新進気鋭の起業家が大物キャピタリストとアイデアを磨きあげる合宿イベント「Incubate Camp 10th」が開催

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25〜26日の2日間、スタートアップへの投資・育成事業を行うインキュベイトファンドが開催する起業家と投資家が合同合宿「Incubate Camp 10th」が 、千葉県内のホテルで開催された。

Incubate Camp の参加対象となるのは、シードラウンドでの調達を求めているスタートアップに加え、すでにサービスをリリース済で、追加の資金調達やサポートを希望するスタートアップだ。2日間にわたって、280のエントリから選ばれたスタートアップ18社をインキュベイトファンドの代表パートナー4名、14名のゲストベンチャーキャピタリストがメンタリング。2日目には、審査員9名を交えたプレゼンテーションが実施された。

入賞の是非とは別に、参加スタートアップはゲストベンチャーキャピタリストから投資を受けられる可能性があるほか、スポンサー各社からはウェブサービスの無料利用権など特典が進呈される。審査員らからは、いくつかのスタートアップに将来性を認められたとの声も上がっていたので、今回の Incubate Camp を経て、新たにいくつかの出資が実施されることになるだろう。

本稿においては、プレゼンテーションで披露されたサービスの概要についてお伝えしたい。個々のサービスの背景や詳細などについては、随時 THE BRIDGE で取材を進めていく予定だ。

Incubate Camp 10th のプレゼンテーションで審査員を務めたのは、

  • 三井住友銀行 入谷公明氏
  • DBJ Capital 内山春彦氏
  • Draper Nexus 倉林陽氏
  • 東京大学エッジキャピタル(UTEC) 郷治友孝氏
  • CyberAgent Ventures 近藤裕文氏
  • アイマーキュリーキャピタル 新和博氏
  • 産業革新機構 土田誠行氏
  • DeNA 原田明典氏
  • Global Brain 百合本安彦氏

…の皆さん。司会は、インキュベイトファンド アソシエイトの山田優大氏が務めた。

【総合順位1位】HADO by meleap

(メンタリング担当:インキュベイトファンド 和田圭祐氏)

Incubate Camp 7th にも登壇していた meleap だが、今回新たなサービスを引っさげての再チャレンジだ。VR や AR を使ったテクノスポーツ「HADO」に取り組む同社だが、HADO Kart という HoloEyes を採用したカートアトラクション系の AR ゲームを開発している。サービスを B2B2C で提供しており、meleap にとっての直接の顧客はレジャー施設など。2017年11月時点で、HADO が楽しめる施設や店舗は、常設ベースで世界に43箇所(アジア25、日本国内13)となる見込み。また、昨年に続き、今冬にも優勝賞金300万円の AR スポーツ祭典「HADO WORLD CUP 2017」を開催する。

創業者で代表の福田浩士氏は、消費されない(リピートされつづける)コンテンツ制作を念頭に、さらに戦略性の高い対人競技コンテンツの制作、施設や店舗での練習会や大会の開催、プレーヤーのスタッツ管理アプリでの成績向上を目指せる機能、対戦相手が居ない場合でもアプリ上で一人対戦ができる機能などを追加提供したいと語った。提携施設や店舗の拡大とあわせ、これらのことを実現すすべく、新たな資金調達を目指しているようだ。

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【総合順位2位】【スポンサー賞2位】【審査員賞2位】one visa by Residence

(メンタリング担当:グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮慎一氏)

ペルーで生まれた岡村アルベルト氏は以前、友人が日本のビザの取得不備でペルーへ強制送還されたのを目の当たりにした。これを契機に、ビザの問題を解決しようという衝動に駆り立てられる。日本の入国管理局にいるのは公務員であるため基本的には日本語しか話せず、ビザ申請書類も日本語であるため、ビザを申請する日本語を母国語としない外国人にとっては、コミュニケーションのハードルが高い。

