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注目集まる「暗号資産カストディ」サービス、ベルリン拠点のFinoaが資金調達

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ピックアップ:Berlin-based Finoa closes multi-million seed funding to transform the digital asset sector ニュースサマリー:ベルリンを拠点とする暗号資産カストディ・スタートアップ「Finoa」がシードラウンドにて、Venture Starsやcoparion、Signature Ventures、Serial…

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Image Credit : Finoa

ピックアップBerlin-based Finoa closes multi-million seed funding to transform the digital asset sector

ニュースサマリー:ベルリンを拠点とする暗号資産カストディ・スタートアップ「Finoa」がシードラウンドにて、Venture Starsやcoparion、Signature Ventures、Serial-Entrepreneur Frank Geßnerなどから数百万ユーロの資金調達を実施したことを発表した。

同社サービスは、機関投資家(アセット・マネジメント、VC、ファミリー・オフィス*)や富裕層、企業向けにカスタマイズ型の暗号資産カストディ(保管)サービス。顧客に代わり、暗号資産を安全に管理し、かつ簡単に入出金可能な使いやすい設計となっている。

※ファミリー・オフィス=超富裕層向け資産運用ビジネス

共同創業者であるChristopher May氏は、同調達に関して以下のようにコメントした。

Venture Starsやcoparionなど、経験豊富なベンチャーキャピタル企業から資金を調達できたことを非常に誇りに思っています。 Signature Venturesのようなブロックチェーン特化ファンドからの追加調達は、Finoaがデジタル資産分野の主要プレーヤーとして認識されていることを強調しています。

話題のポイント:近年、度重なる暗号資産の喪失・ハッキング問題への対抗策として、カストディ・サービス(資産管理代行)の必要性が叫ばれています。

暗号資産を安全に保管する責任は何も暗号通貨取引所だけでなく、顧客から暗号資産を預かり運用する機関投資家にとっても重大です。上述の各ビジネスにとって、暗号通貨システムにおける安全かつ便利な秘密鍵管理体制の構築は技術的ハードルが高いため、カストディの必要性が存在しているのです。

盤石なカストディによって安全な資産管理が約束されることで、顧客企業が提供するブローカー業務、トークン化業務、レンディング、ステーキング、投資・資産運用代行サービスの成長は更に加速していくことになります。

Finoaは2018年に創業されました。2019年にサービスを開始して以降、累計60以上のヘッジファンドやベンチャー・キャピタルに対しカストディ・サービスを提供しています。2020年1月1日、ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)による「暗号資産及び暗号資産カストディ・プロバイダー規制」が施行されましたが、同社は今年11月までに同ライセンスの認可を取得する予定です。

同社が公開するリサーチ資料によれば、2027年までに、世界のトークン化アセットの市場規模は24兆ドル(2400兆円)にまで拡大する見込みだと言います。世界経済フォーラム(WEF)やマッキンゼー、デロイトによる予測「2025~2027年時点で、世界のGDPの10%はブロックチェーン技術により保管・処理される」を参考にした形で算出されていると言います。

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Image Credit : Finoa

トークン化アセット規模は10年以内に24兆ドルと主張される一方、リサーチが行われた時点(2019年)では0.3兆ドル程度しか存在していません。また、0.3兆ドルはBTCを中心として既存の暗号通貨です。

技術の進歩と規制動向を正確に予測することは難しいため、実際に同統計通りの成長を描くかについては疑問が残ります。ただ、将来的には現時点で既に実用段階に入っているSTOやETO、そしてステーブルコインなどの発展によって、市場は間違いなく拡大するでしょう。

ドイツは暗号通貨規制を世界でも先駆けて改革している国で、STOの規制改革の足取りも早く、既にいくつかのプロジェクトがBaFinの承認を受けプロジェクトを運用しています。その意味で、同じくドイツ市場で展開を試みるFinoaの必要性も、今後着実に増加していくのではないでしょうか。

<参考記事>
ブロックチェーンベースのIPO「ETO」に成功した「Neufund」が変える資金調達の未来

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Grab傘下のデジタルウォレット「OVO」、ジャカルタ都市圏の洪水災害の被害者を支援するクラウドファンディングを開始

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インドネシアのフィンテック大手 OVO は、元日以降、ジャカルタの大部分を壊滅させた大洪水の被害者を支援するクラウドファンディングを開始した。 寄せられた支援金の配分について、OVO は Grab、PMI(インドネシア赤十字)、BAZNAS(インドネシア国家喜捨庁)、災害支援 NGO の Aksi Cepat Tanggap(緊急対応チーム)、NGO の Rumah Zakat(喜捨の家)と提携し…

洪水から救出される人々
Image credit: PMI(インドネシア赤十字)

インドネシアのフィンテック大手 OVO は、元日以降、ジャカルタの大部分を壊滅させた大洪水の被害者を支援するクラウドファンディングを開始した。

寄せられた支援金の配分について、OVO は Grab、PMI(インドネシア赤十字)、BAZNAS(インドネシア国家喜捨庁)、災害支援 NGO の Aksi Cepat Tanggap(緊急対応チーム)、NGO の Rumah Zakat(喜捨の家)と提携している。オンライン投資信託マーケットプレイス「Bareksa」は、この動きに対して、CSR(企業の社会的責任)行動の一環として支持を表明している。

ユーザは、OVO アプリ上の「special donations home」のバナーから寄付することができる。配車サービスを提供する Grab は、こうして集められた寄付について、最大10億ルピア(約776万円)となるまで同額を寄付することを約束した。支出は、調査・避難チーム、食事、ベビーフード、医薬品など重要なニーズに特化している。

OVO 代表取締役の Karaniya Dharmasaputra 氏は次のように述べている。

インドネシアでサービスを提供するデジタル金融プラットフォームの立場から、我々は救援活動を求めるユーザを支援し、洪水の影響を受けた世帯を支援する。OVO は、災害対応をはじめ福祉を民主化する上で、デジタルサービスに大きな可能性があると信じている。

インドネシア赤十字のデイリーエグゼキューター兼会長の Ginandjar Kartasasmita 氏は、次にように述べている。

寄付は、防災への即応性を高めるためにも、寄付するという習慣が奨励されることが期待される。ジャカルタ都市圏の現在の状況を緩和すべく、インドネシア赤十字は、複数の地域に避難、支援、緊急指揮を実施するチームを複数展開している。

OVO は2017年から、パル(中部スラウェシ州都)、中部スラウェシ州、ロンボク島、西ヌサ・トゥンガラ州など、さまざまな被災地で災害救援活動のためのクラウドファンディングを実施してきた。

Rumah Zakat CEO の Nur Efendi 氏は、次のように述べている。

2019年3月以降、OVO と Rumah Zakat は、ジャカルタ、メダン、バンドン、ポンティアナック、マカッサル、ケディリの6都市で、救助艇などの災害救助機材を提供するために協力して取り組んできた。OVO ユーザからの寄付は、さまざまな分野で Rumah Zakat が実施した避難プロセスで重要な役割を果たしている。現在、我々はジャカルタ都市圏の住民のうち数百人、特に医療を必要とする高齢者、妊婦、子供たちを避難させている。

【via e27】 @e27co

【原文】

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自己募集の社債発行を支援する「Siiibo」がEVや朝倉祐介氏らから資金調達

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少人数の私募債発行支援サービス「Siiibo」は12月25日、プレシリーズAラウンドとして、J-KISS型新株予約権の発行による3,800万円の資金調達を公表している。引受先はEast Venturesのほか、個人投資家として朝倉祐介氏らが参加した。 少人数私募債とは発行コストが相対的に低く、手続きも簡単な資金調達方法。金融機関の融資基準に依存しないため、柔軟かつ迅速な調達が可能となる。Siiib…

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Image Credit: Siiibo

少人数の私募債発行支援サービス「Siiibo」は12月25日、プレシリーズAラウンドとして、J-KISS型新株予約権の発行による3,800万円の資金調達を公表している。引受先はEast Venturesのほか、個人投資家として朝倉祐介氏らが参加した。

少人数私募債とは発行コストが相対的に低く、手続きも簡単な資金調達方法。金融機関の融資基準に依存しないため、柔軟かつ迅速な調達が可能となる。Siiiboは現在、資金調達を検討している企業に対し、財務アドバイザーとして少人数私募債発行の手続きや商品設計、Debt IR作成サポートを中心に助言を行っている。今後は「Siiibo IR」として債権者との関係づくりに必要な企業情報を分かりやすく整理した情報プラットフォームの提供なども目指す。

via PR TIMES

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激化する欧州のチャレンジャー・バンク市場競争ーー3番手「Monzo」が1億ドルを新規調達

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ピックアップ:Monzo looks to raise up to £100m in new funding ニュースサマリー:英国発のチャレンジャー・バンク(オンライン銀行)「Monzo」が、2020年後半に実施される見込みのシリーズGラウンドの先行調達という形で、近日中に新たに5000万ドル~1億ドルを調達する見込みだという。Financial Timesが12月29日に報じているもの。 報道…

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Image Credit : Monzo

ピックアップ:Monzo looks to raise up to £100m in new funding

ニュースサマリー:英国発のチャレンジャー・バンク(オンライン銀行)「Monzo」が、2020年後半に実施される見込みのシリーズGラウンドの先行調達という形で、近日中に新たに5000万ドル~1億ドルを調達する見込みだという。Financial Timesが12月29日に報じているもの。

