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バーチャルガイド「マップ・インフルエンサー」は登場するのか

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 ピックアップ:Know who’s in the know: Get community updates in Maps ニュースサマリー:昨年Googleは、Google Maps上でローカルガイドをフォローできる機能をパイロット版として実装した。ローカルガイドとは熱意あるMapsユーザーたちのこ…

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Photo by Leah Kelley on Pexels.com

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

ピックアップ:Know who’s in the know: Get community updates in Maps

ニュースサマリー:昨年Googleは、Google Maps上でローカルガイドをフォローできる機能をパイロット版として実装した。ローカルガイドとは熱意あるMapsユーザーたちのことで、Google Mapsでクチコミの投稿、写真共有、質問の回答、場所の追加や編集を行ったり、情報を確認したりするユーザーの世界的なコミュニティを指す。

そして7月30日からは写真やレビュー、リストを一般公開している全ユーザーをフォローできるようになった。ユーザーをフォローしておくことで、各ユーザーのおすすめ情報やアドバイス、更新情報をGoogle Mapsの「更新情報」タブで閲覧できるようになる。

例えばテイクアウトメニューの写真や、街中の広い公園のリスト、地元のお店やサービスの写真などを共有している人をフォローすれば、その人たちが更新する最新のおすすめ情報を手にすることができる、というわけだ。

ようやく結実?Googleのソーシャル・サービス

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Photo by Patryk Kamenczak on Pexels.com

話題のポイント:Google MapのSNS化が進んでいます。

ただ、Googleはソーシャル要素には弱い印象です。事実、2019年4月には同社のSNS「Google+」を閉鎖しています。傘下企業のYouTubeは非常に強力なネットワークを持っていますが、Googleが自ら立ち上げたものではありません。

GAFAの中でもそれぞれに特徴があります。Googleは広告、Appleはハードウェア、Facebookはソーシャル、Amazonはコマースと言った具合の役割分担が暗黙的に存在します。この点、Googleユーザーは検索クエリを投げることで能動的に情報を取りにきているため、誰かをフォローして1対1の形で情報をやり取りするわけではありません。

しかし、Google Mapsには違った予感がしています。Maps上に存在するユーザー情報には、特別な価値があると考えているためです。

誰もが一度は友人がオススメする場所に行ったり、雑誌やTV番組で紹介されたお店を訪れたりしたことがあるはずです。この体験を実現する場所として実はGoogle Mapsは最適です。さらに言えば、Googleがこれまで得意としてこなかった「双方向に」地図情報を交換する場として、消費者向けサービスの中では随一の部類に入るでしょう。

先述したGoogle+では、FacebookやTwitterではなく、Google+にわざわざつぶやきや近況を投稿する理由があまりありませんでした。言い換えれば、利用ユーザーのサービス利用モチベーションが薄かったのです。ところが、Mapsでは場所検索に紐づいた、他のサービスにはないロケーション機能が充実しています。他社SNSではもはや追いつくことは難しい状況です。

“マップ・インフルエンサー”の登場

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Photo by Leah Kelley on Pexels.com

仮に各メディアが娯楽施設やレストラン、アクティビティスポットをキュレートする形で情報提供するようになれば、新たなプラットフォーム価値が誕生するはずです。そこで活躍するのが積極的に情報発信する「マップ・インフルエンサー(Maps Influencer)」と私が呼ぶ存在です(Googleはローカルガイドと呼んでいますが)。

日本で言えば「POPEYE」のような情報雑誌や、「王様のブランチ」と言ったTV番組がよくお店情報を発信していますが、こうしたメディアのインターネットへの置き換えです。仮にお店の利用アフィリエイト収入を得られる動線があれば、Google十八番の広告ビジネスとしての広がりも見えてきます。他にも、東京の特定地域に強いマイクロインインフルエンサーや、食べログなどのグルメサイトで活躍するレビュアーの発信場所にもなりえます。

ニッチな情報のやり取りも得意です。たとえば母親向けGoogle Mapsを展開する「Winnie」の活躍が挙げられるでしょう。

遠出をしたり都心へ出かけてショッピングを楽しみたいと思った時、子供連れでも問題のない場所を探すのに苦労することはないでしょうか?たとえばお昼時になってレストランを探すとなった際、Google Mapを開いても「子連れOK」のお店情報は探しづらいです。

そこで登場したWinnieでは、子供連れに優しい場所に絞り込んだ地図情報を提供しています。公園などのアクティブスポットからレストランのような食事処など、複数のカテゴリーと目的別に手軽に行き先を検索できます。

同社はGoogle Mapsでは手の届かなかった地図検索領域に特化した、痒い所に手が届くサービスを展開していました。もしMapsがSNS化し、母親インフルエンサーのようなユーザーが登場すれば、徐々にWinnieが囲っている情報もGoogle側へ流れていく可能性があります。あらゆる領域の地図情報がGoogle Mapsでやり取りされる世界が、今回紹介した機能を皮切りに実現されていくかもしれません。

最後に少し別領域の話をすると、最近ではGoogle CalendarにSNS要素を足した「IRL」が人気で、Social Calendar・Calendar Influencerという体験を作り上げています。IRLが市場に提案するのは、既存のGoogle製品にソーシャル要素を付け足す方向性はスタートアップの参入領域として十分に可能性がある点でした。

しかしここにきてGoogle自身がその動きに乗り始めました。今回のGoogle Mapsの機能実装が上手く働けば、もしかしたらCalendarにも同様の機能を付け足し、各サービスをシームレスに繋げるSNS戦略に打って出てくるかもしれません。

Winnie然り、IRLもサービス基盤を崩されかねない状態になるかもしれません。単なる情報プラットフォームの価値だけでは勝ち抜けないため、より強固なネットワーク効果を生み出す必要があるでしょう。これまで広告企業として成長を遂げてきたGoogleが、過去の失敗を乗り越えてどこまでSNS企業としての立場を確立できるのかに注目が集まります。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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ホテル業界で始まるUberEats化、注目すべき「バーチャル・ルームサービス」モデルとは

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 実店舗を持たず、「UberEats」「Postmates」「Doordash」に代表されるフード配達アプリ上でメニュー展開をする業態は「ゴーストレストラン」と呼ばれます(バーチャルレストランなどとも時折呼ばれます)。 ウェイトレスを雇用する必要がなく、調理場所さえ確保してしまえば、オンラインで出店が…

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Butler Hospitality ウェブサイト

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

実店舗を持たず、「UberEats」「Postmates」「Doordash」に代表されるフード配達アプリ上でメニュー展開をする業態は「ゴーストレストラン」と呼ばれます(バーチャルレストランなどとも時折呼ばれます)。

ウェイトレスを雇用する必要がなく、調理場所さえ確保してしまえば、オンラインで出店が可能。経営のスリム化が図れます。人との接触が憚られる時勢に最適なソリューションとして世界中で認知・利用が高まりました。Uber創業者のTravis Kalanick氏も、同社退職後の今は「CloudKitchens」を立ちあげ、フード配達市場へ進出しています。すでに同社は50億ドルの企業価値がつけられているとのことです。

そして今、ゴーストレストランの業態をホテルに持ち込んだ事業モデルに注目が集まっています。新たなホテルビジネスを展開するのが「Butler Hospitality」。同社がニューヨークで2015年に創業し、7月10日1,500万ドルの資金調達を発表しています。

従来、ルームサービス経由で料理を注文する場合、サービス料金として数十ドルの非常に高額な料金がかかっていました。人件費が高い一方で注文量が少ないために、料金は高止まりせざるを得ないジレンマが起こってしまうケースです。

