【企画:経営者が語るべきUX】開発者が考えるべきユーザー体験とはーーUnity日本担当部長の大前広樹氏に聞く(前編)

by PR TIMES編集部 PR TIMES編集部 on 2013.3.7

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【企画:経営者が語るべきUX】は経営者がユーザー体験(UX)をどの視点から見るべきか、複数の切り口でお届けするシリーズです。ビジネス・ブレークスルー大学の提供でお送りします。

デバイスの進化やクラウドインフラの出現、開発環境のオープン化といった変化に伴い、ウェブを始めとするサービスが「リーン」に公開可能な時代になっている。そしてこの環境変化によって語られる機会が増えたのがUX(ユーザー体験)だ。

ユーザーとふれあうインターフェース(UI)の改善を中心に、価格や反応速度、問い合わせ対応など、あらゆる箇所に「ユーザーを満足させるべき体験」は存在し、その総合的な価値がサービスの差別化につながると考えなければならないだろう。

では経営者はUXをどう理解すべきだろうか。

第二回目のテーマは開発とチーム。BBT大学でITソリューションを教える大前広樹氏は、開発者としてのキャリアを経て現在、統合ゲーム開発環境「Unity」の日本担当部長を務める人物だ。経営者と開発者という経験から導きだされる、技術者が考えるべきユーザー体験についてポイントを聞いた。(前編/聞き手:山本郁也(ネコメシ ディレクター / UXデザインエンジニア)、SD Japan編集部)

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開発者の視点でUXに取り組む場合、何を手がかりにすればよいでしょうか。

大前:開発者として会社のビジネスは何なのか、ということまで視野を広げて考えることがUXを理解する上で大切です。

例えば自社の営業用ツールを作るとして、その目的の根底には営業成果の最大化があります。どんな風に彼らの仕事を改善すれば営業の人々の成果が良くなるのか。そこから落とし込まれて、ソフトウェアの開発やサービスの設計をするわけです。

ちょっとした手続きの簡略化で契約が取れるようになったりと、ビジネスを見つめるとキモになるポイントが様々なところにあるんですね。このツールを作った目的が営業成果の最大化なら、ユーザー体験というのは契約が取れることまで含めての事であって、開発者が考えるべきユーザー体験というのはこのような広い視点で考えないといけないと思っています。

経営に携わることで視野が広がる

山本:大前さんが開発者としてUXへの理解を深めたきっかけって何かあるのですか?

大前:元々はフロム・ソフトウェアで開発者向けのフレームワークを開発していたガチガチのソフトウェア屋だったんです。UXも『誰のためのデザイン?』などヒューマンインターフェース系の本を読んで、ソフトウェア設計、プロダクトデザインで何が必要なのかを勉強していました。ただ、当時は本当に大事なことが何かということは分かっていませんでした。

自分で経営者をやって、何をして稼げばいいのか、お客さんがいかにしてお金を払ってくれるのか、ということを限界まで考えて初めて、全体の中で技術屋がどのように役に立つのか理解できるようになったんです。そういう経験がUXに対する理解を深めたきっかけですね。

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大前氏が日本での啓蒙活動に取り組むゲーム開発環境のUnity

では、逆に経営者が開発者に対してUXに留意してもらいたい場合、どのような点に気をつけるべきでしょうか?

大前:ゲーム開発でもそうですが、まず最初にコンセプトの共有をしないといけません。コンセプトに対して、こういうものを作ろうという意識共有ですね。意思決定に参加していないと、その後に仕様書を書いてもらったりしても、そこに対する判断やどういう過程でそういう形になっているのかが理解できません。そのプロセスがなければ「ここに書いてある通りにやったじゃない」ということになるわけです。

例えば海外にあるサービスと似たようなものを立上げたいとします。開発者は「クローン作ればいいのか」と思ってしまう。クローンみたいなものなんだけど、やりたいことはちょっと違うんだ、という”ちょっと”のところを共有しなければ、開発者が迷走してしまうことになります。

開発者は商売の構造を理解すべき

山本:バリュー・プロポジション、コアバリューのような「サービスのコア」は共有されるべきでしょうね。開発者の姿勢も大事ですが、サービス設計そのものから関わること、例えば上流工程の会議に参加してもらって考えやビジョンを共有することは重要なことです。

開発者は2パターン存在します。一つ目はコアバリューを自分で設計できる人。もう一人は純粋に作るのが好きな人。後者の方が圧倒的に多くて、特に後者の人々は、自分たちが作るものと実際に利益を上げるビジネスの部分との関係を正しく理解しないとバリューを生むものを作れません。一度技術から離れるつもりで、自分たちの商売はどういう構造をしているのか、ということを学ぶのも大切になるでしょう。

こういうことが起きて、こういう人がお金を出して、そこでみんなが幸せになりますよ、というストーリーとしての事業計画書が必要なんです。「これ最強じゃん!」とかそういうことも共有できていなくてはいけませんね。

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コンセプト段階から参加する開発者にはどの程度の裁量が与えられるべきでしょうか。

大前:少なくともビジネス設計から一緒にやる開発者には、これを実現するんだと決めたことに対して、有効なアイデアを実装し、試して適応させるくらいの裁量がないとダメでしょう。

先にお話したコアバリューがしっかりと共有されている開発者がいれば、何を使って作ろう、ここの細かい部分どうしよう、という判断も正しくできます。デザイナーと折衝しても、このボタンを上に置くべきか下に置くべきかという話題で喧嘩したりしないんです。

開発者への適切な決定権と情報共有が正しいユーザー体験をつくる

山本:ビジネスモデルキャンバスやジャーニーマップ等の手法を使って、ユーザービヘイビアを可視化したり、認識の共有化を目指すのですが、それでも、当事者意識を共有するのは難しいです。

大前:難しいですし、長いことやってるビジネスでも意外と共有が曖昧なことが多いですよね。どこでお金を稼いでいるのかという「流れ」が分かっていないまま担当者を集めて話をしても、それぞれが使いにくいと思う箇所を場当たり的に指摘してしまう。

例えば、モバイルサービスで地下鉄にいて通信できない時のオートストップをどうしようか、という話題が出たとするじゃないですか。あきらめるのか、それともユーザーの操作をプールして繋がった時に送るのか、プールした後に送る処理まで作ったら大変だけど、やろうと思えばできるね、とか。

やっぱりそこで開発者自身が、事業のことを共有できていれば、ユーザーにどこまでの体験を提供すべきか、判断ができるようになる。仮に社長が技術を分からない人であっても、開発者がこういう理由でその部分作らなくてもいいですよね?という話ができるようになる。さらにフォーカスしなきゃいけない場所に力を注げるし、仕様書に書いてないからやってません、という無駄がなくなる。

ーー後半はユーザー体験を向上させるために開発者と共有すべき具体的な方法について。

(企画協力:ビジネス・ブレークスルー大学

BBT大学講師紹介
大前 広樹:ゲーム開発におけるプロジェクトマネジメント論担当
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 日本担当部長

南カリフォルニア大学中途退学後、ITベンチャー企業を経て、株式会社フロム・ソフトウェアに入社。PlayStation 3、Xbox360等のハイエンド向けマルチプラットフォームにおけるゲーム開発環境の設計・開発や、ミドルウェアの評価・導入などを担当する。2009年に株式会社KH2Oを立ち上げ、次世代のゲーム開発企業を目指すかたわら、Unityの普及と啓蒙にも力を注いでいる。BBT大学ITソリューション学科助教。