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20代経営者で30年後に一番大きくなるのは中嶋ーー隠れたキーマンを調べるお・ROXX山田氏

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編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。シーズン2として2020年に再開 求人企業と人材紹介会社間を繋ぐ求人流通プラットホーム「agent bank」の運営および、オンライン型のリファレンスチェックサービス「…

ROXX取締役COOの山田浩輝氏

編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。シーズン2として2020年に再開

求人企業と人材紹介会社間を繋ぐ求人流通プラットホーム「agent bank」の運営および、オンライン型のリファレンスチェックサービス「back check」を展開するスタートアップ ROXX。会社のバリューは「ROCK」「JAZZ」「PROGRESSIVE」、オフィスには多くのギターとドラムセット…。

まさに「ロック」なROXXの代表の中嶋汰朗氏は常日頃から革ジャンを身にまとい、多くのメディアに登場し、ロックスターさながらの存在感を放っていますが、そんなROXX、中嶋氏を影で支えるのが今回お話を伺った取締役COOの山田浩輝氏です。中嶋氏との運命の出会いから、新サービスを生み出す苦労など、とても多くのことを聞いてきました。ぜひお読みください!

彼は一通り自分の話したい事を話すと満足して帰っていった

大柴:中嶋さんとは大学の同級生なんですよね?

山田:そうです。同じ経営学部で10クラスくらいあったんですが、同じクラスでした。入学直後にオリエンテーションがあって、そこで中嶋と同じグループになったんですよ。名前の順でグループ分けされて、たまたま同じグループになりました。

大柴:オリエンテーションではどんなことをやったのですか?

山田:「タンブラー(容器)がもっと使われるようにするには?」みたいなお題で各グループごとに考えて、発表するようなものです。中嶋は最初っからしゃべりっぱなしで、グループを仕切っていましたね(笑。自分はその次くらいに発言をしてました。結局自分たちのグループが最優秀に選ばれました。

大柴:おぉ、すごい。それをきっかけに二人は仲良くなったんですか?

山田:いや、べつに仲良くなったわけではなく「認識」した程度です。連絡先を交換したわけでもなく。ただ教室でよく話しかけてこられました。彼が一方的に(趣味の)車のことや音楽のことやフィギュアのことなどを話すのをずっと聞いていました(笑。

大柴:山田さんも車や音楽などが好きなんですか?

山田:全く興味ないですね。興味はないんですが、人の話を聞くのが好きなので、相槌しながら聞いてました。彼は一通り自分の話したい事を話すと満足して帰っていきました(笑。

大柴:今とあまり変わらない(笑。そんな関係性なのに、中嶋さんが起業を志して山田さんをパートナーに選んだのはなぜなんですかね?

山田:授業でプレゼンをする機会が定期的にあるんですが、そういうのは自分はちゃんとやるタイプでした。ダサいプレゼンは嫌なので、資料も作り込んでたし、内容もまともだったと思います。そういうのを中嶋が見てて「いいな」と思ったのかもしれません。自分にないものを持ってる人間を集めて起業しようとしてたと思うので。バンドと一緒ですね。「俺がギター、ボーカルだからベースとドラムを探そう」というノリに近いと思います(笑。

大柴:なるほど(笑。中嶋さんも授業には出てたんですね

山田:興味のある授業にはちゃんと出てましたね。

大柴:じゃあ中嶋さんもプレゼンしてたんですか?どうでした?

山田:デザイン的なものはすごく良かったです。派手だったし、動きのある資料になってて「パワポでああいうことできるんだな」と感心しました。内容は大したことなかったですけど(笑。

大柴:めちゃ面白い(笑

前田敦子さんに教えてもらった「人間の心」

大柴:一旦時計の針を戻して、山田さんの子供の頃の話を聞いてみたいと思うのですが。一言で言うとどんな子供でしたか?

山田:生意気な子供だったと思います。年の離れた兄姉がいる末っ子で、人生を俯瞰して見ているような、冷めた子供だったと思います。口癖は「めんどくさい」でした。

大柴:高校1年の時に転校してるんですよね?

山田:はい。最初に入った高校は、東大を目指すような進学校で、東大を目指すので全教科やらないといけない。それが嫌だったんですよ。どうにも嫌でその学校を辞めて、他の学校に転校することにしたんですが、なかなか受け入れてくれる高校がなく、結局最初に入った高校とは全く文化の違う、偏差値は20下の高校に転校することになりました。

大柴:高校で転校するってあまりない事例ですよね

山田:そうですね。幸い両親は理解してくれました。転校した高校はいろんな人がいて、校風も自由だったので転校したことは正解でした。ただ、高校生活全体を考えて「面白かったか?」と問われると、そうではなかったと思います。

大柴:なるほど

山田:転校先の学校は大学に進学する人がほとんどいなくて、その中で自分は大学進学希望だったので、一人でいろいろと作戦を練りました。過去問を買ってきて、各大学の傾向を分析して、自分に向いている入学テストを実施している大学を選びました。結果的に青山学院に合格して入学することにしました。

大柴:高校時代はあまり面白くなかったということですが、何か趣味のようなものはなかったんですか?

山田:趣味というか、AKBにハマっていました。特に前田敦子さん。彼女に「人間の心」を教えてもらったようなものです。

大柴:どういうことですか??

山田:自分は幼少期からずっと冷めた子供でしたが、ある時、前田敦子さんが、望んでいないセンターに抜擢されて、その責任を果たすために努力をするが、彼女はそういう努力のようなものが表に出ないタイプで、誤解されがち。でも努力はしてるんですよ。そんな事を彼女が涙ながらに語ってる光景を見て、心を動かされました。

人の気持ちとか努力とかって必要なのか?とずっと思っていたんですが、彼女のスピーチを聞いて「努力って大切なんだな、人の気持ちって大切なんだな」と悟りました。その頃、哲学にもハマっていて、感情のような非合理的なものと哲学が結びついて。なので、AKBと哲学がその頃一番ハマっていたものです。

20代の経営者で30年後に一番大きくなれるのは中嶋

大柴:高校の転校という大きな出来事を経て、大学に入学し、クラスメイトにたまたま中嶋さんがいた。そして彼に誘われて一緒に起業した。ここまでの話をまとめるとこんな感じです

山田:はい。大学で「ベンチャー企業論」という講座を中嶋が受講していたんです。それに感化されて、彼は起業を決めたそうです。ある時「お前、どうせ就職できないだろ?一緒に起業しようぜ!」と言われ、「いいよ」と即答しました。

大柴:なぜ即答できたのですか?

山田:自分でも就職は向いていないと感じていましたし、いつか自分の人生の目標を達成するには、起業という道を選択する必要性があると考えていました。しかし自分にはトップに立って会社を引っ張るようなタイプではないとも自認していて、それができる人と起業するしかないと。中嶋はまさにそれができるタイプでした。

大柴:補完性のようなものですね

山田:はい。自分と真逆の人間なんですよ、中嶋は。自分が大嫌いなものが、彼は大好きだったりします。例えば「人に興味を持つ」「熱量を持って話す」というのは自分は全くないんです。「大人」と話す事も嫌い。でも中嶋はそういうのが好きなんですよね。

大柴:コミュニケーション力ありそうですよね、中嶋さんは

山田:いや、コミュニケーション力はないです。コミュニケーションって意思疎通ができる、こちらの言いたいことが伝わり、あちらの言いたいことを受け止めることじゃないですか。でも中嶋の言ってることは、よくわからないことも少なくないし、言葉が足りなくて理解できないとか、人の話もあまり聞いてなかったり(笑。

でも、人と接しようという姿勢がすごい。なんだかわからないけど、面白いやつだし、悪いやつじゃなさそうだな、って相手に思わせる能力はすごくあると思います。ただ、それが「コミュニケーション能力」かというと違うかなと(笑。

大柴:なるほど、確かに(笑。そう言えば、先ほど木下さん(Skyland Venturesパートナーの木下慶彦氏)に「ROXXの山田さんに取材行くんだけど何か質問ありますか?」って聞いたら「なんで中嶋をずっと信じ続けていられるのか?」って言ってて(笑。どうですか?