ルームサービスを頼むより、近くのレストランへ宿泊客が自ら出向いて料理を調達した方が格安に収まる場合もしばしばですが、見知らぬ土地であったり、ホテル周辺にレストランがないような場合は、渋々ルームサービスを頼まざるを得ない状況になります。

そこで活躍しているのがButler Hospitalityです。同社はバーチャル・ルームサービスを展開しているのですが、これがなんとホテル内のレストランを買収して自社事業として運営するモデルなのです。できたての料理を近隣30分以内で配達できるホテルに届ける、ルームサービス特化のフード配達事業を立ち上げています。

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Butler Hospitality ウェブサイト

ホテルとは完全別運営の、配達特化のレストラン「ゴーストレストラン」として事業を独立させており、配達距離の短いルームサービスを提供。Butler Hospitalityと提携するホテルは、従来より安い、できたての料理を宿泊客に提供できるようになります。自社でスタッフを抱えることもなく、月額利用料をButler Hospitality側に支払う形式になるため、コスト予測も容易にできるようになります。

一方、Butler Hospitality側に求められるのは需要予測です。UberEatsのように、配達需要・距離・時間でデリバリー料金が変動するダイナミック・プライシングとは違い、ルームサービス料金は一定である必要があります。この点を加味した上で、適切な配達拠点・料金設定が必要となります。

近隣ホテルと提携できているのはレストランを買収しているためです。運営を完全に独立させているため、レストランが置かれているホテルにサービスを特定させる必要がありません。売上の悪いホテルレストランを買収し、運営手法含めリブランドしながらネットワーク網を増やす、巧みなビジネスモデルと言えるでしょう。

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Butler Hospitality ウェブサイト

さて、Butler Hospitatlityの真価はパンデミックで発揮されています。先述したように、同社のレストランはホテルオーナーやビルテナントとも独立しています。そのため、率先してニューヨーク市内で日々必死になって働くエッセンスワーカーを支援する動きを見せています。「Businesswire」によると、医療従事者、隔離された高齢者、コロナ患者、パートナーホテルに滞在する軍人などに17万5,000食以上の食事を届けたとのことです。

コロナ禍、空回りのレストランを持つホテル事業者がButler Hospitalityと同じ事業を地域で展開することも十分考えられるでしょう。地域のエッセンシャルワーカー向けにサービス業態を変えることで、社会の共感性を得やくなるかもしれません。

確かに消毒作業のコストはバカにはなりませんが、この非常時に最前線でウィルス感染のリスクを被る人たちの受け皿の一つとなるアイデアとなるかもしれません。地域の医療機関や教育機関、行政から収益化することで、エッセンシャルワーカーを支える生活インフラ事業としてホテル事業を転換できる可能性もあると感じます。

宿泊料からの収益と比べれば微々たるものかもしれませんが、ホテル業界の生存戦略を考える上で、そして雇用を守る上で考えられる一つのソリューションではないでしょうか。

ニッチなデリバリー業態で成長を続けているのがButler Hospitatlityであり、毎年収益が2倍で増加しているレストラン・ネットワーク事業です。稼働が下がっている、ホテル内レストランを新たな事業として生まれ変わらせるモデルは日本でも十分に応用が効くかもしれません。

Butler Hospitatlityが提供するのはルームサービスですが、提供範囲およびレストラン買収・配達拠点を広げて一般ユーザーにも配達は可能でしょう。東京以上に状況が厳しいニューヨークから、新たなビジネスが芽を出してます。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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スタートアップがカルチャーを体現するために費やした「600時間」のこと(2/2)

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本稿はPR TIMES STORYからの転載記事。一部、執筆者の許諾を得て要約・編集をしております 前回からの続き atama plusはMission実現に向けて大切にしたい価値観をValuesとして定めていますが、創業から2年と少し経過した頃、Valuesの短い言葉だけでは表しきれない、かつ皆が大事にしたい価値観があることに気づきました。 たとえば「Speak up. 話そう、とことん。」とい…

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半年を投資して作ったカルチャーコード

本稿はPR TIMES STORYからの転載記事。一部、執筆者の許諾を得て要約・編集をしております

前回からの続き

atama plusはMission実現に向けて大切にしたい価値観をValuesとして定めていますが、創業から2年と少し経過した頃、Valuesの短い言葉だけでは表しきれない、かつ皆が大事にしたい価値観があることに気づきました。

たとえば「Speak up. 話そう、とことん。」というValueについて、atama plusではチームの垣根を越えて議論しあうという文化があります。では、チーム外の人とどこまで“とことん”議論すべきなのでしょうか?

そもそも背景知識の異なるチームの人が検討主体のチームに対して意見すべきなのでしょうか?そして意見されたら検討主体のチームはどういったスタンスでその意見を聞くべきなのでしょうか?「他チームの業務に関心を持って意見すること」と「役割分担して任せること」のバランスってどう考えたらよいのでしょうか?

皆が同じMissionを目指しているのにもかかわらず、Valuesの認識のズレが生まれたらもったいない。この先、メンバーが増えていくにあたり、皆が大事にしている暗黙の価値観をきちんと言葉にしておきたい(逆に言えばそれ以外は多様性を大事にしたい)、そういった想いでカルチャーコード作成がはじまりました。

作成にあたっては職種横断のタスクフォースを組成し、全メンバーの意見を聴きながら、半年以上の時間をかけて侃侃諤諤の議論を行いながら作りました。正直、創業3年目(作成開始当時)のスタートアップにとってこんなにも作成に時間をかけるというのは非常に大きな投資です(スタートアップは時間がほぼ全ての資産です)。

しかしatama plusは、Missionを実現するために設立された会社ですから、皆がMission実現に向かって大事にする価値観の認識を合わせることは何よりも重要だと考えています。そうしてValuesを体現するために必要なことを定めたカルチャーコードが完成しました。

カルチャーコードは、いわば、何を「いい」と感じるか、何が「リスペクトに値するか」のモノサシです。atama plusという「場」を共にする一人ひとりにとって決定的に重要なもので、各々の働き方や日々の意思決定の基盤になります。

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atama plus社内でValuesを意識するための取り組み

私たちは、「全員がカルチャーコードを体現している状態」であり続けるために力を尽くしたいと考えています。なぜなら、その状態であれば細かい(そしてつまらない!)ルールも管理も不要になるからです。

全員がカルチャーコードを体現できていれば、必然的に個々の判断・行動はひとつの大きな方向を向いたものになります。その中での裁量の自由を最大化できます。一人ひとりがMission実現の当事者として、自律的に行動できるようになります。

Atama plus社内はMissionやValuesに関係したものであふれています。壁にはMissionが掲げられたポスターがあり、会議室や日常の業務で使用するものにValuesが記載されていたり、等身大の生徒(ペルソナ)のパネルがあったり、、、

ただし、これらはカルチャーへの投資のごく一部の結果にすぎません。「一人ひとりがMission実現の当事者」であるカルチャーであるために、何よりも大事なのはメンバー全員がatama plusで大切にするValuesを完全に理解し、体現していることだと考えています。

Culture gardening

カルチャーコードは作成しておしまいでは意味がありません。

全員でカルチャーコードに記載されている内容の認識をすりあわせるべく、カルチャーコードができあがった当日から3日間かけて「Culture gardening」というイベントを行いました。一般的にカルチャーを築くためのイベントのことを「Culture building」と呼ぶことが多いと思いますが、atama plusでは全員で「庭」のようにカルチャーを作っていくという目的から「Culture gardening」と呼んでいます。

新型コロナウイルス対応で多忙な時期ではありますが、全メンバーの通常業務をストップして全員でカルチャーコードに記載されている内容の認識をすりあわせるセッションを行いました(のべ600時間!)。コロナ禍で対面でのイベントができないため全てZoomでのセッションです。