報道によれば、現在同社は昨年6月に実施されたシリーズFラウンド(1億1300万ドルの調達)の既存投資家や新規の投資家らと協議を進めている最中とのこと。つまり本調達は、上述のシリーズFラウンドのエクステンション(拡張)として行われるということだ。

Monzoは2015年に英国で誕生した、急成長するオンライン銀行スタートアップ。Y-Combinator出身で、同じく英国の「Revolut」やドイツの「N26」と並んで銀行としての免許を持つ「チャレンジャー・バンク』と呼ばれている。昨年は評価額を2倍の20億ドル増加させた。

話題のポイント:さて、Monzoはこれからどのような成長を描き、市場シェアを伸ばしていけるのでしょうか。まずは市場競争に関して見てみましょう。

以下の画像は、Monzoと、既に紹介した「Revolut」及び「N26」、そして現在急成長中の新参「Starling Bank」といった、現在欧州地域で急成長する最も著名なチャレンジャー・バンクらのユーザー数を比較したグラフです。

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Image Credit : Sifted

<参考記事>

Moznoのユーザー数は現時点で約400万人と、3番手につけていることが分かります。そして実はRevolutとN26は既にEU外の国・地域への参入を開始しているため、同社は未だグローバルな視点でみても、若干の遅れを取っています。

<参考記事>

ただし、同2つの先行サービスはローンチ時期もMonzoより1〜2年早いですから、ユーザー獲得速度という観点では決して劣っているとは言えません。今後同社が英国での地盤固めを終えた後に、世界展開を開始する可能性は十分にあり、その際はユーザー数でN26を追い抜く可能性もあります。

そして、チャレンジャー・バンク系サービス全体に対し言える指摘として、ユーザーからメイン・バンクとして利用されにくいという問題があるのですが、特にMonzoは、2018年時点でデポジット額が以上4銀行の中でも最低で、首位のRevolutに2倍以上の差をつけられてしまっているという事実があります。

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Image Credit : Sifted

なお、このような結果に対し、Monzoは2019年、給与の早期振込機能の拡充などで対抗し、一定の成果を残していると言われています。

さて、競合との比較を交え、Monzoの成長を振り返りましたが、金融のデジタル化の波や大規模な調達による機能拡充、利便性の向上によって、チャレンジャー・バンクというムーブメントの進行は、今後もしばらく継続していくと考えられます。今後の同社の成長に期待が高まります。

<参考記事>

 

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ゲームアクセサリ大手Razerのフィンテック子会社、デジタルバンキングの免許取得を前にミレニアム特化銀行の設立に向けたコンソーシアムを設立

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シンガポールを拠点とするデジタル決済スタートアップ Razer Fintech は、デジタル銀行のフル免許を申請したと発表した。シンガポール金融管理局から発行される見込み。この申請にあたり、Razer Fintech はサービスが行き届いていていない若年層やミレニアム層に特化したデジタル銀行の設立に向け、コンソーシアムをリードする予定だ。 Razer Fintech によれば、同社は世界初の若年層…

2018年11月、Singapore FinTech Festival に出展した Razer Fintech のブース
Image credit: Razer

シンガポールを拠点とするデジタル決済スタートアップ Razer Fintech は、デジタル銀行のフル免許を申請したと発表した。シンガポール金融管理局から発行される見込み。この申請にあたり、Razer Fintech はサービスが行き届いていていない若年層やミレニアム層に特化したデジタル銀行の設立に向け、コンソーシアムをリードする予定だ。

Razer Fintech によれば、同社は世界初の若年層向け銀行と称する「Razer Youth Bank」をシンガポールに設立することで、現在提供中のフィンテックサービスをデジタルバンキングサービスにまで拡大する計画だ。Razer は、若年層やミレニアム向けのライフスタイルブランドであるため、客層が同じで強みが出せると考えている。

Razer Youth Bank は、Razer Fintecch が60%の過半数株式を保有、残りの株式は戦略パートナーのコンソーシアムが保有する見込み。コンソーシアムのメンバーは次の通り。

  • Sheng Siong Holdings(昇菘控股) …… シンガポール最大のスーパーマーケットチェーン「Sheng Siong(昇菘)」のプライベートビークル。
  • FWD …… 投資グループ Pacific Century Group の保険部門。
  • LinkSure Global …… WiFi Master Key を運営するアジアの民間インターネット企業。中国のサードパーティ決済会社 「ShengPay(盛付通)」の関連会社で、世界中で月間アクティブユーザ約8億人を擁する。
  • Insignia Ventures Partners  …… 東南アジアに特化したシンガポールのアーリーステージテックベンチャーファンド
  • Carro …… インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールで運営される東南アジアの自動車卸売マーケットプレイス(関連記事

Razer Youth Bank が提供を目指すバリュープロポジションは次の通り。

  • Razer のブランドを活用し、世界中の若年層やミレニアム層をオーディエンスとして獲得する力。
  • 若年層やミレニアム層のニーズを理解し、関連製品やサービスをカスタマイズする力。
  • ユーザーエクスペリエンスを提供すべく、データドリブンテクノロジースタックを備えたテクノロジーとフィンテックの専門知識。
  • 業界リーダーやライフスタイルパートンアート連携し、若者やミレニアル世代のライフスタイルのニーズを理解し、関連する製品やサービスをカスタマイズする能力。
  • ユーザーエクスペリエンスを提供するデータ駆動型テクノロジースタックを備えたテクノロジーとフィンテックの専門知識。
  • 業界のリーダーやライフスタイルパートナーと連携し、サービスが行き届いていない層向けに特化した銀行ソリューションを開発・提供できるエコシステム。
  • グローバル展開を念頭に置きつつ、シンガポールのグローバルな金融センターとしての継続的な成長への貢献。

これを可能とすべく、Razer は航空会社(名前非開示)、コワーキングコミュニティの Jusco、デジタルウェルスマネージメントソリューションプロバイダの Quantifeed、教育金融コンテンツプラットフォームの Real Vision、マルチアセット運用フィンテック投資プラットフォームの Saxo Markets、世界的旅行会社の SkyScanner、現金運用ネットワーク「SoCash」、デジタル融資ソリューション Turnkey Lender、ソフトウェアによるデジタルセキュリティソリューション V-Key、および Visa といったサービスプロバイダ、製品、技術プロバイダを集め、Razer Youth Bank 向けにサービスやプロダクトを開発する。

Razer の CSO(最高戦略責任者)で Razer Fintech の CEO である Lee Li Meng 氏は、次のように述べている。

我々は、新世代かつ差別化されたデジタルバンキングのプロポジションを、シンガポール人や世界中の若年層・ミレニアム層に届けることで、グローバル金融センターとしてのシンガポールの成長に貢献できると期待したい。

新しい役員の就任

Image credit: e27

デジタルバンキングコンソーシアムの発表に加え、Razer は CIO(最高投資責任者)に Edwin Chan 氏を任命したと発表した。CFO だった Chan 氏の後任として、前シニアバイスプレジデントでコーポレートコントローラーだった Tan Chong Neng 氏が CFO に就任する。

2人の任命は、我々のリーダーシップチームを強化し、収益目標を達成しながら長期的な成長軌道を継続できるようになる。(Razer の共同創業者兼 CEO の Min-Liang Tan 氏)

CIO となる Chan 氏は、同社の投資ポートフォリオの管理に注力することになる。これには、コーポレートファイナンス、財政投資、ベンチャーキャピタル投資、M&A など同社の短期・長期投資戦略の開発も含まれる。

2017年に入社した Tan 氏は、20年以上に及んだ Tri-Star Group や Stanley Security Solutionsでの経験を CFO としての新たな役割に活かすことになる。

【via e27】 @e27co

【原文】

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サブスク銀行からパッション・エコノミー、注目あつまる「世界の250社」まとめ(2/4)

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1編ではエンタープライズ、フード領域を見てきました。2編では銀行業界を中心に起きている欧米市場の動きや、教育市場で起きている金銭ハードルをなくす動向を見ていきます。 エンタープライズ(1編) フード(1編) フィンテック(本編) 教育(本編) ギグ経済(本編) ヘルスケア(3編) メディア(3編) トラベル(3編) 不動産(4編) 小売(4編) モビリティ(4編) 新興“バンク”の立ち上がり 「A…

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Photo by Lukas Kloeppel on Pexels.com

1編ではエンタープライズ、フード領域を見てきました。2編では銀行業界を中心に起きている欧米市場の動きや、教育市場で起きている金銭ハードルをなくす動向を見ていきます。

  • エンタープライズ(1編)
  • フード(1編)
  • フィンテック(本編)
  • 教育(本編)
  • ギグ経済(本編)
  • ヘルスケア(3編)
  • メディア(3編)
  • トラベル(3編)
  • 不動産(4編)
  • 小売(4編)
  • モビリティ(4編)

