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シリーズ:進化するベンチャーキャピタル

シリーズ:進化するベンチャーキャピタル

ここ数年、スタートアップエコシステムの中におけるベンチャーキャピタルの役割が変化している。いかに資金を集め、有望な起業家を発掘するかが重要だった時代から、起業家育成や事業成長などグロース重視のフェーズへ移行しつつある。このシリーズではそのシーンを切り取ってお伝えする

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シリーズ:進化するベンチャーキャピタルの話題

起業アイデアの見つけ方「3つのパターン」

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私は現在、YJキャピタルにて起業ほやほやのシードステージからIPO直前のレイターステージのスタートアップに投資をしています。 2016年8月からCode Republicというアクセラレータプログラムを開始しました。プロダクトがローンチできていない企業にEast VenturesとYJキャピタルで計700万円出資して、起業家のスタートダッシュをサポートするプログラムです。投資のカテゴリーでいうとシ…

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私は現在、YJキャピタルにて起業ほやほやのシードステージからIPO直前のレイターステージのスタートアップに投資をしています。

2016年8月からCode Republicというアクセラレータプログラムを開始しました。プロダクトがローンチできていない企業にEast VenturesとYJキャピタルで計700万円出資して、起業家のスタートダッシュをサポートするプログラムです。投資のカテゴリーでいうとシード投資に該当します。色々試行錯誤しながら、1ミリでも起業家に貢献できるプログラムを作ろうと日々取り組んでいます。

シード投資を開始して再認識したのが「起業ってこんなにも難しいのか!」という点です。

恐れ多いですが、本当にシード投資するまではそこまで実感していなかったと思います。

YJキャピタルは2012年からベンチャー投資を開始したのですが、主にシリーズA〜Cラウンド(アーリーステージ〜レイターステージ)の投資をメインに活動してきました。

シリーズAとは、プロダクトが完成し、マネタイズも証明できて、これから顧客獲得を積極的に実行するための資金が必要、という段階の資金調達ラウンドのことと一般的に言われています。大体、起業してから1〜2年後に実施するケースが多いです。(筆者注:様々な定義がありますが、詳細の説明は割愛します。詳しくはこちらのリンクを参照してください

50%以上のシード期の起業家がピボットする

話はシード投資に戻ります。

起業って滅茶苦茶難しいんですよね。シリーズAに進める会社ってそんなにないんです。色々なデータが転がっていたりしますが、私の肌感覚だと、シード>シリーズAが通過率30%、シリーズA>シリーズBが通過率30%。シード>シリーズBが要するに10%というイメージです。

しつこいですが、70%の会社はシリーズAに進めずに会社清算したり、リビングデッドになったり、受託会社として生存したり・・・。なかなか厳しいですよね。簡単じゃないです。

で、本題に入りますが、シード投資をしていると頻繁に遭遇するのが「ピボット」(ビジネスモデルの変更)です。創業時に立てた事業仮説を元にサービスを開発して、実際にローンチしてみたら想定していたほど多くの人に使ってもらえない。自分の立てた仮説が間違っていた・・・。これが日常茶飯事です。これがリアルです。

出資を受けている起業家にとって最悪の時間とも言えましょう。投資家(株主)からは「いつリターン出る?」というプレッシャーを浴びながら、新しい事業アイディアを考えなくてはならない。一番最初に考えていたアイディアへの執着が強ければ強いほど、新しいアイディアが全く思いつかないどころか、元のアイディアを見直すことでどうにかならないか諦めがつかない状況に陥り、前進できない日々が訪れます。

シード期の会社にとって、この状況に陥る確率が非常に高いです。私の経験上、50%以上のシード期の起業家がピボット(事業見直し)に直面します

しかし、一度も起業したことの無い、初心者起業家さんは「自分は絶対失敗しない」と思い込んでいます。俺をあの失敗した奴らと一緒にしないでくれよ、と。僕もこれから挑戦する希望に満ち溢れている起業家に「かなりの高確率で失敗するよ」なんて挑戦する前に言い難いです。

実態はかなりの確率で最初のアイディアで最後まで走り抜けていないケースが多いんです。kurashiruを運営するdelyは最初フードデリバリー事業やっていましたしcoincheckは昔、STORYS.JPという人生投稿サイトを運営していました。起業する前にボツになったアイディアとか数え上げたらキリがないでしょう!