各自の自宅に郵送で届いた「atama+ culture code」を読んだ上で、普段業務を一緒に行っているチームで「役割の異なる仲間からの意見を真摯に受け止めるSpeak upな姿勢とは、具体的にはどんなことですか?」「自ら仕事を楽しむLove funな状態と、単に楽をすることの違いって具体的にはなんですか?」といったValuesに関連する答えのないテーマについて議論を行いました(おおいに盛り上がりました!)。

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atama+ culture codeをもとに、ValuesについてZoomで議論する様子

これはCulture gardeningの第1弾。引き続き第2弾、第3弾も実施していく予定です。カルチャーはいきなり作れるものではありません。Atama plusはこれからもカルチャーに投資し続け、カルチャーをガーデニングしていきます。

Atama plusは「○○すべし」がほとんどない会社です。

What we doで縛るより、What we respectをシェアし、How we feelを誇れる集団。それは複雑化した社会において、変化に強い集団にもなります。細かいルールでガチガチに管理するよりも、一人ひとりが「atama+ culture code」を体現しながら自律的に行動するほうがMission実現への近道だと考えます。

だからルール作りよりもカルチャー作りに投資します。

これからもatama plusの現メンバーと未来のメンバーの一人ひとりが、Mission実現の当事者として、教育を通じて社会を新しくしてまいります。

本稿はAI先生「atama+」を開発・提供するatama plus代表取締役、稲田大輔氏によるもの。Facebookアカウントはdaisuke.inada.10。彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はこちらからコンタクトされたい

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カルチャーに半年もの時間を投資したスタートアップが得たもの(1/2)

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本稿はPR TIMES STORYからの転載記事。一部、執筆者の許諾を得て要約・編集をしております 今月、atama plusでは、自分たちが大切にしているカルチャーについてまとめた「atama+ culture code」を公開しました。 カルチャーコードとはValuesを体現するために必要なことを言語化したものです。作成にあたっては職種横断のカルチャーコード検討タスクフォースを作り、全メンバー…

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atama plusが発行したカルチャーコード・ブック

本稿はPR TIMES STORYからの転載記事。一部、執筆者の許諾を得て要約・編集をしております

今月、atama plusでは、自分たちが大切にしているカルチャーについてまとめた「atama+ culture code」を公開しました。

カルチャーコードとはValuesを体現するために必要なことを言語化したものです。作成にあたっては職種横断のカルチャーコード検討タスクフォースを作り、全メンバーを巻き込みながら実に半年以上の時間をかけ侃侃諤諤の議論を行いました。

創業3年目(作成開始当時)のリソースの限られたスタートアップがなぜこんなにもカルチャーに投資を行うのでしょうか?本稿では、カルチャーに投資する理由、そしてその結果得られたものの体験をみなさんに共有したいと思います。

「エライ」のはMission

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創業前のatama plus(写真:atama plus)

話は創業前にさかのぼります。これはatama plusを創業した2017年4月のさらに半年前の写真です。私の自宅に集まり、これから立ち上げる会社(まだ名前もない!)のMissionについて議論していた頃の様子です。

なぜ、私たちはそれなりに順風なキャリアを歩んできたにもかかわらず、わざわざリスクをとって新しい会社を立ち上げるのか?そんな議論を重ねた結果、「教育を通じて社会を新しくするために会社を創るんだ」ということを決めました。

そうです。創業より先に決めたのはMissionの方だったのです。ですから、atama plusはなぜ存在するのかというと、答えは明快です。「Missionを実現するため」。それ以外にありません。

atama plusは、社会のまんなかを新しくするために、限られた生徒ではなく、数億という規模の生徒に良い教育を届けていく。そのために、atama+というサービスを軸としたビジネスで、教育を進化させる持続可能な仕組みをつくる、そしてそれをなるべく早く実現することを目指すという会社です。

そのため、atama plusの意思決定の基準もシンプルです。あらゆる決定の基準は、究極的にはただひとつ「Missionの実現に向かって前進しているか?」。

それだけです。

判断に迷ったらここに立ち返っています。ちなみに、atama plusでは組織図の一番上にはMissionがあり、代表である私は一番下にいます。「エライ」人はいなく、「エライ」のはMissionです。誰かの顔色をうかがうよりもMissionの実現に向かって前進することを最優先にしています。

カルチャーは庭

企業のカルチャーとは何なんでしょうか?

カルチャーは変わり続けるものです。
仲間が一人増えれば変わる。
事業やプロダクトが変われば変わる。
組織が変われば変わる。毎日変わり続けます。

カルチャーは変化し続ける「状態」なので、どんなカルチャーを作りたいかを決めて、それに向かって努力し続けるのみです。カルチャーは「建築物」のように一度作ったら壊れないものではなく、作るのに時間はかかるし手入れし続けないとすぐに壊れる「庭」のようなものです。

種を植えたり雑草を抜いたりしながら、ずっと丁寧に磨き続けるものだと思います。毎日の地道な積み重ねの結果が企業のカルチャーとなります。atama plusは「一人ひとりがMission実現の当事者」であるカルチャーであり続けたいと思っています。それにはMissionに共感したメンバーが集まり(そういう人だけ採用し)、そして全員が継続してカルチャーを磨き続ける必要があります。

atama plusの強みは何ですか?

よく聞かれる質問ですが、教科書的な回答をしようと思えば「プロダクト」「ビジネスモデル」「データ」「顧客基盤」「ブランド」、、、などがあげられますが(私も社外にはそんな説明をすることが多いですが)、本当はそこじゃありません。

真の強みは「カルチャー」です。プロダクトもビジネスも真似できますが「カルチャー」は真似できるものではありません。「庭」はすぐには作れません。

ひとつ、例を挙げさせてください。

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atama plus4月のプレスリリースより

2020年2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国の学校に臨時休校要請がなされました。私たちの顧客である塾も休校することとなります。

Atama plusのプロダクトは塾内のみで利用することを前提に作られており、塾が休校したら全く使えないものになります。さらにタイミングの悪いことに、臨時休校要請の翌日2月28日はオフィス移転の日で、引越し準備で仕事どころではないといった状況でした。それでも、急ピッチで開発した自宅でも利用できるプロダクトを塾に提供し、1カ月後にはユーザー数が10倍以上に伸びることとなりました。

すべてのチームが自律して動いた結果でした。各チームの一人ひとりがMission実現の当事者だったのです。(後編へ続く)

参考記事:なぜatama plusはここまでカルチャーに投資するのか?

本稿はAI先生「atama+」を開発・提供するatama plus代表取締役、稲田大輔氏によるもの。Facebookアカウントは 彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はdaisuke.inada.10。 こちらからコンタクトされたい

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ビジネス資料のGitHub化ーーNotion2.0が目指す「テンプレ図書館」の衝撃

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 プログラミングをせずとも、ウェブもしくはモバイルアプリを直感的に構築できるノーコードサービス分野が成長してきました。「Bubble」や「AppGyver」のようなアプリ開発、日本の「STUDIO」や「Strikingly」に代表されるLP開発など、領域は様々です。ノーコードの本質は、時間やコストを圧…

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Almanacウェブサイト

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

プログラミングをせずとも、ウェブもしくはモバイルアプリを直感的に構築できるノーコードサービス分野が成長してきました。「Bubble」や「AppGyver」のようなアプリ開発、日本の「STUDIO」や「Strikingly」に代表されるLP開発など、領域は様々です。ノーコードの本質は、時間やコストを圧倒的に削減することにあります。そして今、ノーコードトレンドの考えが新たな体験として企業で広く使われるドキュメント作成分野にも広がりつつあります。