新興“バンク”の立ち上がり

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Image Credit: MoneyLion
  • Atom Bank」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にイギリスで創業し、7月に5,000万ユーロの資金調達を非公開ラウンドで実施。Woodford Patient Capital Trust、BBVA、Toscafund、Perscitus LLPらがラウンドに参加。
  • Current」は若者向けモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2015年にニューヨークで創業し、10月に2,000万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Wellington Management、Galaxy Digital EOSらがラウンドに参加。
  • Chime」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にサンフランシスコで創業し、12月に5億ドルの資金調達をシリーズEラウンドで実施。DST Globalがリード投資を務めた。
  • Koho」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にトロントで創業し、11月に2,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Portag3 Venturesがリードを務め、Greyhound Capitalらが参加。
  • Mercury」はスタートアップ向けのモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。サンフランシスコで創業し、9月に2,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen Horowitz、Naval Ravikantらがラウンドに参加。
  • MoneyLion」は会員制モバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にニューヨークで創業し、7月に1億ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Edison PartnersとGreenspring Associatesが共同でリード投資を務めた。
  • Monzo」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2015年にロンドンで創業し、6月に1.13億ユーロの資金調達をシリーズFラウンドで実施。YC’s Continuity fundがリード投資を務めた。
  • Nubank」はラテンアメリカ地域にてモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にブラジルで創業し、7月に4億ドルの資金調達を実施。TCVがリード投資を務めた。
  • N26」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にベルリンで創業し、7月に1.7億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。 Insight Venture Partnersがリードを務め、GICがラウンドに参加。
  • Point」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、1月に120万ドルの資金調達をプレシードラウンドで実施。
  • Rho Business」はスタートアップ向けのモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にニューヨークで創業し、10月に490万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Inspired Capitalがリード投資を務めた。
  • Starling Bank」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にロンドンで創業し、10月に3,000万ユーロの資金調達を実施。Merian Chrysalisがリードを務め、 JTCらがラウンドに参加。
  • Step」は若者向けモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にパロアルトで創業し、7月に2,250万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Stripeがリード投資を務めた。
  • Uala」はラテンアメリカ地域にてモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2017年にアルゼンチンで創業し、11月に1.5億ドルの資金調達を実施。TencentとSoftBank’s Innovation Fundが共同でリード投資を務めた。
  • Joust Labs」は個人事業主向けのオンライン・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2017年にオースティンで創業し、8月に260万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。PTB Venturesがリードを務め、Accion Venture Lab、Financial Venture Studio、Techstarsがラウンドに参加。
  • Open」はインドにてモバイル・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2017年にバンガロールで創業し、6月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Tiger Global Managementがリードを務め、Tanglin Venture Partners Advisors、3one4 Capital、Speedinvest、BetterCapital AngelList Syndicateがラウンドに参加。
  • Oxygen」は個人事業主向けのオンライン・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、1月に550万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Y Combinator、Base Ventures、The House Fundらがラウンドに参加。
  • Starship」はモバイル・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2016年にニューヨークで創業し、12月に700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Valar Venturesがリード投資を務めた。

新興バンクの調達案件が多数登場してきました。2015年前後に登場した銀行スタートアップたちは、ほぼ同じコンセプトで事業展開を始め、市場はすでにレッドオーシャン化。欧米は規制も比較的緩く、銀行ライセンスを取得し、自社で当座・普通預金口座やローン事業を展開する「チャレンジャーバンク」が急速に増えています。

一方、銀行ライセンスを持たずに、既存銀行のサービスを統合して新たなサービスとして昇華させる「ネオバンク」はやや下火な印象です。なお、ネオバンクは1編で紹介したAPIを通じて銀行サービスを引き出しています。

レッドオーシャン市場では、攻め方が2つ挙げられます。1つは地域特化。米国では先行者利益を積みつつある「Chime」が市場をリードしています。同社のような先行者利益を得るために、南米やアフリカ地域での市場シェアをいち早く獲得する動きが目立ちます。

もう1つはデモグラフィック特化。主に銀行サービスへのアクセス権を持たなかった中高生に向けた銀行サービスが成長を遂げています。こうした銀行に共通することは、1編の冒頭で触れたアクセシビリティに焦点を当てている点です。

Z世代の若者はクレジットヒストリーを持たないことから、クレジットカードを発行できなかったり、適切な年齢になるまで気軽に銀行サービスにアクセスできない課題意識を持っていました。Z世代ユーザーのユニークな課題意識は、大学を卒業したミレニアル世代以上のペインを持ちます。

この課題を解決するために動いているのが、若者向け新興バンク「Current」に代表される企業です。また、スタートアップや個人事業主向けに特化することで、利用シチュエーションを限定させて人気を得ている、「Mercury」や「Oxygen」などの銀行も登場しています。こうしたデモグラフィック特化の事業アイデアでニッチ領域を独占する銀行サービスに商機が生まれています。

リストの中で興味深い事例が、「MoneyLion」の推し進める“Netflix for banking”に関する事業コンセプト。同社は「Core」「Plus」「Instacash」の3つのプランを元に会員制度を敷き、月額9.99 – 19.99の範囲でユーザーから収益化します。

銀行サービスは一般的にレンディングビジネスで収益化をしていると考えられますが、サブスクリプションモデルを導入することで、安定した収益構造を作り上げていると想像できます。銀行サービスはスイッチコストが多くかかるため、競合へ逃げることはあまりないはずです。

そのため、事業ベースをサブスクリプションにすることで、高いLTVを収益に直結させられる算段です。ユーザーにとっては必要なサービスだけ引き出せるため、多量なサービスをどう選べば良いのかわからなくなる複雑性や、サービスの過剰供給を防げるメリットを選べます。日本でも“サブスク銀行”の業態は登場しても不思議ではなさそうです。

カードの普及

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Image Credit: Deserve
  • Deserve」は若者向けにクレジットカードを提供。2013年にメンローパークで創業し、11月に5,000万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Goldman Sachsがリード投資を務めた。
  • Mitto」はZ世代向けにプリペイド・デビットカードを提供。バルセロナで創業し、9月に200万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。InnoCells、Athos Capitalらがラウンドに参加。
  • Petal」はクレジットヒストリーの無い人向けにクレジットカードを提供。。2016年にニューヨークで創業し、1月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Valar Venturesがリード投資を務めた。
  • Ramp Financial」は法人向けカードを提供。ニューヨークで創業し、8月に700万ドルの資金調達を実施。Founders Fund、BoxGroup、Coatue Managementがラウンドに参加。
  • Tribal」は法人向けカードを提供。2016年にサンノゼで創業し、12月に550万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。BECO CapitalとGlobal Venturesが共同でリードを務め、Endure Capital、500 Startups、Valve VC、AR Ventures、Off The Grid Ventures、Rising Tide Fund、RiseUp、Tribe Capitalがラウンドに参加。

先述した銀行サービスにはカードが必ず付いてきますが、この項ではカード発行だけに特化したスタートアップを紹介します。なかでも「Deserve」の動きは注目です。同社はZ世代向けに決済カードを発行する特化型ビジネスから始まりました。若者向けという金融市場の“ラストマイル”へ参入したことから事業を急拡大させてきたのです。

なお、ユーザーの親御さんが手軽に取引を管理できるようにモバイル体験を最適化させています。カードと口座ダッシュボードをモバイル時代に適応させたのがDeserveでした。

現在は全世代向けにカードを発行し、“Credit Card as a Service”をコンセプトに掲げ、あらゆるブランドが手軽にカードとダッシュボードを利用できるオープンプラットフォームになろうとしているのです。しかし、この事業方針は1編で紹介した決済カード発行APIを提供する「Galileo」と競合になります。ユーザー基盤を着実に増やしてブランド力を上げてきたDeserveと、API事業に特化したGalileoのどちらが市場覇権を握るのかに注目が集まります。

Deserveと同じ事業コンセプトを法人向けに展開するのが「Ramp Financial」や「Tribal」です。費用立て替えなどの厄介なプロセスを省くため、各従業員にカードを発行して、マネージャーが利用状況を管理できるUXを提供します。

これは親子向けのカード利用シーンとほぼ同じ関係と言えるでしょう。Deserveに通じる業態は、課題解決ポイントを上手く突いていることから、Ramp FinancialやTribalのように他領域でも活用できますし、日本でも十分に通用するユースケースだと感じます。

金回りの改善

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Image Credit: Otis
  • Capital」は500万ドルからのデットファイナンスサービスを提供。ニューヨークで創業し、10月に500万ドルの資金調達を実施。Greycroft, Future Ventures、Wavemaker Ventures、 Disruptiveがラウンドに参加。
  • CoinList」は投資家と仮想通貨プロジェクトを繋ぐマッチングサービスを展開。2017年にサンフランシスコで創業し、10月に1,000万ドルの資金調達を非公開ラウンドで実施。Polychain Capitalがリードを務め、Jack Dorsey氏がラウンドに参加。
  • Happy Money」はクレジット債務返済サポートサービスを提供。2009年にカリフォルニア州で創業し、9月に7000万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。CMFG Venturesがリード投資を務めた。
  • Otis」は若者向けにアート作品の所有権投資プラットフォームを提供。2018年にニューヨークで創業し、12月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Maveronがリード投資を務めた。
  • PayJoy」は途上国のモバイルユーザー向けにクレジットヒストリー構築サービスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、5月に2,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Greylock Partnersがリードを務め、Union Square Ventures、EchoVC、Core Innovation Capitalがラウンドに参加。
  • PTO Exchange」 は従業員の未消化有給休暇分を換金するサービスを提供。2013年にワシントン州で創業し、8月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。WestRiver Groupがラウンドに参加。
  • Salaryo」はコワーキングスペースの利用者向けにオフィス敷金のレンディングサービスを提供。2017年にニューヨークで創業し、8月に550万ドルの資金調達を実施。Ruby Ventures とMichael Ullmann’s investment groupがラウンドに参加。
  • SeedLegals」はスタートアップの資金調達および資本管理向けリーガルプラットフォームを提供。2016年にロンドンで創業し、3月に400万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリードを務め、Kima Ventures、The Family、Seedcampがランドに参加。
  • Uncapped」はスタートアップ向けに収益ベースの資金提供サービスを提供。2019年にロンドンで創業し、12月に1,000万ユーロをシードラウンドで実施。Global Founders Capital、White Star Capitalらがラウンドに参加。
  • Uplift」は後払い/分轄払い旅行サービスを提供。2014年にメンローパークで創業し、12月に2.5億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Madrone Capital Partnersがリードを務め、Draper Nexus、Ridge Ventures、Highgate Ventures、Barton Asset Management、PAR Capitalがラウンドに参加。
  • Zestful」はカスタマイズ可能な従業員福利厚生プログラムを提供。2016年にデンバーで創業し、9月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Thrive Capitalがリードを務め、Box Group、Y Combinator、Matchstick Ventures、Third Kind Capital、Shrug Capitalがラウンドに参加。