岡村氏は自ら品川の東京入国管理局に勤務し、3万人に上る外国人のビザ発給業務に従事。このときの経験を生かして、「one visa」を開発した。Residence ではビザ申請に必要な項目を、外国人向けに母国語で質問を表示し、それに応えていくだけで申請に必要な日本語の様式を出力できる。

現在、日本におけるビザ申請件数は156万件(前年比6%増)、外国人を雇用しておりビザ申請を行なっている企業数は17.3万社(前年度比13%増)。one visa では入国管理局が確認する、確実で精緻な個人の情報が手に入ることから、登録された情報をもとにした、外国人向けのバイト管理や与信サービスなどを展開してマネタイズを強化する考えだ。

6月6日にオープンベータ版を公開。リクルートの TECH LAB PAAK 第4期から輩出、IVS 2017 Spring Kobe の LaunchPad で4位。2017年6月、シリーズ A ラウンドシードラウンドでプライマルキャピタルと Skyland Ventures から3,600万円を調達している。

【総合順位3位】【ベストグロース賞1位】【スポンサー賞3位タイ】【審査員賞1位】AI メディカルサービス(サービス名は未定)

(メンタリング担当:村田祐介氏)

内科医の多田智裕氏が来月ローンチ予定の AI メディカルサービスは、内視鏡画像の人工知能による診断システムを提供。内視鏡画像から正しく胃がんの症状の有無を判断できた人は、医師の間においても正解率が31%との報告がある。現状は見落としを防ぐため、検査医師と医師会からのベテラン医師でダブルチェックしているが、これを人工知能と専門医でダブルチェックすることで、さらに見落とししないようにしようという試みだ。

日本で生まれた内視鏡は世界で使われるようになっており、デバイスだけでなく画像診断のスキルを併せることにより、世界での内視鏡普及による効用はさらに高まることが期待される。複数の医師のチームにより構成されており、高画質の数十万枚の内視鏡画像データが入手できるため、多数の教師データが入手できることもポイントだ。ピロリ菌胃炎においては、平均的な医師よりも高い精度で疾患を検出できることが実証できた。

ビジネスモデルは医療機関向けの B2B。患者にとっては高精度の検査が受けられ、医師にとっては検査の負荷が減り、医療機関にとっては集客力がアップするのがメリット。

Beyond Next Ventures のアクセラレータプログラム「BRAVE」の企業前部門コンテスト2017で最優秀賞を受賞している。

【ベストグロース賞2位タイ】DroneAgent by FLIGHTS

(メンタリング担当:セプテーニ・ホールディングス 佐藤光紀氏)

ドローンパイロットのマーケットプレイス「DroneAgent」を展開する FLIGHTS だが、今回披露したピッチでは、自らを「ドローンのソリューションプロバイダ」と位置づけ、より広範なサービスを提供しようという提案だ。ドローンは専門店だけでなく、商社や家電量販店などでも広く販売されるが、専門店でない分、販売人材や運営体制の制約から十分なアフターフォローやサービスが提供されないことが少なくない。ドローンを購入するユーザ向けに、購入時と購入後の両方のフェーズにおいて、ドローンの情報不足やサポート不足を eコマース、メディア、付属サポート、講習会などで解決していこうというものだ。

同社が3ヶ月前にローンチしたドローン特化メディア「FLIGHTS」は既に10万ページビューを稼ぎ出しているが、現在はこのメディアを通じたドローン販売店への送客(ドロップシッピング)が好調で、送客先のラジコンショップの中にはドローンショップに転業した店舗もあるとか。

FLIGHTS はドローンの導入支援、導入代行なども提供できるドローンの総合商社を目指すとしている。

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【ベストグロース賞2位タイ】Co-LABO MAKER by Co-LABO MAKER

(メンタリング担当:アーキタイプ 中嶋淳氏)

