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特集:パッションエコノミー

特集:パッションエコノミー

「個人」をサービス化する流れが来ている。従来、「Uber」や「Instacart」といったプラットフォームを利用していたサービス提供者が、自身でちょっとしたECページを立ち上げ、お客を集めて直接やりとりをする。利用手数料を取られず、収益を最大化できるためだ。こうした個人をエンパワーするサービスや企業を探っていく。

MUGENLABO Magazine

特集:パッションエコノミーの話題

C2C「スニーカーダンク」運営が25億円の資金調達公表、SoftBank Ventures Asiaなど出資

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個人間のスニーカーフリーマーケット「スニーカーダンク」を運営するSODAは1月14日、これまでの増資について公表している。公表された引受先はSoftBank Ventures Asiaとbasepartners、コロプラネクスト、THE GUILD、IVA代表取締役の相原嘉夫氏個人、ほか名称非公開の1社と個人投資家となっている。相原氏はスニーカーダンクが実施しているスニーカーの真贋鑑定「フェイクバ…

個人間のスニーカーフリーマーケット「スニーカーダンク」を運営するSODAは1月14日、これまでの増資について公表している。公表された引受先はSoftBank Ventures Asiaとbasepartners、コロプラネクスト、THE GUILD、IVA代表取締役の相原嘉夫氏個人、ほか名称非公開の1社と個人投資家となっている。相原氏はスニーカーダンクが実施しているスニーカーの真贋鑑定「フェイクバスターズ」を運営する。

増資の内容についてはシリーズAが3億円、シリーズBが約22億円で、SoftBank Ventures AsiaがBラウンドをリードした。それぞれの参加投資家や払込日などについては非公開。

スニーカーに特化したマーケットプレース「スニーカーダンク」を運営するSODAの創業は2018年7月。ウェブ、iOS/Androidアプリに対応しており、個人間売買ながらユーザーは一般的なECと似たような購入体験でスニーカーを手にすることができる。また、真贋鑑定についてはプロの鑑定サービス「フェイクバスターズ」を導入する二重チェックを特徴にしている。

同社が公表する利用者数は月間250万人。サービス利用には月額会費などの利用料はなく、購入者が2.9%の購入手数料を支払う仕組み。なお、販売者は現在手数料が無料になっている。また中古品に限り、二重チェックを利用する場合は別途1200円のサービス利用料がかかる。

スニーカーダンクではマーケットプレース以外にもスニーカーに関するメディアにも力を入れており、ユーザー投稿型のコミュニティでは月間数万件の投稿があるとしている。調達した資金は、プロダクト開発やマーケティング、ロジスティクス・カスタマーサポートの人材採用および設備投資に使われるほか、グローバルでの展開も見込む。

via PR TIMES

花き業界をデジタル化する「HitoHana(ひとはな)」モデルーーCEOの視点:Beer and Tech 森田氏

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載 コロナ禍によって2020年は大きく市場が動いた年になりました。デジタル化の波は全ての産業に到来し、新たなパラダイムの変わり目を感じている経営者の方々も多いと思います。一方、各業界・市場の構造や課題は外からは見えづらく、新たなビジネスチャンスに気が付かないケースも多々あります。…

Beer and Techチーム。画像提供: Beer and Tech

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

コロナ禍によって2020年は大きく市場が動いた年になりました。デジタル化の波は全ての産業に到来し、新たなパラダイムの変わり目を感じている経営者の方々も多いと思います。一方、各業界・市場の構造や課題は外からは見えづらく、新たなビジネスチャンスに気が付かないケースも多々あります。

そこでGB Universe編集部ではグローバル・ブレインで実施している投資先のPR支援プログラムと連携し、各業界に特化した成長スタートアップのCEOにその市場の読み解きと、成長している「理由」を語っていただくインタビューシリーズを開始することにいたしました。

初回に登場するのはお花のデリバリーで急成長中のBeer and Tech代表取締役、森田憲久さん。運営する「HitoHana(ひとはな)」は農林水産省が主導する生産者支援プログラムに参加し、コロナ禍によって廃棄される可能性のあったお花を約3カ月で2万3,000件以上出荷することに成功します。これはプログラム全体の約7割に相当(※)したそうです。(※2020年5月–9月のプログラム期間中、全体で33012件の出荷と発表されている中、HitoHanaは本格参加から3ヶ月間(9月–11月)で23,408件を出荷。)

グローバル・ブレインが支援するスタートアップの創業者「CEOの視点」を通じ、新たなビジネスチャンスや成長企業へ参加するきっかけとなれば幸いです(文中の太字は全てGB Universe編集部、回答はBeer and Tech代表取締役の森田憲久氏)。

花き業界の課題と現状

森田さんの実家は胡蝶蘭の生産者。画像提供: Beer and Tech

森田さんはご実家もお花の事業をされているんですよね

森田:はい、緊急事態宣言が出された頃、胡蝶蘭の生産者である実家から連絡がありました。そこで父から「お花屋さんがみんな閉まってしまい、今年は花が咲いてきた胡蝶蘭を大量に余らせてしまうかもしれない。ネット花屋さんだけが頼りだから、大変な状況だけど頑張ってほしい」と言葉をかけられたんです。

それで農林水産省のフラワーロス支援キャンペーン(※)に参加して送料を無料にした

森田:珍しく私に弱気な姿をみせた父親を見て、同様の悩みを抱えている生産者さんがいることに思いが至ったんです。インターネット経由でお花を売ることが少しでも生産者さんの助けになるのであれば、と思って参加しました。(※農林水産省が主催している国産農林水産物等販売促進緊急対策プロジェクト。)

パンデミックで顕在化した部分含め、花き業界の課題について教えてください

森田:花屋さんは現在1万5,000店あると言われています。平均の年商は2,300万円ぐらいで、非常に小さな会社がばかりです。だいたい1兆円ぐらいのマーケットだと言われているのですが、最大手の会社でもマーケットシェアは3%程度です。

マーケットが拡大する時は小さなお店でも良かったのですが、マーケットが徐々に縮小していく中では、店舗の採算は合いづらくなっていきます。お店を守るために、一人で多くの業務を抱え込み、朝早く店を閉めるのに疲れましたというフローリストも少なくありません。

そういう状況だとテクノロジー投資も難しそうですね

森田:はい、コロナウィルスは予想されていた店舗が減少しユーザーがECにシフトしていくという未来を前倒しで現実化しました。特に、お客様の移動に制限がかかったことやリモートワークが進んだことで家で過ごす時間が増え、お花や植物の需要は伸びました。しかし、お店で購入していたユーザーの生活動線上にあったお花屋さんがなくなってしまい、そういった方々がお花を求めてオンライン流れてきたと考えています。

花き業界におけるデジタル化のプレーヤーの状況を教えてください

森田:花き業界のデジタル化は1995年に米国の1−800FLOWERS.comのインターネット販売をきっかけに進みはじめました。1−800FLOWERS.comは提携する花屋さんをネットワークし、インターネットで注文を受けたらお届け先の近くにあるから提携店からお花をお届けする、というモデルでした。

国土の広いアメリカのどこにでもお花が贈れる、フラワーデリバリーサービスという業態を確立し、NASDAQに上場を果たし、いまも順調に株価を伸ばしています。国内でも花キューピットさんを筆頭に同様のモデルの花のECに取り組む企業が登場しています。

確かにお花の「ギフト」と言えば花キューピットが強いですね

森田:確かにこのビジネスモデルは、大きな国土がある米国の配送問題を解決するには素晴らしい解決策ではあるものの、AmazonのようなECと違い、お花はスケールすることで仕入先に対して価格交渉力を持つことができません。販売面をとったことが必ずしも強い優位性をつくるわけではないんです。

そのため、2012年ぐらいから米国でフラワーデリバリーサービスを手掛けるスタートアップが立ち上がり、ヨーロッパや中国でもそのトレンドは続きました。新しく生まれたスタートアップは中間業者を排除することで価格競争力をつけ、デザイン性を高めるビジネスモデルを採用しました。

HitoHanaの開始は2015年11月ですね

森田:はい、当時から海外サイトをみていたわけではありませんが、世界のスタートアップ同様、僕らも店舗からECへオンラインシフトするマーケットの中で、市場流通比率の高さや既存のECプレイヤーのデザイン性には課題が残っているように感じていました。

しかし、実際に事業を始めてみると、日本の花のECにおける流通業者のマージンは8%程度でそこまで大きくなく、米国のように中間業者を省いても劇的な大きなインパクトがないことがわかりました。一方で、公共交通機関や物流網が整っている日本では提携花屋さんにオペレーションを任せてECサイトのウェブマーケに注力し販売額を伸ばしても、デザインコントロールできない上に仕入れコストも大きく下がらず、まだ課題が残っているように感じました。

