに、肌の健康状態や顔の肉づきを変えていきます」。

研究者らは、顔の外見から刑期の長さ、職業上の成功、学業成績、選挙の当選確率、年収などの人生の道筋を予測でき、それが今度は政治的な姿勢に影響するようだと考えている。また、顔の外見と政治的姿勢、遺伝子、ホルモン、胎児期に暴露した物質には関連性があるとも推測している。

「第一印象がネガティブだと生涯にわたって収入や地位を低下させる可能性があり、それによって富の再分配や社会的不正への感受性が高くなり、政治的な姿勢が自由主義の方向へ傾いていきます。出生前後のテストステロンのレベルは顔の形に影響する上、政治的態度と相関関係があります。また、胎児期に晒されたニコチンとアルコールは、顔の形態や認知的な発達に影響します(そして政治的な姿勢と関連性をもちます)」。

(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ソーシャルメディアの「顔情報」:顔から政治的傾向は読み取れるのか(1/4)

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スタンフォード大学の研究者で物議を醸しているMichal Kosinski氏の論文は、顔認識アルゴリズムによってソーシャルメディアのプロフィールから人々の政治的傾向を暴くことができると主張している。Kosinski氏と共著者は、カナダ、アメリカ、イギリスのユーザーのフェイスブックや出会い系サイトのプロフィール100万件以上のデータセットを使用して、「自由主義者と保守主義者」の顔のペアの72%におい…

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スタンフォード大学の研究者で物議を醸しているMichal Kosinski氏の論文は、顔認識アルゴリズムによってソーシャルメディアのプロフィールから人々の政治的傾向を暴くことができると主張している。Kosinski氏と共著者は、カナダ、アメリカ、イギリスのユーザーのフェイスブックや出会い系サイトのプロフィール100万件以上のデータセットを使用して、「自由主義者と保守主義者」の顔のペアの72%において政治的指向を正しく分類するアルゴリズムを訓練したと述べている。

この研究は「人の性格や性格は外見から評価できる」というトンデモ科学的な概念である「人相学」を取り入れたものである。1911年、イタリアの人類学者Cesare Lombroso氏は、「ほぼすべての犯罪者」は「つぼ耳、太い髪、薄いヒゲ、顕著な副鼻腔、突き出た顎、広い頬骨」であると分類学を発表した。泥棒は 「小さくさまよった目」が目立ち、強姦魔は 「腫れ上がった唇とまぶた」が目立ち、殺人者は「しばしば鷹のような鼻を持ち、常に大きい」と主張したのだ。骨相学という関連分野では、精神的特徴を予測するために頭蓋骨のこぶを測定している。Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)の代表的な著者たちは、この種の顔認識は「必然的に失敗する運命にある」と述べており、強い主張は貧弱な実験結果の現れだとしている。

Kosinski氏の研究を批判しているプリンストン大学のAlexander Todorov教授も、顔認識の論文で採用されているような方法は技術的に欠陥があるとしている。Todorov教授は、何百万枚もの写真を比較するアルゴリズムが拾ったパターンは、顔の特徴とはほとんど関係がなくなる可能性が高いと指摘する。例えば、出会い系サイトに自分で投稿した写真には、顔以外の手がかりがたくさんあるはずだ。

さらに現在の心理学の研究では、成人期までには、人格はほとんどが環境の影響を受けていることがわかっている。「写真から性格を予測することは可能かもしれないが、人間の場合はせいぜい偶然よりもわずかにマシな程度」と、プロフィール画像から性格を予測することに取り組んできたペンシルバニア大学の博士研究員のDaniel Preotiuc-Pietro氏は、最近のインタビューでBusiness Insiderに語っている。

(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Twitterによる買収と閉鎖、SNSの転換点到来か ーー 新たなソーシャル像を作る3つの動き

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Twitterに大きな動きがありました。具体的には3つ。 1つは音声市場参入の兆し。18日に「Twitter Spaces」の名前で音声チャットルームサービスを限定招待の形で立ち上げました。著名VCのAndreessen Horowitzが出資し、1億ドル評価で大型調達を果たした「Clubhouse」を意識した動きです。音声ツイート機能を招待制で展開を始めたことから、今後数カ月で世界中のユーザーが…

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Twitterに大きな動きがありました。具体的には3つ。

1つは音声市場参入の兆し。18日に「Twitter Spaces」の名前で音声チャットルームサービスを限定招待の形で立ち上げました。著名VCのAndreessen Horowitzが出資し、1億ドル評価で大型調達を果たした「Clubhouse」を意識した動きです。音声ツイート機能を招待制で展開を始めたことから、今後数カ月で世界中のユーザーが参加する可能性があります。

2つ目はスクリーンシェアサービス「Squad」の買収。友人とライブ動画感覚でおしゃべりできるサービスで(買収発表直後にクローズ)、Netflixを一緒に視聴する機能も実装されており、在宅中に1人で楽しんでいたコンテンツを多人数で消費できるものです。本買収は、Fortniteを開発する「Epic Games」が買収した友人同士の動画コミュニケーションアプリ「Houseparty」に追随する動きです。

最後が「Periscope」の閉鎖発表。2015年にTwitterに買収されたライブ動画配信サービス、Periscopeが2021年3月までに閉鎖されるとのことです。閉鎖までの期間、ユーザーは同アプリ内に残った動画データをダウンロードできます。サービス立ち上げ・買収・閉鎖のニュースを直近1カ月以内に立て続けに発表したTwitterは今後、どのようなサービス像を目指しているのでしょうか。キーワードは「フラット」と「共有体験」です。

最近では配信者と視聴者の関係図に代表される、主従関係の構図が徐々に時代遅れになってきています。テレビ番組に見られるような、ただコンテンツを受け取るような形です。2020年以降のトレンドはもっぱらClubhouseやSquadに見られる、ユーザー同士が対等な関係値で話し合える場を提供することにありました。先述したように、従来1人だけで楽しむような体験を共有する価値観に注目が集まっています。この点、2010年代に成長をしてきたSNSはそのサービス像を大きく変える必要が出てきました。

Twitterはその瞬間に感じたことをつぶやき、他のユーザーとコメントやリツートでやり取りする最初からフラットなSNSを構築していました。ただ、Periscopeは配信者と視聴者の関係でサービスが成り立っており、友人間の会話ではなく、あくまでも「配信」にこだわっています。これでは統一性が感じられません。そのため、音声チャット立ち上げやスクリーンシェアサービス買収に動き、Twitter本来の提供価値とはズレてしまったPeriscopeを切ったのでは、と想像されます。

奇しくもPeriscopeと最後まで市場競争を続けたMeercatは、後にHousepartyにピボットしてEpic Gamesに買収されています。コロナの影響もありそのユーザー数を爆発的に伸ばしたこともあり、最終的な勝者は先に買収されたPeriscopeではなく、旧Meercatだという歴史が証明されてました。それもこれも、ユーザーの権限に差をつけるのではなく、友人間のフラットな関係作りに注力したためだと考えられます。

Twitterが今後目指すのは、まさにユーザー同士がバックグラウンドを気にせずにフラットにコミュニケーションが取れる場所であり、「Interest-Social-Network」とかつて呼ばれていたように、ユーザー同士の興味に基づいてマッチングが行われ、関係を深められる場所だと感じます。