成功している起業家は、失敗事例をあまり表で語らないのと、超ポジティブThinkerなので、失敗を覚えていなかったり(カウントしていない)するので、正しく語り継がれていないのが実態だったりします。

「成功してもらいたい。でも失敗確率が高い。なので、一度や二度の失敗で諦めずに、気持ちを切り替えてどんどんチャレンジする覚悟持っておこうよ」とお伝えしていこうと思います。

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新しい事業アイデアはどう作る?

さて、新しい事業アイディアを考える状況に追い込まれた起業家さん。「次のアイディア何やればいいですか?どうやって見つければいいですか?」という相談をよく受けます。また、「まだアイディアが見つかりません」と半年経過しても先に進めない起業家さんもいらっしゃいます。なかなか辛い時間です。

そもそも、一番最初に思いついた事業アイディアはどこから湧いて出てきたのか振り返ってみましょう。きっかけは大きく3パターンあると思います。

  1. 事例起点
  2. 課題起点(俗に言う「負」)
  3. 構造変化起点

(1)事例起点

事例起点は、米国や中国で流行っているサービスの日本版を考えることでアイディアの具現化を進めていくパターンです。ヤフージャパンは、米国ヤフーの日本ローカライズで大成功しましたね。最近の身近な例だと、Ladder.comをローカライズしたビズリーチなどが挙げられます。事例起点は、最先端のニュースを日々チェックする必要があります。ビジネスは誰もがチャレンジしたことがない方法で競合に情報戦で勝ち、儲けていくのが基本的な戦いです。

情報戦は最先端の情報を掴みにいくことで、ライバルを出し抜くことが可能になります。国内のライバルがチェックしていない情報源を漁ると面白いかもしれません。意外に最新の情報だけでなく、歴史を調べるアプローチもチャンスがあったりします。例えば、ハウスクリーニングってそもそも誰が一番最初に始めたのかな?誰が一番稼いでいるのかな?と深堀りしていくアプローチです。繰り返します。情報戦なのでライバルが知らない情報を分析することでチャンスが見つかるのです。

(2)課題起点

課題起点は、自分が普段から感じている既存サービスの課題だったり、社会人経験からくる特定の領域の課題だったり。自身が「あー、これ面倒臭い」と感じる課題を、「こうやったらもっと便利になるんじゃないかな?」というアプローチでビジネスアイディアを考えるパターンです。BASEの鶴岡さんはご自身ではないですが、鶴岡さんのお母様が大分で婦人服の小売業を営んでいらっしゃって楽天やAmazonに出店するのが難しいと感じている、という現場を目のあたりにし、ITリテラシーのないお母様のような方でも簡単にECショップを開設できるサービスを作ろう、というのがそもそもの始まりでした。

このパターンにおける大事なことは普段から観察力を高めていくことでしょうか。普段の会話で家族や友人が「あー、しんどい」と言っていたとしたら、その理由を追求する習慣というか意識を普段から持ち続けることが重要です。アイディアが思いつかないと言っている人は、目の前に沢山チャンスが転がっているのに注意して観察していないから見過ごしている、とも言えます。私は起業してないので、偉そうに書いていて申し訳ございません。ただ、成功している人は観察力が鋭いです、と記しておきます。

(3)構造変化起点

構造変化起点は、ユーザーの行動や環境が変化するタイミングに新しいビジネスチャンスを見つけるタイプです。ガラケーからスマホにシフトするタイミングで新しいサービスが沢山出てきたのは記憶に新しいですね。アプリで料理レシピ動画を見れるkurashiruは、その代表的な例です。変わってから準備しても良いですが、新しい環境に切り替わるタイミングでロケットスタートを切れるように、ちょっと早めから準備すると良いです。ただ、タイミングを読み違えることもあるので一定のリスクを含みますね。