日本特有の業界課題を発見したと

森田:一人のユーザーとして感じていた古臭いデザインの問題と競争優位なきビジネスモデルが生み出した厳しい労働環境、この両方を解決するようなビジネスモデルを模索する中で、HitoHanaは今の姿に近づいてきました。

HitoHanaが採用したSPA型モデルのメリット

ここからHitoHanaのモデルについてお聞きしたいのですが、全体像を教えていただけますか

森田:これらの問題を解決するために、HitoHanaのビジネスモデルは、提携花屋さんをネットワークするECではなく、商品企画から仕入れ・制作・発送までバリューチェーン全体をコントロールするSPA型のECを展開しています。

大手小売と同じ一気通貫のモデルですね

森田:僕らは花屋さんにオペレーションを外注し、スケールさせやすい構造を捨てる代わりに、ECに特化したオペレーションを自ら設計し、オペレーションをスタッフ集め、業務プロセスの中でデジタルデータを生み出し、データが貯まれば貯まるほどお客様の提供価値が増していく構造を選択しました。

HitoHanaのビジネスモデル。画像提供: Beer and Tech

例えば、HitoHanaでは、注文を受けて実際に制作した花束はすべて撮影し、画像データとして保存しています。その画像データ一つでも次のような活用をしています。

  1. 制作した花束の画像は花束をオーダーしてくれた方にお送りします。ギフトの花束はお届け先に届き注文者が確認することができないため画像をお送りすると非常に喜ばれます
  2. 制作した花束の画像は商品詳細ページにあるギャラリーに掲載され、購入検討しているユーザーさんが実際どのレベルのデザインが納品されるのかわかり安心感が増します
  3. ギャラリーから制作した花束の画像を選択肢、類似デザインを指定してオーダーすることができます。お花のデザイン要望をテキストで伝えるのは非常に難しく、画像を利用することでお客様が要望を伝えやすくなっています
  4. 制作した花束の画像は、レビューにも表示され、どんなデザインに対してついたレビュー点数なのかわかるようになっており、より意味あるレビューになっています
  5. 制作した花束の画像は制作者と紐付けられ、誰が何をどんなデザインで制作したかわかり、デザインフィードバックがされるようになっています

販売すればするほどデータが蓄積されて体験が改良される

森田:そうです。この例のようにデータを取得から活用までの一連の流れを作ることで、現場で働くメンバーの仕事の価値を流してしまうのではなく、ストックし積み上がるように設計しています。デジタル化をオペレーション効率化に使うのだけではなく、提供価値を増幅する仕組みを根幹に据えることで、データそのものとデータを生み出す組織が、他者が真似できない優位性を築いていくんです。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)がツールのデジタル化ではなく、構造のデジタル化であると言われますが、そのケーススタディですね

森田:このようにデータによって提供価値をつくることでお客様の支持を集めた結果が農水省におけるプログラムの成果に繋がったのではないでしょうか。花き販売では43サイト(楽天、Yahoo、食べチョク等)が販売参加している中、花と植物領域に特化したサービスとして大きな存在感を残せたと思っています。

デジタル化で花き業界はどう変わる

HitoHanaで制作されたフラワーデザイン。画像提供: Beer and Tech

最後に花き業界がデジタル化することでどう変わるのか、聞かせてください。森田さんのお話ではご実家の事業も含めた現在の小売事業者はある意味で競合してしまう存在になります。どのような発展のシナリオがあるのでしょうか

森田:コロナ以前から国内でも毎年10%程度フラワーデリバリーサービスが成長すると言われていました。なのでお花の購入チャネルが店舗からオンラインへと流れるのは確実です。実際、国内の花や植物マーケットに参入意思がある会社は米国のフラワースタートアップのBOUQSやAmazonなどが登場しており、これから数年で競争環境はより厳しくなると思います。その上で、フラワーデリバリーサービスが成長することで花き業界にも大きく3つの変化が起きると考えています。

なるほど

森田:1つ目は、フラワーデリバリーサービスと生産者との密接な連携です。ECの規模が大きくなればなるほど、商品写真に近しいものを作るために同じ花材が必要になり、特定の生産者への発注額が急激に伸びていきます。

既に生産計画などに踏み込みこんでの花材確保の話が進めていますが、フラワーデリバリーサービス事業者と提携生産者が連携し、商品企画時点から連携するようになるはずです。こうした連携の中で、市場でセリ落とされて勝手にサーブされる状態から、他業界のD2Cのようにサプライチェーンの透明性は増し、生産者の顔の見えるような世界に変わっていくと思います。

SPAのようなサプライチェーンを受け入れる、という変化ですね

森田:2つ目は、労働環境のホワイト化です。店舗からフラワーデリバリーサービスで勤務するフローリストさんが増えることで、労働環境は是正されていくはずです。というのも、フラワーデリバリーサービスは注文は24時間受け付けられるため、店舗のように制作時間以上にフローリストを拘束する必要がありません。また、規模化することで分業とシステム化が進み、一人あたりの生産性は大幅に改善するからです。

実際、弊社のフローリストの1日の制作数は、店舗の勤務時の3倍以上であるにも関わらず、配送会社様へ荷物を引き渡したら、定時でお仕事終了になります。自身の才能が活きるプロセスにフォーカスでき、価値が積み上がる構造が作れれば、労働時間だけでなく、店舗勤務よりも良い給与を提供できるはずです。

この辺りは規模の経済が効きやすい部分ですね

森田:最後は人気フローリストの登場です。お花は前述の通り、スケールしてもコストが劇的に下がることはありませんので、利益を伸ばすためには提供価値を上げる方向性にシフトしていくことが予想されます。提供価値を上げていく方向の中で、注文されるのが個々のフローリストのデザインスキルです。

なるほど、インスタでもお花の写真は人気ですが、マイクロインフルエンサーが登場してもおかしくないですね

森田:いままで店舗のある商圏の中でしかサービスを届けられなかった才能があるフローリストは、フラワーデリバリーサービス上で全国のお客様にサービスが提供できるようになることで、ユーザーに才能があるフローリストは発見され、オンライン発で人気フローリストが生まれてくると考えています。フローリスト個人の指名料やギフティングの仕組みなどが進み、もう一度憧れの職業に返り咲けるのではないかと思います。

デジタル化によってこのようなシナリオが生まれ、これまでの花き業界における店舗が抱えてた問題を解決し、フローリストや生産者との関係が変わるのではないかと考えています。

長時間のインタビューありがとうございました

お店から直接視聴者へ売り込むライブショップ「Popshop Live」ーー 1億ドル価値へ急成長したワケ

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昨今、注目されるキーワードに「パッション・エコノミー」が挙げられます。この分野に積極的な関心を寄せるVCがAndreessen Horowitz(a16z)と、ライドシェア「Lyft」や家事手伝いマッチングプラットフォーム「TaskRabiit」に初期投資したVC、Floodgateです。 参考記事 いま米国で注目される新トレンド「パッション・エコノミー」とは?ーー 個性を売りにする“マイクロ起業…

Image Credit:Popshop Live

昨今、注目されるキーワードに「パッション・エコノミー」が挙げられます。この分野に積極的な関心を寄せるVCがAndreessen Horowitz(a16z)と、ライドシェア「Lyft」や家事手伝いマッチングプラットフォーム「TaskRabiit」に初期投資したVC、Floodgateです。

参考記事

なかでもFloodgateは、個人がお買い物代行サービスを立ち上げられるSaaSプラットフォーム「Dumping」へ2019年に出資。そして20年、小売店/販売業者向けライブコマースアプリ「Popshop Live」に出資しました。

Popshop Liveは小売店や個人事業者、クリエイターが直接視聴者に商品を売れるライブコマースアプリです。配信ユーザー(小売業者)は、自分だけのショッピングチャンネルを作成し、幅広い商品をリアルタイムで全国の視聴者に直接販売することができます。7月には300万ドルの資金調達を、直後の11月には1億ドル評価でシリーズAラウンドを迎えていると報道されました。

リアルタイム在庫管理、ジェネレーションZおよびミレニアル世代向けのポップな機能・テンプレート、パフォーマンス統計・詳細な指標レポート・リアルタイム分析機能、カスタマーサポートなどの諸機能を利用することができます。

