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シリーズ:リテール最前線

シリーズ:リテール最前線

コロナ禍において一気に成長角度が上がった領域、それがECだ。非接触を求められるなか、これまで来店が当たり前だった飲食店までもがデリバリー方法をオンライン化しなければならなかった。一方、小売流通に関するテクノロジーはサプライチェーンの観点からも幅広い。シリーズでその最前線となる話題を追う

シリーズ:リテール最前線の話題

AnyMind Group、複数サービスを統合プラットフォームにブランド一本化——ノーコードECやニューリテールにも進出か?

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日本をはじめアジア各国で事業展開する AnyMind Group(以下、AnyMind と略す)は21日、同社の展開する複数事業・サービスを「AnyMind」というブランドのもと、「ブランド・エネイブル・プラットフォーム」に一本化したと発表した。 同社は、2016年創業時(当時の社名は AdAsia Holdings)からの祖業であるプログラマティックバイイングやアドネットワークなどの「AdAsi…

Image credit: AnyMind Group

日本をはじめアジア各国で事業展開する AnyMind Group(以下、AnyMind と略す)は21日、同社の展開する複数事業・サービスを「AnyMind」というブランドのもと、「ブランド・エネイブル・プラットフォーム」に一本化したと発表した。

同社は、2016年創業時(当時の社名は AdAsia Holdings)からの祖業であるプログラマティックバイイングやアドネットワークなどの「AdAsia」のほか、広告主とインフルエンサーをマッチングするプラットフォーム「CastAsia」、タレントマネジメントプラットフォームの「TalentMind」の3つの柱のもと、複数サービスを自己開発または買収してきた。AnyMind という名のもとに全ての事業やサービスを配置することで、個人・法人に関わらず、あらゆるビジネスの成長を一貫支援するプラットフォームとしてブランディングを統一したいようだ。

ブランド・エネイブル・プラットフォームとは、同社が5月に発表したインフルエンサーと生産工場をつなぐ「AnyFactory」に代表されるように、「誰もがブランドになれる」世界の実現を象徴するフレーズだ。AnyMind としてブランド統一されたプラットフォーム上のさまざまな機能を使えば、誰でも生産ノウハウがなくても形あるものの生産が行え、それを広告したり、インフルエンサーマーケティングしたり、商品が企画されてから消費者の手元に届くまでのプロセスを一気通貫で対応できる。D2C やニューリテールの隆盛も相まって、モノを告知や宣伝していた人たちが、自ら作って売る側に出てきているトレンドの変化に広く応える意図があるとみられる。

「AnyFactory」のダッシュボード
Image credit: AnyMind Group

なお、AnyMind が発表した統合プラットフォームの構成図(最上図)を見ると、これまでのサービスからリブランディングされたもの以外に、「AnyShop」と「AnyLogi」という2つのサービスが追加されていることがわかる。この2つのサービスについて、同社からの発表はまだ無いが、前者については KrAsia によると BASE、STORES、Shopify のようなインスタント型のネットショップ開設サービスであることが類推できる。後者については、おそらく、フルフィルメントか物流支援サービスだろう。総合すると、ノーコード EC やニューリテール周辺を攻める可能性を窺い知ることができる。

AnyMind は現在、世界13市場に17拠点を展開し、従業員は20国籍750名以上。これまでに総額6,230万米ドルを調達している。

熱を帯びる「後払い市場」Affirmが5億ドル調達ーー購買データをどう生かす?

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ピックアップ:Affirm Raises $500M Series G Round ニュースサマリー:分割払いサービスを展開する「Affirm」は17日、シリーズGで5億ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはGICとDurable Capital Partners LPが参加し、既存投資家であるLightspeed Venture Partners、Wellington Manage…

Affirmウェブサイト

ピックアップ:Affirm Raises $500M Series G Round

ニュースサマリー:分割払いサービスを展開する「Affirm」は17日、シリーズGで5億ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはGICとDurable Capital Partners LPが参加し、既存投資家であるLightspeed Venture Partners、Wellington Management Company、Baillie Gifford、Spark Capital、Founders Fund、Fidelity Management & Research Company LLCも同ラウンドに参加している。