Almanac」は、ビジネスドキュメントテンプレートのクラウドライブラリを提供。マーケティング、人事、法務テンプレートなど、専門家によって公開された、磨き上げられた1万件の文書を提供しています。各資料をコピペすれば、ユーザーは手軽にプロのドキュメント内容をトレースできます。UIはノートツール「Notion」にとても似ています。

同社はサンフランシスコに拠点を置き、シードファンディングで900万ドルを調達。General Catalyst、Inspired、Abstract、Shrug、Worklife、Indicator、Wing、Liquid2とともにFloodgateがリードしたシードラウンドを経ています。現在のユーザー数は1万ほど。

ユーザーは、チェックリストや販売促進用の電子メールスクリプト、コースガイドなどのドキュメントをコピー可能なテンプレートから選べます。クラウドベースでありながら、バージョン管理が可能なソーシャル・コラボレーション機能も備えています。

同社の提供価値は大きく3つです。「バージョン管理」「ドキュメントのソーシャル性」「トレース」。順に説明していきます。まずは「バージョン管理」から。

たとえばローカル作成したファイルをチームメンバー複数人で管理していると、やがていろいろな箇所にちらばり、「最新版はどこにあるんだっけ」など、バージョン管理ができない問題が発生します。こうした非同期の問題に対して、NotionやEvernoteが解決してきたようなクラウドベースの手法を取り入れています。

次に「ドキュメントのソーシャル性」。

未だビジネスドキュメント作成においてソーシャル性を持たせたツールは確立されておらず、誰もが自由に改訂し、新たなデータとして公開できるような体験というものは浸透していません。他方、Githubはエンジニアのコードを、Figmaはデザインソースをオープンにさせ、コラボレーション・プラットフォームとして確立させることで大きな成功を収めています。そこでAlmanacも、ビジネスドキュメントに同様の価値を付けようとしています。

最後に「トレース」。

単にユーザー同士がコラボレーションできる場を提供するだけではNotionなどに勝てません。そこでAlmanacは各領域の専門家のドキュメントをオープンにすることで、誰もが資料デザインをトレースできる環境を整えました。ビジネスドキュメント領域にインフルエンサーを登場させ、誰もが欲しくなる資料をキュレートする場を作ったのです。

手軽に0-1で直感的に資料作成でき、その資料の出来栄えはプロ並み。ノーコードで重要視されるポイントを綺麗にビジネスドキュメント作成に応用したのがAlmanacと言えるでしょう。上記、3つの点を抑えることで大手競合サービスに並ぼうとしているのがAlmanacです。

コロナが大流行する中、Almanacは急速に成長しており、プラットフォーム上で作品の公開、サンプルを執筆するユーザーの数は、過去2カ月間で9倍に増加しているとのこと。

Almanacのようなドキュメントサービスは特定言語に依存しているため、日本でも類似サービスは十分に立ち上げ可能でしょう。日本市場にローカライズさせることで、一定規模の市場を開拓できるかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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次の10億ドル企業は「子供の寝かしつけ」市場を狙う

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 ピックアップ:Moshi, a sleep and mindfulness app for kids, raises $12M Series B led by Accel ニュースサマリ:子供向けの寝かしつけ音声アプリ「Moshi」は、AccelをリードにLatitude VenturesとTrip…

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Photo by Anastasia Shuraeva on Pexels.com

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

ピックアップ:Moshi, a sleep and mindfulness app for kids, raises $12M Series B led by Accel

ニュースサマリ:子供向けの寝かしつけ音声アプリ「Moshi」は、AccelをリードにLatitude VenturesとTriplepoint Capital参加のラウンドで1,200万ドルを調達した。同社は子供の睡眠を助けるアプリを開発。アプリには150近いオリジナルコンテンツが用意されており、80本の30分就寝ストーリーは、すべて同社が執筆・制作したものだ。

コンテンツ1つ1つの流れは、子供が寝やすいように忠実に練られている。たとえば、同アプリで最も人気のあるストーリーの一つである「Mr.Snoodle’s Twilight Train」では、ストーリー全体の背景に「シュッシュッポッポ」という電車の音が鳴り響く。この効果音は、子供の平均的な安静時心拍数に合わせたもので、子供が安らかな気持ちになれるように工夫されている。

現在10万人以上のサブスクライバーを抱え、8,500万回のストーリーが再生されているという。年間40ドルの利用料で収益化を図る。

もともとMoshiはMindy Candyという会社が名称を変更したもの。評価額10億ドルを超える「ユニコーン企業」の仲間入りをした瞑想アプリ「Calm」の創業者兼CEOであるMichael Acton Smith氏が創業したのだが、Calmに専念するために同社を抜けている(後継として現Moshi CEOのIan Chambers氏が着任)。つまり、流れとしてはCalmと同じDNAを汲んでいることがわかる。

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Photo by nappy on Pexels.com

話題のポイント:お子さんの寝かしつけに悩まれている方は多いのではないでしょうか?

コロナの影響で子供と一緒に過ごすことが多くなり、寝かしつけ問題(お昼寝含め)がさらに顕著になっているかもしれません。これは長年に渡って親御さんたちの大きなペインポイントでもあり、ここを切り口に、子供を落ち着かせる音声コンテンツを提供するのが「Moshi」です。

室内フィットネス市場では「Peloton」「Mirror」などの大型器具が注目を集めています。一方、自宅で手軽にできる瞑想アプリ領域も「Calm」を筆頭に、「SimpleHabit」のような瞑想版Netflixや、「Journey Meditation」のようなオンデマンドライブ配信が人気です。「自宅 + フィットネス/瞑想」のトレンドが子供市場にもやってきた、と今回のニュースは読んで良いでしょう。

子供独特の精神状態全てに対応するため、まずは寝かしつけという誰もが共感する課題から入り、将来的には自閉症やADHDなどの特定状態に対応するための音声コンテンツを提供することができれば、巨大プラットフォームになる可能性も見えてきます。音声書籍ストアや、Amazon的なマーケットプレースなど色々な展開が予想できるので、まさに「子供向けCalm」の市場を独占できる戦略思考です。チーム背景も文句ないので、急成長が望めるスタートアップの匂いがしてきます。

ちなみに数年前にはAmazon Alexa Fundから出資を受けた、Echoを使った絵本読み聞かせサービス「Novel Effect」が登場しています。同社もまたMoshiと同じ読み聞かせ市場を狙っており、親御さんや教師が読む幼児向け本に合わせて、Amazon Echoやスマホから効果音が出る立体演出サービスを提供します。「音のAR」とも呼べる領域で、累計調達額は310万ドル。Techstartsアクセラレータプログラム出身のスタートアップです。

現在、Novel Effectは保育園を中心にB2B営業をかけてサービス展開させており、Moshiに関しても、仮に寝かしつけの一定の効果がしっかりと検証されたのであれば、保育園に卸せるかもしれません。Cにも、Bにも展開でき、坂路拡大に悩む出版社との提携も考えられます。日本でも十分にトレンドとなる領域だと感じますし、その最前線にいるのがMoshiと言えます。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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変化するエンジニア採用、グローバル化で広がる「チーム開発」の可能性

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 企業が海外人材を雇用するには面倒なプロセスをクリアしなければなりません。 他国で合法的に人を雇用するためには、現地法人を設立し、現地の労働法を学び、現地の給与計算を行い、現地の弁護士を探して、各国法に準拠した雇用契約書を作成する必要がありました。こういった現地雇用法や規制への準拠は、ほとんどのスター…

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

企業が海外人材を雇用するには面倒なプロセスをクリアしなければなりません。

他国で合法的に人を雇用するためには、現地法人を設立し、現地の労働法を学び、現地の給与計算を行い、現地の弁護士を探して、各国法に準拠した雇用契約書を作成する必要がありました。こういった現地雇用法や規制への準拠は、ほとんどのスタートアップおよび中小企業にとって対応コストが高すぎて、海外人材へのアクセスは容易にできません。

