インドの格安ホテル予約スタートアップOYO RoomsとZO Rooms、データ窃盗やハラスメントで非難合戦——争いは法廷に

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インドの2大ホスピタリティ・アグリゲータ間で不調に終わった買収案件の余韻はいまだ収まりをみせていない。最近の進展を見る限り、OYO RoomsZO Rooms の 争いはさらに激しさを増してきている。

決裂した会社買収プロセスでデューディリジェンス実施中にデータを盗んだとして、Tiger Global を投資家にもつ ZO Rooms(Zostel Hospitality が所有)が、自分たちよりも大きなライバルであってソフトバンクをバックにもつ OYO Rooms を相手取り訴訟を提起したのだ。

ZO Rooms は訴状の中で、OYO は買収プロセスを推し進めていると装いながら、従業員、資産、ホテル所有物を盗み取ったと主張した。案件自体は途中で物別れとなったが、OYO はその後も入手したデータの活用を続けて事業を拡大しながらも、費用の支払いを拒否しており、ZO によれば、この事件全体が同社に取り返しのつかない損害を与えたとのことだ。

今回の申し立てで ZO が求めたことは、OYO が ZO から取得したホテルからの収益を裁判所に供託させ、資産を減少させないようにすることだ。さらに、裁判所が OYO に対して捜索差押命令を発し、盗まれたデータを回復すると共に、OYO が入手したいかなるデータの使用も禁止することを求めた。また、OYO にエクイティによる資金調達をさせないことも裁判所に求めた。

だが、OYO Rooms はデータとラップトップコンピュータを含む資産を盗んだのは ZO の方だと主張して ZO の訴えを否認した。

1年以上にもわたり、Zostel とその重役らにより、我が社は繰り返し妨害と誹謗中傷を受けています。彼らはあらゆる策略を使ってきました。虚偽の告発を記した書面をOYOの経営陣に送りつけることから、我が社の株主らに手紙を送ることまでです。そうすることで我々を脅しプレッシャーを与え、彼らの不当な要求に従わせようとしたのです。

OYO のスポークスマンはそう語っている。

そしてまた、Zostel の設立者らを相手取り、信託義務違反、詐欺罪、データ不正に関する種々の条項に基づき、2018年1月16日付けで刑事告訴を提起したことも明らかにした。ZO は OYO とその投資家らに圧力をかけ恐喝して、本来のビジネスアグリーメント、あるいは拘束力を伴うアグリーメントも用意しないまま買収案件を成立させようと目論んでいるのであり、要するに法的ルートを通じて我々を脅迫しているのだと語った。

さらに OYO 側は次のように述べている。

これよりももっと前に、データとその他の資産を盗んだ Zostel の上級従業員らに対し、インド刑法第379条、414条、420条、120B条並びに IT 法及び著作権法との関連で刑事訴訟を Economic Offences Wing & Cybercrime Department に提起しています。資産の中でもラップトップコンピュータは現在も引き続き Zostel からのアクセスを受けており、彼らの利益のために使用されているのです。

OYO の見方はこうだ。Zostel は自社の策略を強化するため、対抗策の一環として、的外れで根拠のない第9条に基づく仲裁申立てをグルガーオン裁判所に2018年2月2日付けで行った。OYO に対する告発は虚偽であり、その内容は、ホテル、従業員、消費財の移転に関する諸々を含んでいる。これらの告発は、既に効力が消滅しているものや拘束力を持たないタームシートに関するものなのだ。

OYO は声明で次のように述べている。

OYO が本件に関する協議から利益を得ていたとするのは、ZO のビジネスが当時既に衰退していたので明らかな誤りです。我々が行ったディリジェンスプロセスで指摘した相当な負債、未払代金、未開示の偶発債務等の一連の問題に対する回答もありませんでした。このような背景を抱えたまま契約をすれば、当社の名声と事業に多大な損害をもたらしたはずです。

結局のところ OYO は Zostel のビジネスにほとんど価値を見出していませんし、先の声明でも触れた問題が存在するため、著しい信用喪失が生じました。ともかく、彼らは常に買収に前向きだと主張していますが、我々にも彼らの顧客やオーナーにも事前通知無くアプリとウェブサイトを停止したのです。その結果、Zostel は顧客マイグレーションを実施することはおろか、買収の協議においてキーとなるスムーズなビジネストランスファーも実現不可能となったのです。

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OYO 設立者兼 CEO Ritesh Agarwal 氏
Image Credit: OYO

ベンチャーキャピタルお気に入りの2社の争いは、2016年の OYO による ZO の買収決裂が発端となった。理解に苦しむのは、ソフトバンクは2016年2月の収益報告でそのポートフォリオカンパニーによる ZO Rooms の買収を発表したのだが、その1年後に買収案が決裂、OYO がそれに関する協議をすべて打ち切ったことが報じられたことだ。それなのに同社は決裂した理由には言及しなかったのだ。

Zostel は2013年8月に若い旅行客向けのバックパッカー用ホステルチェーンとしてスタートした。2015年には格安ホテル市場に参入し、OYO と直接競合することとなった。

OYO は大学を中退しオタクでもある Ritesh Agarwal 氏により2014年に設立された。彼は17才にして起業に身を投じた。それ以前には短期滞在型宿泊サービスポータルの  Oravel Stays を設立し、VentureNursery、DSG Consumer Partners、Lightspeed からの資金提供を受けた。2014年中頃、Oravel は想定したスケールがかなわず操業停止となった。それで Agarwal 氏は OYO を立ち上げたのだ。

OYO はインドのデリー、グルガーオン、ムンバイ、バンガロール、ハイデラバード、ゴア、チェンナイ、コルカタなど170を超える都市でサービス展開している。これには大都市のほか、地方中核都市、有名なレジャースポット、さらには巡礼地なども含まれる。2016年1月にはマレーシアに進出した

昨年4月の The Economic Times の報道では、OYO は既存投資家のソフトバンクによる2億5,000万米ドルの資金調達をまもなく終え、投資後の時価総額は8億5,000万米ドルになるとされていた。

1年以上前、OYO Rooms は5回目のラウンドでソフトバンクと非公開の国際的なソブリン・ファンドから1億米ドルを調達した。それには既存投資家の Sequoia Capital、Lightspeed Venture Partners、Greenoaks Capital、DSG Consumer Partners、Venture Nursery も参加している。その1年前にはソフトバンクが同社に対し同額の投資を行っていた。

それに先立ち、OYO は Greenoaks Capital Partners のリードで2,400万米ドルを調達している。さらに2014年5月にも DSG Consumer Partners と Lightspeed から65万米ドルを獲得している。

昨年、シリアルアントレプレナーでインドスタートアップの専門家でもある Sumanth Raghavendra 氏 は、OYO についての冷ややかな記事を寄稿した。そこで彼は、OYO が出資金詐欺と同類だとコメントしている。彼によれば、OYO は実績を誇張しており、出資金詐欺の隘路にはまる道を歩み始めたという。

記事の後半部分で同氏は、2016年初めに発表されたソフトバンクによる OYO への投資が実際には実施されていなかったという重大な主張も展開していた。その数日後、Agarwal 氏は社員向けの社内メールで Raghavendra 氏に反論し、当社を出資金詐欺と呼ぶのは2,200人の従業員に対する侮辱以外の何ものでもないとした。

【via e27】 @E27co

【原文】

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