VRやARなどはデバイスの浸透率に大きく左右されるので、タイミングはとても重要になってきます。難しいですね(涙)DMMの亀山社長が、1989年公開映画「バックトゥーザ・フューチャー PART2」を鑑賞し、作品の中で未来の世界が描かれているシーンで未来の人たちがテレビに向かって鑑賞したい映画の作品名を問いかけ、テレビがそれに応えてリクエストのあった作品を放映する、というシーンを見て「レンタルビデオ屋はやがてなくなる。これからはコンテンツの時代だ」とレンタルビデオ屋からピボットしたという伝説があります。

恐るべきアンテナですね。。。(驚)

以上、3つのパターンを紹介しました。あくまでも”きっかけ”ですので、実際は上記の3つの複合技になっていたりします。鋭い読者の皆さんは、3つの視点が過去、現在、未来という時間軸で分類されることに気付いたでしょうか。私も自分で書きながら、今気付きました(笑)。

「アイディアの作り方」(1998年。ジェームス・W・ヤング)では、

アイディアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもない

と記しています。ぶったまげるような新しいものってないんですよね。組み合わせが新しいだけなんです。

新しい組み合わせを作るためには、普段から”何かないかな”、と五感を研ぎ澄ませて入ってくる情報全てを事業化に置き換えていく意識が必要です。情報だけ入手しても事業化できないと情報通で終わってしまいますので。課題だって見過ごしているかもしれません。

見つけ方自体にウルトラCはありません。普段から、過去や先進事例、世の中で起きていること、将来起こりうるであろうことを因数分解して、どこにチャンスがあるのか?そうした視点を持って起業のアイディアを探してみて下さい。

Facebook、Googleを超えるアイディアが見つかりますように!

<参考記事>

本稿はベンチャーキャピタル「YJキャピタル」パートナーで代表取締役社長の堀新一郎氏によるもの。同氏に許諾をもらってMediumに掲載された記事を転載させていただいた。Twitterアカウントは@horrrrry。創業期からシリーズA達成を支援するプログラムCode Republic(コードリパブリック)では第7期を募集中

EXITというドラマ、起業家と投資家はどこで衝突するのか

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全ての投資家にとって、M&AだろうがIPOだろうがEXIT(編集部注:保有株式の売却)を迎えるときは感慨深くなる瞬間です。特にシード・アーリーステージを主戦場とする投資家にとっては、M&Aでも約2〜4年、IPOの場合約7〜8年という歳月を共にした起業家との一つの区切りになる瞬間でもあるからです。一方で感慨深さとは別に、EXITの局面というのは、それまで同じ船に乗っていた起業家と投資…

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全ての投資家にとって、M&AだろうがIPOだろうがEXIT(編集部注:保有株式の売却)を迎えるときは感慨深くなる瞬間です。特にシード・アーリーステージを主戦場とする投資家にとっては、M&Aでも約2〜4年、IPOの場合約7〜8年という歳月を共にした起業家との一つの区切りになる瞬間でもあるからです。一方で感慨深さとは別に、EXITの局面というのは、それまで同じ船に乗っていた起業家と投資家の利益にコンフリクトが生じる可能性がある場とも言えます。

先ずはIPOによるEXITのケースを見てみましょう。IPOの場合、基本的にHappyになるケースが多いのですが、典型的なコンフリクトしては2つのケースがあります。

IPOケース(1)公募価格が起業家と投資家で折り合わないケース

「上場できる時に上場する」という昔からの格言もあるように、起業家としては一旦は公募価格に関わらず上場したいという場合があります。

投資家としてはもう1年頑張ればもっと高い評価を得られるかもしれないので粘ったらいいのに、と思うこともあるのですが、最終的な意思決定は起業家に委ねられるのでこの場合はコンフリクトが生じます。もっとも、1年後に市況が変って上場そのものができなくなるケースも全然想定されるので、どちらが正しいということはないのですがとてもよくあるケースです。

とはいえ、投資家の中には、公募価格が折り合わないと優先株式の普通株式への転換に同意しないという方もいらっしゃるので、やはり、丁寧にコミュニケーションを取ることが必要になると思います(IPOでもM&AでもEXITの際には、全ての優先株を普通株に転換しなければいけません)。

IPOケース(2)公募時の売却数について折り合わないケース

こちらも結局は上記の公募価格に紐づくものですが、日本のIPOマーケットの場合、IPO時の初値から2週間くらいのレンジで高い株価がつくことが多いです。(初値天井って言葉もあるくらいですから、、)もちろん、優れた企業は長期的に高い株価を形成していくのですが、客観的な事実として、そうなっている企業の数は限定的だったりします。