他のライブストリーミングプラットフォームと違い、商品販売に特化したユースケースを想定しているのが特徴です。日本のBASEのように、個人が素早くライブコマース商店を立ち上げられるパッションエコノミー文脈を色濃くプロダクトに反映させています。ターゲット顧客となるのは、パンデミックの影響で実店舗売上が減少し、ECへの積極進出を狙う中小規模の小売事業者です。ユーザーとの密なコミュニティを作り、直接顧客と繋がれる場の創出を目指しています。

Image Credit:Popshop Live

かつて、ニューヨークの店舗から中国市場向けに洋服を売るライブ配信コマースサービス「ShopShops」が登場していました。テレビショッピング感覚でナビゲーターやキュレーターが実店舗から商品を紹介し、店舗内の商品を中国人客が購入していく越境ECの仕組みです。彼らの場合は専属の配信者が店舗へ出向き、ライブ配信するプロセスでしたのであくまでもプラットフォーム側が主導です。

一方、Popshop Liveは事業者自身がライブコマースECチャンネルを立ち上げられるサービスを展開しています。アプリ側は機能を提供する点に終始しています。そのため、集客や運用コストを下げられ、高額な販売手数料を抑えています。これは冒頭で紹介したDumplingでも同様の仕組みです。

一見すると、インスタライブの販売機能と真っ向から競合しそうです。ただし、ユースケースとそれに伴う販売機能を拡充させる、ショッピング特化型のアプリとして市場ポジションを確立するのが狙いに思えます。加えて、個人をエンパワーし、SaaSモデルに徹することで省コスト化に成功しています。こうした点が強みとなり、インスタライブとはまた違った成長性に期待が集まっています。

日本でも近いうちにPopshop Live同様のコンセプトを持ったアプリが登場すると感じています。パンデミック禍で営業不振な店舗の新たな収益源というサービスは共感を生みそうです。ただ、LINE Liveのような日本で有名なスーパーアプリとどこまで勝負できるのかが焦点となりそうです。

ちなみに日本ではファッション・美容系インフルエンサーがライブ配信で商品を売る「LiveShop」が登場していますが6月末にクローズ。自社でユーザーを集めつつ、物を売る難しさを物語っています。この領域に対し、Popshop Liveのようにユーザー自身が集客を担当する、比較的低コストで展開できるライブコマースアプリがもし日本で登場したら、どこまで市場に刺さるのかも注目を集めるでしょう。

いずれにせよ、パッションエコノミー文脈への投資は米国でどんどん進んでおり、日本でもその波がやってくる日も近いはずです。

プロセスエコノミーと小さな経済の時代

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先日、アルというソーシャル漫画サービスをやっているけんすうこと古川健介さんから突然メッセージがやってきて「00:00 Studio(ふぉーぜろすたじお)というサービス始めたよ!マニアックでリリース前なんだけどクリエイターめちゃ増えてる!」というお便りをいただいたんですね。 00:00 Studioはクリエイター(漫画とかイラストの作家さんたち)が作業中を淡々とライブ配信するもので、彼が言う通り、す…

画像クレジット:「プロセス・エコノミー」が来そうな予感です」より

先日、アルというソーシャル漫画サービスをやっているけんすうこと古川健介さんから突然メッセージがやってきて00:00 Studio(ふぉーぜろすたじお)というサービス始めたよ!マニアックでリリース前なんだけどクリエイターめちゃ増えてる!」というお便りをいただいたんですね。

00:00 Studioはクリエイター(漫画とかイラストの作家さんたち)が作業中を淡々とライブ配信するもので、彼が言う通り、すごくマニアックです。ちょっと覗いてみたのですが、よくあるYouTubeのかっちょいいイラストの早回し制作動画とかと違い、本当に単なる制作風景です。目の前でnoteを書いている(というか、単にテキストが打ち込まれている)様子を見るというのはなんというか悪いことをしているような感覚にも近く、ライブ配信やコンテンツを視聴するとはなんぞやということを考えてしまいました。

リアリティショーや日常のライブ配信、雑談でもなく、覗き見です。

00:00 Studio:応援コメントはニックネーム入れたら送ることができます

ということでサービスはさておき、彼がこのサービスと一緒にシェアしてくれた「プロセスエコノミー」という考え方に興味あったので共有したいと思います。

プロセスエコノミーとはその通り、何かの過程自体もビジネスにする考え方です。対局にあるのがアウトプットエコノミーで、できた商品やサービスを購入するのに対して、できている過程に課金したり、そこに共感してコミュニティに参加するといった具合です。実際、けんすうたちが運営しているアルでは「アル開発室」というコミュニティをやっていて、アルを開発する上でのプロセスを公開しながら、課金で毎月200万円ほどの収入を得ているそうです。

さて、プロセスを最終のプロダクトに反映させる事例として、私が好きなストーリーがAllbirdsのケーススタディです。同社は温室効果ガスゼロを目指して製品づくりを進めていて、サイトのメインコンセプトとして強く打ち出しています。同時にAllbirdsについてはAmazonコピー問題という別の事件がありました。

当然ですがAmazonの商品にこのような製品の物語はなく単なるコピーです。もちろん消費者がどちらを選ぶかはその方々の状況次第なのですが、ここで重要な視点に「共感できるかどうか」というものがあるんですね。けんすうが言うところのプロセスエコノミーにも通じる大切なキーワードで、製品やサービスに差がどんどんなくなる時代、人々がなぜそれを手にするか。そこには絶対的な「スキ!」という感情がなければならない、共感できるものと一緒にいたいというのはごく自然な考え方ではないでしょうか。

けんすうの言う「プロセスまで含めてサービスや製品を好きになりたい」という考え方に同意するのはそういう理由からです。

パッションエコノミーと共感

Allbirdsでは全面的に環境にやさしい製品作りを押し出して消費者に共感を与える

もうひとつ、プロセスエコノミーに興味を持った理由として、とあるトレンドがあります。それがパッションエコノミーです。

ギグワークなどの「消費される」個人の生き方と異なり、個人のスキルや情熱(パッション)を別の価値に変えようという動きで、日本でもクラウドワークス・ランサーズなどのクラウドソーシング関連、BASEやMOSHといったコマースプラットフォーム、ココナラやビザスクと言ったスキルシェア、YOUTRUSTやOffersのような副業プラットフォームなどなど、様々な形で個人をエンパワメントするサービスが拡大しています。

今、日本ではようやくというか、終身雇用だったり新卒一括採用などの昭和的動きが商習慣的にも終わりを迎えつつあり、例えば先日公表された電通の個人事業主制度などは大きな話題になりました。仕事を人生の全てではなく、一部として考えれば色々な選択肢を渡り歩くのは当然で、その中に一時期は個人や小さなチームで生きてみたい、というものが出てきても不思議ではありません。

ただ、この生き方、まだまだ環境が揃っているとは言い難い部分があるんですね。特に「どうやって自分たちを知ってもらうか」というのが難しい。企業は何か製品やサービスを出す際「プレスリリース」という手法を使ったり、広告を打ったりして認知を取るわけですが、当然この方法は資本力勝負な面があります。

では資本力にどうやって小さなチームが立ち向かうか。それが先程例に挙げたAllbirdsのような「共感」を生み出す力と方法なのです。

特にプロセスは継続的に情報を出すことができます。自分がどうやって製品を作っているのか、なぜこれが必要なのか、そういったストーリーを組み込みながら、小さく情報を出していくと、自然とその考え方に同調してくれる人々が集まってくれます。課金してくれるかどうかは設計次第ですが、それでもそういう人の輪が広がっていくと、自然と小さな活動が徐々に力を持っていくのです。ちなみにBRIDGEも小さいイベントを通じてスタートアップコミュニティで共感を重ねた結果、今の状況があります。

ソーシャルメディアの発達も後押ししてくれていて、Twitterやブログサービスなどで自分の考え方を表現しやすい時代になりました。そこに共感できるストーリーがあれば、大量の広告よりも効果的に人を巻き込むことができます。

個人や小さな経済活動が広がる時代というのは向こう数年でもっと広がると思います。今回のパンデミックを機にリモートワークが進み、遠方に引っ越した人たちの話題もよく耳にするようになりました。特殊な資金調達をしてIPOを目指すスタートアップのような方法は極めてリスキーですが、自分のスキルや経験を活かした生き方というのはライフイベントに合わせて選択できてしかるべきなのです。

パッションエコノミーという時代にいかに共感を生み出すことができるかが、今後の経済活動を占う鍵になるのではないでしょうか。

パッションエコノミーから考える「旅」の価値とスタートアップチャンスについて

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  旅の経験をもっと可視化することはできないでしょうか。 というのも、旅から得られる経験はオリジナリティー性が強く、個人に依存するため、旅人一人ひとりが価値を創出できる可能性を秘めていると感じているからです。また「旅のストーリーが個人を強くする時代」でも触れたように、パッションエコノミーの機運が高まるにつれその傾向はさらに強まると考えてます。 旅に出ることのハードルが低くなっていることも…

