アカツキがWeb3の25億円ファンド「Emoote」発表、STEPNなどへ出資

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ニュースサマリ:ゲームを中心にエンターテインメント事業を展開するアカツキは5月12日、Web3領域に特化した25億円のファンド「Emoote(エムート)」の設立を伝えている。シンガポールにアカツキの法人子会社(Emoote Pte. Ltd.)を設立し、事業体が将来的に発行するトークン(暗号資産)に対して出資するSAFT(Simple Agreement for Future Tokens)や、株式に加えて転換できるトークンワラントなどの方法にも対応する。一社あたりの出資額は30万米ドル程度を想定しており、2021年9月の投資活動開始時から約20以上のプロジェクトへの投資を完了している。

投資ステージはシード、アーリーで主なエリアは日本を含むアジアが50%、米国が40%となっている。Emooteが注目するのは、従来型のテック・エンターテインメントなどの領域にトークンエコノミクスを組み合わせたもの。主な投資先として、NFTスニーカーを購入することで「移動で稼げる(move-to-earn)」モデルを提案したGameFiプロジェクト「STEPN(ステップン)」などが含まれる。同社の設立は2021年8月ながらそのコンセプトが受け入れられ、今日時点(5月12日)での総トークン価値(CoinmarketcapのFDV・希薄化後時価総額)は74億ドルと評価されている。

ここ1、2年でアジアではPlay to Earn(遊んで稼ぐ)GameFiの代表格とされるAxie Infinity(ベトナム)や、その成長を支えることになったスカラーシップモデル(アイテムレンタル)のYield Guld Games(フィリピン)などが世界的な成功を収めており、日本からもポルカドットハブのAstarが躍進するなど新たなパラダイムシフトの到来が期待されていた。アカツキはこれまでに培ってきたエンターテインメント、特にIP関連の知見やスタートアップ支援の経験をこの領域の投資に役立てる見込みだ。Emooteはこれまでアカツキで投資やスポーツ領域の事業を手がけた熊谷祐二氏らが牽引することになる。

Emooteの投資先

話題のポイント:暗号資産(仮想通貨)関連では、昨日は久しぶりに遭遇した激しい一日になっていたようです。ドルペッグ(連動型)のUST(Terra)が大きく下落し、そのガバナンストークンであるLUNAが90%以上下落するなど、ビットコインやイーサリアムなどの主要暗号資産も全面安となりました。また、注目されていたNFTプロジェクト「AZUKI」にラグ・プル(暗号資産詐欺)疑惑が持ち上がり、一時36イーサ(今日時点の価格で70,000ドル以上)を付けていた平均価格が10イーサ以下に下落するなど、こちらも大きくバブルが弾けた格好です。

ただ、2017年前後のICOバブルを経験している人であれば「ハイハイまたきましたね」という側面もあり、加熱した投機バブルが落ち着くことで、本当に必要なプロジェクトの見極めにつながるという点もあります。実は、今回のEmoote発表に際して熊谷さんにインタビューをさせてもらったのですが、そこでもこの「クリプトの冬」についてもお聞きしています。詳しくはポッドキャストをお聞きいただきたいのですが、結論は「プロジェクトを見極めて」「長期保有」これに尽きます。

シンプルなんですが、結局、自律分散を成功させたビットコインやイーサリアムなど主要インフラはここ10年足らずでその価値を天文学的な倍率に引き上げましたし、長期の視点で考えればやはりクリプト(特にトークンインセンティブのエコノミクス)は次のパラダイムシフトを開く鍵になるのは間違いないと思います。

ポッドキャストではEmooteのスキームや主要投資先となったSTEPNのモデル、なぜ投資できたのか、クリプトの冬、そして日本市場をどう見ているのかについてお聞きしています。

ポッドキャスト全文

BRIDGE編集部・ポッドキャストではテクノロジースタートアップや起業家に関する話題をお届けいたします。今回の取材ではアカツキで新たに設立されたWeb3ファンド「Emoote」の熊谷さんにお話を伺ってきました。

クリプトスタートアップへの投資は、数年前に発生したICOバブルの崩壊によってしばらくその声を聞くことはなかったのですが、昨年から発生したNFTの加熱によって再開し、世界的にもAndreessen Horowitz(22億ドル)を筆頭に、Sequoia Capital、Bain Capital などの従来ファンドの参戦や、2018年設立の新興クリプトファンド「Paradigm」が25億ドル規模を集めるなど注目が続いています。国内でもgumi CryptosやInfinity Venture Cryptoなどが立て続けに活動を報告していました。

インタビューでは投資先として注目のGameFiとフィットネスを組み合わせたプロジェクト「STEPN」の仕組みを中心に、やってくるクリプトの冬への対応などをお聞きしました。ぜひ熊谷さんの声をお聞きください。