本項ではお金との新しい接点を作り、流動性を向上させているスタートアップをまとめています。特に興味深いスタートアップは3つほど。1つはZ世代向けアート作品の投資プラットフォーム「Otis」。SNS時代に評価されるストリームグッズや、現代アート作品への投資を可能としています。若者に人気が出るであろうアート作品を、高い流動性を持つ少額投資商材として提供。

Z世代が持つ価値観に合わせて、投資商材を最適化させているのがOtisです。モバイル投資プラットフォーム「Robinhood」や「Stash」にも通じるUXを持っている点は、日本でも通用するかもしれません。

2つ目は使わなかった有給休暇期間を換金できるサービス「PTO Exchange」。日本と同様に未消化分の有給休暇が溜まれば、転職が決まったのちに消化をして、出勤しない期間が長く発生します。これは企業にとって、新規採用サイクルが滞ってしまうデメリットを背負います。そこでPTO Exchangeが登場しました。

同社は消化しきれない有給休暇を換金して、企業採用の新陳代謝を促進させるソリューションを提供。日本では無理やりにでも有給を使わされる文化が根付いていると思います。ただ、効率的に有給消化をして休みを取るマインドセットも大切ですが、現実はそうはいかないはず。“生産性革命”が叫ばれている今、PTOと同じ仕組みを日本のベンチャーが取り組んでみると面白いかもしれません。

最後は「Zestful」。企業が各従業員に支給する福利厚生額の用途を、従業員側で自由に利用できるサービスです。従来、福利厚生サービスは限定パッケージ内のコンテンツでのみ利用可能でした。しかし、マッサージや旅行割引などの型にはまったコンテンツからしか選べず、必ずしも欲しいと思える福利厚生は落ちていません。そこでZestfulは、NetflixやSpotify、Airbnbに代表されるミレニアル世代に人気のコンテンツの中から自由に選べるように、福利厚生の利用用途に柔軟性を与えました。

福利厚生を普段使うサービスに当てられることで、従業員の満足度も向上。企業側も訴求力の強い福利厚生パッケージを提示できるようになりました。

日本の福利厚生サービスは限定的、かつコンテンツが一新されていない印象であるため、日本版Zestfulには大きな商機があるかもしれません。各従業員に渡すデビットカードを発行することで、取引管理サービスとしての価値提供もできるでしょう。

多様な保険サービス

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Image Credit: Avinew
  • Avinew」は自動運転車ドライバー向けに利用量ベースの保険サービスを提供。2016年にカリフォルニア州で創業し、6月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Crosscut Venturesがリードを務め、American Family Ventures、Draper Frontier、RPM Venturesがラウンドに参加。
  • Route」は配達物トラッキングおよび購入物1%の保険サービスを提供。2018年にユタ州で創業し、11月に1,200万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Album VCとPeak Venture Capitalがラウンドに参加。
  • SafetyWing」はリモートワーカー向けの医療保険サービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、8月に350万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Foundersがリードを務め、Credit Ease Fintech FundとDG Incubationがラウンドに参加。
  • Thimble」は個人事業主向けに短期ビジネス保険サービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、10月に2,200万ドルをシリーズAラウンドで実施。IACがリードを務め、Slow Ventures、AXA Venture Partners、Open Oceanがラウンドに参加。
  • Vouch Insurance」はスタートアップ向けのビジネス保険サービスを提供。サンフランシスコで創業し、11月に4,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Y Combinator Continuityがリード投資を務めた。
  • WorldCover」は途上国の農家向けに天候による収穫高を見込んだ安価な農業保険サービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、5月に600万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。MS&AD Venturesがリードを務め、EchoVC、Y Combinator、Western Technology Investmentがラウンドに参加。

保険市場ではAI機械学習を使い、保険額を事前予測するケースが増えている印象です。たとえば「Avinew」は、自動運転向けの新たな保険サービスを提供。ドライバーの運転速度やルート、運転地域の天候・犯罪率などのいくつかの指標データを基に保険料を自動算出します。LiDARや車載カメラを通じて得られる運転データを溜まれば、より精度高く保険料を計算できるようになるでしょう。

このように車外環境データを膨大に収集できる時代に最適化した保険サービスが登場していますので、日本の大手保険会社もいずれは同じモデルで事業を仕掛けるのではないでしょうか。また、途上国の農家向け保険サービスの「WorldCover」も、同様にAIを用いてリスクを算出しています。

「出世払い制度」の広がり

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Image Credit: Lambda School
  • Blair Finances」はISA(収入分配契約)に基づいた学費レンディングサービスを提供。2019年にサンフランシスコで創業し、8月に15万ドルの資金調達を実施。YCombinatorがラウンドに参加。
  • Goodly」は学生ローン返済を従業員福利厚生として提供。2018年にサンフランシスコで創業し、3月に1,300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Norwest Venture Partnersがリード投資を務めた。
  • FlexClub」はギグワーカー向けに自動車貸し出しプラットフォームを提供。2018年にアムステルダムで創業し、3月に120万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。CRE Venture Capitalがリード投資を務めた。
  • Kenzie Academy」はソフトウェアエンジニア養成プログラムを提供。2017年にインディアナポリスで創業し、11月に1億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Community Investment Managementがラウンドに参加。
  • Lambda School」はソフトウェアエンジニア養成プログラムを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、1月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Bedrock Capitalがリードを務め、Vy Capital、GGV Capital、Google Ventures、Y Combinator、Sound Venturesがラウンドに参加。

年々膨らみ続ける学生ローン問題を解決するのが“出世払い制度”を持った教育機関です。「Lambda School」に代表される教育機関では、学生はローン返済などに苦しむ必要がなくなり、ソフトウェアエンジニアになって高給な仕事を得るという明確な目的意識を持って授業を受けます。

一方、学校側は学生を就職させ、事前に契約した授業料を回収するまで学生との関係性は途切れることはありません。卒業後も続くカスタマーサクセスが大事になってくる長期サービスが同校のモデルです。

Lambda Schoolが採用する出世払い制度は、既存の大学機関では収益構造を抜本的に変える必要があるため取り入れられません。しかし、学生はLambdaのようなブートキャンプではなく、大学に通いたいとニーズを持っているのも確かそこで出世払いサービスのみに特化した金融機関も登場しています。「Blair Finances」は学費を肩代わりする代わり、卒業後に返済させるレンディングサービスを展開しました。

どの教育期間でも出世払いで通えるサービスですが、1学生当たりに貸し出す金額と、回収期間が非常に長い難しいモデルです。機関投資家から長期投資商材として資金を集めれば回せるモデルになるのではないでしょうか。

出世払いを採用したレンディングモデルは、ギグ経済にも波及しています。「FlexClub」はUberドライバー向けに自動車を貸し出す投資プラットフォームを展開。投資家は自動車を購入し、FlexClubを通じてドライバーに貸し出します。

週もしくは月単位で収益分配されるため、自動車を長期投資対象として運用できるモデルです。ドライバーも頭金0で自動車を所有できるため、双方にとってWin-Winの関係を構築できます。このように出世払いの考えは教育市場から始まり、他市場へと拡大を見せているのが2019年の大きな流れです。

専門学校の躍進

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Image Credit: Landit
  • Cloud Guru」はクラウドコンピューティングを学ぶためのオンライン学習コースを提供。2015年にロンドンで創業し、4月に3,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Summit Partnersがリードを務め、AirTree VenturesとElephantがラウンドに参加。
  • Empowered Education」はウェルネスコーチ育成のためのオンラインコースを提供。2015年にニューヨークで創業し、3月に800万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Rethink Educationがラウンドに参加。
  • Flockjay」はセールスマン養成向けオンラインアカデミーを運営。2018年にサンフランシスコで創業し、10月に298万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Lightspeed Venture Partners、Coatue、Y Combinator、F7、SV Angel、Index Ventures、Serena Williams氏、Will Smith氏がラウンドに参加。
  • Giblib」は医療手術に関するオンライン学習コースを提供。2015年にロサンゼルスで創業し、4月に250万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Mayo Clinic、Venture Reality Fund、Wavemaker 360、USC Marshall Venture Fund、Michelson 20MMがラウンドに参加。
  • Immersive Labs」はサイバーセキュリティに関するオンライン学習コースを提供。2017年にイギリスで創業し、11月に4,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Summit Partnersがリード投資を務めた。
  • Landit」は女性のキャリア育成のためのオンラインコースを提供。2014年にニューヨークで創業し、2月に1,300万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。WeWorkがリードを務め、New Enterprise Associates、Valo Ventures、Workday Ventures、Gingerbread Capitalがラウンドに参加。
  • Ornikar」は自動車免許取得のためのオンライン教員マッチングサービスを提供。2014年にパリで創業し、6月に4,000万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。IdinvestとBpifranceがラウンドに参加。
  • SV Academy」はビジネスディベロッパー養成プログラムを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、6月に950万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Owl Venturesがリード投資を務めた。