その場合、投資家心理的には、初値から早いタイミングで売る方がリターンが増えるので、売出には極力応じたくない、一方、起業家側からすると資金調達も必要だが、全てを公募増資で行うと経営陣の持分比率の希薄化が大きくなってしまうので、既存投資家からの売出もある程度して欲しいという思惑があり、そこでもコンフリクトが生じます。

もちろん、上場時の流動性の確保や、VCのように“いつかは売る”、すなわち株価に影響を与える存在は売出時に極力減らしておいた方がいいという主幹事証券からの指導も入るので、最終的には双方にとっての妥協点を見出すことになるのですが。

一方、以前にも書きましたが、売出時に全てのVCが応じているケースもあります。これは、発行体側のCFOが頑張って、公募価格をそれなりに上げることに成功して、既存の投資家もまあ、納得のいく値段で売却できる環境を作っているケースです。それでも、上場してから、公募価格の2倍になっているケースなどもよくあり、やはり全部を売出に応じじる必要はなかったなぁ、、、というケースもあります。

逆に上場後すぐに下方修正で、大幅に株価が下落するケースもあったりするので、何が正しいのかは判断が難しいところではありますが。

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M&Aの場合に発生する4つのケーススタディ

次にM&Aのケースを見てみましょう。

一口にM&Aといっても、(1)投資家も含めてハッピーなケースと、(2)投資家は泣くけど起業家はハッピーなケース、(3)投資家はハッピーだが起業家が泣くケース、(4)投資家も起業家も泣くM&Aの4つのパターンがあります。1と4のケースは、良くも悪くもコンフリクトが起こりにくいです。1は当然ですが、4は明らかに“敗戦”なので諦めがつくからです。

コンフリクトが起こりやすいのは、2と3のケースです。この場合共通するのは、“微妙な金額”でのM&Aということに尽きます。

“投資家は泣くけど起業家はハッピーなケース”

例えば、直近のファイナンスが40億円のバリュエーションで3回の調達(ポストバリュエーションはそれぞれ5億、15億、45億とします)で累計10億円集めたとします。その時点での経営陣の持分比率は50%とします。ここに30億円での買収オファーがきたとします。前提として、起業家は経営株主として普通株で持っていて、投資家は全て種類株(残余財産分配権1倍の参加型)だっと仮定します。

起業家はそろそろ頃合いだなと思い、30億円という金額でも、オファーを受けるという選択肢を選んだ場合、優先株であるので全ての投資家に一定のリターンは出ます。(編集部注:優先株の場合、出資した額は分配権の倍率で優先的に分配される。さらに参加権で残った財産の分配にも参加できるため)

起業家にももちろんリターンが出ます。しかしながら、最後のラウンドで入った投資家のリターンはかなり限定的になります。それが投資後1年以内だったりすると、ファンドのLPから怒られる可能性すらあります。これが典型的に起こるコンフリクトの一例です。投資家の間でもそれなりに儲かる投資家とそうでない投資家が出るので、なかなか調整が難しくなります。とはいえ、最後は起業家の気持ち次第なので、投資家サイドも合理的な判断をせざる得なくなります。

起業家がやる気をなくなったらその時点でおしまいなので。

更に話をややこしくすると、最近多いのはVC持分だけ買い取って(それだけで50%の持分を得る前提)、経営株主である起業家の持分は引き続きステイというケースがあります。買収する側としては、起業家に更に頑張ってもらうためにもインセンティブとしてターゲットのKPIを達成したら、先の例でいくと2〜3年後に50億円の価値で残りの株を買い取るよみたいな契約をしておくような場合です。

これは買収する側としてはある意味当然のヘッジ手段だと思います。ところが、VC持分を買い取った後、半年もたたないうちに経営者持分を買い取るようなケースがあるのですが、これだと、単にVC持分だけ安く買い取って経営者持分は高く買い取るような恰好になってしまい、コンフリクトどころか大きな問題に発展する可能性もあります。こういうケースがが増えたりすると、VC側としては買収価格の妥当性を信じることができなくなり、M&AによるEXITに影響を及ぼす可能性があるのでできれば避けたいものですね。