一方、米国ではクラウドソーシングおよびフリーランス人材採用プラットフォームとして「Upwork」や「Fiverr」があります。しかしながら、プラットフォーム側の人材精査が甘いために企業が一人一人細かく面接する必要があったり、本格採用をするには別途手続きを自社で手配する必要があります。プラットフォーム事業として成長していながらも未熟な印象です。

こうした問題を解決し、どの国からでも・どの国に住む人でも雇用できるようにしたのが、4月22日に1,100万ドルの調達を果たした「Remote」です。

Remoteは世界中のどこにいても、誰でも数分で採用活動を開始できるHRプラットフォームを運営しています。さらに採用だけでなく、先述したような給与計算・福利厚生・コンプライアンス・税金など、海外人材を“正しく”雇用する際に必要なリーガル/アドミン業務を、1つのプラットフォームで処理してくれます。ヘルプが必要な場合には、Remoteの専属弁護士が対応に当たり、適切な処理を支援します。

パンデミック禍、リモートワークの成長傾向が高まる中で、他国での契約社員や正社員の雇用を簡素化できるニーズは刺さるはずでしょう。なにより、海外へ直接赴けない環境下、手軽にバーチャルな意味で現地法人を立ち上げられるプラットフォーム開発は非常に価値を発揮するはずだと感じています。

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Photo by Ketut Subiyanto on Pexels.com

Remoteの提供価値はその名の通り「海外リモート人材採用」にあります。SmartHRが提供しているような労務管理の機能をグローバルに拡大させ、さらに人材採用プラットフォームとしての機能も持ち合わせ持ち、一気通貫でチームを作るサービスを提供しています。

現在は個人開発者を採用するプラットフォームですが、注目すべきは“Hire your own team in any country”とあるように、グローバルチーム組成を行えるメッセージ性に重きを置いている点です。

昨今、従来のスポット開発依頼の仕事とは違い、チームプロジェクト単位の開発仕事に対応するプラットフォームに対するニーズが上がっています。個人ではなく「開発チームおよびプロジェクト」を丸ごと外注するクラウドソーシングプラットフォームに注目が集まりつつあります。

例えばウェブサイトやアプリ開発の外注サービス「Engineer.ai」は「アプリ開発のコンビニ」を作っています。

UberやInstacart、Snapchatと言った代表的なプラットフォームとそっくりのテンプレートをマーケットプレイスで選ぶと、そのままの機能を備えたサービス開発を外注できます。諸機能を取捨選択してオリジナルアプリの開発も可能です。

一方のEngineer.aiは事前に用意したテンプから「選んで買ってもらう」流れを採用しているため、自社でユニークな機能を毎回構築する必要がありません。工数のかかる機能開発注文がくる可能性を潰しており、自分たちの開発しやすい・利益率の高いサービス開発に誘導しているのです。

Enginner.aiは自社で世界中のエンジニアを囲い、依頼のあったテンプレートから即座にチーム組成を実施し、過去の記録からコンポーネントを渡して開発効率化を図っているわけですが、こうしたグローバルチーム組成を誰もができる可能性を秘めるのがRemote、というわけです。

彼らが仮に企業と個人を結びつける採用プラットフォームから、企業と開発チーム(組成)を支援するサービスへと成長すれば、より多額の取引を発生させるはずです。国内ではランサーズがチーム単位で発注できるサービスを提供していますが、これのより発展的な拡大・グローバル版です。

採用市場は「チーム採用」へと変わりつつあり、これからは「グローバル・チームプラットフォーム」が台頭してくる時代になると感じます。こうした背景を踏まえ、「アジア版Remote」のような企業が日本から登場しないか、期待をしながら市場を見ています。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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創業2年で評価額830億円(7.8億ドル)の新星スタートアップ、そのビジネスモデルとは

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 新しい投資運用の形として、注目のスタートアップが小売市場に登場しました。名前は「Thrasio」。創業年2018年のスタートアップです。 Thrasioは2019年4月に650万ドルのシード調達を実施。そこからたった1年しか経っていない2020年4月、シリーズBで7,500万ドルの大型調達に成功して…

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

新しい投資運用の形として、注目のスタートアップが小売市場に登場しました。名前は「Thrasio」。創業年2018年のスタートアップです。

Thrasioは2019年4月に650万ドルのシード調達を実施。そこからたった1年しか経っていない2020年4月、シリーズBで7,500万ドルの大型調達に成功しています。同時期に3,500万ドルのデッド調達をしているため、総額1億ドル超を調達していることになります。現在の評価額は7.8億ドルという急成長企業です。

同社はAmazonサードパーティ・プライベートレーベル事業を買収する事業を運営しています。Amazonの商品の中から「トップレビューのあるベストセラー商品」を見つけ出し、そのブランドを中小企業のオーナーから購入します。Crunchbaseが伝えるところによると、すでにある程度の利益を生み出しているそうです。

Thrasioの着眼点は、Amazonで事業展開をする中小企業が抱える「ビジネスを始めるのは簡単だが、成功すると時間の経過とともに管理が難しくなる」という課題です。成長フェーズにあるが、生産から配送、価格最適化、広告展開まで手に負えなくなってしまったブランドを買い取る「ミニ買収」を繰り返し、爆発的な成長を遂げているのがThrasio、というわけです。この手のブランドは、オーナーが予想していた以上のスピードで成長してしまい、手に負えなくなっているケースが大半とのこと。

これまでに43の事業をオールキャッシュで買収し、自社オペレーティング・プラットフォームに統合。ブランディングや検索などを通じて最適化を図っています。買収したブランド製品には、フィットネス機器ブランド「Beast Gear」、疲労防止フロアマット「TrailBuddy Hiking Poles」などが挙げられます。

利益が500万ドル以下のブランドに対して投資家があまり注目してくれない、という状況も追い風になっています。100万ドルから500万ドルの範囲でThrasioが独占的に買収オファーを出している状況はPeter Thielが提唱する、ニッチ領域で高いシェアを占める典型例であると感じます。

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Photo by Tobias Dziuba on Pexels.com

さて、Thrasioのモデルは小売市場における新たな投資業態です。ここからは考察になってしまいますが、おそらくビジネスモデルは次のようなものでしょう。

  1. 投資家などから出資を募る(事業資金を募る)
  2. 過去の売り上げデータなどを分析して成長性の高いブランドをピックアップ (AIによる期待収益予想)
  3. 買収提案をして、ディールが決まったらAmazonアカウントを連携させるだけ(FBA – Fullfillment by Amazon
  4. 1〜2年で元を取る

日本でも楽天で大きく成功している中小企業ブランドがいたり、100均やちょっとした商品開発にアイデアを持って行って成功させている個人がいます。こうした人たちのExit先として成立させる小売買収事業は、パンデミック禍で落ち込んでしまっている企業を救い、投資マネーを循環させる上で良いかもしれません。もし期待収益を高精度で予測できるのならば、収益も確保でき、Thrasioのような成長ビジネスになるはずです。

D2Cブランドが世界的に乱立しており、消費者からしたらどれを選べば良いのかわからない状態になっていますので、新たな買収モデルとして一度スキームを作ってしまえば、他の様々な市場で買収事業モデルが応用される予感がしています。経済を促す社会的な意味合いも込めて、そしてある種の新たな投資ファンド事業として、ポストコロナで活躍する可能性は大いにあるでしょう。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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2020年・エコシステムはどう変わる(2)激変するオフィスと働き方

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私たちはどうやら簡単には元のオフィスには戻れないらしい。 We have often been in large open spaces at technology companies filled with people using laptops at standing desks while wearing headphones to tune out background noise… i…