インターネットを用いた大規模公開オンライン講座プラットフォーム「MOOC (Massive open online course)」が広がり、市場は寡占状態。「Coursera」「Lynda.com」「Udacity」の3社を利用すれば、必要なオンライン教育コンテンツへほぼリーチできる状態だと言えます。この市場状態で次の勝ち筋を探すには、1つの分野に特化させてユーザー満足度を圧倒的に上げる以外ありません。リストにある通り、2019年は各分野で特化型オンライン教育プロバイダーが登場しました。

いずれのスタートアップもオンライン動画サービスではなく、ブートキャンプ式を採用しています。また、Serena Williams氏やWill Smith氏も出資する「Flockjay」は出世払い制度を採用しています。

各分野のプロフェッショナルの養成機関として、入学コスト0でサービスを提供するモデルが流行っている印象です。出世払いから始まったトレンドは、ソフトウェアエンジニア養成から始まりましたが、今後は専門学校分野へと幅広く広まっていくでしょう。

パッション・エコノミー文脈

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Image Credit: Outschool
  • Mighty Networks」はオンライン学習コース向けウェブサイトビュルダーを提供。2010年にパロアルトで創業し、4月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Intel CapitalとSierra Wasatchが共同でリード投資を務めた。
  • Outschool」は小学生教育コンテンツ向けライブ動画マーケットプレイスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、5月に850万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Union Square VenturesとReach Capitalが共同でリード投資を務めた。
  • Patreon」はクリエイター向け有料作品を発表するためのサブスクリプションプラットフォームを運営。2013年にサンフランシスコで創業し、7月に6,000万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Glade Brook Capitalがリード投資を務めた。
  • Substack」は有料ニュースレターを発行できるプラットフォームを運営。2017年にサンフランシスコで創業し、7月に1,530万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリード投資を務めた。
  • Tinkergarten」は幼少児向け屋外学習マーケットプレイスを提供。2014年にマサチューセッツ州で創業し、3月に2,100万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Omidyar Network、Owl Ventures、Reach Capitalがラウンドに参加。
  • Zyper」はSNSインフルエンサーがコアファンとブランドと繋がれるマーケティングプラットフォームを運営。2017年にサンフランシスコで創業し、6月に650万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Talis Capitalがリード投資を務め、 Forerunner VenturesとY Combinatorがラウンドに参加。

パッションエコノミー文脈のサービスは2019年で見逃せない動きでしょう。パッションエコノミーの大雑把な定義として、ギグワーカーが自分の個性を活かしてサービス展開できるSaaSを指します。たとえば「Outschool」はライブ動画を通じて自分の教室を持てるプラットフォームを展開。教員免許を持たない人が、手軽に高品質な動画教育サービスを提供できるSaaSです。

創造性に富んだデジタルコンテンツを世界中に発信して稼げる分野特化型SaaSが多々登場してきています。分野を問わず、自分のコンテンツを発信するためのウェブサイトを作成できる「Mighty Networks」のような業態も登場。無料のビュルダーは「Strikingly」や「Wix.com」などが有名ですが、パッションエコノミー特化のウェブサイト作成サービスに注目が集まっています。

デジタルコンテンツ提供者は大規模なオーディエンスを構築し、ニッチな趣味や特技などの情熱を効率的に収益に変えて生計を立てられます。誰もが「マイクロ起業家」になれるツールであり、私たちが現在考える「仕事」の概念を大きな変える意味合いを持ちます。このトレンドはしばらくは続くでしょう。

2編はここまでです。3編ではヘルスケアやメディアを中心に見ていきます。

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欧州フィンテックの新潮流「チャレンジャー・バンク」とオープン・バンキング規制改革「PSD2」を紐解く

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「Revolut」が5億ドルを調達、「Monzo」が1億5000万ドル、「N26」は3億ドル、「Starling bank」2億ドル。以上は2019年内に報じられた、欧州発のデジタル銀行スタートアップによる資金調達(※または調達見込み)です。上記企業らは全てローンチからわずか5年以下で、凄まじい勢いで成長する「チャレンジャー・バンク」と呼ばれる新しい銀行ビジネスです。 「チャレンジャー・バンク」と…

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Revolut」が5億ドルを調達、「Monzo」が1億5000万ドル、「N26」は3億ドル、「Starling bank」2億ドル。以上は2019年内に報じられた、欧州発のデジタル銀行スタートアップによる資金調達(※または調達見込み)です。上記企業らは全てローンチからわずか5年以下で、凄まじい勢いで成長する「チャレンジャー・バンク」と呼ばれる新しい銀行ビジネスです。

「チャレンジャー・バンク」とは何なのでしょうか。初めて聞くという人も多いと思います。そこで本記事では、チャレンジャー・バンクと呼ばれる新興スタートアップらの概要・動向を紹介します。またそれを軸に、欧州のオープン・バンキングの歴史・最前線の現況についても解説します。

日本でも最近、オンライン・バンキングや銀行APIの制度化が叫ばれており、欧州の先行事例は、国内の業界関係者は必ず知っておくべき内容でしょう。

チャレンジャー・バンクとは

さて、第一にチャレンジャー・バンクとは何でしょうか。チャレンジャー・バンクとは欧州を中心に台頭する、銀行免許を保持したデジタル銀行スタートアップのことを指します。欧州の銀行ライセンス取得の簡易化・銀行APIの解放、すなわち「オープン・バンキング」というコンセプトを基に急成長した巨大フィンテック企業のことを指します。

起源としては、2008年の金融危機に関連して、2010年以降より英国政府が国内の主要大手銀行の寡占状態に終止符を打とうと、新規参入者へ銀行免許の付与を開始したことが始まりです。そのため今でも、英国発のチャレンジャー・バンクらが欧州市場をリードしている状況です。

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Image Credit : Challenger Banks in Europe. 2019 Overview

チャレンジャー・バンクのサービスをより具体的に噛み砕くと、銀行免許を所持し、かつスマホ・アプリから手軽に口座開設・入出金・送金・両替(外貨・暗号通貨対応)融資・資産運用・保険など、ほぼ全ジャンルの金融サービスを利用できるモバイルバンキング・ビジネスを指します。

端的に言い換えれば、金融機関の業務の中でも個人や中小企業などの顧客を対象とした小口の業務を行う「リテール業務」を全てスマホアプリに移行したものだと捉えることができ、それに加えてVisaやMasterなどの国際ブランドと連携することでオンライン・実店舗での決済用カードの提供まで行なっています。

これらのアプリは、欧州圏の銀行が提供するリテールサービスが元々利用しづらかったこともあり、デジタル・サービスの利用に抵抗の少ない若者やテッキー(テクノロジーに長けている人)を中心に急拡大していきました。

少し事例を紹介すると、イギリス発の「Revolut」や「Monzo」、ドイツ発の「N26」は中でも特に有名で、各社とも既にユニコーン企業となっており、現在では欧州市圏外にも目を向けています。Revolutは日本市場参入を決定し、N26はすでに米国市場でサービスを展開しています。

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Image Credit : 14 Hottest Digital-First Challenger Banks by Country in Europe

その他にも欧州各地からチャレンジャー・バンクが登場し、現在では既存のオフライン銀行を圧倒する大きなムーブメントとなっています。その勢いは海外にまで波及し、今や米国や南アメリカにも、各地域から急成長するチャレンジャー・バンクビジネスが登場しています。

<参考記事>

ただし、欧州のチャレンジャー・バンクの成長の土壌となったのは、何も各国が銀行免許の認可数を増加させたからというだけではありません。近年、銀行免許を取得したオンライン銀行らの後押しをするように、銀行APIの解放とその標準化といった、新たな規制改革が欧州全体で行われています。

欧州のオープン・バンキング規制改革「PSD2(Payment Service Directive 2)」

PSD2(決済サービス指令2)という法制度をご存知でしょうか。PSD2は、欧州が世界に先駆けてオープン・バンキングを推進するため、そしてセキュリティ・市場競争・消費者保護などの向上を目指し、2016年にEEA(欧州経済領域)各国に向け発行された法的枠組みです。

※EEA=欧州28ヶ国に加え、ノルウェー・アイルランド・リヒテンシュタインの3カ国を加えた地域共同体で、人・物・金・サービスの移動の自由を促すことを目的とする。

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青・緑の地域がEEA加盟国 Image Credit : Wikipedia

2018年にはメンバー各国がPSD2に準拠する形で各々で法整備を整え、その後各銀行によりAPI解放が実施されました。ちなみに同制度は、2007年に誕生した欧州内の決済標準化を推進するための枠組み「PSD」のバージョン2に当たります。

PSD2の施行によって、欧州の各銀行のAPI解放と、フィンテック事業者との接続が義務化され、各国規制当局に認可を受けた事業者らは顧客の同意の下、リクエストに応じて銀行から顧客データを自由に取得したり、決済処理を行えるようになりました。

具体的には、PSD2でAISP(Account Information Service Provider)とPISP(Payment Initiation Service Provider)という2つの免許があります。前者AISP事業者は、ユーザーの口座情報を取得する権限を持ち、後者PISP事業者は、銀行の資金移動APIを活用する権限を持つため、ユーザーに対し決済サービスを直接提供することができます。