話題のポイント:Affirmはミレニアル・Z世代を中心に、アパレル商品をターゲットとした分割払いサービスを提供しています。最近は、家具・家電を購入可能なWalmartやDJIのECサイトでの対応を進めるなどサービスの業界をまたいで拡大している「分割払い」の代表格となりました。消費者にとっては手元にキャッシュが少なくても商品を後払いで購入できるのがメリットです。また、支払い期間も6カ月から18カ月の中から自由に選択可能なためフレキシブルなケースに対応しています。

さて、今後のAffirmの事業展開を予想すると、現段階における同社最大のアセットはクレジットスコアが低~中のデータを膨大に所有していることになります。これは、同社は本質的に見れば決済システム会社であり、「分割払い・後払い」の機能と担保をECサイトへ提供しているからです。

この点については先日、105億ドル評価を受けたスウェーデンのスタートアップ「Klarna(クラーナ)」も同様ですし、そうしたミレニアル・Z世代のデータアセットを欲しているのはモバイルバンクの「Chime」や「Step」などが思い浮かびます。両者はAffirmが保有する若者世代の購買データを得られれば、的確な融資事業を推進できるようになり、フィンテック企業として更なる事業成長を進められる可能性を秘めています。

そのため今後Affirmは新興銀行サービスとの提携を進める可能性が高いといえます。口座を持つ若い世代の信用情報を分析し、融資事業に素早く銀行各社が展開できるように手助けする横展開を目指すことが非常に理にかなっているのではないでしょうか。

共同執筆:「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏

1兆円評価の“スゴイ後払い”サービス「Klarna(クラーナ)」

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ピックアップ:Klarna now Europe’s biggest fintech unicorn at over $10 billion value ニュースサマリー:スウェーデン発のスタートアップKlarnaは9月14日、エクイティーラウンドで6億5000万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはSilver Lake Partnersが参加し、シンガポールの政府系フ…

Klarna(クラーナ)ウェブサイト

ピックアップ:Klarna now Europe’s biggest fintech unicorn at over $10 billion value

ニュースサマリー:スウェーデン発のスタートアップKlarnaは9月14日、エクイティーラウンドで6億5000万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはSilver Lake Partnersが参加し、シンガポールの政府系ファンドであるGIC、BlackRock、HMI Capitalも同ラウンドに参加している。同社はスウェーデンを拠点に、後払い決済サービスを運営。無利子の分割払いや、商品到着から30日後の事後一括払いシステムなどを提供している。同ラウンドにて、同社評価額は106億ドルに達した。

話題のポイント:ECでの支払い方法と言えば、デビット・クレジットの決済方法が一般的ですが、Klarnaでは後払いシステム「buy now, pay later」を大きく3つの方法で提供しています。4回分割、30日以内後払い、そして即時ファイナンス(貸付)です。

まず1つ目の無利子「4回払いプラン」。この決済方法を選択すれば、ユーザーは商品の価格をそのまま払いつつも、4回に決済を分割して払うことが可能となります。決済は登録するデビット・クレジットカードのいずれかより2週間ごとに自動的に引き落とされます。仮に、自身でクレジットカード付帯サービスの分割払いを利用すると、利子が必要なのでメリットがあります。

次は無利子の「30日以内・後払いプラン」。この決済方法では、ユーザーは商品到着から30日以内であれば無利子で購入することが可能です。興味深いメリットとして、購入に際しクレジットカード番号なども求められることがないので、多くの情報を提供せずともシームレスな商品購入体験を味わえる点にあります。また、後日払いではクレジットカードも選択可能なため、実質的なキャッシュの支払いは商品購入の2か月先と調整できる点もポイントでしょう。

最長36回返済のファイナンスプラン。6カ月までなら無利子

最後は購入代金を貸し付けて、6カ月から36カ月の分割返済を求めるプランです。ユーザーは利用できるECサイトで、配達先に使っている住所と電話番号などの諸情報を入力さえすれば即時でクレジット与信枠を利用することが可能となります。6カ月までのプランであれば、利子はゼロであることも注目すべきポイントです。