山田:そうですね、2つ理由があって、1つ目は「変わり続けている人だから」、2つ目は「上手くいくまで辞めないのが確実な人だから」ですかね。この2つがあれば失敗しないんですよ。

大柴:たしかに。そういうのがあるから信じ続けてる、一緒にやり続けているわけですね

山田:はい。彼はとにかく諦めない。失敗した事を自分の中に取り込む事ができる。頭の良さとかそういうのとは違うなにかを彼は持っている。

大柴:なるほど

山田:自分はNo2として、トップの彼には多くの失敗をさせたかったんです。失敗から学ぶことは多いので、会社にとって致命的になりうる事以外はやらせてきた。97%くらいは「いいよ、やろう」って言ってきた気がします。中嶋は昔は直線的に山を登ろうとしていた。それは焦りからくるものだと思うんですが、焦ると失敗して遠回りをする羽目になる。それを繰り返すことにより、失敗が身体に染み込んで、ようやく「一番高い山の登り方」を理解してきたように感じます。最近ようやく「急がば回れ」を本当に理解してきたように思えます。

大柴:成長を感じるわけですね

山田:そうですね。昔は短気で、短気が悪いわけではないですが、その悪い部分ばかりが出てしまっていた。でも失敗を重ねながらも前進し、いろいろな経験を身体に染み込ませていくうちに、正しいことが本能でわかるようになってきた。物事を本質的にロングスパンで考えるようになってきました。

ダメな部分をコントロールできるようになってきて、とても経営者としてバランス良くなってきた。僕は「現在20代の経営者で30年後に一番大きくなれるのは中嶋」だと確信しています。本気で覚悟を決めてるし、失敗を含むたくさんの経験を積んできている。現時点では遠い存在ですが、将来(青学の先輩であるサイバーエージェントの)藤田さんに匹敵する存在になれると思ってます。

緩んだ空気を一掃するため自ら先頭に立つ

ROXXのbackcheck

大柴:山田さんのnoteは昨年の9月で更新が止まっています。対外的なイベント出演なども同じ時期から極端に減ったように見受けられます。最後のnoteではリファレンスチェックサービス「back check」の立ち上げに集中するようなことが書かれていました

山田:コロナの影響もありましたが、対外的なことを全くやらなかった一年でしたね。ROXXはバンドがアルバムを出すように次々と新しいプロダクトを世に出していく会社にしたいと思っています。当時「agent bank」という人材データベースのプロダクトが主力に育っていましたが、その次のプロダクトを成功させないと自分たちの存在意義、未来はないと思っていました。

大柴:一発屋では終わらない、みたいな

山田:そうです。ですので、この「agent bank」に続くプロダクトである「back check」を絶対に成功させなくてはいけませんでした。でも当時社内は少し緩んだ状態でした。新しく入ってきた人も「イケてる会社に入ってきた」「agent bank」で安泰の会社」と思ってるようなとこがあった。そんなんじゃ未来はない。覚悟を持って本気でやらないと上手くいかない事を社内に伝える必要があったんです。それで自分が陣頭指揮を取り、自ら先頭で仕事に打ち込みました。メンバーに「本気」を要求するにあたって、自分が「本気」じゃなかったら伝わりません。

大柴:率先垂範ですね

山田:はい。もう倒れる寸前まで気力を振り絞って「back check」の立ち上げに奮闘しました。その結果、サービスは世の中に受け入れられ、社内の空気も締まりました。

大柴:ちなみに「agent bank」立ち上げの時はどういう感じだったんですか?

山田:あの時は「SCOUTER」しか事業がなく、しかも「SCOUTER」が伸び悩み、会社もブレ始めていたんです。社内の空気も悪くて、ある時メンバーの一人がキレたんです。「会社もサービスもブレブレじゃないか!」って。売上もなく、キャッシュもない、会社の空気も最悪。とにかく会社を存続させるために売上を作らないといけない。そこで「SCOUTER」に続く新プロダクトを作る必要になり、生まれたのが「agent bank」です。自分とキレたメンバー、そしてもう一人(現在の「agent bank」事業部長)の3人でやりました。

大柴:中嶋さんは「agent bank」に関わってないんですね

山田:はい、むしろ関わらせないようにしました。「俺らで売上作るからSCOUTERをやりきってくれ」って。中嶋にとって「SCOUTER」は愛着のあるサービス。社名も創業時のRENOからSCOUTERに変えたくらい。だからやりきらせたかった。それに、あそこで「agent bank」を中嶋がやるのは違うかなって思ったんです。

大柴:というと?

山田:彼自身「SCOUTER」はまだいけるって思ってたんです。だからそこに集中させたかった。それに「agent bank」は「会社が生きるための事業」だったんです、当時は。そういう生き残させるためのサービスに彼を関わらせたくなかった。彼には前向きな事をやり続けて欲しかったんです。彼には「一切関わらないでくれ」と意思表示し、自分が責任持ってやることにしました。サービス名もロゴも。そういうクリエイティブな事は中嶋が一番口を出したいとこですが、出させませんでした。

大柴:それでもやっぱり気になって口を出してきたりしませんでした?

山田:いや、それはなかったです。ロゴなんかも内心は「ダセェな」と思ってたみたいですが、口には出してこなかったです。「agent bank」は上手く立ち上がり、現在ではROXXの主力事業に育ちました。一方「SCOUTER」はサービスを終了しました。

大柴:でも中嶋さんとしては「SCOUTER」をやりきったし、失敗から学んだことも大きかったということですね

山田:はい。「agent bank」を立ち上げるまで、自分は管理系を主にやっていましたが、新規事業を立ち上げることができた。後日中嶋から「山田って事業作れるんだな」って言われました(笑。 自分しか事業を作れないという考えから、みんなもやればできるんだなというマインドに変化できたんじゃないでしょうか。

自分が語るビジョンは中嶋のビジョン

大柴:さて、そろそろ締めに入っていこうかと思うのですが、山田さんのこれからの展望など聞かせていただけますか?将来の夢とか

山田:将来の夢は明確で、高校を作りたいと思っています。

大柴:高校ですか?

山田:そうです。高校を転校するという経験もありましたが、とにかく高校時代はつまらなく、幸せだったとは言いきれない毎日を過ごしてきました。そんな僕が幸せになれるような高校を作りたいです。良くも悪くもROXXという会社は自分の人生のプロセスにすぎないんです。

大柴:なるほど

山田:先ほどもお話したように、中嶋はこの会社を続けるという覚悟を持っている。その礎となるような、中長期的な会社の成長の仕組み作りをCOOとしてずっとやってるんです。どこかで自分のゴールを見つけることができたら、その次のフェーズにもっともふさわしい人にCOOを譲り、自分は夢である高校設立に全力を注ごうと考えています。それまでは全力でROXXに集中します。

大柴:仕組み作りの進捗はいかがですか?