Co-LABO MAKER は〝実験環境の Airbnb〟。創業者の古谷優貴氏は長年の研究生活を通じ、研究室においては実験機器が高く研究費が足りない現状、一方、一部の研究室では実験機器が全く生かされていない状況を目の当たりにしてきた。実験機器や研究設備を持つ人や組織を「ホスト(大学)」、その機器や設備を使って「ゲスト(大学や企業)」と位置づけ、ホストとゲストのマッチングを行う。オープンイノベーションにおいては、アセットを自分がいる組織の外に求めるべきとされるが、Co-LABO MAKER は組織外の情報が入手しづらい問題を解決してくれる。

類似サービスとしては、海外には Science Exchange、日本国内には政府主導による Nanotech Japan Yellow Pages などが存在するが、日本における民間主導では初。現在は α版で運用しながら機能検証を実施しており、実際の研究案件を獲得中。一方、実験機器についても数千台程度の稼働を確保した状態で、正式版運用が開始できる見込みが立っているとのこと。サービス立ち上げ後はスケールアップを図り、さらに機能を拡張を実施していくとしている。

【スポンサー賞1位】【審査員賞3位】iNAIL by BIT

(メンタリング担当:グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野穣氏)

iNAIL」は、メイルプリンタを使った自動ネイルプリントサービスだ。既存のネイルサロンでは、ネイリストが手書きでネイルにデザインをするため、コストと時間がかかる。iNAIL ではユーザがネイルプリンタに手を入れることでデザインをプリントする。

ヘアサロン(国内23万店舗)、ネイルサロン(国内2.5万円)、エステサロン(国内1.5万店舗)などがターゲット、現在は東京・二子玉川と大阪・梅田の蔦屋書店内の美容コーナーのほか40店舗に導入されていて、来店客の約15%が利用しているとのこと。

年内に120台の展開を目標に、ネイルにプリントするコンテンツについても、アパレルデザイナーの作品、キャラクターなどを展開し、コンテンツホルダーとのレベニューシェアなども行いたい考え。ネイルアーティストの技術移転は難しいが、iNAIL であればグローバル展開も図りやすいので、近い将来、アジア市場に進出したいとしている。

IVS 2017 Spring Kobe の LaunchPad で2位を獲得。

【スポンサー賞3位タイ】SMASELL by WEFABRIK

(メンタリング担当:ANRI 佐俣アンリ氏)

<8月29日正午更新> 登壇者要望により、当初掲載写真のうち1枚を削除。

SMASELL」は、不動在庫となったアパレルの B2B 取引プラットフォームだ。既存流通をディスラプトし、購入者は安価で購入でき、販売者には在庫処理業者や産廃業者に引き取ってもらうコストを抑えることができる。世界で年間8,000万トンに上るという不動在庫の破棄量を減らし、コスト・時間・環境負担の問題の解決を狙う。

2017年夏のローンチに先立って50社に達していた事前登録業者も150社までに増えた。SMASELL 上には既に20億円分の不動在庫商品が出品登録されているという。メガバンクによるエスクローサービスの導入により、即買取・即代金受取も可能。また、海外とも取引ができるよう、運送会社大手とグローバルロジスティクスのスキームを構築している。

以前のアパレル小売業界では、不動在庫の売買契約の成立までに最低でも2ヶ月間程度、必要に応じて打ち合わせのための出張費用などもかかっていたが、SMASELL ではスマートフォン上でやりとりが完結するため、大幅に経費と時間を節約できる。必要に応じて、購入者は販売者からサンプル品を取り寄せたり、価格交渉ができたりする機能が備わっているのも B2B ならではのしくみである。

Matcher by Matcher

(メンタリング担当:グリーベンチャーズ 堤達生氏)

Matcher」は、企業と学生をつなぐOB 訪問マッチングサービス。就職活動において、7割の学生が OB 訪問したいと思っているが、実際に OB 訪問できているのはわずか。その理由は、所属大学の OB にしか会えない、大学が管理している資料が紙ベースであるため訪問する OB を探しづらく手続が面倒だからだ。

学生からの視点では、大学の先輩以外でも、気になる企業の気になる人に気軽に OB 訪問をすることができる。企業側からの視点では、新入社員に対する効果的なアプローチの手段として活用することができる。昨年2月からサービスを開始し1年半を経過した今、学生12,000人、社会人2,500人、マッチング数は4万件を超えた。このマッチングでマネタイズする。

