コロナ禍のミドルマネジメント層研修に需要増、コーチングのmentoがWiLから3.3億円調達

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ニュースサマリ:コーチングサービス「mento(メント)」は4月6日、第三者割当増資の実施による資金調達を公表している。引受先になったのはWiL(World Innovation Lab)のファンドで、ラウンドはシリーズA。調達した資金は3億3,000万円。資金はセールス、エンジニア、プロダクトマネージャーを中心とする人材・組織強化に投じられる。また、同社は3月4日付で旧社名のウゴクからmentoへ社名変更したことも伝えている。

2018年2月創業のmentoはキャリアや仕事における人間関係などの問題を抱える人に役立つ、個人向けコーチングのマッチングサービスを展開している。審査を経て登録されたプロの所属コーチ数は今年1月時点で160名、サービスインからこれまでのコーチング実施時間数(セッション時間)は2万時間を超えた。

また2019年からは個人向けに加えて事業者向けのコーチングサービス「mento for Business」を展開しており、伊藤忠商事やディー・エヌ・エー、パナソニックといった大手、多業種に展開が拡大している。コロナ禍などもあり多様かつ自律的なマネジメント層を求める企業が増えており、ミドルマネージャー層の研修の需要増を受けて売上は2019年からの比較で20倍と大きく成長している。

同社では今後、所属コーチの拡大が事業成長の鍵を握るため、コーチ育成に必要なデータ解析、コーチングスキルの可視化を目的とした開発も手がけるという。

話題のポイント:アジア版Betterup、コーチングプラットフォームのmentoがシリーズAラウンドです。前回の調達が2019年、かつ今回も1社のみということで足元固めながら迎えたラウンドという印象です。堅実。

mentoが何をやっているのか、という話については以前にも同社代表取締役の木村憲仁さんにお話を伺ったり寄稿いただいたりしているので、そちらを参照ください。また、木村さんの取材はポッドキャストに収めてますので、今回の調達の背景や、コーチング市場についてのコメントは直接、彼の声をお聞きいただければ。

ポイントはやはりコロナ禍における企業の人材投資に対する変化かなと思います。採用中心から育成、という話題は今にはじまったわけではありませんが、それでもコロナ禍でリモートワークだったり、メンタル面での課題だったり、働く現場にはいろいろな変化があったと思います。

負担が増えたのはミドルレイヤーのマネジメント層です。上と下に挟まれるだけでも大変なのに、横からコロナ禍という変数がやってきたわけですから、チームをマネジメントしようにも決められないことが多すぎる状態になります。ここで重要なのが行動規範(バリュー)に則った自律的な行動ですが、そんなに簡単にはいきません。

コーチングは最初に目的を決めることから始めるそうです。外野が不安定な状況の中、一人ひとりのゴールを自分で見つけ出し、自律的な行動を導き出すコーチングに注目が集まったのは自然な成り行きなのかもしれません。

木村さんに導入した企業のフィードバック、良い点・悪い点をお聞きしましたが、定量的な効果というよりは、バランスが悪くなった職場環境を改善し、仕事へのモチベーション向上やワークライフバランスの最適化に貢献するなど、定性的な効果がやはり目立つというお話でした。結果的に職場の雰囲気がよくなる、ということなんだと思います。

一方、導入に失敗するケースは、なんとなく周りで流行ってるから、という「研修サービスを買いました」的なアプローチに多いそうです。受ける側がメンタルに関わる話をコーチと二人三脚でやるので、なんかよくわからないけど会社から降ってきた、では進まないのは理解できるところです。

ポッドキャストではこういった企業における人「財」投資の話など、市場の変化についても木村さんに語っていただいています。ぜひ彼の声を聞いてみてください。

ポッドキャスト全文

まずはどのようにしてユーザーさんが伸びていったのか、その状況や流れを教えていただけますか?

木村:元々は個人向けのサービスとしてコーチングのマッチングプラットフォームの「mento」という形で始めたんですけれども、後発で法人向けのサービスをスタートさせていって、法人向けのビジネスがかなり伸びてきているというのが現在の状況です。

メルカリさんとかLINEさんみたいないわゆるインターネット系の上場企業が最初のお客様ではあったんですけれども、プレスにもある通り伊藤忠さんとかパナソニックさんみたいな日系の大企業の会社さんに使っていただける機会がどんどん増えてきています。

背景にあるのは、まず純粋に、誰がお客さんなのかということを我々がこの2年ぐらい探索する中で、もちろんスタートアップの方々にもコーチングのニーズってありますし、個人の方も必要としてくださっているんですけれども、どちらかというと大企業の、特にミドルマネージャー育成という文脈で、一人ひとりに深く入ってリーダーシップを育成していくみたいなところに投資をすることが肌に合うお客さんたちがその辺りだったと。

具体的なコーチングにおける成果やフィードバック、環境といったところを教えていただけますか?

木村:おっしゃる通り研修って、じゃあそれが売上につながったのかみたいなところがすべからく評価しづらいビジネスで、玉虫色にされがちな業界だと思っています。コーチングというものも広義では研修の範囲に入ってくるので、売上にダイレクトにつながったのかどうかを証明することって困難なんですね。

でもたとえば一人ひとりがコーチングを受ける前と受けた後で仕事に対するエンゲージメントが圧倒的に上がったり、あるいはちょっとワーカホリック状態になっていた方が少し落ち着いて、仕事と家庭のバランスが取れるようになって、それによってパフォーマンスが発揮できるようになるとかですね。ご提供している中でも、如実に、ワークエンゲージメントが倍になるという方も全然出てくるんですね。

いわゆるパフォーマンス成果の先行指標となる一人ひとりの仕事への熱中度だったりとか、それを下支えするメンタルヘルスみたいなところに対する影響が出るということが分かっています。

逆に、導入してみたけれどもうまく行かなかった、あまりパフォーマンスが出なかったっていうケースにはどういうものがありますか?