さて、販売店舗側のポジティブポイントですが、何より、Klarnaでは即日入金という形でフォローアップしているのが特徴です。単にクレジットカード払いだと手数料も多く取られ、実際の入金日遅れも避けられない状況でした。そしてユーザーに対してリスクフリーな分割払い・後払いオプションを提供できることはもちろんプラスの要素であることは間違いありません。

気になる手数料自体は「月額固定+トランザクションごとの少額フィー」で構成し、通常のクレジット決済より低価格に抑えているとされています。同社公式サイトによれば、Klarnaの月間アクティブユーザーは既に1000万人を超えており、全体の30%の小売りがコンバージョンレートが向上したとの結果を公表しています。現在は欧州・米国を中心とした事業展開ですが近いうちにアジア圏への進出もあるかもしれません。

共同執筆:「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏

コロナ禍でEC拡大の中、プラスチックフリーに脚光

ピックアップ:Zero Grocery Raises $3M Seed Round for Plastic-Free Grocery ニュースサマリ:プラスチックフリーの食料品宅配サービスを提供するZero Groceryは9月23日に300万ドルのシード資金を調達したことを報告している。同ラウンドはベンチャーキャピタルの1984がリードし、他にもArlan Hamilton、AVG Baseca…

画像出典:Zero Grocery 公式ホームページ

ピックアップ:Zero Grocery Raises $3M Seed Round for Plastic-Free Grocery

ニュースサマリ:プラスチックフリーの食料品宅配サービスを提供するZero Groceryは9月23日に300万ドルのシード資金を調達したことを報告している。同ラウンドはベンチャーキャピタルの1984がリードし、他にもArlan Hamilton、AVG Basecamp Fun、Bluestein Venturesなどの投資家が参加している。これにより、Zero Groceryが調達した総額は470万ドルとなった。

詳細情報:同社はCEOであるZuleyka Strasner氏が、2019年1月にカリフォルニア州バークレーを拠点に創業。Strasner氏によると、米国初のオンラインのゼロ・ウェイスト食料品店だという。同サービスでは、包装にプラスチックを使わず、リサイクル可能なガラス瓶や箱などの容器に詰められた食品を配達している。月25ドルの会費で会員となれば無料配達を利用できるが、非会員でも1回の注文につき7.99ドルで食料品を配達することができる。

  • 他の多くのネット通販と同様にコロナ禍の影響を受け同社は急激に成長。2020年2月以降、売上高は20倍に増加したという。こうした背景から2020年3月末には収益と会員数が3倍になり、70万ドルの資金調達につながった。ここで調達した資金は、フルフィルメント(受注〜配送までの一連のプロセス)キャパシティや技術の向上、従業員数の拡大に活用された。

背景:Mercatusの調査によると、パンデミックの影響でアメリカでの食料品Eコマースの売上高は2020年6月に72億ドルと過去最高を記録。2020年8月には57億ドルと一旦その数は減少したものの、新しい電子商取引の行動様式が作られたことから、2025年までに2,500億ドルに達すると予測されている。

執筆:平理沙子(Risako Taira)/編集:岩切絹代

リテールテックのフェズ、広告×販促×店頭施策を連動する一気通貫型プラットフォーム「Urumo OMO」を正式ローンチ

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広告・マーケティングと、営業・販売促進というのは、別々に施策が打たれることがしばしばだ。論より証拠、これらそれぞれの役割を担う部署は、企業の中で分かれて存在することが多い。しかし、この状況にも変化が訪れるかもしれない。D2C(direct-to-consumer)プラットフォームの台頭で、製造ノウハウを持たないブランドやインフルエンサーがモノを売れるようになった。深夜帯に放映されるテレビ局自社制作…

Image credit: Fez

広告・マーケティングと、営業・販売促進というのは、別々に施策が打たれることがしばしばだ。論より証拠、これらそれぞれの役割を担う部署は、企業の中で分かれて存在することが多い。しかし、この状況にも変化が訪れるかもしれない。D2C(direct-to-consumer)プラットフォームの台頭で、製造ノウハウを持たないブランドやインフルエンサーがモノを売れるようになった。深夜帯に放映されるテレビ局自社制作通販番組に象徴されるように、メディアは広告ではなく自ら商品を売るようになってきている。

今日紹介するフェズは、売上を伸ばすという一つの目標に対して、複数の部門が担当する施策を横断的かつ一元的に管理できるプラットフォームだ。同社は14日、逆算型 OMO(Online merges with Offline)プラットフォームの「Urumo OMO」を正式ローンチした。OMO については BRIDGE の読者も聴き慣れた言葉と思うが、逆算型とは何だろうか?