企業向けに(OB として)社員の情報を掲載したり、候補者を管理したりできる機能、社外に紹介できる機能、学生データベースを開示しスカウトできる企業などでさらなるマネタイズを目指す。

nacoudo by いろもの

(メンタリング担当:ベンチャーユナイテッド 丸山聡氏)

<8月29日正午更新> 登壇者要望により、掲載写真のうち1枚を加工。

いろものが提供する「nacoudo」は、CEO の山田陵氏曰く、「恋活をコミットするアプリ」だ。市場には多くの恋愛アプリが紹介されているが、いずれも基本的には出会いの機会を増やすというアプローチにのみ傾倒していて、恋愛後のフォローアップなど出会ってから交際に発展するまでの視点が欠けている。

一方、いろものでは、出会った男女が互いに好意を感じていても行動ができていない、その原因として、フィーリングが合わないかもしれない、外見や会話の嗜好が合わないかもしれない、面倒くさい、などの不安理由があることに着目。また、以前のお見合いに見られるような〝おせっかい〟なしくみが世間に無くなっていることから、これを技術の力で解決しようと試みている。

同社が独自開発したフィーリングエンジンでは、10万人の男女のデート中の会話の様子を記録し、音声内容を自然言語処理、映像内容を静止画ピクセルレベルで教師データとして取得。ユーザ個々のパターンにおいて、ユーザが相手から電話番号の取得に成功したか、デートに発展したか、交際に発展したか記録・分析することにより、もっとも交際に発展しやすい相手を紹介するサービスを提供するとしている。

同社は2017年、サムライインキュベートから資金調達を実施している(調達額非開示)。

Matchapp by Parasol

(メンタリング担当:インキュベイトファンド 赤浦徹氏)

Parasol は、Pairs でいいね数3位、Synapse に設けたオンラインサロンでこれまでに1,000万円稼いだという、自称恋愛ハッカーの傘勇一郎(からかさ・ゆういちろう)氏が設立したスタートアップ。バチェラー久保裕丈氏、はあちゅう、ホリエモンなどの有名人が登場する、恋愛話題を取り上げる男性向けウェブマガジン「Forky(フォーキー)」をローンチしている。

恋愛アプリに関する需要側と供給側の情報格差、例えば、アプリ事業者はユーザにアプリのことを知ってほしい、ユーザ側はどの恋愛アプリが自分に合っているかわからない、などの課題を解決するために、「Matchapp」というサービスを Incubate Camp 期間中にローンチした。傘氏曰く、Matchapp は恋愛版の「GameWith」、各社恋愛アプリをクローリングしレビューを掲載することで、潜在ユーザを最適な恋愛アプリへの誘導を図る。

2014年に結婚情報サービスのテレビ CM 放映が解禁されたのに引き続き、今年の秋には恋愛系アプリのテレビ CM 放映も解禁されるとの情報がある(情報ソースについては定かではない)。これを受けて恋愛アプリ運営各社の競争は激化、Matchapp の運営にも追い風になることが期待されるようだ。

年内には中国の Fenda(分答)のような恋愛 Q&A アプリをローンチ、2018年にはマンツーマンで恋愛のおつきあいにコミットする恋愛版ライザップを立ち上げたいとしている。傘氏は先ごろ IVS 2017 Spring Kobe で登壇し、ソラシード・スタートアップスから資金を調達し、同社代表取締役で SEO に造詣の深い柴田泰成氏の支援を得ると述べていた。

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みんチャレ by エーテンラボ

(メンタリング担当:B Dash Ventures 西田隆一氏)

エーテンラボは、さまざまな活動に参加しながらも脱落する傾向にある人々を動機づけるソフトウェア「みんチャレ」を提供している。ダイエット、早起き、筋トレなど、三日坊主で続かない自己研鑽のための課題を、人が介在するとスケールできないコーチングではなく、同じ課題を持つ人同士が匿名で応援しあえるアプリだ。チームチャット、課題を達成したことを示す証拠写真をシェア、励ましあうことで課題の習慣化を促す。