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Photo by Sharad kachhi on Pexels.com

私たちはどうやら簡単には元のオフィスには戻れないらしい。

We have often been in large open spaces at technology companies filled with people using laptops at standing desks while wearing headphones to tune out background noise… is there a better win-win arrangement?(テクノロジー企業の多くはオープンスペースで、スタンディングデスクを使って、ノートパソコンにずっと目を向け、周りの雑音を取り除くためヘッドフォンを取り付け黙々と作業する人で埋め尽くされるだけです…なぜそうした状況が生まれてしまったのでしょう?)。

元Kleiner Perkinsのパートナーであり、毎年発行される「Internet Trend」でお馴染みの著名投資家、メアリー・ミーカー女史が発行した「Coronavirus Trends Report」にある一節だ。

感染症拡大による最も大きな変化は「人との接触を極力減らす」生活スタイルにある。特に日本の首都圏で働いているテック系スタートアップであれば、ここの満員電車だったり、足の踏み場のないオフィス環境を経験したことがあるかもしれない。緊急事態宣言が解除された今もまだ、無自覚のまま他人を感染させてしまうという恐怖もある。

元に戻れない、というのはあながち大袈裟でもないのだ。

この状況を比較的リモートワークに対応しやすい国内テック大手はどう見ているのか。感染症拡大を前に、いち早く動いたのがGMOグループだ。1月末で早々に全社リモートワークへの切り替えを実行に移し、週の1〜3日を目安に在宅勤務とする指針を公表している。

またサイバーエージェントのように、会って仕事をすることのカルチャーを重要視している企業もあるが、それでも社内会議についてはZoomを使ったミーティングを推奨するなど、接触と同時に時間の無駄を排除する動きを進めている。生産に装置を必要とする業務や、セキュリティの関係で場所に縛られるケースなど、全てが「Work From Home」に移行できるわけではないが、それでもこれを機に効率化を見直す動きはさらに進むだろう。

これだけ大きな変化だ。ビジネスチャンスがないわけがない。

変わる働き方を投資サイドはどう見る

では、投資サイドはこの状況をどう見ているのだろうか。

まだしばらくソーシャルディスタンスが必要とされることで加速しそうなのがxRと5G技術だ。KDDIの中馬和彦氏は今回の件で、仮想と現実の境界線を「融合する」ソリューションに注目するとコメントしてくれている。

「コロナ以前の注力領域は『バーチャル世界のリアル化を加速するもの』(xR等)と『リアル社会のインターネット化に寄与するもの』(AI&IoT等)でしたが、コロナ後はこれに加えて『バーチャルとリアルの融合(パラレルワールド化)を実現するソリューション』に注目していきたい」(KDDI経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長/中馬和彦氏)。

また、ソニーフィナンシャルベンチャーズで投資を担当する中村順司氏もまた、ソーシャルディスタンシングの継続で変化が訪れるとした一人だ。リモートワークが加速する中で徐々に視点はできることから品質へと移り関連する技術に注目が集まると指摘した。

「多くの分野で自宅でも仕事はできるということが確認される中、リモートコミュニケーションの品質が問われ始めていて、ここに高い品質と付加価値を実感できるソリューションの登場には注目しています。また『非接触』に対するニーズは多様化し、コスト効率の観点とともに評価の対象軸になると考えています。具体的にはセンシング技術、画像認識技術、セキュリティ、オンライン営業・業務支援ツール、エッジコンピューティング、デジタルヘルスなどがそれです」(ソニーフィナンシャルベンチャーズ取締役 投資業務部長/中村順司氏)。

ここでひとつ実例を挙げよう。米Microsoft Researchが発表しているソリューションにVROOMというものがある。職場に等身大のロボットを配置し、リモート環境からヘッドマウントディスプレイを付けたユーザーが「アバター」として遠隔のオフィスに参加する、という代物だ(詳しくはこのビデオを見て欲しい)。

まだ研究段階のものでとても実用には程遠い体験のように感じられるが、これこそ現時点で想像できるリアルとバーチャルの融合パターンと言えるだろう。使われている技術もソフトウェアのみならず、ハード、センシング、通信と幅広い。

仮想空間についてはこれまでもスタートアップによる開発が進んできた。国内で言えば、エンターテインメント文脈でのVirtural YouTuber(VTuber)開発企業の資金調達が相次いでいたし、VR空間についても、例えばClusterのようなプレーヤーがイベント空間の提供で先行しつつある。

確かにZoomやMicrosoft Teamsのような「オンライン・ミーティング」は便利で、現時点でのベストソリューションかもしれないが、「実際に会ったような体験」とまでは言いづらい。ソーシャルディスタンシングの制約が解除されるのがもう少し先であることを考えると、時間と空間の制約も飛び越える、xR空間での体験、特に中馬氏が指摘する「リアルとバーチャルが融合した」ソリューションはこれからも出てくるはずだ。

どうなる「地方での起業」

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THE SEEDは京都にインキュベーション施設をオープンさせている

ここ数年、スタートアップの現場で語られてきたテーマのひとつに「地方起業」というものがある。東京以外にも関西や福岡などが活動を活発化させており、それぞれ投資ファンドや独立系ベンチャーキャピタル、学生起業家といったローカルプレーヤーが根付き始めているのが今だ。

その代表的な一社である福岡拠点のF Ventures、両角将太氏は今回の件を地方起業拡大の契機と考えている。

「東京のビジネス上のメリットである人の密集が、今回ばかりは逆効果となってしまいました。コロナは容易に根絶できるわけではなく、共存していかなければならなくなる可能性は高いと思います。withコロナ時代では、地方で起業する人たちにとってチャンスが拡がるのではないでしょうか。

地方であれば家賃も安価に抑えられる分、コストを採用に回すことができます。また、オンラインで完結できるようになり、地方ではこれまでできなかった人材獲得ができるようになるのではと考えています。また、そのほかリモートで完結できる業務も増えると予想できるため、地方でのチャンスがより広がってくると思っています」(F Ventures代表パートナーの両角将太氏 )。

彼が指摘するように、地方の分かりやすいメリットは首都圏に比較して圧倒的なコストの安さにある。そもそもテック系スタートアップの多くは「持たざる経営」で競争力を高めてきた。首都圏に集まる理由は主要な投資家や事業会社、そして何より優秀な開発者たちが多く集結していたからに他ならない。しかし、今回の件で距離という制約がゼロにはならないにしても、大きく緩和されれば可能性が出てくる。

例えば海外では国境を超えたチームワークという概念がある。

37Signals(現在のBasecamp)は2010年台半ばにオフィスを持たない、新しい働き方について提唱をしていた。ここ最近のスタートアップでもAndreessen Horowitzが出資した「Deel」のように国境を超えたチームのバックオフィスを効率化する、そんなスタートアップまで出現してきている。

オフィスはオンラインにあり、働く人たちは同じ国ですらないというパターンだ。日本でも今回の件を契機に、本社機能は福岡、働く人たちは東京、アジア、欧米と分散するようなケースが出てきてもおかしくない。

次回は大きな注目が集まる企業のデジタルシフト、デジタル化する経済「DX」大航海時代についてケーススタディを掘り起こしてみたいと思う。

参考記事:2020年・エコシステムはどう変わる(1)スタートアップの投資判断

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毎日2.3億人が使う「Snap」のすべて、ARの未来とユースケース

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 スマートフォンアプリ「Snapchat」を開発する「Snap」は6月11日、Snap Partner Summit 2020をオンライン開催した。本記事ではイベントの内容を下記のトピックに沿ってまとめ、簡単なコメント共に考察している。 メンタルヘルス重視 主要トラクション ARクラウドに向けた動き …