“投資家はハッピーだが起業家が泣くケース”

投資家によっては投資契約書の中に、一般的なタームとは別の特約条項をつけているケースがあります。例えば、投資家が求めるIRRをクリアしていない場合、優先株式から普通株式に転換する比率を変えるというものです。優先株1株に対して普通株1.5株みたいなパターンです。すると先の例のような“微妙な金額”のM&Aの場合、その条項が発動する可能性が高く、結果として起業家の取り分が大きく減ってしまうことになります。

そうなるとコンフリクトどころではないですね。。

投資を受ける際は起業家の方も明るい未来を描いているので、そのような特約条項がついていてもあまり気にならないかもしれませんが、もし投資契約を締結する際にそのような特約条項がついていたら、よく考えた方がいいと思います。

長くなりましたが、投資家にとってEXITは最も大事なイベントの一つではあるのですが、長年連れ添った起業家との区切りのタイミングでもあり、コンフリクトが生じる場面でもあることがご理解頂けたと思います。少しでもそのようなコンフリクトを避けるのは、両者で力を合わせて“企業価値を上げること”に他なりません。

ということで、既存の投資先の起業家の皆さん、これから出会うであろう起業家の方々と共に真に価値のある企業を一緒に作っていけたらと思います。

<参考記事>

本稿は独立系ベンチャーキャピタル「STRIVE」共同代表パートナー、堤達生氏によるもの。起業家と投資家のみえにくい相反事例について詳しく、同氏に許諾をもらってnoteにて掲載された記事を転載させていただいた。Twitterアカウントは@tatsuken0205。スタートアップの資金調達、事業について相談したい場合の壁打ちにも応じているので、志ある方はこちらから連絡されたい

適切な紹介料で人材紹介、採用ノウハウ提供もーーグローバル・ブレインが採用支援子会社「GBHR」設立【百合本氏インタビュー】

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ニュースサマリ:ブランド刷新に続き、独立系VCのグローバル・ブレインがスタートアップの人材採用支援に乗り出す。同社は8月9日、スタートアップの人材採用に特化した子会社GBHRを設立したことを公表した。 投資先への人材紹介を中心に、ダイレクトリクルーティングやリファラルといった採用サービスの運用代行も手がける。紹介料は市場で設定されている年収の35%前後よりも低い料率に設定される見込み。本件について…

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スタートアップの採用支援会社設立にあたり電話取材に対応してくれた百合本氏(写真は昨年末の年次カンファレンス登壇時/Image Credit Masaru Ikeda)

ニュースサマリ:ブランド刷新に続き、独立系VCのグローバル・ブレインがスタートアップの人材採用支援に乗り出す。同社は8月9日、スタートアップの人材採用に特化した子会社GBHRを設立したことを公表した。

投資先への人材紹介を中心に、ダイレクトリクルーティングやリファラルといった採用サービスの運用代行も手がける。紹介料は市場で設定されている年収の35%前後よりも低い料率に設定される見込み。本件について、同社代表の百合本安彦氏にその詳細を伺った(太字の質問は全て筆者、回答は百合本氏)。

ベンチャーキャピタルが出資先の採用やバックオフィスなどをチームで支援するスタイルが国内でも広がっているが、それでも外部エージェントなどとの連携が中心になっている。法人まで設立して完全に内製とした理由は

百合本:スタートアップへの投資額は年々増加し現在年間約4000億円と言われていますが、企業が調達した資金はおおよそマーケティング費用か人材採用に活用されます。このことから、エコシステムの中で人材採用に係わる機能が重要であることは間違いありません。

私は2001年からスタートアップへの投資をしていますが、スタートアップに対する人材紹介市場は大きくなりました。他方でエージェント経由で入社した人材が数日で辞めるような事例もあります。

若いスタートアップのカルチャーフィットが原因とよく聞く

百合本:それもあると思いますが、それ以上に新規参入者が増えすぎた、というのが私の仮説です。大切な投資先企業にはホンモノのHRサービスを提供し成長してもらいたい。それがエコシステムの正常化でもあり、ひいてはGBとしての成長戦略のひとつとなります。