Emooteの投資チーム

ファンドの概要を教えてください

熊谷:アカツキとして25億円規模の Web3特化ファンドを設立しました。昨年の9月から投資を実行していて、日本でも話題になっているSTEPNを中心にグローバルで20以上の投資実績があります。これ全てトークンに絡んだ投資です。

普通のファンドだと匿名組合だったりとか、CVCだったら2人組合とか色々作り方がありますが、今回はどのようなスキームで作りましたか

熊谷:今回シンガポールに子会社を作っていて、そこをベースに投資を実行してます。大前提として僕らは投資家であって発行体ではないので、税務のリスクは多くないです。あとは既存の LP や CVC を元々やっているので、日本にいてもアカツキ本体から投資するのはトークンでもできます。

ただ僕らにはアジアがすごく重要な拠点で、シンガポールをベースに活動すること、そこにネットワークを作ることがすごく投資事業にとって大事だと思ったのでシンガポールに拠点を作りました。ヨーロッパでビジネスやりたければロンドンに支店を作ったり、アメリカに支店を作ったりとかするのと同じ感覚です。

SAFTがメインなんですか?

熊谷:ほとんどがSAFTでの契約です。将来のトークンをもらえる。その代わりに対価としてお金をいくら払うというのが投資のスキームです。ただ、2022年になってから北米を中心にスキームが変わってきていて、Y Combinatorがもともと作ったSAFEプラストークンワラントという、後からトークンに転換するようなものが一部出てきているので、そういうものにも対応しています。もちろんエクイティで投資したい場合にも対応できています。

web3領域のスタートアップが増えてますが、どこにフォーカスし、1社あたりどの程度投資しますか

熊谷:トークン投資の転機になったのが、2021年のAxie Infinityです。Axieと同じように、いろんなプロトコルだとかプラットフォームの上に乗ってくるアプリケーションレイヤーに僕らは注力したいなと思ってます。かつ、エンタメとメディアとライフスタイル領域。コンシューマービジネスに近いところがこれまでアカツキでずっと追求してきたところで、僕らのミッションをかなえる領域です。チケットサイズは30万米ドルくらいなので、日本円だと4000万円くらいをベースにしてます。

既に投資したSTEPNが一番特徴的なので、このSTEPNの仕組みを教えてもらってもいいですか

熊谷:STEPNは「move to earn」と彼らは呼んでるんですけれども、歩いたり走ったりすることで稼げるスマホアプリです。Axie Infinityと同じでNFTでできたスニーカーを今だと15万円くらいしますが、まず買います。それをアプリにセットして走ると走った成果に応じて彼らが発行するトークンがもらえるという仕組みです。

例えば1日で1,000円稼げるとか、本当にレベルアップした人だと1日10万円をぐらい稼いでいます。僕も一番最初聞いた時はこんなのありえるのかな?と疑ったのですが、ものすごく彼らの新しいチャレンジを応援したくなって投資した経緯があります。

彼らに関しては2点あります。

ひとつはトークノミクスで、経済圏がどう回るかという仕組みの中だと、彼らは本当にアーリーのステージで、まず最初はトークンだったりとかWeb3 の大事なキーワードでインセンティブエコノミーというのがあって、一番最初にゲームを遊んでくれた人とか、エコシステムに貢献してくれた人に対してインセンティブを配るんですね。今はそのフェーズだと思ってます。

新しいトークンを発行して、その彼らに配る。彼らがさらに稼ぐためにアップグレードをして、そのトークンを消費するというライフサイクルを作ってるとこです。

ただ、これだけだと全体の経済圏で回らなくて、稼ぐこと以外にもトークンを投資してもらわなければいけません。彼らのホワイトペーパーに一部書かれていますが、これから新しい経済を作るためにどうトークンを消費してもらうかが彼らの課題です。

もうひとつビジネスモデル的な話をすると、今彼らが公表してる範囲だと前クオーターの2022年1月から3月で 33億円ほど利益は出ています。これは何で生まれているかというと、先ほどのデジタルスニーカーの二次流通での売買のトランザクション手数料です。

多くの人が新しくスニーカーが欲しくなったら、前にやっていたユーザーからスニーカーを受け継いだりするので、その時のトランザクション手数料が貯まりに貯まって、今それだけの利益を出してます。まだ発表はしていませんがいろんな収益モデルが有り得るのでこれから第2フェーズとして作っていくと思います。

15万円もするデジタルのスニーカーを買って稼ぎましょうと言われたら怪しい香りしかしませんよね

熊谷:投資したのは今年の始めなのですが、一番最初にイチユーザーとしてプロジェクトを発見したのが年末くらいだったと思います。最初「move to earn」って聞いた時に正直、僕も直感的に怪しいなと思いました。成り立たないんじゃないかなと。