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

スマートフォンアプリ「Snapchat」を開発する「Snap」は6月11日、Snap Partner Summit 2020をオンライン開催した。本記事ではイベントの内容を下記のトピックに沿ってまとめ、簡単なコメント共に考察している。

  • メンタルヘルス重視
  • 主要トラクション
  • ARクラウドに向けた動き
  • AR時代の検索
  • モバイル映像コンテンツとARストーリー体験
  • SnapKit連携
  • 共有体験とSuper App化

メンタルヘルス重視

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CEO創業者のEvan Spiegel氏から最初に語られたのはメンタルヘルスに関して。Snapchatユーザーがメンタルヘルスの専門家リソースを検索できるサービスを発表した。「Crisis Text Line」「activeminds」らと連携し、若者世代の孤独問題解消などを目指す。

世界各地の優れたストーリーテラーが発信するスペシャルショー「Snap Originals」において、若者世代のメンタル問題を取り上げた『MindYourself』をリリースしたことも同時に発表されている。合計1200万ユーザーが視聴しており、ウェルネススタートアップ「Headspace」とパートナーを結び、より積極的にメンタル問題をサポートしていくとも述べられた。

主要トラクション

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続いてはSnapchatに関するトラクション。

  • 2020年第1四半期の平均デイリーアクティブユーザー数は2億2,900万人超。
  • アメリカだけでも1億ユーザー以上に達している。TwitterとTikTokを合わせた数よりも多くの米国ユーザーにリーチできている。
  • 同じく第1四半期には、FacebookやInstagramよりも多くの13歳から34歳の若者にリーチ。
  • イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアなど、世界中で大きな成長を遂げている。また、インド市場では、過去1年間で1日のアクティブユーザー数が120%以上増加。
  • Snapchatters(Snapchatユーザーの名称)は非ユーザーよりも何かしらのコミュニティサービスに従事する可能性が50%高くなっている。
  • 動画コンテンツをマップに表示・検索できたり、友人と繋がれる「Snap map」の月間リーチユーザ数は2億以上。地元商店のリストが並び、ストーリー・営業時間・レビュー・PostmatesやDoordashを通じた配達オプションを備えている。
  • Snapchat上のプレミアムコンテンツの視聴時間は第1四半期に前年比2倍以上に増加。60以上の番組が月間視聴者数1,000万人以上に達している。
  • 毎日40億回以上スナップが作成され、1日に300万回以上のスナップがストーリーに投稿されている。

ARクラウドに向けた動き

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SnapchatがARプラットフォームであることが改めて明言された。事実、1億7,000万人以上のSnapchatユーザーがARを利用しており、ユーザー当たり平均毎日30回前後ARレンズを活用しているとのことだ。

ARレンズを制作・発表する「Lens Studio」では、数万人のクリエイターが存在し、累計100万以上のレンズが発表されている。今回、新たに「Music Lens」が発表され、音楽に合わせたAR効果を楽しめる。レンズの中でもイベントで特集されたものが下記である。

  • 「butterflyyy」 by alexia:140億視聴
  • 「star freckles」by ana casciello:70億視聴
  • 「Bokeh A7 NEW」by Ahmed Ali:60億視聴
  • 「Shrinky Drink」by Kryptik:29億視聴

これまで世界中で25の新しいランドマーカーを発表し、3Dフェイスメッシュやスケルトントラッキングを含む11のテンプレートをリリースしてきた。カスタム3D エフェクトを作るためのビジュアルプログラミングツール、マテリアルエディタも発表。加えて、レンズスタジオをSnapが開発するARグラス「Spectacles」にも導入。ARソフトウェアとハードウェアをシームレスに統合してきた。

世界中のクリエイターが機械学習モデルをレンズデータに直接取り入れることができる「SnapML」の立ち上げも発表された。たとえば物体にカメラレンズを向けると対象物の名前が検索できるサービスなどを手軽に実装できるようになる。

Prisma」やMRクリエイター集団「2020CV」はSnapMLを使っているという。また、ARコマース企業「Wannaby」はシューズのAR試着を可能とするフットトラッキングモデルをアップし、誰もが手軽に様々な柄のスニーカーデザインをレンズ越しに試着できるようにしている。

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Snapは昨年からランドマーカーを導入し、お気に入りの場所・建築物でARを楽しめるようになった。そして今回、友人と一緒により広い街のブロック全体で友達と同時にARを体験できる「Local Lens」が発表された。

360度画像やユーザーコミュニティから投稿されるスナップコンテンツなど、さまざまなデータソースを使用して物理世界点群データを構築。3D再構成、機械学習、分散型クラウドコンピューティングと組み合わせることで、都市ブロック全体をマッピングすることに成功。物理世界の上にARレイヤーを加え、ユーザー同士がコラボレーションしながら遊べる体験を実現させた。

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重要なポイント:さて、「Pokemon Go」を開発する「Niantic」が3D空間マッピング企業「6D.ai」を買収しています。また、同社は先日、ユーザーから許可を取る形で3Dビジュアルデータを収集することも発表しています。クラウドからデータを集め、都市の点群データを効率的に集めるこの戦略ですが、まさにSnapも同様の動きをしていると言えるでしょう。

SnapはPokemon Goより先んじて点群データを集め、実際にサービス化へと走り出していることがわかります。ユーザーがいる特定箇所に紐づいたデータや、ユーザーがその箇所に残した過去の活動情報をクラウド上に保管し、常に呼び出せる「ARクラウド世界」の実現に動き出しています。

デモ上では複数ユーザーがARレンズ越しに屋外の壁にペイントをしながら遊んでいました。友人ユーザーが残したペイント情報が即座に共有され、1つの共同体験として完成しています。あたかも「リアル版Splatoon」とも呼べるものです。ここに様々な情報が乗っかり、より高機能なSpectaclesが登場すれば、スマホに変わる次のコンピューティング環境が切り開かれます。今回、SnapはxR業界誰もが望む世界のver1.0を披露してくれているのです。

ARクラウド環境とハードウェアをSnapが揃えれば、マーケットプレイスモデルのようにサービスを開発・提供するパートナーを増やすだけになります。たとえばSplatoonを開発する任天堂がSnapと提携し、ゲームソフトだけを提供する具合です。Nintendo Switchなどのハードウェアの開発も不要となるので、あらゆる企業がSnapのような巨大なAR経済圏に参加することを前提に、何かしたらのサービス開発をする必要が出てくるかもしれません。こうした未来を見据えた事業構想が求められるでしょう。

AR時代の検索

実生活に役立つARユースケース創出にも動いている。昨年、Snapは「Shazam」「Amazon」「photo math」らと提携しコマース領域を強化。PlantSnapを使えば、60万以上の植物・樹木データにアクセスし、90%の識別能力で該当物を判断できるようになっている。

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400種類近くの犬種を識別するレンズもある。通りかかった子犬の正確な犬種を知る必要がある場合に役立つ。スーパーに行ってバーコードをスキャンすれば、どのくらい栄養価の高い商品なのかを知ることができる。

マーカーレンズの美容業界での活用法も発表された。たとえば「Too Faced」はアイシャドウパレットにバーチャルトライレンズを連携。購入者がアイシャドウをスキャンすると、どんな場所であっても手軽にパレットの中の色の使い方のチュートリアルが表示されるようになった。

ARスキャントリガーの活用も発表されている。たとえば空にかざして発動するARレンズを開発したのならば、Lens Stuido上で「Sky」とトリガーを置けば、ユーザーは空にカメラレンズをかざすだけで特定AR効果を引っ張ってこれるようになる。コンピュータービジョンを使ったビジュアル検索機能だ。