みんチャレを使った場合の習慣成功率は69%と、一人で課題に挑戦する場合に比べ成功率は約8倍の高さ、また、ユーザのアプリ継続利用率は、アプリ利用開始から半年経っても46%という高い値を示している。アメリカでは、コーチングを人工知能で実装しようとするアプローチがある一方で、みんチャレは人と人とがコーチングし合う「ピアコーチング」による習慣化加速を提案していく。送客広告、習慣化支援(公式チャレンジの販売)による B2B 課金、機能開放・プレミアム機能による B2C 課金でマネタイズする。

2017年2月にソニーが運営する「Seed Acceleration Program(SAP)」から輩出され、シードラウンドでソニー、第一勧業信用組合、フューチャーベンチャーキャピタル、グローブアドバイザーズ、吉田行宏氏から6,600万円を調達した。東京都の青山スタートアップアクセラレーションセンター(ASAC)のアクセラレーションプログラム第4期、野村ホールディングスのアクセラレータプログラム「VOYAGER」の第1期に採択されている。

Cansell by Cansell

(メンタリング担当:iSGS インベストメントワークス 五嶋一人氏)

Cansell は、ホテルの宿泊予約の権利売買ができるプラットフォームだ。宿泊予約をしたものの、そのホテルへの宿泊予定が無くなってしまったユーザが宿泊権利を出品、他方、宿泊するホテルを探しているユーザがそれを購入する。出品者にとっては宿泊権利が売れることで宿泊料の一部が手元に残り、購入者にとっては割安な金額で宿泊できることになる。

当初は宿泊権利を出品しても売れなかったらそのままだったが、今年6月から一部の大都市のホテルの出品に対して、(安い価格でも)Cansell による買取を求めるかどうかを試したところ、約7割のユーザが買取を希望することが判明。この買取機能を恒常的なメニューとして、9月からリリースされることとなった。来年以降、国内ホテルのみならず、民泊・インバウンド・海外ホテルなどへの展開、宿泊だけでなく飛行機・結婚式・レストランなどの予約キャンセルへの横展開も行いたいとしている。

Cansell は ONLab 第14期プログラムのデモデイで優勝、今年1月には DG インキュベーションやカカクコムらから4,000万円を調達した。

Uuuo by ポータブル

(メンタリング担当:Infinity Venture Partners 小野裕史氏)

ポータブルは、水産業における産地と中央市場をスマートフォンで直接つなぐプラットフォーム「Uuuo」を開発。祖父・曽祖父が共に水産業に従事していたポータブル代表の板倉一智氏は、かねてより複雑な流通過程が連なることにより、水産物は産地にとっては安過ぎ、中央市場にとっては高過ぎる構造ができあがってしまっている。これは、水産物の消費量が一様であるのに対し、漁獲量や漁業従事者が減少傾向であることからも明らかだ。

2017年11月のアプリ/サービスローンチを目指し全国の30業者1,000人が事前登録を完了、現在、全国の8つの統括漁協と提携関係を模索中。すでに鳥取県漁協と提携しており鳥取県内で水揚げされた水産物を取り扱えるほか、広島県の仲卸業者「吉文」とも提携済。アプリでは、売買に加え、市場相場や水揚げが確認できるほか、水産業界のコミュニティ SNS 機能も提供する予定だ。

B2B にフォーカスしているため流通量が多く、この点は、既存の水産系スタートアップよりも成長の上でアドバンテージとして働く可能性がある。まずは地方の漁業従事者、中央の市場や仲卸業者とのつなぎこみ、将来的には、産地仲卸業免許を取得し、水産物のオンライン取引所に育てていきたいとしている。

SAIBAIX by Plantex

(メンタリング担当:WiL 西條晋一氏)