山田:新規事業が立ち上がった後に、ちゃんと事業を任せられる人材は育ってきました。ただ新規事業を中嶋、山田以外にゼロから生み出せるかというとわからない部分がある。そこもできるようになればかなりの前進です。

大柴:たしかにそうですね

山田:中嶋の人間的成長もあって、だいぶ組織として強くなってきたように思います。中嶋の言葉がだいぶ組織に伝わるようになってきたと思うので、そこは大きいですね。社長の言葉というのはどんなことでもいつも合理なんです。正しいんです。でも正しさがみんなに拒否されているような時期もありました。でもそういう空気感を社長が気にして、言いたい事を言えなくなったら終わりです。なので、自分がその間に入り、中嶋のビジョン伝達をサポートしてきました。自分が語るビジョンは中嶋のビジョンですから。

大柴:社長が言いたい事を言えなくなったら終わり…おっしゃるとおりですね。まさに「隠れたキーマン」「No.2」というお話をたくさん伺えました。ありがとうございました

編集部より情報開示:今回取材頂いたROXXは大柴氏がフェローを務めるEast Venturesの出資先でもあります。こちら情報開示としてお知らせいたします

過去最大の成長を遂げる人事評価クラウドHR Brain、13億円調達してタレントマネジメント分野へ拡大

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ニュースサマリ:人事評価クラウド「HRBrain」は12月4日、Eight Roads Ventures Japanをリードに、第一生命保険、SMBCベンチャーキャピタル、AGキャピタル、SCSKを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。増資に加えて3億円の融資枠を合わせ、調達した資金は最大13億円。前回ラウンドではスパークス・グループが運営する「未来創生2号ファンド」 を引受先とする第三…

HR Brain代表取締役の堀浩輝氏

ニュースサマリ:人事評価クラウド「HRBrain」は12月4日、Eight Roads Ventures Japanをリードに、第一生命保険、SMBCベンチャーキャピタル、AGキャピタル、SCSKを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。増資に加えて3億円の融資枠を合わせ、調達した資金は最大13億円。前回ラウンドではスパークス・グループが運営する「未来創生2号ファンド」 を引受先とする第三者割当増資の実施をしており、累計調達額は22億円となった。

調達した資金は主に体制強化に投じられ、現在80名ほどの体制を早期に120名ほどにまで引き上げる予定。HR Brainは従業員の目標設定から評価までの一連のプロセスをクラウド型で提供するSaaSモデル。2017年1月にサービスインしてから約1,000社が利用している。主なターゲットは100人から300人規模の企業で、昨今のデジタル化や感染症拡大のリモートワークへの移行に伴い、企業の導入が加速している。また、8,000名規模のヤフーが導入するなど、大型のエンタープライズでの一括導入も彼らの成長を後押ししている。

また、蓄積した各社の人材データを活用し、チーム生産性の最大化や人材配置の最適化といったタレントマネジメントの領域についても機能を拡張させている。ビジネスモデルは月額課金で、一定規模の人数のレンジに合わせて段階的な料金が設定される。

話題のポイント:HR Brainさんが大型調達です。同社代表取締役の堀浩輝さんにお話伺ってきましたが、各社のリモートワーク移行がHR Brainの利用加速をかなり後押ししているようです。4月から8月にかけてリード獲得自体は伸び続け、各社の予算決裁関連が通常に戻り始めた9月頃から一気に注文が入って成長率は過去最大になったそうです。

他の業務と異なり、人事評価はあらゆる企業が必要とするものなので、特にリモートワーク環境下ともなると、これまで対面でできていた意思疎通が難しくなりますから、自然と評価の方法もデジタル化しなければなりません。HR Brainはその一丁目一番地にブランドを構えることができたので、自然とこの状況が追い風になった、というわけです。

大切になるのはCSなどのフォローアップです。人事評価は各社ごとに異なるプロセスがありますので、チューニングが必要になります。この辺りは強く認識しているそうで、今回の調達における組織強化もこの辺りが注力領域になってきそうです。

もう一点、人事評価で堅調な伸びを示している以上、次の成長を考え始める時期にきているのが同社です。特にヤフー等の大型導入では、単なる人事評価だけでなく、そこから得られるデータを活用したタレントマネジメント、人材の可視化などの役割を求められるようになります。こういったニーズをオプションとして提供し、アップセルを狙うというのが基本的な考え方のようです。全く違うラインのプロダクトを立ち上げるというよりはHR Brainらしい着実な戦略とも言えます。

「例えば従業員のデータベースとしても使えますか?とか人材の分析や組織の分析、見える化ができるかなどのリクエストをもらうようになりました。特に大型の案件ではこういった要素が必要条件になることが多かったんです。そこで今年の春先から開発を進めていて、人材データベースや組織については機能を拡充しています。今後はピープルアナリティクス領域にサービスを拡大していく予定です」(堀氏)。

ところでこの時期のスタートアップの共通の悩みと言えば組織です。現在80名ほどの体制になるHR Brainですが、前述の通り規模を100名から120名体制に拡大させる予定です。一方、採用レイヤーについては今後、エンタープライズの導入を可能にするトップレイヤーのエグゼクティブクラスを誘う必要があります。堀さんにこの時期の採用条件はどのような考え方か聞いてみたところ、「ロマンとソロバンのバランス」として、前職レベルの報酬に加えてSO(ストックオプション)を提案しているそうです。

10年前ならいざ知らず、今の時期のスタートアップにSOを積むから分かってくれ、では確かに話は通りません。逆に言えば、現在成長株となっている(特に堅調な成長を期待されるSaaS系)スタートアップについては、人材の獲得競争はさらに激しさを増しそうです。

コロナ禍で変わる採用テクノロジー、注目は「採用の分散化」と「リモート福利厚生」

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の坂本祥子氏が共同執筆した。 お知らせ:11月21日にグローバル・ブレインでは支援先40社を集めたオンライン採用イベントを開催。詳細はこちらから 感染症拡大防止を受け、企業における採用活動も大きな岐路に立っている。 例えばオンライン面接の拡大はその…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の坂本祥子氏が共同執筆した。

お知らせ:11月21日にグローバル・ブレインでは支援先40社を集めたオンライン採用イベントを開催。詳細はこちらから

感染症拡大防止を受け、企業における採用活動も大きな岐路に立っている。

例えばオンライン面接の拡大はその影響のひとつだ。グローバル・ブレインでは先頃、採用ソリューションを手掛けるmanebi(マネビ)に出資したが、彼らもまた提供するオンライン採用・研修ソリューション「playse.」を大きく伸ばしている。昨年11月公開したウェブ面接ツールは、公開後8カ月で1,100社が導入した。

この大きな変化の時期、何が課題となり、どこに余白が生まれるのか。本稿では特に採用の前後で発生する変化に注目してトレンドを探ってみたいと思う。

オンライン面談は何を変える

オンラインでの面談を経験した方であれば、多少なりとも対面と異なる部分を感じただろう。候補者の雰囲気や性格など定性的な情報収集がやや難しくなった一方、多くのデータを収集できるようになったのは進歩と言える。

ここで注目したいのが面接プロセスの分散化というアイデアだ。

オフライン面接の場合は「場所」と「面接官」の2要素が必要となる。一方、オンライン面接の場合「面接官」だけでできるので、例えば採用スクリーニングのプロセスを外部委託することも考えられる。

シアトル拠点の「Karat」は、企業に代わってエンジニア候補者の面接を担当してくれる。顧客企業の方で予め選定した候補者たちを、彼ら独自の質問とスコアに当てはめて評価する。その結果得たフィードバックから企業は面接プロセスを先に進めるのだ。利用企業は第三者によってフェアに候補者を判断できる点も買われている。

なによりこの事例で理解できるのは「データ」の重要性だ。様々な企業のオンライン面接を請け負うことで、的確な質問やコーディングディスカッションの手順をノウハウとして蓄積することができる。結果、評価する際のスコアの精度はどんどん上がっていくことになるだろう。

ROXXが展開する「back check」

履歴の評価(リファレンス・チェック)も重要なポイントだ。バックグラウンドチェックは欧米のギグ・ワーカーの台頭によって市場を大きく拡大したサービスで、米国では「Checkr」が一番手として有名だが、日本ではROXXが展開する「back check」が拡大中だ。昨年10月に正式リリースしたばかりだが、既に累計導入社数は500社を突破1している。

例えばROXXのような企業がKaratが手掛ける採用スクリーニングを開始すれば、リファレンスまで含めた採用候補のスコアリング・ポートフォリオが一気通貫に提供できることになる。