 

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Photo by Belle Co on Pexels.com

旅の経験をもっと可視化することはできないでしょうか。

というのも、旅から得られる経験はオリジナリティー性が強く、個人に依存するため、旅人一人ひとりが価値を創出できる可能性を秘めていると感じているからです。また「旅のストーリーが個人を強くする時代」でも触れたように、パッションエコノミーの機運が高まるにつれその傾向はさらに強まると考えてます。

旅に出ることのハードルが低くなっていることも要因のひとつです。(時期的には難しいですが)Airbnb・LCCの浸透で、金銭的にも思い立った時にどこか異国の地へ旅立つことが容易となりました。また世界300都市で利用可能なスーツケースの民泊「BagBnb」や、旅先にレンタル形式で必要な服を配達してくれる「TRVL Porter」が台頭してきています。これらにより、旅に出るための物理的な事前準備さえも必要なくなる未来が見えてきています。

<参考記事>

旅のアウトプットといえばYouTubeでVlogを残したり、記事ブログを書いたりすることが一般的です。もちろんそういった活動も、旅を通した価値の可視化であることに間違いありません。ただ、こういった手法では旅をした人の価値を社会に還元させる、とまではいかなさそうです。何らかの新たなアウトプット手法はないものでしょうか。

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Image Credit:PokemonGo

答えの一つとして、一世を風靡(び)した位置情報スタートアップ「Foursquare」の存在が挙げられます。同社は位置情報 × SNSの事業領域にゲーム性を付け加えることで、リアルRPGのような感覚を世界へ普及させました。ユーザーの位置情報を移動した後も所有し続ける環境をSNS上で整えたのです。今ではインスタのストーリーが彼らと同じ価値提供者になっていたり、NianticのPokemonGoもその延長線上と言えるでしょう

また、P2P型の旅人マーケットプレイスを提供する「TRVL」では「Together we’ve been everywhere」をビジョンに、旅のエキスパートが集まる市場となることを目指しています。同マーケットプレイスでは、旅のエキスパート(旅先に関しての知識が豊富)が個人のエージェントとなれ、旅へのアドバイス・予約までを担当しコミッションフィーを稼げる仕組みとなっています。今まで旅人を自称しTripAdvisorなどでコメントをたくさん書いていた層と考えると分かりやすいでしょう。

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もうひとつの答えとして旅を通じた人材を育成しようという動きもあります。日本のトラベルスタートアップ「TABIPPO」はちょっと変わったキャリア育成プログラムをスタートさせました。TABIPPOが昨年より実施する人材育成プログラム「POOLO」の定義は、「旅をした経験を社会に還元する、次世代を創るアンバサダーコミュニティー」です。まさに「旅 × パッションエコノミー」を体現したものと言えます。

具体的には、旅の経験が豊富な参加者が集まり、議論する場を通してグローバルで活躍すために本当に必要なマインドセット・スキルを共有していくプログラムとなっています。世界中を旅した個人だからこそ得られる価値観や視点ではないでしょうか。

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POOLOが考える旅を通じたグローバル人材の定義

さて、旅人がその場その時で感じたある場所での経験は、表現の仕方によっては身分証明書と同じような「信頼」になるのではと感じています。

いくつかのトラベル・スタートアップたちは旅人である価値を表現し始めています。パッション・エコノミーがこれからさらに注目されることになれば、その市場には魅力的なチャンスが生まれることになるのは確実でしょう。

しかしこの市場に特化したスタートアップは多くありません。先日a16zから発表のあった「The a16z Marketplace 100」におけるトラベル領域もそのほとんどが、OTAと民泊でした

とはいえ、私たちがAirbnbを既に珍しがらなくなったように、市場は既に新しい価値提供ができるサービスを求めています。この点において、パッションエコノミー文脈とつながりの強い、「旅の価値表現」は注目され始めるのではないでしょうか。

「UberEats労働問題」で考えるギグ・ワークのこれからと「パッションエコノミー」

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まだ記憶に新しいかと思いますが、11月20日にUberEatsは日本法人設立に合わせて、同プラットフォームのプロバイダーとして活動する配達員の報酬カットを公表しました。本稿では2020年代にも拡大するであろう、個人の働き方、ギグワークの問題点について少し考察してみたいと思います。 何が発生したのか:配達員の収入は、配送距離などに応じた基本報酬に加え、配達回数などに応じたボーナス分で構成されています…

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Image Credit: UberEats

まだ記憶に新しいかと思いますが、11月20日にUberEatsは日本法人設立に合わせて、同プラットフォームのプロバイダーとして活動する配達員の報酬カットを公表しました。本稿では2020年代にも拡大するであろう、個人の働き方、ギグワークの問題点について少し考察してみたいと思います。

何が発生したのか:配達員の収入は、配送距離などに応じた基本報酬に加え、配達回数などに応じたボーナス分で構成されています。今回カットされたのは主に基本報酬の方です。

具体的には、配達員が店で商品を受け取った際の「受け取り料金」が300円から265円に。注文者に商品を渡す「受け渡し料金」が170円から125円。店から配達先までの距離に応じた「距離報酬」が150円から60円(1キロあたり)に引き下げられました。

同時に、UberEatsが徴収するサービス手数料が35%から10%に減少し、件数をこなすほどに一定のペースで受け取れる「インセンティブ報酬」が増加するとのプラスの変更がなされたため、UberEats側は「改定が配達員の収入に影響を与えることは想定していない」と主張しています。

これに対し12月5日、UberEatsの配達員により結成された「ウーバー・イーツ・ユニオン」は抗議の一環として記者会見を開き、上述の改定の撤回及びUberEats側に、同ユニオンと団体交渉を応じることを求めました。

同ユニオンは、上述の低い報酬・運営の透明性の欠如に関する批判以外にも、配達員が業務内の事故により怪我・病気を患った際の労災保険や医療費の保証、休業を余儀なくされた場合の補償などを要求しています。

これに対し、UberEats日本法人は一貫して「配達員は労働者ではなく個人事業主であるため、団体交渉に応じる法的義務はない」と公表して対応を拒否しています。ちなみにUberEatsは2019年101日、ドライバーの業務中の傷害に対する補償制度を開始していることから、委託業務に関連する一定のサポートはしているようです。

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Image Credit : ウーバー・イーツ・ユニオン

何が問題なのか:UberEats配達員は「労働者」か「個人事業主」か

さて、以上のニュースを踏まえると「なぜ配達員は個人事業主であるにも関わらず、”ウーバー・イーツ・ユニオン”という労働組合を結成し、雇用者としての保険・補償を求め、団体交渉を申し込んでいるのだろうか?」といった疑問が湧いてきます。

UberEatsの配達員は「誰でもできる(市場における希少性が極めて低い)仕事」です。誰でもできる仕事は、すなわち誰でも参入可能で、コモディティ化しやすいという特徴があります。市場原理として、価値(対価)が低下するという危険に晒されることになります。

そこでこういった危険を回避するため、専門性がそこまで高くない人々は、一般的には賃金・労働環境に関し雇用者への交渉余地のある従業員として働き、労働組合に加入することで、法的な面を含めて自身の生活の安全を守るわけです。

さて、以上を踏まえると、UberEatsの配達員は明らかに非熟練型のサービス業なので、個人事業主としてではなく、きちんと労働者として扱われるべきではないか、と考えることもできます。

実際に労働者という概念は、ある業務が実質的に労働者性を持つか否かによって決まるため、仮に配達員が法的に労働者認定されるのであれば、UberEatsは対応を講じる必要が生じます。

ですが、この判断が非常に難しいのです。Ubereatsの配達員が労働基準法における労働者に適応されるかは、依頼主との間にどれだけ使用従属関係があるか、どれだけ自律性の高い働き方をしているかという一定の基準に従って定められます。

しかしその法的根拠が、別の法律である労組法との間で微妙に異なっていたり、労働者性と呼ばれる判断基準(※参考)が複雑・曖昧であるため、明確に労働者か個人事業主かを判断することが困難だとされているのです。

※本件に関する専門家による参考解説記事(Yahoo! ニュース)

よって現在では、過去数年の同様の労働問題においては、一概に労働者の定義を定め適応するのではなく、個別事例ごとの判断が最も合理的だという見方がなされていると言います。