※参考:英国のPSD2取得企業リスト

これらを日本の改正銀行法と比べると、以下の図のようになります。日本の場合は銀行のAPI解放が努力義務に止まり、かつフィンテック事業者は各行と個別契約を結ばなくてはならないなど、力強さに欠ける印象があります。

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Image Credit : インフキュリオン

話をPSD2に戻すと、前者AISP業者は、資産マネジメントや家計簿アプリなどをイメージすると分かり易く、後者PISP業者は、ECや送金など、決済全般に関わるサービスを提供するアプリを思い浮かべると良いでしょう。ちなみに両方のライセンスを有し、活用しているサービスも沢山存在しています。

事実、同枠組みの施行によって、欧州チャレンジャー・バンクの顧客数増加にさらに拍車がかかっています。というのも、PSD2によって同企業らがオンライン・バンキングサービスを構築することが非常に簡単になったからです。また、PSD2を活用して成長した便利な金融サービスがチャレンジャー・バンクのアプリへと組み込まれるなど、様々な面でプラスの効果を生んでいます。

さらに「Solaris Bank」などの、部分的にバンキング・サービスを運営するテック企業向けに、PSD2による銀行APIを活用したインフラサービスを提供するビジネスモデルも登場しています。このようなモデルは「Banking as a Service」と呼ばれ、チャレンジャー・バンクと肩を並べ勢いを増す、フィンテックの潮流の一つです。

<参考記事>

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Image Credit : Pixabay

欧州フィンテックを知る意義と、さらなるデジタル化

日本のフィンテック業界の起業家・投資家のリサーチ対象といえば、米国のシリコンバレーや大手銀行のデジタル化もそうですが、今は絶対的に「Ant Financial(螞蟻金融)」や「Tencent(騰訊)」が牽引する中国のフィンテック・エコシステムだと思います。

<参考記事>

ですが、欧州の動向も決して無視できるものではなく、むしろ日本人としては注視すべきだと思います。なぜなら国内の規制改革の動向を見るに、日本の銀行法は英国・欧州の改革を大いに参考にしているからです。その他の国に比べると、より似た規制制度を持ち、かつ少し先行する欧州のエコシステムから学べることは、決して少なくありません。

銀行法がさらにPSD2に類似していき、オープン・バンキングが進行すると考えると、現在の欧州のトレンドに追随する形で、日本国内からもチャレンジャー・バンクやBanking as a Serviceに類似したビジネスモデルのスタートアップが登場してくると予想できます。

そしてこうした視点を取っ払ったとしても、欧州のフィンテックの今後には大いに興味を惹かれます。というのも欧州連合、及びその周辺地域におけるPSD2や、その他の決済インフラの標準化政策は、世界でも前例のない超国家的な金融システムの構築を意味するためです。これは地球規模で考えて、地域・経済・通貨統合を検討する地域にとっての先行事例として、価値ある取り組みだと思います。

聞けば先日、ECB(欧州中央銀行)がステーブルコイン発行に向けた内部検討に着手したといいます。中国のデジタル通貨計画(DCEP)は、単一国家の法定通貨によるデジタル・マネーに過ぎませんが、ユーロ版ステーブルコインの場合は、ユーロが既に国家共同体による共通通貨であるため、アフリカ諸国などが検討する通貨統合と、そのデジタル化の先行事例にもなり得ます。

欧州連合を一つの国家だと捉えると、そのGDPは18兆ドルと、アメリカを超えて世界で2番目の規模になると言われています。英国の離脱問題やドイツ銀行の破綻危機などネガティブなニュースも絶えませんが、今後もグローバルな経済を牽引する存在としての役割は変わらないでしょう。

話が若干それてしまいましたが、最初はチャレンジャー・バンクというホットな切り口から、最後は出来るだけ視点を広げる形で欧州のフィンテック概況を解説しました。日本がさらなるオープン・バンキング改革を実施し、チャレンジャー・バンクやBanking as a Serviceなどのサービスが台頭する日は必ず来ると思います。そのために、いま現在で既存銀行やフィンテック事業者らにどんな対策ができるのかが問われています。

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2020年に注目すべき国内ブロックチェーン企業10選

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2019年は、世界的に「ブロックチェーン」というムーブメントが改めて大きく注目された年だったのではないでしょうか。 少し振り返ると、まず何と言っても、最も大きな話題となったニュースはFacebookのステーブルコイン・プロジェクト「Libra」の発表です。そして国家首席・習近平氏の「ブロックチェーン推進」発言や人民元デジタル通貨構想など。ブロックチェーン業界外の人々からも目を引く大きなニュースがい…

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Photo by Pixabay on Pexels.com

2019年は、世界的に「ブロックチェーン」というムーブメントが改めて大きく注目された年だったのではないでしょうか。

少し振り返ると、まず何と言っても、最も大きな話題となったニュースはFacebookのステーブルコイン・プロジェクト「Libra」の発表です。そして国家首席・習近平氏の「ブロックチェーン推進」発言や人民元デジタル通貨構想など。ブロックチェーン業界外の人々からも目を引く大きなニュースがいくつかありました。

これらの大きなブロックチェーン関連のニュースが業界を大きく賑わせた2019年でしたが、年末ということで、本記事では2020年以降に飛躍が期待される国内のブロックチェーン・ベンチャー企業を10つ紹介してみたいと思います。

※国内には数多くの有望なブロックチェーン関連企業がありますが、本記事で紹介するのは、特に以下の特徴を満たしていると見受けられるベンチャー企業です。

  • 国内発であること
  • 独自のプロジェクトを開発・提供していること
  • 創業から数年の、独立したベンチャー企業であること
  • 実績(調達・ユーザー数・提携など)があること
  • パブリックチェーン領域により近い事業を行なっていること

1. LayerX

概要:ブロックチェーン・プロトコルの研究開発・金融機関向けコンサルティング

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Image Credit : LayerX

「Layer X」は、ブロックチェーンのプロトコルレイヤーの研究開発や金融機関向けコンサルティング、システム開発・企画・運用などでいくつかの実績を残しています。

研究開発の実績としては、1つ目にEthereumブロックチェーンの合意形成プロトコルの技術「CBC Casper」に関する研究を評価され、Ethereum Foundationから日本で初めての助成金獲得を達成しています。そして2つ目に、秘匿化ブロックチェーン「Zerochain」の研究開発においても、Web3 Foundationから助成金を獲得しています。

また、事業支援・コンサルティング面では、日本Microsoftなどの企業らと提携を行なっており、つい先日にはMUFGによる次世代金融サービス構築に向けた実証実験に際した協業を発表しています。

創業からわずか約1年半にも関わらず、研究開発・ビジネスの両輪においてここまで推進力のあるブロックチェーン企業は国内でも珍しく、翌年以降のさらなる飛躍に期待が高まっています。

<参考記事>

2. BlockBase

概要:NFT交換マーケット「Bazaaar」開発・非金融領域コンサルティング

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Image Credit : BlockBase

BlockBaseは、研究開発・ビジネス(コンサルティング)両面で事業を展開するベンチャー・企業です。同社は昨年8月に設立され、シード向けベンチャー・キャピタル「NOW」により資金調達を実施しています。

研究開発領域においては、今年1月、ブロックチェーン技術を用いて発行されるNFT(Non-Fungible Token)トークン(デジタルなアイテムなど)を交換できる取引プラットフォーム「bazaaar」を公開しました。

※NFT(Non-Fungible Token):代替することができない独自性を備えたトークンのこと。

また5月、NFT取引マッチング・プラットフォーム構想が、分散型取引プロトコルを開発する「0x」のアクセラレーション・プログラムに採択されて助成金を獲得。インターネットメディア・ソーシャル事業を手掛けるモバイル・ファクトリー社との、ブロックチェーン事業の開発・推進に関する業務提携を発表しています。

先述のLayer X社と同様に独自のサービス開発及びビジネス・コンサル事業の両方を推進する同社ですが、対照的な点として、Blockbase社は主にブロックチェーンの非金融ユースケースの創出にフォーカスしている点が挙げられます。

<参考記事>

3. Nayuta

概要:ビットコインの処理能力向上を目指す2ndレイヤーソリューション「Lightning Network」

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Image Credit : Nayuta

Nayuta社は、主にビットコインの2ndレイヤーの決済処理能力向上技術「Lightning Network」の研究・開発を行う、福岡を拠点とするベンチャー企業です。2017年にジャフコらから1.7億円の資金調達を実施しています。

Lightning Networkはビットコインの決済処理能力向上手段として、現段階で最も可能性のある技術として知られています。同社は早い時期から同技術の研究開発に開始し、世界的に競争力のある企業として知られています。

今年5月、同社は「Lightning Network」を用いたリアルタイム決済を実店舗へ導入し、1か月間の試験運用実施を発表しています。なお、同アプリケーションの実装には同社が開発するLightning Network実装OSS「Ptarmigan」を使用しています。

また12月9日、ビットコインのLightning Network決済に対応し、かつビットコイン・フルノードとしても機能するモバイルウォレット「Nayuta Wallet」(Android対応)のリリースが公表されました。

Lightning Networkの研究開発をメイン事業とする同社は、将来的には同技術をIoT分野で実装することを目指しているといいます。

<参考記事>

4. Chaintope

概要:パブリックブロックチェーン・2ndレイヤー研究開発・サプライチェーン・地域通貨など

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Image Credit : Chaintope

Chaintopeはブロックチェーンのプロトコル及び2ndレイヤー技術開発など、高い技術力をベースにしたR&D事業を主軸に、他にもサプライチェーンや地域通貨プロジェクトの開発支援、エンジニア教育など幅広く事業を展開するブロックチェーン企業です。