オンライン面談の課題

しかし当然ながら課題もある。現在、採用担当は会えない分をなんとかしようと、コミュニケーション接点作ることにリソースをかけている。手間も大きく、応募者側も継続的にコンタクトが欲しいわけではない。オンラインになった結果、辞退しやすくなったことも要因としてある。いわゆる「ドタキャン」だ。

この効率化を進めているのがmanebiのソリューションになる。現在、playse.ブランドウェブ面接eラーニングを展開しており、9月から選考辞退などを防止するエンゲージメントソリューションを開始した。特に重要なツールが動画で、オンライン就職活動における動画情報提供は、7割以上が志望動機向上につながるという調査結果もある

mabebiの展開する「playse.エンゲージメント」

playse.エンゲージメント」は動画で採用候補者・新入社員に会社の文化やルールを浸透させるツールで、二次面接の後に動画A、オファー後に動画Bのように視聴状況を確認しながら選考プロセスと動画を紐づけ、また、各動画の視聴後にテストをすることで浸透度を測ることも可能になっている。建設関連の利用企業はこれにより面接辞退の率が昨年比で50%も改善した。

さらにデータを活用することで、将来的には採用目標数や達成度を求職者の志望度(情報取得の度合いで計測)、選考状況、プロセス途中のアンケートなどから可視化・予測することも可能になる。

定着支援に必要な福利厚生の考え方

こうやって採用後にやってくるのが「定着」だ。いわゆる離職率を下げる一連の施策を、企業から離れた場所にいる従業員に対して的確に実施しなければいけない。

ここで考えておきたいアイデアがリモート環境でも使える福利厚生だ。「Zestful」は従業員が自分で福利厚生内容を選べるサービスで、NetflixやStarbucks、Spotifyといった私たちが日常的に使うようになったサービスを従業員が自由に選び、与えられた福利厚生予算を自分の裁量でパッケージングすることができる。

Zestfulの利用企業は、同社が提携するベンダーの中から従業員に提供したいサービスを選び、プログラム名を付ける。たとえば月最大50ドルまで補助される「Healthy&Happy」と名付けたプログラムから、自由にClassPassやCalm、Headspaceといった運動・ウェルネス系サービスを従業員が選べたりする。従業員が通わないような指定ジムでしか提供されない福利厚生より柔軟性を持つのだ。こうしたプログラムは複数持つことができ、仮に企業側が従業員の健康を推進したいのならば、Healthy&Happyに対する予算割合を増やす設計にもできる。

たとえば企業がリモート環境下でも健康的な生活を送って欲しいと思い、東京に多く拠点を持つジム費用を浮かせる福利厚生パッケージを提供したとしても、同じ系列ジムを持たない遠方のリモート社員は使えない。このギャップを埋める柔軟性が必要となる。そのソリューションの1つがZestfulにある。

HRWinsによると、ベンチャーファームは2019年の第1四半期だけでHRテック企業に17億ドルを投資しているというデータもある。また別のレポートによると、2019年の投資額は238件で53.3億ドルに達し、2018年の投資総額40億ドルから20%以上増加している。感染症拡大という未曾有の出来事で、HR市場も大きく動くことが予想される。新たな課題をいち早くキャッチすることが求められるだろう。

「Meety」がコロナ禍でピボット、企業の〝なかのひと〟と繋がれるカジュアル面談プラットフォームに

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東京を拠点とするスタートアップ Meety は14日、カジュアル面談プラットフォーム「Meety」をβローンチした。Meety は昨年11月に企業の人材採用に特化したミートアップ掲載プラットフォームとしてローンチしていたが、コロナ禍で直接対面でのミートアップが抑制される中、事実上のピボットとなる。 Meety はミートアップ掲載プラットフォームとして、サービス開始4ヶ月目となる今年2月時点で登録企…

Image credit: Meety

東京を拠点とするスタートアップ Meety は14日、カジュアル面談プラットフォーム「Meety」をβローンチした。Meety は昨年11月に企業の人材採用に特化したミートアップ掲載プラットフォームとしてローンチしていたが、コロナ禍で直接対面でのミートアップが抑制される中、事実上のピボットとなる。

Meety はミートアップ掲載プラットフォームとして、サービス開始4ヶ月目となる今年2月時点で登録企業数が120社を突破していたが、2月後半からの新型コロナウイルス感染拡大に伴うイベント自粛の影響でイベント掲載数は激減。Meety 代表取締役の中村拓哉氏は、ミートアップのオンライン化も考えたが、採用につながる方法としては不向きとの判断に至ったという。

採用目的のミートアップでは、「◯◯さんは今キャリアをどうお考えですか?」といった、参加者の転職意欲を把握するための質問を企業はしたい。以前のミートアップの時は、そんな質問を軽食を交えた交流の場で行っていた。ミートアップがオンライン化されると、1:多の環境になるため、そのような質問をしづらく、採用には不向きと考えた。

Image credit: Meety

ユーザヒアリングなど半年以上にわたる試行錯誤を経て、Meety がようやく辿りついたのが企業の〝なかのひと〟と繋がれる直接繋がれるカジュアル面談プラットフォームだ。カジュアル面談では転職サイトやスタートアップ各社が先行するが、依然として定義が曖昧であるゆえ、企業と参加者の間で期待感のズレが散見されるため、Meety では〝なかのひと〟を際立たせる C2C のモデルを採用したという。

Meety ではまた、カジュアル面談をとことんカジュアルにするため、求人・求職だけにフォーカスしない話題の場を提供する工夫も取り入れている。〝なかのひと〟が「私の話せること」というお題目を提示し、参加者にそれを選んでもらって会話を弾ませることも可能だ。「気になる」を送り双方がマッチングできる点は、さながら男性と女性のマッチングアプリを彷彿させる。

compass や Peatix などミートアッププラットフォームを見ると、カジュアル面談の勉強会とかいっぱい開かれている。企業や参加者らからヒアリングしながら、カジュアル面談の事故りそうな点を徹底的に潰していったら、今の Meety の形になった。10月上旬の段階で100人くらいの先行ユーザ(参加者)が使ってくれていて、反応は悪くなさそうだ。(中略)

転職市場は売り手の市場ではあるけど、候補者ファーストの市場になっているかどうかは疑問。定義が曖昧なもの(カジュアル面談)を企業が運用すると、企業によって使い方や対応が分かれてしまう。〝なかのひと〟と参加者(候補者)をつなぐプラットフォームにしたのは、そんな理由からだ。(中村氏)

Image credit: Meety

「〝なかのひと〟と参加者をつなぐ」と表現するとリファラル採用への近似をイメージさせるが、リファラル採用は個人が持つ友人ネットワークの人数が上限になってしまうため、リファラル採用を目指すことはしないと中村氏は言い切る。むしろベンチマークしているのは、ビジネスパーソンのマッチングアプリ「Yenta(イェンタ)」やカジュアル募集ができる「bosyu.me」などだ。

C2C なアプローチから始めるものの、Meety では今後、企業向けのサービスメニューを充実していきたいとしている。採用プロセスに載った候補者を扱う ATS(採用管理システム)は国内にも複数存在するが、採用プロセスに載る前段階の候補者をフォローアップ・管理するツールはまだ無いため、カジュアル面談の運用やタレントプールを管理できる TalentCRM を一元化した機能の実装を計画しているようだ。

はじまる「シン・副業」:副業収入以上に重要なもの(4/5・後半)

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報酬よりも大事なものとは (前回からのつづき)キャリア形成における副業の役割はどう考えますか 岩崎:育成観点では、流行りの言葉で言うなら、「会社が育成してくれる」というメンバーシップ型の時代から、個人の専門性が問われるジョブ型の時代に変わる過渡期において、副業をはじめとした「仕事の実践」が成長・育成の手段になることは必然だと考えています。 今までは、研修やジョブローテーションがその役割を担っていま…