従来型のマスマーケティングでは、商品の存在を潜在顧客に認知してもらうことから始め、最終的に来店してもらい購入してもらうことを目指す。この手法の首位の座に君臨するのがテレビ CM であるわけだが、消費行動が多様化する中でマスマーケティングは必ずしもコストパフォーマンスがいいとは言えない。対して、OMO 型のマーケティングでは、最初の来店・購入を促し、それが顧客にとっての最初の商品とのタッチポイントとなって認知を深めていく。

Image credit: Fez

OMO 型マーケティングが求められる背景には、商品を作るメーカー、販売する小売業者、購入する消費者間の大きなニーズのギャップがある。メーカーはなるべく高い価格で自社商品を店頭に大量に置いてもらいたい、小売業者は複数メーカーの商品の中から売れ筋のみを選んで置きたい、そして消費者は広告に翻弄され、自分の欲しいものを手に入れられないインフォメーションオーバーロードがここでも起きているわけだ。

Urumo OMO では、ID-POS に代表される購買データ、店頭データ、ユーザの位置データを掛け合わせ分析・戦略立案。各店舗の商圏にいる潜在顧客に対してオンライン広告を流し、それを見て来店した顧客に対して、商品を店頭で手にとってもらえる体制を整える。実際にどのユーザがどの商品をどれだけ購入したか購買データと付き合わせ、これら一連の PDCA サイクルを回すことで最適解を導き出すというアプローチをとる。

Image credit: Fez

こうしたリテールテックを持ち込む対象としてフェズが選んだのは、FMCG(日用消費財)、中でも、トイレタリーや化粧品といった分野だ。代表取締役の伊丹順平氏はフェズを創業する前、P&G ジャパンで大手流通を担当し、その後、Google で消費財メーカーやリテール業界を担当。FMCG メーカーのニーズと、リテールが抱える課題の両方を身近に体感したことが、この事業の設立につながったという。Urumo OMO を使ったセールスリフト(購買向上)の壮大な実験には、複数のドラッグストアが参加している。

厚生労働省傘下の労働政策研究・研修機構が発表したデータによれば、2018年現在、就業者人口6,642万人のうち1,072万人は小売業界、つまり、リテールに従事している。インターネットが普及したとはいえ、小売全体に占める EC の割合は6.76%(経済産業省のデータ)に留まっている。伊丹氏は、データを活用したセールスリフトでオフラインリテールを伸ばすことは、労働人口低下や働き方改革が叫ばれる昨今、社会全体の生産性向上にも大きく寄与するだろう、と期待を込めた。

フェズのチーム。最前列右から4番目が代表取締役の伊丹順平氏。
Image credit: Fez

フェズは8月、ニッセイ・キャピタルと Incubate Fund US から6.3億円の調達を発表している。

この分野では、対象バーティカルが FMCG ではないが、ファッション提案 O2O サービス「FACY(フェイシー)」を運営するスタイラーが中国のテック大手 Tencent(騰訊)と組んで OMO 領域に進出することを明らかにしている。

【EC化するコンビニ】30分配達「goPuff」は次のセブンイレブンになれるか(3/3)

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載。 (前回からのつづき) データ軸:goPuffは独自予測アルゴリズムを開発しており、各拠点の在庫レベルを常に把握しているため、在庫切れや代替品の必要性のリスクを軽減しています。配達員の移動速度や地域性、悪天候などの変数に基づいて配送システムを調整しているそうです。 加えて、例えば学生の顧客がどこから…

Image Credit:goPuff

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載。

(前回からのつづき)

データ軸:goPuffは独自予測アルゴリズムを開発しており、各拠点の在庫レベルを常に把握しているため、在庫切れや代替品の必要性のリスクを軽減しています。配達員の移動速度や地域性、悪天候などの変数に基づいて配送システムを調整しているそうです。

