健康支援系スタートアップのNoomが、シリーズAラウンドでスクラムベンチャーズ、リクルート等から700万ドルを調達

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健康支援系アプリの開発会社である Noom(눔)は4日、日米の複数のVCからシリーズAラウンドで700万ドルの資金調達に成功したと明らかにした。今回の資金調達は、日本のスクラムベンチャーズ(訳注:J-Magic を創業し、ミクシィ役員を務めた宮田拓弥氏によるファンド)やリクルート、アメリカの RRE VenturesTranslink CapitalQualcomm VenturesHarbor Pacific Capital からによるもので、前回の 2012年12月の プリシリーズAラウンドから13ヶ月ぶりである。

このところ、コービット(코빗)5Rocks(파이브락스)など、韓国国内のスタートアップが海外からの資金調達に成功するニュースを見聞きするようになったが、700万ドルという大規模な資金調達は非常に異例なことだ。Noom のジョン・セジュ(정세주)代表に会い、今回の資金調達の経緯と今後の戦略について聞いた。彼は興奮した様子で「多くのことを学び、楽しかった」としきりに言葉を付け加えた。

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金融の論理と投資家の心理を理解できたのが、700万ドル誘致の秘訣

投資家が投資を慎重に検討するのには、十分な理由があることを学びました。彼らはお金を稼ぐための論理を理解していて、我々はそれを尊重したから、資金を調達することができたのだと思います。

700万ドル規模の資金調達を通じて、ジョン氏は、金融界の論理を身につけることができた。多くの大企業やアメリカの LP は、VC に資金運用を任せる際、投資対象のビジネスモデルを指定することが多い。VC は LP が決めた方針に合わせて投資先を探すことになるが、カテゴリを細分化してみると、投資に値する企業が少ないのが現実だ。VC の立場からすれば、失敗するわけには行かないので、いわゆる「可能性のある会社」を探すことになるが、そのような会社は既に外部から資金調達済で、その結果、VC にとっては、資金はあるが投資先が無いということになる。

ジョン氏は、資金調達をする側の立場から脱して、投資側の視点で Noom を見て、不足している点を補完した。投資家のプールに入るには、彼らの計算で考えたときに、十分な投資価値を証明する必要があるからだ。「2ヶ月間で、42回のピッチと80回の会議」という、足を棒にするような努力も決して怠らなかった。スマートな情熱、これが前例の無い700万ドルの資金調達という、Noom のサクセスストーリーを可能にした秘訣である。

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パッションは当たり前、さらなる跳躍のために投資家が望むストラクチャーと形を整える

シードの段階では、プロダクト・チーム・パッションだけ見せてればよかったんです。しかし、シリーズAラウンド以降では、投資に必要な基本的なストラクチャーを備えないと、もう一段階飛躍することができません。

資金調達の規模が大きくなれば大きくなるほど、証明しなければならないものも多くなった。Noom は徹底的に投資家の視点にあわせてピッチを準備し、社内の基盤を固める作業を始めた。

MBA人材の雇用

投資前に、ジョン氏がまずしたのは、壮絶な面接を重ねた後、二人のMBAの人材を迎え入れたことだった。 取締役もいない会社に投資家が投資しようとはしないとの判断からだった。 二人ともスタートアップを育ててエグジットの経験もあり、事業の全体的な構造とプロセスを知っている専門家だった。韓国法人の Noom Korea のゼネラルマネージャーを務めるイ・ヘミン(이혜민)氏も合流し、アジア市場の基盤を固めるために大きな力となった。このように、会社の規模を成長させるための人材を獲得した後、ジョン氏は本格的に投資家詣を始めた。

説得力のあるビジネスモデルと、目に見える指標

投資家が望むものは、お金が儲かることが明らかなビジネスモデル、そして、それを裏付ける指標だ。Noom の場合は、韓国法人 Noom Korea が海外の投資家を説得する指標となった。顧客対応が難しい韓国市場で成功できれば、世界の投資家も認めてくれるからだ。Noom Korea は、実際の確実な投資価値を判断したい投資家の思いを理解し、万全に準備をした。

投資する側とされる側の関係は、2つの家族が関係を結ぶのと似ている

投資で重要なのは、100%人だということです。

ジョンの言葉を借りるなら、ビジネスはあっという間につぶれるものなので、毎日失敗と戦って勝たなければならないスタートアップにとっては、人間関係に頭を悩ます時間が無い。そのためにも、投資を受けるときには、好きな人、尊敬できる人に出会うことが重要だ。特にシリーズAラウンドに入れば、外部の取締役が入り、大きな影響力を持つようになるので、相性のよいVCに会うことが重要、というのがジョン氏の信念だ。

RRE Ventures との必然の出会い

アメリカの頭部を代表するVCである RRE Ventures との出会いは、テック・ミートアップでのことだった。「24時間、会社のセールスモード」を自負するジョン氏が3分間のピッチを終えた後、RRE Ventures のアナリストが関心を見せた。最終的に、生死を賭けた数回のピッチとミーティングをした後、投資の決定を獲得することができた。

資金調達の過程で知り得た事実は、RRE Ventures は既に2年前から健康支援、特にダイエット分野のファンドを準備していて、市場を注意深く見守っていた点である。したがって、市場に対する理解度が高かった。良いチームとプロダクト、ファンドの性格、これらすべてのパズルがピッタリと一致した。ほとんどの資金調達をコンバーチブル・ノートで行ってきたこともあり、会社の期待価値が高まりすぎ、バリュエーションの把握が難しいということもあった。しかし、RRE Ventures との交渉の過程では、成熟した対話を通じ、合理的に調整することができた。

日本の投資家との文化的調和感

日本の投資家とは何か通じるものがある。

今回の投資は RRE Ventures がリードインベスターを務めたが、リクルートやスクラムベンチャーズなど日本のファンドも参加している。日本市場は昨年12月、有料アプリの売上でアメリカを破り世界1位を記録するなど、相変わらずIT強国である。日本の投資家とは精神的に通じる部分が多く身近な存在であるため、ジョン氏は日本のVCを好む傾向にある。

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2014年、この成長を続けるために注力すること

チャンスが訪れてうれしい反面、恐ろしいと感じる瞬間もあります。

フルタイム従業員52名、ユーザ数1千万人以上。Noom は相当な規模の会社に成長した。抱えているものが大きい分、よりうまくやらなければというプレッシャーも大きい。今回の調達で獲得した資金の多くは、プロダクト開発や従業員の人件費に使われる予定だ。

RRE Ventures とリクルートは、既に Noom への追加出資を計画している。したがって、シリーズBラウンド、シリーズCラウンドと、今後も継続的に出資してもらうことが Noom にとっての望みであり課題だ。

資金調達で会社の規模は大きくなったが、ジョン氏は重要な基本姿勢を崩さなかった。

プロダクトの品質向上に最善を尽くして集中します。Noom で最重要な内部指標は、今も「当社のプロダクトを使って、人々がどれだけ痩せられたか」です。ユーザの口から「Noom、本当によくやった」という声を聞けるようになりたいです。

今回の Noom を初めとして、より多くの韓国スタートアップの海外からの資金調達のニュースに期待したい。

【原文】

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

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