報酬よりも大事なものとは

(前回からのつづき)キャリア形成における副業の役割はどう考えますか

岩崎:育成観点では、流行りの言葉で言うなら、「会社が育成してくれる」というメンバーシップ型の時代から、個人の専門性が問われるジョブ型の時代に変わる過渡期において、副業をはじめとした「仕事の実践」が成長・育成の手段になることは必然だと考えています。

今までは、研修やジョブローテーションがその役割を担っていました。しかし、企業は即戦力を、求職者は実践経験が欲しいとなると、どうにも足りない。YOUTRUSTも、副業を探している人には、「1ランクアップの役割 or 斜めの職種/スキル」にチャレンジしてみること、企業側にもそのように少し足りない部分がありそうな人も積極的に声をかけてみるように勧めています。

実戦投入による成長というのはOJTの比ではないですからね

岩崎:ちょっと背伸びすることで、その分本気度も高まりますし、きちんと成果が出ればプロフィールに書ける実績になるし、自信にもつながる。また、企業としても自社でかけられない人材育成のコストを削減できるので、メリットは大いにあります。また新しい経験・スキルをもつ副業者がチームに加わることで、既存チーム(≒社員)への育成効果も期待できます。弊社でも新しいサービスの開発に当たって、エンジニアが新言語を学ぶ動機付けになったり、営業トレーニングの実践を行って磨き込みがなされていたりします。

すごい副業、面白い企画ですよね。これはなぜ始まったのですか?

岩崎:背景は、至ってシンプルで「より多くの人に『副業』を知ってほしい」ということがきっかけです。8月に ユーザー向けに調査 をしたところ、副業未経験者が副業をしない理由の第1位が「副業の探し方が分からない」というものでした。本業での禁止や税金面での不安を上回る結果だったので驚きました。

だったら、皆がやってみたくなる副業を募集すれば、話題性も相まってまだ副業をしたことがない人や、探し方が分からないという人にも届くのではないかという思いでこの企画を始めたんです。

また、せっかくやるのであれば募集する方にもメリットがあるように、という観点で、各企画毎に詳細をご本人とすり合わせて決めています。正社員を見据えての副業の時もあれば、今回の南場さん企画のように、本人の「今必要としていること」に合わせた副業の時もあります。ちなみに「すごい副業」の企画も、YOUTRUSTの副業社員がメインで進めています。

副業を通じて経験するとキャリアに繋がるケース:画像提供:YOUTRUST

これまで副業はどちらかというと内職的なおこづかい稼ぎのイメージが強かったですが、向こう10年でこの領域はどのようなポジション変化を起こすとお考えですか

岩崎:収入獲得以上に、自分のキャリアを形作る上で欠かせない経験になります。

10年後には、「本業/副業」という概念はなくなり、雇用ステータスに縛られないキャリア形成が進んでいくと思います。正社員も業務委託もアルバイトも契約社員も雇用ステータスは自分の好きなように選べるし、正直あまり重要なことではなくなります。緩やかにつながったコミュニティのなかで、プロジェクトベースで人が集まったり、解散したりする、そんな未来になると確信しています。

履歴書や面接を必要とする「転職活動」はなくなり、代わりに必要になるのが「信頼」と「スキル」です。信頼とスキルを積んでおかないと、噂はすぐ広まり、声がかからなくなります。

今現在でも、ベースラインが満たされている優秀な人は、副業やフリーランスで数社手伝った後、その中で1番エキサイティングな職場を次の職場に選ぶという転職活動をしている方が増えてきているのを実感します。この動きが(キャリアを考える人にとっては)当たり前になっている未来が早く来るのを、期待していますし、その波を先導するサービスでありたいです。

ありがとうございました。

ーー筆者も長らくフリーランスという働き方を続け、媒体の立ち上げをきっかけに、PR TIMESという組織と、個人を中心としたユニットの両方を行ったり来たりするようになった。ここで重要なのはやはりスキルだ。技術があるからこそ依頼があるし、プロジェクトの中にポジションを見つけることができる。

一方、組織として動く場合にはカルチャーへの参加も重要なポイントになる。

副業には必ず「本業」がある。特に企業で働く人は、その企業のルール、カルチャーに促した行動を求められるはずだ。一方、同じ「ムラの中」で過ごす時間が長くなると、どうしてもスキルの幅が広がらなくなる危険性が伴う。副業を育成のチャンスと捉えるならば、この「スキル」にフォーカスした活動を考えるのがよいと思う。岩崎氏の話を聞きながらそう改めて思った。

次回は副業をきっかけに事業を始めた人のストーリーをお届けする。(次につづく)

はじまる「シン・副業」:副業はキャリア形成に役立つのか(4/5・前半)

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(前回からのつづき) 副業に関するテクノロジーや採用ステップとしての利用シーン、大企業や行政がどのようにこの働き方に向き合っているのか、という件について綴ってきた。今回と最終回は副業という働き方を選択した人たちの話をお伝えしたい。 リファラル採用という仕組みはここ10年、ソーシャルメディアの発達と共に一般化した手法だ。友人つながりを可視化し、そこでのデータや口コミを元に採用に繋げよう、という動きだ…

(前回からのつづき) 副業に関するテクノロジーや採用ステップとしての利用シーン、大企業や行政がどのようにこの働き方に向き合っているのか、という件について綴ってきた。今回と最終回は副業という働き方を選択した人たちの話をお伝えしたい。

リファラル採用という仕組みはここ10年、ソーシャルメディアの発達と共に一般化した手法だ。友人つながりを可視化し、そこでのデータや口コミを元に採用に繋げよう、という動きだ。これを副業に取り込んだのがYOUTRUSTになる。今年1月にはW venturesやデライト・ベンチャーズ、STRIVE、TLMなどから資金調達を成功させた。社員の「友達の友達」という範囲までを対象に募集ができる仕組みで、現在、12名の社員体制中、10名全員が副業またはインターン経由での採用で、うち6名はYOUTRUST経由での採用なのだそうだ。

副業は本業と同等の時給水準に

副業に関する報酬・時間のアンケート(出典:YOUTRUST調べ)

彼らが興味深い調査結果を公表している。副業に関する報酬の調査だ。YOUTRUSTのユーザー240名ほどを対象にしたもので、8月にウェブアンケートの形式で実施された。これによると、時給換算にした際の副業報酬は2,000円から3,000円が最多で、この水準だけを見ると本業と同等もしくは高いと回答した人が半数以上になっている。

また、全体の7割が副業に1週間で10時間以内の時間を充てているという。具体的な報酬額としては1カ月10万円を超えるあたりがボリュームゾーンでこれも半数近くとなっている。

YOUTRUSTのユーザーのみ、かつスポットのお仕事と雇用の時給換算を比べているので偏りは仕方ないにしても、それでも単なる文字入力などの「副業=お小遣い稼ぎ」ではなかなか得られない時給水準と言える。このデータからも副業に対する変化が窺い知れる。

副業はキャリアにどう影響するのか

それともう一つ、YOUTRUSTが仕掛ける面白いキャンペーンが「すごい副業」だ。著名人の依頼にスポットを当てた企画で、先日、ディー・エヌ・エー代表取締役会長の南場智子氏の「ウォーキングパートナー」の募集を開始していた。自身が得意とする分野の話題を散歩の時間を使ってマンツーマンでレクチャーするという、なんとも稀有な体験だ。

そもそも副業を企業がOKとする場合、「自社の事業と完全に競合しないもの」にしているケースが多い。デザイン事務所の社員が個人でデザインの仕事を受けてしまったら、本業に悪い影響を与える可能性があるだけでなく、本人も単なるお小遣い稼ぎの延長にしかならない。でも、もし自分のノウハウをこうやって経営者にレクチャーすることで、知見を整理したり、新しい出会いに繋がることは自身のキャリア形成にも大きく寄与する。ましてや本業の方に案件がやってきたらなおよしだ。