加えて、例えば学生の顧客がどこから注文しているか(寮の部屋、図書館、パーティーなど)、何時に注文しているか、どのような種類の製品を注文しているかまで把握し、それに応じてマーケティングプランを調整できるようにしています。同社は今のところデータを販売する予定はないと言いますが、Amazonなども手を出せていない膨大な独自の価値を持っており、物流とマーケティング、両方に寄与するデータを保有することで垂直統合型の配達サービスを確立しています。

簡単に5つの戦略を紹介しましたが、今回の大型調達の後押しになったのは新規ユーザー層へアプローチできたことにありそうです。同社のパンデミック関連のレポートによると、「週に1回以上注文する顧客数は90%近くの増加、注文金額は55%増加(2019年3月比)」したとあります。

成長要因となったのが、これまであまり需要のなかった料理および美容商品の販売売上増加にあります。在宅時間が増え、DIYの機会が増えると同時に新しいカテゴリー需要が発生。こうしたトレンドを見逃さずに先述した予測アルゴリズムに組み込み、的確な量の在庫を揃えることで対応できたのがgoPuffです。

さらに、若者世代だけでなく高齢ユーザーの流入も確認されたといいます。「新規顧客の注文額は、週7日のうち5日で既存のgoPuff顧客の注文額を上回った」とあることから、可処分所得の多い年齢層の高いユーザーがお金を多く落としていると言います。パンデミックの影響でgoPuffのCACが下がり、自然流入で顧客数を増やせています。こうした新需要に迅速に応える体制がgoPuffの魅力となっていると考えられます。

今後、膨大なデータを基に自社ブランド商品を販売することでさらなる利益率向上も狙えるかもしれません。特に消費財はブランド力が差別化要因にならないため、goPuffブランドでも十分に購入されるチャンスがあります。伸び代の高い事業モデルは次なるセブンイレブンの座を射止める可能性も踏めているでしょう。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

【EC化するコンビニ】30分配達「goPuff」の戦略とは(2/3)

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(前回からのつづき)goPuffのパフォーマンスは高く、新店舗領域を立ち上げると平均5.5カ月で損益分岐点を超えるそうです。これはコンビニ利用者の50%超を占めるミレニアルおよびZ世代の需要を汲み取ってることが要因となっています。それでは具体的にどのような戦略を打っているのでしょうか。5つ簡単にご紹介します。 製品軸:まず最初に挙げられるのが、衝動買い需要を抑えた製品ラインナップです。例えば深夜の…

Image Credit:goPuff

(前回からのつづき)goPuffのパフォーマンスは高く、新店舗領域を立ち上げると平均5.5カ月で損益分岐点を超えるそうです。これはコンビニ利用者の50%超を占めるミレニアルおよびZ世代の需要を汲み取ってることが要因となっています。それでは具体的にどのような戦略を打っているのでしょうか。5つ簡単にご紹介します。

製品軸:まず最初に挙げられるのが、衝動買い需要を抑えた製品ラインナップです。例えば深夜の間食や、大事な物資を切らしてしまった時など、すぐに満たしたいニーズがあります。また、生理品やピルを含む対面でもらうには恥ずかしい一方、緊急性を要する商品需要も挙げられます。Amazonプライムの配達では2日もかかるので待てないといった消費者心理を突くべく、商品ラインナップも必要性に駆られる物を中心に揃えています。

価格軸:競合他社がダイナミック・プライシングに基づき、時間帯によって配達料金を変えています。これは収益を配達料金に頼っているため、固定価格でのサービス提供ができないデメリットを抱えているからです。一方のgoPuffは配達料で稼ぐことはせず、商品販売マージンを収益源に据えることで低価格の配達料金設定を実現できています。

goPuff はサービス提供する都市において、在庫保管するために地元の倉庫施設を所有しています。注文は倉庫から直接顧客に届くため、物流の手間が省けます。パートナー企業から商品をピックアップして配達するプロセスは経ていません。物理的な流通センターを所有しているため、サプライヤーから卸売価格で製品在庫を一括購入できます。これにより、価格が低く抑えられ、利益を得るために配送料に頼る必要がなくなる仕組みです。顧客にとっては毎回配達コストを考える手間が省け、UXとしても洗練されたものとなります。