百合本さんが考えるスタートアップにとっての「ホンモノのHRサービス」とは

百合本:まず、人材紹介の世界では「年収の35%」が紹介フィーという基本的なルールがあります。勿論、大手企業の利益の中で、そういったビジネスが成立するのは良いかと思います。

ですが、スタートアップとしてはどうでしょうか?まだサービスが軌道に乗る前であり、毎月赤字な中でVCから調達した資金が数億、数十億円とあるからといっても、PLが赤なのだから削れるものなら削りたいはずです。

具体的にどのような効率化を提供する

百合本:原則、候補者獲得にかかった原価分のみを対価とする考え方です。例えば幹部クラスを年収1000万円で採用した場合、先ほどのルールであれば350万円の紹介フィーが発生しますが、GBHRの場合は30万円で済むはずです。

求職者のスカウト媒体の利用料金並みに引き下げる

百合本:価格だけではありません。スタートアップ自身が採用力をつける、という視点も重要です。

メルカリなどリファラルによる組織的な採用カルチャーを育てている事例も多くなってきた

百合本:残念ながらエージェント活用に頼り切っている会社の場合、自社に求職者をアトラクトするノウハウや候補者プールも溜まっていきません。ノウハウもプールもエージェント会社に集約されてしまうのです。そのため、自社採用方針や、ビズリーチ・Wantedlyといった採用サービスの運用代行なども当初は無料で提供する予定です。

即効性のある紹介とリファラルや採用プールなどの運用代行を組み合わせる

百合本:実はこれが一番即効性が高く、運用代行サービスの試用期間でひと月に30名以上もの優秀人材と面談設定できた実績もあります。これはGB本体でも試しましたが、比較的採用ハードルが高い弊社でも半年で既に3名採用決定が出ました。

エージェント会社の視点からいくと、スタートアップのような顧客に対して30名以上の人材を推薦できる会社はほとんどなく、仮にできたとしてもごく一部の企業に対してのみだと思います。紹介も質を求めれば量まではカバーできません。そこで、採用媒体の運用代行も必要なのです。

こういった紹介や採用媒体の運用代行のようなサービスは支援先以外にも提供する?

百合本:はい、GBの投資先を含め、すべてのスタートアップの人材採用支援の一環として展開していきます。

国内企業全体の人材流通を考えると既存ビジネスも重要だが、スタートアップに限って言えば、別のエコシステムがあった方が望ましいと

百合本:そこがポイントです。私たちは日本のスタートアップの人材採用力の底上げをしたい。勿論優秀な採用担当者がいる会社が多いですが、やはり業界全体としてまだまだ足りていません。

また、VCとしてお金以外の価値をどう出していくか、これも大きなテーマです。その一つのソリューションとしてHRを軸にしました。上質な人材紹介ビジネスを提供すると共に、更に入り込んで採用媒体の運用代行も提供する。

そもそも米国にはSequoiaやa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)のように人材採用に注力するしているVCが存在します。そのため、日本国内でも投資×HRというのはここ数年VC業界でひとつのテーマだったものの、様々な理由でそれは実現できずにいました。それを今回GBHRで実現し、日本のエコシステムに貢献できればと思います。

ありがとうございました。

話題のポイント:今年に入ってスタートアップの支援をする独立系VCの動きがいくつかありました。私も各社取材させていただいたのですが、取り組みの重要ポイントとしてみなさんが挙げていたのが「支援先の採用強化」です。

それぞれ専門のリクルーターやチームを揃えるだけでなく、一定レベルの人材については採用面接などにキャピタリスト自身も入ってカルチャーフィットを求めるなど、相当解像度の高い手法をそれぞれ編み出している印象でした。

百合本さんも言及していましたが、紹介そのものはもちろん、それ以上に「採用ノウハウのインストール」こそ、スタートアップ側が血肉にできる最高の支援なのかもしれません。

一方で、外部の人材エージェントを使ってしまうと、どうしようもなくなってしまうのが手数料の料率です。特に限られたリソースで優秀な人材を採用することが至上命題となるスタートアップにとって、高額な手数料は色々なものを圧迫しますからこの手法は確かに明快です。