したがって、今後のUberEatsとユニオンの動向や交渉(場合によっては訴訟)の結果が待たれます。法的見解により配達員が労働者認定をされるのか、または新しい枠組みが制定されるのかといった決定は、同社の事業が拡大した数年後の未来に、確実に待ち受けています。

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Image Credit : ウーバー・イーツ・ユニオン

Uberの苦境と、UberEatsの今後

海外の判例に目を向けることも大切です。実は上述の問題・争議は既に5年以上前から世界中で起こっている現象で、何も真新しいことではありません。Uber社が米証券当局に提出した上場申請書類の中では、サービスを担う運転手の一部から雇用関係の認定や、損害賠償を求める訴訟を数多く起こされているという事実もあります。

これはUberEatsではなくUberの話ですが、例えば英国の雇用審判所はある訴訟の中で、Uberのドライバーは自営業者ではなく労働者であると認定しています。また、仏最高裁も料理配達サービスの運転手はウーバーと「従属関係にある」と雇用関係を示唆する判断を示しています。

ですが、このような訴訟にUberが屈してしまうと、これまで無視してきた規制遵守のコスト・ドライバーへ支払う報酬額が増加し、事業モデルそのものが成り立たなくなる危険性があります。このような問題の影響もあり、現在のUberの株価は2019年の春に公開して以来、下降傾向です。

さて、話を少し広げ過ぎてしまいましたが、今回のUberの報酬カットと、それに付随するユニオンの問題提起は、直近5年に世界中で問題となっていた「プラットフォーム vs プロバイダー(UberEatsの場合の配達員)闘争」が、ついに日本上陸を果たした初めの一歩にも思えます。

ギグ・エコノミーのこれから

最後に、Uberのようなプラットホームのアンチテーゼとして期待できる新しいプラットホームの在り方として、2つのトレンドを紹介します。

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Photo by Valeria Ushakova on Pexels.com

一つは”パッションエコノミー”と呼ばれる、ネットワーク内のプロバイダーへより権限・裁量を与えることで、各提供者による差別化を可能にするSaaSモデルのプラットフォーム。豊富な営業ツールを提供し、料金設定の自由化を行うことで、プロバイダーのユニーク性・直接的な営業スタイルを促進します。

結果的にコモディティ化しづらく、サービス価格設定をプラットフォーム側に握られない健全なプラットフォームが形成されます。

<参考記事>

そしてもう一つが、利益を目指さない、調和を重視する”協同組合型”のプラットフォーム。ローカルな組合組織を形成し、手数料は低く設定することでプロバイダーを保護。またサービスの仕様変更などに関連するコミュニティの意思決定も、参加者全員の協議・投票により民主的に決定されるプラットフォーム。

事例としては、AirBnBの代替案としての「FairBnB」や家事代行シェアリング「Upandgo」、ドイツのオンライン・マーケットプレイス「FairMond」などがあげられます。どれも組合型を志向しており、共同運営・正当な収入などの利点を重視しています。

以上2つの事例は、Uberのようにスケールするかと言われれば難しいでしょう。前者は専門性や能力主義に基づいているため、急速なプロバイダーの増加を促すことはできません。一方で後者はスケールを目指しておらず、またガバナンスの構造上意思決定プロセスに時間がかかるという弱点を持ちます。

ですが、Uberのような行き過ぎたプラットフォーム・モデルに対抗するプロテスト運動として、オルタナティブなプラットフォーム・モデルとして非常に魅力的で、その発展には期待が高まります。

サブスク銀行からパッション・エコノミー、注目あつまる「世界の250社」まとめ(2/4)

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1編ではエンタープライズ、フード領域を見てきました。2編では銀行業界を中心に起きている欧米市場の動きや、教育市場で起きている金銭ハードルをなくす動向を見ていきます。 エンタープライズ(1編) フード(1編) フィンテック(本編) 教育(本編) ギグ経済(本編) ヘルスケア(3編) メディア(3編) トラベル(3編) 不動産(4編) 小売(4編) モビリティ(4編) 新興“バンク”の立ち上がり 「A…

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1編ではエンタープライズ、フード領域を見てきました。2編では銀行業界を中心に起きている欧米市場の動きや、教育市場で起きている金銭ハードルをなくす動向を見ていきます。

  • エンタープライズ(1編)
  • フード(1編)
  • フィンテック(本編)
  • 教育(本編)
  • ギグ経済(本編)
  • ヘルスケア(3編)
  • メディア(3編)
  • トラベル(3編)
  • 不動産(4編)
  • 小売(4編)
  • モビリティ(4編)

新興“バンク”の立ち上がり

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Image Credit: MoneyLion
  • Atom Bank」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にイギリスで創業し、7月に5,000万ユーロの資金調達を非公開ラウンドで実施。Woodford Patient Capital Trust、BBVA、Toscafund、Perscitus LLPらがラウンドに参加。
  • Current」は若者向けモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2015年にニューヨークで創業し、10月に2,000万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Wellington Management、Galaxy Digital EOSらがラウンドに参加。
  • Chime」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にサンフランシスコで創業し、12月に5億ドルの資金調達をシリーズEラウンドで実施。DST Globalがリード投資を務めた。
  • Koho」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にトロントで創業し、11月に2,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Portag3 Venturesがリードを務め、Greyhound Capitalらが参加。
  • Mercury」はスタートアップ向けのモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。サンフランシスコで創業し、9月に2,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen Horowitz、Naval Ravikantらがラウンドに参加。
  • MoneyLion」は会員制モバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にニューヨークで創業し、7月に1億ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Edison PartnersとGreenspring Associatesが共同でリード投資を務めた。
  • Monzo」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2015年にロンドンで創業し、6月に1.13億ユーロの資金調達をシリーズFラウンドで実施。YC’s Continuity fundがリード投資を務めた。
  • Nubank」はラテンアメリカ地域にてモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にブラジルで創業し、7月に4億ドルの資金調達を実施。TCVがリード投資を務めた。
  • N26」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にベルリンで創業し、7月に1.7億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。 Insight Venture Partnersがリードを務め、GICがラウンドに参加。
  • Point」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、1月に120万ドルの資金調達をプレシードラウンドで実施。
  • Rho Business」はスタートアップ向けのモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にニューヨークで創業し、10月に490万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Inspired Capitalがリード投資を務めた。
  • Starling Bank」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にロンドンで創業し、10月に3,000万ユーロの資金調達を実施。Merian Chrysalisがリードを務め、 JTCらがラウンドに参加。
  • Step」は若者向けモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にパロアルトで創業し、7月に2,250万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Stripeがリード投資を務めた。
  • Uala」はラテンアメリカ地域にてモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2017年にアルゼンチンで創業し、11月に1.5億ドルの資金調達を実施。TencentとSoftBank’s Innovation Fundが共同でリード投資を務めた。
  • Joust Labs」は個人事業主向けのオンライン・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2017年にオースティンで創業し、8月に260万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。PTB Venturesがリードを務め、Accion Venture Lab、Financial Venture Studio、Techstarsがラウンドに参加。
  • Open」はインドにてモバイル・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2017年にバンガロールで創業し、6月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Tiger Global Managementがリードを務め、Tanglin Venture Partners Advisors、3one4 Capital、Speedinvest、BetterCapital AngelList Syndicateがラウンドに参加。
  • Oxygen」は個人事業主向けのオンライン・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、1月に550万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Y Combinator、Base Ventures、The House Fundらがラウンドに参加。
  • Starship」はモバイル・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2016年にニューヨークで創業し、12月に700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Valar Venturesがリード投資を務めた。

新興バンクの調達案件が多数登場してきました。2015年前後に登場した銀行スタートアップたちは、ほぼ同じコンセプトで事業展開を始め、市場はすでにレッドオーシャン化。欧米は規制も比較的緩く、銀行ライセンスを取得し、自社で当座・普通預金口座やローン事業を展開する「チャレンジャーバンク」が急速に増えています。

一方、銀行ライセンスを持たずに、既存銀行のサービスを統合して新たなサービスとして昇華させる「ネオバンク」はやや下火な印象です。なお、ネオバンクは1編で紹介したAPIを通じて銀行サービスを引き出しています。

レッドオーシャン市場では、攻め方が2つ挙げられます。1つは地域特化。米国では先行者利益を積みつつある「Chime」が市場をリードしています。同社のような先行者利益を得るために、南米やアフリカ地域での市場シェアをいち早く獲得する動きが目立ちます。

もう1つはデモグラフィック特化。主に銀行サービスへのアクセス権を持たなかった中高生に向けた銀行サービスが成長を遂げています。こうした銀行に共通することは、1編の冒頭で触れたアクセシビリティに焦点を当てている点です。