福岡を拠点に、マレーシアにもオフィスを構え、新興国におけるビジネス展開も行なっています。2018年9月にはANRIよりシリーズAにて1.1億円の資金調達を実施しています。

これまで同社は、ビットコインの2ndレイヤー技術Lightning Networkを拡張し、高速処理が可能なトークン・コイン発行プラットフォーム「Inazma」、ブロックチェーンの透明性を活用したサプライチェーン・ソリューション「Paradium」などを開発・提供してきました。

また同社は先月11月に、誰でもネットワークに参加できると同時に、より効率的かつ迅速に社会実装を進められるようなガバナンス設計がなされたパブリック・ブロックチェーン「Tapyrus」を発表しました。複数企業により利用される単一のブロックチェーンとして、商用化が期待されています。

<参考記事>

5. Cryptoeconomics Lab

概要:Ethereum処理能力向上を試みる2ndレイヤーソリューション「Plasma」

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Image Credit : Cryptoeconomics Lab

Cryptoeconomics Labは、パブリックブロックチェーンの2ndレイヤーの処理能力向上技術「Plasma」を研究・開発しています。ちなみに同社も、NayutaとChaintope同様に福岡を拠点とする企業です。

同技術はEtheruem創設者のヴィタリク・ブテリン氏らによって考案され、世界中に研究組織が点在していますが、現在同社はPlasmaの開発コミュニティをリードするポジションにまで成長しています。

際立った実績としては、中部電力と共同で行われた、Plasma技術を活用した個人間電力取引システムの実証実験などが挙げられます。また上述のLayer X同様、Ethereum Foundationから、Plasmaの研究開発に対する助成金を獲得しています。

加えて、元々PlasmaはEthereumブロックチェーンの処理能力向上技術として発案されたものの、同社は今年夏にTezos財団からの助成金も獲得していることから、Plasmaをパブリックチェーン共通の2ndレイヤー技術へと押し上げる取り組みも行なっていることが分かります。

※Tezos : ビットコインやEthereumの問題点を解決する別のパブリック・ブロックチェーン

<参考記事>

6. Stake Technologies

概要:Substrateブロックチェーンの処理能力向上技術「Plasm」

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Image Credit : Stake Technologies

Stake Technologiesが開発・提供するのは、誰でも独自ブロックチェーンを構築できるフレームワーク「Substrate」のパフォーマンス(トランザクション処理速度)を向上させることを目的とした独自ブロックチェーン「Plasm Network」。

Plasm Networkに関しては、先日テストネットをローンチしたばかりですが、来年以降の商用化に向け高いスピードで開発が進んでいます。

また、これまで同社は世界最大級のブロックチェーン財団「Web3 Foundation」から3度に渡って助成金を獲得しています。(そのうち1つはLayerXの「Zerochain」と同様の助成金プログラムから)

ちなみに、同社のPlasmは上述のCryptoeconomics Labが開発するPlasmaに影響を受け設計されたプロダクトです。実際、両社は提携を実施しており、知見・技術に関してEthereumに強いCryptoeconomics Labと、Substrateに強い2企業で協力することで、ブロックチェーン処理速度の低さといった問題の解決を目指しています。

<参考記事>

7. EtherSecurity

概要:ステーキング「Stir Network」・リサーチラボ「Token Lab」・メディア「Stir Lab」

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Image Credit : Stir

EtherSecurityは、主軸事業としてパブリックブロックチェーンのノード運用サービス「Stir Network」を開発・提供しています。同社は今年6月にはEast Venturesからシードラウンドで数千万円の資金調達を実施しました。

近年、数多くのブロックチェーンが、合意形成アルゴリズムとして PoS(Proof of Stake)を採用し始めています。PoSでは、参加するノードは仮想通貨のステーク量(保有量)に応じて報酬を得やすくなります。

Stir Networkが行うのはそのノード運用受託サービスで、顧客から仮想通貨を預かりステーキング代行を行うことで、手数料という形で利益を生み出します。

運営企業EtherSecurity によれば、Stir は現在、Tezos、Cosmos、IOST といった仮想通貨の DPoS(委任 PoS)と、NEM の SuperNode 運用に対応しています。今後は Ethereum、Polkadot、NEM2 への対応も行う計画です。

また以前から「Stir Lab」の運営を行なっているのに加え、先月にはリサーチ・コミュニティ「Token Lab」を事業譲受していることから、メディア事業の拡大・多角化も行なっていることが分かります。

<参考記事>

8. HashHub

概要:コワーキング・スペース・Lightning Network・ステーキング・オンラインサロン・コンサルティング

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Image Credit : HashHub

HashHubは、ブロックチェーン企業向けコワーキング・スペースを主軸事業として提供する企業として、昨年7月ごろにスタートしました。現在では独自のLightning Network関連プロダクトの開発をはじめ、ステーキング・リサーチラボ・エンジニア教育・企業向けコンサルティングなどの分野にも参入し、事業の多角化を図っています。

独自プロダクトに関しては、Microsoft社との提携を通したAzure Marketplace上でLightning Networkの決済と開発ソリューションを可能にする「LN on Azure」の提供などがあります。

また今年9月には、Ethereum共同創業者のJoseph Lubin氏がCEOを務め、世界的にもブロックチェーンをエンタープライズで利用する取り組みの実例数が最も多い企業の1つ「ConsenSys」との提携を発表しています。日本国内で、同社の法人向けソリューション導入をサポートし、日本のブロックチェーン産業の推進を目指すそうです。

未だコワーキング・スペース企業だという印象も強いですが、実際、今では業界内でも最も幅広くブロックチェーン関連事業を展開できている企業の一つだと見受けられます。翌年のさらなる成長が期待されます。

<参考記事>

9. StartBahn

概要:アート×ブロックチェーン

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Image Credit : スタートバーン

スタートバーンは、アート領域にブロックチェーンの活用を試みる稀有なスタートアップです。「新時代のアート流通・評価のインフラを構築し、アートの可能性を拡げる」ことをビジョンに、自社プロダクト開発・アート展示会の企画及び運営・アート関連ビジネス向けのエンタープライズ・ソリューションなどの事業を展開しています。

メイン事業である「startbahn」は、アート作品の登録・売買機能を提供すると同時に、ブロックチェーンの技術を用いた「改ざんや紛失することなく、永遠に作品の価値が残る」作品証明書発行・来歴証明が可能なサービスです。

またエンタープライズ向け領域では、「SBIアートオークション」やウェブメディア美術手帖の出版企業「BTCompany」などに対しサービス提供を行なった実績を持ち、国内のアート市場活性化に貢献しています。

世界的に見ても、アート×ブロックチェーン領域に取り組むスタートアップは珍しく、日本ではStartbahnが間違いなくその代表的プロジェクトとなっています。アートは真贋証明や流通の透明性の部分でブロックチェーンの応用が期待される分野であり、今後の同社の成長に大きな期待が集まっています。

<参考記事>

10. doublejump.tokyo

概要:世界最大のブロックチェーン・ゲーム「My Crypto Heroes」

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Image Credit : doublejump.tokyo

doublejump.tokyoは、ブロックチェーンゲーム開発企業であり、取引高・取引量・DAUで世界1位を獲得したブロックチェーンゲーム「MyCryptoHeros」を提供する企業として、国内ブロックチェーン・ゲーム業界を牽引するスタートアップです。

昨年12月にはgumiより2億円の資金調達を実施し、業界初のテレビCM放送を行っています。また今年に入ってからは、「Coincheck」や「Deccuret」などの仮想通貨取引や、手塚プロダクションとのコラボ企画を連発するなど、事業拡大を目指し様々なチャレンジを実施しています。

著名VCのa16zは、パブリック・ブロックチェーン領域で最初に立ち上がる主要分野として、「分散型金融」・「Webインフラストラクチャー」・「ゲーム」の3つを挙げています。そのうち、デジタルアセット分野の主要活用例はゲーム領域なのですが、日本国内発のプロジェクトが、その領域で世界で首位の位置につけている事実は、驚くべきことです。

<参考記事>

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インフキュリオン・グループ、今年の日本のフィンテック業界を総括する10大ニュースを発表

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各種フィンテックサービスを提供するインフキュリオン・グループは26日、2019年の日本におけるフィンテック業界を総括する10大ニュースを発表した。 これは2014年11月に開設された同社のオウンドメディア「Infcurion Insight」で、同社シンクタンク事業部のマネージャー森岡剛氏が昨年の同シリーズに引き続き執筆したもの。フィンテックに特化した視点から、その年の出来事が簡潔にまとめられてい…

各種フィンテックサービスを提供するインフキュリオン・グループは26日、2019年の日本におけるフィンテック業界を総括する10大ニュースを発表した

これは2014年11月に開設された同社のオウンドメディア「Infcurion Insight」で、同社シンクタンク事業部のマネージャー森岡剛氏が昨年の同シリーズに引き続き執筆したもの。フィンテックに特化した視点から、その年の出来事が簡潔にまとめられているのが特徴だ。