副業が自身の成長にどのように寄与するのか。この点についてYOUTRUSTの創業者で代表取締役の岩崎由夏氏に話を聞いた。(太字の質問は全て筆者、回答は岩崎氏)

人が知り合いベースで繋がって成長する、という一見すると再現性がなさそうな採用・育成プロセスに「副業」というお試しを挟むことで「あるフォーマット」に落とし込める可能性があると感じてます

岩崎:採用観点では、すでに「副業が採用アトラクトの手段」として確立してきているのを感じます。スタートアップ界隈において、企業/求職者ともによく聞く声としては「誤った判断をしたくない」ということです。規模が小さいほど、1人の入社インパクトは大きいので、リファラルは良かったとしても、いざ自社で同じような結果になるかは実際に一緒に働いてみないと分からないですよね。働いてみることで、実務の相性のみならず、カルチャー・人間関係を体感した上でお互い判断ができるので、判断ミスは格段に減ります。また、当然ながら関わる時間や人も増えるので、必然的にアトラクトできる機会も増えます。(次につづく)

はじまる「シン・副業」:神戸市が副業人材を活用、変わる大企業の意識(3/5)

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(前回からのつづき)コロナ禍で変わる働き方を、副(複)業という視点で考察している。関連するテクノロジー、採用ステップとしての副業に続いて、今回は行政や大企業がこの副業についてどのような視点を持っているのかを考えてみたい。 24日に開始された神戸市の取り組みがタイムリーだ。 40名ほどの広報関連業務を手掛けられる人材を副業で求めたケースなのだが、興味深いのはやはり神戸市「外」に注目した点だろう。登庁…

(前回からのつづき)コロナ禍で変わる働き方を、副(複)業という視点で考察している。関連するテクノロジー、採用ステップとしての副業に続いて、今回は行政や大企業がこの副業についてどのような視点を持っているのかを考えてみたい。

24日に開始された神戸市の取り組みがタイムリーだ。

40名ほどの広報関連業務を手掛けられる人材を副業で求めたケースなのだが、興味深いのはやはり神戸市「外」に注目した点だろう。登庁を不要にして幅広い人材を求めることにした。もちろん、プロジェクト単位で言えば、広報やPRなどのプロフェッショナル性が求められる業務を東京や大阪など県外・市外の力を借りることは特に目新しいわけではない。しかし、副業というやや「中に入った」チームワークとして行政がこの働き方に注目したことはやはり、新しい働き方の流れを感じさせる。

今回、このプロジェクトをプラットフォームとして支えたのがクラウドワークスだ。今年1月に立ち上げたハイクラスの副業プラットフォーム「クラウドリンクス」は累計の登録者数5,500名に拡大している。同社の説明によれば、CxOクラスの人材が登録者全体の2割、マーケティング職をはじめとするビジネス系人材が6割で、また、副業者の9割がテレワークにて参画しているそうだ。首都圏のスタートアップなど累計で300社ほどが利用し、また今回のような神戸市といった行政利用も始まっている。

このプロジェクトの事業責任者を務める井上亮氏に企業サイドの思惑などについて話を聞いた(太字の質問はすべて筆者、回答は井上氏)。

コロナ禍で企業の「副業人材活用」はどう変わった

クラウドリンクス事業責任者の井上亮氏

企業や行政における副業(スポットで仕事をする方々)の見方、ひいてはクラウドソーシングを提供してきたこれまでの経緯、経験からどのような変化を感じていますか

井上:ライオン、ヤフー、ユニリーバを皮切りに、今年に入って大手企業や行政が副業人材を募る新たな潮流が生まれつつあります。単に外部人材を募集する企業・行政が増えているのではなく、その依頼内容に変化が見られるのが特徴です。

従来副業の依頼は、決められた業務を遂行する「実行フェーズ(Do)」がメインとなり、発注側はコスト削減を目的としてノンコア業務を単発で副業者に依頼。結果、副業者にも副業=自分の既存のスキルを再利用して収入を得る、お小遣い稼ぎのイメージが定着していました。

しかし、今年に入ってからの大企業・行政の副業募集では、まだ見ぬ課題に向きあったり、課題そのものを発掘する「企画フェーズ(How・What)」を副業者へ依頼したりするケースが増え、副業者という外部人材に、事業・組織のコア業務を委ねる動きが見受けられるようになりました。

チームワークにおける「周辺から中心」への移動ですね

井上:副業者への期待が「コスト削減」から「付加価値創造」へと変化するこの流れは、企業・行政が社内にない知見や、既成概念にとらわれない斬新なアイデアを積極的に取り入れることで、訪れるニューノーマル時代に向け速やかに対応したいという姿勢が現れています。

スタートアップ企業で企画フェーズを副業者やフリーランスに依頼するケースは既に一般的ともいえますが、大企業・行政のこうした動きにより流れは加速し、今後副業は採用に次ぐ新たな人材活用の手段として一般化していくと考えています。

またこの流れにより、個人の副業への意識もお小遣い稼ぎから「本業では得られないスキル・経験を積む新たな成長の場」「将来に向けたネットワーク構築や見識を広げる機会」など、キャリア形成を目的とした自身の資産の底上げツールとして活用しようという動きが生まれており、そうした意味で我々は、2020年を本当の意味での「副業元年」と捉えています。

一方、副業採用は特に一般企業における「業務委託」として定着している面もあります。副業プラットフォームを活用するメリットは

井上:やはりメリットはトップ企業で就業経験のある優秀な副業人材に、スピーディーにアクセスしマッチングを図れる点にあると考えています。知名度のある大企業であれば、当然自前で募集し多くの優秀な人材をスピーディーに集めることは可能です。

しかしながらそのケースに当てはまらない設立間もないスタートアップや、地方の中小企業の場合、自社で副業者にゼロからリーチするには時間・費用など多くのコストが生じます。副業者を活用する真の目的は、マッチング後の事業・組織へのスピード感あるイノベーション創造にあるため、その手前のマッチングに工数を掛けるのは本質的ではありません。

確かに即戦力が魅力ですからね

井上:また、クラウドリンクスとしては専門人材に「プロジェクトの課題解決案を一緒に考えてほしい」といった相談レベルでの依頼もできる点が挙げられます。背景や課題を伝え助力をお願いするスタンスでの依頼の可能なため、専門人材である応募者と「課題をどう一緒に解決していくか」の部分から、同じチームの一員としてコミットしてもらうことが可能です。

企業がハマる副業活用の課題

逆に副業のデメリットや懸念点を企業側はどうみていますか

井上:いくら優秀な副業者の方に参画頂けても、課題の抽象度が高いほど、受け入れ側の体制が整っていないとその力を存分に発揮頂くことは難しく、実際に受け入れ体制が整っていない企業も数多くあるのが現状です。受け入れポイントとしては以下3点となります。

  1. 自社の課題を見つめる・・・重要度が高く、緊急度の低い課題と、自社の目指す姿を洗い出す
  2. 自社の能力を可視化・・・社員の業界・能力・専門教育を分析し、副業人材に任せるべき領域を洗い出す
  3. 協働の意識、経営者、プロジェクト責任者両方のコミットメント・・・マネジメント及び現場が不確実性を乗り越えた付加価値創造に対して、言い訳なしでやりきろうとしているか

特に重要なのは3となり、不確実性に向き合い副業者と共に課題を解決していくというコミットメントが、経営者を中心とするマネジメントレイヤーと現場の責任者の両方になければ「どんな手段をつかっても、過去の慣例を破壊させてでも成功させる」というイノベーションには繋がらず、どれだけ優秀な方に来ていただいても成果が出ない状態となります。