世界には人工光型植物工場を営む会社が400社程度あるが、うち半数の200社程度は日本の会社なのだそうだ。つまり、この分野において、日本は世界市場を牽引する立場にある。しかし、一方で植物工場にとっての難題はその42%が赤字であるという点。生産性が低く収穫が安定しない、野菜の価格が高くなり市場が小さい、という2つの原因に起因している。

2014年6月に設立した Plantex は、植物工場の生産性を上げるシステムを開発し既に黒字化。量産工場2社に導入し、生産性が2倍になる実績を上げている。同社によれば、そのポイントは、植物工場にとってのインプット要素(電気、タネ、CO2、養液、水)と、アウトプット要素(植物の製品、残渣=残りカス)との関係を紐解くことにあるそうで、植物の成長を管理するには、温度・湿度・CO2濃度などの状態変数だけだなく、成長速度・光合成速度・蒸散速度・吸水速度などの速度変数を管理する必要があるそうだ。

同社はこれらの植物工場向けの最適化システムをクラウドベースで提供しているが、植物工場内ですべてのユニットで温度にばらつきがなく均一になるようなハードウェアの開発にも着手している。日本から海外に送り出せる〝勝てる技術〟だとして、世界展開を目論む。

Garage by MiddleField

(メンタリング担当:ジェネシアベンチャーズ 田島聡一氏)

通常の E コマースサイトではカーパーツを検索するのは大変で、見つけたパーツが自分の車に装着できるかどうかについても情報が不足している。市中のカー用品専門店に出向いても、コアなユーザ層が好むカーパーツはニッチ過ぎて取り扱いがないことが多い。MiddleField の CEO 中山翔太氏は、カー用品専門誌に商品を掲載しているメーカーにも、自らの車に装着できるかどうかメールで問い合わせしたが、返信は得られなかったという。

カーパーツを気軽に購入できない問題を解決するため、中山氏らはカーパーツを専門に取り扱うマーケットプレイス「Garage」を開設。強みは、雑誌やウェブサイトから情報を収集し、必要があれば、メーカーに直接電話して情報を集めたカーパーツのデータベースだ。メーカーからは Garage を通じたマーケティングと商品販売について、月額広告料 + 販売手数料20〜30%を徴収するビジネスモデルだ。

ローンチから4ヶ月で契約ブランド100社、商品登録点数12,000点、月あたりのユーザ問い合わせは90件にまで達した。今後、商品登録点数を10万点にまで増やし、1.2兆円市場と言われる日本のカーパーツ市場の席巻を目論む。2018年には、日本の自動車が人気を呼ぶアジア市場に、日本のカーパーツメーカーを束ねて進出する計画だ。

メンタリング後は、ユーザが持っているクルマの情報が取れることから、さらなる付随サービスへの事業展開、カーパーツを設置する整備工場のネットワーク化でもたらされるメリットが強調されていたのは印象的だった。

朝日新聞メディアラボの ASAP(Asahi Shimbun Accelerator Program)第2期から輩出、StarBurst 第3回デモデイで優勝。

教育図鑑

(メンタリング担当:伊藤忠テクノロジーベンチャーズ 河野純一郎氏)

教育図鑑」は、学校や塾の情報を受験生に知ってもらうためのサイト。受験生や保護者は、情報の不足から学校や塾を選ぶ際に妥協を余儀なくされており、一方で、学校や塾は見込み客(=受験生)への効果的なリーチ手段がないことから、高額な顧客獲得コストを余儀なくされている。また、すでにオンラインやオフラインで手に入る情報も塾関連のものがほとんどで、学校に関する情報はあまり多くは露出されていない。

教育図鑑では、各校共通の400項目のニーズを反映した質問・回答でコンテンツが構成されている。質問に回答しているのは、在校生・保護者・卒業生・学校の先生・塾の先生・司書・教育専門家などだ。これらの情報を参考に、受験生や保護者は自分にあった適切な学校や塾を選ぶことができる。

CMS(コンテンツマネジメントシステム)を学校や塾に開放し、学校や塾から受け取る情報掲載料と受験生や保護者からの資料請求があったときに発生する報酬が収入源となる。Q&A コミュニティの「教えて!goo」と提携し、寄せられた質問のうち教育分野に関する質問に教育図鑑のクライアントが回答することで、ユーザをトラクションする。