木村:とりあえずコーチングが流行ってるからやってみようっていうパターンですね(笑。難しいなと思うのは、ソリューションとしてのコーチングは魅力的なんですけど、受ける側がどういうメンタリティで受けるかとか、何を目指していくのかっていうことが曖昧だと・・・やっぱり行きたいところに届けるのが仕事なので、行きたいところがない場合、うまくかみ合わないというのがケースとしてはあります。

話を変えます。所属コーチの数が160人以上に人数が増えました

木村:売上で言うと2年で20倍くらいになっていて、これまで提供してきたセッションの時間も2万時間ぐらい。ちゃんとカウントされているプラットフォーム自体が少ないですけれども、こうやってコーチングのプラットフォームという形で提供している会社の中では提供セッション時間は抜群に多いと思います。

ちなみにコーチングでみなさんが指標としている重要なKPIはどの辺りになるんですか?

木村:やはり継続的に受けていただくことが人の成長につながるものなので、一般的なチャーンレートやリカーリング性がちゃんと担保できているかみたいなところは指標としてとても重要かなという風に思っています。あとは、やはりリカーリング性を実現するために、コーチの序盤にちゃんとマッチングできているかというところの指標はすごく大事にしてます。

では最後に、コーチングに対する市場の盛り上がりについて、木村さんが感じたことをお話ししてもらってもいいですか?

木村:日本のマーケットという意味で言うと、これまでのコーチング市場って、特に個人のマーケットにおいては中間管理職の方が部下に対してコーチングするためのスキルの獲得っていうのがメインの市場だったんですね。なのでコーチングを研修として学んでもらうためのプログラムを売っている会社がほとんどでした。

一方で、これからの市場で言うと、コーチングを受けるというところに注目が集まってきているなという風に感じています。我々が営業させていただく大企業で、もうコーチングなんて当たり前のようにやったことあるんじゃないかって思う会社でも、いやコーチングよく知ってるんだけど受けさせたことないんだよねっていうところがほとんどなんです。やっていてもエグゼクティブだけみたいな感じで。

一人ひとりにやっていくので、そもそも広げられないという前提に立って人事の方も思考している。でも我々のようなプラットフォーマーの登場によって、安価で品質を一定に保った状態で多くの人にコーチングを受けてもらうという選択肢が出てきているので、「こういうのが欲しかった」っていう反応をしていただくんです。

それはなぜかと言うと、これまでのミドルマネージャー育成のための研修って、マネジメントとはこうあるべきで、こういうスキルを発揮してくれるとうまくいきますよっていう、ある種「型」を教えるっていうものがほとんどだったんです。自分の環境や自分の特性に合わせて、目の前の部下と向き合いながら能力を開発していくっていうことに関しては、もう完全にOJTしかできない。

自力で何とかしろっていうのがこれまでの日本のミドルマネージャーたちに突きつけられてきた現状です。そこに対して、一人ひとりが適切に自分の状況を俯瞰して、どこに向かっていきたいのか、現状がどうなってるのかを見つめながら、自分で成長を描いて前に進んでいく。それをサポートするソリューションとしてのコーチングが求められているなと思っています。

このコロナ禍で一気に押し寄せてきて地殻変動みたいなのが起こった。そんな感じですよね

木村:そうですね。しかもここに来て面白いなと思うのが、人的資本への投資をもっと進めていきましょうっていうのがもう政策レベルで進んできている。これが国の政策として変わっていっている方向で、それこそ東証でコーポレートガバナンス・コードっていうのが変わって、各会社でどれだけ人的資本を充実させられているかみたいなところの尺度がある種投資に跳ね返ってくる。

経済合理と切っても切り離せなくなってくるというのがここにきて起きている変化で、そうなってくると採用ももちろん頑張らなければいけないけれども、いる人たち、働いてくれている人たちをどれだけ成長させられるか、生産的に働かせられるかっていう観点での投資がどんどん加速していくので、そういう意味でもコーチングは非常にトレンドに合っていると思います。

一方、海外での状況はどのようなものになっていますか

木村:日本の市場も盛り上がってきてるんですけど、これってグローバルな動きですよっていうことをぜひ伝えたいなと思っています。USのコーチングのスタートアップで、大体5,000億円ぐらいのバリュエーションを付けているBetterUpという会社があります。いわゆるユニコーンの中でもかなり大きい形で、コーチングのドメインというよりはスタートアップとしてちゃんと評価されている会社だなという風に思っています。

この会社って基本的にB2Bで、うちがB2Bビジネスでやってるのと同じなんですけれども、コーチを集め、システムの中でコーチングとアセスメントという形で統合的な体験を提供して企業の人材開発を助けているんですけれども、成長率が尋常じゃないっていうところが公開情報から分かってきています。新規のお客さんも多いですけど、どんどん発注が増えてくるみたいな状況が見て取れ、後発も結構ばんばん出てきてるんですよね。

マーケットとしてはかなり活況で、アメリカにはこのBetterUpとそれに追随する企業があるし、EUにもベルリンベースでやってるCoachHubっていう会社があるんですけれども、そういった会社も三桁億ドルを調達してたりとか、かなり欧米圏では先行して成長市場としてかなり投資が集まってきてるなという印象です。アジアがこれからという形なので、我々は成熟市場としては日本からやっていって、アジアのマーケットを狙っていきたいなと思っています。