神戸市さんで取り組みを開始されましたが、今後、企業や自治体が副業で新しい優秀な人材を取り入れていく上で留意すべきポイントは

井上:1つは、委託事業に慣れているからこそ、丸投げの姿勢になってしまうことです。丸投げの姿勢では、内部の人が外からの意見・アイデアを取り入れ成長することは見込めませんし、プロジェクトでも大きな変化・インパクトを起こしづらいです。丸投げするのではなく副業者と学び、一緒に成長する気持ちが重要です。

もう1つは予め決められた範疇の中でしか仕事をさせなくなってしまうことです。これは特に行政ですが、やはり仕組み的に先にある程度決めた予算と決めた計画の中でリスクなく進めることが正とされていることが多いです。

しかし、副業者を受入れる理由に「既成概念にとらわれない斬新なアイデア」を期待されているのであれば、プロジェクトを進める中で変化に柔軟に対応する姿勢がないと、結局「当初に決めた範囲」の中だけの仕事しか任せられず、これまでの委託・外注とそんなに変わらなくなってしまう可能性があります。

ありがとうございました

ーー副業を考える上で、課題のところにトップコミットメントがあったのは前回掲載したOffersと共通している。副業を内職の人として捉えた場合、やはりマイクロタスクに留まってしまうのだろう。確かにヤフーや神戸市もそれぞれトップレイヤーが副業の人材活用を自らスポークスマンとして伝えていた。そう考えると、こういった可能性の高い人材活用は、経営陣の思考次第ということになってくるのだろう。

次回は少し視点を変えて副業と人材の育成についてケーススタディをお伝えしようと思う。

神戸市が副業人材を公募、「登庁不要」のリモートワークで市外人材の登用を視野に

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神戸市が副業人材の公募を開始している。24日に公表されたもので、クラウドワークスが提供する副業マッチングサービス「クラウドリンクス」を通じて40名の副業人材が公募される。副業人材でかつ、テレワーク完結での募集は神戸市として初。 募集期間は9月24日からで締め切りは募集業務によって異なる。募集内容はクリエイティブ関連が中心で、公式ホームページのモニタリング、広報媒体記事制作、動画企画、写真・動画撮影…

神戸市が副業人材を公募(画像:神戸市・クラウドリンクス

神戸市が副業人材の公募を開始している。24日に公表されたもので、クラウドワークスが提供する副業マッチングサービス「クラウドリンクス」を通じて40名の副業人材が公募される。副業人材でかつ、テレワーク完結での募集は神戸市として初。

募集期間は9月24日からで締め切りは募集業務によって異なる。募集内容はクリエイティブ関連が中心で、公式ホームページのモニタリング、広報媒体記事制作、動画企画、写真・動画撮影、バナーデザイン、動画編集となっている。広報についての専門技術と経験を持つことが条件で、原則、登庁を伴わないリモートワークでの業務になる。契約形態は業務委託で、勤務時間も業務によって週1時間のものから30時間程度のものまでとなっている。

神戸市はチーフイノベーションオフィサーやクリエイティブディレクターなど、専門職の民間人材登用を実施してきた。登庁を伴わないことで神戸市外の人材にも視野を広げ、東京などの首都圏一極集中を是正したいとしている。また、関わる人材については市民サービスに関わることで、自身のキャリア形成に効果が生まれることが期待できるとしている。

公募を手掛けることになったクラウドリンクスは副業マッチングサービスとして2020年1月にサービスを開始。現在、副業・兼業の累計登録者数は5,500名を超える。マーケティング職やビジネス系人材が6割で、リモート環境で参加する人材が9割となっている。同社では、今回の活用例のように行政がリモートで県外人材を活用するきっかけになるとしている。

はじまる「シン・副業」:採用前の“副業“というアタリマエ、そのメリットと課題(2/5)

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(前回からのつづき)先日、とあるスタートアップの取材で採用がとてもスムーズになった、という話を聞いた。やり方は?と尋ねるとどうということはない、しばらくはアルバイトのような形で一緒に働いてから実際のスキル・カルチャーマッチを確かめるようにしたというだけのことだった。 実際、スタートアップに限らずおける採用マッチングというのは非常に難しい。HRテクノロジーが随分と話題になるようになったが、やはり未だ…

(前回からのつづき)先日、とあるスタートアップの取材で採用がとてもスムーズになった、という話を聞いた。やり方は?と尋ねるとどうということはない、しばらくはアルバイトのような形で一緒に働いてから実際のスキル・カルチャーマッチを確かめるようにしたというだけのことだった。

実際、スタートアップに限らずおける採用マッチングというのは非常に難しい。HRテクノロジーが随分と話題になるようになったが、やはり未だに主流は人の手を介した紹介がほとんどだ。この「マッチング」というプロセスに今、副(複)業をワンステップとして取り入れようという動きがある。

overflowが提供するOffersは副業プラットフォームのひとつで、サービス開始は昨年5月。今年3月にはEast Venturesなどから1億円のシード資金を獲得した注目株だ。彼らの特徴はハイクラスのエンジニアやデザイナーに絞ってマッチングを展開している点で、オープンなマッチングではなく、プロフィールを見て企業側が一本釣りするスカウトの仕組みを提供している。

CTO候補を副業で見つける

Offersでは副業を前提とした採用プロセスが走る(画像:Offersオウンドメディアより

このような仕組みということもあって、Offersを利用する企業は採用を前提にしようというケースもある。スニーカーのC2C「スニーカーダンク」を手がけるSODA社は利用企業のひとつで、同社のCTOを副業プロセスから見つけることに成功した。

昨年8月にスタートしたばかりの同社だが、スニーカーのマーケットプレースは海外「StockX」をはじめ、国内でも複数社がここ1、2年で取り組みを開始している注目市場になる。当然、開発や拡大のスピードが命になるため、組織拡大はスタートアップ・レースを勝ち抜く鍵となる。

元々、副業という形で社内エンジニアが近しい人に声かけしてチームを作っていたそうだが、どうしてもコードレビューできるトップクラスとなると手が足りない。一方で幹部候補を採用するまでの時間は、競合とのレースに出遅れるリスクを抱える。そこで同社は「採用前提で」副業のメンバーを集めることにしたのだそうだ。結果、2週間ほどで足元の戦力かつ、将来的なCTO候補と出会うことができた。

また、このケースでは条件面等で正社員を望めない場合には、契約終了を前提としたところもポイントになるだろう。実は筆者も過去、開発の方と業務委託契約し、副業で手伝ってもらったことがあったのだが、難しかったのがこの「辞め時」だった。どうしてもカルチャーマッチしていない状況を理解しつつ、人間的な部分で数カ月を過ごしてしまったのは双方にとってよくなかった。

採用ステップとしての副業は最強なのか

特にハイクラスの採用になると、一定のお試し期間が必要なのは目新しい話ではない。これを副業と読み替えることにどのようなメリットや課題があるのか。overflowの代表取締役、鈴木裕斗氏に話を聞いた。(太字の質問は全て筆者、回答は鈴木氏)

これまでも企業で使用期間や、アルバイト的に手伝ってもらってから採用、というフローは存在していました。ここに副業という考え方やOffersのような仕組みが入ることで何が変わる(もしくはどこにメリットがある)のでしょうか?