非競合軸6,478億ドルが米国のコンビニ販売高と紹介しましたが、その内3,959億ドルが燃料販売なのだそうです。ただ、利益率は比較的低く、コンビニ全体の利益額の38%しか占めません。一方の食品販売は利益率が高いのですが、フード配達となるとUberEatsを筆頭とする大手プレイヤーを敵に回す必要が出てきます。そこでgoPuffは生鮮食料品やレストランの出来立て料理の配達にウェイトを置いていません。販売するとしても長期保存可能な冷凍食品やスナック菓子がメインです。利益率の高いカテゴリーの中でも、競合を持たない戦略が功を奏しています。(次につづく)

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

【EC化するコンビニ】生活品を30分配達「goPuff」が39億ドル評価へ(1/3)

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載。 消費財(FMCG:Fast Moving Consumer Goods)のEC販売は、世界的に見ても成長市場となっています。2018年、オンラインFMCG販売高成長率は世界平均で20%、米国では35%となっており、飛び抜けた高さを見せています。代表例がコンビニです。コンビニの店舗数は15万店超。パ…

Image Credit:goPuff

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載。

消費財(FMCG:Fast Moving Consumer Goods)のEC販売は、世界的に見ても成長市場となっています。2018年、オンラインFMCG販売高成長率は世界平均で20%、米国では35%となっており、飛び抜けた高さを見せています。代表例がコンビニです。コンビニの店舗数は15万店超。パンデミック以前には毎日1.65億人が利用していました。米国では2019年のGDP21.4兆ドルの内、約3%に相当する6,478億ドルがコンビニ市場規模となっています。2020年度のコンビニ市場規模自体はコロナの影響で減少していると推測されますが、以前から成長していたEC化は著しく進んでいると考えられます。

コンビニ・消費財EC市場には、Amazon・Instacart・Uber・Postmastes・DoorDash・SevenEleven(米国)に至るまで多数のプレイヤーが参入するレッドオーシャンとなっています。そしてこの中で頭角を現しているのが30分以内にコンビニで並ぶような生活品を配達する24時間営業のオンライン・コンビニ「goPuff」です。10月8日には3億8,000万ドルの調達を発表し、企業評価額は39億ドルとされています。

goPuffの提供価値は、競合他社より早く多くの商品の中から好きな物を届けることにあります。同社は大学生向けの生活品配達事業として開始し、夜中のふとした瞬間にアイスやスナック菓子が欲しくなった際、すぐに商品を配達する衝動買い需要を満たすサービスとして立ち上がりました。今でもこうした需要を獲得しており、配達料金一律1.95ドルと安めの設定で人気を得ています。現在、500以上の拠点を運営し、2,500以上の商品を扱っているそうです。Crunchbaseによる予想収益は年間1億ドルほどとなっていました。(次につづく)

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

Amazonの「手のひら」Key戦略:顔と手、どっちが安心?(2/2)

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顔と手のひら、どっちが安心? (前回からのつづき)貯金額を聞くのがある種タブーであるように、漏洩リスクがゼロではない銀行以外のシステムに個人と財布を親密に結びつける情報を渡すことに一切の不安がない人は少ないでしょう。それが顔ともなれば尚更です。 当然ですが、身体において一番プライバシーレベルが高い情報は顔です。パブリックな身元確認時には顔付きの証明書を要求されるように、顔と本人が持つ情報を結び付け…

顔と手のひら、どっちが安心?

Imaeg Credit:Amazon One

(前回からのつづき)貯金額を聞くのがある種タブーであるように、漏洩リスクがゼロではない銀行以外のシステムに個人と財布を親密に結びつける情報を渡すことに一切の不安がない人は少ないでしょう。それが顔ともなれば尚更です。

当然ですが、身体において一番プライバシーレベルが高い情報は顔です。パブリックな身元確認時には顔付きの証明書を要求されるように、顔と本人が持つ情報を結び付けることにはリスクが伴います。しかし、手のひらであればそのリスクを減らすことができます。

さらに、Keyの情報漏洩が起きた場合、顔情報であれば「ネットタトゥ」になるような悪用を懸念する必要があります。しかし、手のひらであれば二次的な被害を心配する必要はありません。Amazon Oneが手のひらをKeyとして採用した大きな理由はここにあります。