Z世代の若者はクレジットヒストリーを持たないことから、クレジットカードを発行できなかったり、適切な年齢になるまで気軽に銀行サービスにアクセスできない課題意識を持っていました。Z世代ユーザーのユニークな課題意識は、大学を卒業したミレニアル世代以上のペインを持ちます。

この課題を解決するために動いているのが、若者向け新興バンク「Current」に代表される企業です。また、スタートアップや個人事業主向けに特化することで、利用シチュエーションを限定させて人気を得ている、「Mercury」や「Oxygen」などの銀行も登場しています。こうしたデモグラフィック特化の事業アイデアでニッチ領域を独占する銀行サービスに商機が生まれています。

リストの中で興味深い事例が、「MoneyLion」の推し進める“Netflix for banking”に関する事業コンセプト。同社は「Core」「Plus」「Instacash」の3つのプランを元に会員制度を敷き、月額9.99 – 19.99の範囲でユーザーから収益化します。

銀行サービスは一般的にレンディングビジネスで収益化をしていると考えられますが、サブスクリプションモデルを導入することで、安定した収益構造を作り上げていると想像できます。銀行サービスはスイッチコストが多くかかるため、競合へ逃げることはあまりないはずです。

そのため、事業ベースをサブスクリプションにすることで、高いLTVを収益に直結させられる算段です。ユーザーにとっては必要なサービスだけ引き出せるため、多量なサービスをどう選べば良いのかわからなくなる複雑性や、サービスの過剰供給を防げるメリットを選べます。日本でも“サブスク銀行”の業態は登場しても不思議ではなさそうです。

カードの普及

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Image Credit: Deserve
  • Deserve」は若者向けにクレジットカードを提供。2013年にメンローパークで創業し、11月に5,000万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Goldman Sachsがリード投資を務めた。
  • Mitto」はZ世代向けにプリペイド・デビットカードを提供。バルセロナで創業し、9月に200万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。InnoCells、Athos Capitalらがラウンドに参加。
  • Petal」はクレジットヒストリーの無い人向けにクレジットカードを提供。。2016年にニューヨークで創業し、1月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Valar Venturesがリード投資を務めた。
  • Ramp Financial」は法人向けカードを提供。ニューヨークで創業し、8月に700万ドルの資金調達を実施。Founders Fund、BoxGroup、Coatue Managementがラウンドに参加。
  • Tribal」は法人向けカードを提供。2016年にサンノゼで創業し、12月に550万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。BECO CapitalとGlobal Venturesが共同でリードを務め、Endure Capital、500 Startups、Valve VC、AR Ventures、Off The Grid Ventures、Rising Tide Fund、RiseUp、Tribe Capitalがラウンドに参加。

先述した銀行サービスにはカードが必ず付いてきますが、この項ではカード発行だけに特化したスタートアップを紹介します。なかでも「Deserve」の動きは注目です。同社はZ世代向けに決済カードを発行する特化型ビジネスから始まりました。若者向けという金融市場の“ラストマイル”へ参入したことから事業を急拡大させてきたのです。

なお、ユーザーの親御さんが手軽に取引を管理できるようにモバイル体験を最適化させています。カードと口座ダッシュボードをモバイル時代に適応させたのがDeserveでした。

現在は全世代向けにカードを発行し、“Credit Card as a Service”をコンセプトに掲げ、あらゆるブランドが手軽にカードとダッシュボードを利用できるオープンプラットフォームになろうとしているのです。しかし、この事業方針は1編で紹介した決済カード発行APIを提供する「Galileo」と競合になります。ユーザー基盤を着実に増やしてブランド力を上げてきたDeserveと、API事業に特化したGalileoのどちらが市場覇権を握るのかに注目が集まります。

Deserveと同じ事業コンセプトを法人向けに展開するのが「Ramp Financial」や「Tribal」です。費用立て替えなどの厄介なプロセスを省くため、各従業員にカードを発行して、マネージャーが利用状況を管理できるUXを提供します。

これは親子向けのカード利用シーンとほぼ同じ関係と言えるでしょう。Deserveに通じる業態は、課題解決ポイントを上手く突いていることから、Ramp FinancialやTribalのように他領域でも活用できますし、日本でも十分に通用するユースケースだと感じます。

金回りの改善

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Image Credit: Otis
  • Capital」は500万ドルからのデットファイナンスサービスを提供。ニューヨークで創業し、10月に500万ドルの資金調達を実施。Greycroft, Future Ventures、Wavemaker Ventures、 Disruptiveがラウンドに参加。
  • CoinList」は投資家と仮想通貨プロジェクトを繋ぐマッチングサービスを展開。2017年にサンフランシスコで創業し、10月に1,000万ドルの資金調達を非公開ラウンドで実施。Polychain Capitalがリードを務め、Jack Dorsey氏がラウンドに参加。
  • Happy Money」はクレジット債務返済サポートサービスを提供。2009年にカリフォルニア州で創業し、9月に7000万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。CMFG Venturesがリード投資を務めた。
  • Otis」は若者向けにアート作品の所有権投資プラットフォームを提供。2018年にニューヨークで創業し、12月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Maveronがリード投資を務めた。
  • PayJoy」は途上国のモバイルユーザー向けにクレジットヒストリー構築サービスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、5月に2,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Greylock Partnersがリードを務め、Union Square Ventures、EchoVC、Core Innovation Capitalがラウンドに参加。
  • PTO Exchange」 は従業員の未消化有給休暇分を換金するサービスを提供。2013年にワシントン州で創業し、8月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。WestRiver Groupがラウンドに参加。
  • Salaryo」はコワーキングスペースの利用者向けにオフィス敷金のレンディングサービスを提供。2017年にニューヨークで創業し、8月に550万ドルの資金調達を実施。Ruby Ventures とMichael Ullmann’s investment groupがラウンドに参加。
  • SeedLegals」はスタートアップの資金調達および資本管理向けリーガルプラットフォームを提供。2016年にロンドンで創業し、3月に400万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリードを務め、Kima Ventures、The Family、Seedcampがランドに参加。
  • Uncapped」はスタートアップ向けに収益ベースの資金提供サービスを提供。2019年にロンドンで創業し、12月に1,000万ユーロをシードラウンドで実施。Global Founders Capital、White Star Capitalらがラウンドに参加。
  • Uplift」は後払い/分轄払い旅行サービスを提供。2014年にメンローパークで創業し、12月に2.5億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Madrone Capital Partnersがリードを務め、Draper Nexus、Ridge Ventures、Highgate Ventures、Barton Asset Management、PAR Capitalがラウンドに参加。
  • Zestful」はカスタマイズ可能な従業員福利厚生プログラムを提供。2016年にデンバーで創業し、9月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Thrive Capitalがリードを務め、Box Group、Y Combinator、Matchstick Ventures、Third Kind Capital、Shrug Capitalがラウンドに参加。

本項ではお金との新しい接点を作り、流動性を向上させているスタートアップをまとめています。特に興味深いスタートアップは3つほど。1つはZ世代向けアート作品の投資プラットフォーム「Otis」。SNS時代に評価されるストリームグッズや、現代アート作品への投資を可能としています。若者に人気が出るであろうアート作品を、高い流動性を持つ少額投資商材として提供。

Z世代が持つ価値観に合わせて、投資商材を最適化させているのがOtisです。モバイル投資プラットフォーム「Robinhood」や「Stash」にも通じるUXを持っている点は、日本でも通用するかもしれません。

2つ目は使わなかった有給休暇期間を換金できるサービス「PTO Exchange」。日本と同様に未消化分の有給休暇が溜まれば、転職が決まったのちに消化をして、出勤しない期間が長く発生します。これは企業にとって、新規採用サイクルが滞ってしまうデメリットを背負います。そこでPTO Exchangeが登場しました。

同社は消化しきれない有給休暇を換金して、企業採用の新陳代謝を促進させるソリューションを提供。日本では無理やりにでも有給を使わされる文化が根付いていると思います。ただ、効率的に有給消化をして休みを取るマインドセットも大切ですが、現実はそうはいかないはず。“生産性革命”が叫ばれている今、PTOと同じ仕組みを日本のベンチャーが取り組んでみると面白いかもしれません。

最後は「Zestful」。企業が各従業員に支給する福利厚生額の用途を、従業員側で自由に利用できるサービスです。従来、福利厚生サービスは限定パッケージ内のコンテンツでのみ利用可能でした。しかし、マッサージや旅行割引などの型にはまったコンテンツからしか選べず、必ずしも欲しいと思える福利厚生は落ちていません。そこでZestfulは、NetflixやSpotify、Airbnbに代表されるミレニアル世代に人気のコンテンツの中から自由に選べるように、福利厚生の利用用途に柔軟性を与えました。

