「日本のスタートアップは世界で通用するのか」を国内外メディアが議論〜第3回Japan Startup Awardから

by PR TIMES編集部 PR TIMES編集部 on 2015.12.22

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本稿は、THE BRIDGE と CNET Japan にクロスポストされています。記事内容は、CNET Japan により提供されています。(テキスト:山田井ユウキ 撮影:津島隆雄)


12月10日、CNET Japanは「第3回 CNET Japan Startup Award」を開催した。同アワードは、2015年に注目されたスタートアップ企業を選出し、表彰するもの。CNET Japan および THE BRIDGE 編集部による選考により、5社が賞を獲得した

イベントでは、表彰式以外にもゲストによるさまざまな講演や対談が開催された。本稿では、その中から「海外メディアと国内メディアが語る日本のスタートアップの今」と題したディスカッションをレポートする。登壇したのは、国内外から集まった現場記者4名。モデレーターは THE BRIDGE の池田将氏が務めた。

国内外から4人の現場記者が参加

まずは参加者4人を紹介しよう。Serkan Toto 氏は2008年から2012年まで世界最大のテックブログ「TechCrunch」のライターとして東京を拠点に活躍。現在はゲーム業界のコンサルタント企業 CEO を務めている。Richard Solomon 氏は自身が発行・編集する「Beacon Reports」や、「Nikkei Asian Review」(日経電子版の英語バージョン)、「Japan Times」において、日本のベンチャー企業について執筆しているスポークスマンだ。

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Serkan Toto氏

Tim Romero 氏は20年前に来日して4社を立ち上げた起業家。「Disrupting Japan」というポッドキャストのホスト役も務めている。CNET Japan からは、国内のウェブサービス企業やモバイルキャリアを取材する藤井涼記者が参加した。

日本のスタートアップでもっとも興味深い企業は?

ディスカッションは、国内外のメディアやライターに回答してもらったアンケート結果を参照しながら発言するという形で進められた。

最初のテーマは「日本のスタートアップでもっとも興味深い企業は?」というもので、アンケートの回答で挙がったのはスタイリッシュな電動車椅子を開発した「WHILL」や、ソーシャルマッチングを提供する「エウレカ」、リアルタイム機械学習技術のビジネス利用を進める「Preferred Networks」、インターン探しに特化したビジネスSNSを提供する「Wantedly」など。また「思いつかない」という回答も一部にはあった。

この中に登壇者の注目する企業は入っているだろうか。Toto氏は Preferred Networks を挙げつつ、自らがフィールドとするゲーム市場については「日本は成熟しており、過去1年間ではめぼしいスタートアップは出てきていない」と述べた。

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Richard Solomon氏

WHILL を3年前に取材したという Solomon 氏は、同社以外で注目するスタートアップとして、LINEの元代表取締役社長である森川亮氏が立ち上げた動画SNS「C CHANNEL」を挙げた。Solomon 氏は日本のスタートアップ環境を「移行期」と見ており、今までは産業革命後のような古い状態だったが、まさに次の段階へと移行する時期にあると考えているという。

一方、Romero 氏はクラウドソーシングの「クラウドワークス」や、ニュースアプリ「SmartNews」などを挙げ、「日本にはおもしろいスタートアップがたくさんある」と話す。同氏によると日米ではスタートアップ環境が異なっており、日本は大手メーカーで活躍した人が独立起業するケースが多いため、豊富な経験を生かして成功しやすいと説明した。

CNET Japan 記者の藤井氏が注目するのは、IoT を始めウェブだけで完結しないサービス。特に2015年はモバイルヘルスケアベンチャーの「FiNC(フィンク)」が ANA などから出資を受けたように、ベンチャーと大企業のコラボレーションが進んだ1年だったと振り返る。大企業の中に企業内起業としてスタートアップが生まれるケースも増えていると付け加えた。

記者はどういった基準でスタートアップを選んでいるか

続いてのテーマは、「スタートアップの記事を書くときに、どういった基準で選んでいるか」というもの。メディア、ライターからのアンケート回答では「新規性」や「起業家が何を考えているのか」といったことが基準になるという答えが寄せられた。

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モデレーターを務めたTHE BRIDGEの池田将氏

自らも記事を書いて情報を発信するモデレーターの池田氏は、「PRとメディアをうまく区別できないスタートアップがいる」と指摘。これに、TechCrunch のライターでもあった Toto 氏が「確かにそういう誤解をする人はいる」と同意する。「ライターやジャーナリストが考えているのは読者のこと。読者が何に興味を持っているのか、そういう視点でメディアにアプローチしてみては」(Toto 氏)

ポッドキャスターであるRomero氏の考えは、文章で発信する記者とは少し違う。「ポッドキャストは直接本人の声が聞けるメディアなので、人間くさい部分を拾いあげたい」(Romero 氏)。ただし、日本人はあまり「人間くさい部分」を出したがらないそうで、そこが課題でもあるのだという。

CNET Japan の藤井氏は、「社会性がどれだけあるか」「多くの人の課題をどう解決できるのか」を見ている。仮に先進的な技術が生まれたとしても、具体的な社会性が見えなければ、技術のみを取り上げることはないのだという。また、CNET Japan では特に企業規模にこだわっているわけではなく、世の中に価値のある情報だと判断すれば、大手企業でもスタートアップでも等しく紹介する方針だとした。

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CNET Japan 藤井涼記者

日本のスタートアップ企業へのメッセージ

最後のテーマは、日本のスタートアップ企業へのメッセージ。アンケートで寄せられた中で多かった意見は、「プレスリリースを英語で出してほしい」というもの。これには登壇者全員も同意する。

その一方で、Toto氏は日本企業にありがちな国際化として「外国人を雇って国際ビジネスをすべて担当させること」を挙げ、「それはグローバルではない」と切り捨てる。「誰かを雇ってグローバルな仕事をさせるだけでは完全な縦割りになってしまう。そうではなく、すべてのチームをグローバルにすべき」とコメントした。

続いて、「日本に20年住んでも自分は日本語が完璧ではない」ことから、「英語ができないことは非難できない」と苦笑いするのは Romero 氏だ。ただし、グローバル化を目指すなら、言葉ではなく海外市場の知識は必要だと断言。自分たちが海外でどのような価値を生み出せるのかをもっと考えるべきだと語った。

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Tim Romero氏

最後に CNET Japan の藤井氏は、「LINE」の海外での成功事例を挙げながら、「米国に進出して失敗する企業も多いが、まずは文化の近いアジア圏から進出してみるのが良いのでは」と考えを述べ、ディスカッションは終了した。