もちろん、深層心理で躊躇してしまうプライバシーだけが手のひらを採用した理由ではありません。本人特定能力においても手の方に優位性があります。手は高周波通しにくい身体組織において最も薄いパーツで、赤外線を用いた内部構造を把握しやすい特徴があります。そのため顔認証同様に表面形状の情報(しわ、瘢痕、隆起)に加えて内部構造(静脈、骨、軟組織)をAIによる特徴ベクトルが多い参照署名を作製することが可能になります。

この情報が仮に漏洩したとしても個人情報にたどり着くのは至難の技です。プライバシーを尊重しつつ、セキュリティの面からも手のひらは強固なKeyと言えます。

Imaeg Credit:Amazon One

つまり、多くの人が躊躇させてしまう点を避け、それだけでは個人を特定できな手のひらとクレジットカードを結んだ点にAmazon Oneの凄さがあるのです。そしてAmazon Oneは手のひら認証の技術でAmazonを新たな市場へと導く可能性を秘めています。

例えば、イベントの入場に必要なチケット。多くのイベントがウェブやアプリで処理ができるようになったものの、イベントごとに異なるサイトに情報登録が必要であったり、入場時には紙のチケットと本人確認を必要とするケースが少なくありません。仮にAmazonに登録されている情報でイベント登録が済み、Amazon Oneに入場口で手をかざすだけになれば体験として申し分ありません。

さらに、Amazonが本人認証と情報庫として浸透できれば本来のAmazonの強みを活かしてイベントチケット販売、グッズ販売を手がけることも可能となります。主催者側にとっては一貫して煩雑な管理を任せられる強力なパートナーとなるでしょう。

もちろん、本人確認をするシーンはチケットだけではありません。強弱様々な本人確認が必要な市場に切り込む武器、それがAmazon Oneなのです。

一見地味で、レジを効率化するものでもなければAmazon Goのような無人店舗の利便性を劇的に良くするものでもない単なる生体認証技術がAmazonを成長をさせるのか、Amazon Oneとどこがどのようなコラボレーションをするのか楽しみになってきました。

Amazonの「手のひら」Key戦略:あらゆるものをアンロック(1/2)

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ピックアップ:Amazon sees broad audience for its palm recognition tech ニュースサマリ:Amazonは9月29日、シアトルにある2つのAmazon Goストアで「Amazon One」という新しい手のひら認識技術を導入することを発表した。Amazon Oneは手のひらをキーとして、支払い、ポイントカードの提示など本人確認を有する場面を高速で便…

Imaeg Credit:Amazon One

ピックアップ:Amazon sees broad audience for its palm recognition tech

ニュースサマリ:Amazonは9月29日、シアトルにある2つのAmazon Goストアで「Amazon One」という新しい手のひら認識技術を導入することを発表した。Amazon Oneは手のひらをキーとして、支払い、ポイントカードの提示など本人確認を有する場面を高速で便利にする非接触型の認証デバイスである。

話題のポイント:AmazonはすでにAmazon Goで店舗での決済レスサービスを2018年から展開しています。さらに2020年3月には「Just  Walk Out」としてAmazon Goで使用されている決済レスに必要なカメラ、マイクなどのセンサーからAI、導入支援までのシステムを販売することを発表しています。

スマホだけを持って入店し、商品を取って帰るだけ。そんな体験を実現しているAmazonが今回発表したのが手の生体情報と決済情報を結びつける「Amazon One」です。確かに一度登録が完了すればAmazon Goにスマホすら持っていく必要すらなくなります。一方、人そのものが「クレジットと結ばれる」進化を遂げたこの仕組みが、果たして「Just Walk Out」を補完するだけの存在なのでしょうか。

実はAmazon Oneは小売だけをターゲットにしているわけではありません。「本人認証」に利便性と安心を与え、必要なほぼ全ての局面において最良の選択肢になろうとしています。コンピュータビジョンに対するAIの貢献もあって、顔認証はスマホに導入されるほどに普及し始めました。この流れはAmazon Goに代表するように人そのものとデジタルウォレットを結びつけます。しかし、これは人を不安にさせる原因となります。(次につづく)