福利厚生を普段使うサービスに当てられることで、従業員の満足度も向上。企業側も訴求力の強い福利厚生パッケージを提示できるようになりました。

日本の福利厚生サービスは限定的、かつコンテンツが一新されていない印象であるため、日本版Zestfulには大きな商機があるかもしれません。各従業員に渡すデビットカードを発行することで、取引管理サービスとしての価値提供もできるでしょう。

多様な保険サービス

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Image Credit: Avinew
  • Avinew」は自動運転車ドライバー向けに利用量ベースの保険サービスを提供。2016年にカリフォルニア州で創業し、6月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Crosscut Venturesがリードを務め、American Family Ventures、Draper Frontier、RPM Venturesがラウンドに参加。
  • Route」は配達物トラッキングおよび購入物1%の保険サービスを提供。2018年にユタ州で創業し、11月に1,200万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Album VCとPeak Venture Capitalがラウンドに参加。
  • SafetyWing」はリモートワーカー向けの医療保険サービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、8月に350万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Foundersがリードを務め、Credit Ease Fintech FundとDG Incubationがラウンドに参加。
  • Thimble」は個人事業主向けに短期ビジネス保険サービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、10月に2,200万ドルをシリーズAラウンドで実施。IACがリードを務め、Slow Ventures、AXA Venture Partners、Open Oceanがラウンドに参加。
  • Vouch Insurance」はスタートアップ向けのビジネス保険サービスを提供。サンフランシスコで創業し、11月に4,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Y Combinator Continuityがリード投資を務めた。
  • WorldCover」は途上国の農家向けに天候による収穫高を見込んだ安価な農業保険サービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、5月に600万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。MS&AD Venturesがリードを務め、EchoVC、Y Combinator、Western Technology Investmentがラウンドに参加。

保険市場ではAI機械学習を使い、保険額を事前予測するケースが増えている印象です。たとえば「Avinew」は、自動運転向けの新たな保険サービスを提供。ドライバーの運転速度やルート、運転地域の天候・犯罪率などのいくつかの指標データを基に保険料を自動算出します。LiDARや車載カメラを通じて得られる運転データを溜まれば、より精度高く保険料を計算できるようになるでしょう。

このように車外環境データを膨大に収集できる時代に最適化した保険サービスが登場していますので、日本の大手保険会社もいずれは同じモデルで事業を仕掛けるのではないでしょうか。また、途上国の農家向け保険サービスの「WorldCover」も、同様にAIを用いてリスクを算出しています。

「出世払い制度」の広がり

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Image Credit: Lambda School
  • Blair Finances」はISA(収入分配契約)に基づいた学費レンディングサービスを提供。2019年にサンフランシスコで創業し、8月に15万ドルの資金調達を実施。YCombinatorがラウンドに参加。
  • Goodly」は学生ローン返済を従業員福利厚生として提供。2018年にサンフランシスコで創業し、3月に1,300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Norwest Venture Partnersがリード投資を務めた。
  • FlexClub」はギグワーカー向けに自動車貸し出しプラットフォームを提供。2018年にアムステルダムで創業し、3月に120万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。CRE Venture Capitalがリード投資を務めた。
  • Kenzie Academy」はソフトウェアエンジニア養成プログラムを提供。2017年にインディアナポリスで創業し、11月に1億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Community Investment Managementがラウンドに参加。
  • Lambda School」はソフトウェアエンジニア養成プログラムを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、1月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Bedrock Capitalがリードを務め、Vy Capital、GGV Capital、Google Ventures、Y Combinator、Sound Venturesがラウンドに参加。

年々膨らみ続ける学生ローン問題を解決するのが“出世払い制度”を持った教育機関です。「Lambda School」に代表される教育機関では、学生はローン返済などに苦しむ必要がなくなり、ソフトウェアエンジニアになって高給な仕事を得るという明確な目的意識を持って授業を受けます。

一方、学校側は学生を就職させ、事前に契約した授業料を回収するまで学生との関係性は途切れることはありません。卒業後も続くカスタマーサクセスが大事になってくる長期サービスが同校のモデルです。

Lambda Schoolが採用する出世払い制度は、既存の大学機関では収益構造を抜本的に変える必要があるため取り入れられません。しかし、学生はLambdaのようなブートキャンプではなく、大学に通いたいとニーズを持っているのも確かそこで出世払いサービスのみに特化した金融機関も登場しています。「Blair Finances」は学費を肩代わりする代わり、卒業後に返済させるレンディングサービスを展開しました。

どの教育期間でも出世払いで通えるサービスですが、1学生当たりに貸し出す金額と、回収期間が非常に長い難しいモデルです。機関投資家から長期投資商材として資金を集めれば回せるモデルになるのではないでしょうか。

出世払いを採用したレンディングモデルは、ギグ経済にも波及しています。「FlexClub」はUberドライバー向けに自動車を貸し出す投資プラットフォームを展開。投資家は自動車を購入し、FlexClubを通じてドライバーに貸し出します。

週もしくは月単位で収益分配されるため、自動車を長期投資対象として運用できるモデルです。ドライバーも頭金0で自動車を所有できるため、双方にとってWin-Winの関係を構築できます。このように出世払いの考えは教育市場から始まり、他市場へと拡大を見せているのが2019年の大きな流れです。

専門学校の躍進

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Image Credit: Landit
  • Cloud Guru」はクラウドコンピューティングを学ぶためのオンライン学習コースを提供。2015年にロンドンで創業し、4月に3,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Summit Partnersがリードを務め、AirTree VenturesとElephantがラウンドに参加。
  • Empowered Education」はウェルネスコーチ育成のためのオンラインコースを提供。2015年にニューヨークで創業し、3月に800万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Rethink Educationがラウンドに参加。
  • Flockjay」はセールスマン養成向けオンラインアカデミーを運営。2018年にサンフランシスコで創業し、10月に298万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Lightspeed Venture Partners、Coatue、Y Combinator、F7、SV Angel、Index Ventures、Serena Williams氏、Will Smith氏がラウンドに参加。
  • Giblib」は医療手術に関するオンライン学習コースを提供。2015年にロサンゼルスで創業し、4月に250万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Mayo Clinic、Venture Reality Fund、Wavemaker 360、USC Marshall Venture Fund、Michelson 20MMがラウンドに参加。
  • Immersive Labs」はサイバーセキュリティに関するオンライン学習コースを提供。2017年にイギリスで創業し、11月に4,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Summit Partnersがリード投資を務めた。
  • Landit」は女性のキャリア育成のためのオンラインコースを提供。2014年にニューヨークで創業し、2月に1,300万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。WeWorkがリードを務め、New Enterprise Associates、Valo Ventures、Workday Ventures、Gingerbread Capitalがラウンドに参加。
  • Ornikar」は自動車免許取得のためのオンライン教員マッチングサービスを提供。2014年にパリで創業し、6月に4,000万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。IdinvestとBpifranceがラウンドに参加。
  • SV Academy」はビジネスディベロッパー養成プログラムを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、6月に950万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Owl Venturesがリード投資を務めた。

インターネットを用いた大規模公開オンライン講座プラットフォーム「MOOC (Massive open online course)」が広がり、市場は寡占状態。「Coursera」「Lynda.com」「Udacity」の3社を利用すれば、必要なオンライン教育コンテンツへほぼリーチできる状態だと言えます。この市場状態で次の勝ち筋を探すには、1つの分野に特化させてユーザー満足度を圧倒的に上げる以外ありません。リストにある通り、2019年は各分野で特化型オンライン教育プロバイダーが登場しました。

いずれのスタートアップもオンライン動画サービスではなく、ブートキャンプ式を採用しています。また、Serena Williams氏やWill Smith氏も出資する「Flockjay」は出世払い制度を採用しています。

各分野のプロフェッショナルの養成機関として、入学コスト0でサービスを提供するモデルが流行っている印象です。出世払いから始まったトレンドは、ソフトウェアエンジニア養成から始まりましたが、今後は専門学校分野へと幅広く広まっていくでしょう。