ただそれと同時に思ったのがこの感覚前にもあったなと。一番最初にAxieをちゃんと見たのが 2021年の4月くらいで、Axieが爆発する前だったんです。エンタメに関わってる人間として見た時にこれ成り立たないなと思ったんですよ。

その後伸びたじゃないですか?これはイノベーションのジレンマだなと思って、その時理解できなかったけど後で理解できたんです。STEPNもその可能性あるなと思いました。いろいろ自分でリサーチしたりとかネットワークを介して紹介してもらい、それが数カ月後にこんなことになってるので、本当に面白いなと思って投資してます。

一方で経済圏が投機熱で支えられてる側面があることも否めません。数年前に ICO バブルがあって一気にマーケットが冷えた時期、クリプトの冬が来ました。投資サイドとしてこれに対してどのようにに予想していますか

熊谷:僕らが絶対決めてることは中長期で張り続けようということです。これはこの市場を投資していくことを決めた時に、今のアカツキの社長をやってる香田(哲朗氏)とも話したことです。短期で見るといろんな波があって、今も実際にマクロの影響だったりとか外交上の理由だったりだとか、色んな世界情勢の影響でクリプトが下がってます。

今年・来年で成果を出そうとすると難しいけれども、中長期で見たときには本当に新しいイノベーションです。第二のインターネットだと言われたりもしますし、ICOのときと大きく違うと思っているのは人材の質やお金の量で、ちょっとやそっとの規制だとか、暴落の影響で大きく変わることはないんじゃないかなと思っています。5年から10 年以上で張り続けることも考えてます。

ビットコインは何もないところから4、500万円まで価値が上がってるわけで、中長期で見たらすごい倍率です

熊谷:金銭的な意味だけじゃなく、例えばイーサリアムの上だったら、みんなが当たり前ように使ってるDeFiだとかゲームだとかエンタメだとか、マーケットプレイスだとか本当に価値があるツールだったりとサービスができてきてるので、エコシステムとして強くなってると感じてます。

今の日本の市場や日本の起業家をどのように見ていますか?基本クリフトファンドはグローバルで見るものなので、彼らをどのようにに扱おうとしているのか、その辺りの視点を教えてください

熊谷:色んな方々が日本の規制と向き合って新しいルールを作られてることには尊敬していますし、僕らも日本人ですし、日本の上場企業の子会社としてやっているので会計だとか監査だとかをどうルールを作っていけばいいのかをプレイヤーとしていろんな情報化をしています。その中で日本は制約上の理由でどうしてもビハインドしています。まずこのビハインドしている分のコミュニティとしての強さが足りてないなと。Day-1ですぐにグローバルにいろんなプレイヤーと戦えるかというと、なかなか難しいと思ってます。

ただそんなこと言っててもしょうがないし、もっとチャンスがあると思うので、僕らがその中で少しでも先行してグローバル投資してきたノウハウをみなさんに還元していきたいなと思ってます。いくつか僕らのテーマの中で日本からやった方がむしろ強いとか勝ち筋があるんじゃないかなと思っていて、エンタメでいうと、エンタメのトークノミクスをしっかり健全に回していくプロジェクトはまだありません。AxieもSTEPNもまだまだ発展途上ですし、みんなで頑張ってる状況だと思っています。

すごく重要な一つの観点として僕らは感情価値を提案しています。これは何かというと自分の好きなキャラクターがいたときに、たとえばこのキャラクターがものすごい高い値段で売れたとしても手放したくないという愛着だったり、アイドルやVTuberのライブを見ていて思わず投げ銭しちゃうみたいな感情的な衝撃はものすごく経済を回す上で大事だし、エンタメにおけるトークノミクスの中ではこの衝撃の部分をどう設計するかが大事だと思っています。

合理的に稼ぐところだけで経済を回そうとしているので、どこかで破綻する問題があります。日本ではこれまで IP 作りだったり、エンタメ作りだったりゲームだったりとかでクリエイターの方々とか、大きな企業の方々がノウハウを詰めて、日本から新しいプロジェクトを全世界に対して発信していく中で、そこに対して僕らもグローバルの基準でルールやネットワーキング、ノウハウを提供していきたいなと思っています。日本がこれからWeb3で勝つために一緒に頑張っていきたいなと思います。

何か日本向けにプログラムだったりとか、支援のような仕組みとかそういうものとかあって用意されるんですか?

熊谷:5月の末から日本のビルダー起業家向けに連載企画として勉強会をやっていきます。我々投資先のSTEPNの CEO や他にも著名なweb3の海外の方々、また逆に国内のエンタメ引っ張ってる方々をお呼びして、ノウハウを提供とネットワーキングの場を作っていきます。

あとは3月にYGG Japanという国内プロジェクトに投資を発表していまして、第2弾のプロジェクトもハンズオンで作ってます。僕らが注力をしたいテーマにおいて一緒に0-1を立ち上げることを積極的に支援していきたいと考えています。

ありがとうございました。