音声コマンドにも力を入れている。「SoundHound」との提携を発表し、音声だけでARレンズを使うことができる。たとえば「Hey Snapchat, give me a hug」というと熊のぬいぐるみが抱きしめてくれたりする。

重要なポイント:Snapが参入する領域はカメラを使って目の前の物を検索する「Google Lens」と同じです。ただ、Snapは他社連携を強く推し出しており、例えばAmazonとのパートナーシップは彼らの強みになっています。

関連して「Alexa for AR」と称される、“声のAR”にも力を入れている点も注目でしょう。音声入力はARグラス端末の主要UIの一つとなると感じており、ビジュアル検索と音声コマンドの両方を抑えることはデバイスを確立するためにも必須条件となります。

自社製品ラインナップだけで囲う傾向のあるGoogleやAppleとは一線を画しており、逆に言えば、将来的にiPhoneやPixelからSnapのAR機能が排除される可能性も少なからずあるかもしれません。この点を踏まえ、SnapはSpecatacles開発を進め、一刻も早くモバイルデバイスからARグラス端末の時代へ進めたいと考えているはずです。モバイルARを戦略時に置くGoogleと、グラス時代を見据えたSnapの対立構造が見えてきます。

モバイル映像コンテンツとARストーリー体験

友人が投稿したストーリーズやパブリックストーリーズを楽しめる「Discover」に関しても数値データが共有された。

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  • Will Smith氏の軽快なトークショー『Will from home』は3,500万以上視聴されている。
  • 2019年、Discoveryコンテンツの視聴時間は35%増加した。
  • 今年の第1四半期にはSnapchatで番組を視聴する時間が2倍になった。
  • 2019年にはパートナー企業に前年よりも60%多くの収益を支払った。
  • 過去3か月、8,000万人以上のSnapchattersが、NBC、The Gardian、Lamontを含む100以上のパートナーからの報道を視聴した。
  • 今年だけで1億2,500万ユーザーがニュースストーリーズを視聴した。
  • 全てのチャネルで毎月約5000万人のSnapchattersによる視聴が発生。
  • Snap Originalsは米国ジェネレーションZ世代の50%以上に視聴されている。
  • Snap Originalsの作品『Nikita Unfiltered』は2,200万ユーザーが、『Dead of Night』は配信開始から48時間で70%のユーザーが視聴した。

Discoveryと並び紹介されたのがSnap Originals。NBCUniversalが制作したSnap Originals上の作品『Face Forward』の視聴者は、作品で美容メイクを扱うことから、ARレンズを使って登場キャラクターになりきれる。同様にMission Controlが制作した『Fakeup』、StellARの『Move It!』でもストーリーに合わせたARレンズを楽しめる。

重要なポイント:ここで紹介されているSnapchat限定映像コンテンツを、ARレンズを通してバイラルさせるSNS戦略は興味深いところです。TikTokも中国本土では映像コンテンツを試験的に配信している動きがあると聞きましたし、フィルター/レンズを使ったコンテンツ連携はこれから主流となってくるはず。映像の世界観をUGC(User Genrated Content)の形式で普及させることができるため、広告コストのハックに繋がるかもしれません。

また、Netflixが『Staranger Things』で成功を収めているように、Snapは『Dead of Night』で映像コンテンツの魅力さが際立っている印象です。AR + 映像配信企業としての独自のコンテンツプラットフォーム路線を描いていることが想像できます。

SnapKit連携

開発者がSnapchatを活用したサービスを簡単にビルドできる「SnapKit」に関しても発表がされた。ここでは簡単に要点だけを紹介したい。

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  • 800以上のアプリがSnapKitと統合されており、毎月1億5,000万ユーザーがこれらの統合されたサービスを利用している。
  • イギリスに拠点を置く写真編集アプリ「Infltr」は、700万以上のユニークな写真や映像作品を持つ。SnapKitと統合後、フィルターのサブスクリプションの売上高は5倍になり、以前はほとんど利用されることがなかった中東では、1日あたり50万ほどスナップが共有されている。
  • 先月、パートナーが開発した20以上のアプリがiOS App StoreとGoogle Play Storeのトップ100に入った。
  • 匿名メッセージアプリ「YOLO」は、Snapchatの友達向きのサービス。リリースから1週間も経たないうちに米国App Storeで1位になり、Social Appのトップ10にランクインしている。

共有体験とSuper App化

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ユーザーに似せたアバターを作れる「Bitmoji」。これを使ってSnap Gamesを遊べるようになっており、あたかも自分が遊んでいるかのような体験を得られるようになった。

インストール不要、デフォルトで友人Snapchattersと繋がり、ゲーム内チャットおよび音声コミュニケーション機能が付いているSnap Games。これまで1億ユーザーがゲームをプレイしたという。さらに、毎日1プレイヤー当たり平均20分遊んでいるとのこと。「Ready, Chef, Go!」は2,500万ユーザーがプレイしたヒット作。一人で遊ぶより多人数で遊ぶ方が2倍長くプレイすることがわかっており、Snapは引き続きコミュニティ作りに邁進するという。

また、チャット機能内で選択できるミニプログラム「Snap Minis」が発表された。たとえば「atom」では、面白そうな映画の予告編を送信することができ、お互いに気に入ったら近くの映画館の座席チケットをその場で予約できる。「headspace」では友人と一緒に瞑想をすることができ、感想を送り合える。

重要なポイント:Bitmojiをゲーム内で使い友人と一緒に没入体験を味わえる手法や、同じプログラムを楽しむ手法は、友人とのライブ動画チャットを楽しめる「Houseparty」が採用する戦略に似たものを感じます。

クイズや映像、瞑想をしながら共通の話題・体験を共有することで、小さなグループの絆を強くすることができます。こうした小さなグループを大量に作ることで、大量のユーザー数を低い離脱率かつ長いリテンション率に留めることができます。

Snapchatはコミュニケーションアプリであることから、決済やモビリティ、小売領域へはまだ進出していないようですが、中国のアプリに見られるように、ありとあらゆるサービスをミニプログラムとして動かすことで、1つのアプリで全てのサービスニーズを抑えられる「Super App」の戦略舵取りをすることが今回、明らかになりました。すぐにでもパートナー企業を増やし、ユーザーの生活体験全てを抑えるべく、あらゆる領域のミニプログラムを展開するはずでしょう。

次世代コンピューティング時代の主要アプリとしての市場ポジションを睨みつつ、Super Appとして多角化を目指す強さは、GAFAを筆頭とする大手IT企業に引けを取りません。プライバシー問題に大きく揺れるGAFAよりむしろ動きやすいことから、戦略展開も着実に進めていけるかもしれません。なにより、比較的若い世代のユーザーを囲えているコミュニティの競合差別要素がSnap“らしさ”を高めています。この点は次の5-10年の戦略的優位性となるでしょう。

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最後に、Snapはカメラユースケースの最発明に軸を置いたところから始まっている企業です。これは日本のSonyやCanon、Nikonが古くから参入している市場です。これをカリフォルニアの若手起業家に全て持っていかれてしまっています。言い換えれば、技術力ではなく、いかに新時代を生きる若者向けのUXを作り出せたのかどうかで成長力が決まることをまざまざと見せつけられていると感じます。

Appleが巻き起こした黒船襲来の二の舞を、指をくわえながら眺めているしかないのが今の日本の現状かもしれません。世界の“レンズ”はARが普及する時代を見据えています。それはここまでの内容で何度も強調されている点です。

この未来を到底実現しない馬鹿げたものと捉えるか、はたまた目の前にある現実として捉え、今すぐ行動に移すかで日本のお家芸の運命は変わるかもしれません。Snap然り、日本の大手企業がいかに時代を捉えて経営戦略を最適化させるかにも注目しています。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

 

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