StarBurst(現 Supernova)第2期から輩出。

GIFTED ACADEMY by GIFTED AGENT

(メンタリング担当:インキュベイトファンド 本間真彦氏)

河崎純真氏が率いる GIFTED AGENT は、発達障害者にプログラミングとデザイン教育を実施し、就労機会を提供する「GIFTED ACADEMY」を運営している。渋谷駅前にスクールを構え、現在の生徒数は35名。これまでに VR エンジニア2名、データサイエンティスト1名、VR クリエイター1名、プロジェクトインターン6名が就職した。先ごろ単月黒字を達成し、早稲田や東大前に新たな拠点を開設する計画だ。

当初この新拠点開設の資金調達のために Incubate Camp に参加したと語っていた河崎氏だったが、メンタリング終了後には、同氏が取り組む新しいプロジェクト「COMMONS OS」について紹介した。COMMONS OS は、誰もがブロックチェーンを使って電子政府のしくみを作ることができるクラウドサービスだ。

COMMONS OS では、実際に北海道・南富良野で新しい社会を作り出す取り組み「Living Anywhere」の中で仮想通貨 Colu を使った実証実験を行ったり、石川・加賀市では Next Commons Lab. を中心に来年発行する仮装通貨 KAGA COIN の導入検証に向け検証を行ったりしている。

COMMONS OS ではトークンセールスによる ICO を始めているほか、GIFTED ACADEMY でも GB COIN のトークンセールスにより10月に ICO を実施するそうだ。

Comiru by POPER

(メンタリング担当:YJ Capital 堀新一郎氏)

Comiru」は、学習塾と保護者のコミュニケーションを支援するアプリだ。創業者の栗原慎吾氏は、塾講師の経験を経て、学習塾では情報がアナログで管理されており、指導報告書など保護者に提出する情報をはじめ、あらゆる書類が紙かつ手書きで管理されていることに作業効率の悪さを痛感。学習塾の講師も保護者も、すでにデジタル世代であることに目をつけ、塾における業務プロセスや保護者とのコミュニケーションを徹底的にデジタル化するしくみを考案した。平均的な塾講師は、保護者連絡、成績管理、授業準備などに就業時間全体の7割の時間を費やしているが、Comiru によって、これらの授業以外の業務にかかる時間を10分の1にまで圧縮可能だとしている。

正式リリースから14ヶ月が経ち、80社の塾と契約し、塾生徒の取扱ID数ベースでは6,500ユーザ以上(1生徒あたりの価格は月200円)に達している。チェーン展開ではなく、個人経営など小規模ながらも、保護者や生徒に人気の高い〝強い塾〟をターゲットにしているそうだ。今後は、成績管理機能、予約管理機能、CRM 機能、API 公開の追加などを図り、競合の PICRO、BitCampus EX、プラチナスクールなどを圧倒的する優位性を確保したい考えだ。

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なお、キャピタリスト賞には、1位にグロービスキャピタルパートナーズの高宮慎一氏、2位にセプテーニホールディングスの佐藤光紀氏、3位にインキュベイトファンドの赤浦徹氏と村田祐介氏が選ばれた。高宮氏は Incubate Camp 9th に続き、キャピタリスト賞1位の受賞となる。

Incubate Camp は2010年から通算で9回開催され(今回を入れ10回)、1,100名超の応募者の中から115名超を選出している。インキュベイトファンドからは、これまでの Incubate Camp 参加スタートアップ中64社(開示分のみ)に投資が実施されている。他のファンドからの調達も含めた、これまでの Incubate Camp 出身スタートアップの資金調達合計額は196億円に達している。

インキュベイトファンドによれば、前回の Incubate Camp 9th では、1社あたりの最大調達金額が1.9億円、参加スタートアップ全社での資金調達合計額は約7.2億円に上ることが明らかにされている。

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