今年のレポートの目次を見てみると、

  1. キャッシュレス決済利用が急増 消費者還元が効果
  2. PayPay が圧倒した QR コード決済 乱戦は続く
  3. 新型の与信サービスが拡大
  4. デジタル通貨とフィンテックがG20の論点に
  5. クラウド化する銀行
  6. 地銀・証券連携が進める地方銀行フィンテック
  7. 完全キャッシュレスの商業施設が登場 「現金顧客」へも新たな対応策
  8. オンライン本人確認の実運用開始
  9. 情報セキュリティにまたしても脚光
  10. スタートアップの企業価値高まる 成長力に注目

……の10項目。端的に整理すると、うち5項目がフィンテックのグローバルなトレンドの一部であり、残る5項目が日本独特の商習慣や消費税、政府主導のキャッシュレス化の影響を受けたものと見ることができる。

インフキュリオンデジタルが11月に発表した決済に関する動向調査でも、日本には決済プレーヤーが非常に多くいることが改めて確認できた。日本の約10倍人口がいる中国ですら、ザックリ言うと、UnionPay(銀連)、AliPay(支付宝)、WeChat Pay(微信支付)の3つで市場を包含できている一方、1.3億人ほどしかいない日本で既に300以上の決済サービス会社やプロバイダが乱立していることが確認されている。LINE Pay と PayPay は親会社同士の経営統合にもかかわらず、それぞれ別ブランドとして存続する公算が高いようだが、決済サービス会社やプロバイダの中には統廃合するところが出てくる可能性はある。

今年の例に倣えば、インフキュリオンは新年年初にその年の市場予測も行うとみられ、こちらにも期待したい。インフキュリオン・グループ代表取締役の丸山弘毅氏が代表理事会長を務める Fintech 協会 もまた、参加加盟各社(予定では、クラウドリアルティ、freee、TRUSTDOCK、マネーフォワード)が新年年初に2020年のフィンテック業界動向を占うプレゼンテーションを行う予定なので、状況が許せば BRIDGE でも取り上げたい。

<関連記事>

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思ったよりキャッシュレス化してなかったインドのフィンテック市場概観、実際に現地を訪れて感じたこと

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本記事では、前半にインドのフィンテック市場の急成長について、その背景とデータを基に概観し、後半は実際に3カ月インドのバンガロールに滞在した経験を通し感じたことについて書いてみたいと思います。 インドで何が起きているのか、どれくらいの成長規模・スピード感で、どんなスタートアップが存在しているのか、また現実的にローカル経済にどんな影響を及ぼしているのか、について知ってもらえたら嬉しいです。 インドとい…

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本記事では、前半にインドのフィンテック市場の急成長について、その背景とデータを基に概観し、後半は実際に3カ月インドのバンガロールに滞在した経験を通し感じたことについて書いてみたいと思います。

インドで何が起きているのか、どれくらいの成長規模・スピード感で、どんなスタートアップが存在しているのか、また現実的にローカル経済にどんな影響を及ぼしているのか、について知ってもらえたら嬉しいです。

インドという国と市場について

まずはインド市場の紹介から。インドは世界最後の超大国と言われる国家であり、その人口は数年内に中国を追い抜き世界トップに躍り出ると予測されています。2018年時点での人口は13億人で(日本の10倍以上)、2050年には17億人に達すると予測されています。

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Image Credit 世界経済のネタ帳

これまでのインドは、バンガロールが海外IT企業の開発拠点として大きく成長したり、インド工科大学の卒業生がGAFAMなどの巨大IT企業の役員になるといった実績から、IT業界から注目を集めてきました。

しかし現在はそれだけではなく、こうした成功で蓄積した資本・技術・人材の土壌を基に、スタートアップ支援や国家のさらなるIT化を推し進めており、凄まじい勢いでIT経済を成長させています。

インドのフィンテック市場概観

ここではデータを参考にしながらフィンテック市場の現況を概観していきます。MEDICI社のレポートによれば、フィンテック分野には2000社を超えるスタートアップが存在すると推定されています。分野ごとのスタートアップの数は下記画像が参考になりますが、ペイメントとレンディング、投資・資産運用領域が多くを占めています。

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Image Credit : Medici

下記のグラフは、2013年ー2018年のインド・フィンテック市場の投資動向を表しているものです。投資額・売却数は時期によりばらつきは見られますが、着実に上昇しており、前年の2018年は両指標共に最高実績をマークしていることが分かります。

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Image Credit : The Pulse of Fintech H’2

また、先日CB Insightが公開したリサーチ・レポート「Global Fintech Report Q3 2019」によれば、2019年第3四半期におけるインドのフィンテック市場の合計調達額は6億7,000万ドルであったのに対し、中国は6億6,000万ドルと、初めて調達額規模でインドが中国を追い越し話題になりました。

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Image Credit : CB Insight

「金融包摂」というスローガン

決済やレンディング市場、保険市場など含め、インドからは欧米に次ぐ勢いで、続々とユニコーン企業が誕生しています。ただ、インドと欧米のフィンテック・スタートアップの違いとして、インド発のサービスが「金融包摂(Financial Inclusion)」というスローガンを共有している特徴が挙げられます。

金融包摂とは、未だ金融サービスにアクセスすることができていない人々に対し、金融機会を提供することを意味します。銀行サービスを中心に金融インフラが整っていないインドでは、それらを補う形で、決済・融資・資産運用・保険系のスタートアップが登場しています。

銀行の代替・補完という意味では、特にレンディング領域での成長が顕著で、機械学習による与信審査を行い、銀行からの消費者・中小事業者向け融資を補助するようなスタートアップが数多く登場し、多額の資金調達を行なっています。

<参考記事>

実際、DCGのレポートによれば、デジタルレンディングは今後も急速に成長していくと予測されており、2018年に23%であったレンディング市場に占めるデジタル・レンディングの割合は、2023年には48%まで成長するとされています。

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Image Credit :DCG

実際に肌で感じたインドのフィンテック市場観

さて、ここまでは筆者自身がインドに行く前に既に調べていた内容でしたが、以下からは、実際にインドに訪れてから気付いたことをメインに書いていきます。ちなみに筆者が訪れたのは「インドのシリコンバレー」と呼ばれるIT都市バンガロールです。

思ったよりキャッシュレス化してはいない

まず第一に、「思ったよりキャッシュレス化していない」という印象を持ったことを覚えています。具体的にはキャッシュレスのことで、ショッピング・モールやチェーン展開してるレストランやカフェではカードやモバイルペイメントが使えても、現金を使う人は大勢いるし、ローカルな商店では、たとえばQRコードがあっても感覚的に9割以上が現金決済でした。

事前リサーチで、インド市場シェア1位のモバイル・ペイメント「PayTm」のユーザー数が4億人と聞いていて、その他にも中央銀行「UPI」による統一ペイメント・インフラについて大きく感銘を受けていたため、少し過剰に期待し過ぎてしまったかもしれません。ユーザーの母数も大きく普及スピードも早いので時間が解決する問題だとは思いますが、インドはまだまだ格差があり、貧困層ほど現金信仰が顕著であることが、ローカル経済が未だ現金主流である理由だと感じました。

格差に関してもう一つ言うと、インドの急成長しているフィンテック・サービスの中には、銀行口座がなかったり、クレジット・スコアが一定以下の人は利用ができないサービスがあったりします。金融包摂を標榜しているサービス中心とは言え、テクノロジーだけでは救えない格差や貧困があると、強く実感させられました。

<参考記事>

人口1000万人程度のバンガロールで上述のような状態であったため、それ以下の都市や地方経済では、さらにデジタル化率は低く、未だ現金中心の経済が残っているのだと予想できます。

デジタル決済市場は、既にGAFAと中国二大テック企業の寡占である

現地にいった後、インドの決済市場は既に世界最大のテックジャイアントの寡占なのだなと痛感するに至りました。まずGAFAと呼ばれるネットジャイアントのうち、Google Pay・Amazon Pay・WhatsApp Pay(他Libra)といったサービスが市場へ既に参入または参入予定しています。

<参考記事>

モバイル決済に関しては、先述した「PayTm」にはアリババ(及びアント・ファイナンシャル)がついており、その次に主流な「PhonePe」を運営するEコマース企業「Flipkart」にはテンセントの資本が入っています。

現地のオートリキシャー(小型タクシー)や商店の中には、上述の各モバイルペイメント・サービスのQRコードが沢山貼ってありました。

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Facebook傘下のWhatsAppは現在インド市場シェア1位のSNSで、WhatsApp Payのローンチを予定しており、FacebookのLibraは、実現可能性はさておき、インドを有力な市場と判断しています。

訪れるまでは、インドのフィンテック市場は未開拓地域(フロンティア)であるかのようなイメージを持っていました。しかし実際はそうではなく、世界のネットジャイアントらの市場競争が既に始まっていて、そのスピード感にはとても驚かされました。

さて、以上2つが最も印象に残ったことです。改めて振り返ると、インド市場には魅力的なフィンテック・サービスが多くあると感じています。

今回調べた範囲だけでは、気になる事例を全て書ききれないので、こちらの別記事(後日リリースの『途上国向けスタートアップ3つのまとめ』)にまとめましたのでぜひ読んでみてください。調べれば調べるほど興味深いモデルやスケールが桁違いのフィンテック・スタートアップを発見できます。インド×フィンテックに関心のある方は、ぜひ色々調べてみることをお勧めします。

日本国内にもインドのフィンテック市場に関心を持ち始めている投資家や起業家の方は少なくないと思います。そんな方がフィンテック市場を学ぶび始める最初の一歩として、何か当記事から学んでいただけることがあれば幸いです。これからも、インド市場の成長に注目していきたいと思います。

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