鈴木:副業を取り巻くルールはまだ曖昧なものが多く、働き手 / 雇用主ともに各者各様の優先順位とルールで対応をしています。企業から見れば、副業を人材補強として活用する、将来的に中核を担う人材を見つけるチャネルとして捉えている、など目的も異なります。

そして現段階ではそのどちらもが正解であり、「まずやってみよう」という行動変化を促しながら副業の民主化を進めていきたいと考えており、その先には私たちが「複業転職」と呼ぶこの手法が採用チャネルのスタンダードとなっている世界をイメージしています。Offersがあることで、副業の民主化と新しい採用手法の拡大を後押ししていきたいと思っています。

具体的にテクノロジーの面などで工夫をしているポイントは

副業を採用における「歩み寄り」のプロセスと考え、サービス体験を考える

鈴木:Offersでは「選考コストをゼロにする」も1つのプロダクトテーマとして掲げており、ユーザーページを見れば初回面接が不要となるように設計しています。レジュメではわからないあらゆる候補者情報を収集しており、候補者 / 企業それぞれにとって不要な時間を圧縮し、面接時間をより有意義なものにしています。

採用における選考時間の圧縮を実現することで採用まで平均12日という結果にもつながっています。また、リモート採用により従来よりミスマッチ採用リスクが高まっていますが、複業転職の仕組みを使えば20万円のコストで一緒に働く時間を買うことができるため、中長期的なミスマッチ採用コストの圧縮にもつながっています。

こういう仕組みで人材の流動化が加速することが予測されます。それ以外の波及効果はどういうものになるでしょうか?

鈴木:採用における「信用スコアの重要性」が高まると考えています。信用に最も大きい影響を与えるのは実績です。流動化が進むということは、実績という名の信用が細かく、多く積み上がる時代になるということです。

副業というと軽んじられた見方をされることもありますが、副業の実績がきちんと貯まり信用を資産にする仕組みがあれば、働き手にとってはより大きなチャンスになります。一方の雇用主にとっては精度の高い採用をすることが可能になります。Offersでも信用をパブリック化する機能を実験的に開始しており、Offers上での実績がしっかりと資産になるように進めています。

私自身、編集のチームをこれまでずっとパートタイムで組んできたこともあって、副業などの考え方は全て合理的かつ、これまでにも実績のある方法(試用期間だったりする従来手法)でもあるので、デメリットをあまり感じていません。問題や課題があれば教えてください。

鈴木:合理的とはいえ、既存の考え方やオペレーションでは対応できないことも多いため、現場で推進していくには相当なカロリーが必要になります。やはり会社のトップ、経営レイヤーからの理解やコミットが必要不可欠であり、1on1の壁打ちやケーススタディの開示など、きっかけづくりから着実に進めています。

今後、副業におけるoverflowとして目指すポジションはどのあたりにありますか

鈴木:Offersは3段階のフェーズを経て「才能を引き出し、社会で共有する世界」をつくろうと考えており、そのスタート地点として「副業 / 複業 × エンジニア / デザイナー」に絞って展開し、仮説検証を繰り返しています。採用業務においては、ソーシングと選考に約55%のリソースが使われており、大多数の人事担当者の時間を奪っています。

よって、まず最初に取り組むべきは「採用プロセスの非効率」を解決することであり、候補者探しと選考業務にかかっている多くの時間を極限まで下げることを進めています。まずは自社に最もフィットするエンジニア / デザイナーが最も速く採用できるプラットフォームを目指していきます。

ーーということでケーススタディとして、採用ステップに副業を取り入れている事例を紹介した。次回は行政や大企業が副業をどのように活用しているのか、その実例と課題についてお届けする。(次につづく)

はじまる「シン・副業」:注目高まる副業テクノロジー(1/5)

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ここ数カ月で大きく注目されるようになったある働き方がある。「副(複)業」だ。 どうやら感染症拡大をきっかけに仕事を出す側・する側双方の理屈に変換があったことが主な理由のようだ。デジタル・シフトの追い風で発注を増やす企業もあれば、飲食や観光などソーシャルディスタンスの煽りで大打撃を被った人たちもいる。双方にとって共通するのは「この状況をなんとかしないといけない」という点だ。筆者も約半年前、混乱する状…

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ここ数カ月で大きく注目されるようになったある働き方がある。「副(複)業」だ。

どうやら感染症拡大をきっかけに仕事を出す側・する側双方の理屈に変換があったことが主な理由のようだ。デジタル・シフトの追い風で発注を増やす企業もあれば、飲食や観光などソーシャルディスタンスの煽りで大打撃を被った人たちもいる。双方にとって共通するのは「この状況をなんとかしないといけない」という点だ。筆者も約半年前、混乱する状況の中、副業にまつわる人々の考え方の変化や様子をこの記事に記している。

とにかく今、必要とする力をこれまでのように丁寧な選考プロセスで選んでいるヒマがない。一方の仕事を受ける側も、なくなってしまった通勤時間を新たなチャンス探しに使う人もいる。そこでこの特集ではいくつかのスタートアップ、企業の話をもとに、ちょっとしたお小遣い稼ぎ的な副業がどのようにポジションを変えるのか、その今を追ってみることにした。

「副業テック」とはなにか

副業にまつわるテクノロジーを考える際、大きくマッチングの仕組みと、スキル・採用プロセスの大きく2つに効率化のチャンスが潜んでいると考えている。

そもそも副業のプラットフォームとしてまず真っ先に挙げられるのがクラウドソーシングだ。国内ではランサーズやクラウドワークスがスタートアップの段階を卒業し、現在、公開市場で更なる成長を目指している。特化型も増えていて、従来よくあったクリエイター系のものから営業代行、もっと短期間のデリバリーや家事手伝い、やや問題のあったベビーシッターなどといった「ギグワーク」という形で裾野を広げている。どれもオンラインで仕事をマッチングし、支払いや案件管理などをプラットフォーム側でシステムとして提供している。

副業プラットフォームのOffersには副業を活用する企業の事例が並ぶ

手がける人たちは小さな事業者も多いが、フリーランスなど案件を求める個人事業者も多数存在している。ここにやや採用にまで範囲を絡めた形で出てきたのが副業プラットフォームだ。国内ではOffers、YOUTRUST、シューマツワーカー、前述したクラウドワークスが提供するクラウドリンクスなどがそれにあたる。

世界的にも副業(サイドビジネス、セカンドジョブ)はやはりクラウドソーシングの「Upwork」や「Fiverr」などが代表例になるのだが、数時間で終わるようなショートタームのお仕事マッチングと異なり、やや複雑な案件、例えばエンジニアリングを必要とするプロジェクトの進行管理のようなケースでは、プラットフォーム側に求められるテクノロジー、体験もやや異なる。

そこで新たな動きとして生まれているのがチームワーク型のプラットフォームだ。

この記事に記されている3つのパターンは、いずれも発注側の複雑な要件を、能力の高いフリーランスにマッチングさせるやや複雑な工程を、特化型にすることで解決しているケースだ。国内でここまで複雑なパターンはまだ(少なくとも私のみている範囲内では)見当たらない。

もうひとつ関連するテクノロジーがスキルや人物の可視化と、関連する採用プロセスの効率化になる。スキル・シートにテキストで「できる」と書いてあったとして、本当にできるかどうかはエビデンスが必要だ。例えば国内ではFindyやLAPRAS SCOUTのようにGithubなどのデータと連動させ、ある程度の技術力をこれまでの履歴から可視化するようなケースもあるし、YOUTRUSTは友人の繋がり(ソーシャルグラフ)を使った信用担保を武器に成長を加速させている。

採用における「知り合いの紹介」にフォーカスしたYOUTRUST

ちなみにこのスキルやキャリア情報に関するテクノロジーは世界的にも注目されている。コンサルティング企業のPwCが実施した調査で、企業が求めるHR領域のテクノロジーに何を求めるかというアンケートの上位にもランクしており、コロナ禍でオンライン化が進む中、遠隔での人材評価はますます重要になってくるだろう。

1. タレント獲得ツール:49%
2. 従業員体験:48%
3. スキルマッピング・キャリアパス:46%
4. インテリジェント・リクルーティング:45%
5. プロセス自動化:45%

PwC’s HR Technology Survey 2020

加えてこの辺りはクラウドソーシング各社も随分と前から取り組んでおり、スキルだけでなく、その人自体の魅力のスコア化、与信に関するところまで広げて研究が進んでいる一方、決定打はまだない状況だ。

ではオーバービューはこのあたりにして、次稿から具体的なケーススタティを紹介していくことにしよう。(次につづく)