国内のVCもスタートアップ同様、ものすごいスピードでアップデートがかかっているので、さらに差別化が進みそうです。

日本でも、VCによる出資先スタートアップ向けダイレクトリクルーティングが増える兆し

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THE BRIDGE の読者には釈迦に説法かもしれないが、スタートアップが VC などから調達した資金は、人材確保やオフィス移転に使われることが多い。生産設備などよりも人材こそが資本と言えるスタートアップにとって、これは正しい動きだろう。その需要に呼応するかのように、HR テックを中心とするスタートアップが活気づいていることもまた事実だ。 一方、労働人口が減少する中においては、母数が減る以上、人材…

Image credit: 123RF / convisum

THE BRIDGE の読者には釈迦に説法かもしれないが、スタートアップが VC などから調達した資金は、人材確保やオフィス移転に使われることが多い。生産設備などよりも人材こそが資本と言えるスタートアップにとって、これは正しい動きだろう。その需要に呼応するかのように、HR テックを中心とするスタートアップが活気づいていることもまた事実だ。

一方、労働人口が減少する中においては、母数が減る以上、人材獲得が激化することは想像に難くない。資金は調達できても、その資金を使って欲しい人材が調達できないとなると、スタートアップの成長を阻害しかねない。一部の人材エージェントは、これまでも VC と組んで、その VC の出資先スタートアップ複数の人材調達を支援する活動を営んできたが、最近、VC 自らが出資先のリクルーティング買って出る動きが顕著化しつつある。

VC テラスのしくみ
Image credit: Amateras

2011年に創業、その後、スタートアップ CxO 転職サイト「amateras online」を運営してきたアマテラスは今月初め、VC 向けに出資先スタートアップのリクルーティングが可能となる新サービス「VC テラス」をローンチした。VC が出資先のリクルーティングを代行するというスキーム上、利用する VC が職業紹介事業免許を取得する必要は生じるが(情報閲覧のみの場合は免許不要)、HR 部門を持たないスタートアップや CRO の業務軽減が可能で、手数料も人材採用時・成功報酬型の100万円(一人当たり税別)と、業界水準よりは割安な価格帯を実現している。現在、国内 VC 12社の名前がユーザとして開示されている。

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IF Talent Network
Image credit: Incubate Fund

先週には、インキュベイトファンドが採用支援 SaaS「TalentCloud」を活用した「IF Talent Network」なるしくみを正式にローンチさせた。基本的にはインキュベイトファンドが出資するスタートアップに特化した採用支援サービスが中心で、スタートアップへの転職に興味を持つ潜在層を対象にイベントを行うなどして、オーガニックにユーザ(採用候補者)を集めていく計画。正式ローンチ段階でインキュベイトファンド出資先のうちスタートアップ40社、206件の案件情報が IF Talent Network 上に公開されているという。

インキュベイトファンドでは、2017年に VC 出身で人材紹介エージェント複数社での勤務経験を持つ壁谷俊則氏が入社。壁谷氏が HR 業務専任の形で、出資先スタートアップの人材採用を支援してきた。今年3月に VC としては初めて職業紹介事業免許を取得し、今月に入って、この人材採用支援制度を具体的なサービスとして打ち出した形だ。

シードファンドが増える中で内製の人材支援のしくみがあることは、スタートアップにとって相談相手を選ぶ上でのきっかけになり得る。また、出資先複数の中から適職ポジションを提案したり、あるスタートアップにいた人材が別のスタートアップに転職する流れでユーザ獲得コストを下げたり、スタートアップ失敗時に人材にとってのセーフネットとして働いたりするなど、副次的な効果も期待できるだろう。

VC が内製的に出資先スタートアップをダイレクトリクルーティングする動きは、アメリカにおいては珍しいものではなく、2009年頃から Andreesen Horowitz を筆頭に顕著化する動きがあった。近年では多くのシードアーリー VC が出資先スタートアップを支援する HR 担当者を社内に置いている。このような動きは今後、日本においてもシード VC 全般で加速するだろう。VC は出資先の HR テックスタートアップや人材エージェントなどの協力を得、スタートアップでの仕事を求む人材のコミュニティを、オフライン・オンラインで作り上げていくことになるだろう。

<参考文献>