パッション・エコノミー文脈

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Image Credit: Outschool
  • Mighty Networks」はオンライン学習コース向けウェブサイトビュルダーを提供。2010年にパロアルトで創業し、4月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Intel CapitalとSierra Wasatchが共同でリード投資を務めた。
  • Outschool」は小学生教育コンテンツ向けライブ動画マーケットプレイスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、5月に850万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Union Square VenturesとReach Capitalが共同でリード投資を務めた。
  • Patreon」はクリエイター向け有料作品を発表するためのサブスクリプションプラットフォームを運営。2013年にサンフランシスコで創業し、7月に6,000万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Glade Brook Capitalがリード投資を務めた。
  • Substack」は有料ニュースレターを発行できるプラットフォームを運営。2017年にサンフランシスコで創業し、7月に1,530万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリード投資を務めた。
  • Tinkergarten」は幼少児向け屋外学習マーケットプレイスを提供。2014年にマサチューセッツ州で創業し、3月に2,100万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Omidyar Network、Owl Ventures、Reach Capitalがラウンドに参加。
  • Zyper」はSNSインフルエンサーがコアファンとブランドと繋がれるマーケティングプラットフォームを運営。2017年にサンフランシスコで創業し、6月に650万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Talis Capitalがリード投資を務め、 Forerunner VenturesとY Combinatorがラウンドに参加。

パッションエコノミー文脈のサービスは2019年で見逃せない動きでしょう。パッションエコノミーの大雑把な定義として、ギグワーカーが自分の個性を活かしてサービス展開できるSaaSを指します。たとえば「Outschool」はライブ動画を通じて自分の教室を持てるプラットフォームを展開。教員免許を持たない人が、手軽に高品質な動画教育サービスを提供できるSaaSです。

創造性に富んだデジタルコンテンツを世界中に発信して稼げる分野特化型SaaSが多々登場してきています。分野を問わず、自分のコンテンツを発信するためのウェブサイトを作成できる「Mighty Networks」のような業態も登場。無料のビュルダーは「Strikingly」や「Wix.com」などが有名ですが、パッションエコノミー特化のウェブサイト作成サービスに注目が集まっています。

デジタルコンテンツ提供者は大規模なオーディエンスを構築し、ニッチな趣味や特技などの情熱を効率的に収益に変えて生計を立てられます。誰もが「マイクロ起業家」になれるツールであり、私たちが現在考える「仕事」の概念を大きな変える意味合いを持ちます。このトレンドはしばらくは続くでしょう。

2編はここまでです。3編ではヘルスケアやメディアを中心に見ていきます。

パッション経済の夜明け、4000名の“創意工夫”が生み出す「新時代の個人ビジネス」

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今、個人のビジネスが大きく変わろうとしています。 a16z(アンドリーセン・ホロヴィッツ)のパートナー、Li Jinさんが、「The Passion Economy and the Future of Work(訳:パッションエコノミーと仕事の未来)」という題目でブログを掲載していました。 そちらの内容がとても共感できたため、本稿ではこれにあわせて今、個人のビジネスで巻き起こっている「あるトレンド…

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今、個人のビジネスが大きく変わろうとしています。

a16z(アンドリーセン・ホロヴィッツ)のパートナー、Li Jinさんが、「The Passion Economy and the Future of Work(訳:パッションエコノミーと仕事の未来)」という題目でブログを掲載していました。

そちらの内容がとても共感できたため、本稿ではこれにあわせて今、個人のビジネスで巻き起こっている「あるトレンド」についてご紹介したいと思います。

パッションエコノミーとは

前述のブログの内容を要約すると、Uberなどに代表されるマーケットプレースで、隙間時間にお金を稼げるようになる人が増えました。これらに象徴された経済圏をGig Economy(ギグ・エコノミー)と表現します。アメリカでは、このギグ・エコノミー経済圏に参加して個人としてお金を稼いでいる人が、労働人口の1/3を越えているそうです。

一方で、それらのプラットフォームは一貫性と効率を優先したことにより、サービス提供者のコモディティ化が進行することになります。

これに対するアンチテーゼ的な流れが「パッション・エコノミー」です。

SNSの普及により、個人がより容易に発信できるようになったことで、個性が強みとなり、自分の個性や情熱に興味を持ってくれるオーディエンスを独自に構築できるようになったことが要因です。

このような背景の中、新しいプラットフォームで必要とされることは、これまでのようなオーディエンスを集めることにフォーカスするのではなく、オーディエンスの熱量をしっかり収益に変えるための簡単な手段を提供することです。上記のブログでは、そのようなプラットフォームの共通点を挙げています。

  • ① 専門家でなくても個人でサービスを開始できる
  • ② 個性はバグではなくセールスポイントになる
  • ③ オンラインサービスの提供をカバーしている
  • ④ ビジネス成長・運営のための包括的なツールである

このような特徴を持ったサービス事例として、有料ニュースレターサービスのsubstackや、サイト作成アプリのonuniverse、Podcast配信サービスのAnchorなどを紹介されています。

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美容やトレーナーなど無形サービスを提供する個人が増加(MOSHサービスサイトより)

私たちはMOSHという、モノではなく個人の「無形サービス」を販売するECプラットフォームを提供しているのですが、実際、このような社会変化によって、国内でも個人や小さな事業者に多くのチャンスが生まれてきていると実感しています。事例として、2児の母でパーソナルスタイリストをされている方も、月商16万〜200万と大きく売上を向上させる事例が出てきています。

他にも、4000名近くの「パッション」を持った事業主たちが、SNSのみを集客経路として、様々なジャンルでしっかり収益をあげる事例が出てきています。国内でもこれらのトレンド変化を感じるようになったのですが、その兆しとして次の2点を挙げたいと思います。

マッチングの構造変化

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スマホとSNSの普及により、個人による発信は日々増加しています。twitter, instagram, youtube, tiktokなど発信媒体がどんどん増え、表現方法もより多様になっています。

従来の検索エンジンではキーワードが明確、かつ、定量的な情報とのマッチングに最適でした。一方、自分の知らないキーワードはそもそも検索しようがないので出会えません。SNSで増え続ける個人の情報は「新たな興味関心の気付き」を与えてくれるという点で新しい検索流入の扉を開いたと言えます。

これらの変化により、サービス事業者の集客は、Googleなどの検索エンジン中心のものから、SNSによる集客も大きな割合を占めるようになってきています。

言うまでもなくGoogleの検索エンジン経由のトラフィックは膨大なので、SNSに完全にリプレイスされるという意図ではありません。流入経路が分散化していくため、事業者は各流入経路をうまく活用しながら、ビジネスを拡大していくことが重要です。

SNSを中心とした興味・関心を軸としたマッチングにおいては、興味・関心の領域はより先鋭化・多様化していきます。「#ハッシュタグ」の存在によって、自分にとって、本当に興味のある情報にたどり着きやすく、また写真、動画、音声などのメディアの充実により直感的に判断しやすくなりました。

需給ニーズはより先鋭化し、多様化する未来

興味関心に近い定性的な情報にたやすくアクセスできるようになれば、予想されるのがサービス領域でのマッチングの多様化です。弊社の事例でも予約が多い方々は特徴が明確である傾向が強いです。

ニッチ化したサービス提供者とのマッチングは、旧来のプラットフォーム検索よりも、興味・嗜好を中心につながるSNSの方がUXとして優れています。今後、このトレンドは留まることはないことを考えると、ニッチ化した個人はどんどん増えていくと考えています。

身近なサービスや商品が、情熱やこだわりを持った人たちによって、提供されるような社会になっていき、オフライン・オンラインを越えてオーディエンスとのつながりをつくり、収益化を支援するサービスはより一層求められていくと考えています。

例えば、私たちのプラットフォームで パーソナルトレーニングをされているVEikoさんは、「美尻トレーナー」として美尻に特化したトレーニングを提供しています。同じく整体師のHidaoさんは「美脚整体師」という点で、これまでの画一的なサービスと異なり、自分の得意なこと、情熱を持っている領域に特化し、発信・サービス提供を行っています。

いかがだったでしょうか。

先日もギグワーカーの象徴とも言うべきフードデリバリーサービスで、依頼料金のトラブルが一部報道されていました。画一的な労働は情報化社会においてどんどん効率化される運命にあるということが凝縮されたような話題です。

創意工夫は人間だけが持ちうるオリジナリティです。これを武器に個人をエンパワメントするパッション経済は、少子高齢化や労働力の不足など、多くの課題を抱える日本社会にとって必要な考え方になると確信しています。

<参考情報>

本稿は、スマホでオフィシャルサイトが作れるサービス「mosh.jp」を運営する代表取締役、籔和弥氏(twitter: @kazuya_jam)。サービス事業者の収益化支援のため、予約、決済、顧客管理、月額サブスク、回数券などの機能を提供しているので、ぜひ興味がある方は、こちらからコンタクトされたい。